JPH11342891A - 船舶の動揺軽減装置の制御方法 - Google Patents

船舶の動揺軽減装置の制御方法

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JPH11342891A
JPH11342891A JP18676798A JP18676798A JPH11342891A JP H11342891 A JPH11342891 A JP H11342891A JP 18676798 A JP18676798 A JP 18676798A JP 18676798 A JP18676798 A JP 18676798A JP H11342891 A JPH11342891 A JP H11342891A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 船の急旋回中は遠心力により、必ず旋回中心
外側方向へ定常横傾斜を起こす。 この時、ARTの移
動用液体によって発生する傾斜モーメントが遠心力に加
わり、船体横傾斜角度を更に大きくするというARTの
欠点を解消する。 【解決手段】 旋回のための舵角指令から舵が舵角を確
保するまでの時間差と、旋回による船体の定常傾斜が保
持される前に、その逆方向へ一時的に傾斜することを利
用する。 操舵輪部1にポテンショメータ4を設け、舵
角指令を出した時点で、その情報を演算解読回路5で解
読させる。 そして、旋回時の遠心力により旋回中心の
外側方向への船体横傾斜が生じる前に、コントロール部
2および開閉機器装置部3を介して、空気ダクト14の
バルブ15を閉じ、タンク12a,12b内の移動用液
体17を停止させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、減揺水槽内の液体制
動の創案に係わり、減揺水槽を装備した船舶に於いて、
該船舶が航行中に他船との衝突回避あるいは、取締任務
遂行中に急旋回行動を余儀なくされた時、減揺水槽の液
体による船体傾斜の増長という逆効果を、事前に防止し
得るよう自動的に制御する制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より船舶の横揺れを軽減する装置と
して、U字管型の受動減揺水槽(以下ARTとも言う)
が知られている。 その作動原理を簡単に述べる。船が
最も大きく揺れる状況は、船の横揺固有周期と同じ出会
周期の波を繰り返し受ける時である。 これと同じ状況
は、例えば、平穏な海面に於いて、人を船の動揺よりワ
ンテンポ早く左右方向に繰り返し移動させると、船は次
第に同調横揺れを起こし横揺れ角度は大きくなる。 こ
の方法は、一般的に小型船の動揺試験時における動揺誘
起の手段として用いられている。 また、この時、人を
ワンテンポ遅くなるように移動させると、逆に揺れなく
なる事も知られている。
【0003】ARTは、この人を液体に置き換え、液体
移送用のポンプ等を用いず、タンク内の液体が高い方か
ら低い方へ流れる自然の法則をうまく利用して、液体の
動く最適な速さ(時間)と移動モーメント(減揺モーメ
ント)を得て、船の横揺れを軽減させようとするもの
で、波などの外力により繰り返し横揺れが続く状況に於
いて、タンク内の液体は共振を行い、最適な位相遅れを
生じさせた時に減揺効果が得られる。 また、ARTの
設置場所が船の重心より上方にあればある程、移動モー
メント(減揺モーメント)の値は大きくなり、高い減揺
効果が得られるものである。
【0004】
【発明が解決する課題】ARTは、作動原理が示すよう
に、タンク内の液体がある一定の速さを以て、左右を繰
り返し移動する状況に於いて、有効な減揺モーメントが
得られるものである。 しかし乍、次のように船が旋回
をする時に生じる定常横傾斜(以下、船体横傾斜をヒー
ルとも言う)状態では、減揺モーメントを得るための液
体が逆にヒールを生じさせるモーメントに変わると言う
欠点を有している。
【0005】船が旋回する時の機構を述べる。 一般的
には、操舵室に設置した操舵輪を介して、旋回に必要な
舵角指令を電気信号などで、船尾の舵機室に配した駆動
ユニットへ送信し、舵を駆動させながら、指令通りの舵
角を確保している。
【0006】次に、旋回時に於ける船体横傾斜の状況を
説明する。 操舵輪の指令により舵が舵角を取り始める
旋回初期には、舵圧の作用により旋回中心方向(内側)
へ小傾斜するが、しだいに舵角が大きくなるにしたがっ
て、旋回による遠心力が旋回中心の外側方向へ働き、内
側にヒールしている状態を元に戻そうとする復原力とな
って船体は水平状態に戻る。 さらに旋回を続けると、
その遠心力によって逆に旋回中心の外側方向へ、持続的
にヒールすることが知られている。
【0007】この場合、同じ舵角に於いて、 (イ)船速が早い程、遠心力は大きくなる。 (ロ)舵輪操作から舵が指令された舵角を確保するまで
の所要時間が短い程、遠心力は大きくなる。 (ハ)過大な遠心力は、ヒール角を増加させ転覆に至る
危険性を有している。 このため、操船上の安全性を確保すべく操舵輪の操作開
始から舵角確保に至る所要時間を、意図的にある一定の
範囲内に治まるよう手段を講じさせるとともに、海上公
試運転では、操舵試験や旋回試験を義務づけ、その内容
を確認している。
【0008】このように、旋回中の船体は、旋回時の船
速や舵角の状況にもよるが、必ず、旋回中心外側方向の
