JPH1130580A - 粒子測定装置 - Google Patents

粒子測定装置

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JPH1130580A
JPH1130580A JP10115312A JP11531298A JPH1130580A JP H1130580 A JPH1130580 A JP H1130580A JP 10115312 A JP10115312 A JP 10115312A JP 11531298 A JP11531298 A JP 11531298A JP H1130580 A JPH1130580 A JP H1130580A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この発明は、粒子測定装置に関し、特に、粒
子の凝集塊の計数を行うことを課題とする。 【解決手段】 試料中の各粒子から複数の特徴パラメー
タを抽出する特徴パラメータ抽出手段と、抽出された特
徴パラメータに基づいて第1の分布図を作成する分布図
作成手段と、作成された第1の分布図上において、着目
粒子を含む分布集団を分画する第1の分画手段と、分画
された着目粒子を含む分布集団に対して所定の判別基準
を設定し、その判別基準に基づいて前記分布集団の中の
粒子を着目粒子か非着目粒子かに判別する判別手段と、
その判別手段の判別結果に基づいて着目粒子の数を計数
する計数手段とからなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、試料中の着目粒
子を類似の非着目粒子から区別して検出、計数すること
ができる粒子測定装置に関する。例えば血小板や血小板
凝集塊を精度良く検知、計数するのに有用である。
【0002】
【従来の技術】従来から、赤血球、白血球、血小板等の
粒子の計数や解析は、フローサイトメータを用いて電気
的又は光学的な特徴パラメータを求めることによって行
なわれている。一方、血小板の機能低下や機能亢進を調
べるために、血小板機能検査が行なわれている。血小板
機能検査には、血小板粘着能や血小板放出能など種々の
検査があるが、血小板の凝集を調べる血小板凝集能検査
がよく実施されている。
【0003】血小板凝集能検査では、多血小板血漿PR
P(Platelet Rich Plasma)中の血小板の凝集の程度を
吸光度の変化として測定する吸光度法(日本内科学会雑
誌第80巻 第6号:平成3年6月10日)が従来から
用いられている。この吸光度法は、一定量のPRPに凝
集惹起物質を加え、血小板凝集塊による遮光の度合(吸
光度)を測定するものであり、比較的大きな凝集塊(単
一血小板が数百個程度凝集したもの)を検出するのに用
いられている。
【0004】一方、突発性血小板減少症等において血小
板数が数万/μl以下になる場合がある。また、化学療
法や骨髄移植の際には血小板が計数できないレベルにま
で減少する。血小板が減少すると血小板輸血や造血剤投
与が必要となるが、その際の判断基準として血小板数が
用いられている。このように正確な血小板数を得ること
は重要なことである(特に血小板低値の場合)。血小板
数の測定精度を低下させる要因として、ゴミや細菌や気
泡などの粒子成分や電気的ノイズなどの出現が考えられ
る(以下、ブランクと総称することにする)。例えば、
シース液交換直後にシース液中に粒子成分が混入するこ
とがある。これらが血小板の信号と類似した信号を発し
て誤計数されると血小板が偽高値を示すことになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】血小板凝集能検査に関
して、臨床の現場では、成人病の一つである動脈硬化
症,高脂血症,糖尿病,高血圧症などの血栓性の疾患に
おいて、血小板の機能が亢進することが知られており、
血栓となる前のいわゆる血栓準備状態を早期発見するこ
とが望まれている。
【0006】この血栓準備状態では、初期段階として血
小板の微弱な凝集(数個程度の凝集)が現れるため、微
弱な凝集を検出できる測定方法が必要となる。抗血小板
