JPH11328654A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JPH11328654A
JPH11328654A JP13070398A JP13070398A JPH11328654A JP H11328654 A JPH11328654 A JP H11328654A JP 13070398 A JP13070398 A JP 13070398A JP 13070398 A JP13070398 A JP 13070398A JP H11328654 A JPH11328654 A JP H11328654A
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JP
Japan
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magnetic layer
magnetic
layer
carbon black
lower non
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Withdrawn
Application number
JP13070398A
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English (en)
Inventor
Takao Kudo
孝夫 工藤
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁性層が良好な表面性を有して電磁変換特性
に優れ、且つ、電気抵抗が低減される。 【解決手段】 非磁性支持体上に形成され、カーボンブ
ラックと非磁性粉末と結合剤とを主体としてなる下層非
磁性層と、上記下層非磁性層上に形成され、磁性粉末と
結合剤とを主体としてなる上層磁性層とを備え、上記下
層非磁性層のカーボンブラックは、基本粒子径が15〜
50nmであり、且つ、DBP吸油量が90ml/10
0g以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気テープ、磁気デ
ィスク等の磁気記録媒体に関し、特に、下層非磁性層上
に磁性塗料を塗布してなる上層磁性層を備える磁気記録
媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】ビデオテープ、オーディオテープ、磁気
ディスク等に代表される磁気記録媒体としては、強磁性
酸化鉄、Co変成酸化鉄、CrO2、強磁性合金粉末等
の強磁性粉末を結合剤中に分散させることで調製された
磁性塗料を、非磁性支持体上に塗布することで磁性層が
形成される、いわゆる塗布型のものが挙げられる。
【0003】近年、記録の高密度化、記録波長の短波長
化が進行しており、塗布型の磁気記録媒体においても、
これらの高密度化、短波長化に対応した特性が要求され
ている。
【0004】ここで、塗布型の磁気記録媒体において、
高密度記録領域での電磁変換特性を改善する手法として
は、磁性層の薄型化が挙げられる。磁性層を薄型化する
と、記録時の自己減磁損失や再生時の厚み損失が減少す
るため、電磁変換特性が効果的に改善されることになる
のである。
【0005】しかしながら、この場合、磁性層の厚さを
例えば1μm以下に薄くすると、非磁性支持体の表面形
状が磁性層の表面に浮き出し易くなり、磁性層の表面が
粗れた状態になる。磁性層の表面が劣化してしまうと、
スペーシングロスによって電磁変換特性が悪化したり、
ドロップアウトが多発するようになる。
【0006】そこで、塗布型の磁気記録媒体としては、
磁性層と非磁性支持体との間に比較的厚みのある下層非
磁性層を介在させ、これにより非磁性支持体の表面形状
を磁性層表面に現れ難くした、重層塗布型のものが提案
されている。
【0007】この重層塗布型の磁気記録媒体では、下層
非磁性層用塗料を所望の塗料特性とすることにより、磁
性層の表面をある程度平滑化することができ、その結
果、スペーシングロスやドロップアウト等を発生し難く
することができる。このため、重層塗布型の磁気記録媒
体では、短波長領域において優れた磁性変換特性が得ら
れることになる。
【0008】しかしながら、この重層塗布型の磁気記録
媒体では、磁性層の表面性が下層非磁性層の表面形状の
影響を受けることになる。すなわち、下層非磁性層用塗
料の調製法如何によって磁性層表面の平滑性が大きく損
なわれるため、より平滑な磁性層表面を得るためには、
それに見合った下層非磁性層用塗料を調製する必要があ
る。
【0009】一方、磁気記録媒体は、電気抵抗が高いと
帯電が起こり、表面にゴミが付着してしまう虞れがあ
る。この場合、磁気記録媒体は、ドロップアウトを発生
させてしまったり、放電によるミッシングパルスを発生
させてしまうことがある。したがって、磁気記録媒体と
しては、電気抵抗を低く抑えることが重要である。
【0010】そこで、磁気記録媒体では、グラファイト
やカーボンブラックを磁性層中に添加し、磁性層に導電
性を付与する工夫がなされている。これにより、磁気記
録媒体では、電気抵抗を低く抑えることができ、放電に
よるミッシングパルスの発生等の不都合を回避すること
ができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したよ
うなグラファイトやカーボンブラックは、一般に、分散
性が悪く、塗料中に添加されると所定の大きさの塊とな
ってしまうことがある。また、このようなグラファイト
やカーボンブラックを磁性塗料中に添加した場合には、
磁性層の磁気特性を著しく損なうこととなり、記録再生
特性を大きく劣化させることになる。
【0012】そこで、これらグラファイトやカーボンブ
ラックを下層非磁性層中に添加し、磁気記録媒体全体と
しての電気抵抗を低減させることが考えられる。しかし
ながら、グラファイトやカーボンブラックの分散性が悪
い場合には、下層非磁性層用塗料中にグラファイトやカ
ーボンブラックの塊を形成してしまう。このため、グラ
ファイトやカーボンブラックを添加した下層非磁性層
は、その表面が粗れてしまい、その結果、磁性層の表面