定常ヒール状態になるので、ARTを作動していると、
タンク内の液体は、高い方(旋回中心側)から低い方
(旋回中心外側方向)へ移動し片寄りの状態となる。
言い換えれば、繰り返す船体動揺があることで、得られ
る液体の移動モーメント(減揺モーメント)が、定常ヒ
ールという状況では、更に船体を傾斜させようとする傾
斜モーメントに変わる。
【0009】従って、旋回中は、遠心力と液体の傾斜モ
ーメントが同じ方向に加わるため、ヒール角度を更に大
きくするという重大な問題点が確認された。 また、高
い減揺効果を求め、ARTの設置場所を船体の重心より
上方に計画する傾向にあったが、船体の重心より上方に
ある程、定常ヒール状態では、傾斜モーメントとして逆
に作用するから、設置場所の問題点も指摘されるように
なった。
【0010】従来技術のARTを搭載した船では、前述
した問題点を有しているため、衝突回避行動を取る場合
や取締任務の遂行中などで、急旋回をしなければならな
い緊急時においても、船速を落とし、しかも、舵角を考
慮しながら旋回半径を大きく取らざるを得ないという、
操船上の対応に難点があった。
【0011】
【目的】急旋回中に発生する遠心力で船が定常ヒール状
態に至るとき、ARTの移動液体によって発生する傾斜
モーメントが、更に、ヒール角度を大きくするというA
RTの欠点を解消せしめる自動制御方法を提供すること
を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本件の発明は、舵角指令
から舵が舵角を確保するまでの間に時間差があること
と、操舵輪の指令により舵が舵角を取り始める旋回初期
には、舵圧の作用によって船体が旋回中心方向(内側)
へ、ヒールすると言うことに着目しなされたものであ
る。
【0013】上記の目的を達成するために、操舵輪部に
ポテンショメータを取り付け、旋回に必要な舵角の指令
を検知した時、その指令の内容が急旋回なのか、あるい
は通常の旋回なのか等を解読させるコントロール部と空
気ダクトのバルブを閉じる開閉機器装置の手段を施し、
急旋回をすると判断した場合は、旋回による外側方向へ
のヒールが生じる前に、空気ダクトのバルブを強制的に
閉じて、タンク内の液体を制動させるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例にもとづき図面を参照して説明する。前述の目的を達
成するための基本的なARTの構成自体は、図2に示す
ように、船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つの
ウイングタンク12a,12bとこれらウイングタンク
12a,12bの底部に液体17を左右方向へ移動させ
る液体ダクト13で連結すると共に、同じくウイングタ
ンク12a,12b上部にバルブ15を介して連通させ
る空気ダクト14と、図示していないが注排水管、測深
管、空気抜き管など水槽として必要な艤装を施す。 A
RT本体16は、前記の注排水管、測深管、空気抜き管
など外部に通じる全ての管に閉鎖手段を施し密閉状態を
可能とする。
【0015】バルブ15の開閉は自動制御のための遠隔
操作を可能とする動力駆動式を採用し、図1に示すよう
なバルブ開閉操作の制御機構を施す。
【0016】制御装置機構は、大きく分けて舵角指令を
出す操舵輪部1と数値演算や制御信号等を司るコントロ
ール部2およびバルブ15を遠隔駆動させる開閉機器装
置部3からなる。
【0017】操舵輪部1には、指令舵角を検知するため
ポテンショメータ4を取り付け、その舵角を電気信号に
てコントロール部2へ送信する。
【0018】コントロール部2は、ポテンショメータ4
から送信された舵角指令の状況を受信し、その内容を解
読する演算解読回路5と、解読された値を基に予め設定
して有るバルブを閉めるか、あるいは、開けるかを制御
する制御回路6から、制御実行回路18を経て制御信号
を開閉機器装置部3へ送信する。 また、各機器の作動
状況は、機器作動状況確認回路19を介して逐一情報処
理回路7で把握し、制御回路6で確認すると共に、その
情報はICメモリーにて保存する。
【0019】空気ダクト14のバルブ15をバルブ用開
閉装置10を介して閉じた場合、タンク内の空気の流通
を遮断するから、ARTは非作動状態となるので、その
非作動であることを知らせる警報(ブザー等)を発する
と同時に図示していないがコントロールパネルに表示す
ることもできる。
【0020】演算解読回路5は、ポテンショメータ4か
ら送信されたデータを、次の事項等から急旋回か否かを
判断させる。 (1)指令された舵角情報の所要時間。 (2)指令された舵角のみの情報。 (3)大きい舵角指令を検知したときでも、操舵輪を遅
く回す時の情報。 (4)舵角と船速の関係。 (5)与えられた舵角指示と航海速力によって生じる傾
斜モーメント。
【0021】開閉機器装置部3は、駆動源8、電磁弁
9、バルブ15、バルブ用開閉装置10、リミットスイ
ッチ11等で構成する。
【0022】舵角指令を検知しバルブを閉じるまでの開
閉機器装置部3の作動は、コントロール部2の制御回路
6から送信された制御信号は、制御実行回路18を経て
駆動源8を始動→電磁弁9→バルブ用開閉装置10→バ
ルブ15→リミットスイッチ11→駆動源8を停止する
行程で制御終了となる。
【0023】行程に要する所要時間は、船の大きさにも
