JPH11346775A - アクチン結合蛋白質フラビン - Google Patents
アクチン結合蛋白質フラビンInfo
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- JPH11346775A JPH11346775A JP10164016A JP16401698A JPH11346775A JP H11346775 A JPH11346775 A JP H11346775A JP 10164016 A JP10164016 A JP 10164016A JP 16401698 A JP16401698 A JP 16401698A JP H11346775 A JPH11346775 A JP H11346775A
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Abstract
フラビンを産業上利用するための遺伝子材料を提供す
る。 【解決手段】 ラット蛋白質であって、配列番号1のア
ミノ酸配列を有するアクチン結合蛋白質フラビン、この
蛋白質をコードするラット遺伝子、この遺伝子のcDN
Aであって、配列番号2の塩基配列を有するcDNA、
このcDNAの一部連続配列からなるDNA断片、この
cDNAまたはDNA断片がハイブリダイズする動物ゲ
ノムDNA配列、cDNAを保有する組換えベクター、
および前記アクチン結合蛋白質フラビンを免疫原として
作成された抗体。
Description
結合蛋白質フラビン(Frabin)に関するものである。
さらに詳しくは、この発明は、動物の個体形成等に重要
な役割を果たす新規動物性蛋白質フラビンと、このフラ
ビンをコードする遺伝子材料に関するものである。
ば、細胞接着、細胞運動および細胞の形状決定等におい
ては、細胞接着分子、受容体およびチャンネル等の膜貫
通蛋白質によって形成される接着装置が重要な役割を果
たしており、これらの接着装置は、しばしばアクチン性
細胞骨格と結合することが知られている(Biochem. Bio
phys. Acta 737:305-341, 1983; Curr. Opin. Cell Bio
l. 1:103-109, 1989; Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1
-6, 1991; Curr. Opin. Cell Biol. 3:849-853,1991; S
cience. 258:955-964, 1992; Curr. Opin. Cell Biol.
4:834-839, 1992; Curr. Opin. Cell Biol. 5:653-660,
1993; Trends Biochem. Sci. 22:53-58,1997 )。従っ
て、アクチン性細胞骨格と細胞質膜とは前記細胞現象に
おいて重要な役割を果たしており、それ故アクチン性細
胞骨格を膜貫通蛋白質に結合させる生体分子の特定に多
大な努力が払われてきた。しかしながら、アクチン性細
胞骨格と細胞質膜との結合に関する分子的基礎について
は、今だ充分に理解されてはいない。
理解するため、これまでに細胞接着部位が最も広範に研
究された(Biochem. Biophys. Acta 737:305-341, 198
3; Curr. Opin. Cell Biol. 1:103-109, 1989; Cell Mo
til. Cytoskeleton. 20:1-6,1991; Curr. Opin. Cell B
iol. 3:849-853, 1991; Science. 258:955-964, 1992;
Curr. Opin. Cell Biol. 4:834-839, 1992; Curr. Opi
n. Cell Biol. 5:653-660, 1993; Trends Biochem. Sc
i. 22:53-58, 1997 )。その結果、アクチン線維(F−
アクチン)に関連する細胞接着部位が2つのタイプ、す
なわち、細胞−細胞接着帯(adherens junctions: A
J)と、細胞−マトリックスAJとに分類されている。
細胞−細胞AJにおいては、その細胞外表面でカドヘリ
ン(cadherin)が互いに相互作用しており、多くの結合
蛋白質が同定されている(Development 102:639-655, 1
988; Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Scien
ce 251:1451-1455,1991; Curr. Opin. Cell Biol. 4:83
4-839, 1992; EMBO J. 8:1711-1717, 1989; Cell 65:84
