JP2004042676A - 船舶の動揺軽減装置およびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】船の急旋回中は遠心力により、必ず旋回中心外側方向へ定常横傾斜を起こす。 この時、ARTの移動用液体によって発生する傾斜モーメントが遠心力に加わり、船体横傾斜角度を更に大きくするというARTの欠点を解消する。
【解決手段】旋回のための操舵輪部を手動モードに切り替えた時のみ出力される舵角指令情報と船速情報とから急旋回操作がなされたか否かの判断を行う。
操舵輪部1に舵角指令情報を出力するポテンショメータ等の手段を施し、操舵輪部を手動モードに切り替えて操作する時のみの舵角指令情報と船速情報とを演算解読回路5で解読させる。 そして、予め設定された制御仕様をコントロール部2および開閉機器装置部3を介して、空気ダクト14のバルブ15を閉じ、タンク12a,12b内の移動用液体17を制動させる。
【選択図】
図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本願発明は、減揺水槽内の液体制動の創案に係わり、船が急旋回をする時に、タンク内の液体が減揺水槽として有効に作動し無い状況下で生じる遊動水となって、船の復原力に対し悪影響を与えるという逆効果を事前に防止し得るよう、自動的に減揺水槽の液体制動を制御する船舶の動揺軽減装置とその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より船舶の横揺れを軽減する装置として、U字管型の受動減揺水槽(以下ARTとも言う)が知られている。 このARTに於いて、有効な減揺モーメントを得るには、船の復原力に対するARTの液体の自由表面(以下、自由表面二次モーメントとも言う)の値を大きくする手段もあるが、次の理由により無闇に大きくすることはできない。 この自由表面二次モーメントは、液体が適当な位相遅れを得ている状況下では復原力に悪をさをしないが、位相遅れが大幅に狂ってくる場合、減揺に必要な液体が制御のできない遊動水となって見かけの重心を上昇させ、その分、復原力を減少させる事が知られている。
【0003】
また、遊動水が発生する要因に、船体が水平に対しある角度を保て傾斜する定常傾斜(以下、ヒールとも言う)状態がある。 この状態は、一般的に積載物の移動や海難事故などにより重量的に左右のバランスを崩した場合、或いは、横風等を受けて風下へ定常的な外力が働いた場合、そして、衝突回避や他の理由により船の針路を大きく変える急旋回などの時に生じる。
【0004】
そこで、急旋回時の遊動水の発生を事前に把握し復原力に対する悪影響を最小限に止めるべく、液体制動用のバルブを備え、転舵のための舵角指令と船速等の情報を解読し、バルブを自動的に制動させる減揺水槽あるいはその制御方法が発明された。 例えば、特許第3125141号(以下、引用例−1という)、特開2002−079993号(以下、引用例−2という)、特開2002−104281号(以下、引用例−3という)、
【0005】
【発明が解決する課題】
引用例−1および引用例−2に共通する基本的な事項は、舵角指令情報と船速情報から、急旋回行動となるか否かを判断させ、液体制動用の空気ダクト付きバルブの開閉を自動的に制御する制御方法と記載されている。
【0006】
しかし乍、航行中の船体は、出会い波や風の影響を受け船首がヨーイング(左右方向へ移動)し、または、横方向へ移動するために針路コースから逸脱することになる。 特に、時化の状態ではコースの逸脱が頻繁となる為、これに対応した転舵の手段が自動的に行われている。
【0007】
この転舵の舵角指令と急旋回を行う時の初期の舵角指令の内容が殆ど同じで区別がつかない。 従って、荒天時の航海に於いて、単にコース修正の為に出力された舵角指令信号を急旋回と誤り、実際には減揺効果を必要とし、しかも、タンク内の液体が復原力に悪影響を与えていないにも係わらず、バルブを閉じ非作動とする、引用例−1および引用例−2の制御方法では、ARTとして適さない欠点のある操作方法であると引用例−3が指摘している。
【0008】
そこで、引用例−3では、船が遭遇している動揺状況を予測し把握する手段として、前記引用例の減揺装置に船の縦揺れ情報を得る動揺センサー、海気象情報を得る風向風力計およびこれらから出力される情報の解読及び制御信号などを処理するコントロール部を追加し、引用例−1および引用例−2の欠点を解消する船舶の動揺軽減装置を発明したとしている。
【0009】
引用例−3では、船の動揺情報や旋回の為の舵角指令及び船速の情報に加え、風向風速等の情報を解読させ、船が遭遇する状況を把握し、予め設定してある条件に基づき、ARTの液体が復原力に対し悪影響を与える場合の船の安全性の担保、或いは、周期可変や液体の制動等を必要に応じた制御仕様を自動的に実行させるものことを特徴とする優れた船舶の動揺軽減装置ではあるが、急旋回対応のみを取り上げると、風向風速情報とその解読手段は省略可能である事に着目した。
【0010】
【目的】
船の急旋回中は遠心力により、必ず旋回中心外側方向へ定常横傾斜を起こす。この時、ARTの移動用液体によって発生する傾斜モーメントが遠心力に加わり、船体横傾斜角度を更に大きくするというARTの欠点を解消せしめる船舶の動揺軽減装置とその制御方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願の発明は、急旋回時行動を操作する時は、操舵輪部は手動モードに切り替えられる事に着目し、急旋回と判断する1つの条件である舵角指令情報は手動モードの時のみ出力される情報を解読するものとした。
