【発明の詳細な説明】
六環式カンプトテシン同族体およびその製造方法
本発明は、抗腫瘍活性を有する新規な六環式カンプトテシン同族体、その製造
方法、およびそれを含有する医薬組成物に関するものである。
カンプトテシンおよびその同族体の幾つかは、トポイソメラーゼI、すなわち
或る種の重要な細胞機能および細胞増殖に関与する酵素の阻害により有力な抗腫
瘍活性を示すことが知られている[たとえばワニ等、ジャーナル・メジカル・ケ
ミストリー(1987)、第30巻、第1774頁;サイアング等、キャンサー
・リサーチ(1989)、第49巻、第4385頁;キャンサー・リサーチ(1
989)、第49巻、第1465頁参照]。インビトロおよびインビボの両者に
おけるカンプトテシンの抗癌活性はカルボキシレート型に比しラクトン型で顕著
に大である[たとえばW.J.シリヒェンマイヤー等、「抗腫瘍剤としてのカン
プトテシン同族体の現在の状況」、ジャーナル・ナショナル・キャンサー・イン
スチチュート(1993)、第85巻、第271〜291頁、およびそこに引用
された引例に開示]。その理由は閉鎖α−ヒドロキシラクトン環が癌細
胞中への薬物の受動的拡散および薬理学的標的との有利な薬物相互作用の両者に
つき重要な構造要件となるからである。生物学上適切なレベルのヒトアルブミン
の存在下での生物学上活性型のカンプトテシンは極めて短い半減期しか(約12
分間)有さず、ヒト血漿に薬物添加してから2時間後には薬物の99%以上がカ
ンプトテシンカルボキシレートまで変換して生物学上不活性かつ極めて毒性型の
薬物となることが最近報告されている[G.T.バーケおよびZ.ミー、「ヒト
血清アルブミンとのカンプトテシン相互作用の構造的基礎:薬物安定性に対する
作用」、ジャーナル・メジカル・ケミストリー(1994)、第37巻、第40
〜46頁参照]。したがって、高い固有能力を有すると共に血清アルブミンの存
在下でも安定性が得られるような新規なカンプトテシン誘導体を見出すことが必
要であると思われる。
M.C.ワニ等はジャーナル・メジカル・ケミストリー(1986)、第29
巻、第2358〜2363頁において、カンプトテシンの環Aにおける9、10
もしくは11位をNH2もしくはOHにより一置換すると親化合物カンプトテシ
ンよりもずっと高い抗白血病活性を有する化合物をもたらすと報告している。こ
れに反し、環Aにおける二置換は活性を著し
く低下させる。特に、9および10位の両方に置換基を有する化合物の場合、恐
らく立体的相互作用により活性および/または効力が顕著に低下する。
驚くことに今回、本出願人は9および10位にてカンプトテシンの環Aに融合
した5員アザ−複素環を有する下記する或る種の六環式カンプトテシン同族体が
高い抗腫瘍活性を有することを突き止めた。
したがって本発明は、式(Ia)
[式中、R1は
水素;
適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフェニルC1〜C6アルキル;
C3〜C7シクロアルキル;
適宜置換されるフェニル;
−NR3R4基(ここでR3およびR4はそれぞれ独立して水素;適宜置換されるC1
〜C6アルキル、たとえばフェニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル
;適宜置換されるフェニル;C1〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル
;適宜置換されるC1〜C6アルコキシカルボニル;またはベンゾイルオキシカル
ボニルであるか、またはR3およびR4はこれらが結合した窒素原子と一緒になっ
て3〜7員の飽和もしくは不飽和の適宜置換されるヘテロ−単環式環を形成する
);
−OR5基(ここでR5は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフェ
ニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;C1
〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜C6アル
コキシカルボニル;またはベンゾイルオキシカルボニルである);および
−SR6基(ここでR6は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフェ
ニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;C1
〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜C6
アルコキシカルボニル;またはベンゾイルオキシカルボニルである)から選択さ
れ、
R2は水素;C1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;およびフェニルC1〜
C6アルキルから選択され、
Xは
酸素原子;
硫黄原子;および
−NR7−基(ここでR7は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフ
ェニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;
C1〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜C6ア
ルコキシカルボニル;ベンゾイルオキシカルボニル;適宜置換されるC1〜C6ア
