JPH1150190A - 靭性に優れた浸炭部材 - Google Patents

靭性に優れた浸炭部材

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JPH1150190A
JPH1150190A JP20562697A JP20562697A JPH1150190A JP H1150190 A JPH1150190 A JP H1150190A JP 20562697 A JP20562697 A JP 20562697A JP 20562697 A JP20562697 A JP 20562697A JP H1150190 A JPH1150190 A JP H1150190A
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JP
Japan
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carburized
hardness
carburized layer
toughness
internal
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JP20562697A
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Shiho Fukumoto
志保 福元
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内部および表面浸炭層において、優れた靭性
と強度をバランスよく維持し得る浸炭部材を提供する。 【解決手段】 浸炭層以外の内部を、重量%にて、C:
0.4%以下、Cr:2〜7%、WまたはMoの1種ま
たは2種をW当量(W+2Mo)にて3〜20%、V:
0.5%以上1.1%未満を含有するFe基のマルテン
サイト組織とすると同時に、その硬さをHRC60未満
とし、浸炭層が形成された表面は、C濃度が浸炭層以外
の内部C濃度よりも高くかつ、0.4%以上0.8%未
満とすると同時に、その硬さをHRC60以上とする。
好ましくは、浸炭層以外の内部を、重量%にて、C:
0.1〜0.4%、Si:2%以下、Mn:2%以下、
Cr:2〜7%、WまたはMoの1種または2種をW当
量(W+2Mo)にて3〜18%、V:0.5%以上
1.1%未満、残部実質的にFeおよび不可避的不純物
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間、温間、熱間
にて使用される鍛造金型、摺動部材等、過酷な条件下に
適用し得る浸炭部材を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】工具あるいは摺動部材等において、表面
の耐摩耗性を高めるために硬さを高めた部材を使用する
場合、表面に発生したクラックが進展し、欠け等の発生
により寿命にいたる場合が多い。上述したクラックの進
展を抑制するためには、部材の靭性を高れば良いのであ
るが、靭性と硬さは相反する関係であり、靭性を高めれ
ば硬さが低下し、摩耗によって寿命が短くなるという問
題が生ずることになる。従来、冷間鍛造用金型等の鍛造
用工具あるいは摺動部材に対して、耐摩耗性や耐熱性を
付与し、かつ靭性を高めるという目的に対しては、熱処
理の変更や合金組成の変更により対応されてきた。
【0003】最近、従来の単純な熱処理や合金元素の添
加ではなく、表面を窒化処理や浸炭処理して上述のクラ
ックの進展を抑制する新たな技術が開発され注目されて
いる。たとえば、特開昭61−236923号に記載さ
れるように、表面を浸炭して熱処理をすることによって
表面に残留圧縮応力を付与するとともに、表面硬度およ
び高温硬さを高め、浸炭されない内部は低炭素であるが
ために硬度が低く靭性に優れた組成を残しておく技術が
開示されている。特に、この浸炭されていない内部の炭
素濃度を低く抑える技術は、表面の残留圧縮応力によっ
て高硬度の表面に発生したクラックの進展を抑制できる
とともに、低硬度の靭性が高い非浸炭部である芯部を存
在させることにより、芯部でのクラックの進展をも抑制
できるという優れた技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述の浸炭層が形成さ
れた部材、すなわち浸炭部材において、その部材内部を
構成する部分としては、浸炭した表面に加わる負荷に耐
えられるだけの十分な強度が必要であり、そのためには
内部の硬さをある程度確保する必要がある。そして浸炭
部材としては、重要な特性の一つである内部靭性の確保
および浸炭層に十分な硬さが得られることも必要であ
る。
【0005】上述した特開昭61−236923号によ
れば、浸炭して用いられる軸受鋼としてCr−Mo−V
系であって、M50よりもC量の低いC:0.11〜
0.15、Mo:3.0〜4.5、Cr:4.0〜4.
