JP5669759B2 - 溶射材料および溶射皮膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属、セラミックス、サーメットといった溶射皮膜を成膜するにあたり、これら主な溶射材料と、非気化性である金属キレート化合物を含む粉末を用いて同時に溶射することにより、腐食環境下における耐食性、化学的安定性向上を図った溶射材料と溶射皮膜ならびにその溶射皮膜を有する部材を製造する溶射皮膜形成方法に関する。
従来、セラミックスなどの機能性材料によって皮膜を形成することにより、基材表面を表面改質する方法として、CVD法、PVD法、ゾルゲル法、溶射法など種々の方法が知られている。なかでも溶射法は、比較的大面積に高速且つ均質に成膜する手法として知られている。
溶射法はガス式と電気式に大別され、前者のガス式の代表的な方法として高速ガスフレーム溶射法(以下、HVOF(High Velocity Oxygen-Fuel)溶射法とも呼ぶ。)がある。HVOF溶射法は溶射装置の中に灯油などの液体燃料若しくはプロピレン・プロパンといった可燃性ガスを、高圧酸素とともに導入し燃焼させることで、ノズル出口において音速を超えたフレーム(ガス炎)を形成することができる。この高速フレーム中に金属やサーメット等を導入して基材に溶射することで、比較的緻密質な皮膜を得ることができる。
特に耐摩耗性が必要な部位に多用されてきたクロムメッキ品については、世界的なクロムメッキ液の廃液規制により、HVOF溶射法によるサーメット溶射への代替え化が急速に進んでいる。最新型のHVOF溶射機では、溶融または半溶融状態にある粒子を音速の2〜3倍の速度で基材に吹き付けることができる。例えば、WC−NiCr系皮膜では高硬度(Hv1000以上)、高密度(気孔率1%程度)、高密着力(70N/mm以上)で、且つ圧縮残留応力の皮膜が特徴であり、全般的に硬質クロムメッキの性能を大幅に凌駕する。製鉄、非鉄、製紙、造船重機、自動車などの分野では、既にこれらの溶射が主要な部品に採用され、今では必要不可欠なプロセスになっている。
一方、後者の電気式にはプラズマ溶射があり、熱源として、ガス式におけるガスの燃焼反応による火炎の代わりに、プラズマジェットを利用したものである。プラズマ溶射法はアノードとカソード間に発生させたアーク環境にアルゴン・窒素・ヘリウムガスなどの不活性ガスである作動ガスを供給し、この作動ガスを電離若しくは乖離させることで、ノズルから5000〜10000℃の高温高速のプラズマジェットを噴射させることができる。この場合、セラミックスの溶射材料としては、通常は、アルミナやチタニア、ジルコニアといった金属酸化物が主に用いられ、その他に、サーメット、金属またはプラスチックなども溶射材料として利用できる。
セラミックスを溶射するためのセラミックス溶射法は様々な機能性材料を取り扱うことが可能である。特に製鉄、製紙、化学、繊維、印刷、フィルム等の分野で用いられる搬送ロールには表面の摩耗対策として、硬質ゴム、樹脂ライニングなどが多用されていたが、近年では長寿命化による設備維持・保全費の圧縮、機能性付与の観点からセラミックス皮膜への切り替えが多く見られる。その他、半導体・液晶製造装置産業、航空機産業、ボイラー・タービン・太陽電池などのエネルギー産業、医療・生体材料分野への応用展開も加速傾向にある。
しかしながら一般的に溶射法全般(減圧法を除く)には次のような問題点が存在する。セラミックス溶射、サーメット溶射、メタル系溶射のいずれも、用いている原料粉末は粒径が数10μmのものが一般的である。溶射法は、粉末の溶射材料を溶射フレームに投じることによって付与される運動エネルギーを利用して、高い衝突力をもって基材に衝突させ成膜する手法である。そのため、緻密で粒子間結合力の高い皮膜が作製できる。その一方で、粒子扁平率には限界があるので粒子と粒子の境界には自ずと気孔が残存してしまう。
発電所やジェットエンジンのタービンブレードに用いられているような熱遮蔽材料YSZ(Yttria partially Stabilized Zirconia)など、溶射皮膜中の気孔を熱衝撃の緩和目的として使用するTBC(Thermal Barrier Coating)用途を除き、気孔の存在は概ね負の要素として働くケースが多い。例えば酸腐食環境や腐食性ガス環境で溶射品を使用する場合、この気孔を腐食液・腐食性ガスが浸透し基材腐食を招き、皮膜が剥離してしまうなどの問題がある。また溶融金属と接触する場合も同様に、皮膜・基材の溶損などの諸問題を招くなど、本来の溶射皮膜の性能を完全に引き出せないまま寿命を迎えるケースも少なくない。
