JPH11302772A - 加工性の優れた薄板用鋼およびその脱酸方法 - Google Patents

加工性の優れた薄板用鋼およびその脱酸方法

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JPH11302772A
JPH11302772A JP3689299A JP3689299A JPH11302772A JP H11302772 A JPH11302772 A JP H11302772A JP 3689299 A JP3689299 A JP 3689299A JP 3689299 A JP3689299 A JP 3689299A JP H11302772 A JPH11302772 A JP H11302772A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面欠陥の発生を顕著に改善した良加工性薄
板用鋼とこの溶鋼を連続鋳造する際のノズル閉塞を防止
する脱酸方法を提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.0001〜0.00
30%、Si:0.03%以下、Mn:0.05〜0.
30%、P:0.015%以下、S:0.001〜0.
015%、Al:0.008%以下、Ti:0.02〜
0.08%、Ca:0.0005〜0.0020%、
N:0.0005〜0.01%を含み、必要に応じてN
b:0.001〜0.02重量%、B:0.0001〜
0.0010重量%の一方又は双方を含み、残部Feお
よび不可避的不純物元素からなる加工性の優れた薄板用
鋼。また、上記成分の鋼において脱酸剤としてのCaお
よびAlの添加量を適正に調節して非金属介在物組成を
制御し、鋳造ノズルの閉塞を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工性の優れた薄
板用鋼とその脱酸方法に関し、とくに薄板製品の表面欠
陥が著しく少ない良加工性薄板用鋼と、その溶鋼を連続
鋳造する際に鋳造ノズルの閉塞を防止するための脱酸方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】極低炭素鋼は優れた加工性を有すること
から、近年自動車用外板や表面処理鋼板等に広く用いら
れている。その粗鋼片は、通常転炉等の溶鋼をRH等の
真空脱ガス処理によって極低炭素濃度まで下げる脱炭処
理をした後、連続鋳造で製造される。脱炭処理後には過
剰のフリー酸素が溶鋼中に高濃度に存在するため、連続
鋳造前に溶鋼を脱酸する必要がある。
【0003】一般的に、溶鋼の脱酸にはアルミニウム
(Al)が用いられ、従来の極低炭素鋼はAlキルド鋼で
ある。溶鋼の脱酸によって生成したアルミナ系介在物は
クラスターを形成し、しばしば連鋳鋳片の表層に残留
し、圧延後の表面欠陥の原因となり、著しく製品歩留を
低下させる。従って、表面品質確保の観点から極低炭素
鋼の製造にあたっては、溶鋼の清浄化対策が重要であ
る。
【0004】一方、連続鋳造中に発生するノズル閉塞
は、ヘゲ疵、スリバー疵等の線状疵の原因となり製品薄
板材の品質を著しく損なうことが知られている。また連
続鋳造のメリットである高生産性確保の観点からも、ノ
ズル閉塞の防止対策が必要である。
【0005】ノズル閉塞の発生原因は溶鋼中に存在する
アルミナおよびアルミナクラスターが、浸漬ノズル内壁
面に付着、堆積するためであることが知られている。こ
のようなノズル閉塞の機構については、「耐火物」第4
6巻(1994)166〜178頁に種々の説が詳細に
解説されているが、閉塞したノズルの断面観察からは、
ノズル内壁付着物はアルミナクラスターとメタルの混合
物であることが知られている。従って、ノズル閉塞を防
止するためには、溶鋼の清浄度を上げることが最も重要
である。
【0006】溶鋼清浄度を向上する対策としては、第1
26回・第127回西山記念技術講座「高清浄鋼」(日
本鉄鋼協会編)12〜14頁に詳しく述べられている
が、例えばタンディッシュでは溶鋼の再酸化を防止する
ことが重要であり、タンディッシュ内雰囲気を不活性ガ
スでシールすることで、再酸化が抑えられることが示さ
れている。
【0007】また、ノズル閉塞防止の目的で、ノズル閉
塞の原因となるアルミナを低融点複合介在物に形態制御
し、ノズル内壁に付着しにくくする方法が提案されてい
る。低融点化の方法としてこれまで適用されているのが
溶鋼中へのCa添加であり、「鉄と鋼」(1986)S
