JPH1180528A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

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JPH1180528A
JPH1180528A JP23811397A JP23811397A JPH1180528A JP H1180528 A JPH1180528 A JP H1180528A JP 23811397 A JP23811397 A JP 23811397A JP 23811397 A JP23811397 A JP 23811397A JP H1180528 A JPH1180528 A JP H1180528A
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JP23811397A
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English (en)
Inventor
Masahiro Katayama
昌広 片山
Masaaki Ito
雅章 伊藤
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Daicel Corp
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Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリカーボネート系樹脂とポリスチレン系樹
脂とのポリマーブレンドを改質し、流動性と衝撃強度が
改善された熱可塑性樹脂組成物を得る。 【解決手段】 全末端に占める末端ヒドロキシ基の割合
が1モル%以上(5〜40モル%程度)のポリカーボネ
ート系樹脂(1)と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂など
のポリスチレン系樹脂(2)との割合(1)/(2)が、3
0/70〜95/5(重量%)である樹脂組成物100重量部に
対して、ジエン系ブロック共重合体(3)0.1〜20重量
部、必要によりポリアルキレンアリーレート系樹脂
(4)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(5)を添加して
熱可塑性樹脂組成物を得る。ブロック共重合体成分
(3)にはエポキシ変性ブロック共重合体などが含まれ
る。難燃剤(6)として有機リン化合物、難燃助剤(7)
としてフッ素樹脂を添加すると、非ハロゲン系の難燃化
熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、OA機器、通信機
器、家電製品用ハウジング、シャーシ、その他の部材、
自動車用部材などの素材として有用な熱可塑性樹脂組成
物に関する。さらに詳しくは、ポリカーボネート系樹脂
とポリスチレン系樹脂を主成分とし、加工性、耐衝撃
性、熱安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物とその難燃化
樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート系樹脂は優れた機械的
特性、熱的性質を有するため、工業的に広く利用されて
いる。しかし、ポリカーボネート系樹脂は成形加工性、
特に流動性に劣るため、他の熱可塑性樹脂とのポリマー
ブレンドについて数多くの検討がなされている。熱可塑
性樹脂のうちアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン
共重合体(ABS樹脂)とポリカーボネート系樹脂との
ポリマーブレンドは、流動性改良とコストダウンを目的
として、自動車分野、OA機器分野、電子・電気分野な
どで広く利用されている。しかし、ポリカーボネート系
樹脂と、耐衝撃性スチレン系樹脂などのゴム変性ポリス
チレン系樹脂とのポリマーブレンド系では両者の相溶性
が劣るため、機械的特性が低下し、ほとんど利用されて
いないのが現状である。
【0003】一方、OA機器や家電製品などの用途を中
心に、合成樹脂材料には難燃性が要求され、外部添加さ
れる難燃剤としては、臭素系又は塩素系のハロゲン系難
燃剤が汎用されている。このような難燃剤は、比較的大
きな難燃性を付与できるが、加工時や燃焼時に腐食性又
は有毒性ガスを発生させる。近年、環境問題に対する関
心が高まる中、これらの欠点を解決する方法として、臭
素や塩素系のハロゲン化合物を使用しない難燃性樹脂の
開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、ポリカーボネート系樹脂とポリスチレン系樹脂(ゴ
ム変性ポリスチレン系樹脂など)を主たる樹脂成分とす
るポリマーブレンドであっても、ポリカーボネート系樹
脂とABS系樹脂とのポリマーブレンドに匹敵する高い
流動性および耐衝撃強度を備えた熱可塑性樹脂組成物を
提供することにある。本発明の他の目的は、ポリカーボ
ネート系樹脂とポリスチレン系樹脂(ゴム変性ポリスチ
レン系樹脂など)を主たる樹脂成分とするポリマーブレ
ンドを有効に改質できるとともに、安全性および非腐食
性が高く(無害)、高い難燃性が付与された熱可塑性樹
脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
を進めた結果、末端ヒロドキシ基を有するポリカーボネ
ート系樹脂とポリスチレン系樹脂との組み合わせにおい
て、変性されていてもよい特定のブロック共重合体を添
加することにより、大幅に相溶性を改良でき、優れた流
動性と衝撃強度が得られること、ポリカーボネート系樹
脂とABS樹脂とのポリマーブレンドに比べて流動性に
優れること、さらには、有機リン化合物などの難燃剤や
フッ素樹脂などの難燃助剤を添加することにより、難燃
性および耐衝撃性が著しく向上することを見いだし、本
発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物
は、(1)全末端に占める末端ヒドロキシ基の割合が1
モル%以上のポリカーボネート系樹脂と、(2)ポリス
チレン系樹脂と、(3)ジエン系ブロック共重合体とで
構成された樹脂組成物であって、(3)ジエン系ブロッ
ク共重合体として、同一分子内に、ビニル芳香族化合
物を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン化合
物を主体とする重合体ブロック(B)とを有するブロッ
ク共重合体(C)及び/又はその水添物(D)、前記ブ
ロック共重合体(C)及び/又はその部分水添物(D)の
共役ジエン化合物に由来する二重結合をエポキシ化した
エポキシ変性ブロック共重合体(E)、および前記ブ
ロック共重合体(C)及び/又はその水添物(D)の酸変
性ブロック共重合体(F)からなる群より選ばれる少な
くとも1種を含有している。ポリカーボネート系樹脂
(1)の全末端に占める末端ヒドロキシ基の割合は5〜
40モル%程度であり、ポリスチレン系樹脂(2)は、
通常、非ABS系樹脂のゴム変性スチレン系樹脂であ
る。(1)成分と(2)成分との割合は、通常、(1)/
(2)=30/70〜95/5(重量%)程度であり、
ブロック共重合体(3)の割合は、通常、(1)成分およ
び(2)成分からなる樹脂組成物100重量部に対し
て、0.1〜20重量部程度である。さらに、必要によ
り、(1)成分および(2)成分からなる樹脂組成物に、
(4)ポリアルキレンアリーレート系樹脂および(5)ポ
リフェニレンエーテル系樹脂から選択された少なくとも
一種の樹脂を添加し、熱可塑性樹脂組成物を構成しても
よい。さらには、少なくとも(1)成分および(2)成分
からなる樹脂組成物に、(6)難燃剤(有機リン化合物
など)、(7)難燃助剤(フッ素樹脂など)を添加し、
難燃化熱可塑性樹脂組成物を構成してもよい。
【0007】
【発明の実態の形態】
[(1)ポリカーボネート系樹脂]樹脂成分(1)のポリ
カーボネート系樹脂は、慣用の方法、例えば、2価フェ
ノールとカーボネート前駆体(ホスゲン、炭酸エステル
化合物など)とを溶液法又は溶融法により反応させるこ
とによって容易に製造できる。すなわち、例えば、塩化
メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体や分子
量調節剤の存在下、(i)2価フェノールと、ホスゲン
などのカーボネート前駆体との反応、又は(ii)2価フ
ェノールと、ジフェニルカーボネートなどのカーボネー
ト前駆体とのエステル交換反応などにより製造できる。
【0008】2価フェノールとしては、例えば、2,2
−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビス
フェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタ
ン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,
