【発明の詳細な説明】
ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を呈する組成物、及びその調製及び使
用のための方法
発明の背景
本発明は、一般に、医学及び生物学の分野に関する。特に、本発明は、予防の
及び/又は治療の活性(例えば、癌転移の予防、再発の予防、又は癌の発生率の
減少におけるもの)を有する、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を呈す
る組成物、並びに、その調製及び使用のための方法、を指向するものである。
癌を処置するために、手術、及び放射線−又は化学治療を行うことは、重大な
副作用の危険を伴い、死に至ることさえもあり、これら処置は、依然として、し
ばしば実質的な利益を生み出せないでいる。これら処置法が癌の予防に使用され
ることがほとんどないということは、驚くべきことではない。患者における、癌
を予防又は治療するための及び/又はその徴候を改善するためのより良い方法が
必要とされていることは、明かである。
免疫性の応答は、病原菌が潜んでいる標識細胞、即ち、抗原を呈示している細
胞を効果的に殺すことができる。このような抗原を含んでいるワクチンは、この
ような好
適な応答を刺激し、少ないリスクで疾病から守ることができる。この経験と、悪
性の細胞も同様な標識を有するという仮説とを組合せることによって、多くの研
究者は、様々なタイプの癌を予防又は治療することができるワクチンの探索を行
っている(McCall,C.A.,Wiemer,L.,Baldwin,S.,& Pearson,F.C.(1989)Bio/techn
ology 7,231-240; Rosenburg,S.A.(1992)J.Clin.Oncol.10,180-199; Prehn,R.T.
(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90,4332-4333)。そのようなワクチンの開
発が成功すれば、腫瘍関連抗原を含む製剤を同定すること、及びそれら抗原を呈
する細胞を適切且つ特異的に殺すための免疫システムをどのように刺激するかを
知ること、にもなるであろう。
いくつかのワクチンは、伝染性の疾病(例えば、天然痘)の予防について、め
ざましい成功を挙げてきている。現在までに、他のワクチンを調製する試みは、
失敗に終わっている(例えば、エイズ)。時々、成功が続かないと、ある失敗か
ら、抗原に対する適切な応答を引き出すことが起こるであろう。適切な抗原を入
手できないことにはならないだろう。抗原に対する免疫性の応答を制御する方法
が、伝染性の疾病を予防、処置及び/又は治療するために設計されたワクチンの
性能に大いにためになることを、これら失敗は示唆している。
同様な問題が、癌のワクチンの開発にも立ちはだかっている。例えば、放射線
照射された腫瘍細胞を注射する
方法は、しばしば、効果的な抗腫瘍応答を引き出すことに失敗している。しかし
ながら、あらかじめリンフォカイン(例えば、GM-CSF)を生産する因子でトラン
スフェクトされ、放射線照射された腫瘍細胞に、注射する方法(Dranoff,G.,Jaf
fee,E.,Lazenby,A.,Golumbeck,P.,Levitsky,H.,Brose,K.,Jackson,V.,Hamada,H.
,Pardoll,D.,& Mulligan,R.C.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90,3539-3543
)は、抗腫瘍応答を促進することができる。同様な結果が、外来のメジャーの組
織適合性錯体を生産するためにトランスフェクトされた腫瘍細胞(Plautz,G.E.,
Yang,Z.Y.,Wu,B.Y.,Gao,X.,Huang,L.,& Nabel,G.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S
.A.90,4645-4649)、あるいは抗原存在細胞の表面に一般に見いだされるB7の
ような付着因子(Chen,L.,Ashe,S.,Brady,W.A.,Hellstroem,I.,Hellstroem,K.E.
,Ledbetter,J.A.,McGowan,P.,& Linsley,P.S.(1992)Cell 71,1093-1102; Schwa
rz,R.H.(1992)Cell 71,1068-1068; Baskar,S.,Ostrand-Rosenburg,S.,Nabavi,N.
