JPH1031818A - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法

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JPH1031818A
JPH1031818A JP18600596A JP18600596A JPH1031818A JP H1031818 A JPH1031818 A JP H1031818A JP 18600596 A JP18600596 A JP 18600596A JP 18600596 A JP18600596 A JP 18600596A JP H1031818 A JPH1031818 A JP H1031818A
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JP
Japan
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magnetic
layer
coating
paint
strain
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JP18600596A
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Takao Kudo
孝夫 工藤
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ウェット・オン・ウェット塗布方式によって
下層非磁性層磁性層を有する磁気記録媒体を製造するに
際して、下層上層界面や上層磁性層表面が良好な状態で
形成できるようにする。 【解決手段】 上層用磁性塗料の複素弾性率G*を、歪
み1000%、角速度2πrad/秒で60秒間の初期
剪断を加えた直後を時間0秒とし、時間0秒における、
歪み1%、角速度2πrad/秒での複素弾性率G*
(0)と、時間0秒から120秒経過した時点におけ
る、歪み1%、角速度2πrad/秒での複素弾性率G
*(120)との比が、G*(0)/G*(120)≦
3.0の条件を満たすように設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体の製
造方法に関し、特に、いわゆるウェット・オン・ウェッ
ト塗布方式による磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビデオテープ、オーディオ用テープ、磁
気ディスク等の磁気記録媒体としては、強磁性酸化鉄、
Co変成酸化鉄、CrO2 、強磁性合金粉末等の強磁性
粉末を結合剤中に分散させることで調製された磁性塗料
を、非磁性支持体上に塗布することで磁性層が形成され
る、いわゆる塗布型の磁気記録媒体が知られており、記
録の高密度化、短波長化に対応する特性を有することが
求められるようになっている。
【0003】この塗布型の磁気記録媒体において、高密
度記録領域での電磁変換特性を改善する手法としては、
磁性層の薄膜化が挙げられる。磁性層を薄膜化すると、
記録時の自己減磁損失や再生時の厚み損失が減少し、電
磁変換特性が効果的に改善されることになる。
【0004】しかしながら、磁性層の厚さを、例えば2
μm以下に薄くすると、非磁性支持体の表面形状が磁性
層の表面に浮き出し易くなり、磁性層の表面が粗れた状
態になる。その結果、スペーシングロスによって電磁変
換特性が悪化したり、ドロップアウトが多発する。
【0005】そこで、塗布型の磁気記録媒体では、磁性
層と非磁性支持体との間に比較的厚さの厚い下層非磁性
層を介在させることにより、非磁性支持体の表面形状が
磁性層表面に表れ難くした、いわゆる重層塗布型の磁気
記録媒体が提案されている。この重層塗布型の磁気記録
媒体では、厚さの薄い磁性層が平滑な表面で形成できる
ので、短波長領域において優れた電磁変換特性が得られ
ることになる。
【0006】ところで、このような重層塗布型の磁気記
録媒体は、これまで、非磁性支持体上に非磁性塗料を塗
布、乾燥させた後、必要に応じてカレンダー処理を施
し、この乾燥が施された下層非磁性層上に磁性塗料を塗
布する、いわゆるドライ・オン・ウェット塗布方式で作
製されている。
【0007】しかしながら、このドライ・オン・ウェッ
ト塗布方式では、下層非磁性層、上層磁性層が別々のラ
インで形成されることになることから、製造工程が煩雑
であるとともに、以下に示す理由から上層磁性層の薄膜
化に限界がある。
【0008】すなわち、上層磁性層を薄く形成するに
は、上層用塗料の塗布量そのものを減らすか、塗料に溶
剤を多量に加えて濃度を希薄にする方法が採られる。
【0009】しかし、塗料の塗布量を減らすと、塗膜が
充分にレペリングしないうちから乾燥が始まるようにな
り、塗布欠陥、例えばスジや刻印のパターン(グラビア
ロール塗布方式の場合)が残り、歩留まりが非常に悪く
なる。
【0010】一方、塗料の濃度を希薄にした場合には、
塗膜に空隙が多く形成されてしまい、強磁性粉末の充填
度が低くなり、塗膜濃度も不十分になる。
【0011】このため、下層塗膜が湿潤状態である間
に、当該下層塗膜上に上層塗膜を形成する、湿潤重層塗
布方式(ウェット・オン・ウェット塗布方式)が提案さ
れている(例えば、特開昭63−191315号公報参
照)。
【0012】このウェット・オン・ウェット塗布方式に
は、下層用塗料を塗布して下層塗膜を形成した後、この
下層塗膜上に上層塗料を塗布するといったように、下層
用塗料と上層用塗料を逐次的に塗布する逐次湿潤方式
と、下層用塗料と上層用塗料がそれぞれ押し出された2
つのスリットが近接して形成された押し出しコータを用
い、この押し出しコータによって下層用塗料と上層用塗
料を同時に塗布する同時重層塗布方式が知られている。
【0013】これらのウェット・オン・ウェット塗布方
式では、上層用塗料の塗布量を少なくしても、下層用塗
料と同時に乾燥されることから、塗膜が充分にレペリン
グしないうちに乾燥してしまうといったことがなく、上
層磁性層が良好な表面性を有して形成される。また、下
層上層間での接着性も良く、良好な走行耐久性が得れ
る。
【0014】ところが、このウェット・オン・ウェット
塗布方式については、下層用塗料、上層用塗料がいずれ
も磁性塗料である場合には、様々な検討がなされている
が、非磁性塗料と磁性塗料を塗布する場合については知