2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メ
チルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテ
ル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4
−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ハイドロキノン
などが挙げられる。好ましい2価フェノールは、ビス
(4−ヒドロキシフェニル)アルカン(例えば、ビス
(4−ヒドロキシフェニル)−C1-4 アルカン)、特に
ビスフェノールAである。これらの2価フェノールはそ
れぞれ単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0009】炭酸エステル化合物としては、ジフェニル
カーボネートなどのジアリールカーボネート;ジメチル
カーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキル
カーボネートが挙げられる。分子量調節剤としては、通
常、カーボネートの重合に用いられる各種の化合物、例
えば、1価フェノール類(フェノール、p−クレゾー
ル、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェ
ノール、p−クミルフェノール、ノニルフェノールな
ど)などが挙げられる。
【0010】本発明の樹脂成分(1)であるポリカーボ
ネート系樹脂は、前記2価フェノールのうち単一の2価
フェノールを用いたホモポリマー,複数の2価フェノー
ルを用いたコポリマーであってもよく、複数のポリカー
ボネート系樹脂の混合物であってもよい。
【0011】(1)ポリカーボネート系樹脂は、機械的
強度および成形性の点から、その粘度平均分子量が、1
0,000〜100,000、好ましくは15,000〜70,000、特に15,0
00〜40,000程度の樹脂が好適である。
【0012】本発明の特色はポリカーボネート樹脂とし
て、末端ヒドロキシ基を有するポリカーボネート樹脂を
用いる点にある。ポリカーボネート系樹脂において、全
末端に占める末端ヒドロキシ基の割合は、1モル%以上
(例えば、1〜50モル%程度)、好ましくは5〜40
モル%(例えば、7〜40モル%)、特に7〜30モル
%程度である。末端ヒドロキシ基の濃度が1モル%未満
であれば、衝撃強度を大きく改善できず、50モル%を
越えると、熱安定性の低下に伴って着色や機械的特性の
低下が生じ易い。なお、ポリカーボネート系樹脂の末端
ヒドロキシル基の濃度は、2価フェノール(ビスフェノ
ールAなど)とカーボネート前駆体(ジフェニルカーボ
ネートなど)との仕込みモル比により調整でき、また、
末端を一価フェノール化合物で処理することにより調整
できる。末端ヒドロキシル基の割合は、一般に利用され
ている方法、例えば、NMRを用いて測定する方法や、
チタン法や、紫外線(UV)吸収スペクトル又は赤外線
(IR)吸収スペクトル法で直接求めたOH末端量と、
粘度法又はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(G
PC)法で得られた分子量とに基づいて計算する方法な
どで測定可能である。
【0013】[(2)ポリスチレン系樹脂]成分(2)で
あるポリスチレン系樹脂は、芳香族ビニル単量体の重合
体であり、該重合体がゴム状重合体により改質された重
合体(ゴム変性ポリスチレン系樹脂)であってもよい。
ポリスチレン系樹脂(2)としては、通常、共重性単量
体としてアクリロニトリルを含まない非アクリロニトリ
ル系のポリスチレン系樹脂が使用できる。
【0014】ポリスチレン系樹脂を形成するための芳香
族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、アルキ
ルスチレン(例えば、o−メチルスチレン、p−メチル
スチレン、m−メチルスチレンなどのビニルトルエン、
p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−
ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジ
メチルスチレンなど)、α−アルキルスチレン(例え
ば、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンなど)な
どが例示できる。これらの芳香族ビニル単量体は単独又
は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい芳香族ビ
ニル系単量体には、スチレン、ビニルトルエン、α−メ
チルスチレンなどが含まれ、特にスチレンが好ましい。
【0015】芳香族ビニル単量体は、共重合性単量体
(例えば、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)ア
クリル酸C1-10アルキルエステル、アクリル酸,メタク
リル酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、マ
レイン酸、無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸
又はその酸無水物、マレイミド,N−メチルマレイミ
ド、N−フェニルマレイミドなどの重合性イミドなど)
と併用してもよい。
【0016】ゴム変性ポリスチレン系樹脂は、芳香族ビ
ニル系重合体(ポリスチレン系樹脂)で構成されたマト
リックス中にゴム状重合体が粒子状に分散した重合体
(通常、非ABS系樹脂の耐衝撃性ポリスチレン系樹
脂)であり、ブロック共重合体,グラフト共重合体のい
ずれであってもよい。好ましいゴム変性ポリスチレン系
樹脂は、通常、ゴム状重合体の存在下、少なくとも芳香
族ビニル系単量体を含む単量体混合物を、慣用の方法
(塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)
で重合することにより得られるグラフト共重合体であ
る。
【0017】ゴム状重合体としては、例えば、ジエン系
ゴム[ポリブタジエン(低シス型又は高シス型ポリブタ
ジエン)、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重
合体など]、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル
ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)などが挙
げられる。これらのゴム状重合体は単独で又は二種以上
混合して使用できる。ゴム状重合体としては市販品を使
用できる。好ましいゴム状重合体は、共役1,3−ジエ
ン又はその誘導体(2−クロロ−1,3−ブタジエン、
1−クロロ−1,3−ブタジエン)の重合体、特にジエ
ン系ゴム(ポリブタジエン(ブタジエンゴム)、イソプ
レンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体など)であ
る。
【0018】ゴム変性ポリスチレン系樹脂を含めてポリ
スチレン系樹脂の分子量は、特に制限されないが、例え
ば、重量平均分子量1×104 〜100×104 、好ま
しくは5×104 〜50×104 、特に10×104
50×104 程度である。ゴム変性ポリスチレン系樹脂
において、ゴム状重合体の含有量は、例えば、2〜30
重量%、好ましくは5〜25重量%、特に5〜20重量
%程度である。ポリスチレン系樹脂で構成されたマトリ
ックス中に分散するゴム状重合体の形態は、特に制限さ
れず、コア/シェル構造、オニオン構造、サラミ構造な
どを含んでいてもよい。分散相を構成するゴム状重合体
の粒子径は、樹脂組成物の用途に応じて、例えば、体積
平均粒子径0.1〜10μm、好ましくは0.2〜7μ
m、特に0.5〜5μm程度の範囲から選択できる。
【0019】[(3)ブロック共重合体]本発明の特色
は、前記末端ヒドロキシル基を有するポリカーボネート
系樹脂(1)とポリスチレン系樹脂(2)とジエン系ブロ
ック共重合体(3)とを組み合わせている点にある。成
分(3)であるブロック共重合体には、同一分子内
に、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック
(A)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック
(B)とを有するブロック共重合体(C)及び/又はその
水添物(D)、前記ブロック共重合体(C)及び/又は
その部分水添物(D)の共役ジエン化合物に由来する二
重結合をエポキシ化したエポキシ変性ブロック共重合体
(E)、並びにブロック共重合体(C)及び/又はその
水添物(D)の酸変性ブロック共重合体(F)が含まれ
る。これらのブロック共重合体(C)〜(F)は単独で又