,Nadler,L.M.,Freeman,G.J.,& Glimcher,L.H.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A
.90,5687-5690; Townsend,S.E.,& Allison,J.P.(1993)Science. 259,368-370
)、で得られている。しかし、バクテリア又はそれから誘導される因子で免疫シ
ステムを刺激するための別のアプローチもある(McCall et al.,1989,前述)。
百日咳毒素は、バクテリア:Bordetella Pertussis
から放出されるタンパク質である。百日咳毒素を適切な抗原と共に施すと、抗原
特異的な自己免疫疾病(Munoz,J.J.(1988)Pathogenesis and Immunity in Pertu
ssis(Wardlaw,A.C.,& Parton,R.,Eds.)第8章、173−192頁,John Wile
y & Sons Ltd.,New York; Kamradt,T.,Soloway,P.D.,Perkins,D.L.,& Gefter,M
.L.(1991)J.Immunol.147,3296-3302)及び抗原特異的な遅延型過敏症の反応、
が飛躍的に高められる。しかし、抗原独立性の炎症性の応答は高められない(Se
well,W.A.,Munoz,J.J.,& Vadas,M.A.(1983)J.Exp.Med.157,2087-2096; Sewell,
W.A.,Munoz,J.J.,Scollay,R.,& Vadas,M.A.(1984)J.Immunol.133,1716-1722)
。B.pertussis の粗製剤が、抗腫瘍応答を引き起こすことができるという報告が
あり(Likhite,V.V.(1983)U.S.Patent 4,372,945;Minagawa,H.,Kakamu,Y.,Yoshi
da,H.,Tomita,F.,Oshima,H.,& Mizuno,D.I.(1988)Jpn.J.Cancer Res.79,384-3
89; Minagawa,H.,Kobayashi,H.,Yoshida,H.,Teranishi,M.,Morikawa,A.,Abe,S.,
Oshima,H.,& Mizuno,D.I.(1990)Br.J.Cancer 62,372-375)、この効果を引き起
こすこれら製剤における因子は同定されていなかった。他の報告(Ohnishi,M.,K
imura,S.,Yamazaki,M.,Abe,S.,& Yamaguchi,H.(1994)Microbiol.Immunol.38,73
3-739; Ohnishi.M,Kimura,S.,Yamazaki,M.,Oshima,H.,Mizuno,D.I.,Abe,S.,&
Yamaguchi,H.(1994)Br.J.Cancer 69,1038-1042)では、B.pertussisからのリポ
多糖類
が抗腫瘍応答を刺激できることが示されている。
本発明の目的は、従来用いられていた組成物及び方法に付随していた欠点を受
けることがない組成物及び方法を提供することである。特に、本発明の目的は、
他の組成物及び方法の効力を増大する組成物を提供することである。
発明の概要
本発明によれば、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性によって特徴付ら
れる組成物が提供される。これら組成物は、予防の及び/又は治療の応答を促進
させるために有用である。当該応答は、例えば百日咳毒素によって促進されるが
、哺乳類の患者における他の標的抗原(例えば、癌関連抗原)に対して向けられ
るようなものである。
図面の簡単な説明
本発明を以下の添付図面を参照してより深く理解できるであろう。
図1は、百日咳毒素(PTロット48A及び55A)の共投与がされた又はさ
れなかった、放射線照射されたB16腫瘍細胞を用いた場合の、C57/BLマ
ウスのワクチン接種によって付与されるB16黒色腫(メラノ
ーマ)に対する保護を示す図である。
図2は、はじめにインターフェロン−ガンマ(IFNg)を用いて又は用いず
に培養し、そして百日咳毒素(PT)の共投与がされ又はされずに注射された、
放射線照射されたB16黒色腫細胞を用いた場合の、C57/BLマウスのワク
チン接種によって付与されるB16黒色腫に対する保護を示す図である。
図3は、BALB/Cマウスのワクチン接種によって付与されるライン1癌(
carcinoma)に対する保護を示す図である(PTの共投与がされ又はされなかっ
た、放射線照射されたライン1細胞を用いた場合)。
図4は、BALB/Cマウスのワクチン接種によって付与される、卵白アルブ
ミン(L1−Ova)を生産するためにトランスフェクトされたライン1癌(ca
rcinoma)に対する保護を示す図である(PTの共投与がされ又はされなかった
、放射線照射されたL1−Ova細胞を用いた場合)。
図5は、PTの共投与がされ又はされなかった、放射線照射された癌(carcin
oma)細胞、又は、百日咳毒素を用いて又は用いずに培養され、その後抗百日咳
毒素のモノクローン抗体3CX4と混合された脾臓細胞、を用いてあらかじめワ
クチン接種されたBALB/Cマウスの放射線照射されたL1−Ova細胞に対
する耳−腫張の応答を示す図である。
図6は、百日咳毒素の共投与がされ又はされなかった、
放射線照射されたL1−Ova細胞、又は、百日咳毒素を用いて又は用いずに培
養され、その後3CX4と混合された脾臓細胞、を用いてBALB/Cマウスの
ワクチン接種によって付与されるL1−Ova細胞に対する保護を示す図である
。
図7は、百日咳毒素の共投与がされた又はされなかった、放射線照射されたB
16細胞、又は、百日咳毒素を用いて又は用いずに培養され、その後3CX4と
混合された脾臓細胞、を用いてC57/BLマウスのワクチン接種によって付与
されるB16黒色腫に対する保護を示す図である。
好適な態様の詳細な説明
本発明によれば、百日咳毒素によって促進されるような応答が、本発明のAD
P−リボシルトランスフェラーゼ活性によって特徴付られる組成物の有効量を哺
乳類の患者へ施すことによって、1又はそれ以上の標的抗原に対して向けられる
。百日咳毒素は、癌ワクチンの効力を増大するために、ここで示されている。本
発明のADP−リボシルトランスフェラーゼ活性によって特徴付られる組成物は
、また、他のワクチン及び他のタイプの治療薬の活性を増大させる。
百日咳毒素は、単独触媒的S1サブユニットからなるAプロモーターと、一つ
