JPH1180882A - 曲げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品 - Google Patents
曲げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品Info
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- JPH1180882A JPH1180882A JP9236736A JP23673697A JPH1180882A JP H1180882 A JPH1180882 A JP H1180882A JP 9236736 A JP9236736 A JP 9236736A JP 23673697 A JP23673697 A JP 23673697A JP H1180882 A JPH1180882 A JP H1180882A
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Abstract
広い歪速度範囲の衝撃的負荷による破損に対して優れた
抵抗性を有する浸炭部品を提供する。 【解決手段】母材が、重量%で、C:0.1〜0.3
%、Mn:0.35〜1.1%、Cr:0.1〜1.1
%で、且つ、Mn+Cr:0.6〜1.7%、B:0.
001〜0.005%、Al:0.01〜0.1%、M
o:0.15%を超えて0.70%以下、Nb:0〜
0.05%、Ti:0〜0.05%、N:0〜0.01
5%、Si:0.3%未満、Cu:0.4%以下、N
i:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.03
%以下、残部Fe及び不純物の化学組成の鋼で、浸炭硬
化層の表面C量が重量%で0.6〜1.1%で、且つそ
の浸炭硬化層におけるトルースタイトの面積分率が5〜
50%である曲げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品。
Description
性に優れた浸炭部品に関し、より詳しくは、衝撃的な曲
げ応力による破損が問題となる自動車の差動装置用歯車
などの浸炭部品に関する。
歯車)の母材(素材鋼)には浸炭鋼が使用されている
が、衝撃的な曲げ応力が作用して破損する場合がある。
この応力は、車両を急発進、急停車させたり、凹凸道
(悪路)を高速走行する場合などに生ずる衝撃的な負荷
に起因するものである。
は、急発進や急停車の程度、悪路における走行速度の程
度に応じて、さまざまである。このため、広い歪速度範
囲の衝撃的な負荷に対して抵抗性を有する差動装置用歯
車が、換言すれば、高歪速度と低歪速度との双方の下で
曲げ強度に優れた差動装置用歯車が求められている。
のSCr420やSCM420などを母材として所望形
状に加工した後、これに浸炭処理を施して製造されてき
た。
軽量化などの動きは、ますます高い曲げ強度を必要とし
ており、前記のJIS規格鋼を母材とした場合には、上
記の衝撃的な負荷に対しては充分な寿命が得られない。
そこで、上記の衝撃的な負荷に対する抵抗性を高めるた
めに、浸炭処理を前提とした鋼が特開昭62−1843
号公報に提案されている。すなわち、前記公報には、S
iとMoを複合添加し(重量%で、Mo:0.5〜1.
0%で、且つ、Mo+Si:1〜2%)、衝撃強度を高
めた鋼が開示されている。
と、前記公報に提案された鋼を母材とした浸炭歯車を用
いても、上記のようなエンジンの高出力化や軽量化を行
った場合の衝撃的な負荷による破損には、必ずしも対応
できるものではなく、充分な効果を有していないことが
明らかになった。すなわち、前記公報に提案された鋼を
母材とした場合には、差動装置用の傘歯車に必要な曲げ
強度のうちでも、特に、低歪速度での曲げ強度を満足で
きるものではなかったのである。
動装置用傘歯車などで問題となる広い歪速度範囲の衝撃
的な負荷による破損に対して優れた抵抗性を有する浸炭
部品、換言すれば、高い歪速度と低い歪速度との双方の
条件の下で、曲げ強度に優れた浸炭部品を提供すること
を目的とする。
示す曲げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品にある。
1〜0.3%、Mn:0.35〜1.1%、Cr:0.
