JPH1131894A - 電磁波遮蔽透視フィルター - Google Patents

電磁波遮蔽透視フィルター

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JPH1131894A
JPH1131894A JP19913397A JP19913397A JPH1131894A JP H1131894 A JPH1131894 A JP H1131894A JP 19913397 A JP19913397 A JP 19913397A JP 19913397 A JP19913397 A JP 19913397A JP H1131894 A JPH1131894 A JP H1131894A
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Junyo Nakagawa
潤洋 中川
Takashi Katayama
隆 片山
Koji Sato
弘二 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高導電性で電磁波の遮蔽性に優れ、高透視
性であり、目ずれや変形がなくて、形態安定性に優れ、
モアレ現象が生じず、更に力学的特性、製織性にも優れ
る、合成繊維をベースとする電磁波遮蔽透視フィルター
の提供。 【解決手段】 金属被膜を有する繊維よりなる織物を基
材とする電磁波遮蔽透視フィルターであって、基材をな
す前記の織物が、溶融液晶性ポリエステルを芯成分と
し、且つ屈曲性熱可塑性重合体を鞘成分とするか、また
は屈曲性熱可塑性重合体と溶融液晶性ポリエステルを鞘
成分とする、引張弾性率が350g/d以上の芯鞘型複
合繊維モノフィラメント製の織物である本発明の電磁波
遮蔽透視フィルターにより上記の課題が解決される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電磁波遮蔽透視フィ
ルターに関する。より詳細には、本発明は、視覚表示端
末(VDT)のブラウン管(CRT)やプラスマディス
プレー(PDP)などに装着して用いるのに適する、織
物製の電磁波遮蔽透視フィルターに関するものであり、
本発明の電磁波遮蔽透視フィルターは、高導電性で電磁
波の遮蔽性に優れ、高透視性であり、しかも目ずれや変
形がなくて、形態安定性、力学的特性に優れ、モアレ現
象の発生がなく、且つ良好な製織性で、生産性よく製造
することができる。
【0002】
【従来の技術】近年、視覚表示端末(VDT)の普及が
著しく、職場や家庭に急速に浸透してきている。VDT
はこれまでブラウン管のようなCRT方式のものが殆ど
であったが、近年、大画面対応のPDP方式などの新し
いタイプのディスプレー装置が開発されてきている。V
DTに長時間にわたって近い位置で接する人が増加する
につれて、VDT使用者の健康障害や帯電などによるト
ラブルの発生が大きな社会問題となっている。VDT障
害のうちの大きな要因としては、VDTから出る電磁波
によるところが大であり、電磁波の遮蔽が急務になって
いる。
【0003】電磁波の遮蔽法としては、金属細線からな
る金網を用いる方法が知られている。金網をVDTに使
用する場合には、高透視性を確保するための高精細化、
および画面コントラストを良好にするための黒色化が必
要であるが、金属細線からなる金網では、高精細化技術
および黒色化技術が限界に達しており、CRTやPDP
に装着して用いる電磁波遮蔽透視フィルターとしては十
分に満足のゆく、実用性のある製品が得られていないの
が現状である。
【0004】そこで、金網を用いる代わりに、有機高分
子繊維やそれからなる布帛に金属を含有または担持させ
て導電性の繊維または布帛とし、それを静電気障害の防
除や電磁波の遮蔽に用いることが従来から色々試みられ
ている。そのような従来技術としては、例えば、ポリエ
ステル繊維やポリアミド繊維などの汎用の合成繊維から
なる布帛や糸を有機溶剤で処理し、水洗した後、重クロ
ム酸と濃硫酸の混合液で処理して表面をエッチングし、
次いで化学メッキする方法(特公昭47−19600号
公報)、ポリエステル繊維を酸またはアルカリでエッチ
ング処理した後に表面に金属を被覆する方法(特公昭4
6−22919号公報、特公昭49−43518号公報
など)、無機微粒子を含有する繊維をアルカリ処理して
繊維表面に微細な凹凸を形成して粗面化した後に金属を
被覆する方法(特公平5−6360号公報)などを挙げ
ることができる。しかしながら、汎用のポリエステル繊
維やポリアミド繊維などを用いるこれらの従来法による
場合は、布帛の開口率を高くして透視性を向上させよう
として、繊維や糸の繊度を小さくしたり、織り目を粗く
したり(メッシュを小さくしたり)すると、繊維の強度
や弾性率が不足しているために、織物を構成している糸
にスリップやずれが生じたり、布帛の変形などが生じ
て、織目構造が乱れる。織目構造の乱れは、いわゆる
“モアレ現象”を起こし、金属化した布帛を透して見ら
れるCRTやPDPの画面の映像が歪んだりするなどの
トラブルが発生するという欠点があり、実用面で問題が
ある。
【0005】汎用の合成繊維を用いる上記した問題を解
消するために、高強度で高弾性率の溶融液晶性ポリエス
テル繊維を用いて織物を作製し、それに銅、ニッケルお
よびアルミニウムから選ばれる金属を被覆して、導電
性、帯電防止性、電磁波遮蔽性の織物にしたものが提案
されている(特開昭63−282365号公報)。しか
しながら、このものでは、溶融液晶性ポリエステル繊維
がエッチングされにくく、その表面が平坦であるため
に、金属被膜が溶融液晶性ポリエステル繊維から剥離し
たり脱落し易く、導電性を長期に亙って安定して保つこ
とが困難である。しかも、製織時に溶融液晶性ポリエス
テル繊維のフィブリル化が発生し易く、製織時の工程性
が著しく不良になるという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、織物
を構成する繊維(糸)の表面に金属被膜が強固に付着し
ていて、金属被膜の剥離や脱落が生じず、それによって
良好な導電性能および電磁波遮蔽能を長期にわたって安
定して保持することのできる、有機重合体繊維製の織物
からなる電磁波遮蔽透視フィルターを提供することであ
る。そして、本発明の目的は、力学的特性を良好に保ち
ながら、繊維の細繊度化や織物のメッシュを粗くするこ
とができ、それによって高透視性を達成できる有機重合
体繊維織物からなる電磁波遮蔽透視フィルターを提供す
ることである。さらに、本発明の目的は、高い強度と高
い弾性率を有していて、電磁波遮蔽透視フィルターを構
成する織物での糸のずれやすべり、織物の変形、織り目
の歪みなどがなく、形態安定性に優れていて、CRTや
PDPなどに装着したときに、モアレ現象を生じず、画
面上の映像を正確に透視することのできる電磁波遮蔽透
視フィルターを提供することである。そして、本発明の
目的は、紡糸性や製織性に優れていて、電磁波遮蔽透視
フィルターの基材である織物を良好な工程性で生産性良
く得ることのできる、有機重合体繊維製の織物からなる
電磁波遮蔽透視フィルターを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決することを目的として種々検討を重ねてきた。
その結果、特定の複合繊維からなるモノフィラメント、
すなわち、溶融液晶性ポリエステルを芯成分とし且つ屈
曲性熱可塑性重合体を鞘成分とする複合繊維からなる高
弾性率のモノフィラメント、および溶融液晶性ポリエス
テルを芯成分とし且つ屈曲性熱可塑性重合体および溶融
液晶性ポリエステルを鞘成分とする複合繊維からなる高
弾性率のモノフィラメントを用いて織物を形成し、その
織物の表面に金属被膜を形成すると、それにより得られ
る金属被覆織物では、繊維表面への金属被膜の付着が強
固で繊維からの剥離や脱落がなく良好な導電性および電
