JPH11291297A - 射出成形方法および射出成形型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 複数のバルブゲートを順次開放して溶融樹脂
を順次注入する射出成形において、成形後にランナーや
ゲートを切断する必要がなく、複雑な形状を有する大型
樹脂製品をも外観品質を損なうことなく成形することが
できる射出成形方法、およびこのような射出成形に用い
る射出成形型を提供する。 【解決手段】 成形品Ｐの使用状態において他部材によ
って隠蔽される部分に相当するキャビティ部位にバルブ
ゲート８を配設し、ランナーやフィルムゲートを用いる
ことなくバルブゲート８から溶融樹脂を直接キャビティ
Ｃ内に注入する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、とくに自動車のバ
ンパーのような大型・長尺の樹脂製品の成形に適用され
る射出成形方法、およびこのような射出成形に用いられ
る射出成形型に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】例えば、自動車のバンパーのような大型
・長尺の樹脂製品を射出成形するに際しては、ウエルド
品質を向上させるために、キャビティに通じる一体フィ
ルムゲート上に複数のバルブゲートを配設し、これらバ
ルブゲートの逐次開放によって溶融樹脂をキャビティ内
に順次流入させるカスケード法が採用されている。

【０００３】図５（ａ）は、このような大型樹脂製品と
して、自動車用バンパーの射出成形に用いる金型装置の
一例を示す断面面であって、図に示す金型装置１００
は、製品、すなわち樹脂バンパーＰの外面を形成するキ
ャビティ型１０１と、バンパーＰの内面を形成するコア
型１０２から主に構成され、これらキャビティ型１０１
とコア型１０２との間にバンパー形状をなすキャビティ
Ｃが形成されるようになっている。

【０００４】コア型１０２の側には、キャビティＣの長
手方向に沿ってランナーＲが形成されており、このラン
ナーＲはフィルムゲートＧを介してキャビティＣに連通
している。

【０００５】そして、キャビティ型１０１の側には、図
５（ｂ）に示すようにホットランナーブロック１０３
と、これに連結された３本のバルブゲート１０４が設け
てあり、これらバルブゲート１０４は、図６にも示すよ
うに、フィルムゲートＧを介してキャビティＣに通じる
前記ランナーＲの長手方向中央部および両端部に連結さ
れて、それぞれ第１ゲート１０４ａおよび第２ゲート１
０４ｂ，１０４ｃとなっている。これらバルブゲート１
０４は、油圧シリンダ１０５によって進退作動するバル
ブピン１０５ａを中空部内にそれぞれ備えており、各油
圧シリンダ１０５の作動によって各ゲート１０４ａ，１
０４ｂおよび１０４ｃがそれぞれ開閉されるようになっ
ている。

【０００６】バンパーＰの成形に際しては、まず、第１
ゲート１０４ａを開いた状態で射出成形機のノズルＮか
ら溶融樹脂を射出すると、溶融樹脂がスプルー１０６お
よびホットランナー１０３ａを経て、第１ゲート１０４
ａからランナーＲに流入する。そして、ランナーＲ内に
樹脂が充填された段階で、第２ゲート１０４ｂおよび１
０４ｃを開くようにしている。これによって、第２ゲー
ト１０４ｂおよび１０４ｃから注入された樹脂をランナ
ーＲ内の比較的高温・高圧状態の樹脂と円滑に融合させ
ることができ、フィルムゲートＧからキャビティＣに樹
脂を均一に流入させることができるようになる。

【０００７】成形完了後、手作業あるいは専用治具を用
いてフィルムゲートＧおよびランナーＲを成形品Ｐから
切り離すことにより最終製品が得られる。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなランナーＲおよびフィルムゲートＧを用いた射出成
形においては、フィルムゲートＧおよびランナーＲの切
り離し作業が繁雑であるばかりでなく、成形品Ｐの上端
部が平坦ではなく、例えば図７に示すように複雑な形状
を備えた成形品Ｐを射出成形する場合には、成形後のフ
ィルムゲートＧおよびランナーＲの除去が著しく困難で
あり、最終製品部に傷をつけたり、フィルムゲートＧを
切り残したりすることによって製品の外観品質を損なう
という問題点があり、このような問題点の解消が上記の
ような大型・長尺、かつ複雑な形状を備えた樹脂製品の
射出成形における課題となっていた。

