JPH11295480A - 触媒表面の形成方法 - Google Patents

触媒表面の形成方法

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JPH11295480A
JPH11295480A JP10100825A JP10082598A JPH11295480A JP H11295480 A JPH11295480 A JP H11295480A JP 10100825 A JP10100825 A JP 10100825A JP 10082598 A JP10082598 A JP 10082598A JP H11295480 A JPH11295480 A JP H11295480A
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catalyst
reactor
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reactor structural
attached
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JP10100825A
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English (en)
Inventor
Yoichi Wada
陽一 和田
Naoto Uetake
直人 植竹
Masahiko Tachibana
正彦 橘
Kazuhiko Akamine
和彦 赤嶺
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】燃料5や炉心上部への施工を避けるなど、施工
個所を限定することが可能で、かつ施工部位の触媒付着
量を直接その場で測定しながら触媒の注入量を制御する
ことが可能な応力腐食割れ防止方法を提供すること。 【解決手段】原子炉冷却水の温度が大気圧下で沸騰を生
じない温度で、触媒の表面密度が0.5μg/cm2以上と
なるように付着させることにある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温水中に暴露さ
れるステンレスあるいはニッケル基合金等の金属材料の
応力腐食割れを防止する方法に関わり、特に原子炉冷却
水に曝される構造材料および配管の応力腐食割れによる
損傷防止に好適な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】原子炉において応力腐食割れの防止は、
安全性確保の観点から最重要であることはいうまでもな
く、近年では設備利用率の向上と経年化炉の長寿命化に
よるコスト削減という経済的メリットの追求の面からも
重要である。
【0003】そのため、原子炉構造材料が曝されている
冷却水の腐食環境を改善することによる応力腐食割れ対
策として、例えば沸騰水型原子炉では、特開昭57−3086
号公報に示されているように、給水から水素を注入する
水素注入法が米国,スウエーデン、および日本で広く行
われている。
【0004】水素注入法は、アクセスが難しく機器の取
り替えが困難な部位への応力腐食割れ対策として有効で
ある。しかし、沸騰水型原子炉のように炉心で発生した
蒸気で蒸気タービンを回転させる直接サイクル型の原子
炉では、炉水への水素注入量がある程度多くなると、炉
心で水分子中の酸素原子の核反応により生成し、炉水に
溶けていた放射性窒素16が水素により還元され、蒸気
中へ移行し易くなるために、主蒸気系統およびタービン
建屋内線量率の増加が生じる。
【0005】そのため、水素注入効率を向上する水素注
入法の組み合わせ技術として、例えば特開平4−223299
号公報に示される技術がある。これは、原子炉発熱状態
で炉水に貴金属元素を含有する化合物を注入し、金属表
面で分解・付着させるものである。これにより白金族元
素の電気化学的特性を構造材料に付与し、水素注入時の