ルキルスルホニル;適宜置換されるC6〜C10アリールスルホニルである)
から選択される]
の六環式カンプトテシン同族体もしくはその医薬上許容しうる塩、
または
式(Ib):
[式中、R8は
酸素原子;
硫黄原子;および
=NR9基(ここでR9は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフェ
ニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;C1
〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜C6アル
コキシカルボニル;ベンゾイルオキシカルボニルである)
から選択され、
R2は水素;C1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;およびフェニルC1〜
C6アルキルから選択され、
Xは
酸素原子;
硫黄原子;および
−NR7−基(ここでR7は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフ
ェニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;
C1〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜C6ア
ルコキシカルボニル;ベンゾイルオキシカルボニル;適宜置換されるC1〜C6ア
ルキルスルホニル;適宜置換されるC6〜C10アリールスルホニルである)
から選択される]
の六環式カンプトテシン同族体を提供する。
本発明の範囲には、式(Ia)および(Ib)の化合物の医薬上許容しうる塩
も含まれる。
医薬上許容しうる塩は医薬上許容しうる酸、すなわちたとえば塩酸、硫酸、燐
酸、二燐酸、臭化水素酸もしくは硝酸のような無機酸、並びにたとえばクエン酸
、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息
香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸もしく
はp−トルエンスルホン酸のような有機酸の両者との塩を包含する。
ここで用いる「それぞれ独立して」という用語またはそれに類する表現は、多
数の可能な構造的変化を説明すべく用いられる。
より上にあることを示す。
特記しない限り、本明細書においてアルキル、シクロアルキル、フェニルアル
キル、アルカノイル、アルコキシカルボニルもしくはアルキルスルホニル基の炭
化水素鎖は線状もしくは分枝鎖の不飽和アルキル鎖である。
式(Ia)および(Ib)に関し、各種の置換基の好適意味は次の通りである
。
アルキル基は好ましくはC1〜C4アルキル基、たとえばメチル、エチル、n−
プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルもしくはt
−ブチルである。置換されたアルキル基は好ましくはハロゲン原子、好ましくは
塩素もしくは弗素および必要に応じ保護されたアミノ、カルボキシもしくはヒド
ロキシ基により置換されたC1〜C4アルキル基である。特に好適な置換されたア
ルキル基はフェニルC1〜C6アルキルである。
この種の部分のための保護基は当業界で知られたものから選択しうる[たとえ
ばW.T.グリーン、P.G.M.ワッツ、「有機合成における保護基」、ウィ
リー・インターサイエンス、ジョーン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨー
ク、N.Y.参照]。
たとえばアミノ部分のための好適な保護基はたとえばアセチル、プロパノイル
、ブタノイル、適宜置換されたベンゾイル、適宜置換されたC1〜C4アルコキシ
カルボニルもしくは適宜置換されたフェニルC1〜C4アルコキシカルボニルであ
る。カルボキシもしくはヒドロキシ部分のための保護基はたとえばエステル基、
たとえばC1〜C6アルキル、C3〜C6アルケニル、ベンジル、ニトロベンジルも
しくはベンズヒドリルエステル基である。カルボキシ部分のための特に好適な保
護基はメチル、エチル、t−ブチル、アリル、メタリル、ベンジル、o−もしく
はp−ニトロベンジルおよびベンズヒドリルエステル基を包含する。
シクロアルキル基は好ましくはC3〜C6シクロアルキル基、たとえばシクロプ
ロピル、シクロブチル、シクロペンチルもしくはシクロヘキシルである。本明細
書においてフェニルC1〜
C6アルキル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシカルボニルもしくは
C1〜C6アルキルスルホニル基のアルキル部分は、C1〜C6アルキル基につき上
記したと同じ好適意味を有する。
フェニル基もしくはベンゾイル基が置換される場合、環上の1個もしくはそれ
以上の水素原子がたとえばC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ア
ルカノイルオキシ、アミノ、ニトロもしくはハロゲンにより置換される。
好ましくはフェニル基もしくはベンゾイル基はC1〜C4アルキル、C1〜C4ア
ルコキシ、アミノ、ニトロもしくはハロゲンから選択される1個もしくはそれ以
上の基により置換される。より好ましくは、フェニル基もしくはベンゾイル基は
メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ
、塩素もしくは弗素により置換される。
置換されたC1〜C6アルコキシカルボニル基は好ましくはトリクロルエトキシ
カルボニルである。
アルキルスルホニル基は好ましくはC1〜C4アルキルスルホニル基であり、よ
り好ましくはメタンスルホニルもしくはエタンスルホニルである。置換アルキル
スルホニル基は好ましく
は1個もしくはそれ以上のハロゲン原子、好ましくは1個もしくはそれ以上の弗
素原子により置換されたC1〜C4アルキルスルホニル基である。より好ましくは
トリフルオロメタンスルホニルもしくはトリフルオロエタンスルホニルである。
適宜置換されるC6〜C10アリールスルホニル基としてはベンゼンスルホニル
、p−トルエンスルホニル、p−フルオロ−ベンゼンスルホニル、p−ニトロベ
ンゼンスルホニルおよびナフタレンスルホニル基が特に好適である。
R1は好ましくはメチル、ブチル、フェニルもしくはアミノである。
R2は好ましくは水素、メチル、エチル、n−プロピル、ブチル、イソプロピ
ル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル
、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロ
ピルもしくはフェニルブチルである。最も好適なR2は水素、メチル、エチルも
しくはt−ブチルである。
Xは好ましくは酸素原子もしくは硫黄原子である。
式(Ia)の化合物においてR1が基−NR3R4であり、ここでR3およびR4
がこれらの結合した窒素原子と一緒にな
って3〜7員の飽和もしくは不飽和の適宜置換されるヘテロ単環を形成する場合
、環はたとえば3、4、5、6もしくは7員環とすることができる。好ましくは
、たとえばピロリジニルもしくはピペリジル環である。
本発明による化合物の第1の好適種類は次のような式(Ia)を有するもので
ある:
R1は
水素;
C1〜C6アルキル;
適宜置換されたフェニル;および
−NR3R4基(ここでR3およびR4はそれぞれ独立して水素;C1〜C6アルキル
もしくはC1〜C6アルカノイルである)
から選択され、
R2は
水素;および
C1〜C6アルキル
から選択され、
Xは
酸素原子;および
硫黄原子
から選択され、
さらにその医薬上許容しうる塩も含まれる。
本発明による化合物の第2の好適種類は次のような式(Ib)を有するもので
ある:
R8は
酸素原子;および
−NR9−基(ここでR9は水素;C1〜C6アルキルもしくはC1〜C6アルカノイ
ルである)
から選択され、
R2は
水素;および
C1〜C6アルキル
から選択され、
Xは
酸素原子;および
硫黄原子
から選択され、
さらにその医薬上許容しうる塩も含まれる。
式(Ia)の好適化合物の例を下表1に示し、ここで記号Me、n−Buおよ
びPhはそれぞれメチル、n−ブチルおよびフェニルを示す。表に示した化合物
はNo.により同定され、その対応する化学名を各表の下に示す。
表1に示した式(Ia)の化合物の化学名は次の通りである:
(1)オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(2)2−メチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(3)2−ブチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(4)2−フェニル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(5)7−エチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(6)7−エチル−2−メチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(7)7−エチル−2−ブチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(8)7−エチル−2−フェニル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(9)チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(10)2−メチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(11)2−ブチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(12)2−フェニル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(13)アミノ−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(14)2−アセタミド−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(15)7−エチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(16)7−エチル−2−メチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(17)7−エチル−2−ブチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(18)7−エチル−2−フェニル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン。
