JPH07196688A - 新規な生理活性ポリペプチド、その製造方法及び用途 - Google Patents

新規な生理活性ポリペプチド、その製造方法及び用途

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JPH07196688A
JPH07196688A JP5350294A JP35029493A JPH07196688A JP H07196688 A JPH07196688 A JP H07196688A JP 5350294 A JP5350294 A JP 5350294A JP 35029493 A JP35029493 A JP 35029493A JP H07196688 A JPH07196688 A JP H07196688A
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JP
Japan
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aromicin
amino acid
seq
larva
physiologically active
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JP5350294A
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English (en)
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Keiichi Ando
啓一 安藤
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Amano Enzyme Inc
Original Assignee
Amano Pharmaceutical Co Ltd
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Publication date
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】新規な生理活性ポリペプチドを提供する。 【構成】アミノ酸配列が配列(1)或いは配列(2)で
示される生理活性ポリペプチド及びその製造法並びにそ
れを有効成分とする抗菌性組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な生理活性ポリペ
プチド及びその製造法に関する。更に抗菌剤としての用
途に関する。
【0002】より詳細にはカブトムシ(Allomyrina dic
hotoma)幼虫より分離精製された新規な生理活性ポリペ
プチド及び該生理活性ポリペプチドをコードする遺伝子
を組み込んだ形質転換体、及び該形質転換体を培養する
ことによる該生理活性ポリペプチドの製造方法に関す
る。
【0003】
【従来の技術】細菌や異種の血球を、昆虫に接種したり
単に体表に傷をつけるといった刺激を与えると体液中に
数々の蛋白が誘導されることが知られている。これらの
物質は、抗体産生能を持たない動物の生体防御にとって
重要な係わりがあるものと考えられる。
【0004】これらのうちで、例えばセンチニクバエ
(Sarcophaga peregrina)幼虫体液中に誘導される活性
蛋白として、血球凝集作用をもつ蛋白〔J. Biol. Che
m., 255巻, 2919−2924頁(1980)〕、抗菌活性を持つ
蛋白〔Biochem. J., 211巻, 727−734頁(1983)〕など
が同定されている。
【0005】前者のレクチン様蛋白は、ザルコファルガ
(Sarcophaga)レクチンと命名され、マウスの骨髄細胞
やマクロファージの真菌殺能を増強させる、ヒトT細胞
よりのγ−インターフェロンの産生を導く、生体防御等
の作用が研究されている。
【0006】また後者の抗菌活性を持つ蛋白としては、
例えばザルコトキシン(Sarcotoxin)Iと命名されてそ
の理化学的性質も明らかにされている(特開昭59-1373
0)蛋白、ザルコトキシンIIと命名されてその理化学的
性質も明らかにされている(特開昭63-35599)蛋白、お
よび同じくセンチニクバエの幼虫体液から得られ、ザー
ペシン(Sapecin)と命名され、単離されてそのアミノ
酸配列が決定されている(特開昭63-185997)蛋白等が
知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これらのポリペプチド
は広い抗菌スペクトルを有しており、可食性の抗菌剤と
して期待されている。しかしながら、これらの蛋白以外
についても新規な抗菌剤の開発が絶えず強く望まれてお
り、上記に述べられた以外の起源による新規な生理活性
ポリペプチドの発見及びその大量生産技術の開発も望ま
れていた。
【0008】本発明は、カブトムシ幼虫由来の新規な生
理活性ポリペプチド、その製造法及びその用途を提供す
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は配列番号1或い
は配列番号2に示される新規な生理活性ポリペプチドで
あり、またカブトムシ幼虫より配列番号:1或いは配列
番号:2に示されるアミノ酸配列に示される生理活性ポ
リペプチドを取得することを特徴とする生理活性ポリペ
プチドの製造法、更に配列番号:1或いは配列番号:2
に示されるアミノ酸配列を含有する生理活性ポリペプチ
ドをコードする塩基配列を複製可能な発現ベクターに連
結して該塩基配列と複製可能な発現ベクターとを含有す
る複製可能な組換えDNAを得、該組換えDNAで微生
物を形質転換し形質転換体を得、該形質転換体を培養す
ることよりなる配列番号:1或いは配列番号:2に示さ
れるアミノ酸配列を含有する生理活性ポリペプチドの製
造方法、及び配列番号:1及び/又は配列番号:2に示
されるアミノ酸配列に示される生理活性ポリペプチドを
有効成分とする抗菌性組成物である。
【0010】本発明で提供される生理活性ポリペプチド
はカブトムシ幼虫の体液から得られ、配列番号:1或い
は配列番号:2に示されるアミノ酸配列で示される。
【0011】また、本発明の生理活性ポリペプチドの製
造方法については、カブトムシ幼虫の体表を傷つけたの
ち飼育し、カブトムシ幼虫をすり潰した後に実施例1に
記載するような方法を用いて抽出精製することができ
る。
【0012】このように天然に存在するカブトムシから
大量にアロミシンを得ることは大変困難であり、組換え
DNA技術を生かして、微生物(大腸菌、放線菌、酵母
や糸状菌など)や昆虫(バキュロウイルス)あるいは動
物細胞で大量にアロミシンを製造することができる。
【0013】このようにして得られた生理活性ポリペプ
チドはその目的に応じて様々な形態で使用されうる。そ
の一例として、抗菌性組成物の有効成分として利用され
る。即ち、当該生理活性ポリペプチドはそれ単独で又は
適当な賦形剤と組み合わせた形態で抗菌剤組成物を形成
することができ、他の薬剤と併用することもできる。
【0014】例えば、各種の抗菌力を期待する洗浄剤
(コンタクトレンズ用等)、軟膏剤、石鹸、シャンプ
ー、医療用殺菌・消毒剤、食品用殺菌・防腐剤、ペット
フード、口腔組成物等に使用されうる。
【0015】また、本発明の生理活性ポリペプチドは細
菌性疾患の予防治療薬としても用いることができる。こ
の場合はその投与量及び投与方法は疾患の種類や症状に
応じて任意に選択することができる。
【0016】本発明の生理活性ポリペプチドを医薬品と
して用いる場合には経口、非経口によって投与すること
ができ、錠剤、散剤、丸剤、カプセル剤、注射剤などい
ずれの形態によっても使用することができる。また、医
薬上許容される各種の賦形剤、着色剤、調味剤、安定化
剤、等張剤、緩衝剤などを配合することも可能である。
【0017】本発明の生理活性ポリペプチドを抗菌剤組
成物として使用する場合の配合量に特に制限はないが、
