JPH1132759A - グルコースを認識する新規なレクチン - Google Patents

グルコースを認識する新規なレクチン

Info

Publication number
JPH1132759A
JPH1132759A JP9208580A JP20858097A JPH1132759A JP H1132759 A JPH1132759 A JP H1132759A JP 9208580 A JP9208580 A JP 9208580A JP 20858097 A JP20858097 A JP 20858097A JP H1132759 A JPH1132759 A JP H1132759A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
amino acid
acid sequence
formula
dna
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9208580A
Other languages
English (en)
Inventor
Teizo Fujita
禎三 藤田
Eiji Sekine
英治 関根
Misao Matsushita
操 松下
Yuichi Endo
雄一 遠藤
Tsugio Mizuochi
次男 水落
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP9208580A priority Critical patent/JPH1132759A/ja
Publication of JPH1132759A publication Critical patent/JPH1132759A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】グルコースに特異的な結合能を有する新規なマ
ボヤ体液由来蛋白質(レクチン)、それをコードするD
NA、マボヤ体液をマンナンに接触させ、マンノース、
またはグルコース溶液で溶出することを特徴とする当該
蛋白質の製造方法、および当該蛋白質の一部、または全
部を含有する感染症予防治療剤。 【効果】本発明の蛋白質(レクチン)は、病原微生物表
面の糖鎖末端のグルコースに特異的に結合することを特
徴とし、結合の結果病原微生物を不活化し、感染症の予
防治療剤として有用である。本発明の蛋白質は、アミノ
酸配列および塩基配列の解明により、遺伝子工学的手法
による製造が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、病原微生物表面の
糖鎖末端のグルコースに特異的な結合能を有する新規な
マボヤ体液由来蛋白質、それをコードするDNA、当該
蛋白質の製造方法、および当該蛋白質を含有する感染症
予防治療剤に関する。
【0002】
【従来技術】動物レクチンは、病原微生物表面の糖鎖を
認識するマンノース結合蛋白質(MBP)[別称、マン
ノース結合レクチン(MBL)]やコングルチニンなど
のC型レクチンがあり、生体防御機構として働いてい
る。MBPは、病原微生物表面の糖鎖末端のマンノース
やN−アセチルグルコサミンに特異的に結合し、これら
に富んだ病原微生物(細菌、真菌、酵母、ウイルス、寄
生体を含む)を不活化することができる。また、これら
のレクチンはオプソニン活性を有し、好中球、マクロフ
ァージによる貪食を高めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、感染
症の予防または治療に有用な、表面上でグルコースを発
現している病原体に特異的に結合する新規なグルコース
結合蛋白質、ならびにその製造方法を提供することにあ
る。また、本発明の目的は、この新規蛋白質を遺伝子工
学手法により製造するために、当該蛋白質のアミノ酸配
列を明らかにし、当該蛋白質をコードするDNAを提供
することにある。さらに、本発明の目的は新規な感染症
予防治療剤を提供することにある。たとえば、上記グル
コース結合蛋白、または全組換え蛋白質は、表面上でグ
ルコースを発現する病原体(細菌、真菌、酵母、ウイル
ス、寄生体を含む)、特に真菌を標的とするのに有用で
ある。それゆえ、グルコース結合蛋白を、病原体を死
滅、もしくは増殖を抑制することのできる分子と結合
し、ハイブリット蛋白を構築することで、優れた感染症
治療剤を提供することができる。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、マボヤ体
液からマンナンに結合し、マンノース、またはグルコー
スで溶出される新規な蛋白質を見出し、この蛋白質が、
グルコースで構成されるオリゴ糖(グルカン)に特異的
に結合することを見出した。さらに、本発明者らは、当
該蛋白質をコードするcDNAのクローニングを行い、
そのcDNAの塩基配列から当該新規蛋白質のアミノ酸
配列を明らかにした。
【0005】本発明は、実質的に式(I)に示されるア
ミノ酸配列を有してなる蛋白質に関する。
【0006】
【化4】 P G W Y L A D N G Y E Y W M S S S H I G Y Y S T G K E I C E D K R A R L A T I G V R D P E I R S E I V Q N V V G D S H L W V W I G L D R L D T I A G W T W L D G V A S T S E N T A W G P N E P N D S G N E R C G Q L N R D S N Y L I N D K S C L A S C A A L C E R K H C F I (I)