の平滑性を著しく損なうことになる。したがって、この
場合でも、磁気記録媒体の記録再生特性は劣化してしま
う。
【0013】このように、上述した磁気記録媒体では、
磁性層の表面性を良好なものとし、且つ、磁気記録媒体
の電気抵抗を低減させることが困難であるといった問題
点があった。
【0014】そこで、本発明はこのような従来の実情に
鑑みて提案されたものであり、磁性層が良好な表面性を
有して電磁変換特性に優れ、且つ、電気抵抗が低減され
た磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成した
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体上に形成さ
れ、カーボンブラックと非磁性粉末と結合剤とを主体と
してなる下層非磁性層と、上記下層非磁性層上に形成さ
れ、磁性粉末と結合剤とを主体としてなる上層磁性層と
を備え、上記下層非磁性層のカーボンブラックは、基本
粒子径が15〜50nmであり、且つ、DBP吸油量が
90ml/100g以下であることを特徴とするのもで
ある。
【0016】以上のように構成された本発明に係る磁気
記録媒体において、このカーボンブラックは、DBP吸
油量が所定の範囲に規定されているため、所望のストラ
クチャ構造をとることとなる。更に、この磁気記録媒体
では、カーボンブラックの基本粒子径を所定の範囲に規
定しているため、カーボンブラックが分散性に優れたも
のとなる。下層非磁性層は、カーボンブラックの分散性
に優れるため、優れた表面性を有することとなる。この
磁気記録媒体において、上層磁性層は、下層非磁性層の
表面性の影響を受けるため、優れた表面性を有すること
となる。また、この磁気記録媒体において、カーボンブ
ラックが下層非磁性層に添加されることによって、下層
非磁性層には、導電性が付与されることとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る磁気記録媒体
の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】本発明に係る磁気記録媒体は、図1に示す
ように、非磁性支持体1と、この非磁性支持体1上に形
成された下層非磁性層2と、この下層非磁性層2上に形
成された上層磁性層3とからなる。
【0019】非磁性支持体1としては、例えば、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタ
レート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオ
レフイン類、セルローストリアセテート、セルロースダ
イアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド、アラ
ミド樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック等が挙げ
られる。この非磁性支持体1は、単層構造であっても多
層構造であってもよい。また、この非磁性支持体1は、
例えば、コロナ放電処理等の表面処理が施されてもよい
し、易接着層等の有機物層が表面に形成されてもよい。
【0020】非磁性支持体1の厚みは、特に制限されな
いが、例えば、媒体がフィルム状やシート状の場合に
は、2〜100μm、好ましくは3〜50μmとするの
が適当である。また、厚みとしては、ディスク状やカー
ド状の場合には30μm〜10mm程度、ドラム状の場
合にはレコーダ等の設計に応じて適宜に選択されればよ
い。
【0021】下層非磁性層2は、上述した非磁性支持体
1上に形成され、非磁性粉末、カーボンブラック及び結
合剤を主体とする。この下層非磁性層2は、非磁性粉
末、カーボンブラック及び結合剤等を溶剤とともに分散
させることで調製された下層非磁性層用塗料を、非磁性
支持体1上に塗布することにより形成される。
【0022】このカーボンブラックは、導電性の微粒子
であって、下層非磁性層2に添加されることにより下層
非磁性層2に導電性を付与する。その結果、この磁気記
録媒体は、電気抵抗が低いものとなり、塵芥の付着が防
止されたものとなる。
【0023】この下層非磁性層2において、カーボンブ
ラックは、その基本粒径が15〜50nmであり、ま
た、そのDBP吸油量が90ml/100g以下である
ようなものが用いられる。このカーボンブラックは、下
層非磁性層2中において、所定の大きさのストラクチャ
構造をとる。
【0024】ここで、ストラクチャ構造とは、微粒子が
凝集することによって形成される該微粒子の凝集塊構造
のことである。カーボンブラックがとるストラクチャ構
造の大きさは、主として、カーボンブラックのDBP吸
油量に応じて決定される。すなわち、カーボンブラック
のDBP吸油量が大きい場合、カーボンブラックがとる
ストラクチャ構造は大きくなる。これに対して、カーボ
ンブラックのDBP吸油量が小さい場合には、カーボン
ブラックは、小さなストラクチャ構造をとることとな
る。
【0025】上述した下層非磁性層用塗料では、カーボ
ンブラックのDBP吸油量が90ml/100g以下で
あるため、カーボンブラックは、比較的に小さなストラ
クチャ構造をとることとなる。このため、カーボンブラ
ックは、下層非磁性層用塗料中における分散性に優れた
ものとなる。したがって、このカーボンブラックは、下
層非磁性層2中において、良好に分散して存在すること
となる。
【0026】下層非磁性層2は、カーボンブラックが良
好に分散されているため、優れた表面性を有することと
なる。
【0027】また、このカーボンブラックは、その基本
粒径が15〜50nmであるため、上述したようなDB
P吸油量に規定した場合に所望の大きさのストラクチャ
構造をとることができる。言い換えると、このカーボン
ブラックは、基本粒径が15〜50nmであり、且つ、
DBP吸油量が90ml/100g以下である場合に表
面性に優れた下層非磁性層2を形成することができる。
【0028】カーボンブラックは、その基本粒径が15
nmより小である場合、等重量あたりの粒子数及び粒子
表面積が著しく増加することとなるために分散性が劣化