0.001〜80%配合が好適に使用される。
【0018】本発明の生理活性ポリペプチドを有効成分
とする抗菌性組成物は、それ自体が蛋白質であることよ
り経口投与の場合にはその毒性は問題とならないと考え
られる。従って、本発明の抗菌性組成物は食品や試料に
添加することも可能であり、歯磨き等の口腔清浄剤とし
て使用することも可能である。以下に実施例を記載する
が本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【実施例】実施例1 抗菌蛋白アロミシンのcDNAクロ−ニング (I) カブトムシからの体液の調製と抗菌物質の分離 予め土の中で飼育してあるカブトムシ(Allomyrina dic
hotoma)の幼虫を取り出し、予め100℃で10分間処理し
た黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus FDA209P、
約2×108 cells/ml)を約10μl(2×106cells)体内
に注射し、また土の中に戻し20℃で3日間飼育した。そ
の後、幼虫の足に傷を付けることにより体液を採取し
た。一匹の幼虫から約1〜2mlの体液が回収できた。
【0020】この体液には一部の組織が含まれるため、
まず、15000回転、10分間、4℃で遠心分離し、上清を
回収した。次に回収した体液は粘性が高いためこの体液
を−80℃に凍結させ室温で融解させた後、更に同じ条件
で遠心分離した上清を精製の出発材料とした。
【0021】各種の蛋白等を含む体液から抗菌蛋白を分
離する目的で、終濃度0.05%となるようにTFA(トリ
フルオロ酢酸)加えた上清を、予め0.05%TFAで平衡
化したカ−トリッジ式の逆相分配カラム[C18、セップ
パック(ミリポア製)]に流し吸着させた。次にこのカ
ラムを0.05%TFAを含む5%アセトニトリル溶液で洗
浄した後、0.05%TFAを含む、10%、30%、60%、10
0%アセトニトリル溶液でそれぞれ順にステップ・ワイ
ズで溶出させ凍結乾燥させた。次にそれぞれの画分を緩
衝液A(130mM NaCl,リン酸緩衝液,pH6.5)に溶解させ
抗菌活性を測定した。
【0022】抗菌活性は以下に示す組成で37℃で3時間
振盪培養した後の濁度(OD650)を測定し、コントロ−
ルと比較することにより増殖阻害活性として表示される
(図1及び図2)。
【0023】 サンプル(それぞれの分画)あるいは緩衝液Aのみ 20μl 0.02%BSAを含む緩衝液B(60mM NaCl, 180μl 30mM K-phosphate buffer, pH7.0) 菌液[OD650が約0.12のS. aureus FDA209Pを 含むM3培地(Difco)] 200μl 計 400μl
【0024】これらの結果、主に30%と60%のアセトニ
トリルで溶出された画分に活性があることが判った。
尚、コントロ−ルとして黄色ブドウ球菌をサスペンドし
た緩衝液Aのみを接種した幼虫の体液には、全ての溶出
画分で活性が認められないことから、これらの逆相分配
カラムに吸着し30〜60%で溶出される抗菌物質は黄色ブ
ドウ球菌を接種してはじめて体液中に誘導されることが
明かとなった。
【0025】(II) 抗菌蛋白の精製 (I)で得られた活性画分を集めて、逆相カラムによるH
PLC(HPLCの条件は以下に示した)により、さら
に抗菌物質を分離した。その結果の典型的パタ−ンを図
3に示した。抗菌活性は数種類に分離された。この内、
アセトニトリル約30%で溶出された活性画分をさらに同
じ逆相カラムによるHPLCを繰り返すことにより、目
的の抗菌蛋白(以下、アロミシンと呼ぶ)を精製した
(図4)。尚、図3と図4では、抗菌活性は下向きの棒
グラフとして表示されている。3匹の幼虫体液約5mlか
ら最終精製アロミシンが約20μg得られる。
【0026】逆相カラム:シンクロパックRP−P,C
18 溶出液:リニアグラジエント条件(A液中のB液が20%
から40%) (A液:0.05%TFAを含む水、B液:0.05%TFAを
含むアセトニトリル)
【0027】(III) アロミシンのアミノ末端からの部分
的アミノ酸配列 (II)で得られた精製アロミシンのSDS−ポリアクリル
アミドゲル電気泳動を行った後、PVDF膜(イモビロ
ン、ミリポア)にブロッティングしたアロミシンをアミ
ノ酸配列決定の試料とした。得られた試料をピリジルエ
チル化して気相式シ−ケンサ−(アプライドバイオシス
テムズ社製 476A型)でエドマン分解を行い、得られた
PTH−アミノ酸をPTH−アナライザ−(アプライド
バイオシステムズ社製 120A型)で分析し、アミノ酸配
列を一部決定した。その配列を配列番号:3に示す。
【0028】(IV) PCR(Polymerase Chain Reactio
n)法によるcDNAの増幅とクロ−ニング アロミシンの全アミノ酸配列を決定は、アロミシンのc
DNAをクロ−ニングし得られたクロ−ンの塩基配列か
ら決定した。アロミシンのcDNAは、PCR法[Saik
i, R. F. et al., Science 230巻, 1350頁(1985)、Mu
llis, K. B. and Faloona, F. A., Method in Enzymolo
gy, 155巻,335頁(1987)]によって増幅しクロ−ニン
グした。アロミシンをコ−ドするcDNAのPCRによ
る増幅は次に記載する4つの段階から成る。
【0029】第1段階:(III)で得られたアミノ酸配列
の一部分に対応するcDNA断片の増幅とクロ−ニング
及び塩基配列の決定 (a) PCR法に用いたプライマ−の合成 (III)で得られたアミノ酸配列と既知の抗菌蛋白ザ−ペ
シンを比較すると一部相同性のあるアミノ酸配列が存在
することが判った。その部分のザ−ペシンのcDNAの
配列を基にしてPCRのプライマ−をデザインし合成し
た(サイクロン、ミリジェン・バイオサ−チ社製)。
【0030】プライマ−#1の塩基配列は1番目(Va
l)から7番目(Ser)のアミノ酸配列に対応し、プライ
マ−#2の塩基配列は20番目(Cys)から25番目(Leu)
のアミノ酸配列に対応している。尚、プライマ−#2は
アンチセンス配列である。それぞれのプライマーの配列
を以下に示す。
【0031】プライマ−#1:5'-GT(AGCT)ACTTGCGATTT
ATTGAGT-3' プライマ−#2:5'-CAAGCAATGGGCAGCACA-3'
【0032】(b) 幼虫から全RNAの調製法 全RNAは、グアニジュウム/塩化セシュウム法により
調製した。[Glisin,V., et al, Biochemistry, 13巻,
2633頁(1974);Ullrich, A., et al, Science, 196巻,
1313頁(1977);Maniatis, T., et al, Molecular Clo
ning, Cold Spring Harbor Laboratory(1982)]
【0033】(I)で示した黄色ブドウ球菌を接種して3
日後の幼虫2匹をまず、液体窒素につけて瞬時に凍結さ
せた。次に、すり鉢の中で液体窒素と共にその凍結した
幼虫を粉砕した。得られた粉砕物を40mlの4Mグアニジ
ンチオシアネ−ト(フルカ)、200mM酢酸ナトリウム
(和光純薬)、5mM EDTA(ドウジン)を含む溶液に加
え、室温で15分間振盪混合させた。
【0034】得られた混合物を30mlのコ−ニングチュ−
ブに分配し、10,000回転で15分間の遠心分離(HITACH
I)を行なった。次に予め4mlの5M塩化セシュウム
(和光純薬)の入った遠心チュ−ブ6本に得られた上清
を6mlづつ重層し、37,000回転で18時間の超遠心分離
(ベックマン)を行なった。
【0035】その結果、チュ−ブの底に透明な沈殿物を
得た。この沈殿物が目的の全RNAを含む沈殿物であ
る。この沈殿物を80%エタノ−ルで2回洗浄し、乾燥さ
せ1チュ−ブあたり80μlの10mM Tris-HCl緩衝液(PH7.
