JPH11302921A - 耐久性に優れた高中空ポリエステル繊維及びこれを用いてなる繊維製品 - Google Patents

耐久性に優れた高中空ポリエステル繊維及びこれを用いてなる繊維製品

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JPH11302921A
JPH11302921A JP10106356A JP10635698A JPH11302921A JP H11302921 A JPH11302921 A JP H11302921A JP 10106356 A JP10106356 A JP 10106356A JP 10635698 A JP10635698 A JP 10635698A JP H11302921 A JPH11302921 A JP H11302921A
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hollow polyester
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 繊維横断面に占める中空部割合が40%以上
の高中空でありながら、中空潰れが発生し難くしかもそ
の形状回復性に優れ、耐久性の良好な織編物、パイル繊
維製品、不織布等の繊維製品が得られる高中空ポリエス
テル繊維を提供する。 【解決手段】 単繊維繊度が0.1〜8.0デニール、
繊維横断面中空率が40〜85%、強度が2.0g/d
e以上で、且つ下記式で表される配向パラメーター(F
1 =Y1 /X1 )が1.0未満である高中空ポリエステ
ル繊維。[但し、偏光アルゴンレーザーを中空ポリエス
テル繊維横断面に繊維軸方向から膜厚中央部に照射して
ベンゼン環伸縮振動のラマンバンド(1615cm-1
を測定したとき、X1 は偏光面が繊維の円周方向である
場合のラマンバンド強度、Y1 は偏光面が繊維の半径方
向である場合のラマンバンド強度を表す。]

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外力によって中空
部が潰れてもその回復特性が良好な高中空ポリエステル
繊維、および該繊維を使用してなる形態保持性や嵩高性
に優れた織編物、パイル倒れの回復性に優れたパイル繊
維製品、風合や耐ヘタリ性の良好な不織布等の繊維製品
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、中空ポリエステル繊維を製造する
には、切欠きを有する円弧状のスリットからなる吐出孔
を用いて溶融紡糸されており、高中空率とするために
は、この円弧状スリットの曲率半径を大きくすると共に
該スリット幅を小さくする方法が採用される。しかし、
スリット幅は0.05〜0.03mm程度が下限で、こ
れより小さくするとポリマー中の不純物(異物)等によ
りスリットが目詰まりしやすくなり、一方、円弧状スリ
ットの径を大きくすると、一吐出孔当たりの下限吐出量
がアップして繊度が大きくなるため、細繊度で且つ中空
率40%以上の高中空ポリエステル繊維は得がたく、限
定された製糸条件で製造されているのが実情である。し
かも、これらの中空率40%以上の高中空ポリエステル
繊維は、製糸工程や後加工工程等で中空が潰れて偏平化
しやすく、また一旦偏平化すると元の形状に回復し難
く、高中空化の効果がなくなるという問題があった。
【0003】例えば特開昭61−79486号公報、特
開昭61−83307号公報、特開平6−2210号公
報、特開平6−235120号公報、特開平7−238
418号公報、特開平7−238419号公報、特開平
7−268726号公報、特開平7−268727号公
報等に提案されているような複数のスリットより溶融ポ
リマーを吐出させ、該吐出糸条を冷却固化し、得られた
未延伸糸を通常の条件で延伸する方法で得られる中空率
40%以上の高中空ポリエステル繊維は、いずれも円周
方向の配向が進んでいないため一旦中空形状が変形して
潰れたりすると元に戻り難いものであった。
【0004】また別の方法として、特開平6−2878
09号公報には、溶融紡糸直後の糸条に片面から冷却用
気体を吹き付け、かつ紡糸ドラフト400〜4000、
紡糸速度1500m/分以下で紡糸する方法が、さらに
特開昭61−47807号公報、特開昭62−2060
08号公報等には、吐出された糸条を片面急冷した後、
紡糸速度1500m/分以下で紡糸する方法が提案され
ている。これらの方法によれば、中空率60%程度まで
の高中空ポリエステル繊維を得ることができるとされて
いるが、上記と同じく中空率が40%を越えると中空潰
れに起因する諸問題(例えば使用中における中空部の潰
れ変形による低中空率化)が発生しやすいため未だ実用
に供されてはいない。
【0005】さらに他の方法として、特開昭57−10
6708号公報、特開昭62−289642号公報、特
開昭63−21914号公報等には、スリット状ノズル
の内側から窒素ガス等の不活性ガスを導入して内外から
吐出糸条を冷却したり、紡糸口金ノズル構造を二重管と
して、口金から吐出糸条の中心部に自吸式または強制的
に空気や窒素ガス等を導入して高中空繊維を製造する方
法が提案されている。確かにかかる方法によれば、中空
率40〜70%の高中空ポリエステル繊維は得られるも
のの、これまた円周方向の配向が進んでいないため一旦
中空形状が変形して潰れたりすると元に戻り難いもので
あった。またかかる方法では、ノズルの構造が複雑にな
るため孔数を増やすことができず、一般的には単糸本数