腐食電位の低下効率を向上させるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、原子炉運転時
に炉水に化合物を注入することによって、炉水が接して
いる構造材料表面に化合物に含有されている特定の元素
を付着させる場合、次のような問題点が生じる。
【0007】原子炉炉心の出力状態では、温度,圧力お
よび放射線のために原子炉を開放することができない。
したがって、第一に、施工中に時々刻々の原子炉内構造
材料表面への付着量を直接測定しながら化合物の注入量
を制御することはできない。
【0008】第二に、原子炉内における炉水への接水表
面積のおよそ半分を占める燃料5バンドルへの付着が生
じ、施工効率が低下する。
【0009】第三に、原子炉出力状態において蒸気と炉
水が2相流を形成する炉心上部にも化合物が供給され付
着する。2相流下では炉水中の水素濃度が蒸気へ放出さ
れるために、水素注入条件においても腐食電位の低下が
期待できないので、施工効率が低下する。
【0010】そこで本発明の目的は、燃料5や炉心上部
への施工を避けるなど、施工個所を限定することが可能
で、かつ施工部位の触媒付着量を直接その場で測定しな
がら触媒の注入量を制御することが可能な応力腐食割れ
防止方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、原子炉構造材料の応力腐食割れ防
止を目的とする方法であって、前記原子炉構造材料の表
面に、前記原子炉構造材料の電気化学的作用を促進して
腐食電位を低下させる作用を持つ触媒元素を、原子炉冷
却水を輸送媒体として一個所以上の注入点から前記原子
炉構造材によって構成される原子炉冷却系に供給するこ
とによって、前記原子炉冷却水の温度が大気圧下で沸騰
を生じない温度で、前記触媒の表面密度が0.5μg/c
m2以上となるように付着させることを特徴とする方法が
提供される。
【0012】原子炉構造材料、たとえばSUS304ス
テンレス鋼表面では、
【0013】
【化1】 O2 + 2H+ + 2e- =H22 …(化1)
【0014】
【化2】 H22 + 2H+ + 2e- =2H2O …(化2)
【0015】
【化3】 H2 = 2H+ + 2e- …(化3)
【0016】
【化4】 M=Mn+ + ne- (Mは構造材料) …(化4) の反応が生じている。腐食電位は、これらの反応によっ
て生じる炉水−材料界面での電荷の移動が見かけ上ゼロ
となる電位として決まる。
【0017】ここで、炉水中に白金族元素などの触媒が
存在すれば、
【0018】
【化5】 O2 + 4H+ + 4e- = 2H2O …(化5)
【0019】
【化6】 H22 + 2H+ + 2e- = 2H2O …(化6)
【0020】
【化7】 H2 = 2H+ + 2e- …(化7) の反応が触媒表面上で進む。(化6),(化7)は(化
2),(化3)と同じ反応であるが、電気化学反応速度
が異なる。
【0021】本発明により、構造材料に付着した触媒上
での(化5)〜(化7)の電気化学反応に伴って生起する
電荷量が、(化1)〜(化4)で生起する電荷量より十分
に過剰な条件が満たされれば、腐食電位は触媒の電気化
学特性((化5)〜(化7))によって決定される。このよう
な条件は、触媒が十分な面積で構造材料を被覆するか、
触媒上での電気化学反応が構造材料上での反応量よりも
はるかに大きければ、小さな被覆率でも達成可能であ
る。
【0022】炉水中に酸素および過酸化水素の酸化性成
分より、還元性成分である水素の濃度が高い水素注入環
境では、触媒付着構造材表面でのアノード反応電流密度
は大部分が(化7)による水素の還元反応電流密度であ
り、これに少量の(化5),(化6)による酸素および
過酸化水素のカソード反応電流密度が生じる。このと
き、炉水中の酸素・過酸化水素濃度が水素濃度に対して
原子炉構造材料表面で酸素原子と水素原子のモル比が水
を形成する比率(水素原子:酸素原子=2:1)に近づ
くと、酸素・過酸化水素のカソード電流密度は、水素の