25、V:1.1〜1.3、Ni:3.2〜3.6(w
t%)、残部Feからなる浸炭用鋼が開示されている。
本発明者がこの材料を検討したところ、浸炭後の材料内
部を構成する素材としては、さらなる靭性の確保が必要
であった。
【0006】そこで、本発明者は、更なる靭性の確保を
達成し得る浸炭用鋼および浸炭部材として、特開平8−
81740号の方法を提案した。しかし、特開平8−8
1740号の浸炭部材の場合、その浸炭層によっては、
表面の浸炭層自身のクラック発生までをも抑制するには
不十分なところがあり、研究の余地が残るものであっ
た。つまり、浸炭部材の表面に形成された浸炭層には、
浸炭部材内部と同じく、その使用環境に耐え得るだけの
硬さと靭性が要求されるのであって、内部の硬さや靭性
が優れる浸炭部材であっても、表面浸炭層の硬さおよび
靭性に劣る浸炭部材においては、表面のクラック発生は
もとより、せっかくの優れた内部靭性および硬さの効果
までをも十分に生かすことができないのである。
【0007】そこで、本発明は、表面の一部または全部
に浸炭層が形成された浸炭部材において、内部硬さを浸
炭部材に必要な程度に高めてもクラックの進展の抑制で
きることはもちろん、その表面浸炭層に生じるクラック
をも抑制し得る、極めて靭性の高い浸炭部材を提供する
ことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、表面に浸炭
層が形成された浸炭部材において、その浸炭層および浸
炭層以外の内部における成分、組織、靭性、硬さの関係
を研究した。その結果、浸炭層を形成しない内部のV
(バナジウム)含有量を従来よりも低めの特定範囲に規
制することで、硬さを低下させることなく靭性を飛躍的
に向上させることができることを見いだした。そして、
本発明者は、上述の内部組成を有する浸炭部材の表面に
形成される浸炭層について、クラックの発生防止に最適
な形態を見いだし、その結果、本発明の部材内部組成の
効果をも十分に発揮できる浸炭部材として、本発明に至
ったのである。
【0009】すなわち、本発明は、表面の一部または全
部に浸炭層が形成された浸炭部材において、浸炭層以外
の内部が、重量%にて、C:0.4%以下、Cr:2〜
7%、WまたはMoの1種または2種をW当量(W+2
Mo)にて3〜20%、V:0.5%以上1.1%未満
を含有するFe基のマルテンサイト組織を有し、そし
て、浸炭層が形成された表面は、C濃度が浸炭層以外の
内部C濃度よりも高くかつ、0.4%以上0.8%未満
である靭性に優れた浸炭部材である。本発明であれば、
浸炭層以外の内部硬さがHRC60未満、浸炭層が形成
された表面硬さがHRC60以上である浸炭部材とし
て、表面浸炭部に要求される硬さと靭性が確保できるた
め、クラック発生の抑制と共に、その優れた内部硬さと
内部靭性をも十分に発揮し得るのである。
【0010】好ましくは、浸炭層以外の内部が、重量%
にて、C:0.1〜0.4%、Si:2%以下、Mn:
2%以下、Cr:2〜7%、WまたはMoの1種または
2種をW当量(W+2Mo)にて3〜18%、V:0.
5%以上1.1%未満を含有し、残部が実質的にFeお
よび不可避的不純物である浸炭部材である。また、望ま
しくはFeの一部を5%以下のNiで、あるいはさら
に、Feの一部を10%以下のCoで置換しても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の最大の特徴は、浸炭部材
の表面に形成される浸炭層について、クラックの発生を
抑制すると共に、本発明の部材内部組成の効果をも十分
に発揮するに最適な形態を見いだしたところにある。
【0012】先述したように、本発明者は、浸炭層を形
成しない内部のV(バナジウム)含有量を従来よりも低
めの特定範囲に規制することで、硬さを低下させること
なく靭性を飛躍的に向上し得る浸炭部材を提案した。そ
して、更なる研究の結果、上記の浸炭部材に形成された
表面浸炭層が、本発明の形態を満たせば、その優れた内
部靭性、硬さを最大限に生かしかつ、表面のクラック発
生を抑制できることを見いだしたのである。
【0013】つまり、本発明の浸炭部材は、浸炭処理に
