JP3969849B2 - アクチン結合蛋白質フラビン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、新規なアクチン結合蛋白質フラビン(Frabin)に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、動物の個体形成等に重要な役割を果たす新規動物性蛋白質フラビンと、このフラビンをコードする遺伝子材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
動物個体における様々な細胞現象、例えば、細胞接着、細胞運動および細胞の形状決定等においては、細胞接着分子、受容体およびチャンネル等の膜貫通蛋白質によって形成される接着装置が重要な役割を果たしており、これらの接着装置は、しばしばアクチン性細胞骨格と結合することが知られている(Biochem. Biophys. Acta 737:305-341, 1983; Curr. Opin. Cell Biol. 1:103-109, 1989; Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Curr. Opin. Cell Biol. 3:849-853, 1991; Science. 258:955-964, 1992; Curr. Opin. Cell Biol. 4:834-839, 1992; Curr. Opin. Cell Biol. 5:653-660, 1993; Trends Biochem. Sci. 22:53-58, 1997 )。従って、アクチン性細胞骨格と細胞質膜とは前記細胞現象において重要な役割を果たしており、それ故アクチン性細胞骨格を膜貫通蛋白質に結合させる生体分子の特定に多大な努力が払われてきた。しかしながら、アクチン性細胞骨格と細胞質膜との結合に関する分子的基礎については、今だ充分に理解されてはいない。
【0003】
このような細胞結合に係わる分子的基礎を理解するため、これまでに細胞接着部位が最も広範に研究された(Biochem. Biophys. Acta 737:305-341, 1983; Curr. Opin. Cell Biol. 1:103-109, 1989; Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Curr. Opin. Cell Biol. 3:849-853, 1991; Science. 258:955-964, 1992; Curr. Opin. Cell Biol. 4:834-839, 1992; Curr. Opin. Cell Biol. 5:653-660, 1993; Trends Biochem. Sci. 22:53-58, 1997 )。その結果、アクチン線維(F−アクチン)に関連する細胞接着部位が2つのタイプ、すなわち、細胞−細胞接着帯(adherens junctions: AJ)と、細胞−マトリックスAJとに分類されている。細胞−細胞AJにおいては、その細胞外表面でカドヘリン(cadherin)が互いに相互作用しており、多くの結合蛋白質が同定されている(Development 102:639-655, 1988; Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Science 251:1451-1455,1991; Curr. Opin. Cell Biol. 4:834-839, 1992; EMBO J. 8:1711-1717, 1989; Cell 65:849-857, 1991; Science 251:1451-1455, 1991; Curr. Opin. Cell Biol. 4:834-839, 1992)。これらの結合タンパク質のうち、α−カテニンは、F−アクチンと直接相互作用する(Pro.Natl. Acad. Sci. USA. 92:8813-8817, 1995)と共に、α−アクチニンおよび/またはZO−1を介してF−アクチンに間接的に相互作用している(J. Cell.Biol. 130:67-77, 1995;J. Cell Biol. 138:181-192, 1997 )。また、別のF−アクチン結合蛋白質であるビンキュリン(vinculin)は、細胞−細胞AJに集中していることが知られているが、細胞−細胞AJにおけるその相互作用分子は未だ特定されていない(Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Curr. Opin. Cell Biol. 4:834-839, 1992)。さらに、細胞外表面においてインテグリン(integrin)がマトリックス蛋白質と相互作用する細胞−マトリックスAJでは、その細胞質ドメインは、α−アクチニン、ビンキュリン、タリン(talin )等のF−アクチン結合蛋白質と、直接または関節的に相互作用している(Ann. Rev. Cell Dev. Biol. 11:379-416, 1995)。