プロセス面から溶射皮膜の気孔率低減を図るために、10μm以下に微細化した原料粉末を用い、もともと生じる気孔サイズを小さくする試み、即ち、微粉末溶射技術に関する研究が世界各国で活発になされており、いろいろな溶射機で実施されているが、粒子径が細かくなればなるほど粉末供給の不安定性に起因して溶射自体の難易度が高いことも公知の事実である。
現在、これらの気孔問題を解決するために溶射の後処理として、有機高分子系、金属アルコキシド系、水ガラス系、金属塩水溶液などの液体を溶射皮膜に含浸させ、必要に応じて焼成し気孔を封止するいわゆる封孔処理が一般的に行われている。しかしながら、これらの処理液を用いても、得られる封孔処理後の形態は固体ではあるが、硬化の段階で体積収縮やクラックを包含した形となりやすい。また、溶液の粘度にも使用限界があり、粘度が高すぎると溶液の皮膜内部への浸透が難しいが、粘度が低すぎても効力成分が希薄な物となってしまい、結果として気孔を完全に封止し、所望の硬化を発揮させるには不十分なケースが多かった。
これに対して、加熱することにより気化する有機金属化合物を気化させた後、さらに酸化して生成した金属酸化物と、金属粉末である溶射用粉末とを同時に溶射して溶射皮膜を形成することが行われている。例えば、特許文献1にはNi−Cr等の金属粉末と、加熱することにより気化する金属アセチルアセトナトとを、200〜300℃に加熱して気化させた後、酸化して0.1〜0.5μm程度の金属酸化物粉末を生成させ、金属粉末と金属酸化物粉末とを混合して溶射することにより、サーメット皮膜を得る事ができることが開示されている。
特開2007−169703号公報
しかしながら、同文献においては、腐食環境、高温、繰り返し荷重において用いられる装置の部材として適し、靭性を有し、耐食性、耐疲労性が高い溶射皮膜を成膜するために、溶射装置に対して有機金属化合物由来の酸化物投入口を検討するなどして金属と酸化物の分散状態を均一なものとしているが、一般に加熱することによって気化する原料を用いる場合、材料によって蒸気圧が異なるため、生成される酸化物の量を調整することが困難であり、目的組成どおりの酸化物を得る制御が非常に難しい。
また、加熱することにより気化する原料を溶射装置に導入すると、火炎の中でナノ粒子を形成してしまい(均一核生成)、基材に付着せずに拡散してしまう可能性も高い。
また、金属皮膜中またはサーメット皮膜中の気孔を酸化物で埋める目的で、金属やサーメットなどの溶射用粉末に酸化物粒子を予め混合させたものを溶射に用いる方法では、酸化物の粒の大きさを数μmレベルまで小さくしても、十分な加熱を行わないと酸化物粒子は皮膜中に取り込まれにくい。仮に皮膜中に取り込むことができたとしても、酸化物粒子は、溶射皮膜中において粒子間結合力をほとんど生じず、皮膜成分の金属粒子と結合していない状態であるため、溶射皮膜の硬さ・耐摩耗性の低下を招くなど、溶射皮膜の機械的・物理的特性に大きな影響を及ぼしかねない。
そこで、本発明は、耐食性、緻密性等に優れ、特に溶融金属に対する耐腐食性に優れた溶射皮膜を簡便な方法により形成する技術を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、(1)本発明の一態様に係る溶射材料は、高速ガスフレーム溶射法、フレーム溶射法及びアーク溶射法のうちいずれかの溶射法によって溶射対象物に溶射される溶射材料であって、セラミックス、サーメットおよび金属のうち少なくともいずれかと、少なくとも1種以上の希土類元素を含む金属キレートであって、該金属キレートの沸点より熱分解温度が低いアミノカルボン酸系又はヒドロキシカルボン酸系のキレート成分を含む金属キレートと、を含むことを特徴とする。
(3)本発明の一態様に係る溶射皮膜の形成方法は、セラミックス、サーメットおよび金属のうち少なくともいずれかと、少なくとも1種以上の希土類元素を含む金属キレートであって、該金属キレートの沸点より熱分解温度が低いアミノカルボン酸系又はヒドロキシカルボン酸系のキレート成分を含む金属キレートと、を含む溶射材料を高速ガスフレーム溶射法、フレーム溶射法及びアーク溶射法のうちいずれかの溶射法によって溶射対象物に溶射する溶射皮膜の形成方法であって、前記金属キレートの有機成分を熱分解して除去し、前記熱分解された金属キレート由来の金属成分を酸化させることにより金属酸化物を生成し、前記セラミックス、サーメットおよび金属のうち少なくともいずれかと前記金属酸化物とを、溶射対象物に衝突させて皮膜を形成することを特徴とする。