剤の開発や薬剤開発時の安全性試験においても、微弱凝
集の検出が望まれている。また、血小板の凝集は、抗凝
固剤使用時にも検体により生じることがある。血小板凝
集が発生すると、血小板の計数が正確にできず、血小板
数の偽低値や網血小板の偽高値が生じていた。
【0007】そこで、この発明は、以上のような事情を
考慮してなされたものであり、着目粒子(血小板凝集塊
や血小板など)を他の非着目粒子から識別して正確に計
数することができる粒子測定装置を提供することを課題
とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、試料中の各
粒子から複数の特徴パラメータを抽出する特徴パラメー
タ抽出手段と、抽出された特徴パラメータに基づいて第
1の分布図を作成する分布図作成手段と、作成された第
1の分布図上において、着目粒子を含む分布集団を分画
する第1の分画手段と、分画された着目粒子を含む分布
集団に対して所定の判別基準を設定し、その判別基準に
基づいて前記分布集団の中の粒子を着目粒子か非着目粒
子かに判別する判別手段と、その判別手段の判別結果に
基づいて着目粒子の数を計数する計数手段とからなるこ
とを特徴とする粒子測定装置を提供するものである。こ
こで特徴パラメータは、散乱光信号強度と散乱光パルス
幅とを用いることができるが、特に前方散乱光信号強度
(FSC:Forward Scatter Intensity)、前方散乱光
パルス幅(FSW:Forward Scatter Width)を用いる
ことができる。さらに、2次元スキャッタグラムを作成
するために、蛍光強度(FL:Fluorescence Intensit
y)を用いることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面に示す実施の形態に基
づいてこの発明を詳述する。なお、これによってこの発
明が限定されるものではない。この発明が対象とする粒
子は、血液や尿に含まれる血球や細胞を主としている
が、酵母菌や乳酸菌等の微生物等を測定対象としてもよ
い。特に、この発明では、血液中に含まれる血小板の凝
集塊や血小板を測定対象とする。
【0010】血球や細胞の種類を分類するために、細胞
内の顆粒や核酸等を特異的な蛍光試薬と反応させ、その
蛍光強度を計測することがある。ここで、特に血小板を
赤血球や白血球から弁別するために使用可能な蛍光試薬
としては、オーラミンO、アクリジンオレンジ、プロピ
ディウムアイオダイド、エチジウムブロマイド、ヘキス
ト33342、ピロニンY、ローダミン123などがあ
る。このような蛍光試薬を用いれば、血液中に含まれる
血小板の凝集塊の蛍光強度の測定を好適に行うことがで
きる。
【0011】特徴パラメータ抽出手段は、前記した粒子
の特徴パラメータを電気的あるいは光学的に抽出する手
段である。たとえば、粒子を含む試料液をシース液で包
んで流すシースフローセル、細流化された試料液に光を
照射する光照射手段、粒子によって散乱された光を検出
して電気信号を出力する検出手段からなる。
【0012】シースフローセルは、粒子を含む試料液を
シース液で包んで流すことにより流体力学的効果によっ
て細い試料液の流れを形成させることのできる器具であ
り、これには、従来から公知のものを用いることができ
る。
【0013】光照射手段は、レーザ、ハロゲンランプ又
はタングステンランプのような連続的に光を照射する連
続光源を用いることができる。検出手段としては、電気
的検出によるもの、光学的検出によるものなどを用いる
ことができる。例えば、光照射手段によって照明された
粒子を光学的に検出し粒子の散乱光や蛍光などの光の強
度を示す電気信号を出力する光検出手段(例えば、フォ
トダイオード,フォトトランジスタまたはフォトマルチ
プライヤチューブ)を用いることができる。
【0014】検出手段から出力された電気信号は、後の
計数処理などのために、A/D変換されて、RAM等の
記憶手段に粒子の特徴パラメータとして記憶される。
【0015】また、必要に応じて、粒子の画像を撮影す
る撮影手段を備えてもよい。撮影手段は、2次元画像を