は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】ブロック共重合体(C)を構成する重合体
ブロック(A)の主体である「ビニル芳香族化合物」と
しては、スチレン、α−アルキルスチレン(α−メチル
スチレンなど)、ビニルトルエン(p−メチルスチレン
など)、p−t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、
1,1−ジフェニルスチレンなどが例示でき、これらの
うちスチレンが好ましく用いられる。これらのビニル芳
香族化合物は1種又は2種以上組み合わせて使用でき
る。
【0021】ブロック共重合体(C)を構成する重合体
ブロック(B)の主体である「共役ジエン化合物」とし
ては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエ
ン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレ
ン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−
1,3−ブタジエンなどが例示できる。これらの共役ジ
エン化合物は1種又は2種以上組み合わせて使用でき
る。これらのうちブタジエン、イソプレン及びこれらの
組合わせが好ましい。
【0022】ブロック共重合体(C)は同一分子内にビ
ニル芳香族化合物で構成された重合体ブロック(A)と
共役ジエン化合物で構成された重合体ブロック(B)と
を有する。ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との
共重合(重量)比は、ビニル芳香族化合物/共役ジエン
化合物=5/95〜95/5、好ましくは10/90〜
80/20、特に10/90〜60/40程度の範囲か
ら選択できる。
【0023】ブロック共重合体(C)の分子構造は、直
鎖状、分岐状、放射状又はこれらの任意の組合わせのい
ずれであってもよい。例えば、重合体ブロック(A)と
重合体ブロック(B)とが、A−B、A−B−A、A−
B−A−B、(A−B−)Si、A−B−A−B−Aな
どの構造を有する場合が例示できる。特に、好ましいブ
ロック共重合体には、末端にBブロックを有するジエン
系ブロック共重合体、例えば、直鎖状A−Bブロック型
構造、直鎖状A−B−A−Bブロック型構造を有するブ
ロック共重合体が含まれる。
【0024】ブロック共重合体(C)の数平均分子量
は、例えば、5,000〜600,000、好ましくは10,000〜500,
000(例えば、50,000〜500,000)程度の範囲から選択で
きる。ブロック共重合体(C)の分子量分布[重量平均
分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/
Mn)]は10以下(例えば、1〜10)、特に1.5
〜7程度であるのが好ましい。このような分子量分布範
囲では各成分との適度な相溶性が得られる。
【0025】なお、ブロック共重合体(C)の共役ジエ
ン化合物に由来する不飽和結合は、部分的及び全体的に
水添され、完全又は部分水添共重合体(D)を形成して
もよい。ブロック共重合体(C)や水素添加物(D)のう
ち部分水添物は、変性に供することができる。また、酸
変性ブロック共重合体(F)の調製には、ブロック共重
合体(C)の部分又は完全水素添加物(D)も利用でき
る。
【0026】エポキシ変性ブロック共重合体(E)は、
上記ブロック共重合体(C)及び/又はその部分水添物
(D)を、不活性溶媒中でハイドロパーオキサイド類、
過酸類などのエポキシ化剤と反応させることより得られ
る。エポキシ化に際して使用するエポキシ化剤の使用量
には厳密な制限がなく、エポキシ化剤の種類、所望され
るエポキシ化度、使用する個々のブロック共重合体
(C)及び/又はその部分水添物(D)によって適宜選択
することができるが、最終的に得られるエポキシ変性ブ
ロック共重合体(E)のエポキシ当量が140〜270
0程度となるように、エポキシ化剤の量を選択するのが
好ましい。エポキシ変性ブロック共重合体(E)のエポ
キシ当量は、より好ましくは200〜2000(例え
ば、300〜1500)程度である。エポキシ当量が1
40より小さいと、重合体の弾性的な性質が発現しにく
くなり、2700より大きいとエポキシ化による特異的
な物性が発現しにくくなり、好ましくない。なお、エポ
キシ当量は、下記式: エポキシ当量=1600/X (式中、Xはエポキシ変性ブロック共重合体中のオキシ
ラン酸素濃度(重量%)を示す)で算出され、オキシラ
ン酸素1モル当たりのエポキシ変性ブロック共重合体の
重量を示す。オキシラン酸素濃度は、臭化水素の酢酸溶
液を用いて滴定により測定できる。
【0027】酸変性ブロック共重合体(F)は、上記ブ
ロック共重合体(C)及び/又はその水添物(D)をカル
ボン酸又はその誘導体との反応(グラフト化反応など)
に供することにより、変性させた変性樹脂である。変性
剤としてのカルボン酸又はその誘導体としては、(メ
タ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイ
ン酸、フマル酸などの重合性不飽和カルボン酸類が例示
でき、特にカルボン酸無水物(代表的には無水マレイン
酸)が好ましい。
【0028】本発明の好ましい態様において、前記ポリ
スチレン系樹脂(2)のドメイン(分散相)がジエン系
ブロック共重合体(3)により包囲又はカプセル化され
ている。すなわち、ジエン系ブロック共重合体(3)が
相溶化剤として機能し、ポリカーボネート系樹脂(1)
で構成されたマトリックスと、ポリスチレン系樹脂
(2)で構成されたドメインとの界面には、ほぼ全体に
亘りジエン系ブロック共重合体(3)が介在している。
【0029】図1は、ヒドロキシル基を末端に有するビ
スフェノールA型ポリカーボネート(1)とポリスチレ
ン(2a)とエポキシ変性ブロック共重合体(相溶化剤)
(3)とで構成された熱可塑性樹脂組成物の一例を示す
電子顕微鏡写真の模写図であり、図2は前記熱可塑性樹
脂組成物から相溶化剤(3)を除いた樹脂組成物を示す
電子顕微鏡写真の模写図である。図2に示されるよう
に、相溶化剤を除いた樹脂組成物では、ポリカーボネー
トで構成されたマトリックス1と、ポリスチレンで構成
されたドメイン2との界面には、相溶化剤が存在しな
い。これに対して、本発明の熱可塑性樹脂組成物では、
ポリカーボネートで構成されたマトリックス1と、ポリ
スチレンで構成されたドメイン2との界面には、ジエン
系ブロック共重合体3が相溶化剤として介在しており、
ブロック共重合体3内にドメイン2が内包されている。
前記界面でのブロック共重合体3層の厚みは、全体又は
全周に亘り均一又は不均一のいずれであってもよい。ブ
ロック共重合体3層の厚みは、ブロック共重合体の使用
量にも依存するので一概に断定できないが、例えば、
0.5〜500nm(例えば、1〜100nm)、好ま
しくは3〜50nm程度である。電子顕微鏡写真におい
て前記マトリックスとドメインとの界面に存在する成分
がブロック共重合体3であることは、オスミウム酸で染
色されていることにより確認できる。
【0030】このようなカプセル化構造を有する形態の
ポリマーブレンドを形成するためには、前記例示の種々
のジエン系ブロック共重合体(3)が使用できるが、ジ
エン系ブロック共重合体(3)のうちエポキシ変性共重
合体(E)が好ましい。また、ジエン系ブロック共重合
体(3)のうち、末端にBブロックを有するジエン系ブ
ロック共重合体(特に直鎖状A−Bブロック型構造、直
鎖状A−B−A−Bブロック型構造を有するブロック共
重合体、中でもエポキシ変性共重合体(E))が好まし
い。
【0031】[(4)ポリアルキレンアリーレート系樹
脂]本発明の成分(4)であるポリアルキレンアリーレ
ート系樹脂とは、芳香族ジカルボン酸又はその反応性誘
導体(例えば、ジメチルエステルなどの低級アルキルエ
ステル又は無水物)で構成された芳香族ジカルボン酸成
分と、脂肪族及び/又は脂環族ジオールのうち少なくと
も一種を含み、かつ脂肪族,脂環族および芳香族ジオー
ルから選択されたジオールとの反応生成物、又はこれら
の反応生成物の混合物である。ポリアルキレンアリーレ
ート系樹脂は慣用の方法、例えば、エステル化法やエス
テル交換法などにより製造できる。
【0032】芳香族ジカルボン酸成分は、少なくともテ
レフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタ
レンジカルボン酸など)、又はそれらの反応性誘導体
(テレフタル酸ジメチルなどのC1-4 アルキルエステル
など)などを含んでいる。好ましい芳香族ジカルボン酸
成分は、少なくともテレフタル酸又はその反応性誘導体
で構成できる。芳香族ジカルボン酸成分は、他のジカル
ボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4′−
ジフェニルジカルボン酸などの炭素数8〜14程度の芳