【0007】当該蛋白質は、少なくとも式(I)に示さ
れるアミノ酸配列を含んでいればよい。式(I)は糖鎖
認識ドメイン(または炭水化物認識ドメイン)を示す。
直接グルコースと結合するグルコース結合ドメインは、
この領域内にある。
【0008】本発明は、実質的に式(II)に示されるア
ミノ酸配列を有してなる蛋白質に関する。
【0009】
【化5】 E D E Q Y L A C R R V T K A E N T T E H D G S F Y Q D A I R I L Q G R V E H L E I Q V A G F E E E L N E E F Q E M K R R V D V L W Q R A S N A T E P G W Y L A D N G Y E Y W M S S S H I G Y Y S T G K E I C E D K R A R L A T I G V R D P E I R S E I V Q N V V G D S H L W V W I G L D R L D T I A G W T W L D G V A S T S E N T A W G P N E P N D S G N E R C G Q L N R D S N Y L I N D K S C L A S C A A L C E R K H C F I (II)
【0010】ここで「実質的に」とは、式(I)、また
は(II)の各式に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質
に限定されず、当該アミノ酸配列を有する蛋白質と同様
な生物学的性質(グルコースに特異的な糖(鎖)結合
能)を有する限り、当該アミノ酸配列中のアミノ酸の幾
つかについて欠質、置換、もしくは付加があってもよい
ことを意味する。
【0011】本発明の蛋白質は、上記アミノ酸配列を有
してなるポリペプチドに、さらに糖が結合したものであ
ってもよい。上記式中で用いた略号は、次の意味を有す
る。 A Ala アラニン L Leu ロイシン R Arg アルギニン M Met メチオニン N Asn アスパラギン K Lys リジン D Asp アスパラギン酸 F Phe フェニルアラニン C Cys システイン P Pro プロリン Q Gln グルタミン S Ser セリン E Glu グルタミン酸 T Thr スレオニン G Gly グリシン W Trp トリプトファン H His ヒスチジン Y Tyr チロシン I Ile イソロイシン V Val バリン
【0012】本発明の蛋白質の好適な例として、次の性
質を有するマボヤ体液由来の蛋白質GBL(グルコース
結合レクチン)が挙げられる。 マボヤ体液をマンナンに接触させ、マンノース、また
はグルコース溶液で溶出することにより得ることができ
る。 還元下のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法
により測定した分子量が約36kDaである。 N末端に式(III)に示されるアミノ酸配列を有す
る。
【0013】
【化6】 Glu Asp Glu Gln Tyr Leu Ala Cys Arg Arg Val Thr Lys Ala Glu Asn Thr Thr Glu His (III)
【0014】等電点:4.57 蛋白質GBLは、グルコースと特異的に結合する。GB
Lは、グルコースを介して糖鎖と結合すると考えられ
る。また、GBLはマンノース、N−アセチルグルコサ
ミン、およびガラクトースに結合せず、N−グリコシド
型糖鎖の高マンノース型、複合型、および混合型にも結
合しない。
【0015】本発明の新規蛋白質は、マボヤ体液から精
製することにより、あるいは、組換えDNA技術、ポリ
ペプチド合成法などの常法によって調整することができ
る。
【0016】本発明の蛋白質をマボヤ体液から調整する
場合は、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過、ゲ
ル濾過、アフィニティクロマトグラフィー、吸着剤処
理、塩析、等電点沈殿法、ポリエチレングリコール分画
法などの公知の蛋白質の精製法を適宜組合わせることに
より得ることができる。好ましくは、マボヤ体液をマン
ナンに接触させ、グルコース溶液で溶出することにより
調整することができる。
【0017】以下に、本発明の蛋白質の好適な調整方法
を示す。マンナンに接触させるマボヤ体液画分は、マボ
ヤ体液をポリエチレングリコール分画処理した沈殿画分
が好ましい。詳細には、遠心分離にて血球を除いたマボ
ヤ体液に、分子量4000のポリエチレングリコールを
終濃度7%になるように添加し、沈殿画分を回収する。
このポリエチレングリコール分画処理は2〜8℃好まし
くは4℃付近で行う。
【0018】得られた沈殿画分を緩衝液に溶解して、マ
ンナンに接触させる。緩衝液は、塩濃度0.1〜2M、
pH6〜8が好ましく、具体的には1〜1.5M塩化ナ
トリウム含有20mM〜100mM Tris−塩酸緩
衝液(pH7〜8)が例示される。マンナンは、不溶性
担体にマンナンを結合したものが好適に使用され、例え
ばマンナン−セファロースなどのカラムが用いられる。
次いで、マンノース、またはグルコース溶液で溶出する
ことにより、本発明蛋白質を含有する分画が得られる。
マンノース、またはグルコース溶液は、好ましくは0.