よるMoあるいはWの微細なM6C型炭化物の生成やC
rの固溶、Vによる二次効果によって硬い浸炭層を形成
すると同時に、その微細なM6C型炭化物によって、オ
ーステナイト結晶粒の粗大化を防止するため、その優れ
た浸炭層の靭性を確保するものである。さらには、浸炭
層表面の硬さの変化を緩やかにし、疲労寿命特性を向上
するのに極めて有効な添加可能元素として、Niの含有
が可能であるところにも特徴がある。そして、Moある
いはW、Cr、Vによる硬さの向上、さらにはNiによ
る靭性と硬さの調整に加えて、本発明で最も重要となる
のが、浸炭層におけるCの含有量である。
【0014】浸炭層中のCは、上述したMoやWの炭化
物の形成に寄与する一方で、マルテンサイト変態による
焼入れ硬化処理後の硬さを高めかつ、オーステナイト安
定化元素としてオーステナイト化温度でのδフェライト
の生成を抑える効果を持つ。つまり、本発明の浸炭部材
は、その使用条件に最適な表面靭性と表面硬さをバラン
スよく得る目的のもと浸炭層中のC含有量を的確に調整
すると同時に、炭化物をも制御するものであり、その結
果、表面でのクラック発生と内部でのクラックの進展を
同時に抑制できるのである。具体的に述べると、浸炭層
以外の内部が本発明の組成を満たす浸炭部材において
は、その浸炭層のC濃度を浸炭層以外の内部C濃度より
も高くかつ、0.4%以上0.8%未満に調整すること
で本発明の効果を達成できる。
【0015】また、本発明は、浸炭層以外の内部におい
て、硬さを浸炭部材に必要な程度に高めても極めて高い
靭性を達成し得る組成として、高速度工具鋼の組成から
Cを低めた浸炭部材のV量を0.5%以上、1.1%未
満という低めに規制したところにも特徴がある。このV
の規制による本発明の浸炭部材であれば、内部硬さをほ
とんど落とすことなく、クラックの進展を抑制すること
ができるのである。
【0016】なお、本発明におけるVの規定によって硬
さを低下させず、著しく靭性が向上する理由は不詳であ
るが、熱処理(焼入れ、焼戻し)後のマトリクスの微細
な2次硬化析出物の種類と形態によるものと推測され
る。本発明の浸炭部材では、浸炭層以外の内部における
V量が1.1%以上であると、靭性が著しく低下するた
め、その含有量を1.1%未満と規定した。好ましくは
1.0%未満である。また、0.5%未満であると内部
の靭性は向上するものの、浸炭層のV添加による高温焼
戻しにおける十分な2次硬化が得られなくなり、しいて
は耐摩耗性、耐熱性の向上が劣化してしまい、結果とし
て、寿命特性を劣化させてしまうので好ましくない。し
たがって、本発明における浸炭層を形成しない内部のV
は、その下限を0.5%と規定した。
【0017】以下、浸炭層以外の内部を構成するV以外
の各元素について、その規定理由を述べる。Cは、本発
明の浸炭部材の基本的な靭性と硬さを決定する元素であ
る。つまり、Cは、上述のごとくマルテンサイト変態に
よる焼入れ硬化後の硬さを高めかつ、オーステナイト安
定化元素としてオーステナイト化温度でのδフェライト
の生成を抑える効果がある。その一方、Cは、その含有
量を高め過ぎると、内部硬さが高くなりすぎ、その結
果、内部靭性の劣化を招く。本発明においては、部材内
部の靭性を確保する上で、残留炭化物の生成過多による
靭性の低下を防ぐため、浸炭層以外の内部のCの上限を
0.4%とした。そして、δフェライトの生成を抑制す
るためには、好ましくは0.1%以上とする。
【0018】Crは、マトリクスと炭化物の両方に固溶
し、マトリクスの焼入れ性の確保、炭化物の焼入れ時の
基地への固溶の促進、浸炭層の高硬度化に有効な元素で
ある。本発明においては、焼入れ焼戻しによる部材内部
の硬さ確保のため、HRC40以上の内部硬さを達成し
得るCr量として、浸炭層以外の内部のCr量を2%以
上とした。また7%以上添加すると、δフェライトが安
定し、靭性を著しく劣化するため7%以下と規定した。
【0019】WとMoは、先述したM6C型炭化物の形
成による浸炭層の特性向上に加え、耐熱性を付与すると
いう点でも同一の作用を有する元素である。しかし、W
あるいはMoの含有量を高めることは、浸炭されない内
