JP2702128B2 - 立毛布帛用パイル糸 - Google Patents
立毛布帛用パイル糸Info
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、染着性にすぐれ、立毛布のパイル部に用い
ると優れたデザイン性及び風合を実現できる捲縮性ポリ
エステル繊維に関するものである。 [従来の技術] ポリエステル繊維は優れた機械的性質、寸法安定性、
イージーケア性などの特徴を生かして衣料用繊維として
広く利用されているだけでなく、近年では、その優れた
耐久性のためカーシートなどのインテリア用途にも広く
用いられている。このインテリア用途では、近年ポリエ
ステル繊維をパイル部に用いた立毛布が好んで使用され
ているが、通常のポリエステル繊維を立毛布に用いる
と、風合が硬く高級感に欠けたり、濃色表現が難しいな
どの問題点がある。 かかる問題点を解決するため立毛布のパイル部分に用
いるポリエステル繊維に若干の捲縮を与え、風合をやわ
らかくしようとする考え方がある。従来公知のポリエス
テル捲縮糸としては仮撚加工糸や異種ポリマをサイドバ
イサイドにはり合わせた複合捲縮糸があるが、公知のこ
れら繊維をパイル糸に用いると、無荷重の状態で捲縮表
現処理がなされているため、捲縮が強く出すぎ、狙いと
は逆にフェルト状の風合になってしまい効率がない。 又、特公昭31−6768号公報には高速紡糸により得られ
る潜在捲縮糸の記載があるが、単に高速紡糸しただけの
ポリエステル繊維を用いても十分な捲縮が発現せず、効
果がない。 さらに特開昭56−159313号公報には、紡糸速度3,700m
/分で不均一冷却を行なって、しかる後に加熱流体ノズ
ルを用いて捲縮を発現させた繊維が示されているが、か
かる糸は、低い紡糸速度で得られたものであり、伸度が
高いこと、かつすでに捲縮が発現しているため製編、製
織性が悪いという問題がある。 このように従来では、立毛布のパイル糸に適した捲縮
性ポリエステル繊維は得られていない。すなわち、パイ
ル部分は無荷重(フリー)の状態で熱がかけられ、その
際捲縮が発現するので従来のように織物、編物などの組
織の拘束の下で捲縮を出すことを狙って設計された繊維
や、すでに製編・織前に捲縮が顕在化している繊維で
は、パイル糸に展開した場合十分に狙いとする効果が得
られないのである。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明の目的は、かかる従来の技術の欠点を解決し、
立毛布のパイル糸として用いると良好な捲縮が発現し、
良好な布帛の風合が実現でき、しかも良好な染色性を有
するポリエステル繊維を提供することにある。 [問題点を解決するための手段] 前記した本発明の目的は、繊維断面方向に構造差を有
し、単糸繊度が1〜4デニール、tanδ〜温度曲線のピ
ーク温度(Tmax)が120℃以下、破断伸度(E)が30〜7
0%、密度(D)が1.36g/cm3以上であり、180℃無荷重
下で熱処理した後に捲縮山数1〜10山/cmの捲縮を発現
することを特徴とするポリエステル繊維からなる立毛布
帛用パイル糸により達成できる。 本発明におけるポリエステルは、エチレンテレフタレ
ートを主たる繰り返し単位とするポリエステルである
が、少量の第3成分を共重合したポリエステルでも良
い。本発明のポリエステル繊維は繊維断面方向に構造差
を有している必要がある。繊維断面方向の構造差とは、
配向度、結晶化度などの繊維構造が繊維横断面内で分布
を有し、その結果として、180℃無荷重下で熱処理した
後に捲縮山数が1山/cm以上の捲縮を発現する繊維構造
を言う。具体的には繊維の中心軸に対して非対称で連続
的に変化している場合や、境界があり不連続に変化して
いる場合がある。 本発明のポリエステル繊維としては、tanδ−温度曲
線のピーク温度Tmaxが120℃以下である必要がある。Tma
xが120℃を越えると染色性が不十分で、濃色表現が難か
しい。Tmaxは一般に繊維非晶部の構造に対応するパラメ
ータでTmaxが高いほど、例えば非晶配向度が高いほど非