6),10mM EDTA, 0.5% SDSを含む溶液に溶かした。
【0036】次に6本分を1本のチュ−ブに集めTE
[10mM Tris-HCl(pH8.0), 1mM EDTA](以下、TEと
いう)飽和フェノ−ルとクロロホルムで2回づつ抽出
し、最後に得られた水層に1/10容量の3M酢酸ナトリウ
ム(pH5.2)溶液と2倍容量のエタノ−ルを加え、−20
℃に1時間おいた。
【0037】その後、遠心分離(12,000g, 4℃,15分
間)により沈殿を回収し、沈殿を80%エタノ−ルで洗浄
し、乾燥させた。これを滅菌蒸留水200μlに溶かし以下
の実験に使用した。最終的に得られた全RNA量は約37
0μgであった。
【0038】(c) 全RNAから poly(A)+RNAの調製
(b)で得られた全RNA 350μgからファルマシア社の m
RNA Purification Kitを用いて poly(A)+RNAを12μg
回収した。
【0039】(d) PCR法による(III)で得られた一
部のアミノ酸配列に対応するcDNA断片の増幅 (c)で得られた0.6μgの poly(A)+RNAと3’RACE
システム(BRL社)を用いて、まずPCRの鋳型DN
Aを調製し、プライマ−#1と3’RACEシステムに
含まれる universal amplification primer を用いて以
下に示す条件で1回目のPCRを行った。PCR反応
は、Gene AmpTM Kit(パ−キンエルマ−ジャパン社製)
を用い、同社のDNA Thermal Cycler(DNA増幅装
置)により行った。
【0040】次に得られたPCR産物を鋳型にし、プラ
イマ−#1と#2を用いて同じ条件で2回目のPCRを
行った所、約70bpのDNA断片が得られた。 ■ 94℃ 1分 37℃ 5分 ■ 72℃ 1分 30サイクル
【0041】(e) PCR産物の塩基配列の決定 (d)で得られた約70bpのDNA断片を抽出して、予め制
限酵素SmaIで切断したプラスミドpUC19(TOYOBO社製)
にクロ−ニングし、得られたクロ−ンのインサ−ト部分
に相当する塩基配列を Chemiluminescent DNA Sequenc
ing Kit(TOYOBO社製)を用いて決定した。その配列を
図5に示した。
【0042】このプライマ−#1と#2ではさまれた塩
基配列部分(図5の枠内)から推定されるアミノ酸配列
が(III)で得られたアミノ酸配列の8番目から19番目の
配列に完全に一致することから、このDNA断片は目的
のアロミシンのcDNAの断片であることが考えられ
る。そこで、次にアロミシンのcDNAの特異的塩基配
列(22番目のTから59番目のGまで)を利用して、3'側
と5'側のアロミシンのcDNAを増幅しクロ−ニングす
ることにした。
【0043】第2段階:第1段階で決定された塩基配列
に基づいたプライマ−とBRL社の3'RACEシステム
による3'側のcDNA断片の増幅とクロ−ニング及び塩
基配列の決定 第1段階の(c)で得られた0.6μgの poly(A)+RNAと3'
RACEシステム(BRL社)を用いて、まずPCRの
鋳型DNAを調製し、第1段階の(d)で決定された塩基
配列に基づいたプライマ−#3(以下に示す)(図5参
照)と3'RACEシステムに含まれる universal ampli
fication primer を用いて以下に示す条件で1回目のP
CRを行った。尚、基本的PCR反応組成や増幅装置は
第1段階の(d)と同じである。
【0044】次に得られたPCR産物を鋳型にし、第1
段階の(d)で決定された塩基配列に基づいたプライマ−
#4(以下に示す)(図5参照)と3'RACEシステム
に含まれる adapter primer の配列に基づいたプライマ
−#5(以下に示す)を用いて同じ条件で2回目のPC
Rを行った所、約200bpのDNA断片が得られた。
【0045】 プライマ−#3:5'-TTTGAAGCTAAGGGTTTTGC-3' プライマ−#4:5'-GCTAAGGGTTTTGCCGCCAACCAT-3' プライマ−#5:5'-GGCCACGCGTCGACTAGTAC-3'
【0046】■94℃ 45秒 55℃ 1分 ■72℃ 2分 30サイクル 得られた約200bpのDNA断片を第1段階の(e)と同様に
pUC19にサブクロ−ニングして得られたクロ−ンのイン
サ−トDNA部分の塩基配列を決定した。その結果を図
6に示した。この塩基配列から推定されるアミノ酸配列
を下段に示した。
【0047】その結果、(III)で得られたアミノ酸配列
の10番目から30番目の配列が含まれることが明らかとな
ったこと(図6の枠内)及び103番目から105番目の塩基
配列にストップコドン認められ、その下流に典型的なポ
リAの付加シグナル(AATAAA)が存在し、その下流にポ
リAが存在することから、このインサ−トDNAは、目
的のアロミシンのcDNAの3'側のDNA断片であると
考えられる。
【0048】第3段階:第1段階で決定された塩基配列
に基づいたプライマ−とBRL社の5'RACEシステム
による5'側のcDNA断片の増幅とクロ−ニング及び塩
基配列の決定 第1段階の(c)で得られた0.6μgの poly(A)+RNAと第
1段階の(d)で決定された塩基配列に基づいたプライマ
−#6(以下に示す)(図4参照)と5'RACEシステ
ム(BRL社)を用いて、まずPCRの鋳型DNAを調
製し、5'RACEシステムに含まれる anchor primerと
第1段階の(d)で決定された塩基配列に基づいたプライ
マ−#7(以下に示す)(図5参照)を用いて以下に示
す条件で1回目のPCRを行った。尚、基本的PCR反
応組成や増幅装置は第1段階の(d)と同じである。
【0049】次に得られたPCR産物を鋳型にし、第1
段階の(d)で決定された塩基配列に基づいたプライマ−
#7(以下に示す)と第2段階のプライマ−#5を用い
て第2段階で示した条件で2回目のPCRを行った所、
約210bpのDNA断片が得られた。
【0050】 プライマ−#6:5'-CATAGACTATGGTTGGCG-3' プライマ−#7:5'-ATGGTTGGCGGCAAAACCCTTAGC-3' ■ 94℃ 45秒 57℃ 25秒 ■ 72℃ 2分 35サイクル
