JPH1131811A - 歪多重量子井戸構造の成長方法 - Google Patents

歪多重量子井戸構造の成長方法

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JPH1131811A
JPH1131811A JP20096797A JP20096797A JPH1131811A JP H1131811 A JPH1131811 A JP H1131811A JP 20096797 A JP20096797 A JP 20096797A JP 20096797 A JP20096797 A JP 20096797A JP H1131811 A JPH1131811 A JP H1131811A
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JP
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well layer
layer
strain
barrier layer
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JP20096797A
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Inventor
Matsuyuki Ogasawara
松幸 小笠原
Manabu Mitsuhara
学 満原
Hideo Sugiura
英雄 杉浦
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 井戸層の成長表面不安定性に起因する井戸層
表面の凹凸の発生を防止し、かつ、凹凸のある井戸層の
上に成長した障壁層の成長表面不安定性に起因する凹凸
の振幅の増加を抑制することにより欠陥の発生を防止し
た歪多重量子井戸構造を提供する。 【解決手段】 本発明に係る歪多重量子井戸構造の成長
方法は、井戸層2の成長速度を、成長表面不安定性の発
生を抑制せしめる成長速度よりも高くすることを特徴と
している。これにより、図3(a)に示す如く、障壁層
4の成長表面4aが平坦となり、成長表面4aの不安定
性の発生が抑制される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光半導体素子等に利
用される歪多重量子井戸構造の成長方法に関し、特に、
成長の際に表面に凹凸が形成されることによる欠陥の発
生を抑制できる歪多重量子井戸構造の成長方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、厚さが数十Åの井戸層をそれより
もバンドギャップの大きな障壁層で挟み、それらを多層
に積層した多重量子井戸構造(以下、MQWと略記す
る)が知られており、現在の光半導体素子の活性層に広
く利用されている。近年、井戸層に圧縮歪を導入した歪
多重量子井戸構造(以下、歪MQWと略記する)を活性
層に用いたレーザが、従来の基板に格子整合した井戸層
を用いたMQWを利用したレーザに較べ、素子特性(し
きい値電流、光出力)が向上することが多くの研究機関
から報告されている。素子特性は、井戸層の歪量が大き
くなる程、向上する。
【0003】しかしながら、所望の歪量を持つ井戸層を
基板に格子整合した障壁層で挟み、それらを交互に多層
に積層して、歪MQWを形成すると、歪MQW全体の厚
さがある一定の臨界値(所謂、臨界膜厚)を越えると基
板と歪MQWとの界面にミスフィット転位が発生する。
井戸層の歪が大きい程、臨界膜厚は小さくなる。これ
は、井戸層の歪による応力が井戸層の数が増える毎に蓄
積され、この応力がミスフィット転位の発生を招くから
である。素子特性を向上させるためには、大きな歪を導
入する必要があるが、歪MQWの厚さが臨界膜厚で制限
される。
【0004】これを避けるために、歪補償型MQWが提
案されている。この歪補償型MQWは、圧縮歪を有する
井戸層に対し、引張歪を有する障壁層を組合せることに
より、ミスフィット転位を発生させる応力を相殺させ、
ミスフィット転位の発生を抑制するものである。
【0005】歪補償型MQWを作製する際には、ガイド
ラインとして次の式で定義される実効歪εをほぼゼロに
することが提案されている(特開昭59−74618号
公報、B.I.Miller.et.al.,App
l.Phys.Lett.,58 (1991) 195
2)。
【0006】
【数1】 ここで、hとHは、それぞれ、井戸層と障壁層の厚さ、