1〜0.5M、より好ましくは0.3Mのマンノース、ま
たはグルコースを含有する緩衝液であり、緩衝液として
は、前記のものが好適に使用される。
【0019】組換えDNA技術により本発明の蛋白質を
調整する場合には、常法に従って、本発明蛋白質をコー
ドするDNA(後述)を含む発現ベクターで形質転換さ
れた宿主細胞を培地中で培養し、該培養物から本発明蛋
白質を採取することによって調整することができる。
【0020】宿主細胞としては、微生物[細菌(例え
ば、大腸菌、枯草菌)、酵母(例えば、サッカロミセス
属)]、動物細胞(例えば、COS細胞、チャイニーズ
ハムスター卵巣(CHO)細胞)、昆虫細胞(例えば、
Sf細胞)などが使用できる。
【0021】ベクターとしては、pBR322、pBR325、pUC1
2、pUC13などの大腸菌由来のプラスミド、pUB110、pTP
5、pC194などの枯草菌由来のプラスミド、pSH19、pSH15
などの酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテ
リオファージ、バキュロウイルス(核多角体ウイルス)
などの昆虫ウイルスなど、公知の入手可能なベクターを
使用することができる。
【0022】本発明はまた、式(I)に示されるアミノ
酸配列を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基
配列を含むDNAに関する。当該DNAは、上記塩基配
列を含んでいれば、いかなるDNAであってもよいが、
少なくとも式(I)に示されるアミノ酸配列をコードす
る塩基配列を有するDNAである。式(I)に示される
アミノ酸配列をコードする塩基配列としては、式(I)
に示されるアミノ酸配列をコードしうる塩基配列であれ
ば特に限定されないが、具体的には、図2に示される塩
基配列中、5’末端から数えて塩基番号322〜723
で示される塩基配列が例示される。
【0023】また、本発明は、式(II)に示されるアミ
ノ酸配列を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩
基配列を含むDNAに関する。当該DNAは、上記塩基
配列を含んでいれば、いかなるDNAであってもよい
が、少なくとも式(II)に示されるアミノ酸配列をコー
ドする塩基配列を有するDNAである。式(II)に示さ
れるアミノ酸配列をコードする塩基配列としては、式
(II)に示されるアミノ酸配列をコードしうる塩基配列
であれば特に限定されないが、具体的には、図2に示さ
れる塩基配列中、5’末端から数えて塩基番号103〜
723で示される塩基配列が例示される。また、当該D
NAは、その5’末端に、シグナルペプチドをコードす
る塩基配列を含有していてもよい。シグナルペプチドの
由来は特に限定されないが、好ましくは、図2中の下線
で示されるアミノ酸配列(アミノ酸番号1〜17で示さ
れる配列)をコードするDNAであり、より好ましく
は、図2に示される塩基配列中、5’末端から数えて塩
基番号52〜102で示される塩基配列が例示される。
【0024】一般に、遺伝子組換えの技術分野では、遺
伝子暗号の縮重に従い、遺伝子から産生される蛋白質の
アミノ酸配列を変えることなく、その遺伝子のDNA配
列の少なくとも一つの塩基を他の塩基に置換することが
できる。従って、本発明のDNAは、図2で示される塩
基配列を遺伝暗号に基ずく置換によって変化させた塩基
配列を有するものをも包含する。
【0025】また、本発明のDNAは、いかなる方法で
得られるものであってもよい。例えばmRNAから調整
される相補DNA(cDNA)、ゲノムDNAから調整
されるDNA、化学合成によって得られるDNA、RN
AまたはDNAを鋳型としてPCR法で増幅させてえら
れるDNA、およびこれらの方法を適当に組み合わせて
構築されるDNAをも全て包含するものである。
【0026】従って、本発明のDNAは、常法に従って
本発明の蛋白質のmRNAからcDNAをクローン化す
る方法、ゲノムDNAを単離してスプライシング処理す
る方法、科学合成する方法等により取得することができ
る。
【0027】(1)例えば、本発明蛋白質のmRNAか
らのcDNAクローニングは、常法(Sambrook, Fritsc
h and Maniatis, Molecular Cloning, 2nd Ed. Cold S
pring Harbor Lab. Press, 1989)に従って行うことが
できる。具体的には、以下の方法が例示される。まず、
マボヤ hepato-pancreasからmRNAを調整する。m
RNAの調整は、例えば、グアニジンチオシアネート法
[Chirgwin, J. M. etal., Biochem., 18, 5294 (197
9)]、熱フェノール法、もしくは、AGPC法等の公知
の方法を用いて調製した全RNAを、オリゴ(dT)セ
ルロースや、ポリU−セファロース等によるアフィニテ
