JP2003222697A - 貴金属付着量評価方法と貴金属付着方法 - Google Patents

貴金属付着量評価方法と貴金属付着方法

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JP2003222697A
JP2003222697A JP2002022660A JP2002022660A JP2003222697A JP 2003222697 A JP2003222697 A JP 2003222697A JP 2002022660 A JP2002022660 A JP 2002022660A JP 2002022660 A JP2002022660 A JP 2002022660A JP 2003222697 A JP2003222697 A JP 2003222697A
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reactor
noble metal
structural material
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water
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Yoichi Wada
陽一 和田
Kazunari Ishida
一成 石田
Naoto Uetake
直人 植竹
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】原子炉構造材料表面に貴金属を付着させる処理
において、短時間で付着量を評価し、処理作業の効率向
上と適切な付着量の確保を可能とする方法を提供する。 【解決手段】本発明の特徴は、沸騰水型原子炉におい
て、前記原子炉構造材料の腐食電位の測定値と、前記原
子炉構造材料の腐食電位の計算値とを用いて、前記原子
炉構造材料の表面に付着した貴金属量を推定することに
ある。 【効果】本発明により、原子炉の構造材の表面に付着し
た貴金属の量を短時間で知ることができ、構造材料の表
面に任意に精度良く貴金属を付着することができる。材
料表面に適切な貴金属付着が確保され、付着後の原子炉
の運転時に水素を炉水に供給することにより、原子炉プ
ラント構造部材の腐食電位は、炉内で著しく低下する。
このような貴金属付着量評価方法と貴金属付着方法が提
供されるため、従来以上に応力腐食割れの防止効果が高
まる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子炉プラント構
造部材の応力腐食割れを緩和する方法に係り、特に沸騰
水型原子炉(以下、BWRという)を備えた原子炉プラ
ントの構造材量表面に貴金属を付着させる処理に適用す
るのに好適な貴金属付着量評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】沸騰水型原子炉では、原子炉構造材料
(ステンレス鋼(以下SUSという)及びニッケル基合
金等)の応力腐食割れ(以下、SCCという)の発生及
び進展を抑制するために、水素注入が行われている。
【0003】沸騰水型原子炉では、原子炉炉心の燃料か
ら放出されるガンマ線や中性子線などの放射線の強いエ
ネルギーにより炉水が分解され、酸素や過酸化水素など
の酸化性成分が炉水中に生成する。これらの酸化性成分
のために、構造材量の腐食電位(ECP)が高くなり、
SCCを生じる。
【0004】SCCを抑制する従来技術として、水素注
入がある。水素注入は、水素を給水に加圧注入して溶存
させ、給水を経由して原子炉内の炉水に水素を添加する
ことにより行われる。原子炉内の炉水に添加された水素
は、主に原子炉内の炉心を取囲むダウンカマ部におい
て、炉水中の酸素及び過酸化水素と再結合して水へ戻
る。この再結合反応は、放射線により水中に生成するO
H等の反応性に富むラジカル種が、触媒のように作用す
ることにより速やかに進行する。
【0005】再結合反応により炉水中での酸素及び過酸
化水素の濃度が低下するため、原子炉構造材の腐食電位
も低下し、SCCの発生・進展が抑制される。
【0006】腐食電位が0.1V 程度低下すると、SC
Cの進展速度は1/10程度に低下する。さらに、腐食
電位がSCC発生のしきい値といわれる−0.23VvsSH
E(標準水素電極電位基準)以下に低下すれば、SCCの
発生が抑制されることが広く知られている。
【0007】沸騰水型原子炉では、炉心で発生した蒸気
で直接タービンを回転する。そのために、腐食電位低下
効果を大きくするために、炉水への水素注入量を多くす
ると、炉水に溶けていた放射性窒素が水素により還元さ
れて、蒸気へ放出され易くなるために、タービン建屋で
の線量率が増大する。いずれの沸騰水型原子炉において
も、給水中の水素濃度が約0.4ppmを超えると、タービ
ン建屋の線量率の上昇が始まり、高水素濃度では線量率
は4から5倍にまで達する。これは、作業員の被ばく低
減や原子力発電所の敷地境界での線量率管理の上から望
ましくない。
【0008】したがって、SCCの発生・進展を押さえ
るためには、放射性窒素の蒸気への放出量を増加させず
に腐食電位を−0.23VvsSHE 以下に下げる技術が水素
注入効果の増大の観点から必要であった。
【0009】水素注入効果の向上に関する方法が特許第
2946207号公報に記載されている。この技術は、
炉水に水素を添加するとともに、水素による酸化剤の還
元作用を加速するための白金族系貴金属元素を炉水に添
加して構造材表面に触媒層を形成するものである。
【0010】また、水素注入効果の向上に関してPCT
/JP97/03502に記載されている。この技術
は、炉水に白金族系貴金属元素の酸化物または水酸化物
を添加して触媒機能を構造材料表面に付与するものであ
る。
【0011】これらの開示技術に記載されている白金属
貴金属は、表面での水素の反応効率が良いことが古くか
ら知られている。電気化学の分野では水素電極として広
く使用されており、沸騰水型原子炉の運転条件では水素
濃度が50ppb から100ppb 程度のとき、水素電極と
して−0.5VvsSHE 程度の値を示す。図1に水素の酸素
に対するモル比を横軸にして腐食電位をプロットしたグ
ラフを示す。水素の酸素に対するモル比が増加(酸素濃
度を一定にして水素濃度を増加)してもSUS304鋼
の腐食電位はほとんど変化しないが、白金やSUS30
4に白金とロジウムを付着させたものは、水素濃度の増
加に伴って電位が−0.5VvsSHE程度に低下することが
わかる。以下に水素注入時の腐食電位低減を促進する原
理について簡単に説明する。
【0012】原子炉構造材として使用されているステン
レス鋼に炉水が接しているとき、ステンレス鋼の表面で
は腐食反応として次の反応が生じている。
【0013】(1)水素の酸化反応 (2)ステンレス鋼の腐食溶出 (3)酸素あるいは過酸化水素の還元反応 このとき、図2(a)に示すように、水素の酸化反応に
よって生じる電流密度とステンレス鋼の腐食溶出によっ
て生じる電流密度との和によって決定される全酸化電流
密度と、酸素あるいは過酸化水素の還元反応によって生
じる還元電流密度とが釣り合って、見かけ上金属表面を
出入りする電流密度が0となるときの電位としてステン
レス鋼の腐食電位が定義される。
【0014】ステンレス鋼の表面では、水素の酸化反応
はあまり活性でないため、ステンレス鋼の腐食電位はほ
ぼ酸素(ここでは酸素を用いて説明するが、過酸化水素
でも同様に説明できる)の還元反応によって生じる電流
密度とステンレス鋼の腐食溶出によって生じる電流密度
で決まる。したがって、水素注入を行うと水素と酸素が
反応して炉水中の酸素濃度が低減するので、酸素の還元
電流密度が小さくなりステンレス鋼の腐食電位が低下す
る。
【0015】ところが、ステンレス鋼の表面に白金,ロ
ジウム及びパラジウム等の白金族系貴金属(以下、貴金
属という)が存在すると、貴金属の有する水素の反応へ
の触媒性により、これらの貴金属の表面での水素の酸化
反応の電流密度は、ステンレス鋼の表面で生じる水素の
酸化反応電流密度に比べ何桁も大きな値をとる。また、
貴金属の酸化還元電位は酸素発生電位より貴なので、貴
金属族自体の酸化溶出反応は生じない。したがって、図
2(b)に示すように、貴金属(本例では白金)の溶出は
無視できるため、白金表面の示す電位は、水素及び酸素
の酸化還元反応の混成によって決定される。このとき、
白金上での酸素の酸化還元反応の交換電流密度は水素の
酸化還元反応の交換電流密度より小さく過電圧が水素よ
り大きいので、水素が過剰であれば酸素の還元電流密度
は水素の交換電流密度以下となり、白金表面の電位は水
素の酸化還元電位にほぼ一致することになる。この電位
は沸騰水型原子炉運転状態では、−0.5VvsSHE 程度ま
で低下するので、SCC発生のしきい値である−0.2
3VvsSHE 以下の電位が達成される。上記の現象は、ス
テンレス鋼の表面にロジウムまたはパラジウムが付着し
たときにも同様に生じる。したがって、ステンレス鋼の
表面に少しずつ貴金属を付着させれば、始めの電位はス
テンレス鋼の電位を示すが、付着量が多くなるにつれ
て、貴金属の示す低電位の影響が表れて電位が低下し始
め、表面のある比率まで貴金属が付着すると十分に−
0.5VvsSHE 程度にまで低下する。それ以上付着させて
も、表面が貴金属で満たされれば貴金属そのものの電位
を示し続けることになる。以上に述べたことが貴金属元
素の付着による水素注入効果の促進原理である。
【0016】したがって、沸騰水型原子炉の構造材量の
表面に効果的に貴金属を付着することができれば、水素
注入と貴金属処理の作用により腐食電位が低下し、SC
Cの発生・進展を抑制できる。ここで効果的な処理と
は、任意に付着量を制御することができることを意味す
る。貴金属の付着処理についての従来技術は次の通りで
ある。
【0017】まず、貴金属の付着に関する従来技術とし
て、特願平10−100825号に記されるように、試
験片の付着量を測定して処理中の付着量を知る方法があ
る。
【0018】貴金属付着装置に関する従来技術として、
特願平8−341167号に記されるように、原子炉の
内部または外部に接続した原子炉流路ラインと、この原