本発明によれば、耐食性、緻密性等に優れ、特に溶融金属に対する耐腐食性に優れた溶射皮膜を簡便な方法により形成することができるという効果が得られる。
本実施形態の溶射材料を溶射する溶射ガンの一例としての高速ガス溶射機の断面図を示す。 実施例1による溶射皮膜試験片についての、電子顕微鏡写真とFE−EPMAによる元素のマッピングデータを示す 図2に示したマッピングデータに基づいてY元素とO元素が分布する位置に印を付けた反射電子像を示す。 亜鉛浸漬試験後の実施例の試験片の断面の電子顕微鏡写真と、元素のマッピングデータを示す。 亜鉛浸漬試験後の比較例の試験片の断面の電子顕微鏡写真と、元素のマッピングデータを示す。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
(1)溶射材料について
まず、本実施形態の溶射材料について説明する。本実施形態の溶射材料は、溶射皮膜を形成する材料のうち、主な材料であるベースとなる粉末状の溶射材料(以下、ベース溶射材料とも呼ぶ。)と、粉末状の金属キレート(金属キレート化合物)粒子とを、混合したもの、又は、ベース溶射材料粒子に対して含浸などの方法により金属キレートを固定(担持)したものである。この本実施形態の溶射材料は、溶射する過程において、熱流体である溶射炎に導入され、溶射炎の熱によって、混合した金属キレート又はベース溶射材料に固定された金属キレートのキレート成分(有機成分)が熱分解する。そして、熱分解後に残る金属キレート由来の金属成分が酸化されて金属酸化物が生成され、その金属酸化物とベース溶射材料とが基材表面に衝突して堆積することにより、最終的に、ベースとなる溶射材料にその金属酸化物が取り込まれた状態となった溶射皮膜を形成することができる。生成される金属酸化物は、非常に微細な粒子状や薄膜状といった形態で、溶射皮膜粒子の気孔・粒界に介在し、ベースの溶射材料の粒子間の気孔を確実に封じることができる。
そして、本実施形態の金属キレートは、非気化性の金属キレートであることを特徴とする。「非気化性」の金属キレートとは、文字通り、気化しない金属キレートという意味であり、本実施形態の溶射材料に含まれる金属キレートは、加熱すると、気化する前にキレート成分が熱分解するものである。従って、本実施形態で用いる非気化性の金属キレートを熱分解温度以上に加熱した場合には、必ず気化する前に熱分解して金属が残り、その金属が酸化されて金属酸化物が生成される。
なお、本実施形態の溶射材料に含まれる金属キレートの分解温度は、概ね400℃以下であり、例えば、アミノカルボン酸系キレート剤から得られる金属キレートに関しては概ね250〜400℃である。そのため、所望の金属酸化物を含む溶射皮膜を形成するにあたり、プラズマジェットのような高温の熱源は必ずしも必要ではなく、例えば、高速ガスフレーム溶射、フレーム溶射、アーク溶射、コールドスプレー、などの比較的低温プロセスによっても緻密な溶射皮膜を形成することができるというメリットがある。
以下、本実施形態の溶射材料の詳細について説明する。
まず、ベース溶射材料に混合あるいは固定する金属キレートについて説明する。本実施形態の溶射材料に用いる金属キレートは、その金属キレートの沸点よりも低い温度であって概ね250〜400℃でキレート成分が熱分解するものであることが好ましい。沸点より熱分解温度が高い場合、溶射炎の加熱により温度が上昇していくと、熱分解する前に気化してしまうためである。金属キレートが、熱分解する前に気化してしまうと、溶射皮膜における金属キレート由来の金属酸化物の組成を、正確に制御することが困難となる。また、金属キレートが熱分解前に気化してしまうと、その後に熱分解して生成される酸化物粒子が微細になりすぎてしまい、ベース溶射材料中にうまく取り込まれない。
そして、金属キレートは、キレート剤と各金属化合物を夫々金属キレートを形成するのに必要なモル比で水溶媒中で反応させて澄明な金属キレート水溶液とした後、この水溶液から溶媒である水を除去することによって容易に得ることができる。
本実施形態の非気化性の金属キレートとしては、様々な化合物が存在し、本実施形態のベースとなる溶射材料に混合可能な、あるいは固定可能な金属キレートとしては非常に多くの化合物が存在する。