εw とεb は、それぞれ、井戸層と障壁層の歪である
(引張歪は−、圧縮歪は+の符号をとるものとする)。
すなわち、実効歪εをできるだけ小さくするように井戸
層及び障壁層の厚さと歪を選ぶことが、ミスフィット転
位の無い歪補償型MQWを成長するための指針である。
【0007】しかし、歪MQWにおいては、たとえ歪補
償型MQWの様に実効歪εをゼロとしてもミスフィット
転位以外の欠陥が発生して光学特性が劣化するという問
題がある。それは、歪MQWが成長するときに成長表面
に凹凸が生じ、この凹凸の振幅は、井戸層および障壁層
を積層する毎に大きくなり、遂には結晶欠陥が発生する
というものである。成長表面の凹凸の発生および凹凸の
振幅の増加は成長表面不安定性(morphological instab
ility )に起因する現象である。
【0008】井戸層の歪を大きくして行くと、ある値よ
り大きな歪では、井戸層が2次元的な成長から3次元的
な成長に変化する(B.Elman,et.al.,A
ppl.Phys.Lett.55巻16号1659〜
1661頁、1989年発行)。
【0009】ここで、2次元的な成長とは、成長が1原
子層毎に行われるものであり、そのため、成長表面は常
に平坦に保たれる。この状態を成長表面が安定であると
いう。3次元的な成長では、成長を始めてからの数原子
層は1原子層毎の成長が起るが、その後、成長表面が不
安定になり、成長表面に凹凸が発生する。更に、表面に
凹凸のある井戸層の上に障壁層を積層すると、障壁層の
成長表面には更に凹凸が生じ、その凹凸の振幅は増加す
る。
【0010】障壁層における凹凸の増加は、歪のある障
壁層はもとより、障壁層が基板に格子整合する場合にも
起こる。この様に、井戸層と障壁層の積層は凹凸を発生
させる原因となり、この凹凸の振幅が大きくなると、や
がてミスフィット転位とは異なる欠陥の発生につなが
る。
【0011】従来、成長表面不安定性に起因する凹凸の
発生や、それに伴う欠陥の発生を抑制する方法として、
(1)(V族原料/III 族原料)比を大きくする、
(2)成長温度を低下させる等の方法がとられてきた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
(1)及び(2)の方法では、成長表面不安定性に起因
する凹凸の発生や、それに伴う欠陥の発生を十分に抑え
ることはできなかった。
【0013】本発明の目的は、歪多重量子井戸構造の成
長において、井戸層および障壁層の成長表面不安定性に
起因する欠陥形成を防止するための成長方法を提供する
ことにある。すなわち、井戸層の成長表面不安定性に起
因する井戸層表面の凹凸の発生を防止し、かつ、凹凸の
ある井戸層の上に成長した障壁層の成長表面不安定性に
起因する凹凸の振幅の増加を抑制することにより欠陥の
発生を防止した歪多重量子井戸構造を提供することにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、歪多重量子井
戸構造の成長方法において、井戸層の成長速度を、成長
表面不安定性の発生を抑制せしめる成長速度よりも高く
することにより、上記目的を達成している。
【0015】また、本発明は、歪多重量子井戸構造の成
長方法におりて、障壁層の成長速度を、成長表面不安定
性の発生を抑制せしめる成長速度よりも高くすることに
より、上記目的を達成している。
【0016】また、本発明は、請求項1記載の発明にお
いて、歪多重量子井戸構造が成長される基板をInPで
形成し、井戸層をInAsPで形成し、上記目的を達成
している。
【0017】また、本発明は、請求項2記載の発明にお
いて、歪多重量子井戸構造が成長される基板をInPで
形成し、障壁層をInGaAsPで形成し、上記目的を
達成している。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明は、井戸層(または障壁
層)の成長速度を、成長表面不安定性を抑制せしめる成
長速度よりも増加させることにより、井戸層(または障
壁層)の成長表面不安定性の発生が抑制される。そのた
め、成長表面不安定性の発生に起因する欠陥の形成が抑
制される。
【0019】成長表面不安定性とは、基板の上におい
て、エピタキシャル成長している膜の表面に、何らかの
原因で凹凸が発生したとき、この凹凸の振幅が膜厚の増
加に伴い増幅される現象である。逆に、成長表面の凹凸
が発生しても、膜厚の増加に伴い、凹凸の振幅が速やか
に減少し、元の平坦な成長表面に戻ることを成長表面が
安定であるという。