子炉流路ラインに設けた貴金属溶液注入ライン及び腐食
電位測定装置とを具備したことを特徴とする原子炉構造
材への貴金属付着装置がある。
【0019】貴金属付着評価に関する従来技術として、
特願平11−318041号に記されるように、貴金属
付着した測定試料を、所定の水素,酸素濃度に調整した
水質のなかで腐食電位を測定して貴金属付着による効果
を評価することを特徴とする評価方法がある。
【0020】また、原子炉構造材の腐食電位の計算方法
と原子炉の管理方法に関する従来技術として、特願平1
0−296526号に記されるように、表面に貴金属粒
子が析出した原子炉構造材の腐食電位のシミュレーショ
ン方法であって、貴金属粒子に接触している冷却水を構
成する化学種が電子を供給または受け取る速度として、
貴金属が、ミクロ電極として働くことを考慮して予め求
めておいた係数を化学種の反応速度にかけたものを用い
ることを特徴とする腐食電位のシミュレーション方法が
ある。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】まず、特願平10−1
00825号に記されたように試験片の付着量を測定し
て処理中の付着量を知る方法では、測定に数時間単位の
長い時間を要するという問題がある。試験片を炉水に接
するように設置するために、取外しに時間がかかり、さ
らに機器分析により量を決定するため、例えば、フレー
ムレス原子吸光法(FAAS)や誘導結合プラズマ質量
(ICP−MS)分析器を使用する場合には、酸で試験
片を溶解する前処理工程で時間がかかることになる。ま
た、運転中に接近できない炉内や格納容器内など試験片
の設置不可能な部位には適用することはできない。
【0022】特願平8−341167号に記された貴金
属付着装置に関する従来技術では、原子炉の内部または
外部に接続した原子炉流路ラインに設けた腐食電位測定
装置の出力を用いて貴金属溶液の注入を行う装置を用い
ることにより、貴金属が構造材量に確実に付着している
かを確認できなかったという課題を解決している。しか
しながら、この従来技術では、貴金属を付着するステン
レス及びインコネルの電極の電位と、基準となる白金電
極の電位を比較して同じ電位になれば付着が十分である
と判断する方法を開示しているものの、付着処理の期間
において実際にステンレスやインコネルの表面に付着し
た貴金属の量を評価する方法について示していない。も
ちろん、本従来技術に開示された装置により、腐食電位
の読みと予め実験等により得た付着量との関係を比較す
れば付着量を推定することは可能であるが、原子炉の付
着処理の期間中には酸素や水素濃度,温度,炉水流量な
どが時々刻々と変化するため、腐食電位を実測したとき
の運転条件で測定されたものと同じデータをデータベー
スに用意することは、そのデータ数が膨大となり実用上
困難である。
【0023】特願平11−318041号に記された貴
金属効果評価方法に関する従来技術では、付着密度を評
価することが記載されているが、付着処理部材の電位を
測定するために所定の水質に調整した水を供給する必要
があり、例えば運転している原子炉内のように、水質調
整された水が供給できない条件では付着量を評価するこ
とができない。
【0024】そこで、実験から得られたデータとモデル
計算とを組み合わせて実際の付着量を評価する方法が必
要となる。モデル計算については、唯一、特願平10−
296526号に記載された原子炉構造材の腐食電位の
計算方法と原子炉の管理方法に関する従来技術が開示さ
れている。この従来技術では、表面に貴金属粒子が析出
した原子炉構造材の腐食電位をシミュレーションするた
めに、貴金属がミクロ電極として働くことが前提されて
おり、ミクロ電極作用を考慮して予め求めておいた係数
を化学種の反応速度にかけたものを用いることを特徴と
している。しかしながら、この従来技術では付着した貴
金属の平均粒子径や被覆率を知らなくては付着量が求め
られない課題がある。これらの値は、沸騰水型原子炉実
機での処理が通常数十時間という短い期間の中で行われ
ることを考えれば、作業の上では実測不可能である。こ
の従来技術では被覆率を仮定したときの平均粒子径の求
め方を開示しているが、実際の付着処理の中でどのよう
に被覆率を求め、付着量とどのような対応があるかにつ
いては明らかでない。
【0025】そこで本発明では、原子炉の運転状態と測
定された腐食電位に基づいて、構造材の表面に付着した
貴金属の量を推定する方法を提供し、またそれを用いて
付着量を制御する方法を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の特徴は、炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉に
おいて、前記原子炉構造材料の腐食電位の測定値と、前
記原子炉構造材料の腐食電位の計算値とを用いて、前記
原子炉構造材料の表面に付着した貴金属量を推定するこ
とにある。これにより、短時間で貴金属の付着量を知る
ことができ、沸騰水型原子炉の構造材量の表面に任意に
精度良く貴金属を付着することができる。
【0027】また、第二の本発明の特徴は、炉水に貴金
属を注入する沸騰水型原子炉において、前記原子炉構造
材料の腐食電位の測定値と、記憶装置に保存した前記原
子炉構造材料の腐食電位の計算値とを用いて、前記原子
炉構造材料の表面に付着した貴金属量を推定することに
ある。これにより、処理のときに計算をしなくとも、短
時間で貴金属の付着量を知ることができ、沸騰水型原子
炉の構造材量の表面に任意に精度良く貴金属を付着する
ことができる。
【0028】また、第三の本発明の特徴は、炉水に貴金
属を注入したあと水素を注入する沸騰水型原子炉におい
て、前記原子炉構造材料の腐食電位の測定値と、前記原
子炉構造材料の腐食電位の計算値とを用いて、前記原子
炉構造材料の表面に付着した貴金属量を推定することに
ある。これにより、水素を注入しているときの貴金属の
付着量を短時間で知ることができる。
【0029】また、第四の本発明の特徴は、炉水に貴金
属を注入したあとに水素を注入する沸騰水型原子炉にお
いて、前記原子炉構造材料の腐食電位の測定値と、記憶
装置に保存した前記原子炉構造材料の腐食電位の計算値
とを用いて、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴金
属量を推定することにある。これにより、水素を注入し
ている状態において、計算をしなくとも短時間で貴金属
の付着量を知ることができる。
【0030】また、第五の本発明の特徴は、第一乃至第
四の何れかの発明において、前記原子炉構造材料の腐食
電位の計算をするときに、貴金属の付着量と前記原子炉
構造材料表面の貴金属被覆率の関係についてあらかじめ
求めておき、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴金
属量を推定することである。これにより、腐食電位のモ
デル計算と実際の付着量との間の関係をつなぐことがで
きて、付着量を与えたときの腐食電位の計算が可能とな
る。また、腐食電位から付着量を決定することができ
る。
【0031】また、第六の本発明の特徴は、第一乃至第
五の何れかの発明において、前記原子炉構造材料の腐食
電位の計算をするときに、炉水の酸素,過酸化水素,水
素の各濃度、測定部の炉水温度,測定部の炉水流速,測
定部の水力等価直径及び貴金属付着量を入力として用い
て、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴金属量を推
定することである。これにより、構造材量及び貴金属表
面での電気化学反応によって生じる電流と電位の関係が
それぞれ得られるので腐食電位の計算が可能である。
【0032】さらに、第七の本発明の特徴は、炉水に貴
金属を注入する沸騰水型原子炉において、前記原子炉構
造材料表面への貴金属付着量を測定するに際し、酸化性
酸により酸化溶解処理し、王水により溶解し、さらに溶
媒抽出により鉄を除去することである。これにより、酸
に溶解しにくくなった酸化皮膜を持つ構造材表面であっ
ても溶解が短時間で可能となる。
【0033】第八の本発明の特徴は、炉水に貴金属を注
入したあとに水素を注入する沸騰水型原子炉において、
前記原子炉構造材料表面への貴金属付着量を測定するに
際し、酸化性酸により酸化溶解処理し、王水により溶解
し、さらに溶媒抽出により鉄を除去することにある。こ
れにより、水素の還元作用で酸に溶解しにくくなった酸
化皮膜を持つ構造材表面であっても溶解が短時間で可能
となる。
【0034】第九の本発明の特徴は、第七の発明又は第
八の発明において、前記酸化性酸が過マンガン酸イオン
を含むことである。過マンガン酸イオンの作用によりス
テンレス表面のクロム酸化物が酸化溶解されて溶解が速
やかに進行する。
【0035】第十の本発明の特徴は、第七乃至第九の何
れかの発明において、前記溶媒抽出に用いる溶媒がメチ
ルイソブチルケトンと酢酸ペンチルの混合液であること
である。これにより、溶液中の鉄イオンが貴金属と分離
されて、貴金属濃度の測定において鉄の妨害作用が低減
され測定精度が向上する。
【0036】第十一の貴金属の付着方法に関する本発明
の特徴は、炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉にお
いて、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工程
と、前記原子炉構造材料の腐食電位を計算する工程と、
腐食電位の測定値と計算値から前記原子炉構造材料の表
面に付着した貴金属量を評価する工程と、前記原子炉構
造材料の表面に付着する貴金属量を貴金属の注入速度及
び原子炉の運転条件とを用いてシミュレーションする工
程と、貴金属の注入速度あるいは原子炉炉水温度を制御
する工程とを有することにある。これにより、効果的な
貴金属付着処理が行われ、原子炉でのSCC防止効果が
向上し原子炉の長期健全性が確保される。
【0037】第十二の貴金属の付着方法に関する本発明
の特徴は、炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉にお
いて、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴金属量を
評価する工程と、前記原子炉構造材料の表面に付着する
貴金属量を貴金属の注入速度及び原子炉の運転条件とを
用いてシミュレーションする工程と、貴金属の注入速度
あるいは原子炉炉水温度を制御する工程とを有すること
にある。これにより、シミュレーションの助けを借りて
効果的な貴金属付着処理が行われ、原子炉でのSCC防
止効果が向上し原子炉の長期健全性が確保される。
【0038】第十三の貴金属の付着方法に関する本発明
の特徴は、炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉にお
いて、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工程
と、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴金属量を評
価する工程と、前記原子炉構造材料の表面に付着する貴
金属量を貴金属の注入速度及び原子炉の運転条件とを用
いてシミュレーションする工程と、貴金属の注入速度あ
るいは原子炉炉水温度を制御する工程とを有することに
ある。これにより、腐食電位の実測値を基準に貴金属の
付着量を評価することにより効果的な貴金属付着処理が
行われ、原子炉でのSCC防止効果が向上し原子炉の長
期健全性が確保される。
【0039】第十四の貴金属の付着方法に関する本発明
の特徴は、炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉にお
いて、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工程
と、前記原子炉構造材料の腐食電位を計算する工程と、
腐食電位の測定値と計算値から前記原子炉構造材料の表
面に付着した貴金属量を評価する工程と、貴金属の注入
速度あるいは原子炉炉水温度を制御する工程とを有する
ことにある。これにより、腐食電位の実測値と計算値を
用いて貴金属の付着量を評価し、貴金属の注入を制御す
ることにより効果的な貴金属付着処理が行われ、原子炉
でのSCC防止効果が向上し原子炉の長期健全性が確保
される。
【0040】第十五の貴金属の付着方法に関する本発明
の特徴は、炉水に水素を注入する沸騰水型原子炉におい
て、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工程と、
前記原子炉構造材料の腐食電位を計算する工程と、腐食
電位の測定値と計算値から前記原子炉構造材料の表面に
付着した貴金属量を評価する工程の後に、前記原子炉構
造材料の表面に貴金属を付着する工程を有することであ
る。これにより、原子炉の運転で減少した貴金属を補う
処理の必要性を判定した上で貴金属付着処理が行われる
ため、無駄なく原子炉でのSCC防止効果が向上し原子
炉の長期健全性が確保される。
【0041】そこで、初めに腐食電位計算モデルについ
て記す。モデルで考慮したアノード反応について検討す
る。水素のアノード反応は貴金属付着効果の解析を行う
上で最も重要である。そこで、この反応についてはVolm
er−Heyrovsky 機構のような複雑な扱いを避け、素反応
と見なすことにした。このようにして、パラメータの数
を減らし極力実験結果や既知の条件を根拠として、パラ
メータの値を決めた。もちろん、将来電気化学の知見が
増えれば、この部分は複雑な反応系に置き換えることも
可能であるが、現状の知見の範囲で現実的な扱いを試み
た。水素のアノード反応式を
【0042】
【化1】
【0043】のように、電極反応速度定数を用いて表
す。ここで、k0fとk0bは(化1)式での正反応と逆反
応の電気化学反応速度定数である。この反応が貴金属表
面において定常状態であると仮定すると、表面でのフラ
ックスの保存から、バルク水素濃度がCH2,bのときの水
素の表面濃度CH2,s
【0044】
【数1】
【0045】と得られる。ここで、Dは水素の拡散係
数、δは拡散層厚み、CH+は水素イオン濃度である。炉
水の流速と腐食電位測定部の水力等価直径はδを計算す
るために用いられる。流動条件により、層流拡散境界層
あるいは乱流拡散境界層厚みの式を使い分ける。例え
ば、原子炉運転中の炉内では乱流拡散境界層の式を用い
る。この表面濃度を用いれば(化1)式が生じるときの
電流密度が
【0046】
【数2】
【0047】と表される。Fはファラデー定数である。
このとき、電気化学反応速度係数k0f及びk0bは k0f=k0f oexp(α(E−E0)zF/RT) k0b=k0oexp(−(1−α)(E−E0)zF/RT) と書き表されるので、電気化学反応速度定数k0f o,k
0b o及び透過係数αをそれぞれ決定すればよい。Eは電
位、E0は標準電極電位である。Rは気体定数、Tは絶
対温度である。
【0048】透過係数αとターフェル勾配bの間には、 b=2.303RT/αFz の関係が成り立つ。ここでは実験データから、α=0.
68とした。
【0049】次に、k0f/k0bの比の値は熱力学計算か
ら得られる水素の平衡電位を再現するように決定すれば
よい。水素の平衡電位Eは(1)式の反応に対して
【0050】
【数3】
【0051】で与えられる。ここで、 R:ガス定数(8.31J/mol/K) z:反応に関与する電子数=2 T:絶対温度(K) PH2:水素分圧(atm) HH2:水素のヘンリー定数(280℃で0.0037mol
/kg/atm) [H2]:水素濃度(mol/kg) [H+]:水素イオン濃度(280℃で2.2×10-6mo
l/kg) E0:水素電極電位のE0を各温度で0と定義する。 である。
【0052】比の値は、k0b o/k0f o=4.0が最適で
あった。k0f oの値は、k0f o=1×104cm/sとし
た。
【0053】ステンレスの場合も同様に決定した。k0b
o/k0f oの比はそのままに、k0f oとα0をSUSで得ら
れたデータを再現するように決定した。
【0054】次に、カソード反応式を以下の(化2)〜
(化4)式のように考えた。酸素の還元反応は遷移金属
のスピネル酸化物上では(化2)式及び(化4)式の2
段の2電子過程が優勢に進行し、白金上では(化4)式
の4電子過程が優勢に進む。
【0055】
【化2】
【0056】
【化3】
【0057】
【化4】
【0058】したがって、本発明では上記(化2)〜
(化4)式の3つの反応式を考慮することが特徴で、し
かも、白金とステンレスとの場合で、それぞれ優勢な反
応経路を変えるところが従来技術との違いがある。ま
た、過酸化水素が熱分解する過程などの非電気化学反応
系の寄与は考慮しても電位計算に重大な影響を与えなか
ったので無視する。上記3つの反応が貴金属表面におい
て定常状態で進行すると考えるとき、貴金属表面での境
界条件から、酸素及び過酸化水素の表面濃度はそれぞ
れ、バルク濃度と以下の関係を持つ。
【0059】
【数4】
【0060】
【数5】
【0061】この2つの式から、酸素及び過酸化水素の
表面濃度を計算する。ここでδO2及びδH2O2は、酸素及
び過酸化水素の拡散層厚さである。また、DO2及びD
H2O2はそれぞれ、酸素及び過酸化水素の拡散係数であ
る。同様にCは添え字の化学種の濃度で、添え字のsは
表面、bはバルク(沖合)の濃度を示す。表面濃度が得
られると、カソード反応電流は
【0062】
【数6】 i=2Fk1fO2sH+ 2−2Fk1bH2O2s+4Fk3fO2sH+ 4 −2Fk3bH2O 2+2Fkf2H2O2sH+ 2 −Fk2bH2O 2−2Fk1bH2O2s+2Fk1fCO2H+ 2 …(数6) で与えられる。
【0063】以上の式ではアノード反応もカソード反応
もH+イオン濃度が関与することから、炉水のpHが腐
食電位に影響を与えることがわかる。通常、定格運転時
の沸騰水型原子炉炉水では、炉水導電率が0.1μS/c
m 以下と低く、pHも7に近い。実際はステンレスから
溶出したクロム酸の影響で、6.5〜6.8ぐらいであ
り、水素注入でクロム酸の溶出が押さえられると7.0
程度になる。貴金属付着処理では処理中にpHが変化す
るので、pHの影響を考慮する必要がある。
【0064】このモデルを用いて、酸素濃度を200pp
b の一定値にして水素濃度を増加させた場合の白金電位
を計算したところ、このモデルでは従来技術に示されて
いるミクロ電極の扱いをする必要なく、図3に示すよう
に同一条件での白金電極の電位を計算により再現するこ
とができた。ステンレスの酸化溶解特性は、Kim(Y-J.Ki
m “Electrochemical Interaction of Hydrogen, Oxyge
n and HydrogenPeroxide on Metal Surfaces in High T
emperature, High Purity”, Proc.8th Int'l Symp. on
Environmental Degradation of Materials in Nuclear
Power Systems - Water Reactors, August 10-14, Amel
ia Island, Florida,USA, NACE, 641(1997))によって得
られた図4に示すものを用いた。
【0065】次に、本願では付着量と腐食電位との関係
を与えることを試みた。予備酸化したSUS304試験
片(資料)に貴金属を付着処理をしたとき、図5に示す
ような付着量と電位低下との関係があることを明らかに
した。この実験事実に基づいて、本願を構成する重要な
点である、モデル計算と実測腐食電位との関係を得るこ
とを試みた。
【0066】貴金属付着量の増加と共に腐食電位は低下
し、付着量が0.4μg/cm2以下では、付着量と電位の
低下効果に線形性が見られた。このときは、白金に被覆
されていないステンレス母材部での電極反応が混成して
いると考えられる。また、付着量が0.4〜0.5μg/
cm2 以上となると、腐食電位は水素電極電位を示す。こ
のときは、白金上での反応電流がステンレスの寄与を無
視できるほど大きな状態になっていると考えられる。
【0067】そこで、貴金属の単位付着量あたりの表面