のS2、一つのS3、二つのS
4及び一つのS5のサブユニットを含んでいるBオリゴマーとを含んでなるマル
チサブユニットタンパク質である。Bオリゴマーは、標的細胞上の特異的受容体
に毒素を結合し、これにより、細胞膜にS1サブユニットを運び込む。ここで、
Bオリゴマーが活性化された後、Bオリゴマーは、特定の受容タンパク質(代表
的には、グアニンヌクレオチドに結合するレギュレートリープロテイン(G−プ
ロテインと称される)のアルファサブユニット)において、NADからのADP
−リボースを特定のシステイン残基へ転移させる反応を触媒する(Ui,M.(1990)A
DP-Ribosylating Toxins and G Proteins(Moss,J., & Vaughan,M.,Eds.)第4章
、45−77頁、アメリカ微生物学会、ワシントンDC)。
ADP−リボシレーションを触媒することで知られる他の多くのバクテリア毒
素が存在するものの、私の知る限り、百日咳毒素によって触媒される特定のAD
P−リボシレーション反応を触媒する他のバクテリア毒素についての報告は無い
(Moss,J.,& Vaughan,M.,Eds.(1990)ADP-Ribosylating Toxins and _G Prot
einsアメリカ微生物学会、ワシントンDC)。真核生物のADP−リボシルトラ
ンスフェラーゼ活性は、ADP−リボースをシステイン残基に加え、そしておそ
らく、百日咳毒素と同じタンパク質又は残基に加えると考えられてきたが、その
機能的重要性は、未知のようである(Williamson,K.C., & Moss,J.(1990)ADP-R
ibosylating Toxins and G Pr
oteins(Moss,J.,& Vaughan,M.,Eds.)493−510頁、アメリカ微生物学会
、ワシントンDC)。そのような酵素が百日咳毒素と同じ反応を触媒することに
利用できるならば、そのような酵素は、当該毒素の機能的な類似化合物となりう
るであろう。
抗腫瘍応答を押し上げるために現在使用されている他の規定された製剤は、百
日咳毒素のADP−リボシルトランスフェラーゼ活性を含んでいないようである
。遅延型過敏症(DTH)又は自己免疫性の応答を刺激することを含む実験にお
いて、百日咳毒素は、通常、他のアジュバント(例えば、完全なフレンド(Freun
d's)アジュバント又は超抗原(superantigens)等)を添加して使用される(Munoz
,J.J.,& Sewell,W.A.(1984)Infect.Immun.44,637-641; Sewell,W.A.,de Moerlo
ose,P.A.,McKimm-Breschkin,J.L.,& Vadas,M.A.(1986)Cell.Immunol.97,238-2
47: Kamradt et al.,1991,前述)。こうして、百日咳毒素作用及びこれら他のア
ジュバントの下に横たわるメカニズムは、異なっている。
リンパ球増加(これは、当該製剤が生体中で活性であることを示すのにポジテ
ィブな制御として寄与する)を起こすのに十分な、典型的な活性な製剤のある量
をマウスに施すことは、現在のところ好ましい。特に、当該製剤が特定の細胞標
的に向けられる場合は、リンパ球増加は、有益な効果を要求されなくてよいし、
抗腫瘍応答を含む他の応答(Munoz,J.J.,Arai,H.,Bergman,R.K.,& S
adowski,P.L.(1981)Infect.Immun.33,820-826)のためには、この量よりも少な
い量で十分である。人間の場合、百日咳毒素作用の別の測定、例えば高められた
インスリン分泌又はグルコースクリアランス、がより適切であろう。体重のキロ
グラム当り0.5又は1.0μgの百日咳毒素タンパク質を一回静脈注射するこ
とで、健康状態でインスリン分泌を促進し、毒性の又は不利な応答が明かになく
、人体を制御することがわかった(Toyota,T.,Kai,Y.,Kakizaki,M.,Sakai,A.,Go
to,Y.,Yajima,M.,& Ui,M.(1980)Tohoku J.Exp.Med.13,105-116)。製剤が中毒状
態で抗腫瘍応答を与える細胞に到達する限りは、当該製剤は、様々な適切なルー
ト(例えば、静脈に、腹腔内に)により施されることができる。
ここで挙げる例では、マウスに腹腔内注射された百日咳毒素の効果的な一回分
の量が、マウス(25gmの典型的重さ)当り400ngよりも少ない量である
ことが明かである。当業者によって快く受け入れられるだろうが、哺乳類の患者
に投与される活性製剤の最適な一回分の量は、経験的に決定されるだろう。
本発明の目的のための効果的な一回分の量は、細胞全体の百日咳ワクチンに含
まれる活性の量以下か又は少ないものとして適切に施すことができるだろう。そ
のようなワクチンは、インスリンの高い適用量が要求される(おそらくインスリ
ンの分泌を増大させることによる)糖尿病において、高血糖を減らすために示さ
れている
(Dhar,H.L.,Dhirwani,M.K.,& Sheth,U.K.(1975)Brit.J.Clin.Pract.29,119-12
0)。厄介な事件がこのワクチンの約300,000回分の量から起こりうると
主張されているにもかかわらず、これら希に起こる事件が当該ワクチン又はそれ
が含む百日咳毒素と因果関係があるということに多くの者が疑いを持っている。
アメリカでは、非常に多くの幼児が、未だにそのようなワクチンを日常的に免疫
されている(Cherry,J.P.,Brunell,P.A.,Golden,G.S.,& Karzon,D.T.(1988)Ped
iatrics.81(6 Part2),939-984)。こうして適切な製剤からの危険は、例えば、
長期間の苦痛及び死に面する癌の犠牲によってよく受け入れられるべきである。
百日咳毒素によるいくつかの細胞の中毒が抗腫瘍応答を促進できるように、他
の細胞の中毒が、好適な応答を減少させること、あるいは望ましくない副効果を
起こすことがあるだろう。こうして、望ましい抗腫瘍応答を促進するために十分
な百日咳毒素の標的を同定することによって、本発明の組成物の活性を最大限に
利用するという本発明の視野の範囲内のものとして期待される好適な組成物及び
方法へと近づくことができるのである。百日咳毒素の構造と機能に関して多くの
ことが知られており、この知識は、大部分において、百日咳ワクチンにおける百
日咳毒素をより良く使用するための(Sato,H.,& Sato,Y.(1984)Infect.Immun.