ィクロマトグラフィーにかけることによって行うことが
できる。次いで、得られたmRNAを鋳型として、例え
ば、逆転写酵素を用いる等の公知の方法[例えば、Okay
ama, H. らの方法[Okayama, H.et al., Mol. Cell. Bi
ol., 2, 161 (1982) 及び、同誌 3, 280 (1983)]や、G
ubler, H. とHoffman, B. J. の方法[Gubler, H. and
Hoffman, B. J., Gene, 25, 263 (1983)]が例示され
る。]でcDNA鎖を合成し、cDNAの二本鎖cDN
Aへの変換を行う。このcDNAをプラスミドベクタ
ー、もしくは、ファージベクターに組み込み、大腸菌を
形質転換して、あるいは、インビトロパッケージング
後、大腸菌に形質移入(トランスフェクト)することに
よりcDNAライブラリーを作製する。ここで用いられ
るプラスミドベクターとしては、宿主内で複製保持され
るものであれば特に制限されず、また、用いられるファ
ージベクターとしても宿主内で増殖できるものであれば
良い。常法的に用いられるクローニング用ベクターとし
て、pUC119、λgt10、λgt11、λZAP
等が例示される。ただし、後述免疫学的スクリーニング
に供する場合は、宿主内で本発明蛋白質の遺伝子を発現
させうるプロモーターを有したベクターであることが好
ましい。
【0028】プラスミドにcDNAを組み込む方法とし
ては、例えば、Maniatis, T.ら、モレキュラークローニ
ング、ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Clon
ing,A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Labora
tory, p.239 (1982) に記載の方法などが挙げられる。
また、ファージベクターにcDNAを組み込む方法とし
ては、Hyunh, T. V. らの方法[Hyunh, T. V., DNA Clo
ning, a practical approach, 1, 49 (1985)]などが挙
げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例
えば、宝酒造等)を用いることもできる。このようにし
て得られる組換えプラスミドやファージベクターは、原
核細胞(例えば、E.Coli HB101、DH5、
またはMC1061/P3等)等の適当な宿主に導入す
る。
【0029】プラスミドを宿主に導入する方法として
は、Maniatis, T.らのモレキュラークローニング、ア・
ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning, A Lab
oratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory, p.2
39 (1982) に記載の塩化カルシウム法、塩化カルシウム
法/塩化ルビジウム法、またはエレクトロポレーション
法等が挙げられる。また、ファージベクターを宿主に導
入する方法としては、ファージDNAをインビトロパッ
ケージングした後、増殖させた宿主に導入する方法等が
例示される。インビトロパッケージングは、市販のイン
ビトロパッケージングキット(例えば、ストラタジーン
社製、アマシャム社製等)を用いることによって簡便に
行うことができる。
【0030】上記の方法によって作製されたcDNAラ
イブラリーから、本発明の蛋白質をコードするcDNA
を単離する方法は、一般的なcDNAスクリーニング法
を組み合わせることによって行うことができる。例え
ば、別個に本発明蛋白質のアミノ酸配列に対応すると考
えられるオリゴヌクレオチドを化学合成した後、これを
32Pでラベルしてプローブとなし、公知のコロニーハイ
ブリダイゼーション法[Crunstein, M. and Hogness,
D. S., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 72, 3961 (197
5)]、またはプラークハイブリダイゼーション法[Mole
cular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Ha
rbor Laboratory, p.239 (1982)]により、目的のcD
NAを含有するクローンをスクリーニングする方法、P
CRプライマーを作製し、本発明の蛋白質の特定領域を
PCR法により増幅し、該領域をコードするDNA断片
を有するクローンを選択する方法等が挙げられる。ま
た、cDNAを発現しうるベクター(例えば、λgt1
1ファージベクター)を用いて作製したcDNAライブ
ラリーを用いる場合には、本発明蛋白質に対する抗体を
用いる抗原抗体反応を利用して、目的のクローンを選択