香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シク
ロヘキサン二酢酸などの炭素数8〜14程度の脂環族ジ
カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼ
ライン酸などの炭素数4〜12程度の脂肪族ジカルボン
酸)から選択された少なくとも一種を含有していてもよ
い。
【0033】ジオール成分は、例えば、脂肪族アルキレ
ンジオール(エチレングリコール、1,3−プロパンジ
オール、1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,3
−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5
−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−
エチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,
4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,
4−および−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−
1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3
−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオールなどの
2-12脂肪族ジオール、好ましくは直鎖C2-6 アルキレ
ングリコール、特に直鎖C2-4 アルキレングリコールな
ど)、脂環族ジオール(1,4−ジヒドロキシシクロヘ
キサンなどのシクロヘキサンジオール、1,4−シクロ
ヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ
シクロヘキシル)プロパン、2,4−ジヒドロキシ−
1,1,3,3−テトラメチルシクロブタンなど)から
選択された少なくとも一種を含んでいる。
【0034】ジオール成分は、さらに、オキシアルキレ
ングリコール(ジエチレングリコール,トリエチレング
リコール,ジプロピレングリコール,トリプロピレング
リコールなど)、芳香族ジオール(例えば、1,4−ジ
(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス
(3−β−ヒドロキシエトキシフェノキシ)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロ
パン、2,2−ビス(4−ヒドロキシプロポキシフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシプロピル
フェニル)−プロパンなどの炭素数6〜21程度のジオ
ールなど)などと併用してもよい。これらのジオール成
分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】好ましいジオール成分は、エチレングリコ
ール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキ
サンジメタノールからなる群から選択された少なくとも
一種のジオールを含有している。
【0036】ポリアルキレンアリーレート系樹脂は、必
要により、比較的少量の多価アルコール(グリセリン、
トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペ
ンタエリトリトールなど)や多価カルボン酸(トリメシ
ン酸、トリメリト酸など)又はその誘導体を用いること
により、枝分かれ構造を有していてもよい。
【0037】好ましいポリアルキレンアリーレート系樹
脂は、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテ
レフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリ
2- 4 アルキレンテレフタレート)、ポリアルキレンナ
フタレート(ポリエチレンナフタレート、ポリブチレン
ナフタレートなどのポリC2-4 アルキレンナフタレー
ト)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメレンテレフタ
レート)や、これらの共重合体(コポリエステル)であ
る。ポリアルキレンアリーレート系樹脂の分子量は、例
えば、重量平均分子量10000〜1000000、好ましくは2000
0〜500000程度の範囲から選択できる。
【0038】[(5)ポリフェニレンエーテル系樹脂]
本発明の(5)成分であるポリフェニレンエーテル系樹
脂とは、下記の一般式(I)及び/又は(II)で表され
る繰り返し単位を有する単独重合体あるいは共重合体で
ある。これらのポリフェニレンエーテル系樹脂は単独で
又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
【化1】 [式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 はそれぞ
れ独立して炭素数1〜4のアルキル基(メチル,エチ
ル,プロピル,ブチル,t−ブチル基など)、アリール
基(フェニル基など)又は水素原子を示す。ただし、R
5 、R6 は同時に水素ではない] ポリフェニレンエーテル系樹脂の単独重合体としては、
例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレ
ン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4
−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−
1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6
−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ
(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレ
ン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,
4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n
−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−
エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エー
テル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,
4−フェニレン)エーテルなどが挙げられる。これらの
樹脂のうち、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニ
レン)エーテルが特に好ましい。
【0040】ポリフェニレンエーテル系共重合体とは、
フェニレンエーテル構造を主たる単量単位とする共重合
体であり、前記単独重合体を形成する単量体(特に2,
6−ジメチルフェノールなど)と他のフェノール類との
共重合体、例えば、2,6−ジメチルフェノールと、
2,3,6−トリメチルフェノールおよびo−クレゾー
ルから選択された少なくとも一種との共重合体などが例
示できる。
【0041】[(6)難燃剤]本発明の成分(6)である
難燃剤には、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系
難燃剤などが含まれ、これらの難燃剤は単独で又は二種
以上組合せて使用できる。
【0042】ハロゲン系難燃剤には、例えば、臭素原子
及び/又は塩素原子(特に臭素原子)を含む有機化合
物、例えば、ハロゲン化ビスフェノール類(テトラブロ
モビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA型
エポキシ樹脂オリゴマー、ブロム化ビスフェノール型フ
ェノキシ樹脂など)、芳香族ハロゲン化合物(デカブロ
モジフェニルオキサイドなど)、ハロゲン化ポリカーボ
ネート(ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネー
ト)、ハロゲン化芳香族ビニル系重合体(ブロム化ポリ
スチレン、ブロム化架橋ポリスチレンなど)、ハロゲン
化ポリフェニレンエーテル(ブロム化ポリフェニレンオ
キサイド、ポリジブロモフェニレンオキサイド、デカブ
ロモジフェニルオキサイドビスフェノール縮合物な
ど)、ハロゲン化シアヌレート樹脂、ハロゲン含有リン
酸エステルなどが挙げられる。
【0043】本発明の樹脂組成物に添加してもよいリン
系難燃剤は、リン原子を有する化合物であれば特に制限