【０００９】

【発明の目的】本発明は、カスケード法による従来の大
型で複雑な形状の樹脂製品の射出成形における上記課題
に着目してなされたものであって、成形終了後にゲート
やランナーを切断する必要がなく、複雑な形状を有する
樹脂製品をも外観品質を損なうことなく多点ゲートによ
る成形が可能な射出成形方法、およびこのような射出成
形に用いる射出成形型を提供することを目的としてい
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１に係わ
る射出成形方法は、複数のバルブゲートを順次開放して
溶融樹脂をキャビティ内に注入する射出成形方法におい
て、成形品の使用状態において他部材により隠蔽される
部分に相当するキャビティ部位にバルブゲートを配設
し、該バルブゲートを介して溶融樹脂をキャビティ内に
直接注入する構成とし、本発明に係わる射出成形方法の
実施態様として請求項２に記載された射出成形方法にお
いては、成形品が自動車用バンパーであって、グリルあ
るいはランプ取付部分に相当するキャビティ部位にバル
ブゲートを直接配設する構成としたことを特徴としてお
り、射出成形方法におけるこのような構成を前述した従
来の課題を解決するための手段としている。

【００１１】本発明の請求項３に係わる射出成形型は、
ホットランナーを経て固定型と可動型の間に形成される
キャビティに通じる樹脂流路を開閉する複数のバルブゲ
ートを備えた射出成形型において、成形品の使用状態に
おいて他部材により隠蔽される部分に相当するキャビテ
ィ部位を臨む位置に前記バルブゲートが配設してある構
成としており、このような射出成形型の構成を前述した
従来の課題を解決するための手段としたことを特徴とし
ている。

【００１２】本発明に係わる射出成形型の実施態様とし
て請求項４に記載された射出成形型においては、ホット
ランナーを形成するホットランナーブロックが固定型に
対してスライド可能に取付けてある構成とし、同じく実
施態様として請求項５に係わる射出成形型においては、
ホットランナーを形成するホットランナーブロック同士
が相対移動可能に接続されている構成とし、請求項６に
係わる射出成形型においては、成形品が自動車用バンパ
ーであって、グリルあるいはランプ取付部分に相当する
キャビティ部位を臨む位置にバルブゲートが配設してあ
る構成とし、さらに請求項７に係わる射出成形型におい
ては、成形品のグリルあるいはランプ取付部分が増肉さ
れるべく、当該部分に相当する部位のキャビティ幅が拡
大してある構成としたことを特徴としている。

【００１３】

【発明の効果】本発明の請求項１に係わる射出成形方法
においては、溶融樹脂をバルブゲートを介してキャビテ
ィ内に直接、すなわちランナーやフィルムゲートなどを
用いることなく注入するようにしているので、成形終了
後にこれらの切り離しが必要なく、平坦部が少ない複雑
な形状の成形品においても切り残しや切り過ぎによる外
観不良を避けることができると共に、成形品の使用状態
において他部材により隠蔽される部分に相当する位置に
バルブゲートを設けるようにしているので、ゲート口お
よびその周辺の外観不良部分を見えにくくすることがで
き、本発明による射出成形方法の実施態様として請求項
２に係わる射出成形方法においては、成形品が自動車用
バンパーであり、グリルあるいはランプ取付部分に相当
する位置にバルブゲートを直接配設するようにしている
ので、車体に搭載した場合に、これらグリルや、ヘッド
ランプ，テールランプなどによってゲート口周辺の外観
不良部分が隠蔽され、車両として目立たなくなるという
極めて優れた効果を得ることができる。

【００１４】本発明の請求項３に係わる射出成形型は、
上記構成、すなわちバルブゲートが成形品の使用状態に
おいて他部材によって隠れる部分に相当するキャビティ
部位に臨む位置に配設してある構成を備えているので、
成形終了後にランナーやフィルムゲート部分を切除する
必要がなく、したがってバルブゲートの配設部が平坦部
の少ない複雑な形状となっている成形品においても、切
り残しや切り過ぎによる外観不良を回避することができ
ると共に、他部材の配設によってゲート口周辺の外観不
良部を見えなくすることができるという優れた効果をも
たらすものである。

【００１５】本発明による射出成形型の実施態様として
請求項４に係わる射出成形型においては、溶融樹脂の流
入路を形成するホットランナーブロックが固定型にスラ
イド可能に取付けてあるので、ホットランナーブロック
の熱膨脹による変形が防止でき、ホットランナーブロッ
クの破損や、バルブゲートとの接合部からの樹脂漏れを
防止することができ、同じく実施態様として請求項５に
係わる射出成形型においては、ホットランナーブロック
同士が相対移動可能に接続されているので、ホットラン
ナーブロックが熱膨脹したとしても変形や破損が防止で
き、ホットランナーブロックの連結部からの樹脂漏れを
防止することができるという効果がもたらされる。