の少なく単繊維繊度が30デニール以上の太い繊維の製
造に適していて、8デニール以下の細繊度で中空率が4
0%以上の高中空ポリエステル繊維を安定して製造する
には至ってない。
【0006】この様に、単繊維繊度が8.0デニール以
下、中空率が40%以上といった細繊度高中空ポリエス
テル繊維であって、中空形状の回復特性に優れた繊維は
いまだ提案されていないのが実情である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術を背景になされたもので、その目的は、単繊維繊度が
8デニール以下、強度が2g/de以上で、かつ繊維横
断面に占める中空部の割合が40%以上と高中空率であ
りながら中空形状の回復特性に優れ、さらに単繊維繊度
が1デニール程度以下であってもカード通過性が良好で
紡績特性にも優れた高中空ポリエステル繊維を提供する
ことにある。
【0008】また本発明の別の目的は、形態保持性や嵩
高性に優れた織編物、パイル倒れの回復性に優れたパイ
ル繊維製品、風合や耐ヘタリ性の良好な不織布等の繊維
製品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らの研究によれ
ば、前記本発明の目的は、単繊維繊度が0.1〜8.0
デニール、繊維横断面中空率が40〜85%、強度が
2.0g/de以上で、且つ下記式で表される配向パラ
メーターF1 が1.0未満であることを特徴とする耐久
性に優れた高中空ポリエステル繊維によって達成され
る。 F1 =Y1 /X1 [但し、偏光アルゴンレーザーを中空ポリエステル繊維
横断面に繊維軸方向から膜厚中央部に照射してベンゼン
環伸縮振動のラマンバンド(1615cm-1)を測定し
たとき、X1 は偏光面が繊維断面外周方向である場合の
ラマンバンド強度、Y1 は偏光面が繊維の半径方向であ
る場合のラマンバンド強度を表す。]
【0010】また、本発明者らの研究によれば、前記本
発明の他の目的は、 1) 織編物を構成する繊維の少なくとも20重量%
が、上記の高中空ポリエステル繊維である形態保持性に
優れた織編物、 2) パイル繊維製品のパイルを構成する繊維の少なく
とも20重量%が、上記の高中空ポリエステル繊維であ
る耐久性に優れたパイル繊維製品、 3) 不織布を構成する繊維の少なくとも20重量%
が、上記の高中空ポリエステル繊維である耐ヘタリ性に
優れた不織布、 によって達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に述べ
る。本発明のポリエステル繊維はエチレンテレフタレー
トを主たる繰返し単位とするエチレンテレフタレート系
のホモポリエステル、コポリエステル又はこれらのポリ
エステルに第3成分を混合したポリエステルからなるも
のであり、特に繰返し単位の90モル%以上がエチレン
テレフタレート単位であるポリエステルが好ましく、ホ
モポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。10モ
ル以下で共重合し得る共重合成分としては、酸成分とし
てイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、
ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の
芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバチン
酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、P−オキシ
安息香酸、P−βーヒドロキシエトキシ安息香酸等のオ
キシカルボン酸があげられ、またジオール成分として
は、1,3−プロパンジオール、1,6−へキサンジオ
ール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、
1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の
芳香族ジオール、ポリエチレチングリコール、ポリブチ
レングリコール等のポリアルキレングリコール等があげ
られる。なおこれら第3成分は、単独で共重合させても
2種以上を同時に共重合させてもよい。ポリエステルの
重合度(固有粘度)は特に限定する必要はないが、大き
くなりすぎると紡糸時の工程安定性が低下して細繊度の
ものが得難くなる傾向にあり、一方小さくなりすぎると
高中空のものが得難くなる傾向にあるので、オルソクロ
ロフェノール中35℃で測定した固有粘度IVは0.4
5〜1.00、好ましくは0.6〜0.7の範囲が適当
である。
【0012】また、上記ポリエステルには各種添加剤を
混合してもよく、例えば抗菌剤、親水剤、防ダニ剤、消
臭剤、遠赤外線放射剤等の各種機能性付与剤、二酸化チ
タン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジル
コニウム、酸化アルミニュウム、酸化マグネシウム、酸
化カルシュウム、トルマリン等の無機微粒子をあげるこ
とができ、目的に応じて適宜選択使用すればよい。ただ
し、無機微粒子を配合する際には、ポリエステル中への
分散性の点から、その平均粒径は1.0μm以下、好ま
しくは、0.1〜0.7μmが適当であり、また、その
混合量は1〜10重量%、特に2〜7重量%の範囲が適
当である。
【0013】上記のポリエステルからなる本発明の耐久
性に優れた高中空ポリエステル繊維は、その単繊維繊度
が0.1〜8.0デニール、好ましくは0.2〜3.0