【0004】
以上のとおり、多くのF−アクチン結合蛋白質が、アクチン性細胞骨格と細胞質膜のカドヘリンおよびインテグリンとの結合因子(linker)として作用していると考えられている。
一方、アクチン性細胞骨格と細胞質膜との結合は、神経細胞に特異的な現象(例えば、成長円錐の伸長やその後のシナプス結合の形成および維持等)にとっても重要である(Neuron 1:761-772, 1988; Science 242:708-715, 1988; Curr. Opin. Neurobiol. 4:43-48, 1994; Curr. Opin. Neurobiol. 4:640-647, 1994; Cell 83:171-176, 1995)。しかしながら、これらの神経細胞に特異的な現象において、どのような分子がアクチン性細胞骨格を細胞質膜に結合させているかは明らかではない。
【0005】
この点を明らかにするため、この出願の発明者等は、ラットの脳から幾つかの新規なF−アクチン結合蛋白質を単離し、特に神経細胞に特異的で、シナプスに多く存在する蛋白質の構造を解析し、既に特許出願している(特願平9−92615号)。この先願発明の蛋白質(以下、発明者等の命名に従って「ニューラビン」(neurabin) と記載する)は、1つのF−アクチン結合ドメインと、1つのPDZドメインを有している。PDZドメインは様々な蛋白質に見出されており、そのうちの幾つかは細胞間結合に局在している。例えば、シナプス結合におけるPSD−95/SAP90(Neuron. 9:929-942, 1992; J. Biol. Chem. 268:4580-4583, 1993 )、隔膜結合におけるDlg(Cell. 66:451-464, 1991)、密着結合におけるZO−1およびZO−2(J. Cell Biol. 193:755-766, 1986; Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 88:3460-3464, 1991; J. Cell Biol. 121:491-502, 1993; J. Cell Biol. 123:1049-1053, 1993; Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90:7834-7838, 1993; J. Cell Biol. 124:949-961, 1994)等である。また、最近の研究から、PDZドメインは標的蛋白質のユニークなC−末端モチーフに結合することが明らかにされたが(Trends Biochem. Sci. 21:455-458, 1996 )、このモチーフは、N-methyl-D-aspartate受容体やShaker-type K+ チャネル等の多くの膜貫通蛋白質に見出されている(Nature 378:85-88, 1995; Science 269:1737-1740, 1995; J. Neurosci. 16:2157-2163, 1996)。これらの知見から、蛋白質ニューラビンは、シナプスにおけるアクチン性細胞骨格と膜貫通蛋白質との接着因子として機能しているものと考えられる。
【0006】
さらにこの出願の発明者等は、ラット脳からニューラビンとは別の新規なアクチン結合蛋白質(l-アファディン)を単離し、その構造を解析して特許出願している(特願平9−257043合)。このl-アファディンは、分子量が約205KDaで、C−端にF−アクチン結合ドメインを有し、動物の全ての組織においてアクチン性細胞骨格と細胞−細胞AJとを連結する新規な蛋白質であることが確認されている。
【0007】
【発明が解決使用とする課題】
この出願の発明者等による以上のとおりの精力的な研究により、アクチン性細胞骨格と結合する接着装置としての新規蛋白質が同定され、様々な細胞現象の一端が徐々に解明されつつある。
しかしながら、細胞間接着に関与する分子的基礎の全容は未だ解明されておらず、そのためには、アクチン結合蛋白質のさらなる同定が必須である。また、このような蛋白質は、例えば癌腫の浸潤、転移のメカニズム、あるいは細胞の形状決定の異常を原因とする様々な器官形成不全の解明につながる可能性もあり、これらのヒト疾患の診断やその治療法、治療薬等の開発への応用も期待される。
【0008】
この出願は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、新規なアクチン結合蛋白質を、その構造(アミノ酸配列)および性状を明らかにして提供することを課題としている。