【0051】得られた約210bpのDNA断片を第1段階
の(e)と同様にpUC19にクロ−ニングして得られたクロ−
ンのインサ−トDNA部分の塩基配列を決定した。その
結果を図7に示した。この塩基配列から推定されるアミ
ノ酸配列(33〜35番目に対応するメチオニンを1番目と
する)を下段に示した。
【0052】その結果、そのアミノ酸配列の中に(II
I)で得られたアミノ酸配列の内、1番目のバリンから1
7番目のヒスチジンが含まれることが明らかとなったこ
とから、このインサ−トDNAは目的のアロミシンのc
DNAの5'側のDNA断片であることが考えられる。
【0053】第4段階:第2段階と第3段階で決定され
た塩基配列に基づいたプライマ−による目的のアロミシ
ン全体をコ−ドするcDNAの増幅とクロ−ニング及び
塩基配列の決定 第1段階の(c)で得られた0.6μgの poly(A)+RNAと3'
RACEシステム(BRL社)を用いて、まずPCRの
鋳型DNAを調製し、第2段階と第3段階で決定された
塩基配列に基づいたプライマ−#8(図6参照)と#9
(図7参照)(以下に示す)を用いて第2段階で示した
条件でPCRを行った。尚、基本的PCR反応組成や増
幅装置は第1段階の(d)と同じである。
【0054】 プライマ−#8:5'-TCTATCTTCTGCATATACAAACACC-3' プライマ−#9:5'-TGCATTCAATAAATCACCGAAC-3'
【0055】その結果得られた約270bpのDNA断片を
第1段階の(e)と同様にpUC19にクロ−ニングした。得ら
れたクロ−ンの内、7コのクロ−ンを制限酵素Bpu1102I
で切断し解析した結果、それぞれのインサ−トDNA部
分に2つの切断部位をもつクロ−ン(Allo−A)と1つ
の切断部位をもつクロ−ン(Allo−B)の2種類に分類
されることが判った。そこで、それぞれの代表的クロ−
ンの塩基配列を決定した。その結果を図8と図9に示し
た。
【0056】図8(Allo−A)と図9(Allo−B)の塩
基配列の下段には塩基配列から予想される、33番目から
35番目の開始コドンであるATGから始まり終止コドンで
ある270番目から272番目のTAGで終了する最も長いオ−
プンリ−ディングフレ−ムを示してある。
【0057】(III)で得られたアロミシン蛋白のN末端
から決定されたアミノ酸配列は全てAllo−Aの塩基配列
から予想されるオ−プンリ−ディングフレ−ム内に存在
すること(図8の枠内)が明らかとなった。
【0058】したがって、アロミシン蛋白は、79個のア
ミノ酸から成る前駆体として翻訳されると考えられる。
図8に示したアミノ酸配列部分のうち1番目のメチオニ
ンから約20個のアミノ酸は比較的疎水性に富んだアミノ
酸が並んでいることから、分泌蛋白質に一般的に見られ
るシグナル配列(図8の下線)と考えられる。
【0059】アロミシン蛋白のアミノ末端のアミノ酸は
バリンであり、その前には2つの塩基性アミノ酸(Lys-
Arg)が存在している(図8の波線)。このアミノ酸配
列は、アロミシン前駆体から成熟体(アロミシン蛋白)
へのプロセッシングに必要な配列と考えられる。
【0060】アロミシン蛋白側から得られた配列と、得
られたcDNA(Allo−A)から予想されるアミノ酸配
列とを総合して考えると、(II)で得られた、アセトニト
リル約30%で溶出され精製されたアロミシンの一次構造
は、37番目のバリンから79番目のアルギニンまで43個の
アミノ酸より成ると考えられる。
【0061】さて、図8と図9で示したオ−プンリ−デ
ィングフレ−ムのアミノ酸配列を比較するとサイズは全
く同じであり、違いのあるアミノ酸は62番目のバリン
(図8の丸印)と72番目のグリシンのみである。図8と
図9の枠内で示したアミノ酸配列部分にその違うアミノ
酸が存在する。
【0062】図9の枠内のアミノ酸配列は、上記したア
ロミシンの一次構造と95%の相同性をもつことから、Al
lo−BのcDNAは、アロミシン類似蛋白のcDNAで
あることが考えられる。したがって、図9の枠内のアミ
ノ酸配列より成るアロミシン類似蛋白はアロミシンと同
様に抗菌活性をもつ蛋白であることが考えられる。
【0063】(II)で見つけられた約30%アセトニトリ
ルで溶出されたアロミシン以外の抗菌活性の溶出画分の
1つに相当する物質である可能性もある。
【0064】図8の枠内のアミノ酸配列より成るアロミ
シンをアロミシンA、図9の枠内のアミノ酸配列より成
るアロミシンをアロミシンBと呼ぶことにする。配列番
号:1にアロミシンAと配列番号:2にアロミシンBの
アミノ酸配列を示した。
【0065】実施例2 実施例1で得られたDNAを導
入した大腸菌における組換えアロミシンの発現とその組
換え体からアロミシンの分離精製法 アロミシンは抗菌タンパクであることから、大腸菌で発
現させるためには大腸菌内でアロミシンが抗菌活性を発
現しにくい方法がより適当であり、融合タンパクとして
発現させるベクターが選択される。市販の各種融合タン
パク発現ベクター、例えばpMalベクター(BioLabs
社)、pGEXベクター(ファルマシア社)等が挙げられ
る。以下にpMalベクターを用いた場合のアロミシンの発
現例を示す。
【0066】(a) アロミシンの成熟体をコードするDN
A断片の調製とそのDNA断片を組み込んだプラスミド
の構築 アロミシンAあるいはアロミシンBの成熟体をコート゛する
DNA断片はPCR法により調製した。以下に示すプラ
イマー#10と実施例1の(IV)の第4段階で示したプライ
マー#8を用い、テンプレートはAllo−AあるいはAllo
−BのcDNAクローンを用いて実施例1の(IV)の第2
段階で示した条件でPCRを行った。
【0067】その結果得られた、それぞれのDNA断片
を抽出し、予め制限酵素StuIで切断し抽出してあったpM
al-cベクター(BioLabs社)に結合させ、それぞれのD
NA断片が組み込まれたプラスミドpMal-AあるいはpMal
-Bを得た。図10にプラスミド構築の概略を示した。ま
た、図11にはpMal-cベクターの結合部位の塩基配列とそ
の下にその配列から予測される融合タンパクの結合部位
を示した。
【0068】pMal-cベクターの融合タンパク(マルトー
ス結合蛋白と目的蛋白)の切断部位はプロテアーゼ、Fa