281にノズル閉塞防止に対する効果が示されている。
また、特開平5−237613号公報にはノズル閉塞状
況に応じたタンディッシュ内へのCa添加方法が開示さ
れている。
【0008】しかしながら、Alキルド鋼の場合は、ア
ルミナクラスターを低融点化するために多量のCaを添
加する必要があり、またノズル閉塞防止効果が必ずしも
十分でなく、そのため表面欠陥のない薄板製品を安定し
て製造するのが難しいという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の発明者らは、
先に(例えば特開平7−111071号公報に)Tiを
0.01〜0.40重量%含有しAlを少なくしたTi
含有鋼は、薄板材質としてAl脱酸鋼と同等の特性を有
し、また製造した薄板の表面欠陥が低減できることを示
した。
【0010】Alの少ないTi含有鋼の場合に表面欠陥
が発生しにくい理由は、溶鋼中の介在物が、凝集し易く
大型のクラスターを形成し易いAl23でなく、Ti酸
化物主体の介在物になっているためと推測される。
【0011】しかし本発明者らの知見によれば、かかる
Ti含有鋼はAl脱酸鋼よりも注湯ノズルの閉塞が起こ
り易い。したがって、連続鋳造で表面欠陥のないTi含
有極低炭薄板材を製造するためには、注湯ノズルの閉塞
を防止する技術の確立が不可欠である。
【0012】このため本発明者らは、Alの少ないTi
含有鋼のノズルの閉塞防止法として、特定の材質のノズ
ルを使用する方法(特開平7−111071号)、溶鋼
中のSi濃度を制御する方法(特開平7−111073
号)、溶鋼中の酸素濃度を制御する方法(特開平7−1
11072号公報)などを提案した。
【0013】しかし、溶鋼中のSiやO濃度を制御する
方法は、一部の鋼種については材質への影響があって適
用できない。また、上記の各方法によってもTi含有鋼
のノズル閉塞を完全に防止することは困難で、より確実
にノズルの閉塞を防止し、安定して表面欠陥のないTi
含有極低炭薄板製品を製造しうる手段の提供が望まれて
いる。
【0014】そこで本発明は、ノズル閉塞が発生し易い
上記のようなTi含有鋼において、製品材質等へ悪影響
を与えることなく確実に鋳造ノズル閉塞を防止して、介
在物に起因する製品表面欠陥の発生を著しく少なくしう
るTi含有極低炭薄板用鋼を提供することを目的とす
る。
【0015】またこの薄板用鋼は、介在物の融点が高く
かつその凝集性が大きい場合にノズル内面へ付着物が成
長し易いことから、溶鋼中の介在物の組成を制御して融
点が低く凝集性の小さい介在物を生成させることによ
り、ノズル閉塞を抜本的に防止しうる脱酸方法を提供す
ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Ti含有
鋼の場合にもCa添加により低融点の介在物が生成し、
薄板材の表面欠陥が低減するが、Ca添加量を多くする
と低融点化の効果が無くなるため、溶鋼中のトータルC
a濃度が所定の範囲に入るようにCa添加量を調節する
必要があることを知見した。
【0017】また、Tiの歩留を高位に安定させるとい
う観点からは、少量のAlで先行脱酸する方が望ましい
が、過度にAlを添加するとAl脱酸鋼と同様の介在物
が生成し、前述のように多量のCaを添加しなければ、
低融点の介在物が生成しないという問題が生ずる。した
がって、Alで先行脱酸する場合には、Ti添加前のA
lによる先行脱酸の条件を適正に制御し、かつCa添加
量を上記のように調節する必要があることを知見した。
【0018】Al脱酸に先立ってSiで予備脱酸を行う
ことも可能であるが、一般的に安価なCa源としてCa
Siを使用するので、溶鋼中の[Si]濃度の許容限界
(0.03%)内でSiを使用しなければならない。
【0019】また、本発明者らは上記の知見および製品
材質に関する検討結果から、介在物に起因する線状疵が
少ないTi含有極低炭薄板用鋼の適正な鋼成分および介
在物組成に関する知見を得た。
【0020】本発明はこれらの知見に基いてなされたも
ので、本発明に係る加工性の優れた薄板用鋼の要旨は、
重量%でC:0.0001〜0.0030%、Si:
0.03%以下、Mn:0.05〜0.30%、P:
0.015%以下、S:0.001〜0.015%、A
l:0.008%以下、Ti:0.02〜0.08%、
Ca:0.0005〜0.0020%、N:0.000
5〜0.01%を含み、残部Feおよび不可避的不純物
元素からなる加工性の優れた薄板用鋼である。
【0021】上記の鋼はさらにNb:0.001〜0.