本実施形態の金属キレートの生成に用いられるキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ジアミノプロパノール四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジ(o−ヒドロキシフェニル)酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、メチルグリシン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン二こはく酸、1,3−ジアミノプロパン二こはく酸、グルタミン酸−N,N−二酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、等の如き水溶性のアミノカルボン酸系キレート剤などが好ましい。また、上記したキレート剤のモノマーやオリゴマー或いはポリマーのいずれも、本実施形態の金属キレートを生成するためのキレート剤として使用可能である。また、キレート剤としては、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸なども用いることができる。これらのキレート剤によって生成される金属キレートは、いずれも250〜400℃で、沸騰する前に、キレート成分が熱分解するものである。
そして、本実施形態において用いるキレート剤としては、上記のキレート剤のうち、アミノカルボン酸系キレート剤を用いることがさらに好ましい。アミノカルボン酸系キレート剤は、あらゆる金属イオンと容易に結合して金属キレートを得ることができ、更に金属キレートを結晶として単離して高純度化できるためである。また、金属アルコキシドのように大気中で加水分解反応する化合物ではないため、取り扱いが簡便である。更に、水に容易に溶解するため、原料供給形態についても幅広い選択が可能となり、自由な材料設計が可能である。例えば、金属キレートをベース溶射材料に含浸させたりコーティングしたりすることが可能となる。
アミノカルボン酸系キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、および、ニトリロ三酢酸などが挙げられる。
本実施形態の金属キレートの生成に用いられる金属としては、イットリウム、ランタン、セリウムなどの希土類金属などを用いることができる。
なお、金属キレートとして、複数種類の金属キレートを組み合わせて使用してもよい。この場合には、溶射皮膜において金属キレート由来の金属酸化物が複数種類含まれる溶射皮膜が形成されることになる。
以上のような金属とキレート剤を用いて、上述した方法により金属キレートを生成し、ベース溶射材料と混合する場合には粒子状(粉末状)に形成する。また、ベース溶射材料の粒子に含浸などの方法で固定する場合には、例えば、ベース溶射材料を、金属キレートを水に溶解した金属キレート水溶液に接触させた後、水分を乾燥除去することにより、金属キレートが付着・含浸した(あるいは、金属キレートによって被覆された)溶射材料を形成することができる。最終的に溶射する際に用いる本実施形態の溶射材料の製造方法の詳細については後述する。
次に、本実施形態の溶射材料のベース溶射材料について説明する。上述した金属キレートと組み合わせて利用することが可能な物質としては、金属や、セラミックスや、サーメットを用いることができる。具体的には、金属については、Ni、Ni−Cr、Ni−Al、CoCrAlY、CoNiCrAlY、NiCrAlYなどを挙げることができる。セラミックスとしては、アルミナ、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−シリカ、ジルコニア(8YZなど)、イットリア、クロミア、チタニアなどを挙げることができる。サーメットとしては、WC−Co、WC−Co−Cr、WC−CrC−Ni、CrC−NiCr、MoB−CoCrなどを挙げることができる。また、複数種類の物質をベース溶射材料として用いることもできる。
次に、上述した金属キレートとベース溶射材料とを混合、又は金属キレートをベース溶射材料に固定して、実際に溶射機に導入する最終的な溶射材料の生成について説明する。なお、金属キレートとベース溶射材料とを混合して溶射する場合、予め両者を機械的に混合せずに、溶射機に対して別々に導入し、溶射機内において混合することも可能である。この場合には、両者を混合した状態の溶射材料としては調製せず、金属キレートと、ベース材料と、を所定の供給量で別々に溶射機に導入して溶射機内で混合し、加熱されて溶射される。
以下に、まず、金属キレートと、ベース溶射材料と、を機械的に混合して溶射材料を生成する方法について説明する。
ベース溶射材料は、上述の金属、セラミックス、サーメットのいずれかを、粒径15〜55μm程度の粉末状にしたものを用いることができる。粒子形状は粉末の流動性を考慮してなるべく球形の方が好ましい。