交換電流密度より小さくなるため、腐食電位は水素の平
衡電位とほぼ等しくなる。したがって、上記のモル比の
条件さえ整えば、原子炉構造材の腐食電位は触媒処理を
しないときの+0〜+200mV(標準水素電極基準)
から水素の平衡電位である−500mV(標準水素電極
基準)に近づくように低下する。
【0023】図2はステンレス316L鋼にPdを合金
化して触媒の電気化学的作用を調べたものであり、触媒
が表面に十分に存在していれば、水素濃度の増加に伴っ
て、触媒の存在しない場合よりも腐食電位が大きく低下
することが確認されている。構造材料への被覆厚さは、
少なくとも0.5μg/cm2以上である。貴金属元素類の
原子半径は1×10-8cm程度であるので原子一個を平面
上に乗せた場合に被覆できる面積は約3×10-16cm2
ある。最稠密にならべたときの被覆率は0.54であるか
ら、1cm2の構造材料表面に被せられる原子数は3×1
-9molとなる。従って、Pdの場合には原子量が10
6であるので0.3μg となる。Ptの場合には、19
5であるので0.5μgとなる。被覆率が0.54であれ
ば、構造材料と触媒の面積比がほぼ等しいので、電気化
学反応の進行に伴う電子の授受量は、電気化学反応の進
みやすさに比例するとみなせる。ここで触媒の電気化学
的特性は、構造材料よりも腐食電位を低下させやすいの
であるから、原子1層を表面上に稠密に並べれば腐食電
位を低下させる効果の最低が期待できる。
【0024】この付着密度の大きさは腐食電位の測定実
験からも確認される。
【0025】原子炉構造材料に触媒を付着させる方法を
最適化するために、発明者は、触媒元素の付着量と温度
の関係を実験により調べた。この実験結果が本発明の骨
格をなす部分である。実験は一定の表面積を持つステン
レス304鋼材の平板試験片17を、様々な温度で触媒
金属を含む水溶液に浸漬し、表面に付着した触媒金属の
重量を測定して行われた。ここでは、触媒は硝酸パラジ
ウムを用いた。硝酸パラジウム濃度は500ppb 、浸漬
時間は8時間であった。試験結果を温度に対して、縦軸
に付着量を単位面積,単位処理時間および浸した化合物
溶液の単位濃度当たりの量に規格化した付着速度として
図3に示す。
【0026】触媒元素は原子炉定格出力状態での炉水温
度である摂氏280℃付近よりも低温の摂氏150℃の
温度付近で最も付着が効果的に進行し、さらに室温付近
でも150℃のピーク値と1桁程度しか異ならない付着
速度を持つことが分かった。室温付近でも、280℃で
の付着処理よりも大きな付着速度が期待できることを見
出した。この時行われた、走査型顕微鏡での表面観察と
皮膜分析では、低温側では材料表面で触媒金属が斑点状
に分布しているのに対し、高温では表面の酸化皮膜の成
長とともに表面に取り込まれるため、明瞭に分布が確認
されなかった。発明者の実験から、低温で触媒付着処理
をした方が簡単に構造材料表面の極表層に集中して触媒
を付着させることが可能なことが明らかとなった。
【0027】したがって、定期検査時などの原子炉停止
時に圧力容器を開放した状態で触媒を付着させれば、触
媒の付着量を直接その場で測定しながら処理が可能とな
る。しかも、触媒の付着温度が低ければ施工装置に耐熱
性を持たせるなどの特殊性の必要もなくなる。
【0028】ここで、原子炉構造材料表面に付着した場
合、水素注入時に原子炉構造材料と冷却水との界面に形
成される腐食電位を低下させる触媒元素として、Pt,
Pd,Rh,Au,Agからなる一群の貴金属元素が挙
げられる。
【0029】これらのは、Pd(NO3)2,Na2[Pd
(OH)4],K2[Pd(NO2)4],[Pd(NH3)4]C
3,[Pd(NH3)4](NO3)2,[Pd(NH3)4](CH3COO)
2,Pd(NO2)2(NH3)2,Na2[Pt(OH)6],K2
[Pt(OH)6],H2[Pt(OH)6],K2[Pt(N
2)4],[Pt(NH3)4](NO3)2,[Pt(N
3)4](OH)2,[Pt(NH3)4]CO3,[Pt(NH3)4]