することができる。大量にクローンを処理する場合に
は、PCR法を利用したスクリーニング法を用いること
が好ましい。
【0031】この様にして得られたDNAの塩基配列は
マキサム・ギルバート法[Maxam, A. M. and Gilbert,
W., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 74, 560 (197
7)]、あるいはファージM13を用いたジデオキシヌク
レオチド合成鎖停止の方法[Sanger, F.ら、Proc. Nat
l. Acid. Sci. USA, 74, 5463-5467 (1977)]によって
決定することができる。本発明のDNAは、その全部ま
たは一部を上記のようにして得られるクローンから制限
酵素により切り出すことにより取得できる。
【0032】(2)また、マボヤhepatopancreasのゲノ
ムDNAから本発明の蛋白質をコードするDNAを単離
することによる調整方法としては、例えば以下の方法が
例示される。マボヤhepatopancreasを好ましくはSD
S、またはプロテナーゼK等を用いて溶解し、フェノー
ルによる抽出を反復してDNAの脱蛋白質を行う。RN
Aを好ましくはリボヌクレアーゼにより消化する。得ら
れるDNAを適当な制限酵素により部分消化し、得られ
るDNA断片を適当なファージ、またはコスミドで増幅
し、ライブラリーを作製する。次に、目的の配列を有す
るクローンを、例えば放射性標識されたDNAプローブ
を用いる方法等により検出し、該クローンから本発明の
蛋白質のDNAの全部、または一部を制限酵素等により
切り出し取得する。
【0033】(3)また、化学的合成による本発明のD
NAの製造は、図1に示される塩基配列をもとにして、
常法に従って行うことができる。
【0034】本発明の蛋白質は、表面上でグルコースを
発現している病原微生物に特異的に結合し、不活化する
作用を有するので、細菌、ウイルス、真菌などの病原微
生物による感染症の予防、または治療に有効である。細
菌としては、サルモネラ、大腸菌、緑膿菌などのグラム
陰性菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌などのグラ
ム陽性菌、ウイルスとしては、ヘルペスウイルス、HI
Vなど、真菌としては、カンジダ、アスペルギルス、ク
リプトコッカス、ムコール、トリコスポロンなどが挙げ
られる。これらの病原微生物による感染症としては、脳
髄膜炎、肺炎、尿路感染症、急性胃腸炎、食中毒、敗血
症、帯状疱疹などのヘルペスウイルス感染症、カンジダ
症などの真菌症などが挙げられる。
【0035】本発明の蛋白質は、薬理的に許容される添
加剤(例えば、担体、賦形剤、希釈剤など)などの製薬
上必要な成分と適宜混合し、ゲル、軟膏、粉末、顆粒、
錠剤、カプセル剤、注射剤などの形態で医薬組成物とし
て、経口的、または非経口的(静脈内、筋肉内、または
局所的)に投与することができる。好ましくは、生理食
塩水、注射用蒸留水、滅菌精製水などの希釈剤に溶解し
た、またはそれを凍結乾燥した注射剤の形態である。
【0036】当該製剤には、安定化剤を配合してもよ
い。安定化剤は、グルコースを除く血漿蛋白製剤などの
安定化剤として通常使用されるものであれば特に限定さ
れない。例えば、ショ糖、マルトース等の糖類、マンニ
トール、ソルビトール等の糖アルコール、グリシン、ア
スパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸、塩化ナトリ
ウム、クエン酸ナトリウム、リン酸塩等の塩、リン脂
質、アルブミン、ゼラチン、クエン酸、リンゴ酸などを
用いることができる。
【0037】上記製剤中には、本発明の蛋白質の有効量
が配合される。投与量は、投与経路、患者の症状、体
重、あるいは年齢などによって異なる。また、本発明の
蛋白質はヒト血漿由来の成分ではないため、投与に際し
ては、慎重を要することがある。
【0038】
【実施例】本発明をより詳細に説明するために、実施例
を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるも
のではない。
【0039】実施例1:GBL(グルコース結合レクチ
ン)の精製 マボヤ体液を3000rpm、10分間の遠心操作を
し、この上清にポリエチレングリコール4000を終濃
度7%となるように加え、4℃で1時間、反応させた。
9000rpm、20分間の遠心操作で沈殿画分を得
た。これを20mMTris、1M塩化ナトリウム、5
0mM塩化カルシウム含有緩衝液(pH7.8)に溶解
後、酵母マンナンセファロースカラムにアプライした。
前記緩衝液でカラムを洗浄後、0.3Mマンノース、ま
たはグルコースを含有する前記緩衝液で本発明の蛋白質
GBL(グルコース結合レクチン)を溶出させた。溶出
されたGBLを、25mM Tris、25mM塩化ナ
トリウム、5mM塩化カルシウム含有緩衝液(pH7.