撮影するビデオカメラが通常使用されるが、微弱な蛍光
像を増幅するイメージインテンシファイアを使用しても
よい。さらに、そのイメージインテンシファイアにはシ
ャッター手段を備えてもよい。
【0016】また、粒子撮影のために試料流に光を照射
する光源を備えるのが好ましいが、これには、レーザ,
ハロゲンランプ又はタングステンランプのような連続的
に光を照射する連続光源、又はパルスレーザ(例えば、
Spectra-Physics 社製、7000シリーズ)やマルチストロ
ボ(例えば、(株)菅原研究所製、DSXシリーズ)の
ような断続的に光を照射する断続光源を用いることがで
きる。
【0017】粒子撮影のために連続光源を用いる場合に
は、通常、光シャッターを組合わせて断続光源として用
いることが好ましい。そして、光シャッターとしては、
公知の音響光学効果素子(acounsto-optic modulator)
又は電気光学効果素子(electro-optic modulator)な
どを用いることができる。この光源と撮影手段とは、シ
ースフローセルを挟んで配置され、試料流に対して直交
するように光源から光が照射され、その光軸上に撮影手
段が配置されることが好ましい。
【0018】また、この発明の分布図作成手段,分画手
段,判別手段,計数手段は、CPU,ROM,RAM,
タイマー,I/Oインタフェース等からなるマイクロコ
ンピュータによって構成でき、各手段の機能は、CPU
がRAM等に記憶されたプログラムの手順に従って動作
することによって実行される。
【0019】分布図作成手段は、2つの特徴パラメータ
に基づく分布図を作成するものであるが、この分布図を
通常2次元スキャッタグラムと呼ぶ。たとえば、2次元
スキャッタグラムは、縦軸に前方散乱光信号強度(FS
C)をとり、横軸に蛍光強度(FL)をとって各粒子の
点をプロットして作成される。
【0020】また、縦軸に前方散乱光信号強度(FS
C)をとり、横軸に前方散乱光パルス幅(FSW)をと
って作成することもできる。一般に、前方散乱光信号強
度(FSC)は粒子の大きさ、前方散乱光パルス幅(F
SW)は粒子の長さ,蛍光強度(FL)は粒子のRNA
含有量を表わすものである。
【0021】分布図が作成されると、一般的に粒子の種
類ごとに分布集団が形成されるが、統計学的手法によ
り、その分布図をそれぞれの粒子の分布集団の領域ごと
に分画することができる。特開平1−308964号公
報に記載された「二次元分布分画方法」を用いることが
できる。
【0022】また、分画手段によって分画された粒子の
分布集団は、特定の形状を有する分布を示す場合があ
り、たとえば特定の直線上あるいは曲線上にほぼ整列し
て分布する場合がある。ある粒子の分布集団が分布図上
の特定の曲線上にほぼ整列して分布する場合に、この曲
線を、推定曲線あるいは判別曲線と呼ぶ。たとえば、後
述するように、前方散乱光信号強度(FSC)と前方散
乱光パルス幅(FSW)によって示される血小板の分布
集団は、sin2xの関数として表わされる推定曲線上
に整列する。
【0023】判別手段は、この推定曲線上に整列する分
布集団から所定の距離だけ離れた領域に存在する粒子を
ある場合には着目する特異な粒子と判別することがで
き、また別の場合には着目しない特異な粒子と判別する
ことができる。
【0024】たとえば、判別手段が推定曲線を中心とし
て分布する血小板の粒子集団の度数分布を求め、計数手
段が、推定曲線からこの度数分布の平均値+2×標準偏
差の距離以上離れた領域(これを第2領域と呼ぶ)に存
在する粒子を計数する。 後述するように、血小板の分
布集団について計数された上記第2領域に存在する粒子
は、信号のパルス高さの割にパルス幅が長く、推定曲線
上に乗らない集団であり血小板の凝集塊となる。これ
は、撮影手段による粒子の画像撮影により確認されてい
る。
【0025】この発明の粒子測定装置の一実施例におけ
る光学系の部分を図1に示す。この実施例では、散乱光
や蛍光を検出するための連続発生レーザ光源21と、粒
子画像を撮像するためのパルス光源8との2つの光源を
設けている。この2つの光源21,8からの光L1,L