被覆率を用いて、貴金属処理による電位低下効果を検討
する。
【0068】貴金属付着量をM、貴金属被覆率をθとす
ると、θはMの関数となり、 θ=f(M) となる。付着量が十分少ないときには、付着した貴金属
の平均的な挙動として、表面に一様かつ均一に分布する
と仮定すれば、 θ≒kM の関係が成立すると考えられる。ここでkは比例定数で
ある。このとき、SUS304上での酸素の還元反応によって
生じるカソード電流密度をiSUS,C とし、水素の酸化反
応によって生じる水素のアノード反応電流密度をi
SUS,a とし、SUS304の酸化溶出によって生じる酸化電流
密度をiSUS,M とする。同様に、貴金属上での酸素のカ
ソード反応に伴うカソード電流密度をiNM,Cとし、水素
のアノード反応電流密度をiNM,aとする。このとき、各
電流密度は電位の関数であるので、貴金属の付着した資
料である付着試験片の腐食電位は与えられた水質条件に
おいて
【0069】
【数7】 (1−θ)(iSUS,C(ECP)+iSUS,a(ECP)+iSUS,M(ECP)) +θ(iNM,C(ECP)+iNM,a(ECP))=0 …(数7) が成立する電位として与えられる。この(数7)そのも
のは異材金属接触時の腐食電位が混成電位の概念によっ
て決定されることを示す広く知られた知見である。した
がって、θと電位の関係を計算し、図5の実験結果を再
現するように、付着量と被覆率の関係を得ることが、本
願発明を構成する重要な発見となる。
【0070】図6に腐食電位の水素/酸素モル比依存性
を様々な貴金属被覆率に対して計算した結果を示す。こ
のとき、酸素濃度は実験条件と同じ300ppb とした。
被覆率が0のときは、ステンレス(SUS)としての電
位を示す。被覆率の増加に伴って、モル比が2以下の領
域では、腐食電位が上昇し、モル比が2以上の領域では
腐食電位が低下した。被覆率が1のときは、貴金属が完
全に表面を覆っている状態の電位を示す。
【0071】モル比が2付近の領域ではモル比の微小な
変化に対する電位の変化が急激であるので、誤差の影響
を受けやすいと考えた。そこで、実験ではモル比が5〜
6付近でのデータについて、付着量と電位の関係をまと
めたので、モル比が5での被覆率と腐食電位の関係を調
べた結果を図7に示す。被覆率が0〜0.3 の範囲では
被覆率と腐食電位の間に線形性が見られた。この領域に
ついて、被覆率θを用いて線形関数にフィッティングす
ると、
【0072】
【数8】 ECP=−0.84θ−0.13(VvsSHE) …(数8) として相関係数1.0 で与えられた。θが1に近づくに
つれて、電位は水素電極電位の値に漸近した。図5で示
したように、実験によると付着量の少ない領域では腐食
電位は、モル比が5〜6で
【0073】
【数9】 ECP=−0.93×付着量(μg/cm2)−0.18(VvsSHE) (付着量 <0.4μg/cm2) …(数9) の関係が得られ、付着量が0.4μg/cm2以上では水素
電極電位を示した。このことから、付着量の少ないとこ
ろで付着量と被覆率との間に比例関係が成立するという
仮定が成り立っていると考えられる。そこで、単位付着
量あたりの被覆率を(数8)式と(数9)式の比較から
計算する。(数8)式と(数9)式の切片は、測定精度
やモデルの精度を考えると、一致すると見なして良く、
このとき、θと付着量Mの関係は、係数の比較から
【0074】
【数10】 θ=1.1M …(数10) となる。ただし、厳密には(数10)式はMが0.4μ
g/cm2以下で成立する。付着量が0.4μg/cm2以上
のときの扱いについては、図7に示した被覆率と腐食電
位の関係から、付着量が0.4μg/cm2に相当する被覆
率0.44のところで腐食電位が−0.45VvsSHE程度に
低下しており、水素電極電位との差が0.05V程度であ
る。これは実用上十分に低い電位になっていること、ま
た腐食電位測定技術では±0.05V程度の誤差が生じ
ることを考えると、(数10)式の関係をθが1以下と
なる付着量0.9μg/cm2以下では、実用上成立すると
考えてよいと判断できる。付着量が0.9μg/cm2を越
えて被覆率が1以上となる場合は被覆率1として扱う。
実際の処理ではステンレス表面に1μg/cm2 以下の付
着量を与えることを目標にするので、本願の扱いで十分
に対応可能である。
【0075】(数10)の関係はおよそ1μg/cm2
貴金属の付着によりほぼ被覆率が1程度になることを示
している。貴金属の質量が白金で200、ロジウムで1
00であり、原子半径が6×10-9cm程度であることを
考えると、充填密度を無視すれば、一つの原子状の貴金
属粒子の付着によるステンレス上の射影は、1.1 ×1
-16cm2の面積であり、白金1μgあたり0.3cm2,ロ
ジウム1μgあたり0.7cm2の被覆面積と概算される。
したがって、(数10)の関係はほぼ原子1層レベルの
付着によってステンレス表面が被覆されることで、腐食
電位が低下する効果が発現することを示している。
【0076】(数10)の関係が得られたことによりこ
れにより、ある貴金属付着量での腐食電位が計算するこ
とが可能である。逆に、腐食電位が実測から与えられた
ときに、その値を再現するような貴金属付着量をモデル
計算から探索すれば、処理部での貴金属付着量が評価で
きる。
【0077】
【発明の実施の形態】本発明の好適な一実施例である金
属付着量評価方法を図面を用いて説明する。図8は、本
実施例の方法が適用される沸騰水型原子炉プラントを示
している。ここでは、ジェットポンプのない型の沸騰水
型原子炉で説明する。ジェットポンプのある型でも本願
は同様に成り立つ。沸騰水型原子炉プラントは原子炉圧
力容器3及びタービン6を備える。原子炉圧力容器3は
原子炉格納容器35内に設置され、内部に炉心13を備
える。原子炉圧力容器3内には、炉心13を取囲む炉心
シュラウド36及び炉心シュラウド36を支持するシュ
ラウドサポート37等の炉内構造物が設置される。炉心
13には複数の燃料集合体(図示せず)が装荷されてい
る。
【0078】炉心13内に供給される炉水は、燃料集合
体内の核分裂性物質の核分裂によって加熱されて蒸気に
なる。この蒸気は、主蒸気配管5によって原子炉圧力容
器3からタービン6に導かれる。タービン6は、駆動さ
れて連結された発電機(図示せず)を回転させる。ター
ビン6から排出された蒸気は、復水器7で凝縮され、復
水系1を経て、給水として給水配管2より原子炉圧力容
器3内に供給される。この給水は、給水配管2に設けら
れた復水ポンプ8,復水脱塩器9,低圧給水加熱器1
0,給水ポンプ12及び高圧給水加熱器11を順次通過
する。給水は炉水となって炉心13に供給される。炉水
は、再循環ポンプ4aの駆動によって炉心シュラウド3
6の外側に位置するダウンカマ14を下降し、再循環系
配管4を経て下部プレナム15に達して炉心13内に導
かれる。
【0079】原子炉圧力容器3内の炉水は、ポンプ17
cの駆動によって再循環系配管4に接続された炉水浄化
系配管17内に導かれる。再生熱交換器17a,ポンプ
17c,非再生熱交換器17b及び脱塩器18が炉水浄化
系配管17に設置されている。炉水浄化系配管17内の
炉水はこれらの機器を通り、特に脱塩器18で浄化され
て給水配管2を経て原子炉圧力容器3内に戻される。炉
水の水質を測定するための水質測定装置20aが、炉水
浄化系配管17に接続されたサンプリング配管21に設
置される。下部プレナム15内の炉水の一部は、原子炉
圧力容器3の底部に接続されたドレン配管16によって
炉水浄化系配管17に導かれ、脱塩器18によって浄化
される。炉水の腐食電位を測定するための腐食電位(E
CP)センサ25aが、ドレン配管16に設置される。
炉水の水質を測定するための水質測定装置20bが、ド
レン配管16に接続されたサンプリング配管22に設置
される。
【0080】サンプリング配管21及び22から採取し
た炉水の水質(溶存酸素濃度,溶存水素濃度,pH,導
電率など)は、その炉水を減圧及び冷却した後で、水質
測定装置20a及び20bによってオンラインで測定さ
れる。ドレン配管16内を流れる炉水に接する構造材の
腐食電位は、ECPセンサ25aによって測定される。
このため、炉水の酸素濃度及び過酸化水素濃度の両方が
測定できる。腐食電位は中性子計装管(図示せず)を利
用して炉心13内あるいは下部プレナム15内に設置し
たECPセンサ25cによって測定しても良い。
【0081】サンプリング配管19によって給水配管2
から採取した給水の水質(溶存酸素濃度,溶存水素濃
度,pH,導電率など)は、その給水を減圧及び冷却し
た後で、水質測定装置20cによってオンラインで測定
される。主蒸気配管5にも、サンプリング配管23を介
して水質測定装置20dが接続されている。水質測定装
置20dは、サンプリング配管23から抽出した蒸気を
凝縮し、この凝縮水を減圧及び冷却した後で、凝縮水の
水質をオンラインで測定する。主蒸気配管5には、主蒸
気系の放射線量率を測定するための線量率モニタ26が
設置されている。
【0082】水質測定装置20a〜20dは、対象とな
る水を減圧及び冷却することにより、室温〜約50℃及
び約1〜5気圧の条件下で水質を測定する。水質測定装
置20a〜20dによる溶存酸素濃度,溶存水素濃度,
pH及び導電率などの測定結果は、表示装置(図示せ
ず)に表示されて監視される。炉水のpHは5.3 〜
8.6の範囲に、炉水の導電率は10μs/cm以下に保
持される。
【0083】オフガス系配管28が復水器7に接続され
る。蒸気抽出器27及び再結合器30がオフガス系配管
28に設置される。酸素注入装置29が、復水器7と蒸
気抽出器27の間でオフガス系配管28に接続されてい
る。
【0084】本実施例では貴金属化合物注入装置31は
再循環系配管4に接続される。接続には、使用していな
い配管の座,ドレン配管,計測系配管などを利用する。
貴金属化合物注入装置31は再循環配管4の他、炉浄化
系17,残留熱除去系(図示せず),制御棒駆動水系
(図示せず)、あるいは給水配管2や復水系1などに接
続することもプラントの特徴に応じて選ぶことができ
る。プラントの特徴とは、処理を行う時期に系統が運転
されているか否か、系統温度,系統流量,配管の長短、
あるいは貴金属を付着させたくない配管と接続している