また、この出願は、このアクチン結合蛋白質の遺伝子工学的操作のための材料を提供することも目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願は、前記の課題を解決するものとして、以下の発明を提供する。
(1)ラット蛋白質であって、配列番号1のアミノ酸配列を有するアクチン結合蛋白質フラビン。
(2)配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配列を有する動物性蛋白質。
(3)前記(1)のアクチン結合蛋白質フラビンをコードするラット遺伝子。
(4)前記(3)の遺伝子のcDNAであって、配列番号2の塩基配列を有するcDNA。
(5)配列番号2の塩基配列における一部連続配列からなるDNA断片。
(6)前記(4)のcDNAまたは(5)のDNA断片がハイブリダイズする動物ゲノムDNA配列。
(7)前記(4)のcDNAを保有する組換えベクター。
(8)前記(1)のアクチン結合蛋白質フラビンを免疫原として作成された抗体。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明のアクチン結合蛋白質は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、SDS−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)電気泳動による分子量約105KDaの蛋白質である。このアクチン結合蛋白質は、N−端領域にF−アクチン結合ドメイン、中央領域にDb1ホモロジーおよびプレックストリン(pleckstrin)ホモロジードメイン、そしてC−端領域にシステイン−リッチドメインを有している。これらのドメイン構成は、顔面性器形成不全(faciogenital dysplasia)またはAarskog-Scott syndrom の原因遺伝子FGD−1と高い相同性を示すことから、この蛋白質をフラビン(frabin: FGD1-related F-actin-binding protein)と命名した。
【0011】
この発明の蛋白質フラビンは、配列番号1の全アミノ酸配列からなる蛋白質の他、配列番号1のアミノ酸配列のいかなる部分アミノ酸配列を含むペプチド断片(5アミノ酸残基以上)も含まれる。これらのペプチド断片は抗体を作製するための抗原として用いることができる。さらに、この発明の蛋白質には、他の任意の蛋白質(例えば、蛍光蛋白質など)との融合蛋白質も含まれる。
【0012】
この発明の蛋白質フラビンは、公知の方法によってラットの臓器、細胞株などから単離することができる。また、ペプチドとして使用する場合には、この発明によって提供されるアミノ酸配列に基づき化学合成によって調製することもできる。あるいはこの発明によって提供されるcDNA断片を用いて組換えDNA技術によりインビトロで生産することにより取得することもできる。例えば、組換えDNA技術によって蛋白質を取得する場合には、この発明のcDNA断片を適当な発現ベクターに組換え、この組換えベクターによる形質転換体細胞(大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞等)からこの発明の蛋白質を大量に発現させることができる。具体的には、例えば、大腸菌などの微生物で発現させる場合には、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、cDNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターに、この発明のcDNAを挿入結合して発現ベクターを作成し、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養してやれば、cDNAがコードしている蛋白質を微生物内で大量生産することができる。あるいは、他の蛋白質との融合蛋白質として発現させることもできる。得られた融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断することによって、cDNAがコードする蛋白質部分のみを取得することもできる。
【0013】
一方、この発明の蛋白質を動物細胞で分泌発現させる場合には、cDNA断片を、動物細胞用プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する動物細胞用発現ベクターに組換え、動物細胞内に導入してやれば、この発明の蛋白質を動物細胞内で発現させることができる。
この発明の動物蛋白質は、前記蛋白質フラビンと実質的に同一のアミノ酸配列を有するヒトおよび他の哺乳動物の蛋白質である。これらの蛋白質は、例えばヒト蛋白質の場合には、この発明のラットcDNAまたはその一部配列をプローブとしてヒトcDNAライブラリーから得たヒトcDNAを用い、前記と同様のインビトロ生産または組換えDNA技術によって取得することができる。