ctor Xaの切断認識部位としてデザインされている。し
かし、Factor Xaは反応性が低いことから、融合蛋白の
切断にはトロンビンなどの反応性の高いプロテアーゼが
望まれる。そこで予め、PCR産物を調製する際に、ト
ロンビンの認識部位であるPro-Argに相当する延期配列
が組み込まれるようにプライマー#10をデザインした。
【0069】 プライマー#10:5'-CCGCGTGTAACGTGCGATCTTTTAAGT-3' 大腸菌で外来遺伝子を高発現させるためには、強いプロ
モーターを使用し転写効率を上げたり、いくつかのSD
配列を含む遺伝子をタンデムに繋いで翻訳効率を上げた
りすることができる。
【0070】そこでアロミシンの発現に際して、SD配
列を含む遺伝子をタンデムに繋いで翻訳効率を上げるた
めに、プラスミドpMal-AあるいはpMal-Bのそれぞれの
「SD配列を含むマルトース結合蛋白とアロミシンをコ
ードするDNA断片」部分をPCRほうで増幅して得ら
れたDNA断片を、予め制限酵素XbalとHindIIIで切断
しておいたプラスミドpMal-AあるいはpMal-Bにそれぞれ
導入し、それぞれの遺伝子が2つずつ翻訳される様にデ
ザインされたプラスミドpMAL-A2あるいはpMal-B2を構築
した。略図を図12に示した。遺伝子の個数は拡張が可能
である。
【0071】(b) プラスミドpMal-A2あるいはpMal-B2を
含む形質転換株の取得と融合蛋白の発現 プラスミドpMal-A2あるいはpMal-B2を宿主大腸菌である
TB1(DH1でもよい)に導入し、それぞれのプラスミドを
持つ形質転換株A2とB2を得た。この形質転換株A2とB2を
培地Mで30℃で培養し、対数増殖期の培養菌体に対して
終濃度1mMとなるようにIPTG(イソプロピル−β−D−
チオガラクトピラノシド)を加えて3〜4時間後の菌体
を回収した。
【0072】この菌体をSDSを含む緩衝液で溶かし、
SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で解析したとこ
ろ、それぞれ約46KDaの融合蛋白が0.4g/Lの発現量で誘
導されることが判った。以下に示すアロミシンの分離精
製方法はアロミシンAとBは同じであることからアロミ
シンAあるいはBと限定しない。
【0073】(c) 発現した融合蛋白の回収とアロミシンの分離精製 (b)で得られた菌体を1mg/mlのリゾチームを含む緩衝液
にサスペンドし、氷上で30から40分間処理後、超音波処
理で菌体を破砕し、遠心分離により上清を回収した。こ
の上清に90%以上の融合蛋白が回収された。
【0074】次にこの上清からアミロース・レジン(D
EAEイオン交換クロマトグラフィーでも良い)により
アフィニティークロマトグラフィーで融合蛋白のみを精
製した。融合蛋白の回収率は70%であった。
【0075】次にこの融合蛋白を含む溶出液に終濃度10
mM還元型グルタチオンと1mM酸化型グルタチオン(ある
いは4mMシステインと0.4mMシスチン)を加えて穏やか
に攪拌しながら4℃で12時間処理した後、トロンビンを
2〜4ユニット/mlとなるように加えて更に2〜3日間
反応させた。
【0076】この処理による融合蛋白のマルトース結合
蛋白とアロミシンの切断効率は90%以上であった。次に
このトロンビン処理溶液をCMイオン交換クロマトグラ
フィーによりアロミシンとマルトース結合蛋白を分離
し、得られた溶出画分を更に逆相カラムによるHPLCを行
うことにより95%以上の精製度を持つアロミシンが得ら
れた。結果、融合蛋白から精製工程を考慮したアロミシ
ンの回収率は約80から90%であり、培養液当たりのアロ
ミシンの回収は約25から35mg/lであった。
【0077】また、この大腸菌で得られた組換え型アロ
ミシンは、実施例1で得られた天然型アロミシンと被検
菌として黄色ブドウ球菌を用いた抗菌アッセイで同じ比
活性を示した。
【0078】実施例3 実施例1で得られたDNAを導
入した酵母における組換えアロミシンの発現とその組換
え体からのアロミシンの分離精製法 (a) アロミシンAあるいはB遺伝子断片の調製 実施例1で得られたDNA断片Allo−AあるいはAllo−
Bのうちアロミシン成熟タンパク部分(配列番号:1或
い配列番号:2に示す)の遺伝子をPCR法により増幅
した。プライマーとしてはプライマー#11及びプライマ
ー#12を用いた。 プライマー#11:5'-GGTAAGCTTGGATAAAAGAGTAACGTGCGAT
CTTTTAAG プライマー#12:5'-CGGAATTCTTATCTTCTGCATATACAAACAC
CA 以下はアロミシンAとBは同じであることからアロミシ
ンAあるいはBと限定しない。以後代表してアロミシン
Aについて示す。
【0079】プライマー#11にはα因子のシグナルペプ
チドの塩基配列の一部(HindIIIサイトを含む)が含ま
れている。又、プライマー#12にはストップコドンとEc
oRIサイトが含まれている。
【0080】PCR法の反応はGene AmpTM kit〔パーキ
ンエルマージャパン社製〕を用いDNA Thermal Cycler
〔パーキンエルマージャパン社製〕により行った。反応
液の組成は該キットに添付されている説明書に記載され
ている方法に従った。反応液の入ったチューブをDNA Th
ermal Cyclerにセットし、以下の条件で反応した。
【0081】95℃ 1分 40℃ 2分 72℃ 3分 35サイクル
【0082】その後、さらに72℃で7分間インキュベー
トした。反応後に反応液を取り出しこれをクロロホルム
にて抽出した。次にこれを1.5%アガロースゲルにて電
気泳動し増幅されたDNAのサイズと量を確認した。そ
の結果、約160bpのDNA断片が約0.2μg得られた。
【0083】この160bpのバンドを含むゲルを取り出し
て、MERMAID Kit(Bio 101社製)を用いてキットに添付
されている説明書に従ってDNAを抽出し回収した。さ
らに回収したDNAを制限酵素EcoRI(TOYOBO社
製)とHindIII(TOYOBO社製)にて消化し、アガ
ロース電気泳動を行ない約160bpのアロミシンA遺伝子
断片をMERMAID Kitを用いて回収した。
【0084】(b) アロミシンA遺伝子への酵母分泌シグ