式(Ib)の好適化合物の例を下表2に示し、ここで記号Meはメチルを示す
。
表2に示した式(Ib)の化合物の化学名は次の通りである:
(19)オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン;
(20)2−イミノ−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(21)2−メチルイミノ−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(22)7−エチル−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン
;
(23)7−エチル−2−イミノ−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシ
ン;
(24)7−エチル−2−メチルイミノ−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプ
トテシン;
(25)チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン;
(26)2−イミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(27)2−メチルイミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(28)7−エチル−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン;
(29)7−エチル−2−イミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン
;および
(30)7−エチル−2−メチルイミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプト
テシン。
本発明の式(Ia)および(Ib)の化合物は次の反応式Aに例示される方法
により製造することができ、ここでR1、R2およびXの意味は上記の意味を有す
る。反応式A
上記反応式Aによれば本発明の化合物は:
(1) 式(II):
[式中、R2は
水素;C1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;およびフェニルC1〜C6ア
ルキル
から選択され;
Xは
酸素原子;
硫黄原子;および
−NR7−基(ここでR7は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフ
ェニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;
C1〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜
C6アルコキシカルボニル;ベンゾイルオキシカルボニル;適宜置換されるC1〜
C6アルキルスルホニル;適宜置換されるC6〜C10アリールスルホニルである)
から選択される]
の化合物を還元して式(III):
[式中、R2およびXは上記の意味を有する]
の化合物を得、
(2)
(a)式(III)の化合物を式(IV):
[式中、R1は
水素;
適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフェニルC1〜
C6アルキル;
C3〜C7シクロアルキル;
適宜置換されるフェニル;
−NR3R4基(ここでR3およびR4はそれぞれ独立して水素;適宜置換されるC1
〜C6アルキル、たとえばフェニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル
;適宜置換されるフェニル;C1〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル
;適宜置換されるC1〜C6アルコキシカルボニル;もしくはベンゾイルオキシカ
ルボニルであるか、またはR3およびR4はこれらが結合した窒素原子と一緒にな
って3〜7員の飽和もしくは不飽和の適宜置換されるヘテロ単環を形成する);
−OR5基(ここでR5は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフェ
ニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;C1
〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜C6アル
コキシカルボニル;もしくはベンゾイルオキシカルボニルである);および
−SR6基(ここでR6は水素;適宜置換されるC1〜C6ア
ルキル、たとえばフェニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置
換されるフェニル;C1〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置
換されるC1〜C6アルコキシカルボニル;もしくはベンゾイルオキシカルボニル
である)から選択され、
Yは離脱基である]
の化合物と反応させて上記式(Ia)を有する化合物を得、または
(b)式(III)の化合物を式(V):
[式中、R8は
酸素原子;