46,415-421; Pizza,M.,Covacci,A.,Bartoloni,A.,Perugini,M.,Nencioni,L.,De-
Mag
isitris,M.T.,Villa,L.,Nucci,D.,Manetti,R.,Bugnoli,M.,Giovannoni,F.,Olivi
eri,R.,Barbieri,J.T.,Sato,H.,& Rappuoli,R.(1989)Science.246,497-500; Lo
osmore,S.M.,Zealey,G.R.,Boux,H.A.,Cockle,S.A.,Radika,K.,Fahim,R.E.F.,Zob
rist,G.J.,Yacoob,R.K.,Chong,P.C.S.,Yao,F.L.,& Klein,M.H.(1990)Infect.Im
mun.58,3653-3662; Nencioni,L.,Pizza,M.,Bugnoli,M.,De-Magistris,T.,Di-To
mmaso,A.,Giovannoni,F.,Manetti,R.,Marsili,I.,Matteucci,G.,Nucci,D.,Olivi
eri,R.,Pileri,P.,Presentini,R.,Villa,L.,Kreeftenberg,J.G.,Silvestri,S.,T
agliabue,A.,& Rappuoli,R.(1990)Infect.Immun.58,1308-1315; Burnette,W.N.
(1991)Vaccine Research:A Series of Advances,Vol.1(Koff,W.,& Six,H.R.,
Eds.)第6章143−193頁、Marcel Dekker,Inc.,NewYork)、及び膜内外の信
号通信を研究するための(Ui,1990,前述)努力から得られたものである。抗腫
瘍効果を高める百日咳毒素の作用部位に関する知識によって、百日咳毒素の治療
標的を同定し、その効力を改善する対策へと近づくことができる。
例えば、免疫応答に伴う細胞(例えば、抗原存在又は抗原認識の細胞)は、も
っともらしい標的である。このような細胞は、生物体外で、培養され、百日咳毒
素で中毒させることができる。一方、残留している毒素は、モノクローン抗体で
中和し、中毒化した細胞は、生物体内に戻される。
Bオリゴマーにおける変異を、百日咳毒素を十分な標的に対して標的にするた
めに使用することができる。例えば、Bオリゴマーは、異なる特異性を持った多
数の結合部位を有している。これら部位の内の二つは同定されており、その一つ
はサブユニットS2であり、もう一方はサブユニットS3である。S2における
部位は、肺の繊毛に毒素を結合させるようである。また、S3における部位は、
マクロファージに結合するようである。マクロファージは、免疫応答に寄与でき
る。更に、S2及びS3における変異は、一方の結合特性を別のものへ転換でき
る(Saukkonen,K.,Burnette,W.N.,Mar,V.L.,Masure,H.R.,& Tuomanen,E.I.(199
2)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89,118-122)。そのような変異は、百日咳毒素の
結合をある細胞のタイプ又は他の細胞のタイプに制限することができるだろう。
そのような変異は、細胞が中毒化されているときに、望ましくない応答を作り出
す細胞から百日咳毒素を遠ざけるようにさせ、及び、細胞が中毒化されていると
きに、望ましい応答を作り出す細胞へと百日咳毒素を向かわせることができるだ
ろう。百日咳毒素の結合特性を変更する百日咳毒素の構造の他の変更により、よ
り大きな効力を持つ及び/又は望ましくない副効果を低減する類似化合物が得ら
れるであろう。その他、抗体又はサイトカイン(例えば、インターロイキン2)
は、天然に発生するBオリゴマーよりも大きな特異性を伴ってこの活性を運ぶた
めに、百日咳毒素あるいはAD
P−リボシルトランスフェラーゼ活性を有する類似化合物と共に、吸着され、電
子対を共有して組にされ、又は融合タンパク質として表現されることができるだ
ろう。
百日咳毒素の活性のために暗号化するDNAは、特定のタイプの細胞に運ばれ
ることができるだろう。ADP−リボシルトランスフェラーゼ及び他の機能のた
めに要求される毒素の配列の部分は、その構造の、計算機(Domenighini,M.,Mon
tecucco,C.,Ripka,W.C.,& Rappuoli,R.(1991)Molec.Microbiol.5,23-31)
、酵素(Krueger & Barbieri,1994)及びX線結晶(Stein,P.E.,Boodhoo,A.,Arm
strong,G.D.,Cockle,S.A.,Klein,M.H.& Read,R.J.,(1994a)Structure 2,45-57;
Stein,P.E.,Boodhoo,A.,Armstrong,G.D.,Heerze,L.D。,Cockle,S.A.,Klein,M.H
.& Read,R.J.,(1994b)Struct.Biol.1,591-596)の研究により明らかになりつ
つあるところである。Bordetella pertussis からの百日咳毒素遺伝子のDNA
配列は、報告されている(Nicosia,A.,Perugini,M.,Franzini,C.,Casagli,M.C.,
Borri,M.G.,Antoni,G.,Almoni,M.,Neri,P.,Ratti,G.,& Rappuoli,R.(1986)Proc
.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83,4631-4635)。
百日咳毒素は、免疫応答に含まれる細胞のいくつかのタイプの活性において、
コーディネイトされた変更を引き起こすので、本発明の組成物及び方法は、他の
アプローチと組み合わせて有利に採用されることができる。例えば、環状AMP
は、抗原存在細胞上でB7エキスプレ
ッションを増加させ(Nabavi,N.,Freeman,G.J.,Gault,A.,Godfrey,D.,Nadler,L.