部をも硬くし、その結果、靭性の劣化によるクラックの
進展速度を高めてしまう。また、δフェライトを安定化
するため、靭性を著しく劣化することにもなる。これら
の効果において、WとMoは同一の作用を有し、Mo:
1重量%はW:2重量%と等価である。よって、本発明
では、WあるいはMの含有量を、W当量(W+2Mo)
として規定する。本発明では、上述の効果に鑑みて、浸
炭層以外の内部のW当量を3%以上と規定しかつ、上限
を20%とした。好ましいW当量の上限は18%であ
る。
【0020】Siは、脱酸元素として、あるいは硬さや
耐熱性を向上させる元素として知られており、添加する
ことが好ましい。添加する場合には2%を超えると内部
靭性が劣化するので、浸炭層以外の内部における上限を
2%とした。Mnは、脱酸元素として、あるいはMnS
として析出させ、不純物として含有されるSの有害性を
抑える効果がある。添加する場合には2%を超えると内
部靭性を劣化するため、浸炭層以外の内部における上限
を2%とした。
【0021】Niは、δフェライトの生成を著しく抑え
るとともに、浸炭層の硬さ特性を向上させる元素であ
る。しかし、その含有量が5%を超えると、A1変態点
が下がり、その結果、焼きなまし硬さを上げるため、浸
炭処理前の切削工程における被削性を劣化する。よっ
て、添加する場合には、浸炭層以外の内部において5%
以下とする。
【0022】Coは、主にマトリックスに固溶し、硬さ
と耐熱性を向上させる効果がある。ただし、添加量を増
やしていくと、強度と靭性は漸減する。特に高硬度が要
求される軸受部材に添加するのが望ましい元素である。
Coの10%以上の添加は、内部靭性が劣化し過ぎて、
軸受部材として不適となるので、本発明では浸炭部以外
の内部において、その上限を10%とした。
【0023】また本発明においては、具体的な添加元素
としてNbがある。Nbは、合金組織の微細化に効果の
ある元素であり、浸炭部材の内部靭性を高めるためには
有効である。Nbは添加し過ぎると、内部硬さが高くな
りすぎ、クラックの進展速度を速めてしまうため、添加
する場合は、その浸炭層以外の内部にて、0.5%以下
とする。
【0024】本発明の浸炭部材において、Niを含有す
る場合の好ましい具体的な組成範囲の一例を示すと、浸
炭層以外の内部が、重量%にて、C:0.1〜0.4
%、Si≦2%、Mn≦2%、Ni≦5%、Cr:2〜
7%、WまたはMoの1種または2種をW当量(W+2
Mo)にて3〜18%、V:0.5%以上1.1%未満
を含有し、残部が実質的にFeからなる浸炭部材であ
る。さらに、Nbを含有する場合の本発明の浸炭部材の
好ましい具体的な組成範囲の一例を示すと、浸炭層以外
の内部が、重量%で、C:0.1〜0.4%。Si≦2
%、Mn≦2%、Ni≦5%、Cr:2〜7%、Wまた
はMoの1種または2種をW当量(W+2Mo)にて3
〜18%、Nb≦0.5%、V:0.5%以上1.1%
未満を含有し、残部実質的にFeからなる浸炭部材であ
る。
【0025】本発明は、上述した規定を満足した浸炭部
材により、HRC60以上の浸炭層表面硬さと、HRC
60未満の浸炭部以外の内部硬さを達成することができ
る。また、本発明の浸炭部材は、その浸炭層の形成工程
における浸炭処理と、その後の熱処理により表面に圧縮
応力を残留させることができる。この圧縮応力場によっ
て、表面のクラックの進展が抑制できるととともに、高
い靭性を有する内部によって、内部でのクラックの進展
も防止できるため、寿命特性を著しく向上することがで
きる。
【0026】
【実施例】まず、本発明の浸炭部材とその比較部材を製
作するにあたって、その浸炭用鋼を、真空溶解法による
溶製と、その後のソーキング処理を施すことによって得
た。得られた浸炭用鋼に対して、本発明の浸炭部材の内
部特性を評価するため、浸炭処理を行わず2mUノッチ
シャルピー衝撃試験片用に15mm×15mmに圧延
し、焼入れ焼戻し処理を行ない評価試料とした。なお焼
入れ、焼戻しは、1100℃で焼入れ、高温焼戻しで2
次硬化が得られるピーク硬さが得られる焼戻し温度より
10℃高めの温度で処理したものである。得られた評価