晶部が堅固な構造となることを示している。 一般のポリエステル繊維のTmaxは大体140℃であり、
染色性を改善すべく第3成分を共重合したポリエステル
繊維のTmaxは130℃前後である。これに対し、本発明の
ポリエステル繊維のTmaxは著しく低温にする必要があ
り、Tmaxを120℃以下として始めて良好な染色性が実現
でき、容易に濃色まで表現できるようになる。 さらに本発明のポリエステル繊維の破断伸度(E)は
30〜70%である必要がある。 伸度(E)が70%をこえると製編、製織などの加工時
に繊維ぎ伸びてしまいツリ欠点が生じ、製品品位が低下
する。又、伸度が30%未満になると伸度が低いため加工
時に毛羽立ちが生じたり、又、原糸自体に毛羽が混入し
ているため製編性が悪化し、製編時に糸切れが多発す
る。かかる観点からより好ましい伸度の範囲は35〜50%
である。 又、本発明のポリエステル繊維の密度(D)は1.36g/
cm3以上である必要がある。密度が1.36g/cm3未満の場合
は耐光性が悪化する。これは、密度は一般に繊維の結晶
性を示すパラメータであり、密度が高いほど内部構造が
安定化しているのであるが、密度が1.36g/cm3未満では
十分な結晶性を有しておらず、そのため耐光性が低下す
るものと考えられる。 さらに本発明のポリエステル繊維は180℃無荷重下で
熱処理した後、捲縮山数1〜10山/cmの捲縮を有する必
要がある。捲縮山数1未満では本発明の狙いとするソフ
ト化の効果が得られず、逆に捲縮山数が10を越えるとフ
ェルト状の風合となり好ましくいない。かかる観点から
より好ましい捲縮山数としては2〜5山/cmである。 本発明のポリエステル繊維の断面形状は特に限定はな
いが三角形、マルチローバル、π、H型などの非円形断
面が良好な捲縮が得られ好ましい。 又、本発明のポリエステル繊維は、その効果を一層発
揮させるために単糸繊度を1〜4デニールとする必要が
ある。単糸デニールが1デニールより細い場合には、布
帛の外観は白っぽく品位が不良となり、4デニールより
太い場合には布帛風合が粗硬感を有するものとなってし
まう。ポリエステル繊維の総デニールは特に限定はない
が、50〜150デニールであることが望ましい。 さらに本発明のポリエステル繊維は、通常の衣料用途
やインテリア用途に用いられるが、特に無荷重下(非拘
束)の状態で捲縮発現処理(熱処理)が行なわれる用
途、例えばトリコット起毛、ダブルラッセルポール、モ
ケットなどの立毛布帛のパイル糸として用いると特にそ
の効果が著しい。 次に本発明におけるポリエステル繊維を得る方法につ
いて好ましい例を挙げ以下に説明する。 本発明におけるポリエステル繊維は、常法に従って溶
融紡糸したポリエステル糸条を、口金下100〜250mmの保
温帯域を通した後、口金下450mm以内で風速100〜150m/
分の冷却風速で非対称に冷却し、引取速度5500m/分以上
で高速製糸することにより得られる。本発明は100〜250
mmの保温帯域とすることにより良好な製糸性が得られ
る。冷却開始位置が口金から450mmより離れたり、冷却
風速が100m/分より遅い場合には、たとえ捲縮があった
としても1山/cm未満となる。また、冷却風速が150m/分
を越えると製糸性が悪化する。引取速度の上限は製糸性
及び得られた糸の破断伸度を30%以上とする点から8000
m/分以下とする。 本方法により得られるポリエステル繊維は繊維の中心
軸に対して非対称で連続的に変化する繊維断面方向の構
造差、または不連続に変化する構造差を有する。連続的
に変化する構造差を有する繊維は、断面内に不連続な境
界面がなく、紡糸時の応力分布が不連続に変化せず応力
集中が起こりにくいため、糸切れを起こしにくい。ま
た、これに伴い欠陥の少ない糸となるため製編、製織時
の工程通過時が良好なものとなる。 一方、本発明の繊維断面方向の構造差は、繊維の中心
軸に対して非対称で不連続に変化したものでもよい。こ
のような構造を得る方法としては、2種のポリエステル
をサイドバイサイド型に複合紡糸した糸条を前述の保温
帯域を通した後、常法により冷却し、引取速度5500m/分