【0014】
この発明の遺伝子は、前記蛋白質フラビンをコードしているラット遺伝子であって、この発明のcDNAまたはその一部配列からなるDNA断片をプローブとして既存のラットゲノムライブラリーから単離することができる。
また、この発明のゲノムDNA配列は、前記蛋白質フラビンと実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするヒトおよび他の哺乳動物の遺伝子であって、例えば、この発明のcDNAまたはその一部配列をプローブとして既存のゲノムライブラリーから単離することができる。
【0015】
この発明のcDNAは、配列番号2の塩基配列からなるDNA断片であって、たとえば、その塩基配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ラット細胞から作製したcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、この発明のcDNAのクローンを容易に得ることができる。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドをプライマーとして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて、目的cDNAを合成することもできる。一般に動物遺伝子は個体差による多型が頻繁に認められる。従って1または複数個のヌクレオチドの付加、欠失および/または他のヌクレオチドによる置換がなされているcDNAもこの発明に含まれるものである。同様に、これらの変更によって生じる1または複数個のアミノ酸の付加、欠失および/または他のアミノ酸による置換がなされている蛋白質も、配列番号1のアミノ酸配列を有する蛋白質の活性を有する限り、この発明の範疇に含まれるものである。
【0016】
また、この発明のcDNAの部分配列は、10bp以上の連続配列であり、この連続配列からなるDNA断片(センス鎖およびアンチセンス鎖)もこの発明の範囲に含まれる。これらのDNA断片は遺伝子診断用のプローブとして用いることができる。
さらに、この発明の抗体は、前記の蛋白質それ自体、またはその部分ペプチドを抗原として、公知の方法により、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として得ることができる。
【0017】
以下、実施例を示してこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は、以下の例によって限定されるものではない。
【0018】
【実施例】
実施例1:アクチン結合蛋白質フラビンの同定と精製
胎児ラット脳より成長円錐を単離し、125Iで標識したF−アクチンによるブロット・オーバーレイ(blot overlay)法(Cell Motil. Cytoskeleton. 18:164-179, 1991)を行い、分子量約105KDa(p105)のバンドを確認した。
【0019】
次に、胎児ラット脳の可溶画分をSDS−PAGEで処理し、分子量約105KDaの蛋白質バンドを、複数のカラムクロマトグラフィー(Q-Sepharose, Mono Q, phenyl-5PW, phenyl-5PW PW)で精製した。最終的なphenyl-5PW PW カラムクロマトグラフィーの結果を図1に示す。図1(A)は280nmでの吸光度、(B)は銀染色した蛋白質バンド、(C)は 125I標識F−アクチンによるブロット・オーバーレイである。
実施例2:アクチン結合蛋白質フラビン遺伝子のクローニング
実施例1で得た105KDa精製蛋白質をポリアクリルアミドゲルから切り出し、その14カ所の部分アミノ酸配列を決定した。これらのアミノ酸配列を既存の蛋白質データベースで検索したが、該当する蛋白質は存在せず、新規な蛋白質であることが確認された。
【0020】
次いで、この部分アミノ酸配列に基づいて作成したオリゴヌクレオチドプローブを用いてラットの脳cDNAライブラリーをスクリーニングし、p105をコードするcDNAを単離した。
配列解析の結果、このcDNAは、配列番号1に示した766アミノ酸残基からなる蛋白質をコードしていることが確認された。また、このアミノ酸配列から算出された分子量は86,449であり、SDS−PAGEによる分子量105KDaより少なかった。
実施例3:アクチン結合蛋白質フラビンの動物細胞での発現とその構造解析
実施例2で構築したp105のcDNAを動物細胞発現ベクターに組み込み、このベクターをCOS7細胞に導入して、細胞の発現産物について 125I標識F−アクチンを用いたブロット・オーバーレイ法による分析を行った。
【0021】