デニール、特に好ましくは0.5〜1.5デニールの範
囲にあることが必要である。単繊維繊度が0.1デニー
ル未満の場合には、安定に生産することができなくな
り、また得られる繊維の中空率も小さくなりやすいため
好ましくない。一方8.0デニールを越える場合には、
製糸時の工程安定性は良好であるが、繊維横断面におけ
る中空壁面の厚さが大きくなるため、円周方向の配向を
進めることが困難になり、また中空潰れが発生した場合
の変形歪みも大きくなって中空形状の回復特性が低下す
るので好ましくない。
【0014】次に繊維横断面における中空率は40〜8
5%、好ましくは50〜70%の範囲であることが必要
である。中空率が40%未満では、繊維を中空化するこ
とにより得られる優れた風合(ドレープ、柔軟性、ソフ
トタッチ)、隠蔽性、嵩高性、保温・断熱性等の改善効
果が不十分となり、一方85%を越える場合には、中空
壁面の厚さが薄くなりすぎて中空破断が発生しやすくな
ったり、圧縮応力に対する抵抗性が低下して形態保持性
が悪化するので好ましくない。ここで中空率とは、繊維
横断面において該横断面の外周部で囲まれた図形Aの面
積に対する、中空部の総面積の割合(%)をいう。
【0015】繊維横断面における中空部の数は一つであ
っても複数であってもよいが、複数の場合には、高中空
率でありながら単繊維繊度が小さいものを得ることが困
難となるので、中空部は一つの方がより好ましい。中空
部の形状は任意であるが、真円である場合には高中空率
のものが得やすく、また円周方向に配向が進んだものが
得やすいために中空形状の回復特性も良好となるので好
ましい。
【0016】中空部の繊維横断面における位置は、繊維
横断面の外周部で形成される図形Aの重心点に関して対
象である方が、中空潰れが発生した場合の回復特性が良
好となるのでより好ましい。また中空部を構成する壁面
の厚さは、5μm以下、特に1.0〜3.0μmの範囲
にある場合、優れた中空形状の回復性能を示すと共に、
高中空繊維が有する嵩高性、保温性、軽量性、ソフトな
触感等の特性が向上するので好ましい。なお、壁面の厚
さが薄くなりすぎると製糸し難くなり、また使用時に中
空破断が発生したり耐摩耗性が低下する場合がある。
【0017】繊維横断面の形状は、中空率40%以上を
満足する限りは丸、三角、多葉断面等任意であるが、製
造が容易である点からは丸断面が好ましい。一方、使用
目的によっては異型断面が好ましく、例えば不織布に用
いる場合には、繊維横断面の外周部で囲まれた図形の最
小外接円半径Raと最大内接円半径Rbとの比Ra/R
b(異形度)が1.1〜1.5の範囲内にあると、弾力
性や隠蔽性がさらに向上する。
【0018】次に本発明の高中空ポリエステル繊維は、
その強度が2.0g/de以上、好ましくは3.0〜
6.0g/deである必要がある。強度が2.0g/d
e未満の場合には、後述する配向パラメーターF1
1.0以下のものを得ることは容易であるが、繊維軸方
向及び円周方向の分子配向が共に不十分であるため、機
械的特性が不十分であるばかりでなく中空形状の回復特
性も悪化するので好ましくない。伸度は大きくなりすぎ
ると強度が2.0g/de以上のものを得ることが困難
になるので150%以下が適当であり、特に20〜60
%の範囲が好ましい。またシルクファクター(強度(g
/de)×伸度(%)1/2 )は15〜30の範囲にある
ことが好ましく、15未満では強力・タフネスが低くな
りすぎて、用途によっては使用できなくなり、一方30
を越える場合には中空率40%以上の高中空率繊維を得
ることが困難になる。
【0019】本発明の高中空ポリエステル繊維は、上記
の要件に加えて、下記式で表される配向パラメーターF
1 が1.0未満、好ましくは0.7〜0.9の範囲であ
る必要がある。配向パラメーターF1 が1.0以上の場
合には、円周方向の分子配向が不十分なために中空部が
潰れやすくなり、また中空形状の回復特性も低下するの
で本発明の目的を達成することができなくなる。 F1 =Y1 /X1
【0020】但し、偏光アルゴンレーザーを中空ポリエ
ステル繊維横断面に繊維軸方向から膜厚中央部(中空壁
面の断面膜中央部)に照射してベンゼン環伸縮振動のラ
マンバンド(1615cm-1)を測定したとき、X1
偏光面が繊維断面外周方向である場合のラマンバンド強
度、Y1 は偏光面が繊維の半径方向である場合のラマン
バンド強度を表す。
【0021】また、下記式で表される配向パラメーター
2 は、1.0〜2.5好ましくは1.0〜1.5の範
囲にあることが望ましく、この値が1.0未満では繊維
軸方向の配向が不十分となって機械的強度が低下するだ
けでなく、このような繊維を製造するためには円周方向
に大きく延伸する必要があって安定に製造することが困
難となる。一方2.5を越える場合には、円周方向の分
子配向が殆ど起こっていない従来の高中空ポリエステル
繊維と同様に、F1 を1.0未満にすることが困難にな
る。 F2 =Z2 /X2
【0022】但し、偏光アルゴンレーザーを中空ポリエ
ステル繊維表面に繊維軸に直行する半径方向から照射し
てベンゼン環伸縮振動のラマンバンド(1615c
-1)を測定したとき、Z2 は偏光面が繊維軸方向であ
る場合のラマンバンド強度、X2は偏光面が繊維断面外
周方向である場合のラマンバンド強度を表す。
【0023】さらに、広角X線回折写真から計算される
結晶化度が20%以上、好ましくは22〜33%の範囲
にあり、且つ広角X線回折写真の(010)面回折ピー
クの半値幅から計算される結晶サイズが4.0nm以
上、好ましくは4.0〜9.0nmの範囲にあると、中