M.,& Glimcher,L.H.(1992)Nature 360,266-268)、B7エキスプレッションが
抗腫瘍応答を促進する(Chen,S.H.,Li Chen,X.H.,Wang,Y.,Kosai,K.I.,Finegold
,M.J.,Rich,S.S.,& Woo,S.L.C.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92,2577-25
81; Schwarz,1992,前述; Baskar et al.,1993,前述; Townsend & Allison,199
3,前述)、と考えられている。百日咳毒素は、環状AMPを増大させることが
でき、これにより、B7エキスプレッションを増大することができる。B7エキ
スプレッションが増大するよりも多く抗原存在細胞における環状AMPが増大す
るように、百日咳毒素は、抗原存在細胞に、B7エキスプレッションの増大に基
づいて有利なアプローチをとって、T細胞の活性化をさせることができる。
百日咳毒素は、刺激リンフォカイン(例えば、インターフェロンガンマ)の解
放を促進するか(Sewell et al.,1986,前述)又は抑制因子の効果の減少させる
かのいずれかによって、抗原の刺激の部位で作用する。それゆえに、百日咳毒素
の施用は、抗腫瘍応答を促進するために使用されるリンフォカインのより小量の
投与による効果を改善するかもしれない。もしそうならば、そして適切に使用す
るならば、百日咳毒素は、そのようなリンフォカインの使用に伴う危険な副効果
を減らすことができるかもしれない。更に、その毒素は、リンフォカインの解
放の原因となることによって作用する、他のアジュバントの作用を改善すること
ができるかもしれない。
百日咳毒素が腫瘍ワクチンの効力を促進するメカニズムはまた、パラサイト、
バクテリア又はウイルス等の病原体を有している細胞に対してワクチンの効力を
高めることができるかもしれない。更に、百日咳毒素によって変性されたG−タ
ンパク質は、多くの組織において細胞外の効果体の幅広い多様性の作用を介在さ
せている(Furman,B.L.,Sidey,F.M.,& Smith,M.(1988)in Pathogenesis and Imm
unity in Pertussis(Wardlaw,A.C.,& Parton,R.,Eds.)第7章147−172頁
、John Wiley & Sons,New York; Bourne,H.R.,Sanders,D.A.,& McCormick,F.(
1990)Nature 348,125-132)。こうして、ADP−リボシルトランスフェラーゼ
活性を呈する組成物は、他のシステム(例えば、糖尿病)における治療法の値を
有するだろう(Dhar et al.,1975,前述;Toyota et al.,1980,前述)。
抗IL4抗体が百日咳毒素によってDTHの促進を高めるという証拠がある(
Mu,H.H.,& Sewell,W.A.(1994) Immunology 83,639-645; Rosoff,P.M.,Walker,R
., & Winberry,L.(1987)J.ImTnunol.139,2419-2423)。こうして、IL4の拮抗
薬は、本発明の組成物の抗腫瘍効果を促進することを助ける。腫瘍細胞を殺す免
疫応答のタイプについてより多くのことが知られているように、その情報は、他
の製剤と、本発明の物質及び方法との他の潜
在的に有益な組合せを示唆している。
抗原は、組成物に添加されてもよく、あるいは、抗原は、既に生物体内の腫瘍
細胞内に見いだされるものでもよい。例えば、生物体内の腫瘍細胞は、放射線照
射され、PTの施用と同時にインターフェロンガンマで処理されることができる
だろう。その他に、新しい遺伝子を生物体内の腫瘍細胞に導入する方法は、それ
らの免疫原性を高めることになるだろう(Chen,S.H.et al.,1995,前述; Sun,W
.H.,Burkholder,J.K.,Sun,J.,Culp,J.,Turner,J.,Lu,X.G.,Pugh,T.D.,Ershler,W
.B.,& Yang,N.S.(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92,2889-2893)。これらの
場合の全てにおいて、百日咳毒素の活性は、生物体内の細胞に対して抗腫瘍応答
を促進するために使用されることができるだろう。
実施例1において、百日咳毒素の組換え型の類似化合物は、ADP−リボシル
トランスフェラーゼ活性を欠くものが使用された。しかし、その類似化合物は、
赤血球を凝集させる能力(Bオリゴマーが機能的に損なわれていないことを示し
ている)及び天然に発生する百日咳毒素を中和する抗体を引き出す能力(Nencio
ni et al.,1990,前述)によって証明されるように、天然に発生する百日咳毒素
と等価な一般的構造を保持している。実施例の結果によって、百日咳毒素のAD
P−リボシルトランスフェラーゼ活性が、抗腫瘍効果のために要求されることが
示されたが、当該毒素の他の活性のための役割を除
外していない。例えば、Bオリゴマーは、細胞に対するADP−リボシルトラン
スフェラーゼ活性を有するS1サブユニットを運ぶのみならず、生物学的効果も
生産することができる(Tamura,M.,Nogimori,K.,Yajima,M.,Ase,K.,& Ui,M.(198
3)J.Biol.Chem.258,6756-6761; Rosoff,et al.,1987,前述;Strnad,C.F.,& Ca
rchman,R.A.(1987)FEBS.Lett.225,16-20; Stewart,S.J.,Prpic,V.,Johns,J.A.,P