硫黄原子;および
=NR9基(ここでR9は水素;適宜置換されるC1〜C6アルキル、たとえばフェ
ニルC1〜C6アルキル;C3〜C7シクロアルキル;適宜置換されるフェニル;C1
〜C6アルカノイル;適宜置換されるベンゾイル;適宜置換されるC1〜C6アル
コキシカルボニル;ベンゾイルオキシカルボニルである)
から選択され;
LおよびL1はそれぞれ独立して離脱基である]
の化合物と反応させて上記式(Ib)を有する化合物を得、さらに
(3) 必要に応じ、式(Ia)もしくは(Ib)の得られた化合物を塩化させ
て、その医薬上許容しうる塩を得る
ことからなる方法により製造することができる。
離脱基LおよびL1はたとえばハロゲン原子、アルコキシ(たとえばメトキシ
、エトキシもしくはトリクロルエトキシ)基、フェノキシ基またはイミダゾール
基とすることができる。離脱基Yはたとえばハロゲン原子(たとえば塩素)また
はアルコキシカルボニル基(たとえばエトキシカルボニル基)である。
上記工程(1)の反応は、好ましくは化合物(II)を適する溶剤中で適する
触媒の存在下に還元剤を用いて還元して行われる。
適する還元剤はたとえば分子状水素または水素源、たとえば蟻酸トリエチルア
ンモニウム、蟻酸、水素化トリブチル錫、シクロヘキサジエンなどであり、たと
えばジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、酢酸、クロロホルム、ジオ
キサンもしくはその混液中に存在させる。典型的には反応温度は約0〜100℃
である。典型的には反応は1時間〜3日間にわたり行
われる。典型的には反応は1〜100気圧の圧力下で行われる。上記還元に適す
る触媒は遷移金属、たとえばパラジウム、白金、ロジウム、ニッケル、ルテニウ
ムまたはその混合物を包含する。
還元工程(1)は、たとえばJ・マーチ、「アドバンスト・オーガニック・ケ
ミストリー」、第3版、第1103頁に記載されたように行うことができ、或い
はたとえばSnCl2、ZnもしくはFeおよびその塩のような還元性金属また
はその塩により適する溶剤(たとえば希釈プロトン酸水溶液、たとえばHCl、
水、エタノール、メタノールもしくはその混液)中で−20〜+60℃の温度に
て数分間〜数日間にわたり行うこともできる。
式(III)の化合物と式(IV)の化合物との反応は好ましくは、化合物(
III)を化合物(IV)と適する溶剤中で反応させることにより行われる。典
型的には反応温度は約−20〜約200℃、好ましくは約20〜約100℃の範
囲である。典型的には反応は、ほぼ数分間〜数日間、たとえば5分間〜3日間、
好ましくは約1時間〜約1日の範囲で変化しうる時間にわたり、必要に応じ適す
る有機もしくは無機塩基の存在下に行われる。適する溶剤はジメチルホルムアミ
ド(DMF)、
アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、ジオキサ
ン、テトラヒドロフラン(THF)またはその混液を包含する。
適する無機塩基は、たとえばアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、たとえば
NaHCO3、Na2CO3もしくはNaOAcから選択することができる。
適する有機塩基はたとえばトリアルキルアミン、たとえばトリエチルアミンも
しくはジイソプロピルエチルアミン;またはヘテロ芳香族塩基、たとえばピリジ
ンまたは2,6−C1〜C6−アルキル置換ピリジン(たとえば2,6−ルチジン
)とすることができる。
式(III)の化合物と式(V)の化合物との反応は、たとえば化合物(II
I)を適する溶剤に溶解させて化合物(V)と反応させることにより行うことが
できる。適する溶剤はエチルクロルカーボネート、ジフェニルカーボネートもし
くはトリクロルエチルクロル−カーボネートを包含する。典型的には反応温度は
−20〜200℃、好ましくは20〜100℃の範囲である。典型的には反応は
5分間〜数日間、好ましくは約1時間〜約10時間の範囲で行われる。
式(II)および(III)の出発化合物は20(S)−配置を有するが、対
応の20(R)−異性体を実質的に含まない。20(S)−配置は工程全体にて
保持され、式(Ia)もしくは(Ib)の化合物も同じ20(S)−配置を有す
る。
しかしながら、この方法は式(II)の化合物と対応の20(R)−異性体と
のラセミ混合物にも適用することができる。その場合、式(Ia)もしくは(I
b)の化合物と対応の20(R)−異性体とのラセミ混合物が得られる。
本発明の方法で使用される出発物質は公知化合物であり、或いは公知方法にし
たがい、または公知方法と同様な方法により得ることができる。たとえば9−ア
ミノ−10−ヒドロキシ−カンプトテシンおよび9−ニトロ−10−ヒドロキシ
−カンプトテシンはM.C.ワニ等、ジャーナル・メジカル・ケミストリー(1
986)、第29巻、第2358〜2363頁にしたがって作成することができ
る。
本発明による式(Ia)もしくは(Ib)の化合物は白血病および充実腫瘍(
たとえば結腸および肛門の各腫瘍)に対し抗腫瘍活性を有する。本発明による化
合物の抗腫瘍活性は、たとえばこれらがジャーナル・メジカル・ケミストリー(
19
93)、第36巻、第2689頁に記載された方法により試験された際、L 1
210ネズミリンパ性白血病モデルにおいて抗白血病活性を有することが判明し
たという事実により示される。
さらに本発明は、有効量の上記式(Ia)もしくは(Ib)を有する少なくと