空形状の回復特性が向上するので好ましい。すなわち、
上記の円周方向への分子配向に加えて、ポリマー分子鎖
間の大きな結晶核による強固な繋ぎ止め効果と結晶核間
の長いアモルファス分子鎖の運動性とが相俟って、中空
部が一旦潰れても加熱処理により元の形状に容易に回復
せることができるのである。
【0024】本発明の高中空ポリエステル繊維は、さら
に中空の形状回復率Raが75%以上で、且つRbが9
0%以上である場合、織編物にした時の皺回復性、パイ
ル繊維製品にした時の毛倒れ回復性、不織布にした時の
嵩回復性等の耐久性が向上するのでより好ましい。但
し、ここでいう中空形状回復率Raは、中空繊維を加圧
して中空部を90%以上つぶした後、常温常圧下で1時
間放置した時の中空部面積をSb、当初の中空部面積を
Saとした時、Ra=Sb/Sa×100(%)で表さ
れ、またRbは、中空繊維を加圧して中空部を90%以
上つぶした後に常温常圧下で1時間放置し、次いで13
0℃下10分間熱処理した時の中空部面積をScとした
時、Rb=Sc/Sa×100(%)で表される。
【0025】本発明の中空繊維は、短繊維であっても長
繊維であってもよく、使用目的及び用途に応じて適宜設
定すればよい。例えば紡績や不織布用に使用する場合に
は、捲縮数は5〜30個/25mm、好ましくは8〜2
5個/25mm、捲縮率は8〜50%、繊維長は20〜
100mm程度が、カード工程の安定性及び得られるウ
エブの品位の点から適当である。一方紙等の湿式不織布
用に使用する場合には、捲縮数が0〜10個/25m
m、好ましくは0〜8個/25mm、特に実質的に捲縮
が存在しないもので、繊維長が2〜30mm、好ましく
は2〜10mmの範囲のものが、抄紙時の繊維の水中分
散性及び得られる紙の地合の観点から好ましい。
【0026】以上に述べた本発明の耐久性に優れた高中
空ポリエステル繊維は、例えば前記のごときポリエステ
ルを溶融紡糸後、特殊な延伸条件を採用することにより
製造することができる。
【0027】すなわち、まず溶融ポリエステルを中空糸
製造用紡糸孔を具備する紡糸口金から吐出して、中空未
延伸糸を得る。この際、吐出糸条を口金直下で一旦急冷
し次いで徐冷すると共に、紡糸ドラフトが150以上、
好ましくは200〜400で、且つ引取速度が1000
〜1800m/分で紡糸すると、最終的に得られる高中
空ポリエステル繊維の結晶化度及び結晶サイズが前記を
満足するようになって中空形状の回復特性が向上するの
で好ましい。ここで吐出糸条を急冷するには、例えば紡
糸口金の直下、糸条の急冷開始位置までの距離を10〜
30mmとし、温度20〜35℃の冷却風を風速0.2
〜4.0m/秒で吹き付ければよい。また、急冷に次い
で施す徐冷は、例えば糸条の急冷範囲を80〜120m
mにすると共に、引続く徐冷範囲を150〜350mm
として温度20〜35℃の冷却風を急冷領域の風速の1
/2から1/10となるように吹き付ければよい。かく
することにより、高い中空率と前記の結晶構造とを同時
に満足させることができるようになる。
【0028】なお、急冷領域の冷却風の湿度を80〜9
0%にすると、得られる繊維表面に繊維軸方向に配列し
た筋状の微細凹凸が形成され、その詳細な理由は分らな
いが延伸性が向上して配向パラメーターF1 、F2 を前
記範囲内に容易にすることができるのでより好ましい。
【0029】この様にして引取られた未延伸糸は、最終
的な用途に応じて適宜延伸熱処理されるが、この際未延
伸糸の中空率を30%以上、延伸温度を70℃以上、例
えば70〜90℃の比較的高温で熱伝達性の良好な温水
中で1.8〜5.5倍に延伸すると共に、延伸出側の繊
維を適当な圧力で押圧することにより、中空部の空気が
延伸領域にたまると同時に熱膨張するため、該中空繊維
の円周方向にも延伸が起こって分子配向が進み、配向パ
ラメーターF1 が1.0未満のものを得ることができ
る。しかも得られた中空繊維はその形状回復特性が良好
なので、延伸工程での中空部が潰れても回復し、未延伸
糸の中空率よりもさらに中空率の大きいものとなる。
【0030】このようにして得られた延伸糸を熱セット
しない場合には高収縮タイプの中空繊維が、また加熱ロ
ーラーや熱プレート等で緊張熱処理すれば低収縮タイプ
の中空繊維が、また一旦延伸処理した後、温水中等でオ
ーバーフィードしながら熱処理すれば自己伸長タイプの
中空繊維が得られる。
【0031】以上、本発明の高中空ポリエステル繊維の
製造法の一例について述べたが、本方法の技術ポイント
は、延伸出側の中空繊維の押圧偏平化によって中空部内
の空気を延伸領域に溜め込んでいく効果と、溜め込んだ
空気の延伸温度条件による膨脹効果が相俟って、中空部
の拡大(円周方向への延伸)が起こるために配向パラメ
ーターF1 は1未満になるものと推定される。
【0032】なお本発明の高中空ポリエステル繊維は、
上記方法により製造されたものに限定されるものではな
く、これとは異なる他の方法で製造したものであっても
構わない。また、このままで用いても、仮撚加工や流体
噴射加工(例えばタスラン加工)等の嵩高加工を施して
用いてもよい。
【0033】以上に述べた本発明の高中空ポリエステル
繊維は、100%で用いられてあるいは他の繊維(本発
明外のポリエステル繊維等の合成繊維、綿やウール等の
天然繊維)と混合使用されて、高中空率の潰れ難さや形
状回復特性に基づく各種優れた特性を有する繊維製品を
得ることができる。
【0034】例えば、本発明の高中空ポリエステル繊維
を、織編物構成繊維の20重量%以上、好ましくは30