9-857, 1991; Science 251:1451-1455, 1991; Curr. Op
in. Cell Biol. 4:834-839, 1992)。これらの結合タン
パク質のうち、α−カテニンは、F−アクチンと直接相
互作用する(Pro.Natl. Acad. Sci. USA. 92:8813-881
7, 1995)と共に、α−アクチニンおよび/またはZO
−1を介してF−アクチンに間接的に相互作用している
(J. Cell.Biol. 130:67-77, 1995;J. CellBiol. 138:1
81-192, 1997 )。また、別のF−アクチン結合蛋白質
であるビンキュリン(vinculin)は、細胞−細胞AJに
集中していることが知られているが、細胞−細胞AJに
おけるその相互作用分子は未だ特定されていない(Cell
Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Curr. Opin. Ce
ll Biol. 4:834-839, 1992)。さらに、細胞外表面にお
いてインテグリン(integrin)がマトリックス蛋白質と
相互作用する細胞−マトリックスAJでは、その細胞質
ドメインは、α−アクチニン、ビンキュリン、タリン
(talin )等のF−アクチン結合蛋白質と、直接または
関節的に相互作用している(Ann. Rev. Cell Dev. Bio
l. 11:379-416, 1995)。
白質が、アクチン性細胞骨格と細胞質膜のカドヘリンお
よびインテグリンとの結合因子(linker)として作用し
ていると考えられている。一方、アクチン性細胞骨格と
細胞質膜との結合は、神経細胞に特異的な現象(例え
ば、成長円錐の伸長やその後のシナプス結合の形成およ
び維持等)にとっても重要である(Neuron 1:761-772,
1988; Science 242:708-715, 1988; Curr. Opin. Neuro
biol. 4:43-48, 1994; Curr. Opin. Neurobiol. 4:640-
647, 1994; Cell 83:171-176, 1995)。しかしながら、
これらの神経細胞に特異的な現象において、どのような
分子がアクチン性細胞骨格を細胞質膜に結合させている
かは明らかではない。
明者等は、ラットの脳から幾つかの新規なF−アクチン
結合蛋白質を単離し、特に神経細胞に特異的で、シナプ
スに多く存在する蛋白質の構造を解析し、既に特許出願
している(特願平9−92615号)。この先願発明の
蛋白質(以下、発明者等の命名に従って「ニューラビ
ン」(neurabin) と記載する)は、1つのF−アクチン
結合ドメインと、1つのPDZドメインを有している。
PDZドメインは様々な蛋白質に見出されており、その
うちの幾つかは細胞間結合に局在している。例えば、シ
ナプス結合におけるPSD−95/SAP90(Neuro
n. 9:929-942, 1992; J. Biol. Chem. 268:4580-4583,
1993 )、隔膜結合におけるDlg(Cell. 66:451-464, 1
991)、密着結合におけるZO−1およびZO−2(J.
Cell Biol. 193:755-766, 1986; Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA. 88:3460-3464, 1991; J. Cell Biol. 121:491-
502,1993; J. Cell Biol. 123:1049-1053, 1993; Proc.
Natl. Acad. Sci. USA. 90:7834-7838, 1993; J. Cell
Biol. 124:949-961, 1994)等である。また、最近の研
究から、PDZドメインは標的蛋白質のユニークなC−
末端モチーフに結合することが明らかにされたが(Tren
ds Biochem. Sci. 21:455-458, 1996 )、このモチーフ
は、N-methyl-D-aspartate受容体やShaker-type K+ チ
ャネル等の多くの膜貫通蛋白質に見出されている(Natu
re 378:85-88, 1995; Science 269:1737-1740, 1995;
J. Neurosci. 16:2157-2163, 1996)。これらの知見か
ら、蛋白質ニューラビンは、シナプスにおけるアクチン
性細胞骨格と膜貫通蛋白質との接着因子として機能して
いるものと考えられる。
らニューラビンとは別の新規なアクチン結合蛋白質(l-
アファディン)を単離し、その構造を解析して特許出願