よるが実験の結果、約2〜3秒位が最適であるが、特に
束縛するものではない。
【0024】機構によっては駆動源8を必要としない場
合がある。 例えば、駆動源を他の供給源から受けられ
る場合は、ここで言う駆動源8の始動および、停止の行
程は省略できる。
【0025】本実施例は、駆動方式として、油圧駆動を
想定した構成であるが、空圧式あるいは電動式を用いた
場合、その方式によって開閉機器装置の内で省略できる
ものは省略しても良い。 また、空気ダクト14は連結
した方式とした例であるが、図3に示すように、空気ダ
クト14を左右連結せず、各々、単独に大気に開放する
方式として、各々にバルブ15を設けるか、あるいは、
片舷1つにバルブ15を設けても同じ効果が得られる。
【0026】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように本発明
によれば、舵に与える舵角情報を船の旋回前に把握する
ことで、舵角指令と船が舵角を確保する時間差をうまく
利用できるから、空気ダクトのバルブを人手を煩わすこ
となく自動的に、しかも数秒間で閉じることができる。
【0027】本発明を実施した船舶に於いて、急旋回を
するため舵角を操舵輪を操作して操舵ユニットへ指示を
すると、 (1)舵は少しずつ舵角を取り、船は旋回を始める。 (2)この時、船は舵圧により旋回中心内側方向へヒー
ルをする。 (3)タンク内の液体は、少し遅れてヒールした方向へ
移動する。 (4)舵が指令された舵角を取り続けると、旋回による
遠心力(遠心力は旋回中心外側方向に働く)が発生し、
舵圧より勝ってくるから復原力となって、ヒールを元の
状態へ戻すことになる。 (5)この間にバルブ15を閉じると、タンク内の液体
は、旋回中心内側の片寄った状態で停止する。 (6)指令された舵角を舵が確保すると、遠心力は最大
となり旋回中心外側方向にヒールする。 (7)ARTに於いては、液体が旋回中心の内側へ片寄
った時にバルブ15を閉じてあるから、その傾斜モーメ
ントが遠心力とは逆の方向へ働くためヒール角度を減少
させる働きがある。 当然のこと、この時のタンク内の
液体は、遠心力方向(ヒール方向)へ移動する事ができ
ない。
【0028】このように、タンク内の液体を遠心力とは
逆の方向へ片寄らせて停止させることが可能である。
また、旋回を中止すべく舵角を元の位置に戻す指令を検
知した時、その状況をコントロール部で判断し、空気ダ
クトのバルブを開け、ARTは自動的に作動を開始す
る。
【0029】このことはARTの宿命的とも言える欠
点、即ち、急旋回時に於けるヒール角の増長というAR
Tによる逆効果を容易に解消することができる。 ま
た、船体の重心より上方へARTを設置することも可能
となり、高い減揺モーメントが得られる。 従って、衝
突回避や取締遂行中に於いて、突発的な緊急旋回をする
時でも、ARTの欠点を気にすること無く繰船を可能と
なし、常に安定した減揺効果が得られると言う作用効果
を有しており、その効果の大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバルブ開閉操作の制御機構構成関
係を示したブロック図
【図2】ARTの概略構成を示す全体構成図
【図3】ARTの概略構成を示す全体構成図
【符号の説明】
1・・・操舵輪部 2・・・コントロール部 3・・・開閉機器装置部 4・・・ポテンショメータ 5・・・演算解読回路 6・・・制御回路 7・・・情報処理回路 8・・・駆動源 9・・・電磁弁 10・・・バルブ用開閉装置 11・・・リミットスイッチ 12a、12b ・・・ウイングタンク(タンク) 13・・・液体通路(液体ダクト) 14・・・空気ダクト 15・・・バルブ 16・・・減揺水槽(ART本体) 17・・・移動用液体 18・・・制御実行回路 19・・・機器作動状況確認回路

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】船体の両舷に設定した一対の少なくとも2
    つのウイングタンク(12a,12b)と、これらタン
    クの底部に液体を移動させる液体通路(13)で連結
    し、U字管型に構成すると共に、両端をタンク(12
    a,12b)内の上部付近に、遠隔駆動式のバルブ(1
    5)を介し、左右のタンク(12a,12b)を連結す
    るか、或いは、各々のタンク(12a,12b)の上部
    に、大気へ開放可能とする空気ダクト(14)を設け、
    バルブ(15)を開閉することで液体制動ができる気密
    な減揺水槽(16)において、操舵輪部(1)からでる
    舵角指令をポテンショメータ(4)等で検知し、その内
    容を解読する手段と、バルブ(15)の遠隔駆動を可能
    とする手段を施し、船が急旋回行動をする時の舵角指令
    を検知、演算し、船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こ
    す前に、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体
    (17)を停止させ、その液体(17)による船体傾斜
    の増長を事前に防止し得るよう、自動的に制御させるこ
    とを特徴とする船舶の減揺水槽。
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