重量%以上占めるようにすることにより、高中空ポリエ
ステル繊維が中空潰れし難くまた形状回復特性も良好な
ので、皺がつきにくく、また仮に皺がついても容易に回
復する織編物を得ることができる。さらにかかる織編物
は、隠蔽性や軽量保温性に優れ、且つソフトタッチで低
目付けでも張り腰の有る風合を呈し、また円周方向に配
向が進んでいるので摩耗等によるフィブリル化が生じに
くく、長期間の着用においても白化し難くかつ抗ピル性
にも優れているといった特性を発揮する。
【0035】また、本発明の高中空ポリエステル繊維
を、パイル繊維製品のパイル構成繊維の20重量%以
上、好ましくは30重量%以上占めるようにすることに
より、低目付けでも、見掛けの繊維横断面積が大きいの
で、抗毛倒れ性効果に優れると共にソフトタッチでボリ
ューム感ある風合を発揮させることができ、しかも高中
空ポリエステル繊維が中空潰れし難くまた形状回復特性
も良好なので、一旦毛倒れが発生しても容易に元に回復
し、耐久性に優れるという特徴を有する。特に高中空ポ
リエステル繊維として、前記高収縮タイプと低収縮タイ
プとを混繊又は混紡して用いる時、抗毛倒れ効果がより
良好になるので好ましい。
【0036】また不織布にする場合、本発明の繊維を不
織布構成繊維の20重量%以上、好ましくは50重量%
以上、特に好ましくは60重量%以上占めるようにする
ことにより、目付を小さくしても保温性に優れ、ソフト
タッチな風合を呈し、しかもヘタリ難い不織布が得られ
る。なお、抄紙してなる湿式不織布の場合には、繊維長
2〜10mmのショートカット繊維とし、これをディス
クリファイナーなどで水中に分散させてから抄紙するこ
とにより、嵩高で風合に優れていると共に形態保持性も
良好でヘタリ難く、隠蔽性も良好なものが得られる。
【0037】なお、本発明の高中空ポリエステル繊維を
不織布構造体等の繊維表面の摩擦係数が低いことが要求
される用途に用いる場合には、該繊維表面に例えばシリ
コーン樹脂硬化膜を繊維重量に対して0.05〜5.0
重量%付与することが好ましい。かくすることにより、
不織布構造体製造時のカード工程通過性が向上するだけ
でなく、嵩高性、耐ヘタリ性、ソフトタッチな風合、高
ドレープ性がさらに向上して天然羽毛に優るとも劣らな
い不織布構造体が得られる。
【0038】繊維表面にシリコーン硬化膜を形成する方
法としては、例えば未延伸繊維を反応性シリコーンを含
有する処理浴中に浸漬した後延伸熱処理する方法、延伸
繊維に過剰の反応性シリコーン系処理剤を付与した後、
過剰分を適当な手段で除去し熱処理する方法、同じく捲
縮繊維に付与した後熱処理する方法、短繊維にした後に
付与して熱処理する方法などがある。好ましく用いられ
る反応性シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサ
ン、ハイドロジエンメチルポリシロキサン、アミノポリ
シロキサン、エポキシポリシロキサンなどをあげること
ができ、これらは単独又は混合して使用することができ
る。ここで繊維に均一に付着させるための分散剤や架橋
反応を迅速に行わせるための触媒を併用することが好ま
しい。付与する処理剤は、水性エマルジョン系であって
もストレート系であってもよい。
【0039】本発明の高中空ポリエステル繊維は、10
0%あるいは他の繊維(本発明外のポリエステル繊維等
の合成繊維、綿やウール等の天然繊維)と混合使用され
る場合、高中空率の潰れ難さ及び形状回復特性に基づい
て、上記の特性の他に各種優れた特性を発揮する。例え
ば、通常のローラーカード機では生産速度が著しく低下
してしまう1.5デニール以下の細デニール繊維のカー
ド通過性を著しく向上させることが可能である。すなわ
ち、カード通過性は繊維の外径によって決定的に影響さ
れるが、本発明の高中空繊維は、例えば1デニールの繊
維であってもその中空率が50%であると繊維外径は2
デニールに相当するため、カード機の条件を適正化すれ
ば、2デニールの中実繊維とほぼ同等なカード通過性を
達成することが可能である。さらに繊度が0.5デニー
ルであっても中空率が80%の場合には、その繊維外径
は2.5デニールに相当し、ほぼ2.5デニールの中実
繊維並みのカード通過性を達成できる。これに対して従
来の高中空繊維は、カード工程に至るまで、あるいはカ
ーディング中に、中空破断や中空潰れが発生しやすいた
め、中実細デニール繊維と同様にカード通過性は極めて
劣る。
【0040】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明は何等これらに限定されるものでは
ない。なお、実施例中における各特性値の測定は、以下
の方法にしたがった。 <固有粘度>オルソクロルフェノールを溶媒として、3
5℃で測定した。 <繊度>JIS L1015 7−5−1A法により測
定した。 <見掛け(外見)繊度>画像解析システム、ピアスー2
(ピアス(株)製)を用い、単繊維のセクション断面画
像を500倍に拡大して断面積(中空部を含む)を求
め、ポリマーの比重dを1.38と仮定して算出した。
【0041】<中空率>上記の500倍断面画像から単
繊維の断面積(中空部を含む)と中空部面積を測定し、
その面積比を求めた。 <乾熱収縮率>JIS L1015ー1981法により
測定した。 <結晶化度>広角X線回折像から定法にしたがって求め
た。 <(010)面結晶サイズ>広角X線回折像の(01
0)面回折ピーク半価幅から、定法にしたがって求め
た。
【0042】<中空の形状回復率>間隙が0.05mm
である一対の金属回転ローラー(直径20mm、幅2.