1〜1.1%で、且つ、Mn+Cr:0.6〜1.7
%、B:0.001〜0.005%、Al:0.01〜
0.1%、Mo:0.15%を超えて0.70%以下、
Nb:0〜0.05%、Ti:0〜0.05%、N:0
〜0.015%、Si:0.3%未満、Cu:0.4%
以下、Ni:0.5%以下、P:0.03%以下、S:
0.03%以下、残部Fe及び不可避不純物の化学組成
の鋼であって、浸炭硬化層の表面C量が重量%で0.6
〜1.1%で、且つその浸炭硬化層におけるトルースタ
イトの面積分率が5〜50%であることを特徴とする曲
げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品」である。
1mmまでの領域における基地のC濃度(重量%)のこ
と」をいい、「トルースタイトの面積分率」は「浸炭硬
化層の全域に亘るトルースタイトの平均の面積分率」の
ことを指す。
成するため、浸炭部品の母材となる鋼材の化学組成及び
浸炭部品の組織、並びに浸炭部品の破損の態様などにつ
いて研究を行った結果、下記の知見を得た。
有する。すなわち、母材硬度の低下とともに浸炭部品の
曲げ強度は大きく低下する。なお、「母材」とは浸炭硬
化していない部分、すなわち浸炭硬化層以外の部分のこ
とで、「素材鋼」のことをいう。
られているが、浸炭層のようにC含有量が高い場合に
は、焼入れ性向上効果は殆ど生じない。したがって、B
添加鋼を浸炭焼入れすれば、母材の硬度だけを高めるこ
とができる。
Crの合計量)及びMo量を調整して焼入れ性を制御し
た鋼に適正量のBを添加して浸炭焼入れすれば、浸炭硬
化層の全域に亘ってマルテンサイトと残留オーステナイ
トに加えてトルースタイトを生成させることができる。
しかも、トルースタイト生成量(トルースタイトの面積
分率)の制御は比較的容易である。
は、通常のガス浸炭を行った場合に鋼材表面部に見られ
る「不完全焼入れ層」とは異なったものである。すなわ
ち、所謂「不完全焼入れ層」は、浸炭焼入れ時に鋼材表
面部のCr、MnやSiなどの合金元素が酸化され、そ
の周辺部で前記の合金元素(Cr、MnやSiなど)が
欠乏し、焼入れ性が不足することが原因で生じた組織で
ある。この組織は鋼材の表面に対して層状、あるいは粒
界の酸化物に沿った形状で現出する。一方、上記の「ト
ルースタイト」は、マルテンサイトと残留オーステナイ
トの中に粒状に観察されるもので、前記の所謂「不完全
焼入れ層」とは明らかに形態が異なった組織である。こ
の両者は、500倍程度の倍率で光学顕微鏡観察すれば
容易に識別できる。
と、静的曲げ強度とシャルピー衝撃値(衝撃特性)が共
に向上する。しかし、トルースタイトの面積分率が大き
くなりすぎると曲げ強度は劣化してしまう。
広い歪速度範囲の衝撃的な負荷による破損の発生、換言
すれば、高い歪速度と低い歪速度との双方の条件下での
曲げによる破損発生の問題を解決するには、浸炭焼入れ
後の組織に関して、浸炭硬化層の組織はマルテンサイト
と残留オーステナイト及び静的曲げ強度と衝撃特性に優
れたトルースタイトとの混合組織とすれば良い。一方、
母材の組織は、所望の曲げ強度を確保できるだけの硬度
を有しておりさえすれば、何であっても良い。
摩耗性、曲げ強度及び靭性(衝撃特性)に影響を及ぼ
す。すなわち、浸炭硬化層の表面C量が重量%で0.6
%を下回ると、耐摩耗性が劣化する。一方、重量%で
1.1%を超えると、浸炭硬化層の脆化が著しいため、
曲げ強度と衝撃特性は大きく低下してしまう。
に「表面から0.1mmまでの領域における基地のC濃
度(重量%)のこと」を指す。「表面C量が0.6%を
下回る」ということは、「前記領域でのC濃度分布が一
部でも0.6%を下回る」ことをいう。同様に、「表面
C量が1.1%を超える」ということは、「前記領域で
のC濃度分布が一部でも1.1%を超える」ことをい
う。
長分散型EPMAなどの装置を用いて検量線により測定
すれば良い。
題から、試料のマウントなどが影響して正確な分析を行
い難い場合があるが、このような時には最も表面に近く
てマウントなどの影響が無い点から外挿して表面C量を