owers,F.S.,Graber,S.E.,Forbes,J.T.,& Exton,J.H.(1989)J.Clin.Invest.83,23
4-242)。
百日咳毒素の抗腫瘍効果が腫瘍のタイプ又はマウスの血統に限定されないこと
を証明するために、実施例1−3及び8では、C57BL/6のマウスにおいて
B16黒色腫(メラノーマ)に対する効果が証明されている。実施例4、5及び
7では、Balb/cのマウスに同系のライン1と称される肺癌(carcinoma)
に対する効果が証明されている(Blieden,T.M.,McAdam,A.J.,Foresman,M.D.,Cer
osaletti,K.M.,Frelinger,J.G.,& Lord,E.M.(1991)Int.J.Cancer Supplement,v
ol 6,82-89)。肺癌の結果は、腫瘍が外来タンパク質(この場合、鶏の卵白アル
ブミン)のエキスプレッションによってより免疫原性を高められているならば、
百日咳毒素の効果が増大されることを示唆している。
実施例6−8はまた、免疫システムが毒素の十分な標的であることを証明して
いる。使用されたアプローチは、一匹のマウスから脾臓細胞を取り出し、それを
百日咳毒
素を用いて又は用いずに夜通し(overnight)培養し、その後同系のマウスに放
射線照射した腫瘍細胞と共にその脾臓細胞を施すというものであった。その後続
いて、生きた腫瘍細胞で免疫性をテストされた。このアプローチで遭遇し得る問
題は、百日咳毒素が脾臓細胞の表面に可逆的に結合しているということである。
従って、百日咳毒素で培養された細胞がマウスに注射されたとき、当該毒素は、
注射された細胞から受け取りマウスの細胞まで転移されることができる。このプ
ロセスは、実際に培養された細胞が当該毒素の十分な標的であることを立証する
ために、ブロックされなければならない。3CX4と称されるモノクローン抗体
(Kenimer,J.G.,Kim,K.J.,Probst,P.G.,Manclark,C.R.,Burstyn,D.G.,& Cowell
,J.L.(1989)Hybridoma.8,37-51)は、それゆえ、受取マウスへの毒素の転移を
ブロックするために使用された。
転移をブロックする抗体の能力をテストするために、実施例6で報告されてい
る実験が行われた。脾臓細胞を百日咳毒素を用いて又は用いずに夜通し培養し、
洗浄し、3CX4と混合した。その後、放射線照射された腫瘍細胞を、これら細
胞を共投与して又はしないでマウスに注射した。いくつかのマウスについて、毒
素処理した細胞は、注射に先だって、冷凍融解によって溶解した(百日咳毒素は
冷凍融解に対して耐性がある(Kaslow,H.R., & Burns,D.L.(1992)FASEB J.6,26
84-2690))。毒素及び細胞の作用は、腫瘍細胞に対する免疫応答を測定する
ことによって評価された。即ち、放射線照射された腫瘍細胞を一方の耳に注射し
、応答を耳の腫張を測定することにより決定した。放射線照射された細胞を施す
際、毒素処理した細胞の添加が腫張を増加させた。冷凍融解によって溶解された
毒素処理した細胞の添加は、腫張を増加しなかった。同様に、この実験では、放
射線照射された細胞単独を用いたワクチン接種は、十分でなかった。百日咳毒素
又は手つかずの毒素処理された細胞の添加が要求される。従って、3CX4は、
脾臓細胞の膜に結合された百日咳毒素の作用をブロックする、と結論できる。
最近、GM−CSFの生産を起こすDNAでトランスフェクトされた放射線照
射された細胞を使用して、B−16黒色腫からマウスを保護することを証明する
報告がなされた(Dranoff et al.,1993,前述)。この報告では、また、他のサ
イトカインを生産するためにトランスフェクトされた腫瘍細胞を使用した保護に
関する、過去の研究で使用されたプロトコルが試験された。この実験は、これら
他の研究におけるクリティカルなコントロールが不足することによって、これら
サイトカインが保護効果に対して重大であるという誤った印象を創り出したこと
を示唆している。過去の研究において省略されたコントロールが、放射線照射さ
れた細胞単独のワクチン接種だった。ここで報告するいくつかの実施例は、この
コントロールを含んでおり、更に、本発明の組成物及び方法の有用性を確認する
ものである。
本発明は、添付の実施例を参照することによりより良く理解できるだろう。こ
の実施例は、説明のみを目的とするものであり、如何なる意味においても、請求
の範囲に定義された本発明の範囲を限定するものではない。
実施例
以下の実施例において、百日咳毒素は、List Laboratories又はミシガン州公
衆衛生省のいずれかから得たものである。百日咳毒素の組換え不活性類似化合物
は、S1サブユニット(arg7->lys and glu129->gly)において不活性化した変
異を有していた(Nencioni et al.,1990,前述)。マウスは、標準的な販売元か
ら入手した。モノクローン抗体3CX4(Kenimer et al.,1989,前述)を生産
するハイブリドーマは、 Dr.James Kenimerから寄贈された。この抗体は、タン
パク質Aアフィニティープロシジャー(Pierce Biochemical Co.)を使用して腹
水から精製した。百日咳毒素及び抗体の量は、タンパク質比色定量法によって決
定したタンパク質のグラム量で表現した(Lowry,O.H.,Rosebrough,N.J.,Farr-A-
L., & Randall,R.J.,(1951)J.Biol.Chem.193,265-275; Bensadoun,A., & Weins
tein,D.(1976)Anal.Biochem.70,241-250)。
B16黒色腫細胞ラインは、同系のC57BL/6のマウスを使用して研究さ
れたが、この細胞ラインは、Dr.