ナル、転写ターミネーターの付加 得られたアロミシンA遺伝子断片を発現させるために、
酵母において分泌発現が可能なように分泌発現に必要な
シグナルペプチドの塩基配列と、転写の終結に必要な塩
基配列(ターミネーター)をアロミシンA遺伝子断片に
結合した。
【0085】より具体的に説明すると、まず酵母α因子
のシグナルペプチド部分の塩基配列を前述のPCR法を
用いて増幅し単離した。すなわち、酵母のゲノムDNA
(Clontecより購入)を鋳型DNAとし、プライマー#1
3及びプライマー#14を用いてα因子のシグナルペプチ
ド部分の塩基配列を増幅した。 プライマー#13:5'-GCCTCGAGTTTCATACACAATATAAACGACC
AAA プライマー#14:5'-GGAAGCTTACCCCTTCTTCTTTAGCAGCAAT
GCT 増幅後、前述したように反応液をアガロース電気泳動し
て増幅したDNA断片を確認して、これをMERMAID Kit
を用いて抽出し回収した。その結果、約0.5μgの約300b
pのDNA断片を得た。
【0086】ここで、プライマー#13は制限酵素XhoIの
サイトを、プライマー#14は制限酵素HindIIIのサイト
をそれぞれ含んでいるので、得られたDNA断片をXhoI
とHindIIIで消化することによりα因子のシグナルペプ
チドの塩基配列を含んだDNA断片の両末端にそれぞれ
XhoIサイトとHindIIIサイトを導入できる。
【0087】上記で得られたα因子のシグナルペプチド
の塩基配列を含んだDNA断片をXhoIとHindIII(共に
TOYOBO社製)で消化してブルースクリプトks-
(Stratagene社製)をXhoI、HindIIIで消化したラージ
フラグメントとライゲーションした。ライゲーション反
応はライゲーションキット(宝酒造社製)を用いて、キ
ットに添付されている説明書に従って行った。
【0088】ライゲーション後、反応液で大腸菌DH5
(TOYOBO社製)を形質転換した。形質転換はコン
ピテントセルDH5(TOYOBO社製)を用いて既知の
方法、例えば〔モレキュラー クローニング(Molecula
r Cloning)(1989)〕に記載されている方法により行
った。
【0089】形質転換の結果、得られたアンピシリン耐
性の菌株よりプラスミドDNAを既知の方法、例えば
〔モレキュラー クローニング(Molecular Cloning)
(1989)〕に記載されている方法により調製した。この
プラスミドをpBαと命名した。
【0090】次にこのプラスミドpBαをHindIIIとEcoRI
(共にTOYOBO社製)で切断して得られたラージフ
ラグメントと前述のアロミシンA遺伝子をHindIIIとEco
RIで切断したフラグメントをライゲーションした。
【0091】ライゲーション後、前述同様にこれを用い
て大腸菌DH5を形質転換した。得られた形質転換体より
前述の如くプラスミド(以下、プラスミドpBAαとい
う)を調製し、以下の実験に用いた。
【0092】次にプラスミドpBAαのアロミシンA遺伝
子の下流に酵母PGK遺伝子のターミネーター配列を組み
込んだ。
【0093】まず、酵母ゲノムDNAよりPGK遺伝子の
ターミネーター配列を増幅し単離した。即ち、鋳型DN
Aとしては酵母ゲノムDNAを、プライマーとしてはプ
ライマー#15及びプライマー#16を用いてPCR法によ
り増幅した。 プライマー#15:5'-CCGAATTCATTGAATTGAATTGAAATCGATA
GA プライマー#16:5'-CCGGATCCGATATCGGTTTTTCGAAACGCAG
AATTTTCGA 反応液をアガロース電気泳動して、増幅したDNA断片
を確認し、これをMERMAID Kitを用いて抽出し回収し
た。その結果、約0.3μgの約310bpのDNA断片を得
た。
【0094】プライマー#16はEcoRIサイトをプライマ
ー7はBamHIサイトを含んでおり、得られた断片をEcoRI
とBamHI(TOYOBO社製)で消化することにより、P
GK遺伝子のターミネーター配列の両端にそれぞれEcoRI
サイトとBamHIサイトを導入することができる。
【0095】得られたPGK遺伝子のターミネーター断
片をEcoRIとBamHIで消化しこれと先程のプラスミドpBA
αをEcoRIとBamHIで消化したラージフラグメントを前述
同様にライゲーションし、形質転換を行った。
【0096】得られたアンピシリン耐性の菌株よりプラ
スミドDNAを調製しこれをプラスミドpBGAαと命名
し、以下の実験に用いた。
【0097】得られたプラスミドpBGAαの塩基配列をシ
ーケネースキット(TOYOBO社製)を用いて調べ
た。その結果、アロミシンAの遺伝子の上流にα因子の
シグナルペプチドの塩基配列が、下流にPGK遺伝子のタ
ーミネーター配列が結合している構造をとっていること
が塩基配列レベルで確認された。
【0098】さらに、α因子のシグナルペプチド部分の
塩基配列とアロミシンA遺伝子の上流側のつなぎ目の塩
基配列をより詳細に調べたところ、その塩基配列はデザ
イン通りであって、それは配列番号:4に示すようなも
のであった。
【0099】この部分がα因子の開始コドンであるメチ
オニンから順次アミノ酸に翻訳されると、グリシン−バ
リン−セリン−ロイシン−アスパラギン酸−リジン−ア
ルギニン−バリン−トレオニン−システイン−アスパラ
ギン酸−ロイシン−ロイシンという配列になる。
【0100】このうち最初のグリシンから7番目のアル
ギニンまではα因子のアミノ酸配列であり、8番目のバ
リンからはアロミシンA成熟体のN末端領域のアミノ酸
を示している。この配列中のリジン−アルギニンの配列
はα因子のシグナルペプチドがプロセッシングを受ける
部分であり、この部分でアロミシンA成熟タンパクが切
り出され分泌されるものと予想される。
【0101】実施例4 アロミシンA遺伝子のクローニ
ング プラスミドpBGAαをXhoIとBamHIで消化してアガロース
電気泳動し、約760bpのDNA断片を確認し、この断片
をMERMAID kitにより回収した。この断片は前述したα
因子のシグナルペプチドの塩基配列を上流に、PGKター
ミネーターを下流に持ったアロミシンA遺伝子を含む。
このDNA断片を酵母−大腸菌のシャトルベクターであ
るpAM82Bにクローニングした。