試料に対して、硬さの測定およびシャルピー衝撃試験を
行なった。さらに、高温での軟化抵抗を評価するため、
650℃にて焼戻した時の硬さ(軟化抵抗)を測定し
た。
【0027】また、本発明の浸炭部材としての評価を行
うため、φ24mmに加工した上記の浸炭用鋼に対して
浸炭処理を行い、表面から1mm除去した後、上述した
焼入れ焼戻し処理を行って、浸炭層を有する浸炭部材を
得た。得られた浸炭部材は、X線による分析から表面に
圧縮応力が残留していることが確認された。そして、こ
れらの浸炭部材に対して、その表面硬さを測定した。ま
た、浸炭部材の浸炭層における靭性を評価するため、上
記の浸炭用鋼において、そのノッチ面のみに上述の浸炭
〜焼入れ焼戻し処理を行った10mRノッチシャルピー
衝撃試験片を作製し、そのシャルピー衝撃値を測定し
た。それらの結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】最初に、本発明の浸炭部材における、浸炭
層以外の内部特性についてその効果を説明する。表1よ
り、本発明の浸炭部材は、内部のV量が高い比較部材:
試料No.18に比べて、同等もしくはそれ以上の内部
硬さを有するにもかかわらず、約2倍〜4倍という極め
て高い内部衝撃値を有しており、浸炭部材として優れて
いることがわかる。また、本発明の浸炭部材は、内部の
C量を高めて内部硬さを高めた試料No.2および3に
おいても、極めて高い内部衝撃値を有するものである。
本発明の浸炭部材よりも、さらに内部C量が高い比較部
材:試料No.19は、内部V量が本発明の規定範囲で
あっても、内部硬さが高くなり内部衝撃値が低下してし
まうため、好ましくないものであることがわかる。
【0030】内部V量を変えた本発明の浸炭部材:試料
No.1、4、5より、V量が1%を超えると内部衝撃
値が低下する傾向があることがわかる。また、本発明の
内部V量について、その規定範囲よりも内部V量の少な
い比較鋼:試料No.20は、その内部衝撃値こそ高い
ものの、浸炭処理における十分な2次硬化が得られない
ため、表面浸炭層の硬さに劣り、高温における軟化抵抗
も劣化するため好ましくないものである。
【0031】内部W、Cr、Co量を変えた本発明の浸
炭部材:試料No.6〜12、16、17においても、
内部V量が本発明の範囲よりも高い比較鋼:試料No.
18より大幅に優れた内部衝撃値を有することがわか
る。また、内部Ni量を変えた本発明の浸炭部材:試料
No.13〜15より、内部Ni量の増加とともに内部
衝撃値が高くなっており、内部の靭性を確保するために
Niの添加が有効であることがわかる。
【0032】そして、650℃で焼戻した時の硬さ(軟
化抵抗)においても、本発明の浸炭部材に対し、部材内
部のV量が0.34%である比較部材:試料No.20
は、著しく軟化している。すなわち、本発明の浸炭部材
は、その内部V量を0.5%以上に保つことによって、
高い軟化抵抗をも達成するものであり、その結果、使用
中の耐熱性にも優れるのである。
【0033】次に、本発明の浸炭層について、その特性
を説明する。 本発明の浸炭部材:試料No.1〜17については、本
発明の部材内部組成に対し、浸炭層のC量を0.4〜
0.8%に調整することによって、優れた硬さと靭性を
好ましいバランスにて達成できることがわかる。例え
ば、試料No.2、3は、CやMo、Vの添加によって
内部硬さを高めたものであり、それに伴って、HRC6
0以上の優れた表面硬さを確保できる。この場合、浸炭
層の低C調整を組み合わせることによって、優れた表面
衝撃値の達成をも可能とすることができる。そして、試
料No.8、9のごとく、内部靭性の確保によるWやM
oの添加量の低減に対しても、その浸炭層におけるC量
を高めることで、十分な表面硬さと衝撃値の達成が可能
である。
【0034】その他、本発明の特徴であるVに加え、W
やMo、Cr、Niなどの添加量に対応して、浸炭層の
C量を調整すれば、部材内部および浸炭層の硬さと靭性
をバランスよく調整することが可能である。例えば、試
料No.1、7、11、12、15は内部靭性を重視、
試料No.10は内部硬さを重視、さらに、試料No.