02重量%、B:0.0001〜0.0010重量%の
いずれか一方又は双方を含むものであってもよい。
【0022】また、上記の鋼組成を有し、かつ鋼中円相
当径10μmφ以上の非金属介在物の70%以上が、C
aO、Al23、TiO2の3成分について、下記(1
a)〜(1c)式の範囲内の組成を有することを特徴とす
る加工性の優れた薄板用鋼である。
【0023】 0.03≦CaO/(CaO+Al23+TiO2)≦0.30 ……(1a) 0≦Al23/(CaO+Al23+TiO2)≦0.40 ……(1b) 0.40≦TiO2/(CaO+Al23+TiO2)≦0.90……(1c) ここで、CaO、Al23、TiO2:非金属介在物中
のCaO、Al23、TiO2の含有量(重量%)な
お、実鋳片中のTi酸化物はTiO2とTi23の形態
をとっている場合があるが、ここでは便宜上Ti酸化物
はTiO2として表記した。
【0024】本発明に係る加工性の優れた薄板用鋼の脱
酸方法の要旨は、 (1)上記のいずれかの薄板用鋼の連続鋳造に供する溶鋼
を脱酸するに際して、未脱酸溶鋼に所定量のTi又はT
i合金を添加した後、該溶鋼中のトータルCa濃度が5
〜20ppmになるようにCa又はCa合金を添加し
て、該溶鋼中の非金属介在物をCaOを含有するTi酸
化物にすることを特徴とする加工性の優れた薄板用鋼の
脱酸方法である。
【0025】(2)上記のいずれかの薄板用鋼の連続鋳造
に供する溶鋼を脱酸するに際して、Alによる先行脱酸
を行って該溶鋼中のトータルAl濃度を10〜80pp
mとした後所定量のTi又はTi合金を添加し、さらに
その後該溶鋼中のトータルCa濃度が5〜20ppmに
なるようにCa又はCa合金を添加して、該溶鋼中の非
金属介在物をCaOおよびAl23を含有するTi酸化
物にすることを特徴とする加工性の優れた薄板用鋼の脱
酸方法である。なお、トータルAl濃度は溶鋼中の溶解
Al及び介在物中のAlの溶鋼に対する重量比で、トー
タルCa濃度も同様に定義されるものである。
【0026】(3)上記(2)項記載の薄板用鋼の脱酸方法
において、未脱酸溶鋼のフリー酸素濃度を測定し、前記
先行脱酸におけるAl添加量を下式の範囲にすることを
特徴とする加工性の優れた薄板用鋼の脱酸方法である。
【0027】 WAl < 162.5+0.375C(O) ……(2) ここで、WAl:溶鋼トン当りのAl添加量(g/t) C(O):未脱酸溶鋼のフリー酸素濃度(ppm) (4)上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の脱酸方法にお
いて、鋼中円相当径10μmφ以上の非金属介在物の7
0%以上がCaO、Al23、TiO2の3成分につい
て、上記(1a)〜(1c)式の範囲内の組成を有すること
を特徴とする加工性の優れた薄板用鋼の脱酸方法であ
る。
【0028】
【発明の実施の形態】まず鋼の成分について述べる。脱
酸生成物起因の線状疵を防止するためには、アルミナク
ラスターの生成を防止し、ノズル閉塞を発生させないこ
とが重要である。Alの濃度が高すぎると、Ca合金ま
たはCaの添加量が増加し、経済的でないだけでなく、
注入系の断気が悪い場合に、再酸化によりアルミナが生
成し易くなり、介在物組成が高融点となり注入系耐火物
が閉塞傾向となり、製品での線状欠陥の発生割合が高く
なるので上限を0.008%(重量%、以下同じ)とす
る。また、Alは脱酸とともにNの固定にも用いられる
ので、この目的のためには0.001%以上添加するこ
とが好ましい。
【0029】Caも脱酸生成物起因の線状疵発生防止に
重要な元素である。Caは溶鋼中のアルミナと反応し、
浮上させるとともに、介在物を低融点化することによ
り、粗大なアルミナクラスターの生成を防止し、注入系
耐火物への付着増加を抑制する。また、Caは付着した
アルミナ系介在物とも反応し、低融点化することによ
り、ノズル閉塞を防止する。従ってその目的のために
は、少なくとも0.0005%の添加が必要である。一
方、Ca添加量が多いと、合金コストの増加を招くだけ
でなく、注入系耐火物の溶損が大きくなるので、上限を
0.0020%とした。なお、耐火物の寿命、コストを
度外視すれば、介在物低融点化の観点からは、この上限
を越えて添加しても問題ない。
【0030】Cは、侵入型固溶元素であり、多量の添加
は鋼を硬化させて成形性を悪化させるとともに、脱酸、
C固定に使用されるTiの歩留まり向上のためになるべ
く低く押さえる必要がありその上限は0.0030%と
する。
【0031】Siは、脱酸と鋼の強化のために添加され
るが、過剰の添加は鋼を強化しすぎ、また成形性を劣化
させるため0.03%以下とした。
【0032】Mnは置換型元素であり、添加により鋼が
硬化し延性が劣化する。しかし鋼中のSとMnSを形成
し、Sによる熱間脆性を防止する役割も持っている。そ
のため、本発明のような良加工性鋼板においても、0.