5mm)間に、供給デニールが1万デニール/25mm
幅となる割合でトウを通過させ、この際加圧調整して中
空潰れが90%以上となるようにする。次いで常温常圧
下1時間放置したときの中空率b、及びさらに130℃
下10分間熱処理すた後の中空率cを測定し、元の中空
潰れが発生していない繊維の中空率aから、下記式によ
り中空の形状回復率Ra、及びRbを求めた。なお中空
率はn=20の平均値とした。 Ra=b/a×100(%) Rb=c/a×100(%) <配向パラメーターF1 ,F2 > 使用装置:顕微レーザーラマン分光装置(ジョバン−イ
ボン−愛宕物産製 T−6400) 励起光源:Arレーザー(λ=514.5nm)出力5
0mW、 顕微倍率:×1000(ビーム径 1μm) 測定方法:偏光レーザーを糸断面に繊維軸方向から入射
し、偏光面を繊維軸の回りに回転させ、中空繊維の円周
方向(X1 )と半径方向(Y1 )における偏光ラマンス
ペクトルを測定し、下記式より算出する(ベンゼン環C
=C伸縮振動のラマンバンドを測定)。 F1 =Y1 /X1 また、偏光レーザーを繊維側面から繊維軸(Z2 軸)と
直交する半径方向から入射し、偏光面を該半径方向の回
りに回転させ、繊維軸(Z2 軸)方向と円周方向
(X2 )における偏光ラマンスペクトルを測定し、下記
式より算出する。 F2 =Z2 /X2
【0043】<中空形成ポリマーの厚さ及び中空偏心比
>電子顕微鏡でセクション写真を撮影し、繊維外周で形
成される図形の重心と中空部で形成される図形の重心と
を結び、該線方向の中空形成ポリマー厚さLa及びLb
(但しLa≦Lb)を測定し、Lb/Laを中空偏心比
とした。 <繊維表面>電子顕微鏡にて4000倍の繊維表面写真
を測定し、表面の凹凸模様有無を確認した。
【0044】<紡糸性及び延伸性>紡糸性は下記判定基
準で評価した。 良好(○):断糸回数が0.1回/錘・日以下、密着糸
が0.1本/錘・日、セクション変動率Vが8%以下 やや不良(△):断糸回数が0.1〜0.2回/錘・
日、密着糸が0.1〜0.2本/錘・日、セクション変
動率Vが8〜9% 不良(×):断糸回数が0.2回/錘・日超、密着糸が
0.2本/錘・日超、セクション変動率Vが9%超 但し、ここでいう密着糸とは、単糸2本以上が融着して
いるものをいい、またセクション変動率Vとは、単糸断
面写真より、ランダムに糸直径を測定(n=20)した
時のバラッキを示す。
【0045】また延伸性は下記判定基準で評価した。 良好(○):単糸切れローラー巻き付きが1回/台・日
以下、未延伸が5本/10万本以下、 やや不良(△):単糸切れローラー巻き付きが1〜3回
/台・日、未延伸が5〜10本/10万本、 不良(×):単糸切れローラー巻き付きが3回/台・日
超、未延伸が10本/10万本
【0046】<基布の形態保持性(防皺性)>JIS−
L1059織物の防皺性試験方法のC法(リンクル法)
にしたがい、3人の熟練した観察者が、別々に各試験片
(150mm×280mm)を各3枚、合計9枚を評価
し、その平均値で表した。その時の判定用標準(防皺性
を、WRー5(防皺性が最も高い)から、WRー1(防
皺性が最も低い)までの5段階で表した立体レプリカ)
の外観と比較して、5〜1級の等級判定した。
【0047】<基布の保温性>熱伝導度試験機を用い、
同じ目付の基布(直径5cmの試験片)を、受熱板上に
試験片1枚をのせ、70℃に設定した熱源体(銅魂)を
静かに降ろして4Kgの圧力を加え、受熱板温度が伝導
熱によって上昇するのを記録紙に記録し、30秒後の温
度tを求めて下記式より保温率(%)を算出し、3回の
平均値を求めた。 保温率(%)=〔1−(t−t0 )/(T−t0 )〕×
100 但し、t0 は受熱板の当初温度(28℃に設定)、tは
30秒後の受熱板温度、Tは熱源体の温度(70℃)で
ある。そして、相対比較し、熱伝導率性の低い保温性に
優れている物をAランク、良い物をBランク、普通の物
をCランク、劣っている物をDランクとして、ランク付
けで判定した。
【0048】<基布・パイル布帛の軽量性>同じ目付の
基布(面積5cm2 )を5枚重ね、基布の厚みを測定し
て体積を算出し、軽量性を相対比較により判定した。軽
量性に優れている物をAランク、良い物をBランク、普
通の物をCランク、劣っている物をDランクとして、ラ
ンク付けで判定した。
【0049】<基布の隠蔽性(不透明度)>JIS P
8138の方法にしたがって測定した。 <基布の張り腰感>手触り感にて官能評価し、優れてい
る物をAランク、良い物をBランク、普通の物をCラン
ク、劣っている物をDランクとして、ランク付けで判定
した。 <基布・パイル布帛のボリュウム感、ソフトタッチ感及
び清涼感>基布の張り腰感と同様に、夫々官能判定し
た。
【0050】<パイル布帛の抗毛倒れ性>パイル布帛の
上に真鍮性の重り(直径8cm、重さ2000g)を置
き、温度80℃に調整した熱風乾燥機中に入れて2時間
放置する。2時間後に熱風乾燥機より試料を取り出して
重りを除き、(株)村上色彩技術研究所製の変角分光測
色システムCCMSー3型を用いて、毛倒れ部分(重り
を置いた部分)と毛倒れのない部分のL値を求める。こ
