JPH1150226A - 溶射材料とその製造方法、それを用いた耐熱被覆および耐熱部材 - Google Patents

溶射材料とその製造方法、それを用いた耐熱被覆および耐熱部材

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JPH1150226A
JPH1150226A JP9201923A JP20192397A JPH1150226A JP H1150226 A JPH1150226 A JP H1150226A JP 9201923 A JP9201923 A JP 9201923A JP 20192397 A JP20192397 A JP 20192397A JP H1150226 A JPH1150226 A JP H1150226A
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heat resistant
zirconium oxide
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博光 竹田
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一浩 安田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温に長時間曝されても微細構造に変化を来
たすことがない耐熱被覆用の溶射材料が求められている
と共に、そのような溶射材料を用いることによって、安
定にその機能を発揮させることを可能にした耐熱被覆お
よび耐熱部材が求められている。 【解決手段】 例えばジルコニア粒子の表面や結晶粒界
に、イオン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm
以上の元素やこの元素を含む化合物を存在させた溶射材
料である。耐熱被覆は主としてジルコニアからなるもの
であって、ジルコニアの結晶粒界に、イオン半径が六配
位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の元素やこの元素
を含む化合物を存在している。耐熱部材4は、金属基材
1の表面に直接、あるいは金属結合層2を介して、上記
した耐熱被覆がセラミックス遮熱層3として形成されて
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱被覆用の溶射
材料とその製造方法、およびそれを用いた耐熱被覆と耐
熱部材に関する。
【0002】
【従来の技術】航空機用エンジンやガスタービンの燃焼
部材(燃焼器、静・動翼等)は、高温雰囲気下や応力下
等の非常に過酷な環境で使用される。これらの高温部材
には従来耐熱合金等の金属部材が用いられてきたが、燃
焼温度の上昇に伴って金属部材を高温雰囲気から保護す
るために、熱伝導率が小さいセラミックス被覆層を遮熱
層として金属部材の表面に施工する遮熱コーティング
(TBC)が用いられはじめている。
【0003】従来、TBC用のセラミックス材料には、
熱伝導率が小さく、かつ金属部材との整合性から熱膨張
率が大きい、酸化ジルコニウム(ジルコニア(Zr
2 ))が使用されている。また、TBCの施工方法と
しては溶射法が一般的である。現在のところ、溶射法に
よって作製した、主として安定化ジルコニアからなる被
覆層が燃焼器に使用されており、徐々にガスタービンの
主要部品であるタービン翼への適用が検討されつつあ
る。
【0004】また、ガスタービンの効率向上への前進は
目覚しく、現在の最高水準のガスタービンの動作温度で
ある 1573Kをはるかに超える、例えば 1973Kを上回るシ
ステム検討されており、具体的な設計も進められてい
る。このようなシステムにおいてはタービン動・静翼へ
のTBCの適用が必須となっている。
【0005】ところが、TBCに用いられるジルコニ
ア、特に溶射法で形成されたジルコニアは、 1473Kを超
える温度域では結晶粒の凝集粗大化が生じ、本来溶射特
有の微細な結晶構造が有している歪み緩和機能が低下し
てしまうという問題を有している。この問題はTBCを
高温で長時間使用することを妨げるものである。また、
この問題は現在開発が進められている超高温ガスタービ
ンに限らず、ジルコニア層を厚くして大きな温度勾配を
得るシステムでも生じるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、現状
のジルコニア被覆層は負荷の大きな条件下では結晶粒の
凝集粗大化が生じることから、長時間高信頼性の下で使
用することができないという問題を有している。このた
め、現状ではジルコニア被覆層を短期間で定期的に補修
して使用することが不可欠となっており、補修に要する
工数やコストによりガスタービン等の高温機器のコスト
増を招いている。
【0007】本発明はこのような課題に対処するために
なされたもので、高温に長時間曝されても構造の変化を
来たすことがない耐熱被覆用の溶射材料とその製造方法
を提供することを目的としており、さらにはそのような
溶射材料を用いることによって、安定にその機能を発揮
させることを可能にした耐熱被覆および耐熱部材を提供
することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、ジルコニ
ア系耐熱被覆を高温で長時間使用した際の耐久性低下の
原因となるジルコニア粒子相互の拡散を、ジルコニアと
反応することがない元素やそれを含む化合物の微粒子あ
るいは膜をジルコニアの結晶粒界に存在させることで阻
止できることを見出した。
【0009】本発明はこのような知見に基いて成された