読み取れば良い。
ものである。
する。なお、成分含有量の「%」は「重量%」を意味す
る。
て、浸炭部品の曲げ強度を向上させる作用を有する。し
かし、C含有量が0.1%未満では、添加効果に乏し
い。一方、0.3%を超えると、靭性の低下をもたら
し、シャルピー衝撃特性を劣化させてしまう。したがっ
て、Cの含有量を0.1〜0.3%とした。なお、C含
有量は0.15〜0.25%とすることが好ましい。
を上昇させる作用がある。しかし、その含有量が0.3
5%未満では添加効果に乏しい。一方、Mnを過剰に添
加するとオーステナイト粒界の脆化を招くため、曲げ強
度が却って劣化してしまう。特に、Mn含有量が1.1
%を超えると曲げ強度の低下が顕著になる。したがっ
て、Mnの含有量を0.35〜1.1%とした。なお、
Mnの含有量は0.4〜1.0%とすることが望まし
い。
昇させる作用を有する。しかし、その含有量が0.1%
未満では上記の作用が期待できない。一方、Crを過剰
に添加するとオーステナイト粒界の脆化を招くため、曲
げ強度が却って劣化してしまう。特に、Cr含有量が
1.1%を超えると曲げ強度の低下が著しくなる。した
がって、Crの含有量を0.1〜1.1%とした。な
お、Crの好ましい含有量は0.2〜1.0%である。
きく影響し、これを通じて浸炭部品の特性を左右する。
すなわち、この値が0.6%未満であると浸炭硬化層の
全域に亘るトルースタイトの平均の面積分率が50%を
超えてしまうので、浸炭部品の曲げ強度の劣化をきた
す。一方、1.7%を超えると、浸炭硬化層でのトルー
スタイトの生成が困難となって、前記のトルースタイト
面積分率が5%を下回ってしまい、浸炭部品の静的曲げ
強度とシャルピー衝撃値(衝撃特性)の双方が劣化して
しまう。したがって、MnとCrの含有量の和であるM
n+Crの量を0.6〜1.7%とした。なお、Mn+
Cr量は0.8〜1.6%とすることが好ましい。
後に焼入れされる浸炭層の焼入れ性は上昇させずに、母
材の焼入れ性だけを高める作用がある。このため、母材
硬度の上昇を通じて浸炭部品の曲げ強度を高める作用を
有する。しかし、Bの含有量が0.001%未満では添
加効果に乏しく、0.005%を超えて含有させても前
記効果は飽和してコストの上昇をきたすことに加えて、
熱間加工性の劣化を招く。したがって、Bの含有量を
0.001〜0.005%とした。なお、Bの含有量は
0.0015〜0.003%とすることが好ましい。
して、浸炭焼入れ後の硬化層及び母材部の結晶粒を微細
化する作用がある。しかし、その含有量が0.01%未
満では前記作用は発揮されず、結晶粒の粗大化によっ
て、浸炭部品の曲げ強度と衝撃特性が共に低下してしま
う。一方、0.1%を超えると前記作用が飽和する。し
たがって、Alの含有量を0.01〜0.1%とした。
なお、Alの望ましい含有量は0.02〜0.05%で
ある。
ルテンサイトの靭性を高める作用も有する。しかし、そ
の含有量が0.15%以下では靭性向上効果に乏しい。
一方、靭性を向上させるために多量に添加すると、浸炭
硬化層の焼入れ性が上昇し過ぎてトルースタイトを生成
させることができなくなる。この場合、Mn量、Cr量
及びMn+Cr量を既に述べた範囲に調整することによ
って、靭性の向上と浸炭硬化層でのトルースタイトの生
成の両者を達成させることが可能であるが、Moの含有
量が0.70%を超える場合には、たとえMn量、Cr
量及びMn+Cr量を既に述べた範囲に調整してもトル
ースタイトの生成が困難となるし、母材の被削性や冷間
鍛造性が低下してしまう。したがって、Moの含有量を
0.15%を超えて0.70%以下とした。なお、Mo
の好ましい含有量は0.2〜0.5%である。
ーステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、浸炭焼入れ後の
硬化層及び母材部の結晶粒を微細化する作用がある。こ
の効果を確実に得るには、Nbは0.005%以上の含
有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.