2は、シースフローセル5(図1では紙面に直角方向に
試料流が流れる)に対して互いに直交するように90°
交差させて照射している。
【0026】また、この実施例では、粒子画像を撮像す
るためのパルス光は、図2に示すようにシースフローセ
ル5内の試料流に対して、連続発生レーザ光源21の照
射位置より(例えば0.5mm程度)下流側に照射するよ
うにしている。このような照射位置をずらすことによっ
て、細胞による散乱光や蛍光に影響されない明瞭な粒子
画像を撮像することができる。
【0027】連続発生レーザ光は、コンデンサレンズ2
4によって細く絞られてシースフローセル5に導かれた
試料流に照射される。この照射領域に粒子が流れてくる
と、その粒子による散乱光や蛍光が集光レンズ25によ
って集められ、散乱光はダイクロイックミラー26によ
って反射され、フォトダイオード27で受光される。緑
色,赤色の蛍光は、それぞれダイクロイックミラー2
8,ミラー29によって反射され、光電子増倍管30,
31で受光,増倍される。
【0028】フォトダイオード27,光電子増倍管3
0,31によって検出された散乱光強度信号S1および
蛍光強度信号S2,S3は、図示していない信号処理装
置に渡され、各検出信号パルスの高さ,面積,幅等の情
報がA/D変換されたデータとして得られる。たとえ
ば、信号処理装置により、散乱光強度a,信号パルス幅
b,緑蛍光強度c,赤蛍光強度dの4つの特徴パラメー
タが得られる。そして、それらのパラメータを用いて各
粒子の種類を実時間で同定する。
【0029】ビデオカメラによる粒子画像の撮影は、あ
らかじめ撮影対象として指定された種類の粒子(たとえ
ば血小板)だけを選別して行うようにすることもでき
る。すなわち、ある粒子の特徴パラメータが、撮影対象
としている種類の粒子の特徴パラメータに合致している
かどうかを実時間で比較し、その結果撮影対象としてい
る粒子であると判定されれば、その粒子を撮像するため
の発光トリガ信号をパルス光源8に対して供給する。
【0030】パルス光源8は、発光トリガ信号Tsによ
って一瞬だけ(数十ナノ秒程度)発光するタイプの光源
であり、試料流の流速が数m/秒と高速であっても、流
れる粒子をブレ無く撮像することができる。パルス光は
図2に示すように、光ファイバー22でシースフローセ
ル5へ導かれ、コンデンサレンズ23によって細く絞ら
れて試料流に照射される。光ファイバー22を介して照
射することにより、パルス光のコヒーレンシーが落ち、
回折縞の少ない粒子画像を撮像することができる。試料
流を透過したパルス光は、投影レンズ24によってビデ
オカメラ10の受光面に結像され、細胞の透過光像が撮
像される。ビデオカメラ10からのビデオ信号Vsは画
像処理装置11に渡され、ディジタル画像として記憶,
保存される。
【0031】また、画像処理装置11では、記憶された
粒子画像を解析し、粒子像のエッジ抽出,面積,円相当
径,円形度などの画像パラメータが算出される。なお、
この発明では、パルス光源8,ビデオカメラ10,画像
処理装置11は、粒子の画像を撮影して、測定された粒
子が血小板,分裂赤血球,あるいは分裂白血球であるか
どうか、さらにはゴミなどの不要粒子であるかを確認す
るために用いられる付随的な装置であり、2次元スキャ
ッタグラムの作成や各粒子領域の分画処理には直接寄与
していない。
【0032】散乱光強度や蛍光強度等の特徴パラメータ
a〜dのパラメータが組合せられ、2次元スキャッタグ
ラムの作成,表示が行われ、さらに所定の粒子の分画,
粒子数の算出が行われる。以上が、この発明の粒子測定
装置の構成の概要である。
【0033】次に、この発明の粒子測定装置を、血小板
を含む血液試料に適用し、血小板の凝集塊の検出,計数
をする実施例について説明する。この場合、着目粒子は
血小板凝集塊であり、非着目粒子は例えば未凝集の血小
板(網血小板も含む)である。図3に、この発明の血小
板凝集の検出フローチャートを示す。主として、次のS
1からS4までの4つの処理からなる。
【0034】前処理S1:全血試料200μLが、この
発明の測定装置内に吸引され、そのうちの10μLがこ