ものであり、本発明の溶射材料は請求項1に記載したよ
うに、酸化ジルコニウム粒子の表面に、イオン半径(ア
ーレンスの表に則る。以下同じ)が六配位換算で0.08nm
以下または0.11nm以上の元素および前記元素を含む化合
物から選ばれる少なくとも 1種が付着していることを特
徴としている。
【0010】本発明の他の溶射材料は、請求項2に記載
したように、酸化ジルコニウム結晶粒の結晶粒界に、イ
オン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の
元素および前記元素を含む化合物から選ばれる少なくと
も 1種が存在することを特徴としている。
【0011】また、本発明における第1の溶射材料の製
造方法は、請求項3に記載したように、酸化ジルコニウ
ムと、イオン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11
nm以上の元素および前記元素を含む化合物から選ばれる
少なくとも 1種とを酸に溶解する工程と、前記酸にアル
カリを滴下し、前記酸化ジルコニウムと前記元素および
前記元素を含む化合物から選ばれる少なくとも 1種の両
者を析出、沈殿させる工程と、前記沈殿物を乾燥および
焼成した後に粉砕する工程とを具備することを特徴とし
ている。
【0012】本発明における第2の溶射材料の製造方法
は、請求項4に記載したように、有機物に可溶なジルコ
ニウムの化合物およびイオン半径が六配位換算で0.08nm
以下または0.11nm以上の元素および前記元素を含む化合
物から選ばれる少なくとも 1種を有機物中で混合する工
程と、前記混合物を乾燥および焼成した後に粉砕する工
程とを具備することを特徴としている。なお、本発明の
溶射材料はこれら製造方法により得られるものに限られ
るものではない。
【0013】さらに、本発明の耐熱被覆は、請求項5に
記載したように、主として酸化ジルコニウムからなる耐
熱被覆であって、前記酸化ジルコニウムの結晶粒界に、
イオン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上
の元素および前記元素を含む化合物から選ばれる少なく
とも 1種が存在していることを特徴としている。
【0014】本発明の耐熱部材は、請求項6に記載した
ように、金属基材と、前記金属基材の表面に直接、ある
いは金属結合層を介して形成されたセラミックス遮熱層
とを具備する耐熱部材において、前記セラミックス遮熱
層は主として酸化ジルコニウムからなり、かつ前記酸化
ジルコニウムの結晶粒界に、イオン半径が六配位換算で
0.08nm以下または0.11nm以上の元素および前記元素を含
む化合物から選ばれる少なくとも 1種が存在しているこ
とを特徴としている。
【0015】一般に溶射法で被膜を形成すると、被膜は
急冷されるために微細な組織になり、かつ歪みも蓄えら
れる。このような状態においては、高温に保持すると同
一材料の他の材料、例えば焼結法や溶融法で得られた材
料に比べて組織の凝集・粗大化が進む傾向にある。これ
は、溶射被膜が有する微細組織が一般的な手法で得られ
るものに比べてエネルギー的に高いレベルにあるため、
凝集・粗大化に必要な相互拡散が容易に生じるからであ
る。
【0016】本発明においては、溶射材料としてのジル
コニア粒子の表面や結晶粒界に、ジルコニアと反応する
ことがない元素やその化合物、すなわちイオン半径が六
配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の元素やその化
合物を存在させているため、ジルコニア結晶粒相互の拡
散が抑制される。そして、このような溶射材料を用いて
形成した耐熱被覆は、ジルコニア溶射層の結晶粒界にジ
ルコニアと反応することがない元素やその化合物が存在
し、耐熱被覆の結晶粒界を通じて生じる拡散が規制され
るため、組織の凝集・粗大化を抑制することが可能とな
る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0018】本発明の溶射材料は主としてジルコニア
(ZrO2 )粒子からなるものであり、この溶射材料と
してのジルコニア粒子の表面、もしくはジルコニア結晶
粒の結晶粒界には、イオン半径が六配位換算で0.08nm以
下または0.11nm以上の元素やこの元素を含む化合物が存
在している。
【0019】溶射材料を主として構成するジルコニア
は、特に限定されるものではないが、イットリア(Y2
3 )等の希土類酸化物やマグネシア(MgO)、カル
シア(CaO)等のアルカリ土類酸化物を安定化剤とし
て含み、主として正方晶または立方晶で構成された部分
安定化ジルコニアまたは安定化ジルコニアを使用するこ
とが好ましい。特に、安定化剤としてY2 3 を 6〜25
重量% の範囲で含む正方晶ジルコニアが望ましい。
【0020】本発明の溶射材料は、上記したようなジル
コニア粒子の表面やジルコニア結晶粒の結晶粒界に、イ
オン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の
元素やこの元素を含む化合物を存在させたものである。
このような元素はそのイオン半径に基いて、ジルコニア
(ZrO2 )が構成する格子内への進入が困難である。
すなわち、Zrのイオン半径とある程度の差を有する元
素は、ZrO2 が構成する格子内に進入することが困難
で、ジルコニアと反応することがない。従って、このよ
うな溶射材料を用いて耐熱被覆を形成した際に、上記し
た元素やその化合物がジルコニア結晶粒の結晶粒界に存
在していると、高温下におけるジルコニア結晶粒相互の
拡散が阻止される。
【0021】このように、イオン半径が六配位換算で0.