05%を超えると前記作用が飽和し、コストが嵩むばか
りである。したがって、Nbの含有量を0〜0.05%
とした。
ーステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、浸炭焼入れ後の
硬化層及び母材部の結晶粒を微細化する作用がある。こ
の効果を確実に得るには、Tiは0.005%以上の含
有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.
05%を超えると前記作用が飽和し、コストが嵩むばか
りである。したがって、Tiの含有量を0〜0.05%
とした。
成して浸炭処理時のオーステナイト結晶粒の粗大化を抑
制し、浸炭焼入れ後の硬化層及び母材部の結晶粒を微細
化する作用がある。この効果を確実に得るには、Nは
0.003%以上の含有量とすることが好ましい。しか
し、その含有量が0.015%を超えると前記作用が飽
和し、更には前記したB添加の効果が失われてしまう。
したがって、Nの含有量を0〜0.015%とした。な
お、N含有量の上限は0.012%とすることが好まし
い。
ナイト粒界に粒界酸化層を生成させる。このため、浸炭
部品の曲げ強度と衝撃特性が低下してしまう。特にその
含有量が0.3%以上になると、粒界酸化層が表面下の
深い位置まで生成するようになり、浸炭部品の曲げ強度
と衝撃特性の低下が著しくなる。したがって、Siの含
有量を0.3%未満とした。なお、Si含有量は0.1
5%以下とすることが望ましい。
4%を超えて含有すると、熱間加工時における加工性の
著しい劣化をきたす。したがって、Cuの含有量の上限
を0.4%とした。なお、Cu含有量は0.3%以下と
することが望ましい。
0.5%を超えて含有すると、被削性の著しい劣化をき
たす。したがって、Niの含有量の上限を0.5%とし
た。なお、Ni含有量は0.3%以下とすることが望ま
しい。
特にその含有量が0.03%を超えると、浸炭部品の曲
げ強度と靭性の劣化が著しくなる。したがって、Pの含
有量の上限を0.03%とした。なお、Pの含有量は
0.025%以下とすることが好ましい。
有量が0.03%を超えると、浸炭部品の曲げ強度と靭
性の劣化が著しくなる。したがって、Sの含有量の上限
を0.03%とした。なお、Sの含有量は0.025%
以下とすることが好ましい。
度及び衝撃特性に大きな影響を及ぼす。浸炭硬化層の表
面C量が0.6%未満であると、浸炭部品の表面硬度が
低くなってしまい、充分な耐摩耗性を付与させることが
できない。一方、1.1%を超えると浸炭硬化層が脆化
して、浸炭部品の曲げ強度と衝撃特性が共に低下してし
まう。したがって、浸炭後の表面C量を0.6〜1.1
%とした。なお、浸炭後の表面C量は0.7〜1.0%
とすることが好ましい。
げ強度と衝撃値を向上させる作用がある。このため、広
い歪速度範囲の衝撃的な負荷による破損に対して優れた
抵抗性を有する浸炭部品を得るためには、浸炭部品の浸
炭硬化層の組織を制御することが重要である。したがっ
て、本発明においては、浸炭焼入れ後の浸炭硬化層の組
織を規定する。
における主組織はマルテンサイトと残留オーステナイト
から構成される。しかし、Mn量、Cr量、Mn+Cr
量及びMo量を厳密に制御した上で適正量のBを添加し
た、本発明の対象鋼を母材(素材鋼)とした部品の場合
には、浸炭焼入れで、前記の浸炭硬化層にマルテンサイ
トと残留オーステナイトに加えてトルースタイトが生成
する。
分率が5%未満の場合には、前記の浸炭部品の曲げ強度
と衝撃値を向上させる作用が期待できない。一方、トル
ースタイトの面積分率が50%を超えると、曲げ強度が
低下してしまう。したがって、浸炭硬化層におけるトル
ースタイトの面積分率を5〜50%とした。なお、浸炭
硬化層におけるトルースタイトの面積分率の好ましい範
囲は10〜40%である。
を制限する必要はない。すなわち、母材は所望の曲げ強
度を確保できるだけの硬度を有しておりさえすれば、そ
の組織は何であっても良い。
は、通常の浸炭焼入れを施すだけで、上記の浸炭硬化層