こでL値は、受光器の角度を80゜(パイル布帛に対す
る垂線を0゜とする)とし、入光角度を受光器側からパ
イル先端に向つている方向に沿って10゜ずつ変えて測
定したCIE表色系のL* 値であり、パイルの傾いてい
る方向に対して60°〜−60°の範囲内で測定する。
そして、毛倒れ部分のL* 値(L* A)及び毛倒れのな
い部分のL* 値(L* B )の色差△L* (L* A −L*
B )の最大値を求め、これを抗毛倒れ性値(K値)とし
た。このK値が大きい程、毛倒れが目立つことを示す。
【0051】<不織布初期嵩>JIS−L1097比容
積(初期嵩高性)法にしたがって測定した。まず、原綿
をカードに掛けて試験片20cm×20cmの大きさ
で、質量(w)が40gになるようにウェブを作成し、
これを1時間以上放置した後、厚板(20cm×20c
m:重さ0.5g/cm2 )を載せ、さらに重り(A)
2kgを載せて30秒間放置し、次いで重り(A)を除
いて30秒間放置する。この荷重・徐重操作を3回繰り
返し、重り(A)を除いて30秒間放置後の厚板の4す
みの高さを測定し、その平均値(h)mmを求めて下記
式より比容績(初期嵩高性)を算出する。 初期嵩高性(Hi:cm3 /g)=(20×20×h/
10)/w
【0052】<不織布初圧嵩>JIS−L1097比容
積(圧嵩性)法にしたがって測定した。まず、不織布初
期嵩測定時の試験片に、厚板(20cm×20cm:重
さ0.5g/cm2 )を載せ、さらに重り(B)4kg
を30秒間載た後、厚板の4隅の高さ測定してその平均
値(h1 )mmを求め、下記式より比容績(初圧嵩性)
を算出する。 初圧嵩性(cm3 /g)=(20×20×h1 /10)
/w
【0053】<熱嵩回復度>原綿をカードに掛けて試験
片20cm×20cmの大きさで、重さ(w)が40g
のウェーブを作成して1時間以上放置し、この試験片に
厚板(20cm×20cm:重さ0.5g/cm2 )を
載せ、さらに重り(A)2kgを載せて30秒間放置
し、次いで重り(A)を除いて30秒間放置する。この
荷重・除重操作を3回繰返し、引き続いて温度60℃で
5分間熱処理した後30秒間放置し、同様に厚板の4隅
の高さを測定してその平均値(h2 )mmを求め、下記
式より嵩Hr(cm3 /g)を算出し、Hr/Hiを熱
嵩回復度とした。 Hr(cm3 /g)=(20×20×h2 /10)/w
【0054】<異形度>単繊維断面の外周凹凸に対し
て、描かれる外接円(半径Ra)と、内接円(Rb)を
求め、Ra/Rbを異形度とした。 <カード最大紡出速度>フラットカードに原綿を供給
し、ネップ、フライ及びウェブ斑が発生しない状況下で
フラットカード速度をどこまであげられるか試験し、そ
のカード最大紡出速度(m/分)を求めた。
【0055】[実施例1]酸化チタンを0.07重量%
含有する固有粘度が0.64のポリエチレンテレフタレ
ートを、中空型ノズルを2000ホール有する紡糸口金
から、ポリマー温度268℃、吐出量1260g/分で
押出し、紡糸速度1800m/分で引取って単繊維繊度
が3.2デニール、中空率が35%の未延伸糸を得た。
この時の口金中空型ノズル直下の急冷条件は、冷却風吹
出し位置15mm、冷却風吹出し長100mm、冷却風
温度20℃、冷却風湿度85%、冷却風速度3.0m/
秒とし、また紡糸ドラフトは400倍とした。また急冷
に続く徐冷条件は、冷却風吹出し長250mm、冷却風
温度25℃、冷却風湿度65%、冷却風速度0.5m/
秒とした。
【0056】得られた中空未延伸糸を、温度80℃、延
伸倍率3.5倍で温水1段延伸し、180℃の加熱ロー
ラーで緊張熱処理して単繊維繊度が0.9デニール、中
空率が50%の高中空ポリエステル繊維を得、これに1
2〜13個/25mmの捲縮を付与してから120℃の
熱風で熱セットし、繊維長3〜100mm(用途に応じ
て変更)に切断して短繊維となした。得られた中空ポリ
エステル短繊維の評価結果を表1〜2に示す。
【0057】[実施例2〜6、比較例1]実施例1にお
いて、中空型ノズルの形状及び紡糸速度を変えて紡糸ド
ラフトを表1記載のとおりにし、また冷却条件を表1の
とおりにした以外は実施例1と同様にして未延伸糸を得
た。この未延伸糸を表1に記載の条件で延伸熱処理し、
実施例1と同様に捲縮付与後切断して短繊維を得た。こ
れらの評価結果を表2に合わせて示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】[実施例7〜11、比較例2]表3記載の
特性を有する中空ポリエステル短繊維(繊維長38〜1
00mm)をリング紡績法によって撚数17.1回/2
5mm、英式綿番手30(20TEX)単糸の紡績糸を
作成した。この紡績糸を製織して、織密度(経87本/
25mm、緯68本/25mm)、幅127mmの平織
物とし、常法により精練した後に分散染料で染色したも
のを基布とした。なお、実施例11は綿を50%、併用
したものであり、これについては染色の代りに綿ザラシ
を施したものを基布とした。結果を表3に合わせて示
す。
【0061】
【表3】
【0062】[実施例12〜15、比較例3〜4]表4