したものとなる。すなわち、カーボンブラックの基本粒
径が15nm以下の場合、DBP吸油量が90ml/1
00g以下であっても、カーボンブラックが良好に分散
されないため、下層非磁性層2の表面性が劣化したもの
となる。
【0029】また、カーボンブラックは、その基本粒径
が50nmより大である場合、分散性には優れるが、基
本粒径が大きいために下層非磁性層2の表面を劣化させ
てしまう。
【0030】さらに、この下層非磁性層2において、カ
ーボンブラックは、非磁性粉末100重量部に対して2
0〜50重量部の割合で含有されることが好ましい。非
磁性層粉末100重量部に対して、カーボンブラックの
含有量が20重量部より小である場合には、下層非磁性
層2中のカーボンブラック量が不足して十分な導電性が
得られない虞がある。また、非磁性層粉末100重量部
に対して、カーボンブラックの含有量が50重量部より
大である場合には、カーボンブラックの分散性が劣化し
てしまい、その結果、下層非磁性層2の表面性が劣化し
てしまう虞がある。このため、下層非磁性層2におい
て、カーボンブラックの含有量を、非磁性粉末100重
量部に対して20〜50重量部と規定することにより、
所望の導電性を確実に達成することができるとともに、
優れた表面性を確実に達成することができる。
【0031】一方、この下層非磁性層2に含有される非
磁性粉末としては、例えば、針状酸化鉄粉末が挙げられ
る。具体的に、針状酸化鉄粉末としては、例えば、針状
α−Fe23を好ましく用いることができる。針状α−
Fe23が他の非磁性粒子に比べて分散性に優れるた
め、針状α−Fe23を用いることで下層非磁性層2の
表面の平滑性が向上し、その結果、この上に積層される
上層磁性層3の表面も平滑なものになる。
【0032】この針状酸化鉄粉末は、長軸長が0.2μ
m以下であることが好ましい。針状酸化鉄粉末の長軸長
を0.2μm以下とすることで、下層非磁性層2及び上
層磁性層3の表面性はいっそう平滑なものとなる。この
場合、針状酸化鉄粉末の軸比(長軸長/短軸長)は、2
〜20、好ましくは5〜15、さらに好ましくは5〜1
0が適当である。また、比表面積は、10〜250m2
/g、好ましくは20〜150m2/gであり、さらに
好ましくは30〜100m2/gである。
【0033】さらにまた、この下層非磁性層2におい
て、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル
樹脂、塩化ビニル系共重合体等の塩化ビニル系樹脂等を
例示することができる。
【0034】これらの樹脂は、一種類を単独で使用して
もよく、二種類以上を組み合わせて使用しても良い。例
えば、二種類以上を組み合わせて使用する場合、ポリウ
レタン及び/又はポリエステルと、塩化ビニル系樹脂と
を混合して用いることがある。この場合には、ポリウレ
タン及び/又はポリエステルと、塩化ビニル系樹脂との
重量比は90:10〜10:90、好ましくは70:3
0〜30:70の範囲である。
【0035】また、結合剤としては、下記の樹脂を併用
するようにしても良い。併用する樹脂としては、重量平
均分子量が10,000〜200,000である塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデ
ン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、
ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹
脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロ
セルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、フェ
ノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、
フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、尿
素ホルムアミド樹脂、各種の合成ゴム系樹脂等が挙げら
れる。
【0036】結合剤の混合量としては、針状酸化鉄粉末
100重量部に対して80〜120重量部が好ましい。
【0037】さらに、溶剤としては、磁気記録媒体で通
常用いられているもの、例えば、アセトン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン
等のケトン類;メタノール、エタノール、プロパノー
ル、ブタノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エ
チル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールセ
ノアセテート等のエステル類;グリコールジメチルエー
テル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テ
トラヒドロフラン等のエーテル類;ベンセン、トルエ
ン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチレンクロライ
ド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、
ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げるこ
とができる。この溶剤は、単独で用いても2種類以上を
混合して用いても構わない。
【0038】塗料を調製するにあたっては、必要に応じ
て混練を行うようにしてもよい。混練機(図示せず)と
しては、例えば、二本ロールミル、三本ロールミル、オ
ープンニーダー、連続二軸混練機、加圧ニーダー等が挙
げられ、いずれも使用可能である。特に、0.05〜
0.5kW(粉末1kg当たり)の消費電力負荷が提供
できることから、加圧ニーダー、オープンニーダー、連
続二軸混練機、二本ロールミル、三本ロールミルが適当
である。
【0039】さらにまた、この混練工程において分散剤
を添加してもよい。分散剤としては、シランカップリン
グ剤等を挙げることができる。この分散剤は、非磁性粉