金属キレートは、上述した金属キレートの生成に用いる金属とキレート剤によって金属キレートを生成し、溶射材料として利用可能な粒子状(粉末状)に形成する。本実施形態の金属キレートの溶射粒子は、100μm以下に形成することが好ましい。100μmより大きいと、次の工程でのボールミル混合時に不均一混合などの問題を招きやすい。
そして、これらの金属キレートの粉末と、ベース溶射材料の粉末とを、ボールミル装置によって混合する。具体的には、ポリエチレンポット内に所定の粉末を分取し、この中でジルコニアボールとともに2〜3時間機械的に混合して、最終的な溶射材料を形成する。
次に、金属キレートを溶射材料に固定して、一体化した状態の溶射材料を調製する方法について説明する。ベース溶射材料への金属キレートの固定方法は、特に限定されないが、例えば、金属キレートが水に安定かつ容易に溶解する性質を利用して、金属キレートをベース溶射材料に担持(含浸)させた形態の溶射材料を調製することができる。
具体的な方法は、まず、上述した金属キレートを用いて金属キレート水溶液を調製し、この水溶液にベース溶射材料を浸漬させ、その後、水分を乾燥除去することで、ベース溶射材料の粒子の表面に金属キレートが付着又は表面を金属キレートが被覆した、溶射材料を形成することができる。なお、金属キレートを固定した溶射材料としては、形成された溶射粉末を分級し、粒径が15〜55μmの粒子からなる溶射材料とすることが好ましい。なお、金属キレート水溶液の濃度、および該水溶液とベース溶射材料の浸漬比は特に制限されないが、ベース溶射材料への金属酸化物の導入量や、コストを考慮して適宜調整すればよい。
なお、上述したように、本実施形態の溶射材料として、複数種類の金属キレートを用いたり、複数種類のベース溶射材料を用いたり、複数種類の金属キレートと複数種類のベース溶射材料とを組み合わせて用いてもよい。これにより、様々な組成の溶射皮膜を形成することができる。また、WC−NiCr系材料など、必要とする特性に合わせた材料を更に加えることもできる。いずれの場合でも、本実施形態の溶射材料の場合、溶射皮膜において、金属と酸素との比率が正確に制御された所望の金属酸化物を生成することができる。
(2)溶射皮膜の形成方法について
次に、上述した方法によって製造される溶射材料を用いて溶射皮膜を形成する方法について説明する。
本実施形態の溶射材料を溶射する場合に用いる溶射方法・溶射装置は特に限定されず、様々な溶射方法・溶射装置に本実施形態の溶射材料を適用することができる。例えば、ガスを燃焼させて熱流体としての溶射炎を形成するフレーム溶射法や高速ガスフレーム溶射法、放電によって熱流体としての溶射炎を形成するプラズマ溶射法、あるいは、熱流体としての高速の作動ガスによって溶射するコールドスプレー法などの溶射法が挙げられる。ただし、ベース溶射材料として用いる材料に適した溶射方法によって溶射することが好ましい。例えば、ベース溶射材料が金属の場合には、フレーム溶射法や高速フレーム溶射法やプラズマ溶射法などで溶射することが好ましい。また、ベース溶射材料がセラミックスである場合には、プラズマ溶射法により溶射することが好ましい。また、ベース溶射材料がサーメットである場合には、高速フレーム溶射法やプラズマ溶射法により溶射することが好ましい。
溶射方法の一例として、本実施形態の溶射材料を高速フレーム溶射法によって溶射する場合には、図1に示すような高速ガス溶射機である溶射ガン100(例えば、Sulzer Metco社製)を用いて溶射することができる。溶射ガン100は、燃料供給孔7から高速で供給される燃料と酸素供給孔8から高速で供給される酸素とが燃焼する燃焼室2と、燃焼室からラバル型ノズル3によって加速された燃焼ガスに対して溶射材料を供給する溶射材料供給部4と、燃焼ガスを溶射方向に整流し集束させる溶射ノズル5などを備える。
そして、溶射ガン100で溶射を行う場合には、まず灯油又はケロシンを燃料供給孔7から供給し、酸素供給孔8から酸素を供給し、供給された燃料および酸素を燃焼室2内で燃焼させる。そして、燃焼ガスはラバル型ノズル3で加速されて、溶射ノズル5に供給される。ラバル型ノズル3と溶射ノズル5の連結部分において、加速された燃焼ガス(溶射炎)に対して溶射材料供給部4から溶射材料が吹き込まれる。ここで、金属キレートとベース溶射材料を別々に溶射機100に導入し、溶射機100内において混合する場合には、例えば、溶射材料供給部4に対向する位置に不図示の第2の溶射材料供給部を設け、金属キレートとベース溶射材料のいずれか一方の粉末を吹き込めばよい。