(CH3COO)2,Rh(NO3)3,Na3[Rh(NO2)6],K
3[Rh(NO2)6],Rh(CH3COO)3,Rh2(CH3
COO)4,[Rh(NH3)5(H2O)](NO3)3等の貴金
属化合物、または金属または金属酸化物のコロイドとし
て炉水に注入される。
【0030】これらの触媒を原子炉冷却水を輸送媒体と
して一個所以上の注入点から前記原子炉構造材によって
構成される原子炉冷却系に供給するときに、触媒元素を
含有する化合物を単体または組み合わせとして、室温で
のpHが6〜8の間に、かつ導電率が1μS/cm以下に
なるように選ぶ。これは、原子炉の運転管理基準を逸脱
しない様にするためである。pHを上昇させないように
するには、触媒を含有する化合物が本来中性であるもの
を使用すれば良い。
【0031】しかし、化合物によっては中性のものが存
在しない場合もある。その場合には、付着させようとす
る触媒元素を含有する化合物の水溶液がアルカリ性の塩
では、同じ触媒元素または別の触媒元素を含む酸または
酸性の塩を混合してpHを調整する。同様に、付着させ
ようとする触媒元素を含有する化合物の水溶液が酸性の
塩では、同じ触媒元素または別の触媒元素を含むアルカ
リまたはアルカリ性の塩を混合してpHを調整すればよ
い。
【0032】導電率を上昇させないようにするには注入
化合物の水溶液の導電率が1μS/cmを超えない様に炉
水導電率を測定しながら注入量を制御する。
【0033】原子炉冷却水の温度が大気圧下で沸騰を生
じない温度で、原子炉構造材料表面へ触媒を付着させる
ことにより、触媒を付着させる領域を制御することが可
能となる。原子炉圧力容器3上蓋を開放することが可能
となるため、圧力容器3内の炉水水位10を制御するこ
とで、触媒付着領域を制御する事ができる。炉水水位1
0を下部プレナム内のみが浸るように設定すれば触媒を
含んだ炉水は下部プレナム内の構造材料にのみ接触する
ことになる。水位を上部プレナムより下に設定すれば、
蒸気−炉水が2相流となり注入した水素が蒸気中に逃げ
てしまうために触媒処理の有効性も期待できない、上部
プレナム以上の領域への付着を抑制できる。また、燃料
5集合体を炉心から取り除くことができるため、燃料5
を取り除いた後に触媒を付着させれば、触媒の付着効率
が向上し処理時間を短縮できる。さらに、大気開放で施
工することにより、直接付着量をモニタすることができ
る。炉水のサンプリングは原子炉運転時でも可能である
が、サンプリング配管内面に触媒が付着してしまうため
に正確な炉水中濃度が測定できない可能性がある。その
ような問題は、長いサンプリング配管を経由して炉水中
の微量金属濃度を測定する場合にしばしば現実に見られ
ている事象である。そこで、圧力容器3上蓋を開放した
状態でサンプリング容器を炉内に降して炉水を直接採取
すれば、正確な濃度を測定できる。また、炉内の施工部
に近い個所に、付着量を測定するために試験片17を設
置し、1時間おき等、一定時間毎に炉内から取りだして
付着量を測定すれば、正確な触媒付着が可能である。
【0034】もちろん、炉内に直接付着量を測定するセ
ンサを設置してもよい。例えば、水晶振動子の振動数の
変化を利用してセンサ表面への触媒の付着重量を測定す
ることが考えられる。このようなセンサでは、原子炉構
造材の付着効果そのものを測って居るわけではない。そ
こで、直接的に効果を測定する方法として、腐食電位セ
ンサ14を炉内に直接降し、施工対象部位の電位を直接
測定する。センサのまわりに水素を高濃度溶存させた水
を吹きかければ、構造材量にもし触媒が適当量付着して
いれば、腐食電位は水素の平衡電位付近まで低下するこ
とが確認され付着処理が適切に行われたかが確認され
る。
【0035】
【発明の実施の形態】本発明を圧力容器3内の原子炉構
造材への触媒付着に適用した実施例を図1により説明す
る。本実施例では始めに、圧力容器3を定期検査時に開
放した後、圧力容器3内にある触媒を付着させたい構造
物の領域に応じて炉水水位10を制御する。燃料5が入