している(特願平9−257043合)。このl-アファ
ディンは、分子量が約205KDaで、C−端にF−ア
クチン結合ドメインを有し、動物の全ての組織において
アクチン性細胞骨格と細胞−細胞AJとを連結する新規
な蛋白質であることが確認されている。
る以上のとおりの精力的な研究により、アクチン性細胞
骨格と結合する接着装置としての新規蛋白質が同定さ
れ、様々な細胞現象の一端が徐々に解明されつつある。
しかしながら、細胞間接着に関与する分子的基礎の全容
は未だ解明されておらず、そのためには、アクチン結合
蛋白質のさらなる同定が必須である。また、このような
蛋白質は、例えば癌腫の浸潤、転移のメカニズム、ある
いは細胞の形状決定の異常を原因とする様々な器官形成
不全の解明につながる可能性もあり、これらのヒト疾患
の診断やその治療法、治療薬等の開発への応用も期待さ
れる。
なされたものであって、新規なアクチン結合蛋白質を、
その構造(アミノ酸配列)および性状を明らかにして提
供することを課題としている。また、この出願は、この
アクチン結合蛋白質の遺伝子工学的操作のための材料を
提供することも目的としている。
を解決するものとして、以下の発明を提供する。 (1)ラット蛋白質であって、配列番号1のアミノ酸配
列を有するアクチン結合蛋白質フラビン。 (2)配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配列を有す
る動物性蛋白質。 (3)前記(1)のアクチン結合蛋白質フラビンをコー
ドするラット遺伝子。 (4)前記(3)の遺伝子のcDNAであって、配列番
号2の塩基配列を有するcDNA。 (5)配列番号2の塩基配列における一部連続配列から
なるDNA断片。 (6)前記(4)のcDNAまたは(5)のDNA断片
がハイブリダイズする動物ゲノムDNA配列。 (7)前記(4)のcDNAを保有する組換えベクタ
ー。 (8)前記(1)のアクチン結合蛋白質フラビンを免疫
原として作成された抗体。
は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、SDS−ポリア
クリルアミドゲル(SDS−PAGE)電気泳動による
分子量約105KDaの蛋白質である。このアクチン結
合蛋白質は、N−端領域にF−アクチン結合ドメイン、
中央領域にDb1ホモロジーおよびプレックストリン(pl
eckstrin)ホモロジードメイン、そしてC−端領域にシ
ステイン−リッチドメインを有している。これらのドメ
イン構成は、顔面性器形成不全(faciogenital dysplas
ia)またはAarskog-Scott syndrom の原因遺伝子FGD
−1と高い相同性を示すことから、この蛋白質をフラビ
ン(frabin: FGD1-related F-actin-binding protein)
と命名した。
の全アミノ酸配列からなる蛋白質の他、配列番号1のア
ミノ酸配列のいかなる部分アミノ酸配列を含むペプチド
断片(5アミノ酸残基以上)も含まれる。これらのペプ
チド断片は抗体を作製するための抗原として用いること
ができる。さらに、この発明の蛋白質には、他の任意の
蛋白質(例えば、蛍光蛋白質など)との融合蛋白質も含
まれる。
によってラットの臓器、細胞株などから単離することが
できる。また、ペプチドとして使用する場合には、この
発明によって提供されるアミノ酸配列に基づき化学合成
によって調製することもできる。あるいはこの発明によ
って提供されるcDNA断片を用いて組換えDNA技術
によりインビトロで生産することにより取得することも
できる。例えば、組換えDNA技術によって蛋白質を取
得する場合には、この発明のcDNA断片を適当な発現
ベクターに組換え、この組換えベクターによる形質転換
体細胞(大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞等)からこの
発明の蛋白質を大量に発現させることができる。具体的
には、例えば、大腸菌などの微生物で発現させる場合に
は、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リ
ボソーム結合部位、cDNAクローニング部位、ターミ
ネーター等を有する発現ベクターに、この発明のcDN
Aを挿入結合して発現ベクターを作成し、この発現ベク
ターで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換
体を培養してやれば、cDNAがコードしている蛋白質
を微生物内で大量生産することができる。あるいは、他
の蛋白質との融合蛋白質として発現させることもでき