05%以上の添加が必要である。一方0.3%を越える
と成形性の劣化が著しくなるために上限を0.30%と
した。
【0033】Pは鋼の強化のために添加される場合があ
るが過剰に添加すると成形性が劣化するため、0.01
5%以下とした。
【0034】Sは不可避的不純物元素であり、なるべく
少ない方が成形性や熱間脆性向上の観点から望ましく、
上限を0.015%とする。一方0.001%未満にな
るとスケール剥離性が劣化することに基づく線状疵が発
生し易くなるため、0.001〜0.015%とする。
【0035】Tiは脱酸のためと、TiN、TiCとし
てC、Nの固定のため、0.02%以上の添加が必要で
あるが、0.08%を越えると添加効果が飽和するので
上限を0.08%とする。
【0036】Nbは必要に応じて添加される元素であ
り、Tiと同様にCやNを固定し耐時効性を改善すると
ともに、めっき密着性を改善する。0.001%未満で
は添加効果がなく、0.02%を越えると効果が飽和す
るので0.001〜0.02%とした。
【0037】Bも必要に応じて添加される元素であり、
二次加工性向上のため添加する。本発明のような高純度
極低炭素鋼は粒界強化元素である固溶炭素がないため粒
界強度が低く、深絞り成形+口広げのような二次加工を
行なった場合に縦割れが生じることがあるが、Bはこれ
を防止する効果がある。0.0001%未満では添加効
果がなく、一方、0.0010%を越えると効果が飽和
すると共にr値が劣化してくるため0.0001〜0.
0010%とする。
【0038】本発明の薄板用鋼は、鋼成分を上記のよう
にすることにより、アルミナクラスターの生成やノズル
閉塞に伴う大型介在物の生成を抑制して、介在物起因の
表面欠陥の著しい低減を図ることができる。しかし、よ
り確実に連続鋳造のノズル閉塞を防止して、表面欠陥の
ない製品を得るためには、後記のような脱酸方法によ
り、介在物組成を適正な範囲に制御することが望まし
い。
【0039】すなわち、本発明の薄板用鋼は、上記の鋼
成分に加えて、鋼中円相当径10μmφ以上の非金属介
在物の70以上%が、CaO、Al23、TiO2の3
成分について、前記(1a)〜(1c)式の範囲内の組成を
有することが望ましい。
【0040】円相当径10μmφ以上の介在物について
規定するのは以下の理由による。すなわち、表面欠陥の
原因となる介在物は、円相当径100μmφ程度以上の
粗大な介在物であるが、鋳片段階で介在物組成の制御状
況を評価するには、100μmφ以上の介在物量が少な
いため10μmφ以上で評価する必要がある。
【0041】CaOの比率の下限を0.03とするの
は、これ未満ではCa添加による介在物低融点化の効果
が得られないためであり、その上限を0.30とするの
は、これを越えると介在物が高融点となりノズル閉塞の
原因となり易いためである。
【0042】Al23の比率の上限を0.40とする理
由は、これを越えると実施例の図3及び図4に示すよう
に、Caを添加してもノズルが閉塞気味となるためであ
る。
【0043】TiO2の比率の上限を0.90とするの
は、これを越えると介在物がTiO2単体に近い組成と
なって高融点になるためであり、その下限を0.40と
するのは、これ未満では、相対的にCaO+Al23
濃度が大きくなるためである。
【0044】また後記実施例に示すように、円相当径1
0μmφ以上の介在物の70%以上が上記の組成範囲で
あれば、ノズル閉塞が発生しないことが確かめられてい
る。
【0045】次に脱酸方法について述べる。本発明の加
工性の優れた薄板用鋼の脱酸方法は、溶鋼中の介在物を
低融点のものにして、連続鋳造における注湯ノズルの閉
塞を防止し、これにより製品の表面欠陥を低減すること
を目的とする。図6に示すCaO−Al23−TiO2
三元系状態図に見るように、最も融点の低い組成はTi
2:CaOの重量比が略2〜4:1で、Al2O が0
〜40重量%の範囲である。なお、実際の介在物は上記
3成分の他にMgO,MnO,FeO等を含有するの
で、純三元系の場合よりも低融点化される。
【0046】この組成範囲では、介在物の融点は、ノズ
ルへの付着・凝集が起こらない程度に低くなるので、ノ
ズル閉塞を防止する上できわめて有効である。本発明
は、Ti含有鋼中の介在物組成を上記の範囲に制御する
手段を提供するものである。