も1種の六環式カンプトテシン同族体を含有する医薬組成物をも提供する。たと
えばヒトのような哺乳動物をこの種の組成物で治療することができる。典型的な
インビボ投与量は体重1kg当たり0.1〜60mg、好ましくは1〜40mg
/kgのカンプトテシン同族体である。
本発明の組成物は慣用の医薬上適合しうる結合剤および/またはアジュバント
物質を含む。さらに活性物質を所望の作用を付与しない或いは所望の作用を補充
する他の活性物質と混合することもできる。本発明による活性物質は任意の経路
、たとえば経口的、非経口的、静脈内、皮内、皮下または局部的に液体もしくは
固体の形態で投与することができる。
本発明による化合物の好適な投与経路は経口である。経口組成物は一般に不活
性希釈剤もしくは食用キャリヤを含み、ゼラチンカプセルに封入したり或いは錠
剤に圧縮することができる。
経口治療投与の目的で、前記化合物は賦形薬と混合して錠剤、カプセル、エリキ
シル、シロップなどの形態で使用することができる。この種の製剤に含有される
活性化合物の量は、特定組成物に応じ広範囲に変化させることができる。この量
は一般に少なくとも0.1重量%の活性化合物である。
錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは1種もしくはそれ以上の次の成分を含
有することができる:結合剤、たとえば微晶質セルロース、トラガカントガムも
しくはゼラチン;賦形薬、たとえば澱粉もしくは乳糖;崩壊剤、たとえばアルギ
ン酸、Primogel(Primogelは商標である)、コーンスターチなど;滑剤、たとえ
ばステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes(Sterotesは商標である);グリ
ダント、たとえばコロイド状シリカ;甘味料、たとえば蔗糖もしくはサッカリン
;および/または着香料、たとえばペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジ
香料など。
投与単位形態がカプセルである場合、これは上記添加物の他に、たとえば脂肪
油のような液体キャリヤを含有することができる。他の投与単位形態は、投与単
位の物理的形態を改変しうる種々異なる物質、たとえば被覆材をも含有すること
ができる。
したがって錠剤もしくは丸薬はシュガーシェラックまたは他の腸溶性被覆剤で被
覆することができる。シロップは活性化合物の他に甘味料としての蔗糖および慣
用の保存料、着色料および着香料をも含有することができる。これら種々の組成
物を作成する際に使用される物質は医薬上純粋および使用量にて無毒性でなけれ
ばならない。
非経口治療投与の目的で、活性成分は溶液もしくは懸濁液に混入することがで
きる。この種の溶液もしくは懸濁液は次の各成分を含むことができる:無菌希釈
剤、たとえば注射用の水、塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グ
リセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶剤;抗細菌剤、たとえばベン
ジルアルコールもしくはメチルパラベン;酸化防止剤、たとえばアスコロビン酸
もしくは重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、たとえばエチレンジアミンテトラ
酢酸;緩衝剤、たとえば酢酸塩、クエン酸塩もしくは燐酸塩;並びに等張性を調
整する薬剤、たとえば塩化ナトリウムもしくはデキストロース。非経口製剤はア
ンプル、使捨て注射器またはガラスもしくはプラスチックで作成された複数回投
与壜に封入することができる。
投与量は軽減させるべき病気症状の特定程度と共に変化する。
任意特定の患者につき、特定投与処方は個々の必要性および前記化合物の投与を
行い或いは指示する医者の専門的判断に従うべきことが了解されよう。さらに、
ここに示した投与量は単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定しないことも了解
されよう。投与物は単一段階で投与することができ、或いは多数回の少量投与に
分けて種々異なる時間間隔で投与することもできる。
以下、本発明を非限定的実施例によりさらに説明する。実施例1
:オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン(化合物1)
DMF(50mL)中の9−ニトロ−10−ヒドロキシ カンプトテシン(0
.5g)の溶液に、炭素上に担持されたPd(Pd/C)(70mg)を添加し
た。次いで混合物を水素雰囲気下に室温および大気圧にて2時間にわたり水素化
した。触媒を濾去し、慎重にDMFにより少しづつ洗浄した。次いで溶液を新た
に作成されたエチルホルムイデート(3g)で処理した。この混合物を1晩撹拌
し、次いで減圧蒸発させた。残留物を水/CHCl3に取った。有機層を脱水す
ると共に減圧蒸発させた。残留物をEtOHに取り、濾過し、次いで乾燥して標
記生成物を固体(0.2g)として得た。
NMR(DMSO−d6)d(ppm):0.87(3H,t,J=7.3Hz);1.85(2H,m);5.2
9(2H,s);5,42(2H,s);6.52(1H,s);7,32(1H,s);8.18(1H,d,J=9.2Hz);8,29(1H
,d,J=9.2Hz);9.02(1H,s);9.07(1H,s)。
MS(FD)=389 。