【0020】上記において、井戸層の成長速度を、成長
表面不安定性の発生を抑制せしめる成長速度よりも高く
すると、井戸層の成長表面不安定性に起因する井戸層表
面の凹凸の発生を防止する事に効果があり、障壁層の成
長速度を、成長表面不安定性の発生を抑制せしめる成長
速度よりも高くすると、凹凸のある井戸層の上に成長し
た障壁層の成長不安定性をなくす事に効果がある。
【0021】上述のように、井戸層の歪を大きくして行
くと、ある値より大きな歪では、井戸層の成長態様が、
2次元的な成長から3次元的な成長に変化する(B.E
lman,et.al.,Appl.Phys.Let
t.55巻16号1659〜1661頁、1989年発
行)。2次元的な成長では、成長が1原子層毎に行われ
るものであり、そのため、成長表面は常に平坦に保たれ
る。すなわち、成長表面は安定である。3次元的な成長
では、成長を始めてからの数原子層は1原子層毎の成長
が起るが、その後、成長表面が不安定になる。
【0022】そのため、成長表面に凹凸が生じる。すな
わち、膜厚がある臨界値を越えると、成長界面の不安定
性が発生する。成長態様が、2次元的であるか3次元的
であるかに応じて、歪の緩和機構が異なる(Mat.R
es.Soc.Proc.160巻、129〜134
頁、1990年発行、Materials Resea
rch Society)。
【0023】図1に歪単層膜における歪緩和機構を模式
的に示した。基板1の上に歪をもつ井戸層2が成長する
場合、初めの内は、図1(a)に示す様に、平坦な成長
表面2aを保ちながら成長する。その後、2次元的な成
長がなされる場合には、図1(b)に示す様に、ミスフ
ィット転位3の導入により歪の緩和が起こる。すなわ
ち、膜厚がある臨界値(ミスフィット転位の臨界膜厚)
に達すると、基板1と井戸層2との界面にミスフィット
転位3が発生し、歪の緩和が起こる。膜厚の増加に伴い
ミスフィット転位3の線密度が増加し、歪緩和が進行す
るが、ミスフィット転位3が発生してからも平坦な成長
表面を保つ。臨界膜厚については、Matthews
and Blakesleeの理論がある。
【0024】3次元的な成長の場合には、図1(c)に
示す様に、膜厚が増加しある臨界値(3次元成長の臨界
膜厚)を越えると、成長表面2aに凹凸が発生する。膜
厚が増加し、凹凸の振幅が大きくなると、凸部2bで
は、弾性的な歪の緩和が起こり、凹部2cでは、応力の
集中が起こる。そのため、図1(d)に示す様に、凹部
2cに欠陥が発生する。
【0025】以上説明した歪緩和の2つの過程を本明細
書では、便宜的に、前者(2次元的な成長の場合)をミ
スフィット転位モード(以下、MDモードと略記す
る)、後者(3次元的な成長の場合)を3次元成長モー
ド(以下、3Dモードと略記する)と名付け、以下、説
明する。ミスフィット転位の臨界膜厚と3次元成長の臨
界膜厚関係を模式的に図2に示した。ミスフィット転位
の臨界膜厚と歪との関係を太実線L1で示し、3次元成
長の臨界膜厚と歪との関係を細実線L2で示している。
MDモードと3Dモードとの境は歪が1%から2%の範
囲にある。この境界は材料系により多少異なる。
【0026】MDモードと3Dモードの存在は、InG
aAs/GaAs系、SiGe/Si系で確かめられて
いる。InGaAs/GaAs系においては、RHEE
D観察とPLスペクトルのブロードニングから、In組
成が0.25以上で歪緩和モードがMDモードから3D
モードに変化していることが示されている。
【0027】In組成0.25は、歪1.8%に相当す
る。一方、SiGe/Si系では、Ge組成0.3を境
にMDモードから3Dモードに変化している。Ge組成
0.3は、歪1.3%に相当する。また、この他に、I
nGaAs/InP系、GaAsP/GaAs系でも、
MDモードと3Dモードの存在が示唆される報告があ
る。この様に化合物半導体、元素半導体を問わずMDモ
ードと3Dモードの存在が明らかとなっていることか
ら、MDモードと3Dモードの存在は、歪系一般の性質
と考えられる。
【0028】井戸層の歪がMDモードの範囲内であれ
ば、歪補償技術が使える。それは、平坦な井戸層の上に
成長した障壁層は、平坦な成長表面を保ちながら成長す
るからである。そのため、井戸層と障壁層をいくら積層
しても成長表面の平坦性が保たれ、凹凸の発生に起因す
るミスフィット転位以外の欠陥の発生が抑制される。し
かし、井戸層の歪が3Dモードの範囲に入ると歪補償技
術が使えなくなる。それは、井戸層の成長時に発生した
表面の凹凸は、その上に成長する障壁層の成長表面不安