結果は図2に示したとおりである。この図2において、レーン1は精製蛋白質フラビン、レーン2は組換え蛋白質(pCVM−フラビン)、レーン3はコントロールである。また、矢印はフラビンを示し、星印は 125I標識F−アクチンに対する結合活性を有するCOS7細胞由来の蛋白質を示している。この図2に示したように、得られた組換え蛋白質は、SDS−PAGE上でネイティブなp105と類似の泳動を示し、 125I標識F−アクチンに対する結合活性を有してもいた。以上の結果から、実施例2で得たcDNAクローンはp105の全長をコードしていることが確認された。
【0022】
また、様々なフラビン断片とGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)との融合蛋白質を大腸菌で発現させ、それぞれの 125I標識F−アクチン結合活性を調べた。
結果は図3に示したとおりである。この図3において、レーン1はGST−フラビン1(1−150アミノ酸)、レーン2はGST−フラビン2(1−208アミノ酸)、レーン3はGST−フラビン3(209−520アミノ酸)、レーン4はGST−フラビン4(521−766アミノ酸)を示している。この図3から明らかなように、蛋白質フラビンはそのN−端150アミノ酸残基にF−アクチン結合ドメインを有している。既存の蛋白質データベースで検索した結果、この1−150アミノ酸配列は如何なる既知蛋白質とも有意な相同性を示さないことが確認された。
【0023】
ただし、図4に示したように、蛋白質フラビンのドメイン構成は、FGD1のそれと高い相同性を示した。フラビンのDb1ホモロジードメイン(DH)およびプレックストリンホモロジードメイン(PH)は各々、FGD1のそれと71%および57%の相同性を示した。また、フラビンとFGD1のそれぞれのシステイン−リッチドメイン(CRD)の相同性は65%であった。
実施例4:フラビンの生化学的特性
GST−全長フラビン融合蛋白質をF−アクチンと共にインキュベートした後に超高速遠心し、F−アクチンを結合した融合蛋白質を回収した。この融合蛋白質のストイキオメトリー(stoichiometry )を計算した結果、アクチン約14分子当たりGST−フラビン1分子の割合で結合すると計算され、そのKd値は9×10-7オーダーと計算された(図5)。なお、図5中の泳動図は、GST−全長フラビン融合蛋白質をF−アクチンとの結合性を示しており、レーン1および2はF−アクチン不在時の上清画分およびペレット画分、レーン3および4はF−アクチン存在時の上清画分およびペレット画分のゲル電気泳動の結果である。矢印はアクチンを、くさび印はGST−全長フラビン融合蛋白質を示す。
【0024】
また、フラビンのアクチン結合様式をブロット・オーバーレイ法を用いて検討した結果、フラビンとアクチンとの結合はミオシンS1によって特異的に阻害されたが(図6)、この阻害はMgATPの添加によって消失した。ミオシンS1はF−アクチンの側面に結合することが確認されている蛋白質であり(Science 261:58-65, 1993; Nature 364:171-174, 1993 )、MgATPはアクチン−ミオシン複合体を分離することが知られているため(Biochemistry 14:2207-2214, 1975 )、フラビンはF−アクチンの側面に結合することが確認された。
【0025】
次に、GST−全長フラビンおよびGST−フラビン1(1−150アミノ酸)について、F−アクチン架橋(crosslinking)活性を透過電子顕微鏡を用いて調べた。結果は図7に示したとおりであり、GST−全長フラビンはF−アクチンを束化するのに対し、GST−フラビン1およびGST単独ではそのような現象は観察されなかった。この結果は、フラビンが他の公知のアクチン結合蛋白質と同様に複数のF−アクチン結合部位を有するオリゴマーとして存在していることを示唆する。またフラビンがオリゴマーとして存在することが、SDS−PAGEによる分子量(105KDa)とゲル濾過の推定分子量(86KDa)とが異なることの原因であると考えられる。
【0026】
さらにまた、フラビンがF−アクチン結合蛋白質であることを実証するため、myc で標識化した全長フラビンまたはその変異体(F−アクチン結合領域を欠損したフラビン)をCOS7細胞で発現させ、発現蛋白質と内在性F−アクチンのそれぞれの局在を比較した。結果は図8に示したとおりであり、F−アクチン結合領域を有するフラビンはF−アクチンと同一位置に発現したのに対し、変異体蛋白質ではそのような発現は観察されなかった。
【0027】
以上の結果から、フラビンは正常細胞においてF−アクチン結合蛋白質として機能しており、F−アクチン結合領域はそのN−端側(1−150アミノ酸残基)に位置していることが確認された。
実施例5:フラビンの細胞形状に対する効果の確認
フラビンが細胞形状の変化させるか否かについて検討した。すなわち、全長フラビンまたはCdc42の変異体(V12Cdc42)をスイス3T3細胞で発現させ、その細胞形状の変化を調べた。結果は図9に示したとおりであり、フラビンおよびV12Cdc42は全細胞の90%以上に対して同程度の細胞変化を生じさせた。