記載の特性を有する中空ポリエステル短繊維(繊維長3
8〜100mm)をリング紡績法によって撚数17.1
回/25mm、英式綿番手30(20TEX)単糸の紡
績糸を作成した。この紡績糸を製織してパイル布帛とな
した。なお、実施例15及び比較例4は夫々通常の偏平
糸を混合使用したものである。結果を表4に合わせて示
す。
【0063】
【表4】
【0064】[実施例16〜22、比較例5]表5記載
の特性を有する中空ポリエステル短繊維(繊維長51m
m)をカードにかけてウエブとなし、目付60g/m2
の不織布構造体となした。結果を表5に合わせて示す。
【0065】
【表5】
【0066】
【発明の効果】以上に詳述した本発明の高中空ポリエス
テル繊維は中空率が40〜85%と極めて高い中空率を
有しているにも拘らず、円周方向に分子配向が起こって
いるため、中空潰れが発生し難く且つ仮に中空潰れが発
生しても容易に回復させることができる。そのため、例
えば織編物に用いると、高中空による軽量保温効果、嵩
高効果、張り腰感及び光遮蔽効果等に加えて、優れた形
態保持性や防皺性、染色性、抗フィブリル性や抗ピル性
等の機能を発揮し、またパイル繊維製品のパイルに用い
ると、高中空による軽量性、ボリューム感、ソフトタッ
チ感のある風合に加えて、優れた抗毛倒れ性機能を発揮
して耐久性に優れたパイル繊維製品が得られる。さらに
不織布構造体に用いると、高中空による軽量保温効果、
嵩高効果、ソフトタッチ感等に加えて、優れた耐へたり
性、高ドレープ性を有する不織布構造体が得られ、防寒
用キルティング衣料や掛け布団、枕等の寝具類の詰綿用
として好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // D01D 5/088 D01D 5/088

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単繊維繊度が0.1〜8.0デニール、
    繊維横断面中空率が40〜85%、強度が2.0g/d
    e以上で、且つ下記式で表される配向パラメーターF1
    が1.0未満であることを特徴とする耐久性に優れた高
    中空ポリエステル繊維。 F1 =Y1 /X1 [但し、偏光アルゴンレーザーを中空ポリエステル繊維
    横断面に繊維軸方向から膜厚中央部に照射してベンゼン
    環伸縮振動のラマンバンド(1615cm-1)を測定し
    たとき、X1 は偏光面が繊維断面外周方向である場合の
    ラマンバンド強度、Y1 は偏光面が繊維の半径方向であ
    る場合のラマンバンド強度を表す。]
  2. 【請求項2】 下記式で表される配向パラメーターF2
    が1.0〜2.5である請求項1記載の耐久性に優れた
    高中空ポリエステル繊維。 F2 =Z2 /X2 [但し、偏光アルゴンレーザーを中空ポリエステル繊維
    表面に繊維軸に直行する半径方向から照射してベンゼン
    環伸縮振動のラマンバンド(1615cm-1)を測定し
    たとき、Z2 は偏光面が繊維軸方向である場合のラマン
    バンド強度、X2は偏光面が繊維断面外周方向である場
    合のラマンバンド強度を表す。]
  3. 【請求項3】 結晶化度が20%以上、(010)面の
    結晶サイズが4nm以上である請求項1又は2記載の耐
    久性に優れた高中空ポリエステル繊維。
  4. 【請求項4】 シルクファクターが15〜30である請
    求項1〜3のいずれか1項に記載の耐久性に優れた高中
    空ポリエステル繊維。
  5. 【請求項5】 中空繊維の壁面厚さが5μm以下である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐久性に優れた高
    中空ポリエステル繊維。
  6. 【請求項6】 織編物を構成する繊維の少なくとも20
    重量%が、請求項1記載の高中空ポリエステル繊維であ
    ることを特徴とする形態保持性に優れた織編物。
  7. 【請求項7】 パイル繊維製品のパイルを構成する繊維
    の少なくとも20重量%が、請求項1記載の高中空ポリ
    エステル繊維であることを特徴とする耐久性に優れたパ
    イル繊維製品。
  8. 【請求項8】 不織布を構成する繊維の少なくとも20
    重量%が、請求項1記載の高中空ポリエステル繊維であ
    ることを特徴とする耐ヘタリ性に優れた不織布。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010065324A (ja) * 2008-09-08 2010-03-25 Teijin Fibers Ltd 中空異型ポリエステルマルチフィラメント
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JP2020147862A (ja) * 2019-03-12 2020-09-17 帝人フロンティア株式会社 高中空ポリエステル繊維の製造方法

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