定を誘発するからである。井戸層の表面に発生した凹凸
の振幅は、井戸層と障壁層を積層する毎に大きくなり、
やがてミスフィット転位以外の欠陥を発生させる。
【0029】本発明で取り上げるのは、井戸層の歪が3
Dモードの範囲に入る場合である。基板に所望の歪を有
する井戸層が成長する際、所望の膜厚まで凹凸の発生を
抑制することが課題である。そのため、本発明の第1の
態様では、井戸層の成長速度を増加させることにより、
成長表面不安定性の発生を抑制するものである。すなわ
ち、成長表面に凹凸が発生する臨界膜厚を大きくするこ
とである。実験の結果、成長速度をある値よりも大きく
すると成長表面不安定性の発生を抑制することが出来、
凹凸が発生する臨界膜厚を大きくすることが出来ること
を見い出した。
【0030】次に、障壁層の成長表面不安定性について
説明する。表面に凹凸がある井戸層の上に障壁層が成長
する場合、井戸層の凹凸を埋め戻して平坦になる場合
と、凹凸の振幅が増加する場合がある。前者は、障壁層
の成長において成長表面の不安定性が発生しない場合で
あり、後者は成長表面の不安定性が発生する場合であ
る。各々の場合を模式的に図3に示した。
【0031】図3(a)に示す如く、井戸層2の凹凸が
障壁層4によって埋め戻される場合は、障壁層4の成長
表面4aの不安定性の発生が抑制されていることを意味
する。この様な状況の下では、多数の井戸層2と障壁層
4の積層が可能である。図3(b)に示す如く、井戸層
表面の凹凸が障壁層4の成長により更に増幅されるなら
ば、障壁層の成長表面4aの不安定性が現れたことにな
る。
【0032】この様な状況の下では、層を重ねる毎に表
面の凹凸の振幅が増幅されるため、多数の井戸層2と障
壁層4の積層は不可能である。本発明の第2の態様は、
障壁層4の成長速度を増加させることにより、成長表面
不安定性の発生を抑制するものである。実験の結果、成
長速度をある値よりも大きくすると、成長表面4aの不
安定性の発生を抑制することが出来ることを見い出し
た。
【0033】以下に実施例により本発明に係る歪多重量
子井戸構造の成長方法を説明する。 〔実施例1〕本発明の第1の実施例として、1.55μ
m帯の発光波長をもつInAsP/InGaAsP歪M
QWの成長を説明する。1.55μm帯の発光波長をも
つInAsP/InGaAsP歪MQWは、2.1%の
圧縮歪をもつ厚さ50ÅのInAsP井戸層と、基板の
InPに格子整合する厚さ100ÅのInGaAsP障
壁層からなる。障壁層を構成するInGaAsPの組成
は発光波長にして1.3μmである。InAsP/In
GaAsP歪MQWの典型的な断面構造を図4に示し
た。
【0034】(001)面方位をもつn型InP基板5
上にInPバッファー層6(厚さ1700Å)、発光波
長1.3μmのInGaAsPガイド層7(厚さ100
0Å)、InAsP井戸層8(以下、単に、井戸層8と
記すことがある)とInGaAsP障壁層9(以下、単
に、障壁層9と記すことがある)とを交互に積層し、井
戸層8を4層、障壁層9を5層としてなる歪多重量子井
戸構造10、発光波長1.3μmのInGaAsPガイ
ド層11(厚さ1000Å)、InPキャップ層12
(厚さ800Å)を、この順序に有機金属分子線エピタ
キシー(MOMBE)法で成長させた。MOMBE法に
よる成長はVGSemicon社製V−400CBE装
置を用いて行った。
【0035】III 族原料はトリメチルインジウム(TM
I)とトリエチルガリウム(TEG)を用い、V族原料
はフォスフィン(PH3 )とアルシン(AsH3 )を用
いた。成長時の基板温度は510℃である。基板温度は
InSbの融点で校正したパイロメータで測定した。
【0036】図5は、図4に示したInAsP/InG
aAsP歪MQWのPL強度を井戸層8の成長速度に対
してプロットしたものである。井戸層8の組成は一定と
し、井戸層8の成長速度だけを変えた。井戸層8の成長
速度は、TMIの供給量で制御した。障壁層9およびI
nGaAsPガイド層7、11の組成および成長速度は
変えていない。井戸層8の成長速度が1.7Å/se
c.(図5プロットA)の時には、全く発光しなかった
が、成長速度を2.5Å/sec.(図5プロットB)
にすると発光が得られた。
【0037】しかし、ウエハ面内の均一性が良くなく、
発光強度に分布が生じていた。井戸層8の成長速度が
3.3Å/sec.(図5プロットC)のときには、強
いPL発光が得られ、かつウエハ面内の均一性も良くな
った。各プロットB〜Dに付随している縦線の長短はP