か否かなどである。
【0085】水素注入装置24が低圧給水加熱器10と
給水ポンプ12との間で給水配管に接続される。貴金属
付着効果を測定するためのECPセンサ25bと、付着
量を分析するための試験片(資料)58がサンプリング配
管21に設置される。また、貴金属付着効果を測定する
ためのECPセンサ25bと、付着量を分析するための
試験片58は、サンプリング配管22に接続してもよ
い。また、炉水を任意の箇所から引き出して設けた配管
を利用してもよい。処理時の腐食電位はECPセンサ2
5cを用いても良い。複数のECPセンサを持つ原子炉
であれば、ECPセンサ25a〜25cから一つ以上選
んでもよい。この場合は付着量の分布が計測できる。
【0086】以上の構成を有する沸騰水型原子炉プラン
トにおける本実施例の金属付着量評価方法を図9を用い
て説明する。図9において、横軸は沸騰水型原子炉プラ
ントの運転時間を示し、縦軸は炉水の温度及び炉水中の
貴金属元素濃度を示す。図9は、1つの運転サイクル期
間の原子炉停止運転時における炉水の温度及び炉水中の
貴金属元素濃度の変化を模式的に示している。ここで1
つの運転サイクルは、原子炉の起動から燃料集合体の交
換のために原子炉を停止するまでの期間であり、原子炉
の起動運転,原子炉の定格出力運転(定格運転),原子
炉の停止運転を含んでいる。炉心13内に装荷されてい
る燃料集合体の一部は、1つの運転サイクルが経過した
後に、炉心13から取出されて新燃料集合体と交換され
る。
【0087】本実施例では、白金化合物及びロジウム化
合物が、原子炉出力を低下させる原子炉停止運転時で炉
水温度が150℃程度に低下した時期に、貴金属化合物
注入装置31から再循環配管4内を流れる炉水に注入さ
れ始める。
【0088】このときの停止操作を詳細に記す。始めに
出力降下を開始する。炉心流量を低下させ最小流量(定
格の30%程度)にする。さらに、制御棒を挿入して温
度を降下させる。出力が十分に低下したら発電機の解列
とタービントリップ操作を行い、タービンが停止され
る。ここから、圧力温度降下を開始する。さらに、制御
棒を挿入して温度を降下させ、タービンバイパス系から
蒸気を流しながら炉圧を落とし温度と圧力を降下させ
る。制御棒を全挿入した後、残留熱除去系を炉停止冷却
モードに設定して運転し、原子炉を冷却する。原子炉冷
却停止にあたっては、原子炉ヘッドスプレイ,主蒸気隔
離弁閉,復水器真空破壊,原子炉パージなどを行う。
【0089】上記の原子炉停止過程で貴金属が注入され
て付着が進行する。これらの白金及びロジウムの貴金属
化合物の注入は、目標とする付着量まで貴金属が付着し
たことを確認した後に停止される。付着が少ないとき
は、タービンバイパスへの蒸気量を減らす、原子炉の冷
却速度を下げる、あるいは再循環4bポンプの流量をあ
げジュール熱を増加するなどで温度を上昇させて、付着
を促進する。貴金属注入期間としては、炉水温度が80
〜150℃の期間で行う。貴金属の炉水中濃度は図9で
は三角形の変化を示したが、一定の濃度を保っても良い
し、初期に多くし一旦減らしてから処理の終わり頃に少
し増やして調整するなどの組み合わせがある。これは、
付着の前にシミュレーションで十分に検討するが、現場
で付着の進みかたを考慮して判断する。
【0090】原子炉の起動過程における温度が80〜1
50℃の範囲での貴金属の注入も可能である。起動過程
を説明する。炉心流量を最低流量で運転している状態で
制御棒引き抜きにより臨界とする。この後、核加熱が始
まり、炉圧・炉水温度が上昇する。余分な蒸気はタービ
ンバイパスから復水器へ流す。タービンを起動し、発電
機を併入したあと、制御棒引き抜きと炉心流量を増加さ
せることで原子炉出力を定格にする。
【0091】図10に示した貴金属化合物注入装置31
は、例えば異なる2種の貴金属を注入するとすれば、白
金化合物の溶液を充填したタンク40及びロジウム化合
物の溶液を充填したタンク44を有している。貴金属化
合物注入装置31からのそれらの化合物の供給開始及び
供給停止は、貴金属化合物注入装置31に設けられたバ
ルブ42,46開閉によって行われる。それぞれの溶液
のタンクは予備を備えており、一方が使用中に他方に溶
液を準備しておき、溶液がなくなった場合他方に切り替
えることで連続的な注入が行える。それぞれの溶液のタ
ンクは、別々の配管41,45により再循環系配管4に
接続される貴金属注入配管52に連絡される。配管52
には原子炉の純水供給系統54からポンプ55で加圧し
た純水を供給している。ここには純水保存タンク59が
設置されており、供給される純水の流量や圧力の変動を
緩和する。バルブ42及びポンプ43が配管41に設け
られ、バルブ46及びポンプ47が配管45に設けられ
る。白金化合物及びロジウム化合物の注入量は個別に調
節できる。すなわち、誘導結合プラズマ質量分析器57
(またはFAAS)で測定された炉水中の白金及びロジ
ウムの各濃度の測定値を用い、制御器53の設定を変更
して、各バルブ42,46の開度を個別に制御する。ま
たは制御器53の設定を変更して、各ポンプ43,47
の吐出量を個別に制御してもよい。このような各化合物
溶液の注入量の調節は、各貴金属元素の構造部材表面へ
の付着速度が異なり、しかも炉水中における各貴金属元
素の濃度の変化率が異なるため、非常に好都合である。
貴金属化合物注入装置31は図8では一つしか示さなか
ったが、再循環配管4のほか炉浄化系17など、複数点
から注入すると炉水での貴金属の濃度むらを少なくする
ことができる。また、貴金属化合物注入装置31には図
示していないが、同様の構成で酸やアルカリ溶液を注入
することも可能であり、貴金属処理による炉水のpHの
大きな変化を制御することができる。あとでシミュレー
ション結果を示すが、貴金属錯体が付着により分解する
ことで液性がアルカリに変化する。場合によっては酸性
に動くこともある。これは使用する錯体の化学形態に依
存する。
【0092】本実施例では、白金化合物としてNa
2[Pt(OH)6]及びロジウム化合物としてNa3[R
h(NO2)6] が用いられた。これらの化合物は炉水に
溶解しており、白金及びロジウムは炉水中でイオン及び
錯イオンの状態で存在する。
【0093】炉水中の白金濃度及びロジウム濃度が計画
した濃度となるように、各々の化合物の炉水への注入量
は、該当するタンクにつながるバルブの開度あるいはポ
ンプ流量を調節することにより制御される。白金及びロ
ジウムの各濃度は、先述の誘導結合プラズマ質量分析器
57によって測定される。これらの測定値に基づいて、
該当する上記バルブが調節され、炉水中のそれぞれの濃
度が制御される。炉水中の白金及びロジウムの各化合物
は、沸騰水型原子炉プラント構造部材が炉水と接触する
表面に接すると、その構造部材の表面の酸化皮膜に様々
な酸化数の状態となって付着する。たとえば、白金やロ
ジウムは、金属としての状態の他、PtO2 やRh23
などの酸化物、Rh(OH)3やPt(OH)2の水酸化物と
して付着する。これらは水素注入運転をすると大部分が
金属の白金やロジウムとなる。
【0094】炉水中の各貴金属元素の濃度は、一定時間
ごとに(または必要に応じて)サンプリング配管21及
び22によって採取された炉水を誘導結合プラズマ質量
分析器によって測定することによって確認できる。誘導
結合プラズマ質量分析器の替わりに、FAASを用いて
もよい。
【0095】炉水中の白金及びロジウムの量は、構造部
材表面への付着,炉水浄化系の脱塩器18による各貴金
属イオンの除去によって減少する。貴金属注入期間にお
ける貴金属化合物注入装置31からの白金及びロジウム
の各化合物の注入は、脱塩器18によるそれぞれの除去
量をも補償するように行われる。貴金属注入期間経過後
においては、脱塩器18による除去作用によって炉水中
の白金及びロジウムの各濃度は減少する。したがって、
貴金属濃度は、注入速度,炉浄化系容量,付着速度及び
炉水保有水量によって決まる。これは、後述するシミュ
レーションによって明らかとなった。さらに付着速度は
ステンレスなどの構造材表面と燃料集合体表面とでは異
なる。
【0096】以上の貴金属の注入処理において、図11
に示すように、ECPセンサ25bをサンプリング配管
21に設置し、エレクトロメータ60を用いて腐食電位
を計測することによりサンプリング配管21の内面に付
着する貴金属の量を評価する。エレクトロメータの入力
の一方はサンプリング配管21にグランドする例を示し
た。これらの構成は炉心13や下部プレナム15の場合
も同一である。
【0097】図12(a)に示すように、処理時に炉水
の水素が酸素に対して過剰(モル比が化学量論比で水を
生成する値である2を越える場合)に存在しない場合に
は、SUS304の腐食電位は貴金属の付着によって上
昇することが図6の計算結果から示される。本願発明で
は腐食電位の上昇量から貴金属の付着量を推定すること
ができる。これは、これまでの従来技術では指摘された
ことはなく、発明者らの新たな知見に基づくものであ
る。また、処理時に水素が酸素よりも過剰に存在する場
合、図12(b)に示すように、腐食電位はSUS30
4と比較して大きく低下する。従来技術ではこの特性を
用いるものである。本願では、これらの貴金属の付着し
たSUSなどの構造材の腐食電位特性を用いて、実測値
と計算とを組み合わせることで多種多様な水質,付着量
で迅速に付着量を推定することが特徴である。
【0098】そこで、このような腐食電位の測定値か
ら、図13に示す手順に従って付着量を評価する。EC
Pセンサ25bの置かれた腐食電位測定部の配管径は設
計条件として既知である。沸騰水型原子炉運転時に、酸
素濃度,過酸化水素濃度,水素濃度のほかpHが水質測
定系20bによる測定により与えられる。腐食電位がE
CPセンサ25aのように炉内に近い場合や、ECPセ
ンサ25c炉内などの測定できない部位である場合に
は、酸素濃度,過酸化水素濃度及び水素濃度は解析によ
り推定することができる。また、測定部での炉水温度及
び炉水流速が実測から与えられ、配管径も既知であるの
で、付着量を仮定して腐食電位を計算する。次に、腐食
電位の実測値と比較し、大小関係から付着量の初期仮定
値について修正の要否が判定される。これを繰り返すこ