以上で高速紡糸する方法などが例示される。このような
不連続構造を紡糸吐出前に制御しておくことにより、単
糸間で均一な捲縮が得られ、風合を良好なものとするこ
とができる。この場合、2種のポリエステルの極限粘度
差は製糸性の観点から0.1以下とすることが好ましい。 通常の捲縮糸である延伸仮撚糸やサイドバイサイド複
合延伸糸では例えばTmaxが120℃を越え、本発明のポリ
エステル繊維は得られない。又、上述のTmaxを下げるた
めの手段として繊維製造時の延伸倍率を下げ非晶配向度
を低下させてTmaxを下げる方法もあるが、かかる方法で
は破断伸度が70%を越え製編、製織時にツリ欠点が発生
する。 このように本発明におけるポリエステル繊維を得るた
めには、高速紡糸で非対称冷却を行なうことが最も好ま
しい方法である。 [実施例] 以下、実施例により本発明の効果をより詳細に説明す
る。なお実施例中の物性は次の様にして測定した。 A.Tmax 東洋ボールドウイン(株)製バイブロンDDV−II型を
用い、振動数110Hz、昇温速度30℃/分、測定温度 室
温〜190℃空気中(温度23±2℃、50±5%RH)でtanδ
〜温度曲線を求め、tanδのピークに対応する温度をTma
xとする。 B.破断伸度 東洋ボールドウイン(株)製テンシロン引張り試験機
を用い試長200mm、引張り速度100mm/分でS−S曲線を
求め最大応力に対応する伸度をもって破断伸度とする。 C.密度 n−ヘプタンを軽液、四塩化炭素を重液とする密度勾
配管法により繊維の密度を求める。 D.捲縮山数 試料を180℃で5分間、無荷重下(フリー)の条件で
熱処理し捲縮を発現させ、しかる後に試料を単糸1本ず
つに分割し、台紙上に静置し(無荷重)1cmの間に存在
する山と谷の数を数え、その合計を1/2とする。この測
定を5回繰り返し平均値をもって捲縮山数とする。 E.耐光性 試料を27ゲージの筒編とし、精練後、染料Resolin Bl
ue FBL(第一化成(株)製)で染色し、スガ試験機
(株)製フェードメーター(FA−2型)を用い83℃、30
0時間照射しグレースケール判定を行なった。グレース
ケールで3級以上を保持している水準を合格(○)とし
た。 F.極限粘度 オルソクロロフェノール25℃で測定した。 実施例1 ポリエチレンテレフタレートを用い以下に示す方法で
75デニール−24フィラメントの繊維を得た。 (製法1)表2のNo.1〜No.3 紡糸温度295℃にてY型の口金から吐出した糸条を口
金下160mmの温度帯域を通した後、吹出し長100mmのチム
ニーから表1に示した風速で、温度20℃の冷却風を片側
から非対称に糸条にあてた後、やはり表1に示した引取
速度で引取り75デニール−24フィラメントのポリエステ
ル繊維を得た。(製法2)表2のNo.4〜No.6 紡糸温度290℃にてY型の口金から吐出した糸条を、
口金下130mmの保温帯域を通した後、吹出し長200mmのチ
ムニーから風速100m/分、温度20℃の冷却風を片側から
非対称に吹きあてて冷却し、引取速度1300m/分で引取
り、直ちに延伸温度85℃、熱処理温度140℃の条件で延
伸倍率を変更し、表2のNo.4〜6に示した。伸度36.9
%、89.4%、25.6%の各ポリエステル繊維(75デニール
−24フィラメント)を得た。 (製法3) 紡糸温度290℃にて丸孔の口金から吐出した糸条を常
法により冷却し、引取速度3000m/分で引取りPOYを得
た。このPOYをフリクション方式で撚数3200T/m、ヒータ
ー温度215℃でインドロー仮撚を行ない、75デニール−2
4フィラメントの仮撚加工糸を得た。 (表2No.7) (製法4) 紡糸温度290℃にて、極限粘度0.83と極限粘度0.50の
ポリエチレンテレフタレートを別々に溶融し、複合比1
対1にサイドバイサイドに複合し、口金から吐出し、常
法に従い冷却した後、引取速度1000m/分で引取った。 得られた未延伸糸を延伸温度80℃、熱処理温度135℃
で延伸し、75デニール−24フィラメントのスパイラル捲
縮糸を得た。 (表2のNo.8) 表2に製法1〜4で得られた繊維のTmax、伸度、密