8)で透析し、MonoQカラム(陰イオン交換樹脂)
を用いて精製した。得られたGBLは、還元下のSDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAG
E)で36kDaのバンドとして認められた。GBL
は、N末端に次式(III)で示されるアミノ酸配列を有
していた。
【0040】
【化7】 Glu Asp Glu Gln Tyr Leu Ala Cys Arg Arg Val Thr Lys Ala Glu Asn Thr Thr Glu His (III)
【0041】実施例2:GBLのcDNAクローニング GBLのcDNAクローニングは、標準的な方法(Samb
rook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning, 2nd
Ed. Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に従って
行った。λZAPをベクターとして、マボヤhepatopanc
reas cDNAライブラリーを構築した。実施例1で精製し
たGBL蛋白質を、クリーブランドの方法[Cleveland,
D. W. Methods in Enzymology, 96, 222-229 (1983)]
に基づいてstaphylo-coccus aureus V8プロテアーゼで
消化し、2つの断片化されたGBL蛋白質を得た。この
アミノ酸配列を決定し、図1の下線、および二重下線で
示される結果を得た。実施例1で示されたGBLのN末
端アミノ酸配列、および図1の二重下線で示されるアミ
ノ酸配列に基づいてPCRプライマーを作製し、GBL
のN末端領域の蛋白質をコードするDNA(506b
p)を増幅した。このDNAをプローブとして、λZA
Pをベクターとしたマボヤhepatopancreas cDNAライブ
ラリーをスクリーニングした。プラークを転写したナイ
ロンメンブレンとプローブとのハイブイダイゼーション
は、5×デンハルツ(Denhardts)、4×SSC、0.1
%SDS、10mM EDTA、40mM Tris−
HCl(pH7.5)、100μg/mlサケDNA、
および32P標識プローブを含む溶液中で60〜65℃、
一昼夜行った。ハイブリダイゼーション後の洗浄は、1
×SSC中室温で30分間、さらに65〜70℃で1〜
2時間行った。この結果、約20万クローンのλZAP
から、12クローンのGBLcDNAが得られた。これ
らをpBluescript II KS+にサブクローニングし、Sanger
らの方法(Proc.Nat. Acad. Sci. USA, 74, 5463, 197
7)に従って塩基配列を決定した。
【0042】得られた12クローンの塩基配列の共通部
分を重複させた結果、図1に示すようなGBLcDNA
配列が得られた。このcDNAは、672bpの長さの
オープンリーディングフレーム(転写解読枠)を持ち、
17アミノ酸からなるシグナルペプチド(図1中の点線
部分)と、これに続く207アミノ酸の成熟GBL蛋白
質をコードしていた。
【0043】図2にGBLのドメイン構造を示す。成熟
GBLのN末端領域(図2、I)にはGBLのダイマー
形成に関与する一つのシステイン残基が存在する。これ
に続き、α−ヘリカル構造を形成しうるグルタミン酸残
基に富んだ領域(図2、II)が存在する。この構造はM
BLのコラーゲン様構造に相当するものと考えられ、こ
の部分でホモポリマーを形成していると推定される。さ
らに、GBLのC端側には約135アミノ酸からなる糖
鎖認識ドメイン(CRD)が存在し、 データバンクと
のホモロジィー検索の結果、哺乳類(ヒト、赤毛ザル、
ラット、およびマウス)のMBPのCRDとホモロジィ
ーを持つことが判明した。また、GBLのCRDには、
C型レクチンのCRDに保存されている18のアミノ酸
のうち、13のアミノ酸が保存されており、GBLはC
型レクチンファミリーに属するものと考えられた。
【0044】実施例3:GBLの糖鎖結合試験 本発明蛋白(GBL)のグルコースに特異的な糖鎖結合
能を示すために、様々な合成オリゴ糖への結合試験を行
った(参考文献: Matsushita, M.ら、J. Biol. Chem.