とにより実測を満足する付着量の値が決定される。これ
は図14においてある水質パラメータWに対して実測値
の腐食電位がφであるとき、計算に用いた付着量がそれ
ぞれMA ,MB 及びMC の場合には腐食電位の値はEC
A ,ECPB 及びECPC となるので、φとなる結果
がでるまで付着量を変化させて付着量Mを求めるもので
ある。水質パラメータとは、付着処理時の酸素濃度,過
酸化水素濃度,水素濃度及びpHである。導電率そのも
のは腐食電位には影響しない。導電率の上昇はイオンの
存在を意味するが、炉内に存在するイオンの大部分は腐
食電位に大きな影響を与えることはない。銅イオンは腐
食電位を上昇させるが貴金属への作用は無視できる。
【0099】図15には、付着量推定の別の手順を示し
たものである。図13と同様に、腐食ECPセンサ25
bの置かれた電位測定部の配管径は設計条件として既知
である。沸騰水型原子炉運転時想定される酸素濃度,過
酸化水素濃度及び水素濃度の様々な条件並びに測定部で
の炉水温度及び炉水流速を想定したケースについて付着
量をパラメータとして腐食電位を計算し、記憶装置に保
存する。腐食電位が実測されたとき、記憶装置内の計算
値と比較して、一致する付着量を探索する。完全に一致
する条件がないときは、最も近いケースから補間して付
着量を判定する。補間について図14を再び用いて説明
する。付着量がそれぞれMA ,MB 及びMC の場合につ
いて水質パラメータに対して腐食電位の値を計算し、W
のときに値がECPA ,ECPB 及びECPC であった
とする。実測値の腐食電位がφであるとき、付着量の推
定値Mは、例えば線形補完すると M=(MA−MB)(φ−ECPB)/(ECPA−ECPB)+
B で与えられる。
【0100】このようにして、処理時の時々刻々の付着
量が評価されると、貴金属化合物注入装置31への制御
指令を細かく出すことができて、付着量測定用試験片5
8のみを使用する場合より、精度良い付着処理が可能と
なる。また、付着量測定用試験片58を用いた分析回数
を減らすことができて、処理効率が改善される。
【0101】ここで、貴金属の付着した資料である付着
量測定用試験片58の分析手順について記す。付着量測
定用試験片58は、サンプリング配管そのものの切り出
し、サンプリング配管に付着量測定用の配管を継ぎ手に
より接続し分析時に取外す、あるいはオートクレーブ内
に試験片を設置し取出して分析するなどの方法で分析に
用いる。付着量測定用試験片58自体は、予め酸化皮膜
を内面に付けたものを工場などで作成し処理直前に設置
しても良いし、処理を行うに先立ってサンプリング配管
に設置し炉水を用いて酸化皮膜を付けてもよい。炉水を
用いた場合のメリットは炉内の構造物の曝されている環
境の中で付着の下地が形成されることである。したがっ
て、炉水に含まれている微量な化学種の取込みなどが生
じる。例えば、亜鉛注入をしているプラントでは亜鉛の
取込みが生じることになる。もちろん工場でも実機を模
擬した水質での付着量測定用試験片58の準備が可能で
ある。工場で作った物と実機で準備したものとを組み合
わせても良い。
【0102】長期間にわたり水素を添加した水質に曝さ
れた試験片を用いて付着量を測定する場合などでは、ス
テンレスの合金成分であるクロムの濃度が増加した酸化
皮膜が形成される。このようなクロム酸化物が濃縮した
酸化皮膜が形成されると、ステンレスの酸化皮膜が王水
(濃硝酸と濃塩酸の3:1混合物)などの酸に溶解しに
くくなる。これが分析に時間を要する原因となってい
た。多いときには8時間以上も王水で処理する必要があ
った。そこで、図16に示すように、酸化性酸である過
マンガン酸カリウム(KMnO4)溶液に貴金属の付着し
た資料である試験片を浸漬して酸化皮膜を酸化溶解する
ことを試みたところ、迅速な溶解が可能となった。図に
示した時間は目安であり、酸化皮膜の状態に依存する
が、遅くとも2時間程度である。いったん酸化溶解した
試験片の酸化皮膜をさらに王水で溶解して完全に酸化皮
膜のみを溶解する。溶解液の固体成分を繰り返しKMn
4 溶液による酸化溶解と王水処理して完全に溶解し、
このとき、残渣を追加で溶解するときに溶液と王水は体
積で1:1程度に混合する。この方法を用いないで、王
水のみで温度を上げるなどにより溶解速度を上げると、
ステンレスの母材の溶解が増えて、正確な分析ができな
くなる。本願ではさらに正確を期すために、メチルイソ
ブチルケトン(MIBK)と酢酸ペンチルの溶媒中で、
溶解液に高濃度で存在する鉄及び貴金属を分離する。皮
膜及び母材の溶解に由来する鉄は、貴金属濃度に対して
1000〜10000倍以上濃いので、FAASの場合
は試料の原子化を阻害するため、正確な吸光測定ができ
ない。ICP−MSでもプラズマ化に影響を与え、貴金
属濃度が不正確になる。鉄はメチルイソブチルケトンと
酢酸ペンチルの溶媒である有機溶媒中にほぼ完全に移動
する。クロムとニッケルも共存するが鉄のような妨害作
用は小さいので、分離された水溶液中の貴金属濃度をフ
レームレス原子吸光分析器(FAAS)で濃度測定する
ことで貴金属の付着量が得られる。これは誘導結合プラ
ズマ質量分析器でもよいが、FAASの方が検出機構が
塩酸に対して堅牢である。磁場を利用するゼーマン分離
型FAASではICP−MS並の感度が得られる。
【0103】試験片の分析から実際の付着量を測定する
ことと、計算により付着量を評価することを組み合わせ
ることでより精度の高い付着制御ができる。さらに、付
着量をシミュレーションすることを組み合わせると、付
着量の制御が効果的になる。
【0104】貴金属の構造材量への単位面積あたりの付
着量Mの時間変化は
【0105】
【数11】 dM/dt=kC …(数11) として表すことができる。また、貴金属の炉水中濃度C
の時間変化は
【0106】
【数12】 dC/dt=−αC+(−kC・S−kfC・Sf+V)/I …(数12) と表すことができる。ここでkは単位面積,単位濃度,
単位時間あたりの貴金属の構造材への付着速度係数、k
fは単位面積,単位濃度,単位時間あたりの貴金属の燃
料への付着速度係数、Cは貴金属の炉水中濃度、αは炉
浄化系での除去効率、Vは貴金属の注入速度、Iは保有
水量、Sは構造材表面積、Sfは燃料表面積である。し
たがって、(数11)をルンゲクッタギル法などの数値
解法を用いて解くと、処理時間の経過に対する貴金属の
付着の進行状態や貴金属の炉水濃度をシミュレーション
することができる。図17はシミュレーションの例を示
したものであり、注入速度を処理期間の途中で最大とな
るように増加させ、さらに終了時にかけて注入速度を線
形に減少させた場合である。もちろん注入速度は時間内
に一定であってもよいし、初期に高注入速度にし後で注
入速度を低下させてもよい。図17のような注入速度に
設定すると、白金及びロジウムの付着量はS字状に変化
することがわかった。処理の末期に付着変化が緩やかで
あるので、好ましい制御の方法の一つである。このとき
の貴金属の炉水濃度は図18に示す通りであり、注入速
度と相似な形をしている。錯体が付着の進行によって分
解し、それにより貴金属に配位していた配位子が放出す
ることによって生じる亜硝酸イオンなどの濃度について
も計算が可能である。ここでは、ロジウム錯体から亜硝
酸が放出されるとしたが、すぐに酸化されて硝酸となっ
ている可能性がある。そのため、硝酸の場合を考えて図
の右側軸では硝酸(NO3-)と括弧書きした。これらの
貴金属などの濃度は、注入速度,保有水量及び炉浄化系
容量によって処理時の濃度変化が影響を受ける。炉水の
pHと導電率も図19のように予測でき、同様の影響を
受けることがわかった。特に炉浄化系の影響は大きく、
貴金属濃度を注入速度に対して敏感に制御したときは、
炉浄化系を最大流量で運転する必要がある。しかし、除
去される貴金属量も多く、ロスが大きくなる。炉浄化系
流量を抑制または停止すると、貴金属の使用量は減る
が、その他の発生したイオン濃度が増加することにな
る。炉水の状態を実測と比較しながらシミュレーション
を用いて推定することにより、効果的な処理を行うこと
ができる。pHや導電率が管理基準を逸脱しないよう処
理工程を計画するとともに、適切な時期にアルカリや酸
の注入を実施したり、付着の進行のプラント個々の差を
把握したりすることができる。
【0107】シミュレーションを使って処理工程を制御
する例を示す。図20に示すように、本願の発明により
(数11)を用いて推定した付着量を処理時間に対してプ
ロットしながら処理工程の監視を行い、時刻10hでの
実測付着量がAであったとする。このとき、実測と推定
した付着量との差が小さかったため、そのまま処理を継
続した。次に時刻20hのとき、実測値Bと推定した付
着量の差がやや大きくなっていることが判明した。これ
は、付着配管の酸化皮膜や炉水の状態が微妙に個々の原
子炉で異なるために生じると考える。20h以降の付着
は、当初のシミュレーションでは点線で延長して示した
ように36h程度で処理が終了することが見込まれてい
た。そこで、20hでB量となるようにシミュレーショ
ンでの付着速度を修正することにより、20h以降の注
入工程を再計算したところ黒実線のように付着量は時刻
50hで目標付着量となることが推定された。時刻40
hでの付着量Cは推定した付着量と一致した。再計算し
たとおりに付着が進行すると判断されたので、40h以
降も再計算の注入設定のまま継続し、50hにおいて実
際に試験片の分析により付着量を確認したところ、実測
付着量Dは目標値となっていることが確認され、処理を
終了した。
【0108】この場合、B点での判断の仕方はもう一つ
ある。36hの予定が再計算では50h時間となること
が判明した時点で、予定通り36hで終了するためにシ
ミュレーションでの付着速度を修正したあと、36hで
終了するように注入速度を増加させ炉水濃度を増加させ
るとともに、タービンバイパス流量あるいは残留熱除去
系の冷却速度を落とすことで炉水温度を制御上昇させ
る。ここで、貴金属の注入速度の増加あるいは原子炉炉
水の温度の上昇の何れかのみを行っても、上記効果を達
成することはできる。このように、貴金属の注入速度あ
るいは原子炉炉水の温度を制御することにより、構造材
への付着を制御することが可能である。