【0047】まず、Al無添加の場合は、未脱酸溶鋼に
所定量のTi又はTi合金を添加した後、溶鋼中のトー
タルCa濃度(以下、T[Ca]と記す)が5〜20pp
mになるようにCa又はCa合金を添加する。これによ
り、溶鋼中の介在物は、CaOを約3〜30%含有する
Ti酸化物となって低融点化する。
【0048】本発明者らの検討結果によれば、T[Ca]
が5ppm未満では、介在物のCaO/TiO2の比が
小さくなりすぎ、また20ppmを越えるとこの比が大
きくなりすぎるため、いずれも介在物の融点は高くな
る。実際に、後記実施例の図1に示すように、T[Ca]
が5〜20ppmの範囲でのみ、ノズル閉塞を防止しう
ることが確められた。
【0049】介在物の低融点化という目的のみからは、
脱酸剤としてAlを併用することは必ずしも必要ではな
い。しかし、未脱酸の溶鋼に直接Ti又はTi合金を添
加すると、Ti添加歩留が低下しかつTiの適中率が低
くなるため、少量のAlにより先行脱酸を行うことが好
ましい。
【0050】Alによる先行脱酸を行う場合には、先行
脱酸後の溶鋼中のトータルAl濃度(以下、T[Al]と
記す)を10〜80ppmとした後Ti又はTi合金を
添加し、さらにその後T[Ca]が5〜20ppmになる
ようにCa又はCa合金を添加する。これにより、溶鋼
中の介在物が図6の太線で囲んだ領域Iの組成のCaO
及びAl23を含有するTi酸化物になり、CaOのみ
含むTi酸化物よりも、さらに確実に低融点化できるよ
うになる。
【0051】先行脱酸後(Ti添加前)のT[Al]の上
限を80ppmとする理由は、後記実施例の図3及び図
4に示すように、これを越えると介在物のAl23濃度
が40%を超えて高融点化し、ノズル閉塞を起こし易く
なるためである。
【0052】また、T[Al]の下限を10ppmとする
理由は、これ未満では、先行脱酸を行ってTi歩留を安
定させる上で不十分なためである。なお、Alによる先
行脱酸を行う場合も、上記と同じ理由により、T[Ca]
が5〜20ppmになるようにCa又はCa合金を添加
する必要がある。
【0053】さらに、本発明者らは、上記の少量のAl
で先行脱酸する場合において、先行脱酸後のT[Al]を
80ppm以下に制御する方法についても知見を得た。
すなわち、未脱酸溶鋼のフリー酸素濃度C(O)を測定
し、先行脱酸におけるAl添加量を前記(2)式の範囲内
に調節する。後記実施例の図5に示すように、本式に従
ってAl添加量を調節すれば、T[Al]を80ppm以
下にすることができる。
【0054】本発明のTi含有鋼におけるCa添加は、
従来のAl脱酸鋼におけるCa添加よりも、その添加量
が少くかつ低融点化の効果が確実なことが特徴である。
【0055】すなわち、CaO−Al232元系介在物
を低融点化するには、介在物中のCaO濃度を40〜6
0%にする必要がある(図6参照)。またAl23系介
在物量に比例してCaを多量に添加する必要があって、
鋼中の溶鋼中のT[Ca]が20ppmより高くなり、耐
火物の溶損が大きくなって操業上好ましくない。
【0056】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく
説明する。RH真空脱炭−RH脱酸−連続鋳造の工程
で、本発明の薄板用鋼を製造するに際して本発明の脱酸
方法を実施した。溶鋼量は300tonで、連続鋳造の
鋳型サイズは240×1500mmである。
【0057】(実施例1)RH脱炭後の未脱酸溶鋼をR
H真空槽内で脱酸する際に、Al無添加でTiを添加
し、次にCa−Si合金を添加した。その際Ca−Si
合金の添加量を幅広く変えて、Ca添加量と溶鋼中のT
[Ca]との関係、及びT[Ca]と連続鋳造の浸漬ノズル
の閉塞状況との関係を調査した。供試溶鋼の組成は、
C:0.0015〜0.003%、Si:0.02%以
下、Mn:0.08〜0.15%、P:0.008〜
0.012%、S:0.002〜0.005%、Ti:
0.02〜0.08%であった。
【0058】図2に、Ca添加量(Ca−Si合金中の
Ca量)とT[Ca]の関係を調査した結果の例を示す。
T[Ca]は化学分析により求めた。図2に見られるよう
に、Ca添加量とT[Ca]の関係は、ややバラツキはあ
るが、ほぼ一定の対応関係がある。したがって、Ca添