08nm以下または0.11nm以上の元素やその化合物は、ジル
コニア結晶粒相互の拡散阻止材として機能する。この拡
散阻止材としての元素もしくはその化合物には、高温で
単体でも安定であり、粒子や膜等の形態を維持し得るこ
とが求められる。このようなことから、拡散阻止材とし
て使用する元素は、Al、Ta、Sc、La、Ga等か
ら選ばれる少なくとも1種の金属元素であることが好ま
しい。
【0022】また、拡散阻止材は上記したようにジルコ
ニアと反応しないと共に、それ自体が高温でも安定であ
れば、例えば金属粒子や金属膜であってもよいが、特に
高温安定性に優れる酸化物、炭化物、窒化物等の化合物
として使用することが好ましい。すなわち、拡散阻止材
にはイオン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm
以上の元素の酸化物、炭化物、窒化物等の化合物を用い
ることが望ましい。
【0023】上述したイオン半径が六配位換算で0.08nm
以下または0.11nm以上の元素やその化合物の存在位置や
存在形態は、後に詳述する溶射材料の製造方法、言い換
えると上記した元素やその化合物の分散方法に対応す
る。上記した元素やその化合物の存在位置は、耐熱被覆
とした場合にそれらがジルコニア結晶粒の結晶粒界に存
在すればよく、溶射材料としてのジルコニア粒子の表面
に付着させたり、またジルコニア粒子を構成する結晶粒
の粒界等に存在させる。また、ジルコニア粒子を造粒し
て溶射材料として使用する場合、ジルコニア粒子の粒子
界面等に存在させてもよい。
【0024】存在形態については、例えば上記した元素
やその化合物を粒子として存在させる場合、その平均粒
子径は 1〜50nm程度であることが好ましい。上記した元
素やその化合物の粒子径が50nmを超えると、分散性が悪
化する等して、ジルコニア結晶粒相互の拡散阻止機能が
低下するおそれがある。一方、粒子径が 1nm未満である
と、十分な拡散阻止機能が得られないおそれがある。な
お、上記した元素やその化合物を膜として存在させる場
合、その膜厚は上記した粒子径と同程度とすることが好
ましい。
【0025】また、拡散阻止材としての上記イオン半径
を有する元素やその化合物は、ジルコニア粒子に対して
0.1〜 5重量% の範囲で存在させることが好ましい。拡
散阻止材の量が 5重量% を超えると、ジルコニア本来の
特性が低下したり、また拡散阻止材自体が焼結する等し
てジルコニア結晶粒相互の拡散阻止機能が低下するおそ
れがある。一方、拡散阻止材の量が 0.1重量% 未満であ
ると、十分な拡散阻止機能が得られないおそれがある。
【0026】上述したような溶射材料は種々の方法で作
製することが可能であるが、特に上記した元素やその化
合物を拡散阻止機能に優れる微粒子として析出させるこ
とができ、かつ析出粒子を均一に存在させることが可能
であることから、以下に示す共沈法や有機金属化合物法
を適用して作製することが好ましい。
【0027】まず、共沈法について説明する。上記した
イオン半径を有する元素やその化合物の出発物質として
酸に可溶なものを選択する。これをジルコニアと共に酸
に溶解した後、アルカリを滴下して両者を同時に析出・
沈殿させる。この沈殿物を乾燥し、乾燥物を高温で焼成
した後、得られた焼成物を粉砕、造粒、分級する等して
溶射材料を得る。このようにして得られる溶射材料にお
いては、上記した元素やその化合物の微粒子がジルコニ
アの結晶粒界に均一に存在するため、良好なジルコニア
結晶粒相互の拡散阻止機能を得ることができる。
【0028】次に、有機金属化合物法について説明す
る。ジルコニアおよび上記したイオン半径を有する元素
やその化合物の出発物質として、有機物に可溶なものを
それぞれ選択する。有機物に可溶な出発物質としては、
例えば金属アルコキシドやキレート化合物等の有機金属
化合物が例示される。これらを所望の量範囲で有機物中
に溶解させ、これを例えばゲル化した後、乾燥および焼
成し、さらに粉砕、造粒、分級する等して溶射材料を得
る。このようにして得られる溶射材料は、上記した元素
やその化合物を微細にかつ均一にジルコニアの結晶粒界
等に存在させることができるため、良好なジルコニア結
晶粒相互の拡散阻止機能が得られる。
【0029】上記した共沈法や有機金属化合物法以外の
方法によっても、本発明の溶射材料を作製することがで
きる。例えば、ジルコニア粉末と上記した元素やその化
合物の粉末とを機械的に混合し、この混合物を高温で焼
成した後、粉砕、造粒、分級する等によっても、本発明
の溶射材料を得ることができる。この際、上記したイオ
ン半径を有する元素を予め混合し、その後の焼成工程等
で該元素を化合物に変化させてもよい。
【0030】また、ジルコニア粉末の表面全面ないしは
一部を、物理蒸着法や化学蒸着法にて上記した元素やそ
の化合物で被覆することによっても、本発明の溶射材料
を得ることができる。この際、上記したイオン半径を有