っている間は放射線の遮蔽の目的から炉水水位10は低
下できないので、十分に高い炉水水位10とし、圧力容
器3内の大部分の構造物に触媒を付着させることにな
る。圧力容器3の外部の作業スペースに設置された触媒
注入装置1から、触媒元素を含む化合物を圧力容器3内
の炉水に注入ライン2を通して直接注入することによ
り、圧力容器3,シュラウド4,シュラウドサポート
6,圧力容器底部7,炉心支持板8、および上部格子板
8の全面に触媒を付着させる。
【0036】本発明の実施手順を示したものが図4の流
れ図であって、通常、タービン22を解列し、原子炉2
0を停止した後、格納容器を開放し、圧力容器3を開放
する。この時点で、触媒注入装置1を設置,作動させ炉
水に触媒化合物を注入する。適正量の触媒が付着するま
で処理を継続する。触媒付着終了後、再び圧力容器3お
よび格納容器を復旧し、原子炉20を起動する。タービ
ン22を併入して定常運転状態となる。
【0037】一方、触媒の付着を圧力容器3内の特定の
領域に限定したい場合や、燃料5に付着させたくない場
合がある。そのような場合は、図5に示す手順で実施す
る。すなわち、タービン22を解列し、原子炉20を停
止した後、格納容器を開放し、圧力容器3を開放する。
この時点で、一旦燃料5の取り出しを行い、それに続い
て触媒注入装置1を設置,作動させ炉水に触媒化合物を
注入する。適正量の触媒が付着するまで処理を継続す
る。触媒付着終了後、燃料5を再び装荷してから、圧力
容器3および格納容器を復旧し、原子炉20を起動す
る。タービン22を併入して定常運転状態となる。
【0038】したがって、燃料5を取り出した場合の本
発明の実施例は図6のようになる。圧力容器3を開放し
た後、燃料5を圧力容器3外に取り出す。続いて圧力容
器3内の触媒を付着させたい構造物の領域に応じて炉水
水位10を制御する。燃料5がないので炉水水位10は
かなり下げることができる。ここでは図1の実施例のよ
うに十分に高い炉水水位10とし、圧力容器3内の大部
分の構造物に触媒を付着させることにする。圧力容器3
の外部の作業スペースに設置された触媒注入装置1か
ら、触媒元素を含む化合物を圧力容器3内の炉水に注入
ライン2を通して直接注入することにより、圧力容器
3,シュラウド4,シュラウドサポート6,圧力容器底
部7,炉心支持板8、および上部格子板8の全面に触媒
を付着させる。
【0039】図7は炉水水位10を炉心支持板8のレベ
ルまで下げた場合で、シュラウドサポート6や圧力容器
底部7などの圧力容器3の下部にある構造物に対しての
み触媒を付着させるケースである。
【0040】同様に図8は上部格子板8までのレベルに
炉水水位10を制御して、触媒を付着させる実施例であ
る。このレベルの炉水水位10ではシュラウド4の上部
には付着させないことになる。シュラウド4の上部で
は、沸騰のために蒸気と炉水が2相を形成するので水素
注入した水素が蒸気へ逃げてしまい、付着した触媒の効
果が期待できない。したがって、このように付着部位を
制限すれば、触媒のロスが小さい。圧力容器3およびシ
ュラウド4の上部格子板8以下の部位,シュラウドサポ
ート6,圧力容器底部7,炉心支持板8、および上部格
子板8の全面に触媒を付着させる事ができる。
【0041】触媒注入装置1の1実施例を図9に示す。
触媒を炉水に添加するために用いられる触媒注入装置1
は所定の濃度に調製した触媒化合物を保温して貯えてお
く薬液タンク38と薬液タンク38内の薬液をバブリン
グして脱気するための、脱気ガスボンベ34と脱気ライ
ン35、脱気ガスが溜まらないように排気する排気口3
6と薬液タンク38内の圧力が上昇しすぎたときの安全
装置としての安全弁37および炉水に注入するための注
入ポンプ33から構成される。
【0042】触媒の付着には付着量をモニタすることが
適切な付着量制御に不可欠である。図10は施工時にオ
ンラインで付着量をモニタする方法である。シュラウド
4などの触媒を付着させたい圧力容器3内の部位に腐食
電位測定ユニット12を降ろして、触媒付着面の腐食電