271, 2448-2454 (1996))。糖鎖結合試験に用いた合成
オリゴ糖を以下に示す。 Mal5 :マルトペンタオース (Glcα1-4Glcα1-4Glcα1-4Glcα1-4Glc) Isomal5 :イソマルトペンタオース (Glcα1-6Glcα1-6Glcα1-6Glcα1-6Glc) Cello5 :セロペンタオース (Glcβ1-4Glcβ1-4Glcβ1-4Glcβ1-4Glc) Lami5 :ラミナリペンタオース (Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-3Glcβ1-3Glc) Man5 :Manα1-6(Manα1-3)Manα1-6(Manα1-3)Manで構成されるマンノペ ンタオース GN5 :ペンタ-N-アセチルチトペンタオース (GlcNAcβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc) G2M3 :GlcNacβ1-2Manα1-6(GlcNacβ1-2Manα1-3)Manで構成されるオリ ゴ糖 3′SL :3′-シアリラクトース (Sialic acidα2-3Galβ1-4Glc) 6′SL :6′-シアリラクトース (Sialic acidα2-6Galβ1-4Glc) Lac :ラクトース (Galβ1-4Glc) (Glc:グルコース、Man:マンノース、GlcNAc:N-アセチルグルコサミン、Gal :ガラクトース) これらのオリゴ糖をdipalmitoylphosphatidylethanolam
ineと結合させ、TLCシステムを用いて展開し、これ
に実施例1で精製した125I標識GBLを反応させ、オ
ートラジオグラフィーにより解析した。その結果、図3
に示すように、マンノース、N−アセチルグルコサミ
ン、およびガラクトースには結合せず、グルコースのみ
で構成されるオリゴ糖(Maltopentaose、Isomaltopenta
ose、Cellopentaose、およびLaminaripentaose)に特異
的に結合することが判明した。以上の結果から、GBL
は糖鎖末端のグルコースを特異的に認識することが明ら
かとなった。
【0045】
【発明の効果】本発明の新規蛋白質は、糖鎖末端のグル
コースへの特異的な結合能を有し、表面上でグルコース
を発現する病原体(細菌、真菌、酵母、ウイルス、寄生
体を含む)による感染症の予防、または治療剤として有
用である。特に、カンジダ症、アスペルギルス症、クリ
プトコッカス症、ムコール症、およびトリコスポロン症
などの真菌症に有用である。さらに、GBLの一部、ま
たは全部を、遺伝子工学的手法などにより病原体を死
滅、もしくは増殖を抑制することのできる分子と結合さ
せたハイブリット蛋白は、優れた感染症治療剤として有
用である。
【0046】また本発明によれば、当該新規蛋白質をマ
ボヤ体液から簡便に、効率よく調整する方法が提供され
る。
【0047】さらに本発明は、当該新規蛋白質のアミノ
酸配列、および当該蛋白質をコードするDNAの塩基配
列を初めて明らかにするものである。かかるアミノ酸配
列、および塩基配列の解明により、遺伝子工学的手法に
よる本発明蛋白質の製造、それに基づく構造活性相関の
研究が可能となる。すなわち、本発明のアミノ酸配列、
および塩基配列は、当該蛋白質の分子、あるいは遺伝子
レベルでの物理化学的性状、および生物学的性状の解析
に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 蛋白質GBLをコードするcDNAの塩基配
列、およびGBLのアミノ酸配列を示す図である。
【図2】 蛋白質GBLの簡単なドメイン構造を示す図
である。
【図3】 蛋白質GBLのグルコースに特異的な結合能
を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12N 15/09 ZNA C12N 15/00 ZNAA (72)発明者 遠藤 雄一 福島県福島市大森字北島35−6 (72)発明者 水落 次男 東京都世田谷区岡本2−24−19−107

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に式(I)に示されるアミノ酸配
    列を有してなる蛋白質。 【化1】 P G W Y L A D N G Y E Y W M S S S H I G Y Y S T G K E I C E D K R A R L A T I G V R D P E I R S E I V Q N V V G D S H L W V W I G L D R L D T I A G W T W L D G V A S T S E N T A W G P N E P N D S G N E R C G Q L N R D S N Y L I N D K S C L A S C A A L C E R K H C F I (I)
  2. 【請求項2】 実質的に式(II)に示されるアミノ酸配
    列を有してなる蛋白質。 【化2】 E D E Q Y L A C R R V T K A E N T T E H D G S F Y Q D A I R I L Q G R V E H L E I Q V A G F E E E L N E E F Q E M K R R V D V L W Q R A S N A T E P G W Y L A D N G Y E Y W M S S S H I G Y Y S T G K E I C E D K R A R L A T I G V R D P E I R S E I V Q N V V G D S H L W V W I G L D R L D T I A G W T W L D G V A S T S E N T A W G P N E P N D S G N E R C G Q L N R D S N Y L I N D K S C L A S C A A L C E R K H C F I (II)
  3. 【請求項3】 請求項1記載の蛋白質のアミノ酸配列を
    コードする塩基配列を含むDNA。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の蛋白質のアミノ酸配列を
    コードする塩基配列を含むDNA。
  5. 【請求項5】 マボヤ体液をマンナンに接触させ、マン
    ノースまたはグルコース溶液で溶出することを特徴とす