磁波遮蔽性を有することを見出した。しかも、本発明者
らは、前記の複合繊維フィラメントが高強度で高弾性率
であることによって、繊維の細繊度化や織物のメッシュ
を粗くすることが可能であり高透視性の織物が得られる
こと、織物における糸のずれやすべり、織物の変形、織
り目の歪みなどがなく、形態安定性に優れていて、CR
TやPDPなどに装着したときに、モアレ現象を生じ
ず、画面上の映像を電磁波遮蔽透視フィルターを透して
正確に見れること、さらには紡糸性や製織性に優れてい
て、電磁波遮蔽透視フィルターの基材である織物を良好
な工程性で製造できることを見出し、それらの種々の知
見に基づいて本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、金属被膜を有する繊
維よりなる織物を基材とする電磁波遮蔽透視フィルター
であって、基材をなす前記の織物が、溶融液晶性ポリエ
ステルを芯成分とし且つ屈曲性熱可塑性重合体を鞘成分
とする、引張弾性率が350g/d以上の芯鞘型複合繊
維モノフィラメントからなる織物であることを特徴とす
る電磁波遮蔽透視フィルターである。
【0009】そして、本発明は、金属被膜を有する繊維
よりなる織物を基材とする電磁波遮蔽透視フィルターで
あって、基材をなす前記の織物が、溶融液晶性ポリエス
テルを芯成分とし且つ屈曲性熱可塑性重合体および溶融
液晶性ポリエステルを鞘成分とする、引張弾性率が35
0g/d以上の芯鞘型複合繊維モノフィラメントからな
る織物であることを特徴とする電磁波遮蔽透視フィルタ
ーである。
【0010】さらに、本発明は、上記した遮蔽透視フィ
ルターおよび透明板を積層してなる積層体である。
【0011】そして、上記した本発明の電磁波遮蔽透視
フィルターおよび積層体においては、電磁波遮蔽透視フ
ィルターの基材である織物を構成する芯鞘型複合繊維モ
ノフィラメントの直径が15〜50μmであることが好
ましく、電磁波遮蔽透視フィルターの基材をなす織物が
50〜160メッシュの織物であることが好ましく、織
物の表面における金属被膜の厚さが0.05〜5μmで
あることが好ましい。さらに、上記した本発明の電磁波
遮蔽透視フィルターおよび積層体においては、織物を構
成する芯鞘型複合繊維モノフィラメントの鞘成分を構成
する屈曲性熱可塑性重合体が、ポリフェニレンサルファ
イドであることが好ましい。また、該芯鞘型複合繊維モ
ノフィラメントはその表面になだらかな起伏や微細な凹
凸、特になだらか起伏を有していることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明の電磁波遮蔽透視フィルターは、引張弾性
率が350g/d以上であって、且つ、 ○ 芯成分が溶融液晶性ポリエステルであり、鞘成分が
屈曲性熱可塑性重合体である芯鞘型複合繊維モノフィラ
メント(以下これを「芯鞘型複合繊維モノフィラメント
」ということがある)よりなる織物;または、 ○ 芯成分が溶融液晶性ポリエステルであり、鞘成分が
屈曲性熱可塑性重合体および溶融液晶性ポリエステルか
らなる芯鞘型複合繊維モノフィラメント(以下これを
「芯鞘型複合繊維モノフィラメント」ということがあ
る)よりなる織物;を基材としている。
【0013】芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
芯鞘型複合繊維モノフィラメントの芯成分を構成し、
また芯鞘型複合繊維モノフィラメントの鞘成分の一部
を構成する溶融液晶性ポリエステルにおける「溶融液晶
性」とは、溶融相において光学異方性(液晶性)を示す
ことをいう。ポリマーが「溶融液晶性」を有するか否か
は公知の方法により容易に知ることができ、例えば、ホ
ットステージに載せた試料(ポリマー)を窒素雰囲気下
で昇温加熱してその透過光を観測する方法などのような
通常採用されている方法によって溶融液晶性の有無を調
べることができる。
【0014】本発明では、芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメントの芯成
分を構成し、また芯鞘型複合繊維モノフィラメントの
鞘成分の一部を構成する、溶融液晶性ポリエステルの種
類は特に制限されず、繊維形成性の溶融液晶性ポリエス
テルであればいずれも使用可能である。芯鞘型複合繊維
モノフィラメントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントで用いる溶融液晶性ポリエステルの好ましい例と
しては、下記に示す反復構成単位の組み合わせからなる
溶融液晶性ポリエステル(1)〜(10)を挙げること
ができる。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】そのうちでも、下記に示す、反復構成単位
(A)および(B)の組み合わせからなる溶融液晶性ポ
リエステル(11)、および反復構成単位(C)〜
(F)の組み合わせからなる溶融液晶性ポリエステル
(12)がより好ましく用いられる。
【0018】
【化3】
【0019】特に、上記の溶融液晶性ポリエステル(1
1)において、その反復構成単位(A)および(B)の
合計重量が65重量%以上である溶融液晶性ポリエステ
ルが更に好ましく用いられる。
【0020】芯鞘型複合繊維モノフィラメントにおい
ては、その芯成分を構成する溶融液晶性ポリエステルと
鞘成分の一部を構成する溶融液晶性ポリエステルは、同
じであっても、または異なっていてもよい。そのうちで
も、芯成分を構成する溶融液晶性ポリエステルと鞘成分
の一部を構成する溶融液晶性ポリエステルが同じである
前者の場合には、芯鞘界面での接着性が良好になって芯
成分と鞘成分との界面剥離が一層良好に防止されるので
好ましい。
【0021】本発明では、芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメントの芯成
分を構成する溶融液晶性ポリエステル、並びに芯鞘型複
合繊維モノフィラメントの鞘成分の一部を構成する溶
融液晶性ポリエステルとして、上記した多数の溶融液晶
性ポリエステルのうちでも、パラヒドロキシ安息香酸単
位および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸単位からな
る、上記の溶融液晶性ポリエステル(1)が、紡糸性が
良好であるなどの点から好ましく用いられる。
【0022】また、本発明では、芯鞘型複合繊維モノフ
ィラメントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメント
の芯成分、並びに芯鞘型複合繊維モノフィラメントの
鞘成分の一部を構成する溶融液晶性ポリエステルの融点
が260〜360℃であることが好ましく、270〜3
50℃であることが好ましい。ここでいう溶融液晶性ポ
リエステルの融点とは、示差走査熱量計(DSC)を用
いてJIS K7121に準じて測定した主吸熱ピーク
のピーク温度を意味する。具体的には、DSC装置(例
えばMettler社製「TA3000])に、試料を
10〜20mg量り採ってアルミ製パンへ封入した後、
キャリヤーガスとして窒素を100cc/分の流速で流
し、20℃/分の昇温速度で温度を上げていったときの
吸熱ピークを測定して求めることができる。重合体の種
類によっては上記の1st Runで明確な吸熱ピーク
が現れないことがあるが、その場合は、50℃/分の昇
温速度で予想される流れ温度よりも50℃高い温度まで
昇温し、その温度で3分間完全に溶融した後、80℃/
分の降温速度で50℃まで冷却し、しかる後に20℃/
分の昇温速度で吸熱ピークを測定するとよい。
【0023】芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
芯鞘型複合繊維モノフィラメントの芯成分を構成する