位を測定し、あらかじめ実験室で得た触媒付着量と腐食
電位の低下量とから付着量を決定する。腐食電位測定ユ
ニット12は圧力容器3外に置かれた腐食電位測定装置
11と腐食電位測定連絡管13で接続されている。腐食
電位測定装置11は腐食電位測定ユニット12に電力を
供給し、また腐食電位測定ユニット12からの信号を増
幅,演算し出力するものである。腐食電位測定連絡管1
3内は信号線と電源ケーブル、および水素溶存水を供給
する配管が通っている。
【0043】図11に腐食電位測定ユニット12の実施
例を示すように、腐食電位測定ユニット12を測定部に
押し付け弾性のあるパッキング39でユニットと測定部
に閉鎖空間を作る。腐食電位測定ユニット内には水素溶
存水供給ノズル15から水素を高濃度含んだ水が供給さ
れ満たされる。この水素を含んだ水は排水口16からド
レンされる。この状態で腐食電位センサ14によって腐
食電位が測定される。触媒の付着には付着量をモニタす
ることが適切な付着量制御に不可欠である。同様に図1
2は施工時に付着量を測定する方法である。シュラウド
4などの触媒を付着させたい圧力容器3内の部位と同じ
材質でできた試験片17を複数のクレーン17で吊り込
んで、所定の時間後とに取り出して、表面の触媒濃度を
分析するものである。
【0044】図13に試験片17の実施例を示す。クレ
ーン17で吊り込めるようにリングが上部についてい
る。形状は棒でも板でも良く、また一つの試験片17の
一部を切り取って分析し、再び炉内に戻してもよい。
【0045】図14は施工時にオンラインで付着量を付
着量センサ19を用いてモニタする方法である。シュラ
ウド4などの触媒を付着させたい圧力容器3内の部位に
付着量センサ19を降ろして、触媒付着面の付着量を測
定する。付着量センサ19は、例えば水晶振動子微小質
量検出器でもよい。これは、水晶振動子はある電圧のも
とでは通常一定の固有振動数で振動するが、水晶の面に
物質が付着することにより固有振動数が変化することを
利用している。通常ng程度の検出感度があるのでμグ
ラム毎平方cmの付着量を測定する感度は十分にある。
【0046】本発明において触媒注入装置1を炉水浄化
系27に設置した場合の実施例を図15により説明す
る。炉水へ触媒供給は炉水浄化系27から触媒入装置を
用いて給水系26に入るように注入する。原子炉20一
次冷却系全体図に示すように主蒸気系21,タービン2
2,復水器23,復水浄化系24,給水ポンプ25,給
水系26,ジェットポンプ、再循環系配管、再循環ポン
プ29からなる。定期検査時には主蒸気系21,タービ
ン22,復水器23,復水浄化系24,給水ポンプ2
5,給水系26,ジェットポンプは機能していない。触
媒付着時には炉水浄化系ポンプ28を動かして炉水浄化
系27を機能させておくことが必要である。本発明にお
いて触媒注入装置1を残留熱除去系に設置した場合の実
施例を図16により説明する。炉水へ触媒供給は残留熱
除去系から触媒入装置を用いて再循環配管に入るように
注入する。定期検査時には主蒸気系21,タービン2
2,復水器23,復水浄化系24,給水ポンプ25,給
水系26,ジェットポンプは機能していない。触媒付着
時には再循環ポンプ29と残留熱除去系32を作動して
おくことが必要である。
【0047】本発明を原子炉20一次冷却系に適用し、
水素注入と組み合わせた場合の実施例を図17により説
明する。本実施例では、腐食電位低下効果を向上する触
媒の原子炉構造材表面への付着は、例えば図1で示した
実施例で定期検査時に施工されており、応力腐食割れに
対して守りたい圧力容器3内構造物表面に触媒が付着し
ているものとする。炉水への水素注入は給水系26の給
水ポンプ25の入り口側から水素注入装置31を用いて
原子炉20一次冷却系へ注入する。原子炉20一次冷却
系は主蒸気系21,タービン22,復水器23,復水浄
化系24,給水ポンプ25,給水系26,ジェットポン
プ,再循環系配管,再循環ポンプ29からなる。炉水中
の水素濃度の増加に伴って、触媒上での腐食電位の低下