見が不足している。
【0015】非磁性塗料と磁性塗料を塗布する場合に、
下層用塗料、上層用塗料がいずれも磁性塗料である場合
の条件をそのまま適用すると、下層の表面、すなわち下
層と上層の境界面(以下、「下層上層界面」という。)
において乱れが生じ、塗膜にピンホールが生じたり上層
磁性層にハジキが生じるといった現象が見受けられる場
合がある。
【0016】また、塗料物性によっては、上層磁性層に
面粗れが生じ、その面粗れによってスペーシングロス、
RFエンペロープ不良、走行性及び耐久性の劣化、ドロ
ップアウトの増大等が引き起こされる。このような上層
磁性層の面粗れは、それぞれの塗料を単層で塗布した際
には兆候は見られないものであり、重層塗布したときに
はじめて発現する現象である。
【0017】そこで、本発明は、このような従来の実情
に鑑みて提案されたものであり、下層上層界面が滑らか
に、また、上層磁性層が良好な表面性を有して形成で
き、電磁変換特性に優れるとともにRFエンペロープの
形状も良好であり、また、ドロップアウトが抑えられ、
走行耐久性にも優れた磁気記録媒体が高い歩留まりで製
造することができる磁気記録媒体の製造方法を提供する
ことを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述の目
的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ウェット・
オン・ウェット塗布方式においては、塗料の静的粘性と
同時に被膜形成過程における引っ張り、収縮による被膜
のオシレーション(揺れ動き)が塗膜の状態に根幹的に
関与しており、塗料を動的粘弾性物性から規制すること
が重要であるとの知見を得るに至った。
【0019】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、この
ような知見に基づいて完成されたものであって、非磁性
支持体上に、非磁性粉末及び結合剤を溶剤とともに分散
させることで調製された非磁性塗料を塗布して下層塗膜
を形成した後、この下層塗膜が湿潤状態である間に、当
該下層塗膜上に、磁性粉末及び結合剤を溶剤とともに分
散させることで調製された磁性塗料を塗布することで上
層塗膜を形成するに際して、上記磁性塗料の歪み制御式
粘度計によって測定される複素弾性率G*を、歪み10
00%、角速度2πrad/秒で60秒間の初期剪断を
加えた直後を時間0秒とし、時間0秒における、歪み1
%、角速度2πrad/秒での複素弾性率G*(0)
と、時間0秒から120秒経過した時点における、歪み
1%、角速度2πrad/秒での複素弾性率G*(12
0)との比が、G*(0)/G*(120)≦3.0の
条件を満たすように設定することを特徴とするものであ
る。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的な実施の形
態について説明する。
【0021】ウェット・オン・ウェット塗布方式によっ
て下層非磁性層、上層磁性層を有する重層塗布型の磁気
記録媒体を作製するには、非磁性支持体上に、非磁性粉
末及び結合剤を溶剤とともに分散させることで調製され
た下層用の非磁性塗料を塗布して下層塗膜を形成した
後、この下層塗膜が湿潤状態である間に、当該下層塗膜
上に、磁性粉末及び結合剤を溶剤とともに分散させるこ
とで調製された上層用の磁性塗料を塗布することで上層
塗膜を形成する。
【0022】このようなウェット・オン・ウェット塗布
方式では、塗料の組成によっては下層上層界面が乱れ、
また上層磁性層に面粗れが生じ、これによって媒体の電
磁変換特性の劣化、RFエンペロープ不良、走行性及び
耐久性の劣化、ドロップアウトの増大等が引き起こされ
る。本発明者等が、このような下層上層界面の乱れや上
層磁性層の面粗れについて検討を行ったところ、これら
が生じるのは、塗膜形成過程における引っ張りや収縮に
よる塗膜のオシレーション(揺れ動き)が主な原因にな
っているものと推測された。
【0023】そこで、本発明では、このような塗膜のオ
シレーションを抑え、下層上層界面や上層磁性層表面を
良好な状態にするために、上層用磁性塗料について、歪
み制御式粘度計によって測定される複素弾性率G*を、
歪み1000%、角速度2πrad/秒で60秒間の初
期剪断を加えた直後を時間0秒とし、時間0秒におけ
る、歪み1%、角速度2πrad/秒での複素弾性率G
*(0)と、時間0秒から120秒経過した時点におけ
る、歪み1%、角速度2πrad/秒での複素弾性率G
*(120)との比が、G*(0)/G*(120)≦
3.0の条件を満たすように設定することとする。
【0024】以下、この複素弾性率G*(0)及び複素
弾性率G*(120)について詳述する。
【0025】レオロジー(rheology)の分野で
は、物質に力を加えたときの変形を大きく弾性変形と流
動とに分類し、さらに流動を粘性流動と塑性流動に分類
する。ここで、下層非磁性層、上層磁性層を形成するた
めに用いるような、固体粉末が溶剤中に分散された分散
液では、レオロジー的には弾性と粘性とを組み合わせた
ような物性である、粘弾性を示す。
【0026】このような粘弾性体では、一般に、時間と
ともに周期的に変化する応力または歪みを与えたときに
特有の挙動である、動力学的性質を示す。
【0027】たとえば、完全弾性体に歪みγを正弦的に
変化させながら与えると、図1に示すように、歪みγと
応力σは、位相差のない同じ振動数の正弦波として観測
される。また、完全粘性体では、図2に示すように、歪
みγが応力σよりも90°の位相差δをもって遅れて観
測される。
【0028】一方、粘弾性体では、図3に示すように、
歪みγが応力σより0°<σ<90°の位相差δをもっ
て遅れて観測される。すなわち、粘弾性体での応力σ
は、歪みγと同じ位相をもつ実数部(弾性成分)と、位
相が90°進んだ虚数部(粘性成分)とからなる複素数
で全体として歪みγよりδだけ位相が進む。
【0029】ここで、応力σと歪みγの比として弾性率
G*を定義すれば、この場合の弾性率G*は複素数とな
る。このG*は「複素弾性率」と称され、実数部G’は
「貯蔵弾性率(弾性要素)」、虚数部G”は「損失弾性
率(粘性要素)」と称される。応力σと歪みγの位相差
がδである場合、G*、G’、G”は、各々下記の
(2)(3)(4)ように表される。