【0028】
次に、フラビンまたはV12Cdc42をHA標識化JNKとともにCOS7細胞で発現させた。JNKは免疫沈降され、GST−c−Junに対するカイネース活性を調べた。その結果、図10に示したとおり、フラビンおよびV12Cdc42はJNKを活性化させることが確認された。
以上の結果は、フラビンとFGD1とが各々のDH領域およびPH領域の相同性が極めて高いことと考え合わせると、蛋白質フラビンが、FGD1と同様に、Cdc42に対するGEPとして機能し、そしてCdc42の賦活化を通して細胞形状の変化およびJNK活性化を生じさせていることを示唆する。
実施例6:抗フラビン抗体の作成
公知の方法に従い、全長フラビンおよびフラビン1(1−208アミノ酸残基)を免疫原として、フラビンを特異的に認識するウサギ・ポリクローナル抗体を作成した。
【0029】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、細胞間接着に関与する新規なアクチン結合蛋白質フラビンと、このフラビンを産業上利用するための遺伝子材料が提供される。
【0030】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の蛋白質フラビンに対するphenyl-5PW PW カラムクロマトグラフィーの結果である。(A)は280nmでの吸光度、(B)は銀染色した蛋白質バンド、(C)は 125I標識F−アクチンによるブロット・オーバーレイである。
【図2】組換えフラビンのF−アクチン結合活性を示す電気泳動図である。レーン1は精製蛋白質フラビン、レーン2は組換え蛋白質(pCVM−フラビン)、レーン3はコントロールである。また、矢印はフラビンを示し、星印は 125I標識F−アクチンに対する結合活性を有するCOS7細胞由来の蛋白質を示している。
【図3】様々なフラビン断片のF−アクチン結合活性を示す電気泳動図である。レーン1はGST−フラビン1(1−150アミノ酸)、レーン2はGST−フラビン2(1−208アミノ酸)、レーン3はGST−フラビン3(209−520アミノ酸)、レーン4はGST−フラビン4(521−766アミノ酸)を示している。
【図4】フラビンとFGD1とのドメイン構成を示した模式図である。
【図5】GST−全長フラビン融合蛋白質とF−アクチンとの結合の程度を示したグラフ図である。図中は、GST−全長フラビン融合蛋白質とF−アクチンとの結合性を示す電気泳動図である。
【図6】フラビンとアクチンとの結合に対するミオシンS1の効果を示す電気泳動図である。レーン1はコントロール、レーン2はATP不在時のミオシンS1の効果、レーン3はATP存在下でのミオシンS1の効果を示す。
【図7】フラビンとF−アクチンとの交叉結合活性を示す電子顕微鏡写真図である。(a)はGST−全長フラビン;(b)はGST−フラビン1(1−150);(c)はGST単独である。
【図8】COS7細胞におけるフラビンおよびF−アクチンの局在を示す顕微鏡写真図である。(a−c)はmyc 標識化蛋白質、(d−f)はF−アクチンである。また、(a,d)は myc−全長フラビン;(b,e)は myc−フラビン1;(c、f)は myc−フラビン2である。
【図9】フラビンによるスイス3T3細胞の形状変化を示す顕微鏡写真図である。(A−C)はF−アクチン、(D−F)はmyc 標識化蛋白質である。(A,D)はコントロール;(B、E)はmyc-V12Cdc42;(C、F)は myc−全長フラビンである。
【図10】COS7細胞におけるフラビンのJNK活性化に関する試験結果である。(A)はJNK活性である。(B)はウエスタンブロット分析の結果であり、(1)はコントロール;(2)はV12Cdc42;(3)はDb1;(4)はフラビンを示す。くさび印はGST−c−Junを示す。
Claims (7)
- ラット蛋白質であって、配列番号1のアミノ酸配列を有するアクチン結合蛋白質フラビン。
- 配列番号1のアミノ酸配列における1または複数個のアミノ酸の付加、欠失および/または置換されたアミノ酸配列を有し、配列番号1のアミノ酸配列を有する蛋白質と同一のアクチン結合活性を有し、かつ、 JNK を活性化する蛋白質。
- 請求項1のアクチン結合蛋白質フラビンをコードするラット遺伝子。
- 請求項3の遺伝子のcDNAであって、配列番号2の塩基配列を有するcDNA。
- 請求項2の蛋白質をコードするDNA。
- 請求項4のcDNAを有する組換えベクター。
- 請求項1のアクチン結合蛋白質フラビンを免疫原として作成され、該アクチン結合蛋白質フラビンを特異的に認識する抗体。
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