における組織を得ることができる。
率は、浸炭焼入れ時の冷却速度の大きな部分では小さ
く、冷却速度が遅くなる部分では逆に大きくなる。した
がって、通常の浸炭焼入れを施す場合には、浸炭焼入れ
時の質量効果を考えて、対象とする部品のサイズは外径
(例えば対象部品が「歯車」の場合、歯先円の直径に相
当)で、約25mmから約200mmまでとすることが
好ましい。一方、対象とする部品のサイズに関係なく、
容易に所望の組織とするためには、浸炭焼入れ時の冷却
速度を調整すれば良い。これには、冷却媒体(焼入れ
剤)として水、油、塩(ソルト)などを適宜選び、適当
な温度で用いれば良い。
組成を有する母材(素材鋼)を、例えば通常の方法で溶
製した後、熱間で圧延又は鍛造し、更に必要に応じて熱
処理を行い、次いで切削や圧造などで所望の部品形状と
した後、浸炭焼入れを行い、必要に応じて低温での焼戻
しや研削、研磨をして製造される。
法によって150kg真空溶製した。表1における鋼 A
〜M は本発明対象鋼(以下、本発明鋼という)、表2に
おける鋼 N〜V は成分のいずれかが本発明で規定する範
囲から外れた比較鋼である。比較鋼のうち鋼 Vは衝撃特
性に優れた浸炭用鋼として知られている高Si−高Mo
鋼である。
鋼片とした後、1200℃に加熱してから、1200〜
1000℃の温度で熱間鍛造して直径20mmの丸棒と
し、更に、925℃で焼準した。
に示す曲げ試験片とJIS3号シャルピ−衝撃試験片を
切り出した。
する前記した2種類の試験片に対して、浸炭条件を表3
のa〜dと変えて、図2に示すヒートパターンで浸炭焼
入れを施し、その後180℃で2時間の焼戻しを行っ
た。なお、浸炭条件a〜dのすべてにおいて、浸炭後の
試験片は220℃の塩浴中に焼入れした。
て、常温(室温)でのシャルピー衝撃試験と、常温3点
曲げ試験(スパン45mm、切り欠き底の歪速度0.0
2/秒)を実施した。なお、3点曲げ試験は試験片が破
損するまでの最大荷重で評価し、これを3点曲げ強度と
した。更に、EPMAによる浸炭硬化層の表面C量測定
を行った。又、表面からの硬度分布を測定して浸炭硬化
層を特定し、光学顕微鏡を用いて浸炭硬化層の組織観察
を行った。
曲げ強度とシャルピー衝撃値(衝撃特性)に及ぼす浸炭
硬化層の表面C量の影響を示すものである。なお、表4
の浸炭硬化層の組織に関し、トルースタイト以外の部分
(面積分率)はマルテンサイトと残留オーステナイトで
あることを意味する。
で規定する値より高い浸炭条件dの比較例の場合には、
本発明例の浸炭条件a〜cに比べて曲げ強度とシャルピ
ー衝撃値が共に低いことが明らかである。すなわち、浸
炭条件dでは、表面C量が1.15%と高すぎるために
浸炭硬化層、特に表面部の浸炭硬化層が脆化し、浸炭硬
化層にトルースタイトが生成しているにも拘らず、曲げ
強度と衝撃値が共に低い。
比較鋼である鋼 N〜V を母材とする前記の2種類の試験
片に対して、表3のaの浸炭条件で、図2に示すヒート
パターンの浸炭焼入れを施し、その後180℃で2時間
の焼戻しを行った。なお、本実施例においても浸炭後の
試験片はすべて220℃の塩浴中に焼入れした。
験片を供試材として、実施例1の場合と同じ条件で、シ
ャルピー衝撃試験と、3点曲げ試験を行った。又、実施
例1の場合と同様に、EPMAによる浸炭硬化層の表面
C量測定、硬度分布測定による浸炭硬化層の特定及び光
学顕微鏡を用いた浸炭硬化層の組織観察を行った。
aの浸炭条件による浸炭焼入れによって、本発明で規定
する範囲の浸炭硬化層における表面C量と組織が共に得
られている。そして、いずれの鋼を母材とした場合も2
300kgf以上の3点曲げ強度と、13.0kgf・
m/cm2 以上のシャルピー衝撃値が得られている。こ
のように本発明鋼を母材とした場合には、高Si−高M
oの従来鋼(鋼 V)を母材とした場合より曲げ強度と衝
撃値がいずれも高く、曲げ強度と衝撃特性に優れている
ことが明らかである。
には、3点曲げ強度とシャルピー衝撃値のいずれか一
方、あるいは双方の値が低い。