【0030】 複素弾性率G*=σ/γ ・・・(2) 貯蔵弾性率G’=G*cosδ ・・・(3) 損失弾性率G”=G*sinδ ・・・(4) 塗膜形成過程における上層塗膜のオシレーションを制御
するためには、このうち複素弾性率G*を規制すること
が重要になる。
【0031】すなわち、分散液においては、一般に、一
定の微小歪みγ、一定の角速度ωにおける分散液の複素
弾性率G*の経時変化を見たときに、過大歪みγの初期
剪断を加えた後の複素弾性率G*は時間ととも様々に変
化する。例えば、ある種の上層用の磁性塗料では、図4
に示すように印加歪みγに対して複素弾性率G*は時間
とともに滅少する。なお、この図4の測定に使用した測
定装置、測定モード及びジオメトリは以下の通りであ
る。
【0032】装置:歪み制御式粘度計(レオメトリクス
社製 商品名RFS−II型) 測定モード:ステップ・ストレイン(周波数:2πra
d/秒固定) ジオメトリ:チタン製φ50パラレルプレート この複素弾性率G*の経時変化は、固体粉末間の相互作
用によって形成される3次元的な網目構造の性質を強く
反映し、塗膜のオシレーションを制御する上で重要であ
ると考えられる。
【0033】そこで、本発明では、上層用磁性塗料につ
いて、この複素弾性率の経時変化のうち、歪み1000
%、角速度2πrad/秒で60秒間の初期剪断を加え
た直後を時間0秒とし、時間0秒における、歪み1%、
角速度2πrad/秒での複素弾性率G*(0)と、時
間0秒から120秒経過した時点における、歪み1%、
角速度2πrad/秒での複素弾性率G*(120)と
の比が、G*(0)/G*(120)≦3.0の条件を
満たすように規制する。
【0034】上層用磁性塗料のG*(0)/G*(12
0)をこのように規制すると塗膜形成過程における引っ
張り、収縮に伴った塗膜のオレーションが抑えられるよ
うになる。その結果、塗膜のオレーションによる下層上
層界面の乱れや上層磁性層の面粗れが抑えられ、媒体の
歩留まりが向上し、電磁変換特性、走行耐久性に優れた
重層塗布型の磁気記録媒体が製造されることになる。
【0035】このような上層用磁性塗料の複素弾性率G
*(0)、G*(120)は、塗料に用いる結合剤の種
類や分子量、磁性粉末あるいは非磁性粉末といった固体
粉末成分の含有量、さらに溶剤の種類、分散度合いを制
御することで調製される。
【0036】ここで、上層磁性層、下層磁性層の具体的
な材料は、以下に示すものが挙げられる。
【0037】まず、上層磁性層は強磁性粉末、結合剤に
より構成されるが、強磁性粉末としては、γ−Fe
23、Co含有γ−Fe23、Co被着γ−Fe23
CrO2、又は、マグネットに代表されるフェライト
類、すなわちFe34、Co含有γ−Fe34、Co被
着Fe34等が挙げられる。
【0038】これらフェライトのうち、板状であって板
面に対して垂直方向に磁化容易軸を有するものは強磁性
粉末として好適である。そのような磁化容易軸を有する
フォライトとしては、六方晶系フェライトが挙げられ
る。
【0039】六方晶系フェライトには、バリウムフェラ
イト、ストロンチウムフェライト等があり、鉄元素の一
部が他の元素(たとえば、Ti,Co,Zn,In,M
n,Ge,Nbなど)で置換されていても良い。
【0040】なお、六方晶系フェライトの中でも、とり
わけバリウムフェライトが好ましく、さらにはFeの一
部が少なくともCoおよびZnで置換されたバリウムフ
ェライトであって平均粒径(六方晶系フェライトの板面
の対角線の長さ)が300〜900オングストローム、
板状比(六方晶系フェライトの板面の対角線の長さを板
厚で除した値)が2.0〜10.0、保磁力が450〜
1500Oeのものが好ましい。
【0041】また、強磁性粉末としては、金属磁性粉末
を用いるようにしても良い。金属磁性粉末としては、F
e、Co等の金属粉末の他、Fe−Al系、Fe−Al
−Ni系、Fe−Al−Zn系、Fe−Al−Co系、
Fe−Al−Ca系、Fe−Ni系、Fe−Ni−Al
系、Fe−Ni−Co系、Fe−Ni−Si−Al−M
n系、Fe−Ni−Si−Al−Zn系、Fe−Al−
Si系、Fe−Ni−Zn系、Fe−Ni−Mn系、F
e−Ni−Si系、Fe−Mn−Zn系、Fe−O−N
i−P系、Ni−Co系等、Fe、Ni、Co等を主成
分とする合金粉末が挙げられる。
【0042】このうちFe系の磁性粉末は電気的特性に
優れている。また、耐蝕性および分散性の点では、Fe
−Al系、Fe−Al−Ca系、Fe−Al−Ni系、
Fe−Al−Zn系、Fe−Al−Co系、Fe−Ni
−Si−Al−Zn系、Fe−Ni−Si−Al−Mn
系等のFe−Al系の合金粉末が好ましい。
【0043】これら金属磁性粉末の形状は、平均長軸長
が0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.4μm、
さらに好ましくは0.01〜0.3μmであり、且つ軸
比(平均長軸長/平均短軸長)が12以下、好ましくは
10以下のものがよい。
【0044】例えば、Fe−A1系強磁性金属粉末(F
e:Al重量比:100:5)であって、平均長軸長が
0.16μm、保磁力Hcが1580Oe、飽和磁化量
θsが120emu/gのものが非常に優れた特性を発
揮する。なお、上記平均長軸長及び平均短軸長は、透過
型電子顕微鏡による観察によって求めることができる。
【0045】このように強磁性粉末には、酸化物磁性粉
末や金属磁性粉末が使用できるが、いずれにおいても飽
和磁化量(σs)が70emu/g以上であることが好
ましい。
【0046】飽和磁化量が70emu/g未満である
と、十分な電磁変換特性が得られないことがある。ま
た、高密度記録領域での記録再生を可能にする点から、
BET法による比表面積が45m2/g以上であること
が好ましい。
【0047】次に、結合剤としては、ポリウレタン樹
脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル系共重合体等の塩化
ビニル系樹脂等が代表的である。
【0048】これら樹脂は、−SO3 M、−OSO3
M、−COOM、−PO(OM’)2(但し、Mは水素
原子またはNa、K、Li等のアルカリ金属を表わし、
M’は水素原子またはNa、K、Li等のアルカリ原
子、アルキル基を表わす)及びスルホペタイン基から選
ばれる少なくとも一種の極性基を有する繰返し単位を含
有していることが好ましい。
【0049】これら極性基は、強磁性粉末の分散性を向