されず、有機リン化合物(リン酸エステル、亜リン酸エ
ステル、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ビホスフィ
ン、ホスホニウム塩、ホスフィン酸又はその塩など)、
無機系リン酸塩などが含まれる。有機リン化合物のうち
リン酸エステルとしては、例えば、脂肪族リン酸エステ
ル(トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェー
ト、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシ
ル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、
トリオレイルホスフェート、ジブチルホスフェート、モ
ノブチルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホス
フェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロ
イルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリ
ロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジシクロペ
ンチルハイポジフォスフェートなど)、芳香族リン酸エ
ステル(トリフェニルホスフェート、トリクレジルホス
フェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソ
プロピルフェニル)ホスフェート、トリス(o−フェニ
ルフェニル)ホスフェート、トリス(p−フェニルフェ
ニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレ
ジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホ
スフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホス
フェート、o−フェニルフェニルジクレジルホスフェー
ト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェー
ト、テトラフェニル−m−フェニレンジホスフェート、
テトラフェニル−p−フェニレンジホスフェート、フェ
ニル・レゾルシン・ポリホスフェート、ビスフェノール
A・ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール
A・ポリフェニルホスフェート、ジピロカテコールハイ
ポジフォスフェートなど)、脂肪族−芳香族リン酸エス
テル(ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェー
ト、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフ
ェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチル
ホスフェート、フェニルネオペンチルフォスフェート、
ペンタエリスリトールジフェニルジフォスフェート、エ
チルピロカテコールフォスフェートなど)などの正燐酸
エステル及びこれらの縮合物などの化合物が挙げられ
る。
【0044】有機リン化合物のうち亜燐酸エステルに
は、例えば、芳香族ホスファイト(トリフェニルホスフ
ァイト、トリスノニルフェニルホスファイト、フェニル
ピロカテコールフォスファイトなど)、脂肪族ホスファ
イト(トリストリデシルホスファイト、ジブチルハイド
ロジエンホスファイト、メチルネオペンチルフォスファ
イト、ペンタエリスリトールジエチルジフォスファイ
ト、ジネオペンチルハイポフォスファイトなど)などの
亜燐酸エステル及びこれらの縮合物が含まれる。有機リ
ン化合物には、メチルネオペンチルフォスフェート、ト
リフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィ
ンオキシド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホ
スホン酸ジエチルなども含まれる。これら有機リン化合
物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】前記リン系難燃剤としての無機系リン酸塩
には、例えば、ポリリン酸アンモニウムなどが含まれ
る。リン系難燃剤は赤リンであってもよい。この赤リン
は予め表面が処理された赤リンであってもよい。赤リン
の表面処理としては、金属水酸化物(水酸化マグネシウ
ム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化チタンな
ど)の被膜による被覆処理、上記金属水酸化物および熱
硬化性樹脂の被膜による被覆処理、前記金属水酸化物の
被膜と熱硬化性樹脂の被膜とで構成された複数層の被膜
による被覆処理などが例示できる。
【0046】好ましいリン系難燃剤は、リン原子に直接
結合するエステル性酸素原子を少なくとも1つ以上有す
る有機リン化合物(有機リン酸エステル)またはその縮
合体である。このような有機リン化合物は、熱可塑性樹
脂組成物への添加により難燃性を付与すると共に耐衝撃
性を向上させる。特に、リン酸エステルのうち、芳香族
リン酸エステル(トリフェニルフォフェートなど)また
はその縮合体が好ましい。芳香族リン酸エステルにおい
ては、芳香環に置換した置換基の全炭素数は適当に選択
でき、10〜20(例えば、12〜18)程度であって
もよい。アルキル基が置換した芳香族系リン酸エステル
としては、ビスC5-10アルキルフェニル−フェニル−フ
ォスフェート(ビスノニルフェニルフェニルフォスフェ
ートなど)などが例示できる。リン酸エステルのうち、
ヒドロキシル基を有する芳香族リン酸エステル(例え
ば、トリクレジルフォスフェート,トリフェニルフォス
フェートなどの芳香族リン酸エステルにおいて、芳香環
に少なくとも1つのフェノール性水酸基が置換したリン
酸エステル)も好ましい。このようなリン酸エステルに
は、例えば、レゾルシニルジフェニルフォスフェート、
ビスフェノールAジフェニルフォスフェートなどが例示
できる。
【0047】前記無機系難燃剤としては、種々の金属化
合物、例えば、水酸化カルシウム、ドロマイト、ハイド
ロタルサイトなどの金属水酸化物、酸化スズ、酸化ジル
コニウムなどの金属酸化物、塩基性であってもよい炭酸
マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウ
ムなどの金属炭酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メ
タホウ酸バリウムなどの金属ホウ酸塩などが例示でき
る。これらの無機系難燃剤は単独で又は二種以上使用で
きる。
【0048】[(7)難燃助剤]本発明の成分(7)であ
る難燃助剤としては、例えば、トリアジン化合物、ノボ
ラック樹脂、金属化合物、シリコーン化合物(シリコー
ン樹脂やシリコーンオイル)、シリカ、アラミド繊維、
ポリアクリロニトリル繊維、フッ素系樹脂などが例示で
き、高度な難燃性を付与するために前記難燃剤(F)と
併用して用いられる。難燃助剤としては、これらの化合
物から選択された少なくとも一種の難燃助剤が使用でき
る。
【0049】トリアジン化合物としては、難燃性を向上
させるのに有効なトリアジン骨格を有する化合物、例え
ば、メラミン又はその誘導体(メラム、メレム、メロ
ン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、メラミン
樹脂、BTレジンなど)、グアナミン又はその誘導体
(サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグル
タログアナミン)などが例示できる。
【0050】ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデ
ヒド類とを酸触媒(硫酸,塩酸,リン酸など)の存在下
で縮合することにより得られ、燃焼時の火種の滴下を抑
制するドリップ防止剤として有効である。ノボラック樹
脂の原料であるフェノール類としては、例えば、フェノ
ール、C 1-20アルキル基(メチル、エチル、イソプロピ
ル、t−ブチル、n−オクチル、ステアリル基など)、
アリール基(フェニル基など)、アルコキシ基(メトキ
シ、エトキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ
など)などから選択された1又は複数の置換基を有する
フェノール類(o−,m−又はp−クレゾールなどのク
レゾール類など)、ピロカテコール、レゾルシノール、
ハイドロキノン、サチリルアルデヒド、サリチル酸、p
−ヒドロキシ安息香酸、p−又はo−シアノフェノール
などが例示できる。アルデヒド類としては、ホルムアル
デヒド、アセトアルデヒト、n−プロパナール、イソプ