の測定に使用される。測定に使用される試料は、直ちに
40μLの2.6%オーラミンO試薬溶液(95.9%
エチレングリコール)と、1950μLの希釈液(バ
ッファ)と混合される。この混合によって、血小板は非
常に短い時間内に蛍光染色される。
【0035】検出処理S2:前処理S1にて混合され蛍
光染色された試料液2.8μLは、シースフローセルに
おいて、488nmのアルゴンイオンレーザ光線が照射
される。試料液中の各粒子で散乱されたレーザ光は、フ
ォトダイオードとフォトマルチプライヤにおいて光電変
換され、前方散乱光強度(FSC)と蛍光強度(FL)
とが測定される。光電変換された電気信号は、ピーク値
においてサンプルホールドされ、さらにA/D変換され
て、特徴パラメータとして信号処理装置に与えられる。
そして、前方散乱光パルス幅FSWは、前記FSCの時
間的情報を解析することによって求められる。
【0036】解析処理S3:蛍光強度FLをX軸に、前
方散乱光強度FSCをY軸にとった第1のスキャッタグ
ラムAと、前方散乱光パルス幅FSWをX軸に、前方散
乱光強度FSCをY軸にとった第2のスキャッタグラム
Bを作成し、これらのスキャッタグラム上において各粒
子集団を分画し、分画した領域内のドット数をカウント
することによって凝集率等を算出する。この解析処理に
ついては後述する。
【0037】出力処理S4:解析処理S3で算出された
凝集率等の結果やスキャッタグラムを、表示あるいは印
刷装置に出力する。以上が、この発明のフローチャート
であるが、4つの処理(S1からS4)が、各検体ごと
に繰り返され、各検体ごとに血小板の凝集率等が求めら
れる。これらの4つの処理は、信号処理装置内のマイク
ロコンピュータによって実現できる。
【0038】図4に、解析処理S3のフローチャートを
示す。信号処理装置において、蛍光強度FLをX軸、前
方散乱光強度FSCをY軸とした第1のスキャッタグラ
ムAをRAM上に展開して作成する(ステップS5)。
図5に、第1のスキャッタグラムAの一実施例を示す。
ステップS6において、第1のスキャッタグラムAを赤
血球領域と血小板領域の2つに分画する。ここで、分画
する方法としては、特願平1−308964号公報に記
載された「二次元分布分画方法」を用いることができ
る。この方法によれば、第1のスキャッタグラムAの左
上に存在する赤血球領域と下方部分に存在する血小板領
域を分画する分画線を引くことができる。着目粒子であ
る血小板凝集塊は下部の領域に存在している。
【0039】ステップS7において、第1のスキャッタ
グラムAの下方部分に存在する血小板領域内の粒子につ
いて、前方散乱光パルス幅FSWをX軸,前方散乱光強
度FSCをY軸とした第2のスキャッタグラムBをRA
M上に展開して作成する。
【0040】図6に、図5に示した血小板領域内の粒子
の分布を示した第2のスキャッタグラムBの一実施例を
示す。この図によると、血小板領域内のほとんどの粒子
(ここでは未凝集血小板)の分布は、ほぼ一つの曲線上
に整列していることがわかる。この曲線を推定曲線と呼
ぶ。ステップS8において、この推定曲線を近似的に求
める。すなわち、最小二乗法を用いて粒子の分布形状に
対応する曲線の関数を求める。ここでは、推定曲線はサ
イン二乗関数として近似することにする。一般に、フロ
ーセルを粒子が通過した時に検出される電気信号はパル
ス波形として取り出されるが、この波形はサイン二乗関
数に近似できることが知られているからである。
【0041】パルス波形の高さをY,幅をXとすると、
パルス高とパルス幅の関係は次式で表わされる。 Y=αsin2X………… (1) ここで、αは定数であり、パルス高のピーク値(Heigh
t)を示す。あるX軸上の一点X1(0<X1<π/2)
において、パルスの幅Widthは、次式で表わされる。 Width=π−2X1…………(2)
【0042】このとき、X1におけるディスクリ位置
(Thresh)では、 Thresh=αsin21…………(3) が成立しているので、次式が導かれる。
【0043】
【数1】
【0044】したがって、パルス高のピーク値Heig