る。得られた融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断す
ることによって、cDNAがコードする蛋白質部分のみ
を取得することもできる。
発現させる場合には、cDNA断片を、動物細胞用プロ
モーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等
を有する動物細胞用発現ベクターに組換え、動物細胞内
に導入してやれば、この発明の蛋白質を動物細胞内で発
現させることができる。この発明の動物蛋白質は、前記
蛋白質フラビンと実質的に同一のアミノ酸配列を有する
ヒトおよび他の哺乳動物の蛋白質である。これらの蛋白
質は、例えばヒト蛋白質の場合には、この発明のラット
cDNAまたはその一部配列をプローブとしてヒトcD
NAライブラリーから得たヒトcDNAを用い、前記と
同様のインビトロ生産または組換えDNA技術によって
取得することができる。
をコードしているラット遺伝子であって、この発明のc
DNAまたはその一部配列からなるDNA断片をプロー
ブとして既存のラットゲノムライブラリーから単離する
ことができる。また、この発明のゲノムDNA配列は、
前記蛋白質フラビンと実質的に同一のアミノ酸配列を有
する蛋白質をコードするヒトおよび他の哺乳動物の遺伝
子であって、例えば、この発明のcDNAまたはその一
部配列をプローブとして既存のゲノムライブラリーから
単離することができる。
配列からなるDNA断片であって、たとえば、その塩基
配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプローブを
用いて、ラット細胞から作製したcDNAライブラリー
をスクリーニングすることにより、この発明のcDNA
のクローンを容易に得ることができる。あるいは、これ
らのオリゴヌクレオチドをプライマーとして、ポリメラ
ーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、目的cDNAを合
成することもできる。一般に動物遺伝子は個体差による
多型が頻繁に認められる。従って1または複数個のヌク
レオチドの付加、欠失および/または他のヌクレオチド
による置換がなされているcDNAもこの発明に含まれ
るものである。同様に、これらの変更によって生じる1
または複数個のアミノ酸の付加、欠失および/または他
のアミノ酸による置換がなされている蛋白質も、配列番
号1のアミノ酸配列を有する蛋白質の活性を有する限
り、この発明の範疇に含まれるものである。
10bp以上の連続配列であり、この連続配列からなるDN
A断片(センス鎖およびアンチセンス鎖)もこの発明の
範囲に含まれる。これらのDNA断片は遺伝子診断用の
プローブとして用いることができる。さらに、この発明
の抗体は、前記の蛋白質それ自体、またはその部分ペプ
チドを抗原として、公知の方法により、ポリクローナル
抗体またはモノクローナル抗体として得ることができ
る。
細かつ具体的に説明するが、この発明は、以下の例によ
って限定されるものではない。
定と精製 胎児ラット脳より成長円錐を単離し、125Iで標識したF
−アクチンによるブロット・オーバーレイ(blot overla
y)法(Cell Motil. Cytoskeleton. 18:164-179, 1991)
を行い、分子量約105KDa(p105)のバンドを
確認した。
PAGEで処理し、分子量約105KDaの蛋白質バン
ドを、複数のカラムクロマトグラフィー(Q-Sepharose,
Mono Q, phenyl-5PW, phenyl-5PW PW)で精製した。最
終的なphenyl-5PW PW カラムクロマトグラフィーの結果
を図1に示す。図1(A)は280nmでの吸光度、
(B)は銀染色した蛋白質バンド、(C)は 125I標識
F−アクチンによるブロット・オーバーレイである。 実施例2:アクチン結合蛋白質フラビン遺伝子のクロー
ニング 実施例1で得た105KDa精製蛋白質をポリアクリル
アミドゲルから切り出し、その14カ所の部分アミノ酸
配列を決定した。これらのアミノ酸配列を既存の蛋白質
データベースで検索したが、該当する蛋白質は存在せ
ず、新規な蛋白質であることが確認された。
作成したオリゴヌクレオチドプローブを用いてラットの
脳cDNAライブラリーをスクリーニングし、p105
をコードするcDNAを単離した。配列解析の結果、こ
のcDNAは、配列番号1に示した766アミノ酸残基
からなる蛋白質をコードしていることが確認された。ま
た、このアミノ酸配列から算出された分子量は86,449で
あり、SDS−PAGEによる分子量105KDaより
少なかった。 実施例3:アクチン結合蛋白質フラビンの動物細胞での