【0012】
上記の目的を達成するために、手動と自動操作を切り替えられる手段を施した操舵輪部に舵角指令情報を検知するポテンショメータ等の手段と船速情報を得られる手段と、手動操作にて船の旋回操作を行う時のみ出力された舵角指令情報と船速情報とから、その内容が急旋回なのか、あるいは通常の旋回なのか等を解読させるコントロール部と液体の制動を行う空気ダクトのバルブを閉じる開閉機器装置の手段を施し、コントロール部で急旋回操作であると判断した場合は、空気ダクトのバルブを強制的に閉じて、タンク内の液体を制動させるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
前述の目的を達成するための基本的なARTの構成自体は、図2に示すように、船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク12a,12bとこれらウイングタンク12a,12bの底部に液体17を左右方向へ移動させる液体ダクト13で連結すると共に、同じくウイングタンク12a,12b上部にバルブ15を介して連通させる空気ダクト14と、図示していないが注排水管、測深管、空気抜き管など水槽として必要な艤装を施す。 ART本体16は、前記の注排水管、測深管、空気抜き管など外部に通じる全ての管に閉鎖手段を施し密閉状態を可能とする。
【0014】
バルブ15の開閉は自動制御のための遠隔操作を可能とする動力駆動式を採用し、図1に示すようなバルブ開閉操作の制御機構を施す。
【0015】
制御装置機構は、大きく分けて舵角指令を出す操舵輪部1と船速情報を得る船速計と数値演算や制御信号等を司るコントロール部2およびバルブ15を遠隔駆動させる開閉機器装置部3からなる。
【0016】
操舵輪部1には、手動操作と自動操作を切り替えられる手段と、舵角指令情報を検知するためポテンショメータ等4の手段を施し、手動操作に切り替えられた時のみ、その舵角指令情報を電気信号にてコントロール部2へ送信する。
【0017】
コントロール部2は、ポテンショメータ4から送信された舵角指令情報と船速情報とを受信し、その内容を解読する演算解読回路5と、解読された値を基に予め設定して有るバルブを閉めるか、あるいは、開けるかを制御する制御回路6から、制御実行回路18を経て制御信号を開閉機器装置部3へ送信する。 また、各機器の作動状況は、機器作動状況確認回路19を介して逐一情報処理回路7で把握し、制御回路6で確認すると共に、その情報はICメモリーにて保存する。
【0018】空気ダクト14のバルブ15をバルブ用開閉装置10を介して閉じた場合、タンク内の空気の流通を遮断するから、左右のウイングタンクの液面上部の空所は密閉状態となり、タンク内の液体移動が出来なくなる。 言い換えれば、ARTは非作動状態となるので、その非作動であることを知らせる警報(ブザー等)を発すると同時に図示していないがコントロールパネルに表示することもできる。
【0019】
演算解読回路5は、操舵輪部を手動操作に切り替えた時のみの出力される舵角指令信号の情報と船速情報が次の条件を全て満足した時に急旋回と判断させるが、この急旋回対応仕様を実行中であっても、条件を満たさなくなった時は、急旋回を解除する。
(1)予め設定する指令舵角値を検知したとき。
(2)急旋回と判断する指令舵角値を検知した時点から、その状態が予め設定する所要時間を維持しているとき。
(3)予め設定する船速値を検知したとき。
【0020】
船速情報を得る手段は、一般的に船が装備する速力計などから得られるので、本システム用に船速計などを設ける必要はないが、対水速力計を有さない場合は対水速力を把握可能な手段を施す。
【0021】
開閉機器装置部3は、駆動源8、電磁弁9、バルブ15、バルブ用開閉装置10、リミットスイッチ11等で構成する。
【0022】
急旋回対応仕様の実行指令を検知し、バルブが閉じるまでの開閉機器装置部3の作動は、コントロール部2の制御回路6から送信された制御信号は、制御実行回路18を経て駆動源8を始動→電磁弁9→バルブ用開閉装置10→バルブ15→リミットスイッチ11→駆動源8を停止する行程で制御終了となる。
【0023】
行程に要する所要時間は、船の大きさにもよるが実験の結果、約2〜3秒位が最適であるが、特に束縛するものではない。
【0024】
機構によっては駆動源8を必要としない場合がある。 例えば、駆動源を他の供給源から受けられる場合は、ここで言う駆動源8の始動および、停止の行程は省略できる。
【0025】
本実施例は、駆動方式として、油圧駆動を想定した構成であるが、空圧式あるいは電動式を用いた場合、その方式によって開閉機器装置の内で省略できるものは省略しても良い。 また、空気ダクト14は連結した方式とした例であるが、図3に示すように、空気ダクト14を左右連結せず、各々、単独に大気に開放する方式として、各々にバルブ15を設けるか、あるいは、片舷1つにバルブ15を設けても同じ効果が得られる。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように本願発明によれば、手動操作にて急旋回行動をする時のみの舵角指令情報と船速情報を解析するものであるから、風向や風速などの情報を取り入れること無く、針路の維持のための舵角指令と急旋回を行う時の舵角指令情報かを容易に判断することが可能である。