供給された溶射材料は、燃焼ガスによって加速されると共に加熱され、溶射材料のうちの金属キレートが熱分解して金属酸化物が生成される。そして、生成された金属酸化物とベース溶射材料とが加速されて被溶射基材上に衝突して堆積し、ベース溶射材料と金属酸化物とからなる溶射被膜が形成される。
この、本実施形態の溶射材料に含まれる金属キレートが溶射炎などの熱流体の熱によって熱分解し、酸化物となり、酸化物を含む溶射皮膜が形成されるメカニズムは、高速ガスフレーム溶射法以外のどのような溶射方法を用いた場合であっても同じである。
そして、例えば、フレーム溶射法のフレームの最高到達温度は、アセチレン炎の場合約3200℃であり、本実施形態の溶射材料である金属キレートを分解させるのに十分な温度(400℃以上)である。また、高速ガスフレーム溶射(灯油)の場合は約2700℃、プラズマ溶射の場合は約10000℃といわれており、いずれの溶射方法でも金属キレートを分解させることができる。従って、本実施形態の溶射材料は、ベース溶射材料に適した溶射方法・溶射条件であれば、従来の一般的な溶射装置、溶射条件で溶射が可能である。
また、本実施形態の溶射材料としての、ベース溶射材料と非気化性の金属キレート化合物との混合粉末や、ベース溶射材料の粒子に金属キレートを含浸させるなどして付着させた溶射粉末は、従来の粉末供給装置により供給することができるため、特別な装置は不要である。
(3)溶射皮膜について
以上説明した本実施形態の溶射材料を用いた溶射方法によって形成される溶射皮膜について説明する。
本実施形態の溶射材料は、上述したように溶射プロセスにおいて、ベース溶射材料に混合又は固定した金属キレートが、溶射炎によって加熱されて分解し、金属酸化物となる。金属キレートを粉末の状態で混合して溶射した場合には、金属キレート由来の金属酸化物は最大で10μm程度の微細な金属酸化物の粒子として、溶射皮膜中のベース溶射材料の粒界などに存在することとなる。一方、金属キレートを溶射材料に含浸させるなどして固定した場合には、金属キレート由来の金属酸化物は、溶射皮膜中のベース溶射材料の表面に薄膜状に存在することとなる。
このようにベース溶射材料内に存在する金属酸化物によって、ベース溶射材料の粒子間の気孔が封じられ、溶融金属の侵入などを効果的に防ぐことができる。
以上説明した本実施形態の溶射材料及び溶射材料を用いた溶射皮膜の形成方法によれば、溶射の過程で溶射材料に含まれる金属キレートのキレート成分(有機成分)が熱分解し、残ったキレート由来の金属が酸化されて金属酸化物となり、この金属酸化物がベース溶射材料に取り込まれて、溶射皮膜中に金属酸化物を生成させることができる。そして、この金属酸化物は、ベース溶射材料に金属キレートを粉末として混合した場合でも、ベース溶射材料に含浸などによって固定した場合でも、キレート成分が分解して除去されることにより体積が縮小し、非常に微細な金属酸化物として存在するため、ベース溶射材料の粒子間に存在する隙間を金属酸化物によって塞ぐことができる。
従って、従来のように溶射材料を溶射して皮膜を形成した後、別工程により封孔処理を行わなくても、封孔処理をしたのと同様の耐食性向上などの効果が得られる。さらに、本実施形態の方法の場合には、上述のように金属酸化物が非常に微細な状態でベース溶射材料の表面に存在するため、通常の封孔処理をした皮膜よりも、溶融金属に対する耐食性などがより優れた皮膜を形成することができる。
また、溶射材料に含まれる熱分解前の金属キレート粒子の粒径は25〜150μm程度であり、溶射機に導入する段階での粒子の大きさは、一般的な溶射粒子と同等の大きさである。そのため、従来の粉末供給装置で溶射粒子を供給することができる。従って、本実施形態の溶射材料によれば、緻密な膜を形成するために溶射材料自体を微細化した場合のように、溶射粒子の安定した供給が困難となるといった問題も生じない。
また、本実施形態の溶射材料によれば、緻密な皮膜形成のために、従来のような高コストの大気圧・減圧プラズマ溶射機を用いたり、微細な溶射粒子を用いる必要がないため、従来に比べて低コストで緻密な金属酸化物の溶射皮膜を形成することができる。
なお、本実施形態においては、溶射装置の一例として、高速ガスフレーム溶射機を説明したが、これに限られるものではなく、フレーム溶射、プラズマ溶射、アーク溶射、コールドスプレーなどの他の溶射方法によっても溶射が可能である。そして、本実施形態の溶射材料である金属キレートは、上述のように、400℃以下で分解し金属酸化物となるため、比較的低温の溶射方法によっても緻密な金属酸化物溶射皮膜を形成することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(1)溶射材料の生成