する元素で予め被覆し、その後の熱処理工程等により該
元素を化合物に変化させてもよい。
【0031】なお、これら以外の製造方法によるもので
あっても、ジルコニア粒子の表面やジルコニア結晶粒の
結晶粒界に、イオン半径が六配位換算で0.08nm以下また
は0.11nm以上の元素やこの元素を含む化合物が存在して
いれば、本発明の溶射材料として使用できることは言う
までもない。
【0032】上述した拡散阻止材としての元素やその化
合物を含むジルコニア粒子からなる溶射材料は、それを
施工対象物にプラズマ溶射や火炎溶射して、セラミック
ス被覆層(溶射層)を形成することによって、耐熱被覆
として使用される。耐熱被覆の施工対象としては、航空
機用エンジンやガスタービンの燃焼部材、例えば燃焼器
の内面やタービン静・動翼等が代表例として挙げられる
が、本発明の耐熱被覆はこれらに限定されるものではな
く、例えば炉材のライニング、鋳造用治具のライニング
等、各種高温部材のコーティングとして使用することが
できる。
【0033】図1は本発明の耐熱被覆を金属基材上に施
した高温部材、すなわち本発明の耐熱部材の一実施形態
の構造を示す断面図である。図1に示す耐熱部材は航空
機用エンジンやガスタービンの燃焼器やタービン静・動
翼等に好適な部材構造を示すものである。
【0034】同図において、1は金属基材であり、この
金属基材1としてはFe、NiおよびCoから選ばれる
少なくとも 1種の元素を主成分とする耐熱合金が挙げら
れ、使用用途等に応じて各種公知の耐熱合金を適宜選択
して使用することができる。実用上は、IN738、I
N939、Mar−M247、RENE80等のNi基
超合金や、FSX414、Mar−M509等のCo基
超合金を用いることが有効である。
【0035】上述した金属基材1の表面には、耐食・耐
酸化性に優れると共に、金属基材1と後述するセラミッ
クス遮熱層3との中間の熱膨張係数を有するM−Cr−
Al−Y合金(MはFe、NiおよびCoから選ばれる
少なくとも 1種の元素を示す)等からなる金属結合層
(ボンド層)2が被覆形成されている。なお、金属基材
1上に直接セラミックス遮熱層3を被覆形成することも
可能である。
【0036】M−Cr−Al−Y合金からなる金属結合
層2は、金属基材1の耐食・耐酸化性を保証すると同時
に、金属基材1/セラミックス遮熱層3間の熱膨張係数
の違いによる熱応力の緩和を図ることを目的としてお
り、総合的にこれらの性能を考慮して、一般的には 0.1
〜20重量% のAl、10〜35重量% のCr、 0.1〜 5重量
% のYを含み、残部がNiおよびCoから選ばれる少な
くとも 1種の元素から実質的になる組成の合金が好まし
く用いられる。
【0037】金属結合層2は、プラズマ溶射法、HVO
F法、PVD法、CVD法等の成膜方法によって形成す
ることができるが、実用上はプラズマ溶射法が最も有効
である。また、金属結合層2の厚さは10〜 500μm 程度
の範囲から用途に応じて選択され、例えばガスタービン
翼部では50〜 300μm 程度が酸化寿命や金属基材1とセ
ラミックス遮熱層3の応力緩和効果の観点から適当であ
る。
【0038】上述したような金属結合層2上(もしくは
金属基材1上)には、セラミックス遮熱層(TBC)3
が被覆形成されており、これらによって例えば高温機器
の構成材料として使用される耐熱部材4が構成されてい
る。セラミックス遮熱層3は、前述した本発明の溶射材
料をプラズマ溶射もしくは火炎溶射した被覆層(ジルコ
ニア溶射層)である。セラミックス遮熱層3は、各種の
溶射法により容易に形成することができ、実用上はプラ
ズマ溶射法が最も有効である。また、セラミックス遮熱
層3の厚さ(全体としての厚さ)は、用途に応じて 100
〜3000μm 程度の範囲から適宜選択され、例えばガスタ
ービン翼では 100〜 300μm 程度、燃焼器内面では 500
〜2000μm 程度とすることが好ましい。
【0039】そして、セラミックス遮熱層3は前述した
溶射材料に基いて、主としてジルコニア(例えば安定化
ジルコニア)からなると共に、このジルコニア結晶粒の
結晶粒界に、イオン半径が六配位換算で0.08nm以下また
は0.11nm以上の元素やその化合物が存在している。この
セラミックス遮熱層3のジルコニアの結晶粒界に存在す
る元素やその化合物は、前述したように高温下における
ジルコニア結晶粒相互の拡散を阻止する機能を有する。
このように、セラミックス遮熱層3の結晶粒界を通じて
生じる拡散を規制することによって、ジルコニア溶射層
が本来有する歪み緩和機能、すなわち溶射層特有の微細
な結晶構造が有する歪み緩和機能を損わせる結晶粒の凝
集・粗大化を抑制することが可能となる。
【0040】上述したように、本発明のセラミックス遮
熱層(ジルコニア溶射層)3は、高温下で長時間使用し
た際のジルコニア結晶粒の凝集・粗大化を抑制すること
ができるため、ジルコニア溶射層が本来有する歪み緩和