Malcolm Mitchell(Staib,L.,Harel,W., & Mitchell,M.S.(1993)Can.Res.53,111
3-1121)から得た。このライン1癌(carcinoma)及び卵白アルブミンを生産す
るサブラインは、同系のBALB/cマウスを使用して研究されたが、これらは
、Dr.John Frelinger(Blieden,et al.,1991,前述)から寄贈された。細胞は
、培養し、(Blieden,et al.,1991,前述; Staib,et al.,1993,前述)に示さ
れるようにして皿から放出し、円心分離機で集め、放射線照射及び/又は注射に
先だって血清フリーな媒質中に再懸濁した。
実施例で示すように、ワクチン接種は、分離した腹腔内注射としての、ビヒク
ル又は放射線照射された腫瘍細胞からなる抗原製剤のいずれか、及び/又は百日
咳毒素(マウス当り400ng)又は担体を施して行った。これらワクチン接種
の前又は後の何れかにおいて、マウスは、背中上部に皮下注射によって生きた腫
瘍細胞で免疫性をテストされた。
実施例1−3は、百日咳毒素がB16黒色腫に対する抗腫瘍応答を高めること
を証明している。
実施例1(MLT2)
日付0において、100,000個のB16細胞を背
中に皮下注射(SQ)した。日付17において、マウスに、りん酸塩緩衝化食塩
水(PBS)、400ngの百日咳毒素(PT)又は組換えトランスフェラーゼ
不完全化百日咳毒素(rPT)及び/又は300,000個の放射線照射された
B16黒色腫細胞(ir−B16)の様々な組合せを腹腔内注射(ip)した。
日付26及び38において、ipの第2回及び第3回の注射が行われた。日付1
53において、全ての生存しているマウスについて、再び、100,000個の
B16細胞で免疫性をテスト(SQ)した。日付259において、全ての生存し
ているマウスについて、再び、100,000個のB16細胞で免疫性をテスト
(SQ)した。この実施例において、B16細胞は、注射に先だって、ガンマ−
インターフェロンで24−48時間培養した。
マウスは、背中又は脇から突出する腫瘍の膨らみの肉体的形跡を診断した。腫
瘍の長さは、最も近いセンチメートルで記録した。代表的には、腫瘍が2cmよ
りも長くなったときに死亡した。死亡は、明かに腫瘍の成長による。他のデータ
によれば、時々、コントロール動物において、不完全な腫瘍が考慮され得ること
が示唆された。従って、より確実な抗腫瘍応答の発生を示すために、生存してい
るマウスは、日付153及び259において、続く腫瘍免疫性テストに供された
。
この実施例のデータは、表1(MLT2)にまとめられている。百日咳毒素は
、抗腫瘍応答を刺激した。
実施例2
この実施例のデータは図1に示されており、データは百日咳毒素が抗腫瘍応答
を刺激したことを示している。腫瘍免疫性テスト以前の10日(日数−10)、
それぞれ6匹のマウスを含む6つのグループに、抗原(予めインターフェロンガ
ンマーで処理された300,000個の放射線照射されたB16細胞:B16−
IFNg(0.3))、及び400ngの百日咳毒素(PT、48A及び55A
と称される二つの異なるロット)の異なる組合せを用いて腹腔内注射(ip)し
た。日数0において、マウスは、すべて、ガンマ−インターフェロンで処理され
ない100,000個のB16細胞で免疫性テストされた。背中(ちょうど首の
下)に皮下注射された。腫瘍の大きさは記録され、死亡の日付も記録された。
実施例3
この実施例のデータは図2に示されており、データは百日咳毒素が抗腫瘍応答
を刺激したことを示している。腫瘍免疫性テスト以前の10日(日数−10)、
それぞれ6匹のマウスを含む8つのグループに注射した。いくつかのグループに
は、400ngの百日咳毒素(PT)を注射し、いくつかのグループには、異な
る抗原製剤(予めインターフェロンガンマー(IFNg)で処理さ
れ又は処理されない放射線照射されたB16細胞(B16)、フレッシュなもの
(無表示)又は冷凍のもの(frzn)、及び、300,000個(0.3)又
は2,000,000個(2.0)の細胞)を注射した。日数0において、マウ
スは、すべて、100,000個のB16細胞を背中に皮下注射(SQ)されて
、免疫性テストに供された。腫瘍の大きさは記録され、死亡の日付も記録された
。マウスの第2セットは、下記の図に示されたようにしてワクチン接種されたが
、ワクチン接種は、腫瘍のイニシエーション後4日して行った。これらマウスは
腫瘍から保護されなかった。
実施例4及び5は、百日咳毒素が、ライン1肺癌(carcinoma)に対して抗腫
瘍応答を高めることを証明するものである。
実施例4
この実施例のデータは図3に示されており、データは百日咳毒素がライン1腫
瘍細胞に対して抗腫瘍応答を刺激したことを示している。50,000個のライ
ン1腫瘍細胞の皮下注射(SQ)によるマウスの免疫性テスト以前の15日、1
2匹のマウスをそれぞれ6匹のマウスを含む2つのグループに分割した。2つの
グループは、
300,000個の放射線照射されたライン1腫瘍細胞で注射された(ip)。
一方のグループは、更に、400ngの百日咳毒素のip注射を受けた。マウス
は、腫瘍の成長を観察され、死亡の目付が記録された。
実施例5
この実施例のデータは図4に示されており、データは百日咳毒素が抗腫瘍応答
を刺激したことを示している。卵白アルブミン(L1−Ova)を暗号化するD
NAでトランスフェクトされた、50,000個のライン1腫瘍細胞の皮下注射
(SQ)によるマウスの免疫性テスト以前の12日、18匹のマウスを、それぞ
れ6匹のマウスを含む3つのグループに分割した。一方のグループには、300
,000個の放射線照射されたL1−Ova腫瘍細胞で注射した(ip)。別の
グループは、300,000個の放射線照射された細胞を受け、更に400ng
の百日咳毒素を注射(ip)された。他のグループは、細胞も毒素も受けなかっ