下記の表1に示す実施例1及び比較例1の溶射材料を生成した。
実施例1は、金属キレートとしてエチレンジアミン四酢酸イットリウムアンモニウム塩(以下、Y−EDTA錯体)と、ベース溶射材料としてサーメットであるWC(タングステンカーバイド)−Co系溶射材料と、を機械的に混合して調製した溶射材料である。Y−EDTA錯体は、エチレンジアミン四酢酸と炭酸イットリウムおよびアンモニア水を夫々等モル量を水溶媒中で反応させた後、この水溶液から晶析させることにより生成し、粒径が概ね100μm以下のものを用いた。Y−EDTA錯体の組成式は、C1012・Y・NHであり、分子量は395g/molである。また、WC−Co系溶射材料は、WCを約88wt%、Coを約12wt%を含有する溶射材料であり、粒径が14〜53μm(平均粒径30μm)の造粒焼結粉を用いた。
そして、上記のY−EDTA錯体の粉末材料とWC−Co系の粉末材料とを、ポリエチレンポットに供給し、直径が10mmのジルコニアボールを用いて2時間撹拌・混合したものを、溶射機に投入する最終的な溶射材料として調製した。Y−EDTA錯体と、WC−Co系溶射材料とは、溶射皮膜において、WC−Co系溶射材料に対し、Y(イットリウム)の含有量が、1.7wt%となるように混合した。
比較例1は、実施例1のWC−Co系溶射材料と同じものを単独で用いたものである。
(2)溶射皮膜の形成
次に、上記各実施例及び比較例の溶射材料を、高速ガスフレーム(HVOF)溶射法により基材表面に溶射した。溶射条件は、下記表2に示すとおりである。
実施例1の場合には、WC−Co系サーメットと非気化性のY−EDTA錯体との混合粉末は、灯油および酸素を溶射ガン100の燃焼室2内で燃焼させることによって発生させた燃焼ガスに対して、溶射材料供給部4から導入される。混合粉末は燃焼ガスによって加速されると共に加熱される。混合粉末を構成しているY−EDTA粉末は、300〜400℃に到達した時点で、キレート成分(有機成分)が分解し、更に酸化されて微細な金属酸化物であるイットリア粒子を生成する。燃焼ガスとWC−Co系粉末とY−EDTA由来のイットリア粒子は、溶射ノズル5を通過することで整流され、集束性が高められて溶射ノズル5の先端から噴射される。これにより、イットリアを含むWC−Co系皮膜を、被溶射材に溶射することができる。なおY−EDTA由来のイットリア粒子は非常に微細なため、WC−Co系皮膜の粒界や気孔に介在した組織形態を示している。よって主とするWC−Co皮膜の硬さ・組織といった機械的性質の低下にはほとんど影響を及ぼさない。
(3)溶射皮膜の解析
上述の条件で実施例1及び比較例1の溶射材料を溶射して得られた、各溶射皮膜について、以下の試験を行い、溶射皮膜の評価を行った。
(i)FE−EPMAによる溶射皮膜の元素分析
実施例1による溶射皮膜について、FE−EPMA(電界放出型電子プローブマイクロアナライザ:Field Emission Electron Probe Micro Analyzer)による元素分析を行った。
まず、上述の条件で作成したそれぞれの溶射皮膜から、溶射皮膜断面を観察できるように、10×10×2mmtの試験片を切り出した。溶射皮膜断面は、ArイオンビームによるCP(Cross-Section Polisher)加工による断面仕上げ加工に供した。このような処理をした各試験片を、FE−EPMA(日本電子株式会社製、型番JXA−8500F)により、元素分析を行った。
図2には、実施例1による溶射皮膜試験片についての、FE−EPMAによる元素のマッピングデータを示す。図2(a)は溶射皮膜断面の反射電子像、図2(b)はWC−Co系皮膜成分であるCo元素の分布、図2(c)はY−EDTA錯体から生成されたイットリア由来のY(イットリウム)元素の分布、図2(d)はイットリア由来のO(酸素)元素の分布をそれぞれ示す。なお、図2(c)及び図2(d)のそれぞれにおいて、YとOが分布している箇所の一部を破線の円で囲んでいる。
そして、図3には、図2に示したこれらマッピングデータに基づいてYとOが分布する位置に印を付けた反射電子像を示す。図3において、YとOの分布位置をマル印で示している。
図2(c)と図2(d)からわかるように、ベース溶射材料であるWC−Co系溶射材料の内部において、Y元素とO元素の分布位置はほぼ一致ししており、溶射皮膜において、Y元素とO元素はイットリウム酸化物(イットリア)の形で分布していることがわかる。