溶融液晶性ポリエステル、並びに芯鞘型複合繊維モノフ
ィラメントの鞘成分の一部を構成する溶融液晶性ポリ
エステルは、その紡糸性の向上のために、必要に応じ
て、イソフタル酸単位などの他の共重合単位を少量(通
常20モル%以下)であれば有していてもよい。
【0024】また、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
および芯鞘型複合繊維モノフィラメントの芯成分を構
成する溶融液晶性ポリエステルは、本発明の効果を損な
わない範囲内で、必要に応じて、溶融液晶性ポリエステ
ル以外の熱可塑性重合体(例えばポリエチレンテレフタ
レート、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエチレン
テレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、
ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエーテルケ
トン、ポリアリレート、フッ素含有樹脂など)の1種ま
たは2種以上を少量(通常5重量%以下)含有していて
もよい。さらに、芯鞘型複合繊維モノフィラメントお
よび芯鞘型複合繊維モノフィラメントの芯成分を構成
する溶融液晶性ポリエステルは、必要に応じて、無機充
填剤(例えば酸化チタン、カオリン、シリカ、硫酸バリ
ウムなど)、着色剤(カーボンブラックやその他の顔料
や染料など)、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、
光安定剤などを10重量%以下の割合で含有していても
よい。
【0025】そして、本発明では、芯鞘型複合繊維モノ
フィラメントの鞘成分、および芯鞘型複合繊維モノフ
ィラメントの鞘成分の一部が屈曲性熱可塑性重合体か
らなっている。ここで、本発明における「屈曲性熱可塑
性重合体」としては、(i)主鎖中に芳香環を有してい
ない熱可塑性重合体;または(ii)主鎖中に芳香環を有
しているが、主鎖中の隣り合う芳香環の間に4個以上の
原子(芳香環を構成している原子は含まない)が介在し
ている分子構造を有する熱可塑性重合体;であって、繊
維形成性の熱可塑性重合体が用いられる。
【0026】芯鞘型複合繊維モノフィラメントの鞘成
分、および芯鞘型複合繊維モノフィラメントの鞘成分
の一部を構成する屈曲性熱可塑性重合体は、上記(i)
または(ii)に相当する熱可塑性重合体であって且つ繊
維形成性の熱可塑性重合体であればいずれでもよく、特
に制限されず、例えば、ポリフェニレンサルファイド、
ポリオレフィン、フッ素系重合体、上記(i)または
(ii)に相当する、ポリエステル(好ましくはポリエチ
レンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートな
ど)、ポリアミド(好ましくはポリアミドを構成するジ
アミン成分およびジカルボン酸成分の一方が芳香族化合
物であり且つもう一方が脂肪族である半芳香族ポリアミ
ドなど)、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエ
ステルエーテルケトンなどを挙げることができる。芯鞘
型複合繊維モノフィラメントおよび芯鞘型複合繊維モ
ノフィラメントでは、鞘成分を構成する屈曲性熱可塑
性重合体として前記した熱可塑性重合体のうちの1種の
みを使用しても、または2種以上を使用してもよい。そ
のうちでも、芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
芯鞘型複合繊維モノフィラメントでは、鞘成分に用い
る屈曲性熱可塑性重合体がポリフェニレンサルファイド
であることが、鞘成分の剥離防止の点から好ましい。
【0027】芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
/または芯鞘型複合繊維モノフィラメントでは、その
鞘成分は、必要に応じて、無機充填剤(例えば酸化チタ
ン、カオリン、シリカ、硫酸バリウムなど)、着色剤
(カーボンブラックやその他の顔料や染料など)、酸化
防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを10
重量%以下の割合で含有していてもよい。
【0028】また、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
および芯鞘型複合繊維モノフィラメントでは、両者の
芯成分を構成し、芯鞘型複合繊維モノフィラメントの
鞘成分の一部を構成する溶融液晶性ポリエステルの融点
(MPx)と、両者の鞘成分(鞘成分の一部)を構成す
る屈曲性熱可塑性重合体の融点(MPy)との差(MP
x−MPy)が下記の数式(1)を満足をするようにし
て、溶融液晶性ポリエステルおよび屈曲性熱可塑性重合
体を組み合わせて用いることが紡糸性などの点から好ま
しい。
【0029】
【数1】 80℃≧MPx−MPy≧−20℃ (1)
【0030】本発明では、電磁波遮蔽透視フィルター用
の織物を構成する芯鞘型複合繊維モノフィラメントお
よび芯鞘型複合繊維モノフィラメントの構造は特に限
定されず、例えば、図1の(a)、(b)および(c)
に示すように、1個の芯成分Aの周りを鞘成分Bが包囲
している単芯型芯鞘型複合繊維であっても、例えば図1
の(d)、(e)などに示すように、2個以上の芯成分
Aの周りを鞘成分Bが包囲している多芯型芯鞘型複合繊
維であってもよい。また、芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントの全体の形状は、例えば図1の(a)、(b)、
(d)などに示すような円形又はほぼ円形の形状であっ
ても、或いは例えば図1の(c)、(e)に示すように
異形の形状であってもよい。
【0031】本発明では、芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメントでは、
芯成分:鞘成分の重量比が90:10〜40:60であ
ることが好ましく、75:25〜65:35であること
がより好ましい。芯成分と鞘成分の合計重量に基づい
て、鞘成分の割合が10重量%未満であると、芯成分が
モノフィラメントの表面に露出したり、芯鞘間の剥離が
生じ易くなり、一方60重量%を超えるとモノフィラメ
ントの強度および弾性率が低下して、開口率の高い織物
が得られなくなって透視性が劣ったものになり、しかも
形態安定性の織物(電磁波遮蔽透視フィルター用基材)
が得られにくくなる。
【0032】芯成分が溶融液晶性ポリエステルからな
り、鞘成分が屈曲性熱可塑性重合体からなる芯鞘型複合
繊維モノフィラメントにおいては、芯成分および鞘成
分中に他の成分が含まれない場合は、その芯成分:鞘成
分の重量比を上記した90:10〜40:60の好まし
い範囲にすると、芯鞘型複合繊維モノフィラメントに
おける溶融液晶性ポリエステル:屈曲性熱可塑性重合体
の重量比がそのまま90:10〜40:60の範囲とな
る。
【0033】また、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
においては、芯成分:鞘成分の重量比を上記した90:
10〜40:60の重量比にすると共に、鞘成分におけ
る溶融液晶性ポリエステル:屈曲性熱可塑性重合体の重
量比を10:90〜60:40の範囲にすることが好ま
しく、20:80〜40:60の範囲にすることがより
好ましい。芯鞘型複合繊維モノフィラメントにおい
て、芯成分:鞘成分の重量比、および鞘成分における溶
融液晶性ポリエステル:屈曲性熱可塑性重合体の重量比
を前記した範囲にすることによって、鞘成分中に含まれ
ている溶融液晶性ポリエステルが、芯成分と鞘成分との
間の接着性を良好にして芯成分と鞘成分との間の界面剥
離を防いで繊維のフィブリル化を一層効果的に防止す