によって構造材料表面の腐食電位も低下し、応力腐食割
れの発生を抑制することが可能となる。
【0048】
【発明の効果】原子炉構造材料の表面に水素注入時の腐
食電位の低下を促進する触媒を、大気圧下で沸騰を生じ
ない温度で付着する。これにより原子炉20停止状態で
の施工を可能とすることから、圧力容器3内の付着量を
直接測定することを可能とするだけでなく、付着部位の
制御が可能となるため、応力腐食割れの防止効果が高ま
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を圧力容器内の原子炉構造材への触媒付
着に適用した1実施例を示す断面図。
【図2】原子炉構造材料表面での触媒による、水素添加
時の腐食電位の低下を説明する実験結果を示す特性図。
【図3】実験により得た温度と触媒付着量の関係を示す
特性図。
【図4】本発明を原子炉構造材への触媒付着に適用する
際の手順を示したアルゴリズム図。
【図5】本発明を原子炉構造材への触媒付着に適用する
際、燃料に付着させない処理を行う手順を示したアルゴ
リズム図。
【図6】本発明を圧力容器内の原子炉構造材への触媒付
着に適用する際に燃料に付着させない処理を行う場合の
実施例を示す断面図。
【図7】本発明を炉心支持板より低い位置にある原子炉
構造材料への触媒付着に適用した1実施例を示す断面
図。
【図8】本発明を上部格子板より低い位置にある原子炉
構造材料への触媒付着に適用した1実施例を示す断面
図。
【図9】本発明の触媒注入装置の実施例を示す構成図。
【図10】原子炉構造材への触媒付着量を測定するため
に炉内へ腐食電位測定ユニットを設置した1実施例を示
す断面図。
【図11】腐食電位測定ユニットの1実施例を示す説明
図。
【図12】原子炉構造材への触媒付着量を測定するため
に炉内へ試験片を設置した1実施例を示す断面図。
【図13】試験片の1実施例を示す断面図。
【図14】原子炉構造材への触媒付着量を測定するため
に炉内へ付着量センサを設置した1実施例を示す断面
図。
【図15】本発明を炉水浄化系を利用して触媒を注入す
るときの1実施例を示す構成図。
【図16】本発明を残留熱除去系を利用して触媒を注入
するときの1実施例を示す構成図。
【図17】本発明を適用した原子炉一次冷却系に給水系
26を利用した水素注入を行ったときの1実施例を示す
構成図。
【符号の説明】
1…触媒注入装置、2…注入ライン、3…圧力容器、4
…シュラウド、5…燃料、6…シュラウドサポート、7
…圧力容器底部、8…炉心支持板、9…上部格子板、1
0…炉水水位、11…腐食電位測定装置、12…腐食電
位測定ユニット、13…腐食電位測定連絡管、14…腐
食電位センサ、15…水素溶存水供給ノズル、16…排
水口、17…クレーン、18…試験片、19…付着量セ
ンサ、20…原子炉、21…主蒸気系、22…タービ
ン、23…復水器、24…復水浄化系、25…給水ポン
プ、26…給水系、27…炉水浄化系、28…炉水浄化
系ポンプ、29…再循環ポンプ、30…再循環系、31
…水素注入装置、32…残留熱除去系、33…注入ポン
プ、34…脱気ガスボンベ、35…脱気ライン、36…
排気口、37…安全弁、38…薬液タンク、39…パッ
キング。
フロントページの続き (72)発明者 赤嶺 和彦 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子炉構造材料の応力腐食割れ防止を目的
    とする方法であって、前記原子炉構造材料の表面に、前
    記原子炉構造材料の電気化学的作用を促進して腐食電位
    を低下させる作用を持つ触媒元素を、原子炉冷却水を輸
    送媒体として一個所以上の注入点から前記原子炉構造材
    によって構成される原子炉冷却系に供給することによっ
    て、前記原子炉冷却水の温度が150℃以下で、前記触
    媒の表面密度が0.5μg/cm2 以上となるように付着
    させることを特徴とする触媒表面の形成方法。
  2. 【請求項2】原子炉構造材料の応力腐食割れ防止を目的