また、図3からわかるように、Y−EDTA錯体由来のイットリア成分は、WC−Co系皮膜の粒子境界や気孔中に介在していることが確認された。またその介在サイズは主に1ミクロン以下である。
(ii)溶融金属に対する浸漬試験
実施例1及び比較例1による溶射皮膜試験片を、下記表3に示す条件で溶融亜鉛に浸漬し、溶射皮膜内部へのZnの浸透状況を調べた。浸漬後の溶射皮膜表面の外観状況について、◎:付着なし、○:付着軽微、△:付着あり、×:溶損とする4段階評価による判定を行った。また、溶射皮膜断面を観察して、Znの溶射皮膜への浸入状況を、◎:浸入無し、○:浸入軽微、×:浸入大、××:皮膜溶損・消失の4段階評価による判定を行った。
上述の浸漬試験の評価を下記の表4に示す。また、図4に、実施例1の溶射皮膜の断面写真(図4(a))とその断面写真の領域における元素マッピング(図4(b))を示し、図5に、比較例1の溶射皮膜の断面写真(図5(a))とその断面写真の領域における元素マッピング(図5(b))を示す。なお、図4(b)及び図5(b)に示す元素マッピングでは、亜鉛が存在する箇所を破線の円で囲んで示している。
表4に示すように、Y−EDTA錯体を添加した溶射材料は、Znの皮膜内部への浸入状態が軽微であることから、溶射皮膜の耐食性が改善されていることが分かった。また、図4及び図5に示したマッピング画像から、実施例1の場合には、亜鉛が溶射皮膜上にのみ付着しており、溶射皮膜内部にはほとんど存在していないのに対し、比較例1の場合には、溶射皮膜の内部まで亜鉛が存在していることがわかる。従って、本発明に係る実施例1の溶射皮膜によれば、溶融亜鉛の進入を効果的に防ぐことができ、耐食性に優れているといえる。
以上の結果より、本発明に係る実施例による溶射材料を用いて形成される溶射皮膜は、溶融亜鉛メッキラインなどの浴中機材の溶射材料として最適であるということができる。
本発明を特定の態様により詳細に説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しないかぎり、様々な変更および改質がなされ得ることは、当業者には自明であろう。
以上に詳述したように、本発明によれば、耐食性、緻密性等に優れ、特に溶融金属に対する耐腐食性に優れた溶射皮膜を簡便な方法により形成する技術を提供することができる。
1 燃焼室尾栓
2 燃焼室
3 ラバル型ノズル
4 溶射材料供給部
5 溶射ノズル
7 燃料供給孔
8 酸素供給孔
100 溶射ガン

Claims (5)

  1. 高速ガスフレーム溶射法、フレーム溶射法及びアーク溶射法のうちいずれかの溶射法によって溶射対象物に溶射される溶射材料であって、
    セラミックス、サーメットおよび金属のうち少なくともいずれかと、少なくとも1種以上の希土類元素を含む金属キレートであって、該金属キレートの沸点より熱分解温度が低いアミノカルボン酸系又はヒドロキシカルボン酸系のキレート成分を含む金属キレートと、を含むことを特徴とする溶射材料。
  2. 前記溶射対象物は、溶融亜鉛メッキラインで使用される浴中機材であることを特徴とする請求項1に記載の溶射材料
  3. セラミックス、サーメットおよび金属のうち少なくともいずれかと、少なくとも1種以上の希土類元素を含む金属キレートであって、該金属キレートの沸点より熱分解温度が低いアミノカルボン酸系又はヒドロキシカルボン酸系のキレート成分を含む金属キレートと、を含む溶射材料を高速ガスフレーム溶射法、フレーム溶射法及びアーク溶射法のうちいずれかの溶射法によって溶射対象物に溶射する溶射皮膜の形成方法であって、
    前記金属キレートの有機成分を熱分解して除去し、
    前記熱分解された金属キレート由来の金属成分を酸化させることにより金属酸化物を生成し、
    前記セラミックス、サーメットおよび金属のうち少なくともいずれかと前記金属酸化物とを、溶射対象物に衝突させて皮膜を形成することを特徴とする溶射皮膜の形成方法。
  4. 前記アミノカルボン酸系キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、および、ニトリロ三酢酸のうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項に記載の溶射皮膜の形成方法。
  5. 前記溶射対象物は、溶融亜鉛メッキラインで使用される浴中機材であることを特徴とする請求項3又は4に記載の溶射皮膜の形成方法。
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