る。しかも、鞘成分部分への強靭性の付与および鞘成分
表面への凹凸形成促進作用を示すので、複合繊維フィラ
メントの物性を電磁波遮蔽透視フィルターで用いるのに
一層適したものとする。
【0034】そのため、本発明では、電磁波遮蔽透視フ
ィルター用基材をなす織物を構成するモノフィラメント
として、芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび芯鞘
型複合繊維モノフィラメントのいずれもが有効に使用
できるが、両者のうちでも、芯鞘型複合繊維モノフィラ
メントが製織性に一層優れ、しかも目ずれがなく且つ
金属被膜の密着性に一層優れることから、電磁波遮蔽透
視フィルター用の織物の製造により好ましく用いられ
る。
【0035】芯鞘型複合繊維モノフィラメントの鞘成
分における溶融液晶性ポリエステルと屈曲性熱可塑性重
合体との存在形態は特に制限されずいずれでもよく、例
えば、図1の(b)に示すように、屈曲性熱可塑性重合
体からなる海成分(Y)中に溶融液晶性ポリエステルが
島成分(X)として存在しながら鞘成分を形成していて
も、またはその他の存在形態であってよく、前記した海
島型の存在形態となっていることが好ましい。
【0036】芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
芯鞘型複合繊維モノフィラメントの製造方法は特に制
限されず、芯鞘型複合繊維を溶融紡糸法で製造するのに
従来から採用されているいずれの方法で製造してもよ
い。そして、芯成分が溶融液晶性ポリエステルからな
り、且つ鞘成分が屈曲性熱可塑性重合体からなる海成分
(Y)中に溶融液晶性ポリエステルからなる島成分
(X)が存在している上記した芯鞘型複合繊維モノフィ
ラメントの場合は、溶融液晶性ポリエステルと屈曲性
熱可塑性重合体を、例えば、ペレット状でブレンドして
溶融混合しても、各々の重合体を個別に溶融してからス
タティックミキサーなどで混合しても、各々の重合体を
個別に溶融してから張り合わせ形態で合流させても、ま
たは他の方法で一緒にしてもよい。
【0037】さらに、本発明では、芯鞘型複合繊維モノ
フィラメントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメント
の引張弾性率が350g/d以上であることが必要で
あり、450g/d以上であることが好ましい。芯鞘型
複合繊維モノフィラメントおよび芯鞘型複合繊維モノ
フィラメントの引張弾性率が350g/d未満である
と、電磁波遮蔽透視フィルター用基材である織物の力学
的特性が低下し、金属被膜を形成する際などに目ずれの
発生、織物の変形、歪みなどを生じて、形態安定性に優
れる織物が得られなくなり、織物の開口部がきちんとし
た形状(方形形状など)を保たなくなるため、CRTや
PDPなどの装着した時に、モアレを生じたり、画像の
歪みを生ずる。芯成分を構成する溶融液晶性ポリエステ
ルの種類、鞘成分を構成する屈曲性熱可塑性重合体や溶
融液晶性ポリエステルの種類、芯成分と鞘成分の割合、
紡糸条件などを調節することによって、引張弾性率が3
50g/d以上の芯鞘型複合繊維モノフィラメントお
よび芯鞘型複合繊維モノフィラメントを得ることがで
きる。一般には、芯成分:鞘成分の重量比を上記した9
0:10〜40:60の範囲にすることによって、引張
弾性率が350g/d以上のものを円滑に得ることがで
きる。
【0038】また、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
および芯鞘型複合繊維モノフィラメントは、その引張
強度が5g/d以上であることが、電磁波遮蔽透視フィ
ルターの強度が大きくなり、しかも紗張り張力を大きく
できることから好ましく、10g/d以上であることが
より好ましい。
【0039】芯成分として溶融液晶性ポリエステルを用
い、且つ鞘成分として屈曲性熱可塑性重合体を用いるか
又は屈曲性熱可塑性重合体と溶融液晶性ポリエステルを
用いて、上記したようにして溶融複合紡糸して得られる
芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび芯鞘型複合繊
維モノフィラメントは、それ自体で一般に350g/
d以上の引張弾性率を有し、且つ上記した5g/d以上
の好ましい引張強度を有しているが、芯鞘型複合繊維モ
ノフィラメントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメン
トを熱処理すると、繊維中の溶融液晶性ポリエステル
が固相重合される結果、引張弾性率および引張強度の一
層高いモノフィラメントを得ることができる。その場合
の熱処理は、窒素ガス、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲
気下、空気のような酸素を含有する活性ガス雰囲気下、
または減圧下などで行うことができる。また、熱処理時
に水分や湿分が存在すると、繊維物性の低下するので、
できるだけ除湿されたガスを用いることが好ましい。
【0040】熱処理条件としては、鞘成分を構成する
[屈曲性熱可塑性重合体の融点(MPy)−40℃]以
下の温度から[屈曲性熱可塑性重合体の融点(MPy)−
5℃]またはそれ以下の温度にまで徐々に昇温してゆく
温度パターンが好ましく採用される。熱処理時間は目的
とする性能に応じて、数分から数十時間の範囲で選ぶと
よい。その際の加熱方法としては、例えば、加熱気体な
どからなる加熱媒体を用いる方法、加熱板や赤外線ヒー
ターなどによる輻射熱を利用する方法、熱ローラーや熱
プレートなどに接触して行う方法、高周波を利用する内
部加熱方法などを採用することができる。熱処理は、目
的とする性能などに応じて、緊張下または無緊張下に行
うことができる。また、熱処理は、芯鞘型複合繊維モノ
フィラメントまたは芯鞘型複合繊維モノフィラメント
をカセ状やトウ状にして行っても、通気性のあるボビ
ンに巻いた状態で行っても、連続的に走行させながらロ
ーラー間などで連続的に行っても、またはそれ以外の状
態で行ってもよい。
【0041】また、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
および芯鞘型複合繊維モノフィラメントは、電磁波遮
蔽透視フィルター用の基材をなす織物の開口率を大きく
して高透視性にし、且つ織物に電磁波遮蔽透視フィルタ
ーとして必要な強度や形態安定性を保持させるために、
その直径が15〜50μmであることが好ましく、25
〜40μmであることがより好ましい。芯鞘型複合繊維
モノフィラメントおよび/または芯鞘型複合繊維モノ
フィラメントの繊維横断面が真円形をなしていない場
合は、繊維横断面の面積と同じ面積を有する真円の直径
に換算し、該換算後の直径が上記した15〜50μmの
範囲にあることが好ましい。
【0042】また、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
および芯鞘型複合繊維モノフィラメントは、モノフィ
ラメントへの金属被膜の接着性を向上させ得る点から、
繊維表面になだらかな起伏や微細な凹凸、特になだらか
な起伏を有していることが好ましい。繊維表面になだら
かな起伏や微細な凹凸を形成させる方法は特に制限され
ず、モノフィラメントの引張弾性率を350g/d以上
に保ち且つその他の繊維物性の大幅な低下を防止しなが
ら繊維表面になだらかな起伏や微細な凹凸を形成させ得
る方法であればいずれも採用できる。例えば、表面にな
だらかな起伏や微細な凹凸を有する芯鞘型複合繊維モノ
フィラメントを紡糸によって直接製造する方法、紡糸に
して得られた芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
芯鞘型複合繊維モノフィラメントに化学処理(例えば
酸、アルカリ、溶剤処理など)、物理的処理(放電処理