【0109】この処理での実測付着量を図21に示す。
図21に示すように、ECPセンサ25bでの腐食電位
の測定値及び腐食電位の計算値を用いて推定する方法を
用いることにより、各時刻における注入速度の修正はよ
り効果的に行われる。この場合、時々刻々の付着量の値
が示されるので、それに応じて貴金属化合物注入装置3
1の注入速度や処理温度を制御し付着量を目標値に向け
て制御する。制御は通常、処理に携わる運転員の判断に
よって手動で操作が行われるが、シミュレーションを組
み込んだ制御装置を用いて、腐食電位測定するエレクト
ロメータ60の出力と貴金属化合物注入装置31を接続
し、フィードバックをかけることで自動制御してもよ
い。
【0110】手順は図22に示すように、始めに付着目
標値を0.5〜1μg/cm2の範囲で設定する。つぎに、
処理を行う原子炉状態を設定する。図9の原子炉停止運
転時に処理を行うとすれば、温度が150℃以下となっ
た、例えば、120℃と設定する。(数11)の手法を
用いて、初期にどのような濃度制御で付着を行うか予め
検討しておく。注入速度は図17のような三角のパター
ンと決める。このような注入速度となるように貴金属化
合物注入装置31の制御器53を設定する。貴金属溶液
の準備などが終わったことを確認して、貴金属を注入開
始する。処理の初期段階で(数11)のシミュレーショ
ンにより推定された付着量と腐食電位の実測値と計算値
から評価した付着量を比較し、計算入力((数11)の
シミュレーション用付着速度)の校正により実際の付着
量とシミュレーションが一致するように調整する。付着
量測定用試験片58の分析値を用いれば、なお精度が向
上する。ここで、全体の処理工程を再シミュレーション
し、目標とする付着量が限られた時間内で達成できるか
評価し、最適な工程を再検討する。これにより、現在の
設定値では、再シミュレーション結果と実測の間に大き
なずれ生じ、期間内に施工が終了しないと判断されれ
ば、注入速度を変更する。この状態でシミュレーション
結果と腐食電位測定値から推定した付着量の差が解消さ
れない場合は、原子炉運転温度の変更を行い、実際の付
着量が目標値に近づくようにシミュレーションを目安に
して付着処理を行う。温度を上昇させる側に変化させる
と、付着速度が急激に増加するので注意が必要である。
目標値に到達した時点で処理を終了する。終了にあたっ
ては、付着量測定用試験片58の分析により確認する。
【0111】同様の手順により、原子炉の運転中の付着
量の変化も評価することができる。図23は付着処理を
行った後の水素注入運転を示している。原子炉の起動時
に給水系が作動し始めるまで原子炉出力が増大してか
ら、給水系に水素注入装置24を用いて水素を注入す
る。さらに、水素注入装置24の仕様により給水系が作
動したあと、給水流量追従して原子炉出力が50%から
動作するものもあれば、100%で動き始めるものもあ
る。定格運転時の炉水の水素濃度は、あらかじめ、水素
注入量に応じた腐食電位の応答を調べた上で決定する。
水素注入量を小刻みに変化させて、各注入量でのECP
センサ25bやECPセンサ25cでの腐食電位を実測
する。さらに、炉内のSCC保護対象部位の酸素,過酸
化水素及び水素濃度を計算により推定し、それを本願に
記載した腐食電位の計算方法を用いて計算を行い、実測
箇所での腐食電位が計算により満たされていることを確
認した上で、炉内の腐食電位の計算値が−0.23VvsSH
E 以下となるような水素濃度を決定する。通常、注入水
素濃度は給水水素濃度により制御する。好ましくは、放
射性窒素によるタービン建屋の線量率上昇を抑制するた
めに給水水素濃度では0.4ppm以下、炉水中水素濃度で
は60ppb 以下とする。ただし、炉水中の水素濃度は部
位によって、また原子炉の運転状態によって変化し、タ
ービン建屋の線量率上昇に対して余裕のあるプラントで
は、最大の給水水素濃度は0.5ppm程度である。
【0112】今、ECPセンサ25cで腐食電位を測定
したところ、図24の白丸で示すような応答を示した。
すなわち、処理直後の運転サイクル初期では、水素を注
入しないときに0.2VvsSHE 程度の高い電位を示し、水
素を増加させると、0.2ppmの給水水素濃度付近で大き
く電位が低下し、水素濃度を増加させてもほとんど下が
りきった状態となる測定結果を得た。各測定において、
図13の手順にしたがって、測定部の温度,炉水流速,
酸素濃度,過酸化水素濃度,水素濃度,水力等価直径,
pHを用いて腐食電位を計算したところ、実測値を説明
することができる付着量は図のAの線で示される挙動を
とる0.5μg/cm2であると評価された。
【0113】さらに、処理から一年以上が経過した運転
サイクル末期では、ECPセンサ25cで腐食電位を測
定したところ、図24の黒丸で示すような応答を示し
た。すなわち、水素を注入しないときに0.2VvsSHE よ
り低い電位を示し、水素を増加させても、電位は下がる
が、サイクル初期のように0.2ppm付近でカギ型に折れ
曲がるような明確な応答を示さず、水素注入量に対して
だらだらと電位が低下する測定結果を得た。これを説明
することができる付着量は、同様に図13の手順で評価
したところ図のBの線で示される挙動をとる0.1μg
/cm2であると評価された。こうした、腐食電位の挙動
は図6に示したように、付着量の減少で表面被覆率が減
少したことが原因である。したがって、付着量が減少し
た状態で、SCC保護電位である−0.23VvsSHE まで
電位を低下するには、この腐食電位測定部位では現状で
は給水水素濃度は0.4ppm程度必要であると評価され
た。炉内の腐食電位が測定できない部位について同様の
付着量の場合の腐食電位を各部の酸素,水素,過酸化水
素濃度の解析結果を用いて計算したところ、やはり0.4p
pm 程度必要であることがわかった。したがって、次の
運転サイクルを通じてSCC保護電位である−0.23V
vsSHE まで電位を低下する効果を得るには付着量が不十
分と判断し、この運転サイクルでの原子炉停止時に再付
着処理をすることが必要と判断した。
【0114】図24の白丸及び黒丸で示した腐食電位の
測定値は、サイクルの各時期の1点を用いて評価しても
良いが、腐食電位や水質測定に伴う誤差の影響を減らし
評価制度を上げるため複数の点を用いて評価したほうが
良い。
【0115】炉内の付着量が与えられたときには、炉水
の酸素,過酸化水素及び水素濃度の解析値並びに温度,
炉水流速及び水力等価直径から腐食電位の値が計算で
き、炉内各部での貴金属付着による腐食電位低下効果を
評価できる。
【0116】また、貴金属処理に先立って、プラントの
仕様から水素注入時の炉内の水質(酸素,過酸化水素及
び水素濃度)の解析値と本願を用いて、付着量毎の腐食
電位を炉内全域にわたって計算し、炉内で腐食電位低減
効果を得るために必要な付着量を検討することもでき
る。
【0117】本願の方法は、貴金属あるいはステンレス
の特性を他の貴金属に置き換えても成立するものであ
る。例えば、貴金属,チタニアなどのチタン化合物,ジ
ルコニアなどのジルコニウム化合物,ニオブ化合物,タ
ンタル化合物,ハフニウム化合物あるいは光触媒(また
はこれら例示した化合物の組み合わせ)などをステンレ
スやニッケル基合金に付着させる場合でも、各付着物上
での電気化学反応の物性値を与え、付着量と電位低下の
関係を与えればよい。
【0118】
【発明の効果】本発明により、原子炉の構造材の表面に
付着した貴金属の量を短時間で知ることができ、構造材
料の表面に任意に精度良く貴金属を付着することができ
る。材料表面に適切な貴金属付着が確保され、付着後の
原子炉の運転時に水素を炉水に供給することにより、原
子炉プラント構造部材の腐食電位は炉内で著しく低下す
る。このような貴金属付着量評価方法と貴金属付着方法
が提供されるため、従来以上に応力腐食割れの防止効果
が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SUS304の表面に白金及びロジウムを各種
の条件で付着させたときにおけるSUS304の腐食電
位の応答を調べた結果を示す図。
【図2】白金を付着したSUS304の腐食電位が低下
する原理を示す説明図であり、図2(a)は白金を付着
していないSUS304の腐食電位を示す説明図であ
り、図2(b)は白金を付着させたSUS304の腐食
電位を示す説明図。
【図3】白金の電位を酸素濃度を一定にして水素濃度を
増加させたときについて解析し、水素/酸素モル比と腐
食電位の関係として示した図。
【図4】ステンレスのアノード分極曲線を示す特性図。
【図5】貴金属付着量が増加すると腐食電位が低下する
効果を示す特性図。
【図6】腐食電位と水素/酸素モル比の関係を貴金属被
覆率を変えて解析した結果を示す図。
【図7】貴金属被覆率と腐食電位の関係を示す図。
【図8】本発明の実施例である金属付着量評価方法が適
用される沸騰水型原子炉プラントの構成図。
【図9】本発明の実施例である金属付着量評価方法を沸
騰水型原子炉プラントに適用するときの白金及びロジウ
ムの各化合物の注入時期を示す図。
【図10】本発明の実施例である金属付着量評価方法を
沸騰水型原子炉プラントに適用するときの貴金属化合物
注入装置を示す説明図。
【図11】本発明の実施例である金属付着量評価方法を
沸騰水型原子炉プラントに適用するときの腐食電位測定
装置を示す説明図。
【図12】本発明の実施例である金属付着量評価方法を
沸騰水型原子炉プラントに適用するときの腐食電位の測
定値と水素と酸素の量の関係を示す説明図であり、図1
2(a)は水素が酸素に対して少ないときのSUS30
4の腐食電位を示す説明図であり、図12(b)は水素
が酸素に対して多いときのSUS304の腐食電位を示
す説明図。
【図13】本発明の実施例である金属付着量評価方法を
沸騰水型原子炉プラントに適用するときの付着量の評価
手順を示す説明図。
【図14】本発明の実施例である金属付着量評価方法を
沸騰水型原子炉プラントに適用するときの腐食電位の実
測値と腐食電位の解析結果との関係を示す説明図。
【図15】本発明の実施例である金属付着量評価方法を
沸騰水型原子炉プラントに適用するときの付着量の評価
を予め計算した腐食電位を記憶装置に保存し、測定値に