上させる作用があり、含有率は0.1〜8.0モル%、
さらには0.2〜6.0モル%であることが好ましい。
極性基の含有率が0.1モル%未満であると、磁性粉末
の分散性が低下する。逆に含有率が8.0モル%が超え
ていると、磁性塗料がゲル化し易くなる。また、樹脂の
重量平均分子量は、15,000〜50,000の範囲
であることが好ましい。
【0050】なお、極性基を含有する塩化ビニル系共重
合体は、例えば塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体
等の水酸基を有する共重合体と、極性基及び塩素原子を
有する化合物との付加反応により合成することができ
る。また、ポリエステルは、ポリオールと多塩基酸との
反応により合成される。なお、他の極性基を導入したポ
リエステルも公知の方法で合成することが可能である。
【0051】ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシ
アネートとの反応により合成される。このポリオールと
しては、ポリオールと多塩基酸との反応によって得られ
るポリエステルポリオールが一般に使用される。なお、
極性基を有するポリエステルポリオールを原料として用
いれば、極性基を有するポリウレタンを合成することが
できる。
【0052】これらの樹脂は、一種類単独であってもよ
く、二種類以上を組み合わせて用いても良い。例えば、
ポリウレタン及び/又はポリエステルと、塩化ビニル系
樹脂とを混合して用いる場合、その重量比は90:10
〜10:90、好ましくは70:30〜30:70の範
囲であることが良い。
【0053】さらに、下記の樹脂を全結合剤の50重量
%以下の使用量で併用するようにしても良い。
【0054】すなわち、併用する樹脂としては、重量平
均分子量が10,000〜200,000である塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデ
ン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、
ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹
脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロ
セルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、フェ
ノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、
フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、尿
素ホルムアミド樹脂、各種の合成ゴム系樹脂等が挙げら
れる。
【0055】結合剤としては、以上のような樹脂が用い
られるが、これら結合剤の上層磁性層への混合量は、強
磁性金属粉末100重量部に対して8〜25重量部が適
当であり、10〜20重量部であることが好ましい。
【0056】また、上層磁性層には、媒体の走行耐久性
等を改善する目的で、通常、この種の磁気記録媒体で用
いられる研磨剤、潤滑剤、耐久性向上剤、分散剤、帯電
防止剤及び導電性微粉末等の添加剤を添加しても良い。
【0057】研磨剤としては、特開平4−214218
号公報に記載されるような固体粉末が使用できる。この
研磨剤の平均粒子径は、0.05μm〜0.6μm、好
ましくは0.05μm〜0.5μm、さらに好ましくは
0.05μm〜0.3μmであることが良い。
【0058】また、この研磨剤の添加量は、(磁性粉末
100重量部に対して)3〜20重量部、好ましくは5
〜15重量部、さらに好ましくは5〜10重量部とする
ことが適当である。
【0059】潤滑剤としては、脂肪酸や脂肪酸エステル
等が単独あるいは混合して使用される。脂肪酸は、一塩
基酸であっても二塩基酸であってもよく、炭素数は6〜
30が好ましく、12〜22であることがより好まし
い。
【0060】これら脂肪酸や脂肪酸エステルの添加量
は、磁性粉末に対して0.2〜10重量%であることが
好ましく、さらには0.5〜5重量%であることが好ま
しい。脂肪酸の添加量が0.2重量%未満である場合に
は、媒体の走行性が十分に改善されず、また、10重量
%を超えると、脂肪酸が磁性層の表面にしみ出したり、
出力低下が生じ易くなる。
【0061】一方、脂肪酸エステルの添加量が0.2重
量%未満であると、特にスチル耐久性が不足する。ま
た、10重量%を超えると、脂肪酸エステルが磁性層の
表面にしみ出したり、出力低下が生じ易くなる。なお、
脂肪酸と脂肪酸エステルとを併用する場合、脂肪酸と脂
肪酸エステルの比率は重量比で10:90〜90:10
が好ましい。
【0062】また、上記脂肪酸、脂肪酸エステルととも
に、公知の潤滑剤を併用しても良い。併用する潤滑剤と
しては、シリコーンオイル、弗化カーボン、脂肪酸アミ
ド、オレフィンオキサイド等が挙げられる。
【0063】硬化剤には、ポリイソシアネート等が使用
される。ポリイソシアネートとしては、例えばトリレン
ジイソシアネート(TDI)と活性水素化合物との付加
体等の芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジ
イソシアネート(HMDI)と活性水素化合物との付加
体等の脂肪族ポリイソシアネート等がある。これらポリ
イソシアネートの重量平均分子量は、100〜3,00
0の範囲であることが望ましい。
【0064】分散剤としては、特開平4−214218
号公報に記載されるような化合物が使用できる。これら
の分散剤は、磁性粉末に対して0.5〜5重量%の範囲
で用いることが適当である。
【0065】帯電防止剤としては、特開平4−2142
18号公報に記載されるような界面活性剤が使用でき
る。これらの帯電防止剤の添加量は、結合剤に対して
0.01〜40重量%の範囲とすることが良い。この
他、導電性微粉末を帯電防止剤として添加しても良い。
【0066】この導電性微粉末としては、例えばカーボ
ンブラック、グラファイト、酸化錫、銀粉、酸化銀、硝
酸銀、銀の有機化合物、銅粉等の金属粒子や、酸化亜
鉛、硫酸バリウム、酸化チタン等の金属酸化物等の顔料
を、酸化錫被膜又はアンチモン固溶酸化錫被膜等の導電
性物質でコーティング処理したものが挙げられる。これ