など)を施して表面になだらかな起伏や微細な凹凸を形
成させる方法などが採用できる。
【0043】そして上記したように、芯鞘型複合繊維モ
ノフィラメントでは、例えば、鞘成分を溶融液晶性ポ
リエステルと屈曲性熱可塑性重合体から形成し、下記の
数式(2)〜(4)を満足するような条件下に紡糸する
ことにより、繊維表面になだらかな起伏を有する芯鞘型
複合繊維モノフィラメントを紡糸によって直接得ること
ができ、本発明ではそのようにして得られる芯鞘型複合
繊維モノフィラメントがより好ましく用いられる。
【0044】
【数2】 MVx+1100≧MVy≧MVx+400 (2) 500≧MVx≧380 (3) 80,000≧γ≧20,000 (4) 但し、γ=4Q/πr3[上記式中、MVxは溶融液晶
性ポリエステルの溶融粘度(poise)、MVyは屈
曲性熱可塑性重合体の溶融粘度(poise)、γは紡
糸時の剪断速度(sec-1)、Qは芯鞘型複合繊維を紡
糸するときの単ホール当たりのポリマー吐出量(cm3
/sec)、rはノズル孔の剪断面方向の半径(cm)
を表す。]
【0045】図3の写真は、上記の数式(2)〜(4)
を満足するようにして得られた、繊維表面になだらかな
起伏を有する芯鞘型複合繊維モノフィラメント(実施
例1で得られた芯鞘型複合繊維モノフィラメント)の
表面を電子顕微鏡で観察したときのものである。
【0046】その場合に、鞘成分を構成する溶融液晶性
ポリエステルの溶融粘度(MVx)と、屈曲性熱可塑性
重合体の溶融粘度(MVy)との比(MVy/MVx)
が大きいほど繊維表面に大きな起伏が形成され、該比が
小さくなるほど筋状に近い起伏となり、該比が1以下に
なると起伏は殆ど発現しなくなる。そのため、前記の比
(MVy/MVx)が1〜5になるようにして、鞘成分
を形成させることにより、繊維表面になだらかな起伏を
有する芯鞘型複合繊維モノフィラメントを円滑に得る
ことができる。その際に、鞘成分を構成する溶融液晶性
ポリエステルと屈曲性熱可塑性重合体とを予め2軸押出
機で混練して両者の混合物からなるペレットをつくり、
そのペレットを鞘成分として用いて芯鞘型複合繊維モノ
フィラメントを製造すると、繊維表面になだらかな起
伏を有する芯鞘型複合繊維モノフィラメントを円滑に
得ることができる。なお、上記した溶融粘度(MVx)
および溶融粘度(MVy)はいずれも、(溶融液晶性ポ
リエステルの融点+20℃)の温度で、剪断速度100
0sec-1の条件下に測定したときの溶融粘度をいう。
【0047】そして、上記した芯鞘型複合繊維モノフィ
ラメントおよび/または芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントを用いて、電磁波遮蔽透視フィルターの基材をな
す織物を形成する。織物は、芯鞘型複合繊維モノフィラ
メントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメントのい
ずれか一方のみを用いて形成しても、または芯鞘型複合
繊維モノフィラメントと芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントの両方を用いて形成してもよい。そのうちでも、
芯鞘型複合繊維モノフィラメントを単独で用いて織物
を形成するか、または芯鞘型複合繊維モノフィラメント
と芯鞘型複合繊維モノフィラメントの併用下に織物
を形成することが好ましい。また、織物の形成に当たっ
て、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した芯鞘型
複合繊維モノフィラメントおよび/または芯鞘型複合
繊維モノフィラメントと共に、必要に応じて他の繊維
を用いてもよい。その場合に、他の繊維の使用割合は5
0重量%未満であることが好ましく、20重量%未満で
あることがより好ましい。
【0048】織物の目の粗さは、開口率を大きくして高
透視性にし且つ電磁波遮蔽透視フィルターに必要な強度
および形態安定性を織物に与えるために、50〜160
メッシュの範囲にあることが好ましく、60〜130メ
ッシュの範囲にあることがより好ましい。織物の織形態
としては、平織、朱子織などを挙げることができ、その
うちでも、平織が透視性、モアレ現象の発生防止、形態
安定性などの点から好ましい。また、織物の目付は特に
制限されないが、一般には10〜40g/m2であるこ
とが、取り扱い性、力学的特性、透視性、形態安定性な
どの点から好ましい。
【0049】本発明の電磁波遮蔽透視フィルターの基材
をなす上記した織物は、織物を構成する繊維(モノフィ
ラメント)上に金属被膜を有している。金属被膜用の金
属の種類としては、導電性の良好な金属であればいずれ
も使用でき、好ましい例としては、銅、ニッケル、コバ
ルト、錫、金、銀、アルミニウム、真鍮、前記した金属
の1種以上を含む合金などを挙げることができる。その
うちでも銅、ニッケル、錫が導電性およびコストの点か
ら好ましく用いられる。繊維(モノフィラメント)上に
形成する金属被膜の厚さは、電磁波遮蔽透視フィルター
における電磁波遮蔽性能、帯電防止能、透視性能、モノ
フィラメント表面からの金属被膜の剥離や脱落の防止、
均質性などの点から、0.05〜5μmの範囲であるこ
とが好ましく、0.5〜2μmの範囲であることがより
好ましい。
【0050】本発明の電磁波遮蔽透視フィルターでは、
基材をなす織物を構成するモノフィラメントの全表面が
金属被膜で覆われていても(織物の両方の外表面に現れ
ているモノフィラメント部分および織物の内側に位置す
るモノフィラメントの表面部分のすべてが金属被膜で覆
われている場合)、織物の一方の表面に位置するモノフ
ィラメント部分のみが金属被膜で覆われていても(例え
ば織物の一方の外表面に現れているモノフィラメントの
部分のみが金属被膜で覆われていて織物のもう一方の外
表面や織物の内側に位置するモノフィラメントの表面部
分が金属被膜で覆われていない場合)、または織物の両
方の表面に位置するモノフィラメント部分のみが金属被
膜で覆われていてもよい(例えば織物の両方の外表面に
現れているモノフィラメントの部分のみが金属被膜で覆
われていて織物の内側に位置するモノフィラメントの表
面部分が金属被膜で覆われていない場合)。そして、上
記いずれの場合にも、導電性が高くて、良好な電磁波遮
蔽性および帯電防止性を有する電磁波遮蔽透視フィルタ
ーを得ることができる。
【0051】織物を構成するモノフィラメント表面への
金属被膜の形成方法は特に制限されず、上記した好まし
い厚さの金属被膜を、織物を構成するモノフィラメント
上に均一に且つ剥離や脱落などを生ずることなく強固に
形成させ得る方法であればいずれも採用でき、例えば、
無電解メッキ法、スパッタリング法、金属蒸着法、金属
細粉を含有する樹脂をコーティングする方法などを挙げ
ることができる。そのうちでも、無電解メッキ法を採用
することが好ましく、その場合には、均一で薄い金属被
膜を織物を構成するモノフィラメントのほぼ全表面にわ
たって円滑に形成させることができ、しかも布帛の上下
左右の斑なく均一に薄い膜を形成することができる。無
電解メッキ法を行う場合の具体的な方法や条件などは特
に制限されず、合成繊維またはそれよりなる布帛の表面
に金属被膜を形成させる際に従来から採用されている無
電解メッキ方法および条件を採用して行うことができ
る。
【0052】本発明の電磁波遮蔽透視フィルターでは、
織物を構成するモノフィラメント上への金属被膜の形成
は、織物に製織する前の芯鞘型複合繊維モノフィラメン
トおよび/または芯鞘型複合繊維モノフィラメント
に対して行ってもよいが、芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントおよび/または芯鞘型複合繊維モノフィラメント
を用いて織物を製造した後に、金属被膜を形成するこ