【0102】ベクターpAM82BはpAM82のデリバティブで
あり、pAM82のPvuIIサイトにBamHIリンカーを組み込む
ことによりBamHIサイトを導入したものである。pAM82B
のXhoIサイトのすぐ上流には酵母の抑酸性性フォスファ
ターゼ遺伝子PHO5のプロモーターが配置されており、Xh
oIサイト下流に適当な構造を持つ遺伝子を組み込むこと
でその遺伝子の発現を行うことができる。
【0103】即ち、pAM82BをXhoIとBamHIで消化したラ
ージフラグメントと、前述の760bpのDNA断片とをラ
イゲーションし、これを用いて大腸菌DH5を形質転換し
た。得られたアンピシリン耐性の菌株よりプラスミド
(以下、プラスミドpAM82B-Alloという)を約500μg調
製し、以下の実験に供した。
【0104】実施例5 プラスミドpAM82B-Alloによる
酵母SHY2の形質転換 前述で得られたプラスミドpAM82B−Alloを用いて酵母SH
Y2(ATCC No.44770)を形質転換した。形質転換の方法
は〔Laboratory Course Manual for Methods In Yeast
Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory)〕に記載
されている方法に従って行った。
【0105】酵母SHY2の性状は(α,ste-VC9,ura3-52,t
rp1-289,leu-3,leu2-112,his3-1,can1-100)であり、こ
の株はロイシンの存在しない培地では成育できない。こ
の株がプラスミドpAM82Bを保持すれば、プラスミドpAM8
2Bの持つロイシン合成遺伝子の働きによりロイシンが含
まれていない培地でも成育できる株、即ちロイシン非要
求性の株となる。従って、プラスミドpAM82B−Alloによ
る形質転換体の酵母はロイシン非要求性となる。
【0106】形質転換を行った結果、10個の形質転換体
を得た。そのうちの1株をYAと名付けた形質転換体
(以下、YAという)を以下の実験に供した。
【0107】実施例6 YAの培養 得られたTAの培養は次のようにして行った。YAを高
リン酸Burkholder minimal培地10mlに接種して一晩30℃
で前培養した。尚、Burkholder minimal培地の組成は下
記に示したとおりである。
【0108】 (NH4)2SO4 2 g/l KH2PO4 1.5 g/l MgSO4・7H2O 0.5 g/l CaCl2・2H2O 0.33 g/l KI 0.1 mg/l CuSO4・5H2O 0.04 mg/l FeSO4・7H2O 0.25 mg/l MgSO4・4H2O 0.04 mg/l (NH4)3PO412MoO3・3H2O 0.02 mg/l ZnSO4・7H2O 0.31 mg/l イノシトール 10 mg/l チアミン 0.2 mg/l ピリドキシン 0.2 mg/l pantotenate(Ca salt) 0.2 mg/l ナイアシン 0.2 mg/l ビオチン 0.002 mg/l アスパラギン 2 g/l ヒスチジン 0.02 mg/l トリプトファン 0.025 mg/l ウラシル 0.020 mg/l グルコース 20 g/l
【0109】前培養液1mlを100mlの高リン酸Burkholde
r minimal培地に接種して30℃で振盪培養しOD610を経時
的に測定した。
【0110】OD610が1.5に達した時点で一旦培養をやめ
遠心分離(8000×g,5分)で菌体を回収した。回収し
た菌体を今度は100mlの低リン酸Burkholder minimal培
地(高リン酸Burkholder minimal培地よりKH2PO4を除
き、代わりにKClを1.5g/lで加えたもの)に懸濁してさ
らに振盪培養を24時間行った。
【0111】培養後、菌体を遠心分離(8000×g,5
分)により取り除き、培養上清を回収して以下の実験に
供した。またコントロールとしては、プラスミドpAM82B
で形質転換されたY0(以下、Y0とする)を用いて上
記と同様に操作して回収された培養上清を用いた。
【0112】実施例7 培養上清の濃縮 前記の培養上清中に発現したアロミシンAが含まれてい
るかを調べるために、まずYAとY0の培養上清をそれ
ぞれ濃縮した。
【0113】培養上清の濃縮にはCMセルロースカラム
(Whatman CM52使用;ベッドボリューム5ml)を用い
た。まず培養上清100mlを緩衝液Aにより5倍に希釈し
た。次にCMセルロースカラムを50mlの緩衝液Bで洗浄
した後、この希釈した培養上清をカラムにアプライし
た。アプライ後、更にカラムを50mlの緩衝液Bで洗浄し
た後、500mlの緩衝液Cにてカラムに吸着した成分を溶
出し、0.5mlずつフラクションコレクターにより分取し
た。各フラクションのOD280を測定して、これらをCM
セルロース吸着画分として以下の実験に供した。尚、緩
衝液A、緩衝液B及び緩衝液Cの組成は下記に示したと
おりである。
【0114】緩衝液A NaH2PO4 1.37 g/l Na2HPO4 0.44 g/l 緩衝液B NaH2PO4 1.37 g/l Na2HPO4 0.44 g/l NaCl 1.46 g/l 緩衝液C NaH2PO4 1.37 g/l Na2HPO4 0.44 g/l NaCl 30.4 g/l
【0115】このCMセルロース吸着物の活性測定を行
い、抗菌活性が認められた分画を集め更にHPLCでア
ロミシンを精製した。また、この酵母で得られた組換え
型アロミシンは、実施例1で得られた天然型アロミシン
と被検菌として黄色ブドウ球菌を用いた抗菌アッセイで
同じ比活性を示した。
【0116】
【発明の効果】本発明によれば、新規な生理活性ポリペ
プチドが提供され、また、当該生理活性ポリペプチドは
組換えDNA技術により微生物(大腸菌、放線菌、酵
母、糸状菌など)で大量に製造することができる。得ら
れた生理活性ポリペプチドは優れた抗菌作用を有し医療
分野や食品分野に広く使用することができる。