4、6、14は内部、表面両方の靭性を重視した浸炭部
材であり、試料No.16のように、内部靭性と表面硬
さを重視した浸炭部材とすることも可能である。
【0035】一方、比較部材:試料No.18〜20
は、その浸炭層について、本発明のC量を満たしてはい
るが、何れの試料についても、その特性に劣っている。
すなわち、試料No.18、19は、本発明量を超える
CあるいはVの添加によって、浸炭層の靭性が過剰に劣
化してしまい、もはや浸炭層のC量調整のみでは、その
優れた表面硬さと表面靭性を確保するのが困難のもので
ある。また、試料No.20は、Vの不足による影響が
浸炭層の硬さ劣化に現れており、HRC60以上の優れ
た表面硬さを達成できないものである。
【0036】また、比較部材:試料No.21、22
は、本発明である浸炭層のC量を満たさないものであ
る。試料No.21には、過剰Cによる表面衝撃値の劣
化が、そして、試料No.22には、Cの不足による表
面硬さの劣化が見られる。
【0037】
【発明の効果】本発明の浸炭部材であれば、その内部お
よび表面浸炭層において、極めて優れた靭性と十分な強
度をバランスよく保つことができるため、従来の浸炭部
材の寿命特性を飛躍的に向上することが可能となる。し
たがって、冷間鍛造金型、摺動部材、パンチやエンドミ
ル等の工具としてクラックの発生が予想される過酷な条
件下に適用する浸炭部材として極めて有用である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面の一部または全部に浸炭層が形成さ
    れた浸炭部材において、浸炭層以外の内部が、重量%に
    て、C:0.4%以下、Cr:2〜7%、WまたはMo
    の1種または2種をW当量(W+2Mo)にて3〜20
    %、V:0.5%以上1.1%未満を含有するFe基の
    マルテンサイト組織を有すると同時に、その硬さがHR
    C60未満であり、浸炭層が形成された表面は、C濃度
    が浸炭層以外の内部C濃度よりも高くかつ、0.4%以
    上0.8%未満であると同時に、その硬さがHRC60
    以上であることを特徴とする靭性に優れた浸炭部材。
  2. 【請求項2】 表面の一部または全部に浸炭層が形成さ
    れた浸炭部材において、浸炭層以外の内部が、重量%に
    て、C:0.1〜0.4%、Si:2%以下、Mn:2
    %以下、Cr:2〜7%、WまたはMoの1種または2
    種をW当量(W+2Mo)にて3〜18%、V:0.5
    %以上1.1%未満を含有し、残部が実質的にFeおよ
    び不可避的不純物であると同時に、その硬さがHRC6
    0未満であり、浸炭層が形成された表面は、C濃度が浸
    炭層以外の内部C濃度よりも高くかつ、0.4%以上
    0.8%未満であると同時に、その硬さがHRC60以
    上であることを特徴とする靭性に優れた浸炭部材。
  3. 【請求項3】 請求項1ないし2のいずれかに記載のF
    eの一部を5%以下のNiで置換したことを特徴とする
    靭性に優れた浸炭部材。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載のF
    eの一部を10%以下のCoで置換したことを特徴とす
    る靭性に優れた浸炭部材。
JP20562697A 1997-07-31 1997-07-31 靭性に優れた浸炭部材 Pending JPH1150190A (ja)

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JP20562697A JPH1150190A (ja) 1997-07-31 1997-07-31 靭性に優れた浸炭部材

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JP20562697A JPH1150190A (ja) 1997-07-31 1997-07-31 靭性に優れた浸炭部材

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017508060A (ja) * 2013-12-02 2017-03-23 エラスティール 鋼合金およびそのような鋼合金を含む部品
JP2019522732A (ja) * 2016-06-17 2019-08-15 オベール エ デュヴァル 鋼組成物

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JP2017508060A (ja) * 2013-12-02 2017-03-23 エラスティール 鋼合金およびそのような鋼合金を含む部品
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