htは、次式で表わされる。
【0045】
【数2】
【0046】一方、第2のスキャッタグラムBにおい
て、Y軸の前方散乱光強度FSCはパルス高Heigh
tに対応し、X軸の前方散乱光パルス幅FSWはパルス
幅Widthに対応している。図6に示した推定曲線
は、(5)式をもとに描いたものである。図6によれ
ば、血小板領域の粒子分布は、ほぼこの推定曲線付近に
沿っているが、前方散乱光パルス幅FSWが大きくなれ
ばなるほど、粒子分布はこの推定曲線から離れているこ
とがわかる。
【0047】これは、凝集のない血小板は通常円形に近
い対称形状であるため、検出される電気信号は左右対称
のパルス波形となり、この推定曲線に沿うことを示して
いる。一方、凝集塊は、そのサイズは大きく非対称形状
であるため、電気信号のパルス幅が大きくなる。したが
って、図6に示すように、パルス幅が大きくなるほど粒
子分布は推定曲線の右方にずれる傾向を示し、凝集塊は
この曲線からずれた領域に存在する。このように、パル
ス幅の大きな粒子の中に凝集塊が存在することは、検出
処理S2と連動した粒子の画像撮影によっても確かめら
れている。
【0048】次に、ステップS9において、推定曲線付
近に分布する血小板の分布集団の度数分布を計算する。
すなわち、スキャッタグラムBの推定曲線上の分布集団
のドットを累積し、横軸に推定曲線からの距離,縦軸に
ドット数をプロットした度数分布を作成する。この度数
分布から、この分布集団の平均値(AV)と標準偏差
(SD)が求められる。
【0049】ステップS10において、凝集塊判定用の
閾値を決定する。閾値は、利用者が入力してもよく、ま
たは、RAM等に予め設定しておいてもよい。ここで
は、度数分布より、平均値+標準偏差×2(AV+2S
D)の地点を閾値とし、これを超える領域に凝集塊が含
まれると考えることにする。
【0050】ステップS11において、AV+2SDを
超える領域に存在するドットを計数する。ここで計数さ
れたドット数を凝集塊の個数$Aggと定義する。ステ
ップS12において、血小板の凝集率Agg%及び凝集
濃度Agg#等を計算する。
【0051】スキャッタグラムAで求められた血小板領
域内の総ドット数を$PLTとすると、凝集率Agg%
は次式で求められる。 Agg%=$Agg/$PLT×100…………(6) 全血における血小板数PLT#(個数/μL)は、次式
より求められる。 PLT#=$PLT÷分析試料容積÷希釈倍率…………(7) さらに、凝集濃度Agg#は次式より求められる。 Agg#=PLT#×Agg%÷100…………(8)
【0052】図6に示したスキャッタグラムBにおいて
は、各数値は次のように求められる。 $Agg=18 $PLT=1059 Agg%=1.7(%) すなわち、血小板の凝集塊は全血小板数の約1.7%
で、PLT#=250×103(個数/μL)であった
とすると、4250(個/μL)程度存在していること
がわかる。
【0053】図6のスキャッタグラムでは、X軸の右方
向にいくほど凝集塊は大きいことが知られている。図6
に示すように、凝集塊領域を3等分するように、2つの
閾値曲線を設定し、それぞれの領域を大凝集塊L−Ag
g,中凝集塊M−Agg,小凝集塊S−Aggと定義す
る。また、この3つの領域の凝集率を、それぞれL−A
gg%,M−Agg%,S−Agg%とする。
【0054】凝集塊領域に含まれる粒子数(Agg#)
に対する各領域の粒子数の比率を求めることによって、
図6の検体においては、L−Agg%=0.0%,M−
Agg%=0.7%,S−Agg%=99.3%とな
る。小凝集塊S−Aggの領域は、画像撮影によれば2
〜4個程度の凝集塊が存在する領域であり、いわゆる微
弱凝集の領域と定義できる。したがって、各検体につい
て、前記したのと同様の手順によって小凝集塊S−Ag
gの領域の粒子数及び凝集率を求めることによって、血
小板の微弱凝集の検出が可能である。
【0055】次に、この発明の粒子測定装置を、血小板
を含む血液試料に適用し、血小板を正しく検出、計数す
る実施例について説明する。この場合、着目粒子は血小