加量を調節することにより、溶鋼中のCa濃度をおおよ
そ制御しうることが分かる。
【0059】なおこの対応関係は、Ca添加前の溶鋼中
のフリー酸素濃度や、取鍋内の溶鋼の表面にあるスラグ
中の酸化鉄濃度等により相違するが、それぞれの製造条
件について、Ca添加量とT[Ca]との対応関係を予め
調査しておくことにより、T[Ca]を5〜20ppmの
範囲内に調節することができる。
【0060】図1に、T[Ca]と浸漬ノズルの閉塞状況
との関係を調査した結果の例を示す。浸漬ノズルの閉塞
状況は、約6時間連続鋳造を行った後の溶鋼の流出状況
から判断したものである。
【0061】図に見られるように、T[Ca]が5ppm
未満では、ノズル閉塞が発生するか又はノズルが閉塞気
味になる。溶鋼中のCa濃度が5〜20ppmの範囲で
あれば、ノズル閉塞は全く発生しない。一方、Ca濃度
が20ppmを超える場合にもノズル閉塞が発生するか
閉塞気味となることが確かめられた。なお、上記の実施
例ではRH真空槽内でCa−Si合金を添加したが、C
aの添加方法はこの例に限られない。
【0062】(実施例2)RH脱炭後の未脱酸溶鋼をR
H真空槽内で脱酸する際に、まず少量のAlにより先行
脱酸を行った後Tiを添加し、次にT[Ca]が5〜20
ppmの範囲に入るようにCa−Si合金を添加した。
また比較例として、Al及びTiの添加条件を同じに
し、Ca無添加の場合についても調査した。
【0063】上記の実施例及び比較例において、Al添
加量を種々に変えて、Al添加量と溶鋼中のトータルA
l濃度(T[Al])との関係、及びT[Al]と連続鋳造
の浸漬ノズルの閉塞状況との関係を調査した。供試溶鋼
の組成は、Alを除いて実施例1の組成とほぼ同じであ
る。
【0064】図3に、先行脱酸後のT[Al]と介在物組
成との関係を調査した結果の例を示す。ここで、T[A
l]は化学分析により、介在物の組成はEPMAの定量
分析により求めた。
【0065】図3に見られるように、Ca添加(本発明
例)及び無添加(比較例)での介在物の組成は、先行脱酸
後のT[Al]によって大幅に変化するが、T[Al]が1
0ppm未満の場合は、介在物はほとんどAl23を含
有しないことが分かる。
【0066】一方、T[Al]を10〜80ppmにして
Caを添加した本発明例では、介在物中のAl23濃度
は5〜30%になっている。また、T[Al]が80pp
mを越える場合は、介在物中のAl23濃度はCa添加
で40%以上、Ca無添加で60%以上になっている。
【0067】EPMAによる組成分析の結果から、T
[Al]を10〜80ppmにした後Tiを添加し、さら
にその後T[Ca]が5〜20ppmになるようにCaを
添加した時の介在物は、5〜30%のAl23と10〜
20%のCaOを含有するTi酸化物になっていること
が確かめられた。
【0068】図4に、先行脱酸後のT[Al]と浸漬ノズ
ルの閉塞状況との関係を調査した結果の例を示す。図に
見られるように、T[Al]が80ppm以下でCa添加
した場合には、確実にノズル閉塞を防止しうることが分
かる。なお、ノズル閉塞の有無は、実施例1と同じく約
6時間連続鋳造した後に判定した。
【0069】また実施例2において、未脱酸溶鋼のフリ
ー酸素濃度を測定し、先行脱酸におけるAl添加量を変
えて、T[Al]を80ppm以下にするための限界条件
を調査した。図5に調査結果を示す。この結果から、先
行脱酸におけるAl添加量を、未脱酸溶鋼のフリー酸素
濃度に対応して前記(2)式の範囲内とすることにより、
T[Al]を80ppm以下にしうることが分かる。
【0070】上記の実施例は、溶鋼組成がC0.003
%以下、Tiが0.02〜0.08%の場合であるが、
C:0.1%以下の低炭素材でTi濃度が0.01〜
0.4%の範囲内では、上記と同じように、本発明の脱
酸方法により低融点の介在物を生成させて、連続鋳造に
おける注湯ノズルの閉塞を防止しうると考えられる。 (実施例3)実施例2に示した方法で脱酸した溶鋼から
スラブを連続鋳造し、これを表1に示すように抽出温度
1099〜1205℃で抽出後、仕上温度883〜91
3℃、巻取温度650〜749℃とした熱間圧延を行な
った後、酸洗し、冷延率75〜86%の冷間圧延を行
い、連続焼鈍ラインにおいて750〜867℃で再結晶
焼鈍後0.5〜0.8%の調質圧延を行って、板厚0.