ら導電性微粉末の平均粒子径としては、5〜700n
m、好ましくは5〜200nmであることが良い。ま
た、これら導電性微粉末の添加量は、磁性粉末100重
量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜7重量部
が適当である。
【0067】一方、下層非磁性層は、非磁性粉末、結合
剤により構成される。
【0068】まず、非磁性粉末としては、カーボンブラ
ック、グラファイト、TiO2、硫酸バリウム、Zn
S、MgCO3、CaCO3、ZnO、CaO、二硫化タ
ングステン、二硫化モリブデン、窒化硼素、MgO、S
nO2、SiO2、Cr23、α−Al23、α−Fe2
3、α−FeOOH、SiC、酸化セリウム、コラン
ダム、人造ダイヤモンド、α−酸化鉄、ざくろ石、ガー
ネット、珪石、窒化珪素、炭化珪素、炭化モリブデン、
炭化硼素、炭化タングステン、チタンカーバイド、トリ
ボリ、珪藻土、ドロマイト等が挙げられる。
【0069】このうち、特にカーボンブラツク、CaC
3、TiO2、硫酸バリウム、α−Al23、α−Fe
23、α−FeOOH、Cr23等の無機粉末が好まし
い。これら非磁性粉末は、Si化合物及び/又はAl
化合物によって表面処理されていても良い。表面処理さ
れた非磁性粉末を用いることにより、上層磁性層の表面
性が改善される。なお、表面処理は、Si、Alの含有
量が非磁性粉末に対して0.1〜10重量%となるよう
に行うことが好ましい。
【0070】また、非磁性粉末の形状は、針状であるこ
とが望ましい。針状の非磁性粉末を用いることで、非磁
性層表面の平滑性が向上し、その結果、この上に積層さ
れる上層磁性層の表面も平滑なものになる。また、非磁
性粉末の長軸長、短軸径及び軸比(長軸径/短軸径)
は、以下の範囲であることが良い。すなわち、非磁性粉
末の長軸径は、0.50μm以下、好ましくは0.40
μm以下、さらに好ましくは0.30μm以下であるこ
とが良い。
【0071】また、短軸径は、0.10μm以下、好ま
しくは0.08μm以下、さらに好ましくは0.06μ
m以下であることが良い。また、軸比(長軸径/短軸
径)は、2〜20、好ましくは5〜15、さらに好まし
くは5〜10が適当である。比表面積は、10〜250
2/g、好ましくは20〜150m2/gであり、さら
に好ましくは30〜100m2/gであることが良い。
【0072】以上のような長軸径、短軸径、軸比及び比
表面積を有する非磁性粉末を使用すると、下層非磁性層
の表面性が良好になり、その上に積層される上層磁性層
の表面性も良好な状態になる。
【0073】非磁性粉末の下層非磁性層への混合量は、
当該非磁性層を構成する全成分の合計量に対して、50
〜99重量%、好ましくは60〜95重量%、さらに好
ましくは70〜95重量%とすることが適当である。非
磁性粉末の混合量をこの範囲とすることで、下層非磁性
層ひいては上層磁性層の表面性が良好なものになる。
【0074】結合剤としては、上層磁性層で例示した樹
脂がいずれも使用可能である。結合剤の混合量は、非磁
性粉末100重量部に対して5〜150重量部、好まし
くは10〜120重量部とすることが良い。
【0075】また、さらに下層非磁性層においても、上
層磁性層で例示した各種添加剤を添加することができ
る。添加量は、下層用非磁性塗料の粘弾性が所定の条件
を満たすのであれば、特に制限はない。
【0076】以上のような材料を用いて下層非磁性層、
上層磁性層を形成するには、まず下層用非磁性塗料、上
層用磁性塗料をそれぞれ調製する。
【0077】上層用磁性塗料は、先に例示した強磁性粉
末、結合剤及び分散剤、潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等
の各種添加剤を溶媒とともに混練して高濃度磁性塗料を
調製した後、この高濃度磁性塗科を希釈、分散させるこ
とで調製される。また、下層用非磁性塗料は、先に示し
た非磁牲粉末、結合剤及び分散剤、潤滑剤、研磨剤、帯
電防止剤等の各種添加剤を溶媒とともに混練して高濃度
非磁性塗料を調製した後、この高濃度非磁性塗料を希
釈、分散させることで調製される。
【0078】この塗料化の溶媒としては、この種の磁気
記録媒体で通常用いられているもの、例えば、特開平4
−214218号公報に記載されるものが用いられる。
この溶媒は、単独で用いても2種類以上を混合して用い
ても構わない。
【0079】また、混練分散機としては、例えば特開平
4−214218号公報に記載されるものがいずれも使
用可能である。特に、0.05〜0.5kW(磁性粉末
1kg当たり)の消費電力負荷が提供できることから、
加圧ニーダー、オープンニーダー、連続ニーダー、二本
ロールミル、三本ロールミルが適当である。
【0080】但し、上層用磁性塗料に用いる結合剤の種
類や分子量、固体粉末成分の含有量、さらに溶剤の種
類、分散度合いは、複素弾性率G*(0)、G*(12
0)が所定の条件を満たすように設定する。
【0081】下層非磁性層、上層磁性層は、このように
して調製された下層用非磁性塗料と上層用磁性塗料を、
非磁性支持体上に塗布、乾燥することで形成される。
【0082】ここで、非磁性支持体としては、例えば、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−
ナフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等の
ポリオレフイン類、セルローストリアセテート、セルロ
ースダイアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミ
ド、アラミド樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック
等が挙げられる。これら非磁性支持体は、単層構造であ
っても多層構造であってもよい。また、例えば、コロナ
放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0083】非磁性支持体の厚みは、特に制限されない
が、例えば、媒体がフィルム状やシート状の場合には、
2〜100μm、好ましくは3〜50μmとすることが
適当である。また、ディスク状やカード状の場合は、3
0μm〜10mm程度、ドラム状の場合にはレコーダ等
の設計に応じて適宜に選択される。
【0084】上層磁性層、下層非磁性層を形成するに