末100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲で用い
るのが適当である。
【0040】さらにまた、媒体の走行耐久性等を改善す
る目的で、通常この種の磁気記録媒体で用いられる潤滑
剤を添加しても良い。潤滑剤としては、脂肪酸や脂肪酸
エステル等が単独あるいは混合して使用される。脂肪酸
は、一塩基酸であっても二塩基酸であってもよく、その
炭素数が6〜30であることが好ましく、より好ましく
は12〜22とされる。脂肪酸と脂肪酸エステルとを併
用する場合、脂肪酸と脂肪酸エステルの比率は重量比で
10:90〜90:10が好ましい。潤滑剤としては、
上述した脂肪酸、脂肪酸エステルとともに、公知の潤滑
剤を併用しても良い。併用する潤滑剤としては、シリコ
ーンオイル、弗化カーボン、脂肪酸アミド、オレフィン
オキサイド等が挙げられる。
【0041】一方、上層磁性層3は、上述した下層非磁
性層2上に形成され、強磁性粉末及び結合剤を主体とし
てなる。この上層磁性層3は、強磁性粉末や結合剤を溶
剤とともに分散させることで調製された上層磁性層用塗
料を塗布して形成される。
【0042】ここで、強磁性粉末としては、γ−Fe2
3、Co含有γ−Fe23、Co被着γ−Fe23
CrO2、また、マグネタイトに代表されるフェライト
類、すなわちFe34、Co含有Fe34、Co被着F
34等が挙げられる。また、強磁性粉末としては、金
属磁性粉末を用いるようにしても良い。金属磁性粉末と
しては、Fe、Co等の金属粉末の他、Fe−Al系、
Fe−Al−Ni系、Fe−Al−Zn系、Fe−Al
−Co系、Fe−Al−Ca系、Fe−Ni系、Fe−
Ni−Al系、Fe−Ni−Co系、Fe−Ni−Si
−Al−Mn系、Fe−Ni−Si−Al−Zn系、F
e−Al−Si系、Fe−Ni−Zn系、Fe−Ni−
Mn系、Fe−Ni−Si系、Fe−Mn−Zn系、F
e−Co−Ni−P系、Ni−Co系等、Fe、Ni、
Co等を主成分とする合金粉末が挙げられる。
【0043】このうちFe系の磁性粉末は電気的特性に
優れている。また、耐蝕性および分散性の点では、Fe
−Al系、Fe−Al−Ca系、Fe−Al−Ni系、
Fe−Al−Zn系、Fe−Al−Co系、Fe−Ni
−Si−Al−Zn系、Fe−Ni−Si−Al−Mn
系等のFe−Al系の合金粉末が好ましい。
【0044】これら金属磁性粉末の形状は、平均長軸長
が0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.4μm、
さらに好ましくは0.01〜0.3μmであり、且つ軸
比(平均長軸長/平均短軸長)が12以下、好ましくは
10以下のものがよい。
【0045】このように強磁性粉末には、酸化物磁性粉
末や金属磁性粉末が使用できるが、いずれにおいても飽
和磁化量(σs)が70emu/g以上であることが好
ましい。飽和磁化量が70emu/g未満であると、十
分な電磁変換特性が得られないことがある。また、高密
度記録領域での記録再生を可能にする点から、BET法
による比表面積が45m2/g以上であることが好まし
い。
【0046】結合剤としては、上述した下層非磁性層2
と同様に、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化
ビニル系共重合体等の塩化ビニル系樹脂等を使用するこ
とができる。
【0047】これら樹脂は、−SO3M、−OSO3M、
−COOM、−PO(OM´)2[但し、Mは水素原子
またはNa、K、Li等のアルカリ金属を表し、M´は
水素原子またはNa、K、Li等のアルカリ原子、アル
キル基を表す]及びスルホベタイン基から選ばれる少な
くとも一種の極性基を有する繰返し単位を含有している
ことが好ましい。これら極性基は、強磁性粉末の分散性
を向上させる作用があり、含有率は0.1〜8.0モル
%、さらには0.2〜6.0モル%であるのが好まし
い。極性基の含有率が0.1モル%未満であると、磁性
粉末の分散性が低下する。逆に含有率が8.0モル%が
超えていると、上層磁性層用塗料がゲル化し易くなる。
また、樹脂の重量平均分子量は、15,000〜50,
000の範囲であるのが好ましい。
【0048】なお、極性基を含有する塩化ビニル系共重
合体は、例えば、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合
体等の水酸基を有する共重合体と、極性基及び塩素原子
を有する化合物との付加反応により合成することができ
る。また、ポリエステルは、ポリオールと多塩基酸との
反応により合成される。なお、他の極性基を導入したポ
リエステルも公知の方法で合成することが可能である。
ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートとの
反応により合成される。このポリオールとしては、ポリ
オールと多塩酸基との反応によって得られるポリエステ
ルポリオールが一般に使用される。なお、極性基を有す
るポリエステルポリオールを原料として用いれば、極性
基を有するポリウレタンを合成することができる。
【0049】これらの樹脂は、一種類単独であってもよ
く、二種類以上を組み合わせて用いても良い。例えば、
ポリウレタン及び/又はポリエステルと、塩化ビニル系
樹脂とを混合して用いる場合、その重量比は90:10
〜10:90、好ましくは70:30〜30:70の範
囲であるのが良い。
【0050】さらに、下記の樹脂を全結合剤の50重量
%以下の使用量で併用するようにしても良い。併用する
樹脂としては、重量平均分子量が10,000〜20
0,000である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩
化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アク
リロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル
共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セ
ルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブ
タジエン共重合体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿
素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹
脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂、各種の合
成ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0051】上述したような結合剤の混合量は、強磁性
金属粉末100重量部に対して8〜25重量部が好まし
く、10〜20重量部であるのがより好ましい。
【0052】溶剤としては、上述した下層非磁性層2を
説明する際に例示したものを使用することができる。ま
た、塗料を調製するにあたっては、下層非磁性層2を説
明する際に例示したように、必要に応じて混練を行って
もよく、混練機としては、上述した下層非磁性層2を説
明する際に例示したものを使用することができる。さら
に、同様に分散剤を用いることもでき、これらの分散剤
は、強磁性粉末に対して0.5〜5重量%の範囲で添加
されるのが適当である。
【0053】また、上層磁性層3には、媒体の走行耐久
性等を改善する目的で、通常、この種の磁気記録媒体で
用いられる研磨剤、潤滑剤等の添加剤を添加しても良
い。
【0054】研磨剤としては、α−アルミナ、溶融アル
ミナ、酸化クロム、酸化チタン、α−酸化鉄、酸化ケイ
素、窒化ケイ素、炭化タングステン、炭化モリブデン、
炭化ホウ素、コランダム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸
化マグネシウム、窒化ホウ素等を挙げることができる。
この研磨剤の平均粒子径は、0.05μm〜0.6μ
m、好ましくは0.05μm〜0.5μm、さらに好ま
しくは0.05μm〜0.3μmであるのが良い。ま
た、この研磨剤の添加量は、(磁性粉末100重量部に
対して)3〜20重量部、好ましくは5〜15重量部、
さらに好ましくは5〜10重量部とするのが適当であ
る。
【0055】潤滑剤としては、下層非磁性層2の説明の
際に例示したものがいずれも使用可能である。このとき
上下の各層にそれぞれ添加する各添加剤の種類や量は、
異なっていても同一であっても良い。
【0056】ところで、上述したように構成された下層
非磁性層2、上層磁性層3を形成する際には、少なくと
も下層非磁性層2と上層磁性層3とが互いに湿潤状態で
あるうちに重層塗布する、いわゆるウェット・オン・ウ
ェット方式を用いることが好ましい。
【0057】非磁性支持体1上に下層非磁性層2及び上
層磁性層3をウェット・オン・ウェット重層塗布する際
には、例えば、図2に示すような塗膜形成装置10が用
いられる。
【0058】塗膜形成装置10は、非磁性支持体1を巻
装するとともに非磁性支持体1を掛け渡してなる巻取り
ロール12及び供給ロール13と、この供給ロール13
から引き出された非磁性支持体1上に下層非磁性層用塗
料及び上層磁性層用塗料を塗布する塗布装置14と、上
層磁性層3の磁化方向を決定させる配向用磁石15と、
塗料を乾燥させる乾燥器16と、カレンダー処理を行う
カレンダー装置17とを備える。
【0059】すなわち、この塗膜形成装置10では、非
磁性支持体1が供給ロール13から巻取りロール12に
向かって搬送されるようになされており、この搬送方向
に沿って塗布装置14、配向用磁石15、乾燥器16、
カレンダー装置17がこの順に配置されている。
【0060】このような塗膜形成装置10では、先ず塗
布装置14によって下層非磁性層用塗料及び上層磁性層
用塗料が非磁性支持体1上に重層塗布される。この塗布
装置14は、図3に示すように、下層非磁性層用塗料を
塗布する第1の押し出しコーター18と、上層磁性層用
塗料を塗布する第2の押し出しコーター19とを備え
る。また、この塗布装置14では、第2の押し出しコー
ター19が非磁性支持体1の送り出し側、第1の押し出
しコーター18が非磁性支持体1の導入側となるように
配置されている。
【0061】これら第1の押し出しコーター18と第2
の押し出しコーター19には、その先端部に塗料が押し
出されるスリット部20、21がそれぞれ形成され、こ
のスリット部20、21の背面側に塗料が供給される塗
料溜まり22、23がそれぞれ設けられている。このよ
うな第1の押し出しコーター18及び第2の押し出しコ
ーター19では、塗料溜まり22、23に供給された下
層非磁性層用塗料又は上層磁性層用塗料が、スリット部
20、21を介してコーター先端部にそれぞれ押し出さ
れる。
【0062】そして、塗料が塗布される非磁性支持体1
は、この第1の押し出しコーター18及び第2の押し出
しコーター19の先端面に沿って図3中矢印Dの方向に
搬送される。
【0063】このようにして搬送される非磁性支持体1
には、まず第1の押し出しコーター18を通過する際
に、スリット部20から押し出された下層非磁性層用塗
料が非磁性支持体1表面に塗布されて下層非磁性層2が
形成される。そして、第2の押し出しコーター19を通
過する際に、スリット部21から押し出された上層磁性
層用塗料が湿潤状態の下層非磁性層2上に塗布され、上
層磁性層3が形成される。
【0064】なお、これら第1の押し出しコーター18
及び第2の押し出しコーター19への塗料の供給は、イ
ンラインミキサーを介して行うようにしても良い。
【0065】このように、下層非磁性層2と上層磁性層
3とが形成された非磁性支持体1は、配向用磁石15、
乾燥器16、カレンダー装置17に順次搬送される。
【0066】配向用磁石15では、上層磁性層3が磁場
配向処理される。なお、配向用磁石15としては、長手
配向用磁石又は垂直配向用磁石、或いは磁気ディスク等
を製造する場合にはランダム配向用磁石が用いられる。
これら配向用磁石15は、上層磁性層3に含有される磁
性粉末の種類に応じて適宜選択される。これら配向用磁
石15の磁場は、一般に20〜10,000ガウス程度
であるのが望ましいが、ランダム配向の場合にはその限