一致する計算値を探索して、付着量を決定する手順を示
す説明図。
【図16】試験片表面に付着した貴金属量を迅速に分析
する手順を表した説明図。
【図17】貴金属付着処理中の貴金属注入速度と付着量
の関係をシミュレーションにより推定した結果を示した
図。
【図18】貴金属付着処理中の貴金属濃度と貴金属錯体
の分解生成物濃度をシミュレーションにより推定した結
果を示した図。
【図19】貴金属付着処理中の導電率とpHをシミュレ
ーションにより推定した結果を示した図。
【図20】貴金属付着処理中の付着量の試験片分析値と
シミュレーションによる推定値との関係を示した図。
【図21】貴金属付着処理中の付着量の腐食電位から評
価した値とシミュレーションによる推定値との関係を示
した図。
【図22】付着量の腐食電位からの評価値とシミュレー
ションによる付着量の推定値とを用いた貴金属付着処理
の手順を示した図。
【図23】付着量処理後の原子炉の運転サイクルにおい
て水素を注入する時期を示した図。
【図24】原子炉の運転サイクルにおいて腐食電位の測
定値から付着量を推定することを示した図。
【符号の説明】
1…復水系、2…給水配管、3…原子炉圧力容器、4…
再循環系、4a…再循環ポンプ、5…主蒸気配管、6…
タービン、7…復水器、8…復水ポンプ、9…復水脱塩
器、10…低圧給水加熱器、11…高圧給水加熱器、1
2…給水ポンプ、13…炉心、14…ダウンカマ、15
…原子炉下部プレナム、16…ドレン配管、17…炉浄
化系配管、17a…再生熱交換器、17b…非再生熱交
換器、17c,43,47,55…ポンプ、18…炉浄
化系脱塩器、19,21,22,23,56…サンプリ
ング配管、20a,20b,20c,20d…水質測定
装置、24…水素注入装置、25a,25b,25c…
腐食電位(ECP)センサ、26…線量率モニタ、27
…蒸気抽出器、28…オフガス系、29…酸素注入装
置、30…再結合器、31…貴金属化合物注入装置、3
5…原子炉格納容器、36…炉心シュラウド、37…シ
ュラウドサポート、40,44…タンク、41,45…
配管、42,46…バルブ、52…貴金属注入配管、5
3…制御器、54…純水供給系統、57…誘導結合プラ
ズマ質量分析器、58…付着量測定用試験片、59…純
水保存タンク、60…エレクトロメータ。
フロントページの続き (72)発明者 植竹 直人 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株 式会社日立製作所電力・電機開発研究所内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉に
    おいて、前記原子炉構造材料の腐食電位の測定値と、前
    記原子炉構造材料の腐食電位の計算値とを用いて、前記
    原子炉構造材料の表面に付着した貴金属量を推定するこ
    とを特徴とする貴金属付着量評価方法。
  2. 【請求項2】炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉に
    おいて、前記原子炉構造材料の腐食電位の測定値と、記
    憶装置に保存した前記原子炉構造材料の腐食電位の計算
    値とを用いて、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴
    金属量を推定することを特徴とする貴金属付着量評価方
    法。
  3. 【請求項3】炉水に貴金属を注入したあとに水素を注入
    する沸騰水型原子炉において、前記原子炉構造材料の腐
    食電位の測定値と、前記原子炉構造材料の腐食電位の計
    算値とを用いて、前記原子炉構造材料の表面に付着した
    貴金属量を推定することを特徴とする貴金属付着量評価
    方法。
  4. 【請求項4】炉水に貴金属を注入したあとに水素を注入
    する沸騰水型原子炉において、前記原子炉構造材料の腐
    食電位の測定値と、記憶装置に保存した前記原子炉構造
    材料の腐食電位の計算値とを用いて、前記原子炉構造材
    料の表面に付着した貴金属量を推定することを特徴とす
    る貴金属付着量評価方法。
  5. 【請求項5】請求項1乃至4の何れかにおいて、前記原
    子炉構造材料の腐食電位の計算をするときに、貴金属の
    付着量と前記原子炉構造材料表面の貴金属被覆率の関係
    についてあらかじめ求めておき、前記原子炉構造材料の
    表面に付着した貴金属量を推定することを特徴とする貴
    金属付着量評価方法。
  6. 【請求項6】請求項1乃至5の何れかにおいて、前記原
    子炉構造材料の腐食電位の計算をするときに、炉水の酸
    素,過酸化水素,水素の各濃度,pH,測定部の炉水温
    度,測定部の炉水流速,測定部の水力等価直径及び貴金
    属付着量を入力として用いて、前記原子炉構造材料の表
    面に付着した貴金属量を推定することを特徴とする貴金
    属付着量評価方法。
  7. 【請求項7】水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉にお
    いて、前記原子炉構造材料表面への貴金属付着量を測定
    するに際し、貴金属の付着した資料を酸化性酸により酸
    化溶解処理をしたあと、王水により溶解し、さらに溶媒
    抽出により鉄を除去することを特徴とする貴金属付着量
    評価方法。
  8. 【請求項8】炉水に貴金属を注入したあとに水素を注入
    する沸騰水型原子炉において、前記原子炉構造材料表面
    への貴金属付着量を測定するに際し、酸化性酸により酸
    化溶解処理をしたあと、王水により溶解し、さらに溶媒
    抽出により鉄を除去することを特徴とする貴金属付着量
    評価方法。
  9. 【請求項9】請求項7又は請求項8において、前記酸化
    性酸が過マンガン酸イオンを含むことを特徴とする貴金
    属付着量評価方法。
  10. 【請求項10】請求項7乃至9の何れかにおいて、前記
    溶媒抽出に用いる溶媒がメチルイソブチルケトンと酢酸
    ペンチルの混合液であることを特徴とする貴金属付着量
    評価方法。
  11. 【請求項11】炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉
    において、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工
    程と、前記原子炉構造材料の腐食電位を計算する工程
    と、腐食電位の測定値と計算値から前記原子炉構造材料
    の表面に付着した貴金属量を評価する工程と、前記原子
    炉構造材料の表面に付着する貴金属量を貴金属の注入速
    度及び原子炉の運転条件とを用いてシミュレーションす
    る工程と、貴金属の注入速度あるいは原子炉炉水温度を
    制御する工程とを有することを特徴とする貴金属付着方
    法。
  12. 【請求項12】炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉
    において、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴金属
    量を評価する工程と、前記原子炉構造材料の表面に付着
    する貴金属量を貴金属の注入速度及び原子炉の運転条件
    とを用いてシミュレーションする工程と、貴金属の注入
    速度あるいは原子炉炉水温度を制御する工程とを有する
    ことを特徴とする貴金属付着方法。
  13. 【請求項13】炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉
    において、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工
    程と、前記原子炉構造材料の表面に付着した貴金属量を
    評価する工程と、前記原子炉構造材料の表面に付着する
    貴金属量を貴金属の注入速度及び原子炉の運転条件とを
    用いてシミュレーションする工程と、貴金属の注入速度
    あるいは原子炉炉水温度を制御する工程とを有すること
    を特徴とする貴金属付着方法。
  14. 【請求項14】炉水に貴金属を注入する沸騰水型原子炉
    において、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工
    程と、前記原子炉構造材料の腐食電位を計算する工程
    と、腐食電位の測定値と計算値から前記原子炉構造材料
    の表面に付着した貴金属量を評価する工程と、貴金属の
    注入速度あるいは原子炉炉水温度を制御する工程とを有
    することを特徴とする貴金属付着方法。
  15. 【請求項15】炉水に水素を注入する沸騰水型原子炉に
    おいて、前記原子炉構造材料の腐食電位を測定する工程
    と、前記原子炉構造材料の腐食電位を計算する工程と、
    腐食電位の測定値と計算値から前記原子炉構造材料の表
    面に付着した貴金属量を評価する工程の後に、前記原子
    炉構造材料の表面に貴金属を付着する工程を有すること
    を特徴とする貴金属付着方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014020873A (ja) * 2012-07-17 2014-02-03 Ihi Corp 応力腐食割れ試験装置及び応力腐食割れ試験方法
JP2018004291A (ja) * 2016-06-28 2018-01-11 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 原子力プラント構成部材の応力腐食割れ抑制方法
JP2018155588A (ja) * 2017-03-17 2018-10-04 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 貴金属付着量の分析方法

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