    とする方法であって、前記原子炉構造材料の表面に、前
    記原子炉構造材料の電気化学的作用を促進して腐食電位
    を低下させる作用を持つ触媒元素を、原子炉冷却水を輸
    送媒体として一個所以上の注入点から前記原子炉構造材
    によって構成される原子炉冷却系に供給することによっ
    て、前記原子炉冷却水の温度が大気圧下で沸騰を生じな
    い温度で、前記触媒の表面密度が0.5μg/cm2以上と
    なるように付着させることを特徴とする触媒表面の形成
    方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2において、原子炉構造材
    料の表面に前記原子炉構造材料の腐食電位を低下させる
    作用を持つ触媒としてPt,Pd,Rh,Au,Agか
    らなる一群の元素の中からいずれか一つ以上を用いるこ
    と特徴とする触媒表面の形成方法。
  4. 【請求項4】請求項3において、触媒元素を含有する化
    合物としてPd(NO3)2,Na2[Pd(OH)4],K2
    [Pd(NO2)4],[Pd(NH3)4]CO3,[Pd(N
    3)4](NO3)2,[Pd(NH3)4](CH3COO)2,P
    d(NO2)2(NH3)2,Na2[Pt(OH)6],K2[Pt(O
    H)6],H2[Pt(OH)6],K2[Pt(NO2)4],
    [Pt(NH3)4](NO3)2,[Pt(NH3)4](OH)2,
    [Pt(NH3)4]CO3,[Pt(NH3)4](CH3CO
    O)2、Rh(NO3)3, Na3[Rh(NO2)6],K
    3[Rh(NO2)6],Rh(CH3COO)3,Rh2(CH3
    COO)4,[Rh(NH3)5(H2O)](NO3)3を用いる
    ことを特徴とする触媒表面の形成方法。
  5. 【請求項5】請求項3において、触媒元素を含有する化
    合物として触媒金属元素単体または触媒金属酸化物のコ
    ロイドの組み合わせを用いることを特徴とする触媒表面
    の形成方法。
  6. 【請求項6】請求項3において、原子炉冷却水を輸送媒
    体として一個所以上の注入点から前記原子炉構造材によ
    って構成される原子炉冷却系に供給するときに、触媒元
    素を含有する化合物を単体または組み合わせとして、室
    温でのpHが6〜8の間に、かつ導電率が1μS/cm以
    下になるように選ぶことを特徴とする触媒表面の形成方
    法。
  7. 【請求項7】請求項1または2において、原子炉構造材
    料の表面に前記原子炉構造材料の腐食電位を低下させる
    作用を持つ触媒を付着させる領域が下部プレナム内であ
    ることを特徴とする触媒表面の形成方法。
  8. 【請求項8】請求項1または2において、原子炉構造材
    料の表面に前記原子炉構造材料の腐食電位を低下させる
    作用を持つ触媒を付着させる領域が上部プレナムより低
    い位置にあることを特徴とする触媒表面の形成方法。
  9. 【請求項9】請求項1または2において、原子炉構造材
    料の表面に前記原子炉構造材料の腐食電位を低下させる
    作用を持つ触媒を付着させる時期が、燃料5集合体を炉
    心から除いた後であることを特徴とする触媒表面の形成
    方法。
  10. 【請求項10】請求項1または2において、触媒の付着
    量の測定方法が、所定の時間ごとに炉内に設置した試験
    片を取り出して付着量を調べる方法であることを特徴と
    する触媒表面の形成方法。
  11. 【請求項11】請求項1または2において、触媒の付着
    量の測定方法が、炉内に設置した付着量センサを用いて
    オンラインで付着量を調べる方法であることを特徴とす
    る触媒表面の形成方法。
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