とが好ましく、その場合には、織物を構成するモノフィ
ラメントの全表面に金属被膜を厚さが均一な薄膜状で強
固に形成させることができ、またメッキ後の織物の目ず
れや変形などを抑制することができ、さらには開口率を
大きくできるなどの長所がある。また、金属被膜の付着
性を向上させるために、上記したように、織物を構成す
るモノフィラメント上に金属被膜を形成する前に、プラ
ズマエッチング、酸処理、アルカリ処理、その他の処理
を予め施しておいてもよい。
【0053】本発明の電磁波遮蔽透視フィルターを視覚
表示端末(VDT)のブラウン管(CRT)やプラスマ
ディスプレー(PDP)などに装着して用いる場合は、
最表面が黒色化していることが、コントラストの向上、
グレア防止などの点から好ましい。黒色化は、金属被膜
の酸化や硫化によって、または着色染料塗布などによっ
て行うことができる。
【0054】芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
/または芯鞘型複合繊維モノフィラメントからなる織
物であって、且つ織物を構成するモノフィラメント表面
に金属被膜を有する本発明の電磁波遮蔽透視フィルター
は、高透視性で、且つ導電性が高くて電磁波遮蔽性およ
び帯電防止性に優れているので、織物の形態のままで、
または該織物に透明板を積層した積層体の形態にして、
或いはプラスチック透明板に熱接着(圧着)した形態に
して、視覚表示端末(VDT)のブラウン管(CRT)
やプラスマディスプレー(PDP)、ワープロなどの前
面板などに装着して用いることができる。透明板と積層
して用いる場合は、例えば、アクリル樹脂やポリカーボ
ネート樹脂などからなる透明板と金属被膜を有する上記
の織物とを加熱圧着、サンドイッチ加工などによって積
層して積層体をつくることができる。
【0055】
【実施例】以下に本発明について実施例などにより具体
的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されな
い。以下の例において、各種物性の測定または評価は次
のようにして行った。
【0056】(1)重合体の融点:示差走査熱量計(メ
トラー社製「DSC:TA3000型」)を用いて、上
記した2nd RUN(昇温速度20℃/分)で観察さ
れる結晶融解の主吸熱ピーク点を求め、その温度を融点
とした。
【0057】(2)重合体の溶融粘度(ポイズ):東洋
精機株式会社製「キャピログラフ1B型」を用いて、重
合体の融点+20℃の温度で、剪断速度1000sec
-1の条件下に溶融粘度を測定した。
【0058】(3)モノフィラメントの直径:走査電子
顕微鏡で織物(メッシュクロス)の倍率100倍の写真
を撮り、その任意の20本についてタテ糸の径とヨコ糸
の径をそれぞれ測定し、その平均値を採って、モノフィ
ラメントの直径とした。
【0059】(4)モノフィラメントの引張強度および
引張弾性率:JIS L 1013に準じ、試長20c
m、初荷重0.1g/d、引張速度10cm/minの
条件下に破断強度(引張強度)および引張弾性率(初期
引張抵抗度)を求め、5点以上の平均値を採って、モノ
フィラメントの引張強度および引張弾性率とした。
【0060】(5)製織性:ポリエチレンテレフタレー
ト(固有粘度0.65dl/g)からなる単繊維繊度9
デニールのモノフィラメントを用いて、120メッシュ
の1/1平織物(メッシュクロス)を製造した時の製織
性を○(標準)とし、前記の標準に比べて織上りの欠点
が殆どなく製織性が非常に良好な場合を◎、前記の標準
と同程度の製織性である場合を○、前記の標準と比べて
スリップや目ずれの発生が見られ製織性に問題はあるが
製織可能な場合を△、操業製織(連続製織)が不可能な
場合を×、少量サンプル(長さ約25cm程度の織物)
の製造も不可能な場合を××として評価した。
【0061】(6)織物(メッシュクロス)の開口率:
織物(メッシュクロス)の開口率は、織物(メッシュク
ロス)の格子構造の空間部の割合を示し、織物(メッシ
ュクロス)を構成しているタテ糸の平均径とヨコ糸の平
均径、および隣り合うタテ糸間の間隙(空間部の距離)
およびヨコ糸間の間隙(空間部の距離)から次の数式に
より求めることができる。
【0062】
【数3】織物の開口率(%)=[(da×db)/{(a+
a)×(b+db)}]×100 [式中、a=タテ糸の平均径(μm)、b=ヨコ糸の平
均径(μm)、da=隣り合うタテ糸間の間隙(μ
m)、db=隣り合うヨコ糸間の間隙(μm)を示
す。]
【0063】(7)織物の目ずれ:製織後の織物(メッ
シュクロス)を目視にて観察して、全く目ずれが生じて
いない場合を◎、目ずれが殆ど発生していない場合を
○、目ずれが多少生じているがメッキ処理をした場合に
一応の電磁波遮蔽透視フィルターが得られる場合を△、
目ずれが大きくメッキ加工処理しても実用上使用可能な
電磁波遮蔽透視フィルターが得られない場合を×として
評価した。
【0064】(8)電磁波遮蔽透視フィルターの比抵抗
値:メッキ処理後の織物から試験片(縦×横=10mm
×10mm)を採取し、それをクリップ型平行電極(電
極間距離10mm、幅10mm)にセットし、ミリオー
ムメーター(横河ヒューレット社製)を用いて、その比
抵抗値(Ω/cm)を測定した。
【0065】(9)金属被膜(メッキ)の密着性:メッ
キ処理を施した織物に、市販のセロハンテープを指で強
く押圧して5分間そのまま押圧状態を保ち、5分後にセ
ロハンテープを剥がして、セロハンテープに金属被膜の
付着が全くない場合を◎、セロハンテープに金属被膜の
付着が殆どない場合を○、セロハンテープに金属被膜が
かなり付着していて織物の表面に繊維が露出している場
合を×として評価した。
【0066】《実施例1》 (1)(i) 芯成分として、[パラヒドロキシ安息香
酸単位]:[2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸単位]の
モル比が73:27である溶融液晶性ポリエステル(融
点280℃、溶融粘度410ポイズ)[上記の化学式で
示した溶融液晶性ポリエステル(1)]を用いた。 (ii) また、鞘成分の屈曲性熱可塑性重合体として、
直鎖状のポリフェニレンサルファイド(融点280℃、
溶融粘度1100ポイズ)(屈曲性熱可塑性重合体)、
および芯成分に用いたのと同じ溶融液晶性ポリエステル
を、ポリフェニレンサルファイド:溶融液晶性ポリエス
テル=67:33(重量比)の割合で用いて、両者を予
め2軸押出機で溶融混合し、ペレット化した。 (2) 上記(i)の溶融液晶性ポリエステルからなる
芯成分、および上記(1)の(ii)のポリフェニレンサ
ルファイドと溶融液晶性ポリエステルとの混合ペレット
からなる鞘成分を、各々別の単軸押出機に供給して溶融
した後、芯成分:鞘成分=73:27(重量比)となる
ようにして、図2に示す構造を有する溶融紡糸ノズルに
供給し、紡糸温度315℃、引き取り速度1000m/
分の条件下に溶融複合紡糸を行って、単繊維繊度9デニ
ール(直径30μm)の芯鞘型複合繊維モノフィラメン
トを製造した。このときの単ホール吐出量は1g/m
in、ノズル径は0.15mmであった。これにより得
られた芯鞘型複合繊維モノフィラメントは、引張強度
が7.5g/d、引張弾性率が543g/dであった。
得られた芯鞘型複合繊維モノフィラメントをその長さ
方向に沿って走査電子顕微鏡にて観察したところ、図3
の写真にみるように、モノフィラメント表面に微細な凹
凸構造が形成されていた。
【0067】(3) 上記(2)で得られた芯鞘型複合
繊維モノフィラメントに油剤を付与して、幅160c
m、長さ150mの120メッシュの1/1平織物(メ
ッシュクロス)を製造した。織物製造時の製織性の評価
を上記した方法で行うと共に、得られた織物における目
ずれの有無の評価を上記した方法で行ったところ、下記