た。
マウスは、腫瘍の成長を観察され、死亡の日付も記録された。
実施例6−8は、百日咳毒素で脾臓細胞(SPL.CELLS)を処理すると
十分に抗腫瘍応答が高められる
ことを立証するものである。
実施例6
この実施例のデータは、3CX4と称されるモノクローン抗体が生物体内で百
日咳毒素の作用をブロックすることを示している。分析は、マウスの耳に注射さ
れた放射線照射されたL1−Ova腫瘍細胞に対する遅延型過敏症(DTH)の
応答を測定することを含む。DTH応答は数日間にわたる耳の腫張として観察さ
れる。この実施例では、腫張は、腫瘍細胞を注射された耳と、卵白アルブミンを
含む溶液を注射された耳との間の厚さの差として表現される。
放射線照射されたL1−Ova細胞を耳へ注射するに先立つ9日、6匹のマウ
スからなるグループに、300,000個の放射線照射されたL1−Ova細胞
、400ngの百日咳毒素又は他のナイーブなBALB/cマウスの脾臓細胞の
組合せを注射(ip)した。脾臓細胞は、はじめに、10%の牛の胎児の血清を
追加したRPMI組織培養培地中で夜通し培養した。夜通しの培養に先だって、
培養する細胞のいくつかに、108個の脾臓細胞当り400ngの百日咳毒素を
加えた。次の日、細胞は円心分離され、培養培地を取り除き、新鮮な培地を加え
た。その後、3CX4(Kenimer et al.,1989,前述)と称される抗百日咳毒素
のモノクローン抗体をいくつか
の細胞に加えた(108個の細胞当り1mg)。いくつかの細胞は、また、冷凍
融解(freeze thawing)によって溶解された。
その後マウスは、300,000個の放射線照射されたL1−Ova細胞で注
射(ip)された。マウスは、6匹ずつ6つのグループに分割された。これらグ
ループは、ビヒクル、400ngの百日咳毒素(PT−ダイレクト)又は脾臓細
胞(百日咳毒素及び3CX4を用いて又は用いずに培養した)のいずれかを更に
注射(ip)された。一方のマウスのセットは、百日咳毒素、続いて3CX4、
で培養された脾臓細胞を受け、その後、冷凍融解(freeze thawing)によって溶
解された(spl.cells + PT + 3CX4 -> FT)。明確にするために、冷凍融解の効
果を示すデータが第1のパネルから抽出され、第2のパネルに示されている。明
かに、データはPTの効果が脾臓細胞の冷凍融解によってブロックされているこ
とを示している。従って、百日咳毒素の効果は、培養中の毒素によって変えられ
た脾臓細胞によって媒介されることができ、受けたマウスの細胞を中毒させるこ
とは要求されない。
実施例7
この実施例のデータは図6に示されており、データは百日咳毒素で培養された
脾臓細胞がL1−Ova腫瘍細
胞に対する抗腫瘍応答を刺激することを示している。50,000個のL1−O
va細胞の皮下注射(SQ)によるマウスの免疫性テスト以前の13日、マウス
を6匹のマウスを含むグループに分割し、抗原(300,000個の放射線照射
されたL1−Ova腫瘍細胞)及び/又はアジュバントで注射した(ip)。ア
ジュバントは、実施例6に記載したような、400ngの百日咳毒素、又は百日
咳毒素を用いて又は用いずに夜通し培養し洗浄し3CX4と混合した脾臓細胞の
何れかであった。日数0において、マウスは、腫瘍細胞で免疫性テストされた。
一方のグループは、実施例6に記載されたように、耳に放射線照射された細胞を
一回受けた。マウスは、腫瘍の成長を評価され、死亡の日付も記録された。
実施例8
この実施例のデータは図7に示されており、データは百日咳毒素で培養された
脾臓細胞がB16腫瘍細胞に対する抗腫瘍応答を刺激することを示している。3
00,000個のB16細胞の注射(SQ)によるマウスの免疫性テスト以前の
14日、マウスを6匹のマウスを含むグループに分割し、抗原(300,000
個の放射線照射されたB16腫瘍細胞)及び/又はアジュバントで注射(ip)
した。アジュバントは、実施例6に記載したような、400ngの百日咳毒素、
又は百日咳毒素を用
いて又は用いずに夜通し培養し洗浄し3CX4と混合した脾臓細胞の何れかであ
った。日数0において、マウスは、腫瘍細胞で免疫性テストされた。一方のグル
ープは、実施例6に記載されたように、耳に放射線照射された細胞を一回受けた
。マウスは、腫瘍の成長の有無を視覚で調査された。腫瘍の成長が見られなかっ
たものを「腫瘍−フリー」とした。この実施例では、いくつかの腫瘍が復帰し、
再発した。
前述の記載から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確かめることがで
き、本発明の精神及び範囲からはずれることなく、本発明を様々な用途及び条件
に適合させることができる。状況により、便宜的に行うことが示唆されるか又は
便宜的に行うほうがよい場合、形式の変更及び等価物への置換が考えられる。こ
こで採用されるあらゆる特別の用語は、説明のためのものであり、限定を目的と
するものではない。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ
,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ,
DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I
L,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK
,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,
MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,R
U,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR
,TT,UA,UG,UZ,VN