機能等が長時間にわたって維持され、これにより熱衝撃
や熱応力等による亀裂の進展に伴う割れや剥離等の発生
を良好に抑制することが可能となる。従って、この実施
形態の耐熱部材4は、高温雰囲気でかつ熱サイクルや熱
衝撃等が付加されるような運転環境下で、長時間安定し
て使用することができ、ガスタービンやエンジン等の高
温機器の構成材料等として好適である。
【0041】ここで、セラミックス遮熱層(TBC)3
は、その使用時にセラミックス遮熱層3内に温度勾配が
生じ、設計上 1473Kを下回る領域が存在する(図2参
照)。従って、本発明の耐熱被覆をセラミックス遮熱層
3全体に適用しても何等問題はないが、例えば 1473Kを
下回る領域については一般的なジルコニア溶射層を適用
してもよい。すなわち、セラミックス遮熱層3を一般的
なジルコニア溶射層と本発明の耐熱被覆との積層膜で構
成することができる。このような積層構造のセラミック
ス遮熱層3によれば、その製造コストの削減等を図るこ
とができる。
【0042】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例およびその評
価結果について述べる。
【0043】実施例1 Y2 3 が 8重量% 添加されたZrO2 と、この8wt%Y
2 3 −ZrO2 に対して 0.4重量% のAl(OH)3
(水酸化アルミニウム)とを、H2 SO4 (硫酸)中に
溶解させ、撹拌しながらNaOH(苛性ソーダ)を滴下
した。これによって、8wt%Y2 3 −ZrO2 とAl
(OH)3 とが同時に沈殿した。沈殿物を水洗後乾燥
し、大気中にて 1873Kで10時間焼成した。この焼成物を
粉砕および分級した後、溶射用粉末に適した粒径まで造
粒した。この溶射用粉末の微細構造を電子顕微鏡で観察
したところ、ZrO2 の結晶粒界に直径80nm程度のAl
2 3粒子が存在していることを確認した。また、化学
分析の結果では、Al2 3 の量比は0.25重量% であっ
た。
【0044】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細なAl
2 3 が存在していることが分かった。この微細なAl
2 3 は直径が80nm程度の粒状のものが主体であった
が、中には数nmの粒子も観察された。粒界での存在量は
おおよそ 200nmに 1個程度であった。また、溶射被覆層
を化学分析したところ、Al2 3 の量比は 0.2重量%
であった。なお、Al2 3 は粒界のみではなく、一部
ZrO2 粒内にも微粒子として存在することが観察され
た。
【0045】上記した耐熱被覆を有する耐熱合金板(耐
熱部材)を試験片とし、所定の評価装置に取り付け、被
覆層側を加熱、耐熱合金側を冷却して、被覆層側の温度
が1673K、耐熱合金側が 1023Kになるよう設定して保持
した。同時に、本発明との比較のために、8wt%Y2 3
−ZrO2 粉末単独の溶射材料を同一条件で耐熱合金板
上に被覆したものを評価装置に取り付け、同条件での評
価に供した。
【0046】10000時間経過後に評価装置から取り出
し、両者の外観、内部ミクロ組織の観察を行ったとこ
ろ、8wt%Y2 3 −ZrO2 単独の溶射層では表面の一
部に剥離が見られ、またミクロ観察では初期の結晶粒径
が 0.1μm 程度であったものが、数μm 程度まで粗大化
していた。これに対して、実施例による耐熱部材は外観
上の変化は観察されず、ミクロ組織も初期の結晶粒径か
らほとんど変化していなかった。
【0047】実施例2 Zrブトキシド、YエトキシドおよびAlエトキシド
を、それぞれ重量比で100: 5.5:1 で混合(総量3kg)
し、その後水を加えてゲル化させた。これを乾燥させた
後に 1873Kで焼成し、さらに粉砕、造粒、分級して溶射
用粉末を作製した。この溶射用粉末の微細構造を電子顕
微鏡で観察したところ、ZrO2 の結晶粒界に直径70nm
程度のAl2 3 粒子が存在していることを確認した。
また、化学分析の結果では、Al2 3 の量比は 0.6重
量% であった。
【0048】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に直径約60nm
程度のAl2 3 が約 250nm間隔で存在していることが
分かった。この微細なAl2 3 は粒状のものが主体で
あった。また、溶射被覆層を化学分析したところ、Al
2 3 の量比は 0.5重量% であった。なお、Al2 3
は粒界のみではなく、一部ZrO2 粒内にも微粒子とし
て存在することが観察された。
【0049】このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。
【0050】実施例3 平均粒径が 0.1μm の 12wt%Y2 3 −ZrO2 に、平
均粒径が0.01μm のAl2 3 を 0.5重量% 添加し、こ