の表1に示すように、製織性および目ずれとも良好な結
果であった。また、得られた織物の開口率を上記した方
法で測定したところ、下記の表1に示すように71.2
%であった。 (4) 上記(3)で得られた平織物を、ノニオン系界
面活性剤で精練した後、水酸化ナトリウム水溶液(1g
/リットル)中に80℃で30分間浸漬して処理し、取
り出して十分に水洗した。次いで、塩化第一錫(10g
/リットル)、塩化バナジウム(5g/リットル)およ
び塩酸(10cc/リットル)を含む水溶液からなる活
性化浴を通した後、銅メッキ液(組成:硫酸銅20g/
リットル、炭酸水素ナトリウム10g/リットル、酒石
酸塩25g/リットルおよぎ38%ホルマリン液80g
/リットル)中に、室温で45分間浸漬して、メッキ処
理(金属被膜の形成)を行って、電磁波遮蔽透視フィル
ターとして用いる金属被膜織物を製造した。
【0068】(5) 上記(4)で得られたメッキ処理
後の織物について、織物を構成するモノフィラメントの
モノフィラメント20本についてその直径を走査電子顕
微鏡(SEM観察)を用いて測定行ったところ、平均直
径は31.6μmであった。また、金属被膜の厚さは
0.8μm、開口率は72.2%であった。さらに、上
記(4)で得られたメッキ処理後の織物について、その比
抵抗値を上記した方法で測定したところ、0.21Ω/
cmであり、高い導電性を示した。また、上記(4)で
得られたメッキ後の織物について、金属被膜(メッキ)
の密着性を上記した方法で調べたところ、金属被膜の剥
離が全くなく、良好な密着状態を有していた。 (6) 上記(4)で得られたメッキ後の織物に対し
て、硫化処理をして金属被膜表面の黒色化を行って、電
磁波遮蔽透視フィルターを作製した。
【0069】《実施例2》 (1) 実施例1の(2)で得られた芯鞘型複合繊維モ
ノフィラメントを、窒素ガス雰囲気下に、270℃で
10時間熱処理して、引張強度18g/d、引張弾性率
623g/dの芯鞘型複合繊維モノフィラメントを得
た。 (2) 上記(1)で得られた熱処理後の芯鞘型複合繊
維モノフィラメントを用いて、実施例1の(3)と同
様にして100メッシュの1/1平織物(メッシュクロ
ス)を製造し、それにより得られた平織物に対して実施
例1の(4)におけるのと同様にしてメッキ処理を行っ
て、金属で被膜された金属被膜織物を製造した。 (3) 上記(2)で得られた平織物および金属被覆織
物の各種物性の測定および評価を実施例1と同様に行っ
たところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0070】《実施例3》 (1) 鞘成分として実施例1で用いたのと同じ溶融液
晶性ポリエステルを使用し、鞘成分として実施例1で用
いたのと同じポリフェニレンサルファイドのみを使用
し、それ以外は実施例1の(2)と全く同様にして溶融
複合紡糸を行って、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
を製造した。 (2) 上記(1)で得られた芯鞘型複合繊維モノフィ
ラメントを用いて、実施例1の(3)と同様にして1
20メッシュの1/1平織物(メッシュクロス)を製造
し、それにより得られた平織物に対して実施例1の
(4)におけるのと同様にしてメッキ処理を行って、金
属で被膜された金属被膜織物を製造した。 (3) 上記(2)で得られた平織物および金属被覆織
物の各種物性の測定および評価を実施例1と同様に行っ
たところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0071】《比較例1》 (1) 実施例1で用いたのと同じ溶融液晶性ポリエス
テルを単独で用いて溶融紡糸を行って、単繊維繊度が9
デニールの溶融液晶性ポリエステル製モノフィラメント
を製造した。このモノフィラメントの引張強度は11.
5g/d、引張弾性率は605g/dであった。 (2) 上記(1)で得られた溶融液晶性ポリエステル
製モノフィラメントを用いて、実施例1の(3)と同様
にして、120メッシュの1/1平織物(メッシュクロ
ス)を製造したところ、製織中にタテ糸のフィブリル化
によるトラブルが多発し、製織が困難であった。しか
し、何とかして長さ50cmのサンプルをつくり、実施
例1の(4)と同様にしてメッキ処理を行って、厚さ
0.9μm程度の金属被膜を有する平織物を製造した。 (3) 上記(2)で得られた平織物および金属被覆織
物の各種物性の測定および評価を実施例1と同様に行っ
たところ、下記の表1に示すとおりであった。なお、こ
の比較例1で得られたメッキ処理後の織物は、布地を折
り曲げると金属被膜の剥離が生じ、実用に耐え得ないも
のであった。
【0072】《比較例2》 (1) ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.5
6dl/g)を単独で用いて、紡糸温度290℃、巻き
取り速度1000m/分の条件下に溶融紡糸を行って、
単繊維繊度が9デニール(直径31μm)のポリエチレ
ンテレフタレート製モノフィラメントを製造した。この
モノフィラメントの引張強度は5.1g/d、引張弾性
率は156g/dであった。 (2) 上記(1)で得られたポリエチレンテレフタレ
ート製モノフィラメントを用いて、実施例1の(3)と
同様にして、120メッシュの1/1平織物(メッシュ
クロス)を製造した。そして、それにより得られた平織
物を用いて、実施例1の(4)と同様にしてメッキ処理
を行ったところ、目ずれが著しく、実用上使用できない
ものとなったので途中でメッキ処理を中止した。 (3) 上記(2)で得られたメッキ前の平織物の各種
物性の測定および評価を実施例1と同様に行ったとこ
ろ、下記の表1に示すとおりであった。
【0073】《比較例3》 (1) ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.5
6dl/g)を単独で用いて、紡糸温度290℃、巻き
取り速度1000m/分の条件下に溶融紡糸を行って、
単繊維繊度が12デニール(直径35μm)のポリエチ
レンテレフタレート製モノフィラメントを製造した。こ
のモノフィラメントの引張強度は4.8g/d、引張弾
性率は155g/dであった。 (2) 上記(1)で得られたポリエチレンテレフタレ
ート製モノフィラメントを用いて、実施例1の(3)と
同様にして、120メッシュの1/1平織物(メッシュ
クロス)を製造した。そして、それにより得られた平織
物を用いて、実施例1の(4)と同様にしてメッキ処理
を行ったところ、メッキ処理は辛うじて可能であった
が、部分的にヨコ糸がスリップしている箇所が1メート
ル当たり平均で1個以上発生し、実用価値の無いもので
あった。 (3) 上記(2)で得られたメッキ前およびメッキ後
のの平織物の各種物性の測定および評価を実施例1と同
様に行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0074】
【表1】
【0075】上記の表1の結果から、溶融液晶性ポリエ
ステルを芯成分とし且つ屈曲性熱可塑性重合体を鞘成分
とする引張弾性率が350g/d以上の芯鞘型複合繊維
モノフィラメント、または溶融液晶性ポリエステルを
芯成分とし且つ屈曲性熱可塑性重合体および溶融液晶性
ポリエステルを鞘成分とする引張弾性率が350g/d
以上の芯鞘型複合繊維モノフィラメントよりなる織物
に金属被膜を施した実施例1〜3の織物(電磁波遮蔽透
視フィルター)は、開口率が高く、目ずれがなく、比抵
抗値が低くて導電性が高く、モノフィラメントへの金属
被膜の密着性が良好であり、そのため、高い電磁波遮蔽
性、高透視性、モアレ現象の発生防止、形態保持性、力
学的特性などに優れることが求められている電磁波遮蔽
透視フィルターとして極めて適する特性を有しているこ
と、さらに電磁波遮蔽透視フィルターの基材をなす織物