L発光強度のばらつきの程度を表しており、このことか
ら成長速度が3.3Å/sec.の場合、ウエハ面内の
PL強度の均一性が向上していることがわかる。
【0038】更に、井戸層8の成長速度を増加し、成長
速度を5.0Å/sec.(図5プロットD)にして
も、PL強度とウエハ面内のばらつきは、成長速度を
3.3Å/sec.とした場合と同程度であった。この
ことから、PL強度は井戸層8の成長速度に依存し、井
戸層8の成長速度が3.3Å/sec.以上の場合に、
強いPL発光が得られることが分かった。
【0039】図6は、InAsP/InGaAsP歪M
QWの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果
である。図6(a)は、井戸層8の成長速度が1.7Å
/sec.の場合を模式的に示したもので、井戸層8と
その上に成長した障壁層9との界面が揺らいでいる。
【0040】その揺らぎは、井戸層8を積層する毎に大
きくなっている。5層の障壁層9のうち下から第4層目
の障壁層9において、界面8aの揺らぎが上方に凸にな
っている辺りから、(111)面に沿う欠陥が発生して
いる。この欠陥が発生しているため、発光しなかったも
のと考えられる。井戸層8とその上に成長した障壁層9
との界面8aが揺らいでいるところから考えて、井戸層
8の成長において、井戸層8の表面に凹凸が発生して、
界面8aが揺らいだものと考えられる。
【0041】図6(b)は、井戸層8の成長速度が3.
3Å/sec.の場合のもので、井戸層8とその上に成
長した障壁層9との界面は平坦であり、(111面)に
沿う欠陥は見られなかった。井戸層8の成長において表
面に凹凸が発生しなかったため、井戸層8とその上に成
長した障壁層9との界面が平坦になったものと考えられ
る。すなわち、井戸層8の成長速度を1.7Å/se
c.から3.3Å/sec.に増加すると、成長表面不
安定性の発生を抑制せしめる成長速度よりも井戸層8の
成長速度が高くなり、井戸層8の成長表面の不安定性が
抑制され、平坦な成長表面が得られるようになったもの
と考えられる。
【0042】〔実施例2〕本発明の第2の実施例とし
て、2μm帯の発光波長をもつInGaAs/InGa
AsP歪MQWの成長を説明する。2μm帯の発光波長
をもつInGaAs/InGaAsP歪MQWは、1.
65%の圧縮歪をもつ厚さ115ÅのInGaAs井戸
層と、基板のInPに格子整合する厚さ200ÅのIn
GaAsP障壁層からなる。この障壁層を構成するIn
GaAsPの発光波長は1.55μmである。
【0043】図7にInGaAs/InGaAsP歪M
QWの典型的な断面構造を示す。(001)面方位をも
つn型InP基板13上にInPバッファー層14(厚
さ1700Å)、発光波長1.3μmのInGaAsP
ガイド層15(厚さ1000Å)、InGaAs井戸層
16(以下、単に、井戸層16と記すことがある)とI
nGaAsP障壁層17(以下、単に障壁層17と記す
ことがある)とを交互に積層し、井戸層16を4層、障
壁層17を5層としてなる歪多重量子井戸構造18、発
光波長1.3μmのInGaAsPガイド層19(厚さ
1000Å)、InPキャップ層20(厚さ800Å)
を、この順序に有機金属分子線エピタキシー(MOMB
E)法で成長させた。
【0044】MOMBE法による成長はVGSemic
on社製V−400CBE装置を用いて行った。III 族
原料はトリメチルインジウム(TMI)とトリエチルガ
リウム(TEG)を用い、V族原料はフォスフィン(P
3 )とアルシン(AsH3)を用いた。成長時の基板
温度は510℃である。基板温度はInSbの融点で校
正したパイロメータで測定した。
【0045】図8は、図7に示したInGaAs/In
GaAsP歪MQWのPL強度を、障壁層17の成長速
度に対してプロットしたものである。障壁層17の組成
は一定とし、障壁層17の成長速度だけを変えた。障壁
層17の成長速度は、TMIとTEGの供給量で制御し
た。井戸層16およびInGaAsPガイド層15、1
9の組成および成長速度は変えていない。障壁層17の
成長速度の増加に伴いPL強度が増加している。障壁層
17の成長速度が8.5Å/sec.(図8プロット
F)以上で最もPL強度が大きくなった。成長速度が
8.5Å/sec.の時のPL強度は、成長速度4.4
Å/sec.(図8プロットE)の時の約4倍である。
【0046】図9は、InGaAs/InGaAsP歪
MQWの断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結