れをボールミルで12時間混合した。この混合物を大気中
にて 1873Kで10時間焼成した後、得られた焼成物を粉
砕、分級し、さらに溶射用粉末に適した粒径まで造粒し
た。この溶射用粉末の微細構造を電子顕微鏡で観察した
ところ、ZrO2 の結晶粒界に直径 100nm程度のAl2
3 粒子が存在していることを確認した。また、化学分
析の結果では、Al2 3 の量比は 0.5重量% であっ
た。
【0051】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細なAl
2 3 が存在していることが分かった。このAl2 3
は多くは粒状であったが、一部粒界に沿って膜状になっ
ているものもあった。なおAl2 3 は粒界のみではな
く、一部ZrO2 粒内にも微粒子として存在することが
観察された。このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。
【0052】実施例4 平均粒径が 0.1μm の 12wt%Y2 3 −ZrO2 粉末を
容器に入れ、スパッタ装置内部の上方に配置した。この
スパッタ装置の内部を減圧した後、該容器から少量ずつ
12wt%Y2 3 −ZrO2 粉末を、スパッタ装置内に設
けられた受け皿の中に散布すると同時に、同じくスパッ
タ装置内に用意されたAl2 3 ターゲットをアルゴン
イオンで叩きスパッタさせて、表面にAl2 3 が被覆
された溶射粉末を得た。この溶射粉末を電子顕微鏡にて
観察したところ、ZrO2 粒子表面にAl2 3 が粒状
あるいは膜状に付着していた。Al2 3 が粒子表面全
面に被覆されていないZrO2 粒子も観察された。また
化学分析の結果では、Al2 3 の量比は 0.8重量% で
あった。
【0053】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細なAl
2 3 が存在していることが分かった。このAl2 3
は多くは直径50nm程度の粒状であったが、一部粒界に沿
って厚さ30nm程度の膜状になっているものもあった。な
お、Al2 3 は粒界のみではなく、一部ZrO2 粒内
にも微粒子として存在することが観察された。
【0054】このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。
【0055】実施例5 平均粒径が 0.1μm の8wt%Y2 3 −ZrO2 粉末を容
器に入れ、スパッタ装置内部の上方に配置した。このス
パッタ装置の内部を減圧した後、該容器から少量ずつ8w
t%Y2 3 −ZrO2 粉末を、スパッタ装置内に設けら
れた受け皿の中に散布すると同時に、同じくスパッタ装
置内に用意されたAlターゲットをアルゴンイオンで叩
きスパッタさせて、表面にAlが被覆された溶射粉末を
得た。この溶射粉末を電子顕微鏡にて観察したところ、
ZrO2 粒子表面にAlが膜状に付着していた。Alが
粒子表面全面に被覆されていないZrO2 粒子も観察さ
れた。また化学分析の結果では、Alの量比は 0.2重量
% であった。
【0056】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細なAl
2 3 が存在していることが分かった。このAl2 3
は多くは直径50nm程度の粒状であった。このAl2 3
は上記溶射粉末の表面に被覆されたAlがプラズマ溶射
中に酸化して生じたものであり、その量比は 0.4重量%
であった。
【0057】このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。
【0058】実施例6 平均粒径が 0.1μm の 20wt%Y2 3 −ZrO2 粉末を
容器に入れ、スパッタ装置内部の上方に配置した。この
スパッタ装置の内部を減圧した後、該容器から少量ずつ
20wt%Y2 3 −ZrO2 粉末を、スパッタ装置内に設
けられた受け皿の中に散布すると同時に、同じくスパッ
タ装置内に用意されたAlターゲットをアルゴンイオン
で叩きスパッタさせて、表面にAlが被覆された粉末を
得た。この粉末を大気中で823Kに加熱して30分保持し
た。冷却後、この粉末を電子顕微鏡にて観察したとこ
ろ、ZrO2 粒子の表面にAl2 3 が粒状に付着して
いた。また化学分析の結果では、Al2 3 の量比は
0.4重量% であった。
【0059】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細なAl
2 3 が存在していることが分かった。このAl2 3
は多くは直径50nm程度の粒状であった。また、溶射被覆
層を化学分析したところ、被覆層中のAl23 の量比
は0.35重量% であった。なお、Al2 3 は粒界のみで
はなく、一部ZrO2 粒内にも微粒子として存在するこ
とが観察された。