度、捲縮山数を示す。 さらにNo.1〜No.8の繊維をパイル糸として用い、常法
に従い立毛布(ポールトリコット)を作成した。この立
毛布の風合及び染着性、耐光性および編み立て時の製編
性を評価し表2に合せて示した。 表2から明らかなように、単純な高速紡糸で得たNo.1
は、捲縮が少なく良好な風合が得られなかった。又、紡
糸速度が低速であるNo.3では伸度が高く布帛にツリ欠点
が生じたり編成性も悪く、しかも密度が低いため、著し
く耐光性が悪化した。又、通常の延伸方式により得たN
o.4、5、6のうち延伸倍率を下げた。No.5は伸度が高
すぎ製編性が悪く、倍率を上げたNo.4はTmaxが120℃を
越え染色性が悪化した。さらに倍率を上げたNo.6は染色
性の悪化だけでなく伸度も低下し、毛羽の混入が頻繁と
なり、やはり製編性が悪化した。又、No.7、8の通常の
仮撚加工やサイドバイサイド複合糸ではTmaxが120℃を
越え染色性が悪いだけでなく、捲縮数が多すぎて布帛風
合がフェルト状となり、良くなかった。製編性、風合、
染着性、耐久性とも満足できるのは本発明の範囲を満た
すNo.2のみであった。 実施例2 フイラメント数を96、72、18とした以外は実施例1の
No.2と同様にしてポリエススル繊維をまたこれら繊維を
パイル糸として実施例1と同様にして立毛布を作製し
た。75デニール−96フィラメントと単糸デニールが1dに
満たないものを立毛に用いた場合には、布帛外観が白っ
ぽくなり、品位が不良であった。また、75デニール−18
フィラメントと単糸デニールが4dを越える場合には、布
帛風合いが粗硬感を有するものとなってしまい、立毛布
用途としては不適であった。 一方、75デニール−72フィラメントのポリエステル繊
維から得られた立毛布は、布帛の外観、風合いとも良好
なものであった。 [発明の効果] 本発明のポリエステル繊維は、染色性に優れ、かつ良
好な編成性、耐光性を有するばかりでなく良好な捲縮性
をかね備えた従来にないポリエステル繊維であり、該ポ
リエステル繊維は、例えばパイル布帛のパイル部など無
荷重下の状態で捲縮発現処理がなされる用途に用いると
捲縮が強すぎもせず、弱すぎもせず良好な風合の立毛布
が得られる。
ると優れたデザイン性及び風合を実現できる捲縮性ポリ
エステル繊維に関するものである。 [従来の技術] ポリエステル繊維は優れた機械的性質、寸法安定性、
イージーケア性などの特徴を生かして衣料用繊維として
広く利用されているだけでなく、近年では、その優れた
耐久性のためカーシートなどのインテリア用途にも広く
用いられている。このインテリア用途では、近年ポリエ
ステル繊維をパイル部に用いた立毛布が好んで使用され
ているが、通常のポリエステル繊維を立毛布に用いる
と、風合が硬く高級感に欠けたり、濃色表現が難しいな
どの問題点がある。 かかる問題点を解決するため立毛布のパイル部分に用
いるポリエステル繊維に若干の捲縮を与え、風合をやわ
らかくしようとする考え方がある。従来公知のポリエス
テル捲縮糸としては仮撚加工糸や異種ポリマをサイドバ
イサイドにはり合わせた複合捲縮糸があるが、公知のこ
れら繊維をパイル糸に用いると、無荷重の状態で捲縮表
現処理がなされているため、捲縮が強く出すぎ、狙いと
は逆にフェルト状の風合になってしまい効率がない。 又、特公昭31−6768号公報には高速紡糸により得られ
る潜在捲縮糸の記載があるが、単に高速紡糸しただけの
ポリエステル繊維を用いても十分な捲縮が発現せず、効
果がない。 さらに特開昭56−159313号公報には、紡糸速度3,700m
/分で不均一冷却を行なって、しかる後に加熱流体ノズ
ルを用いて捲縮を発現させた繊維が示されているが、か
かる糸は、低い紡糸速度で得られたものであり、伸度が
高いこと、かつすでに捲縮が発現しているため製編、製
織性が悪いという問題がある。 このように従来では、立毛布のパイル糸に適した捲縮
性ポリエステル繊維は得られていない。すなわち、パイ
ル部分は無荷重(フリー)の状態で熱がかけられ、その
際捲縮が発現するので従来のように織物、編物などの組