発現とその構造解析 実施例2で構築したp105のcDNAを動物細胞発現
ベクターに組み込み、このベクターをCOS7細胞に導
入して、細胞の発現産物について 125I標識F−アクチ
ンを用いたブロット・オーバーレイ法による分析を行っ
た。
2において、レーン1は精製蛋白質フラビン、レーン2
は組換え蛋白質(pCVM−フラビン)、レーン3はコ
ントロールである。また、矢印はフラビンを示し、星印
は 125I標識F−アクチンに対する結合活性を有するC
OS7細胞由来の蛋白質を示している。この図2に示し
たように、得られた組換え蛋白質は、SDS−PAGE
上でネイティブなp105と類似の泳動を示し、 125I
標識F−アクチンに対する結合活性を有してもいた。以
上の結果から、実施例2で得たcDNAクローンはp1
05の全長をコードしていることが確認された。
タチオン−S−トランスフェラーゼ)との融合蛋白質を
大腸菌で発現させ、それぞれの 125I標識F−アクチン
結合活性を調べた。結果は図3に示したとおりである。
この図3において、レーン1はGST−フラビン1(1
−150アミノ酸)、レーン2はGST−フラビン2
(1−208アミノ酸)、レーン3はGST−フラビン
3(209−520アミノ酸)、レーン4はGST−フ
ラビン4(521−766アミノ酸)を示している。こ
の図3から明らかなように、蛋白質フラビンはそのN−
端150アミノ酸残基にF−アクチン結合ドメインを有
している。既存の蛋白質データベースで検索した結果、
この1−150アミノ酸配列は如何なる既知蛋白質とも
有意な相同性を示さないことが確認された。
ビンのドメイン構成は、FGD1のそれと高い相同性を
示した。フラビンのDb1ホモロジードメイン(DH)お
よびプレックストリンホモロジードメイン(PH)は各
々、FGD1のそれと71%および57%の相同性を示
した。また、フラビンとFGD1のそれぞれのシステイ
ン−リッチドメイン(CRD)の相同性は65%であっ
た。 実施例4:フラビンの生化学的特性 GST−全長フラビン融合蛋白質をF−アクチンと共に
インキュベートした後に超高速遠心し、F−アクチンを
結合した融合蛋白質を回収した。この融合蛋白質のスト
イキオメトリー(stoichiometry )を計算した結果、ア
クチン約14分子当たりGST−フラビン1分子の割合
で結合すると計算され、そのKd値は9×10-7オーダ
ーと計算された(図5)。なお、図5中の泳動図は、G
ST−全長フラビン融合蛋白質をF−アクチンとの結合
性を示しており、レーン1および2はF−アクチン不在
時の上清画分およびペレット画分、レーン3および4は
F−アクチン存在時の上清画分およびペレット画分のゲ
ル電気泳動の結果である。矢印はアクチンを、くさび印
はGST−全長フラビン融合蛋白質を示す。
ット・オーバーレイ法を用いて検討した結果、フラビン
とアクチンとの結合はミオシンS1によって特異的に阻
害されたが(図6)、この阻害はMgATPの添加によ
って消失した。ミオシンS1はF−アクチンの側面に結
合することが確認されている蛋白質であり(Science26
1:58-65, 1993; Nature 364:171-174, 1993 )、MgA
TPはアクチン−ミオシン複合体を分離することが知ら
れているため(Biochemistry 14:2207-2214, 1975 )、
フラビンはF−アクチンの側面に結合することが確認さ
れた。
−フラビン1(1−150アミノ酸)について、F−ア
クチン架橋(crosslinking)活性を透過電子顕微鏡を用
いて調べた。結果は図7に示したとおりであり、GST
−全長フラビンはF−アクチンを束化するのに対し、G
ST−フラビン1およびGST単独ではそのような現象
は観察されなかった。この結果は、フラビンが他の公知
のアクチン結合蛋白質と同様に複数のF−アクチン結合
部位を有するオリゴマーとして存在していることを示唆
する。またフラビンがオリゴマーとして存在すること
が、SDS−PAGEによる分子量(105KDa)と
ゲル濾過の推定分子量(86KDa)とが異なることの
原因であると考えられる。
蛋白質であることを実証するため、myc で標識化した全
長フラビンまたはその変異体(F−アクチン結合領域を
欠損したフラビン)をCOS7細胞で発現させ、発現蛋
白質と内在性F−アクチンのそれぞれの局在を比較し
た。結果は図8に示したとおりであり、F−アクチン結
合領域を有するフラビンはF−アクチンと同一位置に発
現したのに対し、変異体蛋白質ではそのような発現は観
察されなかった。
いてF−アクチン結合蛋白質として機能しており、F−
アクチン結合領域はそのN−端側(1−150アミノ酸