【0060】このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。
【0061】実施例7 平均粒径が 0.1μm の8wt%Y2 3 −ZrO2 粉末に、
平均粒径が 0.5μm のAl粉末を 0.5重量% 添加し、こ
れをボールミルで12時間混合することにより、表面がA
lで覆われた8wt%Y2 3 −ZrO2 溶射用粉末を得
た。この溶射用粉末の微細構造を電子顕微鏡で観察した
ところ、ZrO2 粒子の表面に厚さ約 100nm程度のAl
が付着していることを確認した。
【0062】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細なAl
2 3 が存在していることが分かった。このAl2 3
は多くは粒状であったが、一部粒界に沿って厚さ 100nm
程度の膜状になっているものもあった。化学分析の結果
では、Al2 3 の量比は 0.6重量% であった。
【0063】このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。
【0064】実施例8 平均粒径が 0.1μm の 20wt%Y2 3 −ZrO2 粉末
に、平均粒径が 1μm のAl粉末を 0.3重量% 添加し、
これをボールミルで12時間混合した後、大気中で823K×
3時間の熱処理を行い、表面がAl2 3 で覆われた 2
0wt%Y2 3 −ZrO2 溶射用粉末を得た。この溶射用
粉末の微細構造を電子顕微鏡で観察したところ、ZrO
2 粒子の表面に厚さ約 100nm程度のAl2 3 が付着し
ていることを確認した。また、化学分析の結果では、A
2 3 の量比は 0.6重量% であった。
【0065】次に、Ni基耐熱合金であるIN738の
板材の片面に、プラズマ溶射でまずNiCoCrAlY
合金を 100μm 被覆し、その上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 300μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。この被覆層から薄片を切り出し、透過型電子顕微
鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細なAl
2 3 が存在していることが分かった。このAl2 3
は多くは粒状であったが、一部粒界に沿って厚さ 100nm
程度の膜状になっているものもあった。化学分析の結果
では、Al2 3 の量比は 0.5重量% であった。なお、
Al2 3 は粒界のみではなく、一部ZrO2 粒内にも
微粒子として存在することが観察された。
【0066】このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。
【0067】実施例9 平均粒径が 0.1μm の 20wt%Y2 3 −ZrO2 粉末
に、平均粒径が0.01μmのAl2 3 粉末を 0.5重量%
添加し、これをボールミルで12時間混合した後、大気中
で 1873K×10時間の条件で焼成した。この焼成物を粉砕
および分級し、さらに溶射用粉末に適した粒径まで造粒
した。この溶射用粉末の微細構造を電子顕微鏡で観察し
たところ、ZrO2 粒子の表面にAl2 3 が存在して
いることを確認した。また化学分析の結果では、Al2
3 の量比は 0.5重量% であった。次に、Ni基耐熱合
金であるIN738の板材の片面に、プラズマ溶射でま
ずNiCoCrAlY合金を 100μm 被覆し、その上に
8wt%Y2 3 −ZrO2 の単相粉末をプラズマ溶射にて
160μm 被覆し、さらにその上に上記により作製した粉
末をプラズマ溶射にて 140μm 被覆して耐熱被覆を形成
した。最上部の被覆層から薄片を切り出し、透過型電子
顕微鏡にて分析した結果、ZrO2 の結晶粒界に微細な
Al2 3 が存在していることが分かった。このAl2
3 は多くは直径70nm程度の粒状であったが、一部粒界
に沿って厚さ50nm程度の膜状になっているものもあっ
た。化学分析の結果では、Al2 3 の量比は 0.5重量
% であった。
【0068】このようにして得た耐熱被覆を有する耐熱
合金板(耐熱部材)の耐熱性を、実施例1と同様な装置
および同様な条件で評価したところ、ミクロ組織がわず
かに粗大化する傾向が見られたものの、表面での剥離、
亀裂の発生等は観察されなかった。なお、この評価試験
では図2に示したように、耐熱被覆内部に温度分布が生
じ、総厚 300μm の耐熱被覆の表面から約 120μm まで
の領域は 1473Kを超える温度になっていることが計測さ
れた。
【0069】以上の各実施例では、ZrO2 の結晶粒成
長を抑制する化合物としてAl2 3 を用いた例につい
て示したが、Ta2 3 、Sc2 3 、La2 3 、G
23 についても同様の条件で実施し、これらの材料
がAl2 3 とほぼ同様の効果を与えることを確認し
た。