織の拘束の下で捲縮を出すことを狙って設計された繊維
や、すでに製編・織前に捲縮が顕在化している繊維で
は、パイル糸に展開した場合十分に狙いとする効果が得
られないのである。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明の目的は、かかる従来の技術の欠点を解決し、
立毛布のパイル糸として用いると良好な捲縮が発現し、
良好な布帛の風合が実現でき、しかも良好な染色性を有
するポリエステル繊維を提供することにある。 [問題点を解決するための手段] 前記した本発明の目的は、繊維断面方向に構造差を有
し、単糸繊度が1〜4デニール、tanδ〜温度曲線のピ
ーク温度(Tmax)が120℃以下、破断伸度(E)が30〜7
0%、密度(D)が1.36g/cm3以上であり、180℃無荷重
下で熱処理した後に捲縮山数1〜10山/cmの捲縮を発現
することを特徴とするポリエステル繊維からなる立毛布
帛用パイル糸により達成できる。 本発明におけるポリエステルは、エチレンテレフタレ
ートを主たる繰り返し単位とするポリエステルである
が、少量の第3成分を共重合したポリエステルでも良
い。本発明のポリエステル繊維は繊維断面方向に構造差
を有している必要がある。繊維断面方向の構造差とは、
配向度、結晶化度などの繊維構造が繊維横断面内で分布
を有し、その結果として、180℃無荷重下で熱処理した
後に捲縮山数が1山/cm以上の捲縮を発現する繊維構造
を言う。具体的には繊維の中心軸に対して非対称で連続
的に変化している場合や、境界があり不連続に変化して
いる場合がある。 本発明のポリエステル繊維としては、tanδ−温度曲
線のピーク温度Tmaxが120℃以下である必要がある。Tma
xが120℃を越えると染色性が不十分で、濃色表現が難か
しい。Tmaxは一般に繊維非晶部の構造に対応するパラメ
ータでTmaxが高いほど、例えば非晶配向度が高いほど非
晶部が堅固な構造となることを示している。 一般のポリエステル繊維のTmaxは大体140℃であり、
染色性を改善すべく第3成分を共重合したポリエステル
繊維のTmaxは130℃前後である。これに対し、本発明の
ポリエステル繊維のTmaxは著しく低温にする必要があ
り、Tmaxを120℃以下として始めて良好な染色性が実現
でき、容易に濃色まで表現できるようになる。 さらに本発明のポリエステル繊維の破断伸度(E)は
30〜70%である必要がある。 伸度(E)が70%をこえると製編、製織などの加工時
に繊維ぎ伸びてしまいツリ欠点が生じ、製品品位が低下
する。又、伸度が30%未満になると伸度が低いため加工
時に毛羽立ちが生じたり、又、原糸自体に毛羽が混入し
ているため製編性が悪化し、製編時に糸切れが多発す
る。かかる観点からより好ましい伸度の範囲は35〜50%
である。 又、本発明のポリエステル繊維の密度(D)は1.36g/
cm3以上である必要がある。密度が1.36g/cm3未満の場合
は耐光性が悪化する。これは、密度は一般に繊維の結晶
性を示すパラメータであり、密度が高いほど内部構造が
安定化しているのであるが、密度が1.36g/cm3未満では
十分な結晶性を有しておらず、そのため耐光性が低下す
るものと考えられる。 さらに本発明のポリエステル繊維は180℃無荷重下で
熱処理した後、捲縮山数1〜10山/cmの捲縮を有する必
要がある。捲縮山数1未満では本発明の狙いとするソフ
ト化の効果が得られず、逆に捲縮山数が10を越えるとフ
ェルト状の風合となり好ましくいない。かかる観点から
より好ましい捲縮山数としては2〜5山/cmである。 本発明のポリエステル繊維の断面形状は特に限定はな
いが三角形、マルチローバル、π、H型などの非円形断
面が良好な捲縮が得られ好ましい。 又、本発明のポリエステル繊維は、その効果を一層発
揮させるために単糸繊度を1〜4デニールとする必要が
ある。単糸デニールが1デニールより細い場合には、布
帛の外観は白っぽく品位が不良となり、4デニールより
太い場合には布帛風合が粗硬感を有するものとなってし
まう。ポリエステル繊維の総デニールは特に限定はない