は、例えば図5に示すような塗膜形成システムが用いら
れる。
【0085】すなわち、この塗膜形成システムは、塗膜
が形成される非磁性支持体11が供給ロール13から巻
取りロール12に向かって搬送されるようになされてお
り、この搬送方向に沿って塗布装置14、配向用磁石1
5、乾燥機16、カレンダー装置17がこの順に配置さ
れている。
【0086】このような塗膜形成システムでは、先ず塗
布装置14によって上層用磁性塗料及び下層用非磁性塗
料が非磁性支持体11上に重層塗布される。
【0087】この塗布装置14は、図6に示すように、
下層用塗料を塗布するための下層用押し出しコーター1
8と、上層用塗料を塗布するための上層用押し出しコー
ター19が、上層用押し出しコーター19が非磁性支持
体11の送り出し側、下層用押し出しコーター18が非
磁性支持体11の導入側となるように配置されて構成さ
れている。
【0088】これら下層用押し出しコーター18と上層
用押し出しコーター19には、その先端部に塗料が押し
出されるスリット部20、22が形成され、このスリッ
ト部20、22の背面側に塗料が供給される塗料溜まり
21、23が設けられている。このような押し出しコー
ター18、19によれば、塗料溜まり21、23に供給
された塗料がスリット部20、21を介してコーター先
端部に押し出される。
【0089】一方、塗料が塗布される非磁性支持体11
は、この下層用押し出しコーター18及び上層用押し出
しコーター19の先端面に沿って、下層用押し出しコー
ター18から上層用押し出しコーター19に向かって図
中矢印Dの方向に搬送される。
【0090】このようにして搬送される非磁性支持体1
1には、まず下層用押し出しコーター18を通過する際
に、この下層用押し出しコーター18のスリット部20
から押し出された下層用塗料が表面に塗布され下層塗膜
24が形成される。そして、上層用押し出しコーター1
9を通過する際に、この上層用押し出しコーター19の
スリット部22から押し出された上層用塗料が湿潤状態
の下層塗膜24上に塗布され、2層の塗膜24、25が
逐次形成される。
【0091】なお、これら押し出しコーター18、19
への塗料の供給はインラインミキサーを介して行うよう
にしても良い。
【0092】以上のようにして形成された下層塗膜と上
層塗膜は、配向用磁石15、乾燥器16、カレンダー装
置17に順次搬送される。
【0093】配向用磁石15では、上層塗膜が磁場配向
処理される。なお、配向用磁石15としては、長手配向
用磁石あるいは垂直配向用磁石が上層塗膜に含有される
磁性粉末の種類に応じて適宜選択される。これら配向用
磁石の磁場は、20〜10,00ガウス程度であること
が望ましい。
【0094】乾燥器16では、当該乾燥器16内の上下
に配されたノズルからの熱風によって、下層塗膜、上層
塗膜が乾燥される。このとき乾燥条件は、温度が約30
〜120℃、乾燥時間が約0.1〜10分間程度とする
ことが良い。
【0095】そして、乾燥器16を通過した下層塗膜と
上層塗膜は、さらにカレンダー装置17に導かれ、表面
平滑処理される。このカレンダー装置17による表面平
滑処理条件では、温度、線圧力及び搬送スピード等が重
要となる。すなわち、温度は50〜140℃、線圧力は
50〜1000kg/cm2、搬送スピードは20〜1
000m/分であることが好ましい。これらの条件を満
足しない場合には、上層磁性層の表面性が損なわれる恐
れがある。
【0096】以上のようにして下層非磁性層と上層磁性
層は形成されるが、この塗膜形成過程では、上層用磁性
塗料として複素弾性率G*(0)、G*(120)が所
定の条件を満たすものを用いているので、塗膜のオシレ
ーションが抑えられる。したがって、下層上層界面が滑
らかに、また上層磁性層が良好な表面性を有して形成さ
れる。また、下層上層間での接着性も良好である。
【0097】なお、この塗布システムでは、下層用塗
料、上層用塗料が分離された別々のコーターで塗布され
るが、図7に示すように、下層用押し出しコーターと上
層用押し出しコーターが一体化した形の押し出しコータ
ー26を用いるようにしても良い。
【0098】さらに押し出しコーターの他、リバースロ
ール、グラビアロール、エアドクターコーター、ブレー
ドコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、
含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコー
ター、キャストコーター、スプレイコーター等を用いる
ようにしても良い。このとき下層用塗料と上層用塗料の
塗布方式は同じであっても異なっていても良い。したが
って、例えばリバースロールと押し出しコーターとを組
合せたり、グラビアロールと押し出しコーターとを組合
わせて上層用塗料、下層用塗料を塗布することも可能で
ある。
【0099】また、以上の構成では、下層用非磁性塗料
と上層用磁性塗料が逐次的に塗布されるが、2つのスリ
ットが近接して形成された押し出しコーターを用い、こ
の押し出しコーターによって下層用塗料、上層用塗料を
同時に塗布するようにしても良い。
【0100】すなわち、図8に示すように、同時重層塗
布方式で用いる押し出しコーター27は、先端部に塗料
が押し出される2つのスリット部(下層用スリット部2
8、上層用スリット部30)が近接して形成され、この
2つのスリット部28、30の背面側にそれぞれ下層用
塗料、上層用塗料が供給される下層用塗料溜まり29、
上層用塗料溜まり31が設けられている。この押し出し
コーター27では、この塗料溜まり29、31に供給さ
れた下層用塗料、上層用塗料がスリット28、30を介
して当該コーター先端部に押し出される。
【0101】一方、塗料が塗布される支持体11は、上
記押し出しコーターの先端面に沿って下層用スリット部
28から上層用スリット部30に向かって図中D方向に
搬送される。
【0102】このようにして搬送される非磁性支持体1
1には、下層用スリット部28及び上層用スリット部3
0を通過する際に、この下層用スリット部28から押し
出された下層用塗料が塗布され、この下層用塗料の上
に、上層用スリット30から押し出された上層用塗科が
塗布され、2層の塗膜24、25が同時に形成される。
【0103】このようにして下層非磁性層、上層磁性層
が形成された磁性フィルムは、この後、バーニッシュ処