8〜1.0mmの冷延板を製造した。
【0071】表1の本発明例、比較例ともに、供試スラ
ブの組成は、C,Si,Mn,P,S,Tiについては
上記実施例1の場合とほぼ同じであった。また、本発明
例(No.1〜8)ではT[Al]30〜80ppm、T
[Ca]5〜20ppmで、比較例(No.9〜16)で
はT[Al]100〜250ppm、T[Ca]10〜40
ppmであった。
【0072】このようにして製造した鋳片および鋼板
(冷延板)からサンプルを切り出して円相当径10μm
φ以上の介在物の組成を分析するとともに、冷延板の線
状疵発生率を調査した。また、実施例1および2と同様
に連続鋳造時のノズル閉塞の有無を判定した。
【0073】鋳片の介在物組成は、顕微鏡によって鋳片
1/2幅部(幅中央)の上面側1/4厚部の2cm2
上を観察し、断面積を円に換算して直径が10μm以上
である介在物の組成をSEM−EDXおよびEPMAに
より測定し、30個の組成を求めた。鋼板の介在物組成
は、板1/2幅部の上面側表層1/4厚部を顕微鏡観察
し、円換算径が10μm以上である介在物を10個選択
し、その組成をSEM−EDXおよびEPMAによりに
より求めた。いずれの場合も、地鉄の影響を除くため、
測定値はFe成分を除いて100%換算を行った。ま
た、酸化物であることはEPMAで確認した。鋳片はス
ラブ単位で、鋼板はコイル毎の代表値である。
【0074】また、線状疵については、製品検査ライン
にて目視で介在物起因のものを判定し評価した。冷延板
の製造条件および上記の各調査結果を表1に示す。
【0075】鋼成分が本発明の範囲内であるNo.1〜
8では、円相当径10μmφ以上の介在物のうち、その
組成がCaO、Al23、TiO2の3成分について前
記(1a)〜(1c)式の範囲内(図6の斜線の範囲内、表
1で領域Iという)にあるものの比率が70%を越えて
いた。そのためノズルの閉塞がなく、介在物起因の線状
疵発生率も0であった。
【0076】一方、T[Al]、T[Ca]が本発明の範囲
外であった比較例(No.9〜16)では、領域Iの範
囲内の介在物の個数割合が70%以下であり、そのため
ノズルが閉塞気味で、介在物起因の線状疵発生率も1〜
5%と高かった。
【0077】
【表1】
【0078】
【発明の効果】以上述べてきたように、本発明によれ
ば、成形性がよくかつ製品表面欠陥の発生が著しく少な
い良加工性薄板材を提供することができる。本発明鋼
は、冷延鋼板として使用できるのは勿論のこと、本薄板
材の成分はメッキ性を特に阻害するものでないため、焼
鈍後に電気亜鉛めっきや合金化亜鉛めっき鋼板として、
またさらに、有機被覆鋼板の原板として用いることもで
きる。また、連続焼鈍条件が満たされる限り連続焼鈍溶
融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき用鋼板としても使
用可能である。従って、家庭電気製品や自動車等の広い
用途に適用できるため、産業上に与える効果は極めて大
きい。
【0079】また、本発明の脱酸方法により、Ti含有
溶鋼中の介在物を、低融点のCaOを含有するTi酸化
物又は低融点のCaO及びAl23を含有するTi酸化
物にして、連続鋳造における注湯ノズルの閉塞を防止
し、これにより薄板材の表面欠陥を顕著に低減すること
が可能になった。本発明の方法においては、従来のAl
キルド鋼におけるCa添加よりも、少ないCa添加量で
介在物を低融点化することができ、かつ生成する介在物
の融点が低いため、より確実に注湯ノズルの閉塞を防止
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例におけるトータルCa濃度と浸漬ノズ
ルの閉塞状況との関係を示す図である。
【図2】本実施例におけるCa添加量とトータルCa濃
度との関係を示す図である。
【図3】本実施例における先行脱酸後のトータルAl濃
度と介在物組成との関係を示す図である。
【図4】本実施例における先行脱酸後のトータルAl濃
度と浸漬ノズルの閉塞状況との関係を示す図である。
【図5】先行脱酸後のトータルAl濃度を80ppm以
下にするための、未脱酸溶鋼のフリー酸素濃度とAl添
加量との関係を調査した結果の例を示す図である。
【図6】CaO−Al23−TiO2三元系状態図の例