が、50〜150デニールであることが望ましい。 さらに本発明のポリエステル繊維は、通常の衣料用途
やインテリア用途に用いられるが、特に無荷重下(非拘
束)の状態で捲縮発現処理(熱処理)が行なわれる用
途、例えばトリコット起毛、ダブルラッセルポール、モ
ケットなどの立毛布帛のパイル糸として用いると特にそ
の効果が著しい。 次に本発明におけるポリエステル繊維を得る方法につ
いて好ましい例を挙げ以下に説明する。 本発明におけるポリエステル繊維は、常法に従って溶
融紡糸したポリエステル糸条を、口金下100〜250mmの保
温帯域を通した後、口金下450mm以内で風速100〜150m/
分の冷却風速で非対称に冷却し、引取速度5500m/分以上
で高速製糸することにより得られる。本発明は100〜250
mmの保温帯域とすることにより良好な製糸性が得られ
る。冷却開始位置が口金から450mmより離れたり、冷却
風速が100m/分より遅い場合には、たとえ捲縮があった
としても1山/cm未満となる。また、冷却風速が150m/分
を越えると製糸性が悪化する。引取速度の上限は製糸性
及び得られた糸の破断伸度を30%以上とする点から8000
m/分以下とする。 本方法により得られるポリエステル繊維は繊維の中心
軸に対して非対称で連続的に変化する繊維断面方向の構
造差、または不連続に変化する構造差を有する。連続的
に変化する構造差を有する繊維は、断面内に不連続な境
界面がなく、紡糸時の応力分布が不連続に変化せず応力
集中が起こりにくいため、糸切れを起こしにくい。ま
た、これに伴い欠陥の少ない糸となるため製編、製織時
の工程通過時が良好なものとなる。 一方、本発明の繊維断面方向の構造差は、繊維の中心
軸に対して非対称で不連続に変化したものでもよい。こ
のような構造を得る方法としては、2種のポリエステル
をサイドバイサイド型に複合紡糸した糸条を前述の保温
帯域を通した後、常法により冷却し、引取速度5500m/分
以上で高速紡糸する方法などが例示される。このような
不連続構造を紡糸吐出前に制御しておくことにより、単
糸間で均一な捲縮が得られ、風合を良好なものとするこ
とができる。この場合、2種のポリエステルの極限粘度
差は製糸性の観点から0.1以下とすることが好ましい。 通常の捲縮糸である延伸仮撚糸やサイドバイサイド複
合延伸糸では例えばTmaxが120℃を越え、本発明のポリ
エステル繊維は得られない。又、上述のTmaxを下げるた
めの手段として繊維製造時の延伸倍率を下げ非晶配向度
を低下させてTmaxを下げる方法もあるが、かかる方法で
は破断伸度が70%を越え製編、製織時にツリ欠点が発生
する。 このように本発明におけるポリエステル繊維を得るた
めには、高速紡糸で非対称冷却を行なうことが最も好ま
しい方法である。 [実施例] 以下、実施例により本発明の効果をより詳細に説明す
る。なお実施例中の物性は次の様にして測定した。 A.Tmax 東洋ボールドウイン(株)製バイブロンDDV−II型を
用い、振動数110Hz、昇温速度30℃/分、測定温度 室
温〜190℃空気中(温度23±2℃、50±5%RH)でtanδ
〜温度曲線を求め、tanδのピークに対応する温度をTma
xとする。 B.破断伸度 東洋ボールドウイン(株)製テンシロン引張り試験機
を用い試長200mm、引張り速度100mm/分でS−S曲線を
求め最大応力に対応する伸度をもって破断伸度とする。 C.密度 n−ヘプタンを軽液、四塩化炭素を重液とする密度勾
配管法により繊維の密度を求める。 D.捲縮山数 試料を180℃で5分間、無荷重下(フリー)の条件で
熱処理し捲縮を発現させ、しかる後に試料を単糸1本ず
つに分割し、台紙上に静置し(無荷重)1cmの間に存在
する山と谷の数を数え、その合計を1/2とする。この測
定を5回繰り返し平均値をもって捲縮山数とする。 E.耐光性 試料を27ゲージの筒編とし、精練後、染料Resolin Bl
ue FBL(第一化成(株)製)で染色し、スガ試験機
(株)製フェードメーター(FA−2型)を用い83℃、30
0時間照射しグレースケール判定を行なった。グレース