【0070】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の溶射材料
はジルコニア粒子の表面や結晶粒界等に存在させた、イ
オン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の
元素やその化合物によって、高温で長時間保持しても機
械的性質の劣化を来たすミクロ組織の変化を抑制するこ
とができる。従って、このような溶射材料を用いて形成
した耐熱被覆、およびそのような耐熱被覆を有する耐熱
部材によれば、長時間にわたってその機能を安定に発揮
させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の耐熱部材の一実施形態の構造を断面
図である。
【図2】 セラミックス遮熱層を有する耐熱部材のセラ
ミックス遮熱層の厚さと表面および内部温度との関係を
示す図である。
【符号の説明】
1……金属基材 2……金属結合層 3……セラミックス遮熱層 4……耐熱部材

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化ジルコニウム粒子の表面に、イオン
    半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の元素
    および前記元素を含む化合物から選ばれる少なくとも 1
    種が付着していることを特徴とする溶射材料。
  2. 【請求項2】 酸化ジルコニウム結晶粒の結晶粒界に、
    イオン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上
    の元素および前記元素を含む化合物から選ばれる少なく
    とも 1種が存在することを特徴とする溶射材料。
  3. 【請求項3】 酸化ジルコニウムと、イオン半径が六配
    位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の元素および前記
    元素を含む化合物から選ばれる少なくとも 1種とを酸に
    溶解する工程と、 前記酸にアルカリを滴下し、前記酸化ジルコニウムと前
    記元素および前記元素を含む化合物から選ばれる少なく
    とも 1種の両者を析出、沈殿させる工程と、 前記沈殿物を乾燥および焼成した後に粉砕する工程とを
    具備することを特徴とする溶射材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 有機物に可溶なジルコニウムの化合物お
    よびイオン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm
    以上の元素および前記元素を含む化合物から選ばれる少
    なくとも 1種を有機物中で混合する工程と、 前記混合物を乾燥および焼成した後に粉砕する工程とを
    具備することを特徴とする溶射材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 主として酸化ジルコニウムからなる耐熱
    被覆であって、前記酸化ジルコニウムの結晶粒界に、イ
    オン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の
    元素および前記元素を含む化合物から選ばれる少なくと
    も 1種が存在していることを特徴とする耐熱被覆。
  6. 【請求項6】 金属基材と、前記金属基材の表面に直
    接、あるいは金属結合層を介して形成されたセラミック
    ス遮熱層とを具備する耐熱部材において、 前記セラミックス遮熱層は主として酸化ジルコニウムか
    らなり、かつ前記酸化ジルコニウムの結晶粒界に、イオ
    ン半径が六配位換算で0.08nm以下または0.11nm以上の元
    素および前記元素を含む化合物から選ばれる少なくとも
    1種が存在していることを特徴とする耐熱部材。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2011096231A1 (ja) * 2010-02-05 2011-08-11 日鉄ハード株式会社 溶射材料および溶射皮膜の形成方法
WO2011096233A1 (ja) * 2010-02-05 2011-08-11 日鉄ハード株式会社 溶射材料および溶射皮膜の形成方法
KR101499917B1 (ko) * 2013-01-21 2015-03-10 조선대학교산학협력단 플라즈마 용사 장치
JP2018168771A (ja) * 2017-03-30 2018-11-01 三菱重工業株式会社 遮熱コーティング方法、翼セグメントの製造方法、及び翼セグメント

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