りではない。
【0067】乾燥器16では、当該乾燥器16内の上下
に配されたノズルからの熱風によって、下層非磁性層2
及び上層磁性層3が乾燥される。このときの乾燥条件と
しては、温度が約30〜120℃、乾燥時間が約0.1
〜10秒間程度であることが好ましい。
【0068】そして、乾燥器16を通過した非磁性支持
体1は、さらにカレンダー装置17に導かれ、表面平滑
処理が施される。このカレンダー装置17による表面平
滑処理では、温度、線圧力及び搬送スピード等が重要と
なる。すなわち、表面平滑処理条件として、温度は50
〜140℃、線圧力は50〜1000kg/cm2、搬
送スピードは20〜1000m/分であることが好まし
い。これらの条件を満足しない場合には、上層磁性層3
の表面性が損なわれる虞がある。
【0069】なお、この塗膜形成装置10では、下層非
磁性層用塗料、上層磁性層用塗料が分離された別々のコ
ーターで塗布されていたが、このような塗布装置14に
限定されるものではない。すなわち、図4に示すよう
に、第1の押し出しコーター18と第2の押し出しコー
ター19とが一体化してなる押し出しコーター26を備
える塗布装置27であってもよい。
【0070】また、上述した塗膜形成装置10では、下
層非磁性層用塗料と上層磁性層用塗料とが逐次的に塗布
されるような塗布装置14,27を用いたが、これに限
定されず、下層非磁性層用塗料及び上層磁性層用塗料を
同時に塗布するような塗布装置であってもよい。すなわ
ち、図5に示すように、2つのスリットが近接して形成
された押し出しコーター28を備える塗布装置29を用
い、この押し出しコーター28によって下層非磁性層用
塗料、上層磁性層用塗料を同時に塗布するようにしても
良い。
【0071】この塗布装置29は、押し出しコーター2
8の先端部に塗料が押し出される第1のスリット部30
及び第2のスリット部31が近接して形成され、これら
2つのスリット部30,31の背面側に下層非磁性層用
塗料が供給される第1の塗料溜まり33及び上層磁性層
用塗料が供給される第2の塗料溜まり34がそれぞれ設
けられている。
【0072】この塗布装置29では、第1の塗料溜まり
33に供給された下層非磁性層用塗料が第1のスリット
部30から非磁性支持体1上へ塗布され、下層非磁性層
2が形成される。そして、第2の塗料溜まり34に供給
された上層磁性層用塗料が第2のスリット部31から湿
潤状態の下層非磁性層2上にほぼ同時に塗布され、上層
磁性層3が形成される。
【0073】上述した塗布装置14,27,29におい
て、押し出しコーターが用いられたが、リバースロー
ル、グラビアロール、エアドクターコーター、ブレード
コーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含
浸コーター、トランスファロールコーター、キスコータ
ー、キャストコーター、スプレイコーター等を用いるよ
うにしても良い。このとき下層非磁性層用塗料の塗布方
式と上層磁性層用塗料の塗布方式は同じであっても異な
っていても良い。したがって、例えば、リバースロール
と押し出しコーターとを組合せたり、グラビアロールと
押し出しコーターとを組合わせて上層磁性層用塗料及び
下層非磁性層用塗料を塗布することも可能である。
【0074】なお、フロッピーディスク等の両面に記録
再生を行うような磁気記録媒体を作製する場合には、非
磁性支持体の両主面に対して上層磁性層及び下層非磁性
層を形成することは言うまでもない。
【0075】その後、いわゆる、バーニッシュ処理又は
プレード処理等が必要に応じて施され、所望の形状とさ
れる。また、このように製造された磁気記録媒体は、そ
の形状がテープ状、フィルム状、シート状、カード状、
ディスク状又はドラム状等通常用いられる形状がいずれ
も採用可能である。
【0076】上述したように、本発明に係る磁気記録媒
体は、下層非磁性層2と上層磁性層3とを備えている。
このため、上層磁性層3の表面性は、下層非磁性層2の
影響を受けることとなる。この磁気記録媒体では、下層
非磁性層2中に含有されるカーボンブラックの基本粒径
が15〜50nmであり、該カーボンブラックのDBP
吸油量が90ml/100g以下であるため、下層非磁
性層2は、良好な表面性を有することとなる。このた
め、この磁気記録媒体において、上層磁性層3は、下層
非磁性層2の影響を受けて、良好な表面性を有すること
となる。
【0077】また、この磁気記録媒体において、下層非
磁性層2は、特に、カーボンブラックを、非磁性粉末1
00重量部に対して20〜50重量部の割合で含有する
ことにより、優れた導電性を示すこととなる。このた
め、この磁気記録媒体は、全体として導電性に優れたも
のとなり、帯電が防止されたものとなる。
【0078】このように磁気記録媒体は、上層磁性層3
の表面性が良好であることから、電磁変換特性に優れる
とともにRFエンベロープの形状も良好であり、またド
ロップアウトが抑えられる。また、下層非磁性層2が十
分な導電性を有することから、重層塗布した場合でもテ
ープ全体としての電気抵抗値は低く、帯電によるゴミの
付着を直接の原因とするドロップアウトや塗膜の傷つ
き、放電によるミッシングパルス等の発生が押さえられ
る。
【0079】また、この磁気記録媒体において、高密度
記録領域における電磁変換特性を更に向上させるために
は、上層磁性層3の膜厚が0.5μm以下、好ましく
は、0.1〜0.3μmとされることが望ましい。上層
磁性層3の厚さが0.5μmを越えていると、電気的特
性が劣化し、例えばデジタル記録方式に適用する媒体と
しては不十分になる。
【0080】
【実施例】以下、本発明の実施例を実験結果に基づいて
説明する。
【0081】まず、下記の組成に準じて、上層磁性層用
塗料の各成分を秤とり、連続二軸混練機及びサンドミル
を用いて混練分散することで上層磁性層用塗料を調製し
た。