【0117】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:43 配列の型:アミノ酸 配列 Val Thr Cys Asp Leu Leu Ser Phe Glu Ala Lys Gly Phe Ala Ala 15 Asn His Ser Leu Cys Ala Ala His Cys Leu Ala Ile Gly Arg Arg 30 Gly Gly Ser Cys Glu Arg Gly Val Cys Ile Cys Arg Arg 43
【0118】配列番号:2 配列の長さ:43 配列の型:アミノ酸 配列 Val Thr Cys Asp Leu Leu Ser Phe Glu Ala Lys Gly Phe Ala Ala 15 Asn His Ser Leu Cys Ala Ala His Cys Leu Val Ile Gly Arg Arg 30 Gly Gly Ser Cys Glu Gly Gly Val Cys Ile Cys Arg Arg 43
【0119】配列番号:3 配列の長さ:30 配列の型:アミノ酸 配列 Val Thr Cys Asp Leu Leu Ser Phe Glu Ala Lys Gly Phe Ala Ala 15 Asn His Ser Leu Cys Ala Ala His Cys Leu Ala Ile Gly Arg Arg 30
【0120】配列番号:4 配列の長さ:39 配列の型:核酸 配列 GGGGTAAGCT TGGATAAAAG AGTAACGTGC 30 GATCTTTTA 39
【図面の簡単な説明】
【図1】黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を
接種したカブトムシ幼虫の体液の各溶出画分の抗菌活性
を測定した実施例1の結果を示す。
【図2】黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を
接種しないカブトムシ幼虫の体液の各溶出画分の抗菌活
性を測定した実施例1の結果を示す。
【図3】実施例1の逆相カラムによるHPLCの典型的
パタ−ンを示す。
【図4】実施例1のアセトニトリルで溶出された活性画
分を逆相カラムによるHPLCによって精製したときの
チャートを示す。
【図5】アロミシン蛋白から得られたアミノ酸配列の1
部分に対応するcDNA断片の塩基配列と各プライマー
の方向(矢印)を示す。
【図6】3'側のアロミシンcDNA断片の塩基配列とそ
の配列から予想されるアミノ酸配列、及びプライマーの
方向(矢印)を示す。
【図7】5'側のアロミシンcDNA断片の塩基配列とそ
の配列から予想されるアミノ酸配列、及びプライマーの
方向(矢印)を示す。
【図8】プレプロ配列を含みアロミシンA全体をコード
する塩基配列、及びプライマーの方向(矢印)を示す。
【図9】プレプロ配列を含みアロミシンB全体をコード
する塩基配列、及びプライマーの方向(矢印)を示す。
【図10】pMal−cベクターとアロミシンA或いは
BのcDNA断片の結合方法の略図を示す。
【図11】pMal−cベクターとアロミシンAのcD
NA断片との結合部位周辺の塩基配列を示す。
【図12】pMal−cベクターとアロミシンBのcD
NA断片との結合部位周辺の塩基配列を示す。
【図13】アロミシンA或いはBのcDNAを2つ含む
プラスミドpMal−A2又はB2の略図を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/02 C 9282−4B // C12N 1/21 8828−4B (C12P 21/02 C12R 1:19) (C12N 1/21 C12R 1:19)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】配列番号:1或いは配列番号:2に示され
    るアミノ酸配列に示される生理活性ポリペプチド。
  2. 【請求項2】カブトムシ(Allomyrina dichotoma)幼虫
    より配列番号:1或いは配列番号:2に示されるアミノ
    酸配列に示される生理活性ポリペプチドを取得すること
    を特徴とする生理活性ポリペプチドの製造法。
  3. 【請求項3】配列番号:1或いは配列番号:2に示され
    るアミノ酸配列を含有する生理活性ポリペプチドをコー
    ドする塩基配列を複製可能な発現ベクターに連結して該
    塩基配列と複製可能な発現ベクターとを含有する複製可
    能な組換えDNAを得、該組換えDNAで微生物を形質
    転換し形質転換体を得、該形質転換体を培養することよ
    りなる配列番号:1或いは配列番号:2に示されるアミ
    ノ酸配列を含有する生理活性ポリペプチドの製造方法。
  4. 【請求項4】配列番号:1及び/又は配列番号:2に示
    されるアミノ酸配列に示される生理活性ポリペプチドを
    有効成分とする抗菌性組成物。
JP5350294A 1993-12-28 1993-12-28 新規な生理活性ポリペプチド、その製造方法及び用途 Pending JPH07196688A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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FR2839311A1 (fr) * 2002-05-06 2003-11-07 Entomed Peptides antibacteriens, genes codant les peptides, vecteurs, organismes transformes, leurs preparations et les compositions les contenant

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WO2003097680A3 (fr) * 2002-05-06 2004-04-22 Entomed Peptides anti-bacteriens, genes codant les peptides, vecteurs, organismes transformes, leurs preparations et les compositions les contenant

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