ロパナール、n−ブタナール、イソブチルアルデヒド、
ベンズアルデヒドなどが例示できる。
【0051】金属化合物としては、金属酸化物(酸化ア
ルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化
マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリ
ブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化
アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン
などの金属酸化物単体又はこれらの複合金属酸化物な
ど)や金属粉(前記金属酸化物に対応する金属又はこれ
らの合金)が使用できる。
【0052】シリコーン化合物には、シリコーン樹脂と
シリコーンオイルが含まれる。シリコーン樹脂は、オル
ガノハロシランを加水分解して重合することにより得る
ことができる。シリコーンオイルは、ポリジメチルシロ
キサンに代表されるポリジオルガノシロキサンのほか、
種々の置換基(C1-6 アルキル基、C6-12アリール基、
(メタ)アクリロイル基、ビニル基など)を有するポリ
ジオルガノシロキサンであってもよい。前記シリコーン
オイルの粘度は、温度25℃において、例えば、500〜
1,000,000センチポイズ、好ましくは10,000〜500,000セ
ンチポイズ、さらに好ましくは90,000〜150,000センチ
ポイズ程度である。
【0053】シリカ(無定形二酸化ケイ素など)は、シ
ランカップリング剤(例えば、炭化水素基、ビニル基、
エポキシ基、アミノ基などから選択された少なくとも一
種の官能基を有するシランカップリング剤など)などで
表面処理してもよい。
【0054】アラミド繊維は、イソフタルアミドや、ポ
リパラフェニレンテレフタルアミドを溶媒(アミド系溶
媒や硫酸)に溶解し、溶液紡糸することにより調製で
き、平均繊維径は、通常、1〜500μm程度、平均繊
維長は、通常、0.1〜10mm程度である。ポリアク
リロニトリル繊維の平均繊維径は、1〜500μm程
度、平均繊維長は0.1〜10mm程度の範囲から選択
できる。
【0055】難燃助剤としてのフッ素樹脂は、数平均分
子量Mnが10,000以上の高分子量であり、ガラス
転移温度が−30℃以上(好ましくは40〜130℃、
より好ましくは100〜130℃程度)であるのが望ま
しい。フッ素樹脂においてフッ素含有量は、50〜76
重量%、好ましくは65〜76重量%、さらに好ましく
は70〜76重量%程度である。さらに、フッ素樹脂は
粉粒体として使用され、フッ素樹脂の平均粒径は、例え
ば、0.05〜1,000μm、好ましくは0.08〜
20μm程度である。フッ素樹脂の密度は、1.2〜
2.3g/cm3程度である。
【0056】フッ素樹脂は、耐ドリップ性をさらに向上
させるのに有効である。フッ素樹脂としては、フッ素含
有ビニル単量体の単独重合体又は共重合体、フッ素含有
ビニル単量体と非フッ素系ビニル単量体(エチレン,プ
ロピレンなど)との共重合体、例えば、ポリモノフルオ
ロエチレン、ポリジフルオロエチレン、ポリトリフルオ
ロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化
ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロ
プロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレ
ン共重合体などが例示できる。好ましいフッ素樹脂に
は、ポリテトラフルオロエチレンが含まれる。これらの
フッ素樹脂は単独で又は2種以上を併用して添加するこ
とができる。
【0057】[添加剤]本発明の樹脂組成物は必要によ
り、流動性改善剤、例えば、芳香族ビニル単量体(スチ
レンなど)と(メタ)アクリル酸エステル単量体((メ
タ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルなど
の(メタ)アクリル酸C1-8 アルキルエステルなど)と
の共重合体、脂肪族炭化水素類(流動パラフィン、パラ
フィン、マイクロリスタリンワックス、ポリオレフィン
ワックス、これらの部分酸化物などのワックス類)、高
級脂肪酸(カプロン酸、パルミチン酸、ステアリン酸な
どの飽和脂肪酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸)、
高級脂肪酸エステル(ステアリン酸トリグリセライドな
ど)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、オレイ
ン酸アミド、エチレンビスステアリルアミドなど)、高
級アルコール(ステアリルアルコールなど)、金属石鹸
などを含んでいてもよい。
【0058】さらに、本発明の樹脂組成物は、種々の添
加剤、例えば、タルク(例えば、平均粒径0.1〜50
μm程度のタルク)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収
剤、耐光安定剤、熱安定剤など)、補強材、帯電防止
剤、滑剤、離型剤、充填剤、色相改良剤、着色剤、可塑
剤などを含んでいてもよい。
【0059】[各成分の割合]本発明の熱可塑性樹脂組
成物における各成分の配合割合は次の通りである。ポリ
カーボネート系樹脂(1)とポリスチレン系樹脂(2)と
からなる樹脂組成物(以下、「PC−PS樹脂組成物」
と称す)において、各成分の配合割合は、ポリカーボネ
ート系樹脂/ポリスチレン系樹脂=30/70〜95/
5(重量%)、好ましくは50/50〜90/10(重
量%)、さらに好ましくは60/40〜80/20(重
量%)程度である。ポリカーボネート系樹脂の割合が3
0重量%未満であると熱変形温度が低下しやすく、95
重量%を超えると成形加工性が低下しやすい。
【0060】ジエン系ブロック共重合体(3)(すなわ
ちブロック共重合体(C)ないし酸変性ブロック共重合
体(F))の配合量は、PC−PS樹脂組成物100重
量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜1
0重量部、さらに好ましくは1〜5重量部程度である。
配合量が0.1重量部未満ではポリカーボネート系樹脂
とポリスチレン系樹脂との相溶性の改良効果が十分でな
く、得られた熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が劣る場
合がある。一方、20重量部を超えると難燃性に悪影響
を与え、曲げ弾性率及び熱変形温度も低下する場合があ
る。ポリアルキレンアリーレート系樹脂(4)の配合量
はPC−PS樹脂組成物100重量部に対して0.1〜
20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好
ましくは0.5〜5重量部程度である。ポリアルキレン
アリーレート樹脂は必ずしも必要ではないが、ポリアル
キレンアリーレート系樹脂の添加により、ポリカーボネ
ート系樹脂とポリスチレン系樹脂の相溶性をより向上さ
せることができ、面衝撃強度を改善できる。なお、ポリ
アルキレンアリーレート系樹脂の添加量が20重量部を
超えると難燃性に悪影響を与える他、アイゾット衝撃強
度が低下しやすくなる。
【0061】ポリフェニレンエーテル系樹脂(5)の配
合量は、PC−PS樹脂組成物100重量部に対して
0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、
さらに好ましくは0.5〜5重量部程度である。ポリフ
ェニレンエーテル系樹脂は添加しなくてもよいが、添加
により、ポリカーボネート系樹脂とポリスチレン系樹脂
の相溶性をより向上させ、面衝撃強度を改善できるとと
もに、難燃性も向上する。ポリフェニレンエーテル系樹
脂の添加量が、20重量部を超えると、アイゾット衝撃
強度が低下しやすくなる。
【0062】難燃剤(6)の含有量は、難燃剤の種類に
応じて、例えば、PC−PS樹脂組成物100重量部に
対して1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部、さ
らに好ましくは8〜20重量部程度である。難燃剤の使
用量が1重量部未満では難燃効果が十分ではなく、40
重量部を超えると難燃化熱可塑性樹脂組成物の機械的特
性が低下しやすい。好ましい難燃剤である有機リン化合
物(特にリン酸エステル又はその縮合体)の配合量は、
PC−PS樹脂組成物100重量部に対して1〜40重
量部、好ましくは3〜30重量部、さらに好ましくは5
〜20重量部程度である。
【0063】難燃助剤(7)成分の配合量は、難燃助剤
の種類に応じて、PC−PS樹脂組成物100重量部に
対して30重量部以下(例えば、0.01〜30重量
部)、好ましくは0.01〜10重量部程度の範囲から
選択できる。好ましい難燃助剤であるフッ素樹脂の使用
量は、PC−PS樹脂組成物100重量部に対して0.
05〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部程度であ
る。フッ素樹脂の使用量が前記範囲であれば、難燃剤
(特に有機リン化合物)との組み合わせにより、樹脂の
可塑化によるドリッピングを充分に防止し、しかも得ら
れた難燃化樹脂組成物の機械的特性を損なうこともな
い。そのため、好ましい難燃助剤であるフッ素系樹脂
は、補助的な難燃剤として、上記有機リン化合物と組合
わせて使用するのが有利である。なお、フッ素系樹脂な
どの難燃助剤を添加しなくても実用的な難燃性が得ら
れ、かつ流動性、耐衝撃性に優れる難燃化熱可塑性樹脂
組成物を得ることができる。
【0064】さらに、流動性改善剤の配合量は、必要に
より、例えば、PC−PS樹脂組成物100重量部に対
して0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量
部、さらに好ましくは、0.1〜2重量部の範囲から選
択できる。
【0065】本発明の熱可塑性樹脂組成物及び難燃化熱
可塑性樹脂組成物は、慣用の手段を利用して、各成分を
混合することにより調製できる。例えば、本発明の樹脂
組成物は、所定量の各成分を、必要によりヘンシェルミ
キサー、タンブラーブレンダー、ニーダーなどの混合機
で予備混合した後、押出機で混練したり、加熱ロール、
バンバリーミキサーなどの混練機で溶融混練し、ペレッ
ト化又は粉砕処理することにより製造できる。
【0066】本発明では、従来困難であったポリカーボ
ネート系樹脂とゴム変性ポリスチレン系樹脂などのポリ
スチレン系樹脂とのポリマーブレンドを有効に改質でき
る。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物及び難燃化熱可
塑性樹脂組成物は、成形加工性、耐衝撃性、熱安定性、
難燃性に優れている。そのため、本発明の樹脂組成物
は、OA機器、通信機器、家電製品用ハウジング、シャ
ーシ、その他の成形部材、自動車用成形部材などを成形
するのに有用である。本発明の樹脂組成物の成形には、
射出成形、押し出し成形、ブロー成形などの種々の成形
法が利用できるが、通常、射出成形により成形品を得る
場合が多い。
【0067】
【発明の効果】本発明では、ポリカーボネート系樹脂と
ポリスチレン系樹脂を主たる樹脂成分とするポリマーブ
レンドであっても、特定のポリカーボネート系樹脂とポ
リスチレン系樹脂とジエン系ブロック共重合体とを組み
合わせることにより、相溶性を大幅に改善でき、ポリカ
ーボネート系樹脂とABS系樹脂とのポリマーブレンド
に匹敵する流動性および成形加工性と、耐衝撃強度を備
えた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。さらに、
上記ポリマーブレンドを有効に改質できるとともに、難
燃剤や難燃助剤などの添加により、高い難燃性が付与さ
れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。特に、難
燃剤や難燃助剤の選択により、難燃性、耐衝撃性及び成
形加工性に優れるだけでなく、安全性および非腐食性の
高い非ハロゲン系の難燃化熱可塑性樹脂組成物を得るこ
とができる。
【0068】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。なお、下記実施例及び比較例における評価方法は
次の通りである。
【0069】(1)耐衝撃強度(単位:kg・cm/cm) 耐衝撃強度は、ノッチ付きのアイゾット衝撃強度を尺度
とし、厚み1/4インチの試験片で評価した。 (2)面衝撃強度(落錘衝撃強度、単位kgf・cm) 荷重4kg、ポンチ径=20Rの治具を使用し、厚み2
mmの平板試験片で落錘衝撃強度を評価した。 (3)難燃性(UL94) 難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL94に規
定されている垂直燃焼性試験(94V−0)に準拠し、
厚み1/16インチの試験片(バーサンプル)で評価し
た。 (4)流動性(単位:mm) スパイラルフロー(断面形状:厚み2mm,幅20m
m)の流動長を、シリンダー温度250℃、金型温度6
0℃、射出圧力500kg/cm2 で測定した。
【0070】実施例および比較例で使用したポリスチレ
ン系樹脂(2)を下記の合成例にしたがって調製した。 合成例1 スチレンモノマー90重量部、ポリブタジエンゴム(日
本ゼオン(株)製,BR1220SG)10重量部を溶
解した混合液100重量部に対して、エチルベンゼン1
0重量部とジターシャリーブチルパーオキサイド(DT
BPO)0.015重量部を添加して溶解させ、得られ
た原料液を撹拌機付き槽型反応器に投入して重合した。
反応器内の重合温度は120〜150℃に調節した。ス
チレンの重合転化率79%になるまで重合を進行させ、
この重合液に、二軸押出機において230℃の加熱処理
を施しながら、減圧下、揮発性成分を除去し、ペレット
化した。得られたゴム変性ポリスチレン樹脂を分析した
結果、ゴム含量は8.9重量%、ゴムの体積平均粒子径
は2.1μm、重量平均分子量Mw=215,000で
あった。合成例1で得られたゴム変性ポリスチレン系樹
脂をHIPS−1と称する。
【0071】合成例2 スチレンモノマーとポリブタジエンゴム(日本ゼオン
(株)製,BR1220SG)の仕込量をスチレンモノ
マー85重量部、ポリブタジエンゴム15重量部とする
以外は、合成例1と同様にしてゴム変性ポリスチレン樹
脂を得た。得られたゴム変性ポリスチレン樹脂を分析し
たところ、ゴム含量は11.5重量%、ゴムの体積平均
粒子径は1.8μm、重量平均分子量Mw=220,0
00であった。合成例2のゴム変性ポリスチレン系樹脂
をHIPS−2と称する。
【0072】実施例で使用した相溶化剤であるエポキシ
変性ブロック共重合体を下記の合成例に従って調製し
た。 合成例3 撹拌器、還流冷却管及び温度計を備えたジャケット付反
応器にスチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエンブ
ロック共重合体[旭化成工業(株)製,アサフレックス
810,スチレン/ブタジエン=70/30(重量
比)]300g、酢酸エチル900gを仕込み溶解させ
てブロック共重合体溶液を調製した。次いで、このブロ
ック共重合体溶液に、過酢酸の30重量%酢酸エチル溶
液130gを連続滴下させ、撹拌下、40℃で3時間エ
ポキシ化反応を行った。反応混合液を常温に戻して水洗
し、反応器より取り出し、減圧乾燥により溶剤を除去し
た。得られたエポキシ変性ブロック共重合体Aのエポキ
シ当量は767であった。
【0073】合成例4 攪拌器、還流冷却管及び温度計を備えたジャケット付反
応器にスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合
体[日本合成ゴム(株)製,TR2000,スチレン/
ブタジエン=40/60(重量比)]300g、酢酸エ
チル1500gを仕込み溶解させてブロック共重合体溶
液を調製した。次いで、このブロック共重合体溶液に、
過酢酸の30重量%酢酸エチル溶液169gを連続滴下
させ、撹拌下40℃で3時間エポキシ化反応を行った。
反応混合液を常温に戻して水洗し、反応器より取り出
し、多量のメタノールを加えて重合体を析出させた。析
出物を瀘別後水洗し、乾燥してエポキシ変性ブロック共
重合体を得た。得られたエポキシ変性ブロック共重合体
Bのエポキシ当量は510であった。
【0074】実施例および比較例では、次の材料を用い
た。 ポリカーボネート系樹脂(1): (1-1)ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(全
末端に占める末端ヒドロキシ基の割合0モル%,数平均
分子量Mn=22000) (1-2)ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(全
末端に占める末端ヒドロキシ基の割合7.4モル%,数
平均分子量Mn=22000) (1-3)ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(全
末端に占める末端ヒドロキシ基の割合22.4モル%,
数平均分子量Mn=22000) なお、ポリカーボネート系樹脂(1-2)(1-3)の末端ヒ
ドロキシル基の濃度は、ビスフェノールAとジフェニル
カーボネートとの仕込みモル比により調整した。全末端
に占める末端ヒドロキシ基の割合は13C−NMRより求
めた(使用機器:JEOL製 JNM−A500高分解
能NMR) ゴム変性ポリスチレン系樹脂(2): (2-1)合成例1で得られたHIPS−1 (2-2)合成例2で得られたHIPS−2 ジエン系ブロック共重合体(3): (3-1)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重
合体 合成例4で用いたスチレン−ブタジエンブロック共重合