への製織時にフィブリル化が生じず、製織性に優れてい
ることがわかる。そして、芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメントのうち
でも、その鞘成分が屈曲性熱可塑性重合体と溶融液晶性
ポリエステルから構成されている芯鞘型複合繊維モノフ
ィラメントを用いて形成した実施例1および実施例2
の織物では、目ずれがの発生が完全に防止されていてモ
アレ現象が生じず、しかも比抵抗値が低くて導電性が極
めて高く、且つ金属被膜の密着性が極めて良好であり、
諸物性に極めて優れる電磁波遮蔽透視フィルターが得ら
れることがわかる。
【0076】それに対して、溶融液晶性ポリエステル単
独からなるモノフィラメント、またはポリエチレンテレ
フタレート単独からなるモノフィラメントを用いた比較
例1〜3の場合には、製織性の不良、目ずれの発生、金
属被膜の剥離などのトラブルが生じ、しかも比抵抗値が
高くで導電性が低く、実施例1〜3の電磁波遮蔽透視フ
ィルターに比べて、各種の物性に劣っていることがわか
る。
【0077】
【発明の効果】引張弾性率が350g/d以上である芯
鞘型複合繊維モノフィラメントおよび/または芯鞘型
複合繊維モノフィラメントから形成された織物に金属
被膜を形成させてなる本発明の電磁波遮蔽透視フィルタ
ーでは、織物を構成する繊維(糸)の表面に金属被膜が
強固に付着していて、金属被膜の剥離や脱落が生じず、
良好な導電性能および電磁波遮蔽能を長期にわたって安
定して保持することができる。さらに、本発明の電磁波
遮蔽透視フィルターでは、その力学的特性を良好に保ち
ながら、織物を構成するモノフィラメントの細繊度化や
織り目を粗くすることができ、それによって電磁波遮蔽
透視フィルターに強く求められている高透視性を得るこ
とができる。
【0078】また、本発明の電磁波遮蔽透視フィルター
で用いている芯鞘型複合繊維モノフィラメントおよび
芯鞘型複合繊維モノフィラメントは、高強度および高
弾性率であるために、それから形成されている織物での
糸のずれやすべり、織物の変形、織り目の歪みなどがな
く、形態安定性に優れていて、本発明の電磁波遮蔽透視
フィルターをCRTやPDPなどに装着したときに、モ
アレ現象を生じず、画面上の映像を正確に透視すること
ができる。そして、本発明で用いている芯鞘型複合繊維
モノフィラメントおよび芯鞘型複合繊維モノフィラメ
ントは、製織性に優れていて製織時にフィビリル化な
どのトラブルを発生しないので、電磁波遮蔽透視フィル
ターの基材である織物を良好な工程性で生産性良く得る
ことができる。
【0079】そして、芯鞘型複合繊維モノフィラメント
および芯鞘型複合繊維モノフィラメントのうちで
も、その鞘成分が屈曲性熱可塑性重合体および溶融液晶
性ポリエステルからなる芯鞘型複合繊維モノフィラメン
トは、表面に微細な凹凸を有し且つ芯成分と鞘成分と
の間の界面剥離のない芯鞘型複合繊維モノフィラメント
を紡糸によって直接得ることができ、そのようは芯鞘型
複合繊維モノフィラメントは金属被膜との密着性に一
層優れ、しかも織物への製織性にも一層優れ、織物にお
ける目ずれ防止の点でも一層優れているので、芯鞘型複
合繊維モノフィラメントを用いてなる本発明は電磁波
遮蔽透視フィルターは、上記した諸物性において一層優
れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電磁波遮蔽透視フィルター用の基材で
ある織物を構成する芯鞘型複合繊維モノフィラメント
および芯鞘型複合繊維モノフィラメントの横断面形状
の代表例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1〜3において、芯鞘型複合繊
維モノフィラメントまたは芯鞘型複合繊維モノフィラ
メントの製造に用いた紡糸ノズルの構造を示す該略図
である。
【図3】実施例1の(2)で得られた芯鞘型複合繊維モ
ノフィラメントの表面状態を撮影した走査電子顕微鏡
(SEM)写真(図面代用写真)である。
【符号の説明】
A 芯成分 B 鞘成分 X 鞘成分における溶融液晶性ポリエステルからなる島
成分 Y 鞘成分における屈曲性熱可塑性重合体からなる海成
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川 潤洋 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 片山 隆 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 佐藤 弘二 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属被膜を有する繊維よりなる織物を基
    材とする電磁波遮蔽透視フィルターであって、基材をな
    す前記の織物が、溶融液晶性ポリエステルを芯成分とし
    且つ屈曲性熱可塑性重合体を鞘成分とする、引張弾性率
    が350g/d以上の芯鞘型複合繊維モノフィラメント
    からなる織物であることを特徴とする電磁波遮蔽透視フ
    ィルター。
  2. 【請求項2】 金属被膜を有する繊維よりなる織物を基
    材とする電磁波遮蔽透視フィルターであって、基材をな
    す前記の織物が、溶融液晶性ポリエステルを芯成分とし
    且つ屈曲性熱可塑性重合体および溶融液晶性ポリエステ
    ルを鞘成分とする、引張弾性率が350g/d以上の芯
    鞘型複合繊維モノフィラメントからなる織物であること
    を特徴とする電磁波遮蔽透視フィルター。
  3. 【請求項3】 芯鞘型複合繊維モノフィラメントの直径
    が15〜50μmである請求項1または2の電磁波遮蔽
    透視フィルター。
  4. 【請求項4】 屈曲性熱可塑性重合体が、ポリフェニレ
    ンサルファイドである請求項1〜3のいずれか1項の電
    磁波遮蔽透視フィルター。
  5. 【請求項5】 芯鞘型複合繊維モノフィラメントからな
    る織物が、50〜160メッシュのメッシュクロスであ
    る請求項1〜4のいずれか1項の電磁波遮蔽透視フィル
    ター。
  6. 【請求項6】 金属被膜の厚さが0.05〜5μmであ
    る請求項1〜5のいずれか1項の電磁波遮蔽透視フィル
    ター。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項の電磁波遮
    蔽透視フィルターおよび透明板を積層してなる積層体。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000244082A (ja) * 1999-02-18 2000-09-08 Kuraray Co Ltd プリント配線板
JP2005290370A (ja) * 2004-03-10 2005-10-20 Matsushita Electric Works Ltd 金属被覆樹脂成形品およびその製造方法
JP2006297648A (ja) * 2005-04-18 2006-11-02 Nbc Inc スピーカーグリル用多孔シートの製造方法およびスピーカーグリル用多孔シート
JP2018519431A (ja) * 2015-06-08 2018-07-19 フェデラル−モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニーFederal−Mogul Powertrain Llc 透明な端部ほつれ耐性およびemi耐性を有する織物スリーブおよびその構築方法
JP2021174897A (ja) * 2020-04-27 2021-11-01 名古屋メッキ工業株式会社 電磁波シールド用めっき繊維布

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