同様にして適する反応物質を用い、次の化合物を製造した(第1表参照):
(2)2−メチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(3)2−ブチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(4)2−フェニル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシ
ン;
(5)7−エチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(6)7−エチル−2−メチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(7)7−エチル−2−ブチル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(8)7−エチル−2−フェニル−オキサゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(9)チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(10)2−メチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(11)2−ブチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(12)2−フェニル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(13)2−アミノ−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(14)2−アセタミド−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(15)7−エチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(16)7−エチル−2−メチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(17)7−エチル−2−ブチル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン;
(18)7−エチル−2−フェニル−チアゾロ[4,5−i]カンプトテシン。実施例2
:オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン(化合物1
9)
THF(50mL)中の9−ニトロ−10−ヒドロキシカンプトテシン(0.
2g)の溶液にPd/C触媒(100mg)を添加した。次いで混合物を水素雰
囲気下に室温および
大気圧にて2時間にわたり水素化した。触媒を濾去すると共にTHFにより少し
づつ慎重に洗浄した。カルボニルジイミダゾール(0.24g)を添加し、混合
物を70℃まで4時間にわたり加熱した。この溶液を減圧蒸発させ、粗製反応混
合物をカラムクロマトグラフィーにより精製して0.1gの標記生成物を得た。
NMR(DMSO−d6)d(ppm):0.85(3H,t,J=7.3Hz);1.83(2H,m);5.3
1(2H,s);5.39(2H,s);6.50(1H,s);7.29(1H,s);7.89(2H,m);8.63(1H,s);12.
6(1H,bs)。
MS(FD)=405。
同様な手順により適する反応物質を用いて次の化合物を製造した(第2表参照
):
(20)2−イミノ−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(21)2−メチルイミノ−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(22)7−エチル−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン
;
(23)7−エチル−2−イミノ−オキサゾリジノ[4,5−
i]カンプトテシン;
(24)7−エチル−2−メチルイミノ−オキサゾリジノ[4,5−i]カンプ
トテシン;
(25)チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン;
(26)2−イミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(27)2−メチルイミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン;
(28)7−エチル−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン−2−オン;
(29)7−エチル−2−イミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプトテシン
;および
(30)7−エチル−2−メチルイミノ−チアゾリジノ[4,5−i]カンプト
テシン。
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(72)発明者 ザリーニ,フランコ
イタリー国、イ−20019・セツテイモ・ミ
ラネーゼ、ビア・ジ・デイ・ビツトリオ、
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