る値よりも高い。このため、鋼 Nを母材とする場合に
は、浸炭硬化層にトルースタイトが生成せず、曲げ強度
とシャルピー衝撃値が共に低い。
る値よりも低い。このため、鋼 Oを母材とする場合に
は、浸炭硬化層にトルースタイトが過剰に生成して、曲
げ強度が低い。
値よりも高い。このため、浸炭硬化層のトルースタイト
の面積分率は本発明で規定する範囲内にあるが、曲げ強
度が低い。
値よりも高い。このため、浸炭硬化層のトルースタイト
の面積分率は本発明で規定する範囲内にあるが、曲げ強
度が低い。
規定する値よりも低く、且つ、Mn+Crの量が本発明
で規定する値よりもずいぶんと低い。このため、鋼 Rを
母材とする場合には、浸炭硬化層にトルースタイトが多
量に生成し曲げ強度が低い。
発明で規定する値より高い。この鋼S を母材とする場合
には、浸炭硬化層にトルースタイトが生成しないこと
と、Mn及びCrが過剰であることとが重なって曲げ強
度と衝撃値はいずれも低い。
より低い。このため、鋼 Tを母材とする試験片は母材の
硬度が極めて低く、曲げ強度が低い。ちなみに、鋼 Tの
母材硬度はHv290であった。一方、B、NとTiを
除いた他の成分元素の含有量が鋼 Tとほぼ同じである本
発明鋼 Hの場合、母材硬度はHv360であった。
で規定する値より高い。この鋼 Uを母材とする場合に
は、浸炭硬化層にトルースタイトが生成しないので曲げ
強度と衝撃値はいずれも低い。
性に優れることから、広い歪速度範囲の衝撃的な負荷に
よる破損が問題となる自動車の差動装置用歯車などの浸
炭部品として利用することができる。
である。
示す図である。
Claims (1)
- 【請求項1】母材が、重量%で、C:0.1〜0.3
%、Mn:0.35〜1.1%、Cr:0.1〜1.1
%で、且つ、Mn+Cr:0.6〜1.7%、B:0.
001〜0.005%、Al:0.01〜0.1%、M
o:0.15%を超えて0.70%以下、Nb:0〜
0.05%、Ti:0〜0.05%、N:0〜0.01
5%、Si:0.3%未満、Cu:0.4%以下、N
i:0.5%以下、P:0.03%以下、S:0.03
%以下、残部Fe及び不可避不純物の化学組成の鋼であ
って、浸炭硬化層の表面C量が重量%で0.6〜1.1
%で、且つその浸炭硬化層におけるトルースタイトの面
積分率が5〜50%であることを特徴とする曲げ強度と
衝撃特性に優れた浸炭部品。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23673697A JP3733504B2 (ja) | 1997-09-02 | 1997-09-02 | 曲げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品 |
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JP23673697A JP3733504B2 (ja) | 1997-09-02 | 1997-09-02 | 曲げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH1180882A true JPH1180882A (ja) | 1999-03-26 |
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ID=17005033
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JP23673697A Expired - Fee Related JP3733504B2 (ja) | 1997-09-02 | 1997-09-02 | 曲げ強度と衝撃特性に優れた浸炭部品 |
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JP (1) | JP3733504B2 (ja) |
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