ケールで3級以上を保持している水準を合格(○)とし
た。 F.極限粘度 オルソクロロフェノール25℃で測定した。 実施例1 ポリエチレンテレフタレートを用い以下に示す方法で
75デニール−24フィラメントの繊維を得た。 (製法1)表2のNo.1〜No.3 紡糸温度295℃にてY型の口金から吐出した糸条を口
金下160mmの温度帯域を通した後、吹出し長100mmのチム
ニーから表1に示した風速で、温度20℃の冷却風を片側
から非対称に糸条にあてた後、やはり表1に示した引取
速度で引取り75デニール−24フィラメントのポリエステ
ル繊維を得た。(製法2)表2のNo.4〜No.6 紡糸温度290℃にてY型の口金から吐出した糸条を、
口金下130mmの保温帯域を通した後、吹出し長200mmのチ
ムニーから風速100m/分、温度20℃の冷却風を片側から
非対称に吹きあてて冷却し、引取速度1300m/分で引取
り、直ちに延伸温度85℃、熱処理温度140℃の条件で延
伸倍率を変更し、表2のNo.4〜6に示した。伸度36.9
%、89.4%、25.6%の各ポリエステル繊維(75デニール
−24フィラメント)を得た。 (製法3) 紡糸温度290℃にて丸孔の口金から吐出した糸条を常
法により冷却し、引取速度3000m/分で引取りPOYを得
た。このPOYをフリクション方式で撚数3200T/m、ヒータ
ー温度215℃でインドロー仮撚を行ない、75デニール−2
4フィラメントの仮撚加工糸を得た。 (表2No.7) (製法4) 紡糸温度290℃にて、極限粘度0.83と極限粘度0.50の
ポリエチレンテレフタレートを別々に溶融し、複合比1
対1にサイドバイサイドに複合し、口金から吐出し、常
法に従い冷却した後、引取速度1000m/分で引取った。 得られた未延伸糸を延伸温度80℃、熱処理温度135℃
で延伸し、75デニール−24フィラメントのスパイラル捲
縮糸を得た。 (表2のNo.8) 表2に製法1〜4で得られた繊維のTmax、伸度、密
度、捲縮山数を示す。 さらにNo.1〜No.8の繊維をパイル糸として用い、常法
に従い立毛布(ポールトリコット)を作成した。この立
毛布の風合及び染着性、耐光性および編み立て時の製編
性を評価し表2に合せて示した。 表2から明らかなように、単純な高速紡糸で得たNo.1
は、捲縮が少なく良好な風合が得られなかった。又、紡
糸速度が低速であるNo.3では伸度が高く布帛にツリ欠点
が生じたり編成性も悪く、しかも密度が低いため、著し
く耐光性が悪化した。又、通常の延伸方式により得たN
o.4、5、6のうち延伸倍率を下げた。No.5は伸度が高
すぎ製編性が悪く、倍率を上げたNo.4はTmaxが120℃を
越え染色性が悪化した。さらに倍率を上げたNo.6は染色
性の悪化だけでなく伸度も低下し、毛羽の混入が頻繁と
なり、やはり製編性が悪化した。又、No.7、8の通常の
仮撚加工やサイドバイサイド複合糸ではTmaxが120℃を
越え染色性が悪いだけでなく、捲縮数が多すぎて布帛風
合がフェルト状となり、良くなかった。製編性、風合、
染着性、耐久性とも満足できるのは本発明の範囲を満た
すNo.2のみであった。 実施例2 フイラメント数を96、72、18とした以外は実施例1の
No.2と同様にしてポリエススル繊維をまたこれら繊維を
パイル糸として実施例1と同様にして立毛布を作製し
た。75デニール−96フィラメントと単糸デニールが1dに
満たないものを立毛に用いた場合には、布帛外観が白っ
ぽくなり、品位が不良であった。また、75デニール−18
フィラメントと単糸デニールが4dを越える場合には、布
帛風合いが粗硬感を有するものとなってしまい、立毛布
用途としては不適であった。 一方、75デニール−72フィラメントのポリエステル繊
維から得られた立毛布は、布帛の外観、風合いとも良好
なものであった。 [発明の効果] 本発明のポリエステル繊維は、染色性に優れ、かつ良
好な編成性、耐光性を有するばかりでなく良好な捲縮性
をかね備えた従来にないポリエステル繊維であり、該ポ
リエステル繊維は、例えばパイル布帛のパイル部など無
荷重下の状態で捲縮発現処理がなされる用途に用いると