残基)に位置していることが確認された。 実施例5:フラビンの細胞形状に対する効果の確認 フラビンが細胞形状の変化させるか否かについて検討し
た。すなわち、全長フラビンまたはCdc42の変異体
(V12Cdc42)をスイス3T3細胞で発現させ、そ
の細胞形状の変化を調べた。結果は図9に示したとおり
であり、フラビンおよびV12Cdc42は全細胞の90
%以上に対して同程度の細胞変化を生じさせた。
A標識化JNKとともにCOS7細胞で発現させた。J
NKは免疫沈降され、GST−c−Junに対するカイ
ネース活性を調べた。その結果、図10に示したとお
り、フラビンおよびV12Cdc42はJNKを活性化さ
せることが確認された。以上の結果は、フラビンとFG
D1とが各々のDH領域およびPH領域の相同性が極め
て高いことと考え合わせると、蛋白質フラビンが、FG
D1と同様に、Cdc42に対するGEPとして機能し、
そしてCdc42の賦活化を通して細胞形状の変化および
JNK活性化を生じさせていることを示唆する。 実施例6:抗フラビン抗体の作成 公知の方法に従い、全長フラビンおよびフラビン1(1
−208アミノ酸残基)を免疫原として、フラビンを特
異的に認識するウサギ・ポリクローナル抗体を作成し
た。
よって、細胞間接着に関与する新規なアクチン結合蛋白
質フラビンと、このフラビンを産業上利用するための遺
伝子材料が提供される。
PW カラムクロマトグラフィーの結果である。(A)は
280nmでの吸光度、(B)は銀染色した蛋白質バン
ド、(C)は 125I標識F−アクチンによるブロット・
オーバーレイである。
電気泳動図である。レーン1は精製蛋白質フラビン、レ
ーン2は組換え蛋白質(pCVM−フラビン)、レーン
3はコントロールである。また、矢印はフラビンを示
し、星印は 125I標識F−アクチンに対する結合活性を
有するCOS7細胞由来の蛋白質を示している。
示す電気泳動図である。レーン1はGST−フラビン1
(1−150アミノ酸)、レーン2はGST−フラビン
2(1−208アミノ酸)、レーン3はGST−フラビ
ン3(209−520アミノ酸)、レーン4はGST−
フラビン4(521−766アミノ酸)を示している。
模式図である。
ンとの結合の程度を示したグラフ図である。図中は、G
ST−全長フラビン融合蛋白質とF−アクチンとの結合
性を示す電気泳動図である。
S1の効果を示す電気泳動図である。レーン1はコント
ロール、レーン2はATP不在時のミオシンS1の効
果、レーン3はATP存在下でのミオシンS1の効果を
示す。
す電子顕微鏡写真図である。(a)はGST−全長フラ
ビン;(b)はGST−フラビン1(1−150);
(c)はGST単独である。
チンの局在を示す顕微鏡写真図である。(a−c)はmy
c 標識化蛋白質、(d−f)はF−アクチンである。ま
た、(a,d)は myc−全長フラビン;(b,e)は m
yc−フラビン1;(c、f)は myc−フラビン2であ
る。
示す顕微鏡写真図である。(A−C)はF−アクチン、
(D−F)はmyc 標識化蛋白質である。(A,D)はコ
ントロール;(B、E)はmyc-V12Cdc42;(C、F)は
myc−全長フラビンである。
化に関する試験結果である。(A)はJNK活性であ
る。(B)はウエスタンブロット分析の結果であり、
(1)はコントロール;(2)はV12Cdc42;(3)はD
b1;(4)はフラビンを示す。くさび印はGST−c
−Junを示す。
Claims (8)
- 【請求項1】 ラット蛋白質であって、配列番号1のア
ミノ酸配列を有するアクチン結合蛋白質フラビン。 - 【請求項2】 配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配
列を有する動物性蛋白質。 - 【請求項3】 請求項1のアクチン結合蛋白質フラビン
をコードするラット遺伝子。 - 【請求項4】 請求項3の遺伝子のcDNAであって、
配列番号2の塩基配列を有するcDNA。 - 【請求項5】 配列番号2の塩基配列における一部連続
配列からなるDNA断片。 - 【請求項6】 請求項4のcDNAまたは請求項5のD
NA断片がハイブリダイズする動物ゲノムDNA配列。 - 【請求項7】 請求項4のcDNAを保有する組換えベ
クター。 - 【請求項8】 請求項1のアクチン結合蛋白質フラビン
を免疫原として作成された抗体。
Priority Applications (1)
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1998
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