【0082】 <上層磁性層用塗料組成> 強磁性鉄微粉末 100重量部 (同和鉱業株式会社製、保磁力Hc:2200Oe、BET法による比表面積 :50m2/g、長軸長:0.1μm、針状比:3、飽和磁化量σs:145e mu/g) 塩化ビニル系樹脂 12重量部 (日本ゼオン(株)製、分子量Mw:約30000) ポリウレタン系樹脂 8重量部 (東洋紡績(株)製、分子量Mw:約40000) α−アルミナ(住友化学工業社製、基本粒径:0.2μm) 5重量部 ミリスチン酸(花王株式会社製) 1重量部 ブチルステアレート(松本油脂株式会社製) 1重量部 溶剤 350重量部 (メチルエチルケトン:トルエン:シクロヘキサノン(重量比)=1:1:1 なる組成の混合溶剤) 以下の実験では、この上層磁性層用塗料を用いて重層塗
布型磁気記録媒体を作製し、その特性を評価した。
【0083】実施例1 実施例1ではまず、下記の組成に準じて、下層非磁性層
用塗料の各成分を秤とり、連続二軸混練機及びサンドミ
ルを用いて混練分散することで下層非磁性層用塗料を調
製した。
【0084】 <下層導電層用非磁性塗料組成> 針状α−Fe23 100重量部 (戸田工業社製、BET法による比表面積:52.6m2/g、長軸長:0. 15μm、針状比:6.5) カーボンブラック 24重量部 (キャボット株式会社製、商品名:「BLACK PEARLS 800」、 平均粒径:17nm、DBP吸油量:75ml/100g) 塩化ビニル系樹脂 16重量部 (日本ゼオン社製、分子量Mw:約30000) ポリウレタン樹脂 11重量部 (東洋紡績社製、分子量Mw:約40000) ミリスチン酸(花王株式会社製) 2重量部 ヘプチルステアレート 3重量部 溶剤 303重量部 (メチルエチルケトン:トルエン:シクロヘキサノン(重量比)=1:1:1 なる組成の混合溶剤) このようにして調製された上層磁性層用塗料、下層非磁
性層用塗料のそれぞれに、ポリイソシアネート化合物5
重量部を添加した後、この上層磁性層用塗料、下層非磁
性層用塗料を、ウェット・オン・ウェット塗布方式によ
って、厚さ62μmのポリエチレンテレフタレート支持
体の両面に重層塗布し、塗膜が未乾燥状態である間に磁
場配向処理を行い、続いて乾燥、カレンダーによる表面
平滑処理を行うことで厚さ1.5μmの下層非磁性層、
厚さ0.15μmの上層磁性層を、ポリエチレンテレフ
タレート支持体の両面に形成した。
【0085】このようにして得られた原反テープ状の磁
気記録媒体を、直径3.5インチの円形状に打ち抜き、
磁気ディスクを作製した。
【0086】実施例2〜実施例13 実施例2〜実施例13では、下層非磁性層用塗料に用い
るカーボンブラック微粒子とその配合比率、樹脂及び溶
剤の配合比率として、表1及び表2に記載した組成に準
じること以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを
作製した。すなわち、実施例1〜13はいずれも下層非
磁性層に基本粒径15〜50nm、DBP吸油量90m
l/100g以下のカーボンブラックを用いている。ま
た、実施例1乃至実施例9では、カーボンブラックの配
合比率が針状α−Fe23100重量部に対して20〜
50重量部の範囲にある。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】比較例1〜比較例10 下層非磁性層用塗料に用いるカーボンブラック微粒子と
その配合比率、樹脂及び溶剤の配合比率として、表3及
び表4に明記した組成に準じること以外は、実施例1と
同様にして磁気ディスクを作製した。
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】特性評価試験 上述したように作製した実施例1乃至実施例13、比較
例1乃至比較例10の磁気ディスクについて、面粗れ状
態、表面粗さRa、電磁変換特性、RFエンベロープ、
ドロップアウト個数及び表面電気抵抗値を測定した。な
お、測定方法は以下の通りである。
【0093】面粗れ状態 テープ表面を微分干渉式顕微鏡を用いて観察した。この
とき、表面がかなり平滑な状態であると判断された場合
を○、やや荒れていると判断された場合を△、かなり荒
れていると判断された場合を×と記録した。
【0094】表面粗さRa(nm) JIS B 0601で規定される中心線平均粗さRa
を測定した。この表面粗さRaはテーラーホブソン社製
のタリーステップ粗さ計を用いて測定した。測定条件
は、スタイラスが2.5×0.1μm、針圧が2mg、
カット・オフ・フィルターが0.33Hz、測定スピー
ドが2.5μm/s、基準長が0.5mmである。な
お、粗さ曲線においては、0.01μm以上の凹凸はカ
ットした。
【0095】電磁変換特性(RF出力) フロッピーディスクドライブ(ソニー社製 商品名:M
PF−42B)を改造して、ディスク回転数を3600
rpmとし、ヘッドにギャップ長0.2μmの薄膜ヘッ
ドを用いて、サンプルディスクの最外周トラック上を走
行させ、その際に磁気ヘッドに生ずる35MHzの出力
成分を測定することで評価した。測定データは、実施例
1の磁気ディスクでの値を0dBとしたときの相対値と
して記録した。
【0096】RFエンベロープ 各磁気ディスクを、電磁変換特性試験で使用したフロッ
ピーディスクドライブ上で回転させ、そのときのRFエ
ンベロープをオシロスコープに映し出し、エンベロープ
の最大値と最小値の比率を求めることで評価した。
【0097】ドロップアウト個数 各磁気ディスクについて、1分間あたりに検出される−
12dB/5μsの出力低下の回数(ドロップアウト個
数)を測定した。
【0098】表面電気抵抗値 各磁気ディスクの両端部に一対の電極を配し、これら電
極間に電圧をかけることによって各磁気ディスクを通過
した電流値を測定し、電気抵抗値に換算した。
【0099】これらの測定結果を表5及び表6に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】表5から明らかなように、下層非磁性層
に、基本粒径15〜50nm、DBP吸油量90ml/
100g以下のカーボンブラックを用い、かつ、針状酸
化鉄100重量部に対して20〜50重量部の比率で配
合した実施例1乃至実施例9の磁気ディスクは、いずれ
も良好な表面性を有し、電磁変換特性やRFエンベロー
プも良好であり、ドロップアウトも十分に押さえられ、
なおかつ電気抵抗値が低い。
【0103】これに対して、表6に示すように、下層非