捲縮が強すぎもせず、弱すぎもせず良好な風合の立毛布
が得られる。
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所
D01F 6/62 303 D01F 6/62 303A
303F
D02G 3/02 D02G 3/02
3/44 3/44
D03D 27/00 D03D 27/00 A
(56)参考文献 特開 昭54−134121(JP,A)
特開 昭62−15382(JP,A)
特開 昭61−89321(JP,A)
特開 昭49−35619(JP,A)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.繊維断面方向に構造差を有し、単糸繊度が1〜4デ
ニール、tanδ〜温度曲線のピーク温度(Tmax)が120℃
以下、破断伸度(E)が30〜70%、密度(D)が1.36g/
cm3以上であり、180℃無荷重下で熱処理した後に捲縮山
数1〜10山/cmの捲縮を発現することを特徴とするポリ
エステル繊維からなる立毛布帛用パイル糸。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62255557A JP2702128B2 (ja) | 1987-10-09 | 1987-10-09 | 立毛布帛用パイル糸 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62255557A JP2702128B2 (ja) | 1987-10-09 | 1987-10-09 | 立毛布帛用パイル糸 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0197209A JPH0197209A (ja) | 1989-04-14 |
JP2702128B2 true JP2702128B2 (ja) | 1998-01-21 |
Family
ID=17280377
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62255557A Expired - Fee Related JP2702128B2 (ja) | 1987-10-09 | 1987-10-09 | 立毛布帛用パイル糸 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2702128B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE69031383T2 (de) * | 1989-11-30 | 1998-02-19 | Asahi Chemical Ind | Gekräuseltes multifilament und verfahren zur herstellung eines solchen filaments |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
GB2017574B (en) * | 1978-03-31 | 1982-07-14 | Monsanto Co | Melt-spinning process and helically crimped polyester filaments |
JPS6189321A (ja) * | 1984-10-08 | 1986-05-07 | Teijin Ltd | 高染色性ポリエステル繊維 |
JPS6215382A (ja) * | 1985-07-04 | 1987-01-23 | 株式会社クラレ | ポリエステル繊維の製造方法 |
-
1987
- 1987-10-09 JP JP62255557A patent/JP2702128B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0197209A (ja) | 1989-04-14 |
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