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C21C 7/04 C21C 7/04 B 7/06 7/06 C22C 38/14 C22C 38/14 (72)発明者 中島 潤二 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 (72)発明者 内村 光雄 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 (72)発明者 村里 映信 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 (72)発明者 佐久間 康治 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でC:0.0001〜0.003
    0%、Si:0.03%以下、Mn:0.05〜0.3
    0%、P:0.015%以下、S:0.001〜0.0
    15%、Al:0.008%以下、Ti:0.02〜
    0.08%、Ca:0.0005〜0.0020%、
    N:0.0005〜0.01%を含み、残部Feおよび
    不可避的不純物元素からなる加工性の優れた薄板用鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の鋼にさらにNb:0.0
    01〜0.02重量%、B:0.0001〜0.001
    0重量%のいずれか一方又は双方を含む加工性の優れた
    薄板用鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の加工性の優れた薄
    板用鋼において、鋼中円相当径10μmφ以上の非金属
    介在物の70%以上が、CaO、Al23、TiO2
    3成分について、下式の範囲内の組成を有することを特
    徴とする加工性の優れた薄板用鋼。 0.03≦CaO/(CaO+Al23+TiO2)≦
    0.30 0 ≦Al23/(CaO+Al23+TiO2)≦
    0.40 0.40≦ TiO2/(CaO+Al23+TiO2
    ≦0.90 ここで、CaO、Al23、TiO2:非金属介在物中
    のCaO、Al23、TiO2の含有量(重量%)
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の薄板
    用鋼の連続鋳造に供する溶鋼を脱酸するに際して、未脱
    酸溶鋼に所定量のTi又はTi合金を添加した後、該溶
    鋼中のトータルCa濃度が5〜20ppmになるように
    Ca又はCa合金を添加して、該溶鋼中の非金属介在物
    をCaOを含有するTi酸化物にすることを特徴とする
    加工性の優れた薄板用鋼の脱酸方法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至3のいずれかに記載の薄板
    用鋼の連続鋳造に供する溶鋼を脱酸するに際して、Al
    による先行脱酸を行って該溶鋼中のトータルAl濃度を
    10〜80ppmとした後所定量のTi又はTi合金を
    添加し、さらにその後該溶鋼中のトータルCa濃度が5
    〜20ppmになるようにCa又はCa合金を添加し
    て、該溶鋼中の非金属介在物をCaOおよびAl23
    含有するTi酸化物にすることを特徴とする加工性の優
    れた薄板用鋼の脱酸方法。
  6. 【請求項6】 未脱酸溶鋼のフリー酸素濃度を測定し、
    前記先行脱酸におけるAl添加量を下式の範囲にするこ
    とを特徴とする請求項5記載の加工性の優れた薄板用鋼
    の脱酸方法。 WAl < 162.5+0.375C(O) ここで、WAl:溶鋼トン当りのAl添加量(g/t) C(O):未脱酸溶鋼のフリー酸素濃度(ppm)
  7. 【請求項7】 請求項4乃至6のいずれかに記載の加工
    性の優れた薄板用鋼の脱酸方法において、鋼中円相当径
    10μmφ以上の非金属介在物の70%以上がCaO、
    Al23、TiO2の3成分について、請求項3記載の
    組成を有することを特徴とする加工性の優れた薄板用鋼
    の脱酸方法。
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JP2008240137A (ja) * 2007-03-29 2008-10-09 Jfe Steel Kk 含Ti極低炭素鋼の溶製方法及び含Ti極低炭素鋼鋳片の製造方法
JP2017088934A (ja) * 2015-11-05 2017-05-25 新日鐵住金株式会社 Zr含有鍛造用鋼材

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