【0027】
風向風速計を装備していない船舶でも、急旋回対応の操作を組み込むことが可能となりる。
【0028】
このことはARTの宿命的とも言える欠点、即ち、急旋回時に於けるヒール角の増長というARTによる逆効果を容易に解消することができる。 また、船体の重心より上方へARTを設置することも可能となり、高い減揺モーメントが得られる。 従って、衝突回避や取締遂行中に於いて、突発的な緊急旋回をする時でも、ARTの欠点を気にすること無く繰船を可能となし、常に安定した減揺効果が得られると言う作用効果を有しており、その効果の大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるバルブ開閉操作の制御機構構成関係を示したブロック図
【図2】ARTの概略構成を示す全体構成図
【図3】ARTの概略構成を示す全体構成図
【符号の説明】
1・・・操舵輪部
2・・・コントロール部
3・・・開閉機器装置部
4・・・ポテンショメータ
5・・・演算解読回路
6・・・制御回路
7・・・情報処理回路
8・・・駆動源
9・・・電磁弁
10・・・バルブ用開閉装置
11・・・リミットスイッチ
12a、12b・・・ウイングタンク(タンク)
13・・・液体通路(液体ダクト)
14・・・空気ダクト
15・・・バルブ
16・・・減揺水槽(ART本体)
17・・・移動用液体
18・・・制御実行回路
19・・・機器作動状況確認回路
【0026】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように本願発明によれば、手動と自動操作に切り替えられる前記操舵輪部(1)には、減揺タンク制御用の舵角指令信号を出力する手段が施され、減揺タンク制御用の前記舵角指令情報は、手動操作にて船の旋回操作を行う時のみ前記コントロール部(2)へ出力されることを特徴とし、前記コントロール部は、手動操作にて船の旋回操作を行う時のみ出力された前記舵角指令信号の情報と船速情報とが、予め設定してある条件を満たす場合は、バルブを強制的に閉じて移動用液体を停止させる制動を、自動的に制御させることを特徴とする制御手段であるから、第1や第2引用文献のように、針路の維持のための舵角指令情報と急旋回のための舵角指令情報を混同することなく、また、風向や風速などの情報を取り入れること無く、本願発明が必要とする旋回情報を容易に判断することが可能である。

Claims (2)

  1. 船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と、これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と、前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは、各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し、更に、操舵輪部(1)に操舵輪部を手動モードに切り替えて操作を行う時のみに舵角指令情報を出力するポテンショメータ(4)等の手段と、船速情報を出力する手段と、これらの内容を解読すると共に制御信号を出力するコントロール部(2)と、コントロール部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備し、操舵輪部を手動モードに切り替えて急旋回行動の操作を行った時のみに出力される舵角指令信号の情報と船速情報とが、予め設定してある条件を満たす場合は、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動を、自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置。
  2. 船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と、これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と、前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは、各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し、更に、操舵輪部(1)に操舵輪部を手動モードに切り替えて操作を行う時のみに舵角指令情報を出力するポテンショメータ(4)等の手段と、船速情報を出力する手段と、これらの内容を解読すると共に制御信号を出力するコントロール部(2)と、コントロール部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置に於いて、操舵輪部を手動モードに切り替えて急旋回行動の操作を行った時のみに出力される舵角指令信号の情報と船速情報とが、予め設定してある条件を満たす場合は、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動を、自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。
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