体 (日本合成ゴム(株)製,TR2000,スチレン/ブ
タジエン=40/60(重量比)) (3-2)スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン
ブロック共重合体 合成例3で用いたスチレン−ブタジエンブロック共重合
体 (旭化成工業(株)製,アサフレックス810,スチレ
ン/ブタジエン=70/30(重量比)) (3-3)合成例3で得られたエポキシ変性ブロック共重
合体A (3-4)合成例4で得られたエポキシ変性ブロック共重
合体B ポリアルキレンアリーレート系樹脂(4):エチレング
リコールを共重合成分として含有するポリ(1,4−シ
クロヘキサンジメチレンテレフタレート) [PCTG;イーストマンケミカル社製、イースターD
N003] ポリフェニレンエーテル系樹脂(5):ポリ(2,6−
ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル [GE Specialty Chemicals,Inc.製、BLENDEX HPP820] 難燃剤(6)(有機リン化合物): (6-1)トリフェニルホスフェート、 (6-2)下記式(III)で表される縮合リン酸エステル
[大八化学工業(株)製、CR−733S] (6-3)下記式(IV)で表される縮合リン酸エステル
[大八化学工業(株)製、CR−741] (6-4)下記式(V)で表される縮合リン酸エステル[大
八化学工業(株)製、PX−200]
【0075】
【化2】 難燃助剤(7)(フッ素樹脂):ポリテトラフルオロエ
チレン[三井デュポンフロロケミカル(株)製、テフロ
ン6−J] ABS樹脂:ダイセル化学工業(株)製、セビアン−V
520 実施例1〜10、比較例1〜3 前記材料を表1に示す組成及び割合(重量部)で、タン
ブラーブレンダーで混合した後、押出機にて溶融混練
し、ペレット状の樹脂組成物を得た。次いで、ペレット
状樹脂組成物を、射出成形機(シリンダー温度240
℃、金型温度60℃)で試験片を作製し物性を測定し
た。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】 上記表1から明らかなように、ポリカーボネート系樹脂
とゴム変性ポリスチレン系樹脂を主成分とする実施例の
熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート系樹脂とAB
S系樹脂とのポリマーブレンドと比較して、衝撃強度は
ほぼ同レベルであり、流動性(成形加工性)の点では優
れている。また、実施例1の試験片の断面の電子顕微鏡
写真を観察したところ、ポリカーボネート樹脂をマトリ
ックスとし、ゴム変性スチレン系樹脂のドメインとして
分散したモルホロジーにおいて、ドメインがエポキシ変
性ブロック共重合体で包囲された図1に示すカプセル構
造が認められた。
【0077】実施例11〜24、比較例4〜6 前記材料を表2及び表3に示す組成及び割合(重量部)
で、タンブラーブレンダーで混合した後、押出機にて溶
融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。次いで、ペ
レット状樹脂組成物を、射出成形機(シリンダー温度2
40℃、金型温度60℃)で試験片を作製し物性を測定
した。結果を表2及び表3に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】 上記表2及び表3から明らかなように、難燃剤や難燃助
剤を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物においては、ポ
リカーボネート系樹脂とABS系樹脂を主成分とする樹
脂組成物と対比して、実施例の樹脂組成物は、耐衝撃性
において同レベルであり、難燃性及び流動性(成形加工
性)の点では優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はポリカーボネート,ポリスチレンおよび
相溶化剤で構成された熱可塑性樹脂組成物の断面の電子
顕微鏡写真に基づく模写図である。
【図2】図2はポリカーボネートおよびポリスチレンで
構成された樹脂組成物の断面の電子顕微鏡写真に基づく
模写図である。
【符号の説明】
1…マトリックス 2…ドメイン 3…相溶化剤
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 53/02 C08L 53/02 //(C08L 69/00 25:02 53:02 67:02 71:12 27:12) (C08L 69/00 51:04 53:02 67:02 71:12 27:12)

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)全末端に占める末端ヒドロキシ基
    の割合が1モル%以上のポリカーボネート系樹脂と、
    (2)ポリスチレン系樹脂と、(3)ジエン系ブロック共
    重合体とで構成された樹脂組成物であって、(3)ジエ
    ン系ブロック共重合体が、同一分子内に、ビニル芳香族
    化合物を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエン
    化合物を主体とする重合体ブロック(B)とを有するブ
    ロック共重合体(C)及び/又はその水添物(D)、前記
    ブロック共重合体(C)及び/又はその部分水添物(D)
    の共役ジエン化合物に由来する二重結合をエポキシ化し
    たエポキシ変性ブロック共重合体(E)、および前記ブ
    ロック共重合体(C)及び/又はその水添物(D)の酸変
    性ブロック共重合体(F)からなる群より選ばれる少な
    くとも1種である熱可塑性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 (1)ポリカーボネート系樹脂の全末端
    に占める末端ヒドロキシ基の割合が5〜40モル%であ
    る請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 (2)ポリスチレン系樹脂が、ゴム変性
    スチレン系樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成
    物。
  4. 【請求項4】 (1)ポリカーボネート系樹脂/(2)ポ
    リスチレン系樹脂=30/70〜95/5(重量%)の
    樹脂組成物100重量部に対して、(3)ジエン系ブロ
    ック共重合体0.1〜20重量部を含有する請求項1記
    載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 分散相を構成するポリスチレン系樹脂ド
    メインが、(3)ジエン系ブロック共重合体により包囲
    されている請求項1〜4のいずれかの項に記載の熱可塑
    性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 ジエン系ブロック共重合体(3)が、末
    端にBブロックを有するジエン系ブロック共重合体であ
    る請求項1〜5のいずれかの項に記載の熱可塑性樹脂組
    成物。
  7. 【請求項7】 さらに、(1)ポリカーボネート系樹脂
    および(2)ポリスチレン系樹脂からなる樹脂組成物1
    00重量部に対して、(4)ポリアルキレンアリーレー
    ト系樹脂0.1〜20重量部を含有する請求項1〜6の
    いずれかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 さらに、(1)ポリカーボネート系樹脂
    および(2)ポリスチレン系樹脂からなる樹脂組成物1
    00重量部に対して、(5)ポリフェニレンエーテル系
    樹脂0.1〜20重量部を含有する請求項1〜7のいず
    れかの項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 さらに、(1)ポリカーボネート系樹脂
    および(2)ポリスチレン系樹脂からなる樹脂組成物1
    00重量部に対して、(6)難燃剤1〜40重量部を含
    有する請求項1〜8のいずれかの項に記載の熱可塑性樹
    脂組成物。
  10. 【請求項10】 さらに、(1)ポリカーボネート系樹
    脂および(2)ポリスチレン系樹脂からなる樹脂組成物
    100重量部に対して、(7)難燃助剤0.01〜30
    重量部を含有する請求項9記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. 【請求項11】 難燃助剤(7)がフッ素樹脂であり、
    このフッ素樹脂の含有量が樹脂組成物100重量部に対
    して0.05〜5重量部である請求項10記載の熱可塑
    性樹脂組成物。
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