板(網血小板を含む)であり、着目粒子の検出を阻害す
る非着目粒子は例えばブランクである。
【0056】フローサイトメータにおけるレーザビーム
強度はガウシャン分布を呈しており、フローセルの中心
において短径(流れ方向の径)が例えば8μm、長径
(流れと直交する方向)が例えば200μmの楕円形状
に集光されている。これは試料流中の粒子の位置によっ
てレーザビームの照射強度が変わることのないようにす
るためである。ところでレーザビームは試料流の外側の
シース液流にも照射されている。もし、シース液中にゴ
ミや気泡が混入していると、それら粒子により発生した
光信号を光検出器で検出してしまう。フローセルを流れ
るシース液量は試料液量よりも圧倒的に多いのでわずか
な粒子成分が混入しているだけでも問題となる。フィル
タを使ってシース液中の粒子成分を除去することも考え
られるが流体系が複雑になる。そこで信号処理の面から
この問題を解決する。
【0057】シース液及び試料液はフローセル内で層流
を形成しており、フローセル内壁付近を通過する粒子は
中心流速の約半分の速度になる。すなわちシース液流中
の粒子の流速は試料流中の粒子の流速より遅い。このこ
とから、シース液中に混在する粒子は試料液中の粒子に
比べてパルス高さの割にパルス幅が大きい信号となり、
両者を識別することは可能となる。ショットノイズは、
装置内の電気素子や電気回路、或いは外部からのノイズ
によって生じるものである。これらのノイズ信号は高周
波成分を含んでいるため、粒子信号と比べるとパルス高
の割にはパルス幅は小さい。よって両者を識別すること
は可能となる。
【0058】以下、解析処理について説明する。図7
に、この実施例における解析処理のフローチャートを示
す。まず、第1のスキャッタグラムCを作成する(ステ
ップS5)。図8(a)に、この第1のスキャッタグラ
ムCの一実施例を示す。このスキャッタグラムCは、意
図的にシース液中に微小粒子成分を混入させて血液を測
定して得られたものである。血小板領域からブランクが
出現する可能性のあるブランク領域を細分画する(ステ
ップS13)。ここではブランク領域を血小板領域にお
いて原点に近い領域とした。
【0059】次に、ブランク領域の粒子について第2の
スキャッタグラムDを作成する(ステップS7)。図8
(b)に、第2のスキャッグラムDの一実施例を示す。
推定曲線から離れた領域の粒子をブランクと判別し、集
団と区別する。血小板はフローセル中央を高速に流れ対
称形状であり推定曲線に沿う。一方、シース液中の粒子
はフローセルを低速に流れるので推定曲線の右方に分布
する。パルス幅の狭いノイズ信号が存在していれば推定
曲線の左方に分布する。ブランクと判別された粒子数を
計数し、第1のスキャッタグラムCの血小板領域の粒子
数から減算し血小板数を得る(ステップS14)。血小
板数は、上記ブランク判別を行わない場合には19.0
〔×104/μl〕であったが、ブランク判別した場合
には16.1〔×104/μl〕であった。
【0060】この実施例に、撮影用のパルスレーザ及び
ビデオカメラからなる撮像部、その撮像部を動作させる
ための撮像制御部及び得られた画像を画像処理する画像
処理部を搭載し、光検出手段で得られた粒子信号から特
徴パラメータを抽出しその特徴パラメータの値に基づい
て試料流領域を撮影してもよい。当該粒子が試料流中に
存在していた場合には画像中にその粒子が写っている
が、当該粒子がシース液中に存在していた場合には粒子
像が写っていない画像となる。そこで画像処理部におい
て撮像画像中に粒子があるかないかを判別基準として粒
子の種類を判別する。
【0061】この粒子撮像、画像判定機能を搭載するこ
とにより、一層精度よく粒子を判別することができる。
具体的には、粒子から得られた3つの特徴パラメータ
が、スキャッタグラムCの上記ブランク領域でかつスキ
ャッタグラムDの推定曲線から離れた上記領域に該当す
るものである場合に、その検知情報に基づき撮像装置を
動作させ試料流領域の静止画像を得る。画像処理部によ
って、もしその画像中に粒子像が存在していなければシ
ース液中のブランクであると判定し、粒子像が存在して