理あるいはブレード処理等が必要に応じて行われ、所望
の媒体形状とされることで磁気記録媒体となる。
【0104】媒体形状は、テープ状、フィルム状、シー
ト状、カード状、ディスク状、ドラム状等、磁気記録媒
体において通常用いられている形状がいずれも採用可能
である。
【0105】このようにして製造される磁気記録媒体
は、下層上層界面が滑らかであり、上層の表面性が良好
であることから、電磁変換特性に優れるとともにRFエ
ンペロープの形状も良好であり、またドロップアウトが
抑えられる。また、下層上層の接着性が高いので、膜剥
離が起き難く、高い膜強度が得られ、優れた走行而久性
が得られる。
【0106】なお、高密度記録領域における電磁変換特
性を改善するには、上層磁性層の膜厚が0.3μm以
下、好ましくは、0.1〜0.3μmとされていること
が望ましい。上層磁性層の厚さが0.3μmを超えてい
ると、電気的特性が劣化し、例えばデジタル記録方式に
適用する媒体としては不十分になる。
【0107】以上が本実施の形態の基本的な構成の磁気
記録媒体の製造工程であるが、本発明は、非磁性支持体
上の下層上層が設けられていない面にバックコート層を
設けたり、さらに下層と非磁性支持体との間に下引き層
を設けるようにしても良い。これらバックコート層、下
引き層は、通常の方法に準じて形成される。
【0108】
【実施例】以下、本発明の実施例を実験結果に基づいて
説明する。
【0109】まず、本実施例で採用した上層用磁性塗料
の複素弾性率G*(0)とG*(120)の比G*
(0)/G*(120)を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】以下の実験では、このような粘弾性を有す
る上層用磁性塗料を用いて重層塗布型磁気記録媒体を作
製し、その特性を評価した。
【0112】まず、下記の組成に準じて、上層用磁性塗
料、下層用非磁性塗料の各成分を計りとり、それぞれニ
ーダー及びサンドミルを用いて混練分散することで上層
用磁性塗料、下層用非磁性塗料を調製した。
【0113】 <上層用磁性塗料> 強磁性鉄微粉末 100重量部 (保磁力Hc:1600Oe、BET法による比表面積:55m2/g、長軸径 :0.25μm、針状比:10、飽和磁化量σs:120emu/g) 結合剤:スルホン酸カリウム基含有塩化ビニル系樹脂 14重量部 (日本ゼオン社製 商品名MR−110) スルホン酸ナトリウム基含有ポリウレタン樹脂 6重量部 (東洋紡績社製 商品名UR−8700) α−アルミナ 5重量部 ミリスチン酸 1重量部 ブチルステアレート 1重量部 溶剤 350重量部 (メチルエチルケトン:トルエン:シクロヘキサノン(重量比)=1:1:1な る組成の混合溶剤) <下層用非磁性塗料> α−Fe23 100重量部 (BET法による比表面積:52m2/g、長軸径:0.15μm、針状比:6 ) 結合剤:スルホン酸カリウム基含有塩化ビニル系樹脂 14重量部 (日本ゼオン社製 商品名MR−110) スルホン酸ナトリウム基含有ポリウレタン樹脂 6重量部 (東洋紡績社製 商品名UR−8700) ブチルステアレート 1重量部 溶剤 220重量部 (メチルエチルケトン:トルエン:シクロヘキサノン(重量比)=1:1:1な る組成の混合溶剤) このようにして調製された上層用磁性塗料及ひ下層用非
磁性塗料のそれぞれに、ポリイソシアネート化合物(日
本ポリウレタン工業社製 商品名コロネートL)5重量
部を添加した後、複素弾性率G*(0)、G*(12
0)を歪み制御式粘度計によって測定した。
【0114】その結果、上層用磁性塗料はG*(0)/
G*(120)が0.87であった。
【0115】そして、この上層用磁性塗料、下層用非磁
性塗料を、ウェット・オン・ウェット塗布方式によっ
て、厚さ7.5μmのポリエチレンテレフタレート支持
体上に重層塗布し、塗膜が未乾燥状態である間に磁場配
向処理を行い、続いて乾燥、カレンダーによる表面平滑
処理を行うことで下層非磁性層、上層磁性層を形成し
た。なお、膜厚構成(乾燥膜厚)は、下層非磁性層が
1.5μm、上層磁性層が0.15μmとした。
【0116】さらに、上記ポリエチレンテレフタレート
支持体の下層非磁性層及び上層磁性層を形成した側とは
反対側の面に、下記の組成を有するバックコート用塗料
を塗布、乾燥、カレンダーによる表面平滑処理を行うこ
とで厚さ0.8μmのバックコート層を形成し、広幅の
原反磁気テープを得た。
【0117】 <バックコート用塗料> カーボンブラック 40重量部 (平均粒径26nm) 硫酸バリウム 10重量部 (平均粒径300nm) ニトロセルロース 25重量部 ポリウレタン樹脂 25重量部 (日本ポリウレタン工業社製 商品名N−2301) ポリイソシアネート化合物 10重量部 (日本ポリウレタン工業社製 商品名コロネートL) 溶剤 900重量部 (メチルエチルケトン:トルエン:シクロヘキサノン(重量比)=1:1:1 なる組成) このようにして得られた原反磁気テープを、8mmのテ
ープ幅に裁断し、磁気テープを作製した。
【0118】実施例2〜実施例5 上層用磁性塗料として、表2に示すものを用いること以
外は実施例1と同様にして磁気テープを作製した。な
お、磁性塗料、非磁性塗料において、塩化ビニル系樹
脂、ポリウレタン樹脂及び溶剤成分以外の成分組成は実
施例1の場合に準じる。
【0119】比較例1〜比較例5 上層用磁性塗科として表2に示すものを用いること、す
なわち、上層用磁性塗料の複素弾性率G*(0)とG*
(120)の比G*(0)/G*(120)を所定範囲
外にしたこと以外は実施例1と同様にして磁気テープを
作製した。
【0120】なお、磁性塗料、非磁性塗料を調製するに
際して、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂及び溶剤
成分以外の成分組成は実施例1の場合に準じる。
【0121】作製した磁気テープについて、面粗れ状
態、表面粗さRa、電磁変換特性、RFエンペロープ及
びドロップアウト個数を測定した。なお、測定方法は以
下の通りである。
【0122】面粗れ状態:テープ表面を微分干渉式顕微
鏡を用いて観察した。このとき、表面がかなり平滑な状
態であると判断された場合を「O」、面粗れがやや生じ
ていると判断された場合を「△」、面粗れがかなり生じ
ていると判断された場合を「×」と記録した。
【0123】表面粗さRa(nm):JIS B 060