磁性層に配合するカーボンブラックの基本粒径が15n
m未満である比較例1の磁気ディスクでは、カーボン微
粒子の分散が困難であるために下層非磁性層の表面の平
滑性が損なわれ、結果として記録層最表面の粗度が悪化
して、出力の低下やドロップアウトの増加がみられる。
したがって、下層非磁性層に配合するカーボンブラック
の基本粒径は、15nm以上であることが必要であるこ
とが分かる。
【0104】また、下層非磁性層に配合するカーボンブ
ラックの基本粒径が50nmを超えている比較例2〜4
の磁気ディスクでは、カーボンの粒子サイズそのものが
大きすぎるために下層非磁性層の表面に凹凸が生じ、こ
の影響で、上層磁性層の表面の粗度が悪化して出力が低
下する。加えてこのように粒子サイズの大きなカーボン
ブラックでは、塗膜に十分な導電性が付与されず、磁気
ディスクが帯電してゴミが付着し易くなったり、放電に
よるミッシングパルスが発生したりして、ドロップアウ
ト個数が著しく上昇する。したがって、下層非磁性層に
配合するカーボンブラックの基本粒径は、50nm以下
であることが必要であることが分かる。
【0105】比較例5〜10は、いずれも下層非磁性層
に添加したカーボンブラックのDBP吸油量が90ml
/100gを超えている磁気ディスクであるが、このよ
うなカーボンブラックは粒子間のストラクチャー構造が
発達しており、導電性には優れる反面、分散が難しく、
粗大な凝集塊のために平滑な下層非磁性層の表面を得る
ことが困難で、上層磁性層表面の粗度が悪化し、出力の
低下やドロップアウトの増加がみられる。
【0106】特に、比較例9の磁気ディスクでは、下層
非磁性層にKETJEN BLACK EC(ライオン
(株)製)を用いて、針状酸化鉄100重量部に対して
8重量部の少ない配合比率で十分な導電性が発揮されて
いる。しかしながら、この比較例9におけるカーボンブ
ラックは、非常に高いDBP吸油量を有しており、極め
て発達したストラクチャー構造を持っているために、少
ない添加量にも関わらず下層非磁性層の表面の平滑性は
大きく損なわれ、その結果、著しい出力低下が起きてい
る。したがって、下層非磁性層に配合するカーボンブラ
ックのDBP吸油量は、90ml/100g以下である
ことが必要であることが分かる。
【0107】また、実施例10、11の磁気ディスク
は、下層非磁性層に含まれるカーボンブラックの配合比
率が、針状酸化鉄100重量部に対して20重量部未満
のものである。これらはいずれも表面平滑性には優れる
ものの、比較的高い電気抵抗値を示しており、このため
磁気ディスクが帯電してゴミが付着し易くなったり、放
電によるミッシングパルスが発生したりして、ドロップ
アウト個数が比較的多くなっている。さらに、実施例1
2、実施例13は、下層非磁性層に含まれるカーボンブ
ラック配合比率が、針状酸化鉄100重量部に対して5
0重量部を超えているものである。これらの磁気ディス
クでは、下層非磁性層用塗料に添加された過剰量のカー
ボンブラックが十分に分散されず、下層非磁性層表面の
平滑性が損なわれ、記録層表面の粗度が悪化し、比較的
に出力低下やドロップアウトの増加がみられる。
【0108】したがって、実施例1乃至実施例9と実施
例10乃至実施例13とを比較することにより、下層非
磁性層に配合されるカーボンブラックの配合比率は、針
状酸化鉄100重量部に対して、20〜50重量部とす
ることが好ましいことが明らかになった。
【0109】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明に係る磁気記録媒体は、下層非磁性層のカーボンブラ
ックの基本粒子径が15〜50nmであり、且つ、該カ
ーボンブラックのDBP吸油量が90ml/100g以
下であるため、下層非磁性層の導電性が優れたものとな
り、また、下層非磁性層の表面性が優れたものとなる。
このため、この磁気記録媒体は、特に、高記録密度領域
における電磁変換特性に優れ、また、ドロップアウト等
の発生が抑制された信頼性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体の要部断面図であ
る。
【図2】ウェット・オン・ウェット塗布方式で下層導電
層、上層磁性層を形成するための塗膜形成システムを示
す模式図である。
【図3】上記塗膜形成システムの塗布装置の一例を示す
模式図である。
【図4】塗布装置の他の例を示す模式図である。
【図5】塗布装置のさらに他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 非磁性支持体、2 下層導電層、3 上層磁性層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に形成され、カーボンブ
    ラックと非磁性粉末と結合剤とを主体としてなる下層非
    磁性層と、 上記下層非磁性層上に形成され、磁性粉末と結合剤とを
    主体としてなる上層磁性層とを備え、 上記下層非磁性層のカーボンブラックは、基本粒子径が
    15〜50nmであり、且つ、DBP吸油量が90ml
    /100g以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 上記カーボンブラックは、上記下層非磁
    性層の非磁性粉末100重量部に対して20〜50重量
    部の割合で含有されることを特徴とする請求項1記載の
    磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 上記下層非磁性層の非磁性粉末は、針状
    酸化鉄粉末であり、長軸長が0.2μm以下であること
    を特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2383943A2 (en) 2000-03-07 2011-11-02 Nippon Telegraph And Telephone Corporation Semantic information-oriented network (SION)

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