果を模式的に示したものである。図9(a)は、障壁層
17の成長速度が4.4Å/sec.の場合のもので、
障壁層17とその上に成長した井戸層16との界面が揺
らいでいる。その揺らぎは、障壁層17を積層する毎に
大きくなっている。
【0047】4層の井戸層16のうち下から第3層目の
井戸層16において、界面17aの揺らぎが上方に凸に
なっている辺りから、(111)面に沿う欠陥が発生し
ている。この欠陥が発生しているため、PL強度が弱か
ったものと考えられる。障壁層17とその上に成長した
井戸層16との界面17aが揺らいでいるところから考
えて、障壁層17の成長において、障壁層17の表面に
凹凸が発生して、界面が揺らいだものと考えられる。
【0048】図9(b)は、障壁層17の成長速度が
8.5Å/sec.の場合のもので、障壁層17とその
上に成長した井戸層16との界面は平坦であり、(11
1面)に沿う欠陥は見られなかった。障壁層17の成長
において表面に凹凸が発生しなかったため、障壁層17
とその上に成長した井戸層16との界面17aが平坦に
なったものと考えられる。すなわち、障壁層17の成長
速度を8.5Å/sec.に増加すると、成長表面不安
定性の発生を抑制せしめる成長速度よりも障壁層17の
成長速度が高くなり、障壁層17の成長表面不安定性が
抑制され、平坦な成長表面が得られるようになったもの
と考えられる。
【0049】なお、上記実施例では、基板上に有機金属
分子線エピタキー法により各層を成長させる場合につい
て説明しているが、有機金属気相エピタキシー法により
成長させる場合にも適用できる。また、本発明に係る歪
多重量子井戸構造の成長方法は、引張歪をもつMQWの
作成にも適用できる。
【0050】
【発明の効果】本発明の歪多重量子井戸構造の成長方法
を用いれば、井戸層および障壁層の成長における、成長
表面の不安定性の発生が抑制されるため、凹凸の発生に
起因する欠陥の形成が抑制される。そのため、特性の良
い歪多重量子井戸構造を成長させることができるという
顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は歪単層膜の歪緩和機構を説明
する図である。
【図2】ミスフィット転位と3次元成長の臨界膜厚との
関係を模式的に示すグラフである。
【図3】(a)及び(b)は障壁層の成長の様子を模式
的に示す図である。
【図4】InAsP/InGaAsP歪MQWの断面構
造図である。
【図5】InAsP/InGaAsP歪MQWのPL強
度に及ぼす井戸層の成長速度の影響を示すグラフであ
る。
【図6】(a)及び(b)はInAsP/InGaAs
P歪MQWの断面TEM像の模式図である。
【図7】InGaAs/InGaAsP歪MQWの断面
構造図である。
【図8】InGaAs/InGaAsP歪MQWのPL
強度に及ぼす障壁層の成長速度の影響を示すグラフであ
る。
【図9】(a)及び(b)はInGaAs/InGaA
sP歪MQWの断面TEM像の模式図である。
【符号の説明】
8 InAsP井戸層 9 InGaAsP障壁層 10 歪多重量子井戸構造 16 InGaAs井戸層 17 InGaAsP障壁層 18 歪多重量子井戸構造

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 歪多重量子井戸構造の成長方法におい
    て、井戸層の成長速度を、成長表面不安定性の発生を抑
    制せしめる成長速度よりも高くすることを特徴とする歪
    多重量子井戸構造の成長方法。
  2. 【請求項2】 歪多重量子井戸構造の成長方法におい
    て、障壁層の成長速度を、成長表面不安定性の発生を抑
    制せしめる成長速度よりも高くすることを特徴とする歪
    多重量子井戸構造の成長方法。
  3. 【請求項3】 歪多重量子井戸構造が成長される基板が
    InPで形成され、井戸層がInAsPで形成されてい
    ることを特徴とする請求項1記載の歪多重量子井戸構造
    の成長方法。
  4. 【請求項4】 歪多重量子井戸構造が成長される基板が
    InPで形成され、障壁層がInGaAsPで形成され
    ていることを特徴とする請求項2記載の歪多重量子井戸
    構造の成長方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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