1で規定される中心線平均粗さRaである。この表面粗
さRaはテーラーホプソン社製のタリーステップ粗さ計
を用いて測定した。測定条件は、スタイラスが2.5×
0.1μm、針圧が2mg、カット・オフ・フィルター
が0.33Hz、測定スピードが2.5μm/s、基準
長が0.5mmである。なお、粗さ曲線においては、
0.01μm以上の凹凸はカットした。
【0124】電磁変換特性:クロマS/N(C−S/
N)、ルミS/N(L−S/N)を測定することで評価
した。なお、クロマS/Nは、ノイズメーター(シバソ
ク社製)を用い、100%ホワイト信号における、基準
テープ(ソニー社製)とサンプルテープのS/Nの差を
求めることで測定した。また、ルミS/Nは、ノイズメ
ーター(シバソク製)を用い、クロマ信号における、基
準テープ(ソニー社製)とサンブルテープのS/Nの差
を求めることで測定した。これらの測定データは、リフ
ァレンステープ(ソニー社製)での値を1dBとしたと
きの相対値として記録した。
【0125】RFエンペロープ:サンプルテープを、8
ミリデッキ(ソニー社製 商品名S−550)上で走行
させ、そのときのRFエンペロープをオシロスコープに
映し出し、エンペロープの最大値と最小値の比率を求め
ることで評価した。
【0126】ドロッブアウト個数:シバソク社製 商品
名VHO1BZの測定機によって、1分間あたりに検出
される−12dB/5μsの出力低下の回数(ドロップ
アウト個数)を測定した。これらの測定結果を表2に示
す。
【0127】
【表2】
【0128】表2に示すように、上層用磁性塗料とし
て、複素弾性率G*(0)とG*(120)の比G*
(0)/G*(120)が所定の条件を満たすものを用
いた実施例1〜実施例5の磁気テープは、良好な表面性
を有し、また電磁変換特性やRFエンペロープも良好で
あり、ドロップアウトも十分に抑えられている。
【0129】これに対して、上層用磁性塗料の複素弾性
率G*(0)とG*(120)の比G*(0)/G*
(120)が所定の条件を満たしていない比較例1〜比
較例5の磁気テープは、上層磁性層の表面の面粗れが生
じており、このため電磁変換特性が不十分であり、また
ドロップアウトも多発する。また、RFエンペロープの
形状も不良である。
【0130】このことから、上層用磁性塗料の複素弾性
率G*(0)とG*(120)の比G*(0)/G*
(120)を規制することは、特性の良好な重層塗布型
の磁気記録媒体を製造する上で有効であることがわかっ
た。
【0131】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、重
層塗布型の磁気記録媒体を製造するに際して、上層用磁
性塗料として、複素弾性率G*(0)とG*(120)
の比G*(0)/G*(120)が所定の条件を満たす
ものを用いるので、下層上層界面が滑らかに、また上層
が良好な表面性を有して形成される。
【0132】したがって、本発明によれば、電磁変換特
性に優れるとともにRFエンペロープの形状も良好であ
り、またドロップアウトが抑えられ、走行性、耐久性に
も優れ、高密度記録に好適な磁気記録媒体が高い歩留ま
りで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】完全弾性体のオシレーションの波形を示す特性
図である。
【図2】完全粘性体のオシレーションの波形を示す特性
図である。
【図3】粘弾性体のオシレーションの波形を示す特性図
である。
【図4】歪み制御式粘度計で測定される、角速度2πr
ad/秒における、印加歪みγ及び複素弾性率G*と経
過時間との関係を示す特性図である。
【図5】ウェット・オン・ウェット塗布方式で下層非磁
性層、上層磁性層を形成するための塗膜形成システムを
示す模式図である。
【図6】上記塗膜形成システムの塗布装置の一例を示す
模式図である。
【図7】塗布装置の他の例を示す模式図である。
【図8】塗布装置のさらに他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
11 非磁性支持体、12,13 ロール、14 塗布
装置、15 配向用磁石、16 乾燥機、17 カレン
ダー装置、18 下層用押し出しコーター、19上層用
押し出しコーター、24 下層塗膜、25 塗膜

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に、非磁性粉末及び結合
    剤を溶剤とともに分散させることで調製された非磁性塗
    料を塗布して下層塗膜を形成した後、この下層塗膜が湿
    潤状態である間に、当該下層塗膜上に、磁性粉末及び結
    合剤を溶剤とともに分散させることで調製された磁性塗
    料を塗布することで上層塗膜を形成するに際して、 上記磁性塗料の歪み制御式粘度計によって測定される複
    素弾性率G*を、歪み1000%、角速度2πrad/
    秒で60秒間の初期剪断を加えた直後を時間0秒とし、
    時間0秒における、歪み1%、角速度2πrad/秒で
    の複素弾性率G*(0)と、時間0秒から120秒経過
    した時点における、歪み1%、角速度2πrad/秒で
    の複素弾性率G*(120)との比が下記(1)の条件
    を満たすように設定することを特徴とする磁気記録媒体
    の製造方法。 G*(0)/G*(120)≦3.0 ・・・(1)
JP18600596A 1996-07-16 1996-07-16 磁気記録媒体の製造方法 Withdrawn JPH1031818A (ja)

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WO2016084718A1 (ja) * 2014-11-26 2016-06-02 コニカミノルタ株式会社 光学フィルムの製造方法

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WO2016084718A1 (ja) * 2014-11-26 2016-06-02 コニカミノルタ株式会社 光学フィルムの製造方法
JPWO2016084718A1 (ja) * 2014-11-26 2017-09-07 コニカミノルタ株式会社 光学フィルムの製造方法

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