いれば血小板(例えば歪んだ形状の血小板)と判定する
ことができる。今仮に、上記スキャッタグラムDの推定
曲線から離れた領域内に存在するN個の粒子に対してG
個撮像しそのうちg個が血小板であったと判定されれ
ば、上記領域内にはN・g/G個の血小板が存在すると
換算できる。そこでその値を血小板数として加算すれ
ば、より一層高精度に血小板数を求めることができる。
【0062】
【発明の効果】この発明によれば、粒子の特徴パラメー
タをもとに作成された分布図上に分布する粒子の分布集
団から、判別基準に基づいて着目粒子を精度よく計数す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の測定装置における光学系の部分の構
成図である。
【図2】この発明の測定装置におけるフローセル部分の
構成図である。
【図3】この発明の血小板凝集の検出のフローチャート
である。
【図4】この発明の解析処理S3のフローチャートであ
る。
【図5】この発明に関するスキャッタグラムの一実施例
である。
【図6】図5における血小板領域についてのスキャッタ
グラムである。
【図7】この発明の実施例における解析処理のフローチ
ャートである。
【図8】この発明の実施例におけるスキャッタグラムC
及びDである。
【符号の説明】
5 シースフローセル 8 パルス光源 9 投影レンズ 10 ビデオカメラ 11 画像処理装置 21 連続発光レーザ 22 光ファイバー 23 コンデンサレンズ 24 コンデンサレンズ 25 集光レンズ 26 ダイクロイックミラー 27 フォトダイオード 28 ダイクロイックミラー 29 ミラー 30 光電子増倍管 31 光電子増倍管

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料中の各粒子から複数の特徴パラメー
    タを抽出する特徴パラメータ抽出手段と、抽出された特
    徴パラメータに基づいて第1の分布図を作成する分布図
    作成手段と、作成された第1の分布図上において、着目
    粒子を含む分布集団を分画する第1の分画手段と、分画
    された着目粒子を含む分布集団に対して所定の判別基準
    を設定し、その判別基準に基づいて前記分布集団の中の
    粒子を着目粒子か非着目粒子かに判別する判別手段と、
    その判別手段の判別結果に基づいて着目粒子の数を計数
    する計数手段とからなることを特徴とする粒子測定装
    置。
  2. 【請求項2】 前記着目粒子を含む分布集団を第1の分
    布図においてさらに複数の分布集団に細分画する第2分
    画手段を備え、 前記判別手段は前記複数の分布集団のうちの少なくとも
    1つについて粒子の種類を判別することを特徴とする請
    求項1記載の粒子測定装置。
  3. 【請求項3】 前記判別基準が、第2の分布図上の関数
    として与えられ、判別手段はその関数からのへだたり具
    合いによって粒子の種類を判別することを特徴とする請
    求項1記載の粒子測定装置。
  4. 【請求項4】 前記判別手段は前記関数から所定距離以
    上離れた領域に存在する粒子を着目粒子と判別すること
    を特徴とする請求項3記載の粒子測定装置。
  5. 【請求項5】 前記判別手段は前記関数から所定距離以
    上離れた領域に存在する粒子を非着目粒子と判別するこ
    とを特徴とする請求項3記載の粒子測定装置。
  6. 【請求項6】 撮像部、撮像制御部および画像処理部を
    さらに備えてなり、撮像制御部は前記抽出された粒子の
    特徴パラメータの値に基づき着目粒子を含む分布集団の
    粒子に対し撮像部を動作させ、画像処理部は撮像部で得
    られた画像を処理し画像中の粒子の有無を検出し、判別
    手段は画像処理部において検出された粒子の有無によっ
    て着目粒子か非着目粒子かを判別することを特徴とする
    請求項1記載の粒子測定装置。
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