    る請求項1又は2記載の蛋白質の製造方法。
  6. 【請求項6】 (1)マボヤ体液をマンナンに接触さ
    せ、マンノースまたはグルコース溶液で溶出することに
    より得ることができる物質であり、(2)還元下のSD
    S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定した
    分子量が約36kDaであり、(3)N末端に式(II
    I)に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質。 【化3】 Glu Asp Glu Gln Tyr Leu Ala Cys Arg Arg Val Thr Lys Ala Glu Asn Thr Thr Glu His(III)
  7. 【請求項7】 請求項1〜2および6のいずれか1項に
    記載の蛋白質を有効成分とする感染症予防治療剤。
JP9208580A 1997-07-17 1997-07-17 グルコースを認識する新規なレクチン Pending JPH1132759A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9208580A JPH1132759A (ja) 1997-07-17 1997-07-17 グルコースを認識する新規なレクチン

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9208580A JPH1132759A (ja) 1997-07-17 1997-07-17 グルコースを認識する新規なレクチン

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1132759A true JPH1132759A (ja) 1999-02-09

Family

ID=16558546

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9208580A Pending JPH1132759A (ja) 1997-07-17 1997-07-17 グルコースを認識する新規なレクチン

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH1132759A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5464823A (en) Mammalian antibiotic peptides
JP2795286B2 (ja) 新規の抗菌性ペプチド、該ペプチドを含有する組成物及びその使用
EP1187850B1 (en) Antimicrobial theta defensins and methods of using same
JP5586669B2 (ja) N末端ポリシアリル化
CN101068563B (zh) 新型抗微生物肽
DE60310736T2 (de) Collectin-komplement aktivierende proteinchimären
US6399571B1 (en) Chitinase chitin-binding fragments
JPH09507501A (ja) 殺菌性/透過性が向上したタンパク質の機能領域に由来する生物学的に活性なペプチドおよびその使用
CA2362153A1 (en) Antimicrobial/endotoxin neutralizing polypeptide
EP1614691B1 (en) Antibacterial peptide
JPH09503383A (ja) プロテグリン
Franchini et al. Cloning and purification of the rainbow trout fifth component of complement (C5)
US5693486A (en) DNA sequences encoding protegrins and protegrin analogs and their use in recombinant methods of producing protegrins
EP3439702B1 (en) Conjugated c1 esterase inhibitor and uses thereof
US7655236B2 (en) Lanthionine antibiotic compositions and methods
KR101749548B1 (ko) 전복의 베타글루칸 결합 단백질로부터 유도된 항균 펩타이드, 이를 코딩하는 핵산 및 이들의 용도
JPH1132759A (ja) グルコースを認識する新規なレクチン
JP3571371B2 (ja) オプソニン活性を有する新規な蛋白質
JPH1192499A (ja) ヒト成長ホルモン変異体
JPH09506258A (ja) 実質的にアゴニスト活性を有さないC5a受容体アンタゴニスト
US5210027A (en) DNA encoding novel antimicrobial polypeptide and methods for obtaining such polypeptide
Muraki Disulfide-bridged proteins with potential for medical applications: therapeutic relevance, sample preparation and structure–function relationships
JPH05504679A (ja) ラクトペルオキシダーゼの組み換え体の生産
JPH09500265A (ja) キセノニンとしてデザインされたペプチドファミリー
Ueda et al. Highly controlled carbodiimide reaction for the modification of lysozyme. Modification of Leu129 or Asp119

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040701

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070627

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20071212