【００１６】さらに実施態様として請求項６に係わる射
出成形型においては、成形品が自動車用のバンパーであ
り、そのグリルあるはランプ取付部分に相当するキャビ
ティの部位を臨む位置にバルブゲートが配設されている
ので、成形品を車体に搭載した状態において、ゲート口
周辺の外観不良部分がグリルやヘッドランプによって隠
蔽され、車両としての外観が損なわれることがなく、請
求項７に係わる射出成形型においては、成形品のグリル
あるいはランプ取付部分が増肉されるように、これらに
相当する部分のキャビティ幅が拡大されているので、車
両としての外観に悪影響を及ぼすことなく、各バルブゲ
ートから注入された樹脂を比較的高温・高圧の状態で融
合させることができ、溶融樹脂の圧力分布が均一なもの
となって成形品の反りや歪みの発生を抑えることができ
るというさらに優れた効果がもたらされる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明を図面に基づいてさらに具体的
に説明する。

【００１８】図１ないし図３は、本発明の一実施例とし
て、自動車用の樹脂製バンパーの射出成形を説明するた
めのものであって、図１（ａ）は当該バンパーの成形に
用いる射出成形型の構造を示す縦断面図、図１（ｂ）は
そのホットランナーおよびバルブゲートの形状および配
置を示す斜視図である。

【００１９】すなわち、図に示す射出成形型１は、固定
型として成形品であるバンパーＰの外面を形成するキャ
ビティ型２と、その内面を形成する可動型としてのコア
型３から主に構成され、これらキャビティ型２とコア型
３の間にバンパー形状をなすキャビティＣが形成されて
いる。

【００２０】キャビティ型２の底面には、ヒータを備え
ると共に、図１（ｂ）に示すように、アルファベットの
Ｅ字状外観を有し、基端側にスプルー４を備えた第１の
ホットランナーブロック５がボルト６ａ，６ａによって
取付けられている。Ｅ字状に３つに分岐された第１のホ
ットランナーブロック５の先端側には、さらに３本の第
２ホットランナーブロック７がボルト６ｂ，６ｂによっ
てそれぞれ接続されると共に、これら第２ホットランナ
ーブロック７はボルト６ｃ，６ｃによってキャビティ型
２の側面に取付けられている。

【００２１】そして、各第２ホットランナーブロック７
の上端部には、それぞれバルブゲート８が連結されてお
り、これらバルブゲート８の先端部は、図２にも示すよ
うにキャビティＣの長手方向の中心部およびその両側の
所定位置であって、成形品として自動車用バンパーＰの
グリルおよびヘッドランプの取付位置に相当する部位に
直接開口しており、それぞれ第１ゲート８ａおよび第２
ゲート８ａ，８ｃを構成している。なお、これらバルブ
ゲート８の中空部内には、バルブピン９ａが設けてあ
り、第２ホットランナーブロック７に固定された油圧シ
リンダ９の作動に基づく進退作動によって各ゲート８ａ
ないし８ｃがそれぞれ開閉するようになっており、スプ
ルー４およびホットランナー５ａ，７ａを経て射出され
た溶融樹脂が、油圧シリンダ９の後退作動によってそれ
ぞれのゲート８ａ，８ｂ，８ｃからキャビティＣ内に流
入するようにしてある。

【００２２】また、第１ホットランナーブロック５およ
び第２ホットランナーブロック７は、前述のように、ボ
ルト６ｂ，６ｂにより互いに連結された状態で、ボルト
６ａ，６ａおよび６ｃ，６ｃによってキャビティ型２の
底面および側面にそれぞれ取付けられているが、これら
のボルト６ａないし６ｃを通すためのボルト孔５ｂおよ
び７ｂは、図３に示すように、ボルト径ｄｍｍに対して
（ｄ＋１）ｍｍの短径と、（ｄ＋５）ｍｍの長径を有す
る長孔としてあり、これによって、これらホットランナ
ーブロック５および７が昇温したとき、位置決めピン１
０およびバルブゲート８を中心とする熱膨脹が許容さ
れ、これらの熱変形を吸収してホットランナーブロック
５および７の破損や、接続部からの樹脂漏れを防止する
ことができるようになっている。

【００２３】このような構造の射出成形型１において
は、まず、第１ゲート８ａを開き、第２ゲート８ｂおよ
び８ｃを閉じた状態で、射出成形機のノズルＮから溶融
樹脂を射出する。そして、溶融樹脂がスプルー４および
ホットランナー５ａ，７ａを経て、第１ゲート８ａから
キャビティＣ内に流入し、第２ゲート８ｂおよび８ｃの
位置に到達した時点で第２ゲート８ｂおよび８ｃを開く
と、第２ゲート８ｂおよび８ｃから流入した樹脂が第１
ゲート８ａから流入した樹脂と融合し、一体となってキ
ャビティＣ内に充填されたのち、キャビティＣ内で冷却
・固化することによって成形品Ｐ、すなわち自動車用の
バンパーの成形が終了する。

【００２４】このようにして成形された成形品Ｐ、すな
わちバンパーは、図２にからも明らかなように、ランナ
ーやフィルムゲートに相当する部分がなく、これらの切
除作業が不要になると共に、平坦部の少ない複雑な形状
の成形品の場合にも、これらランナーやフィルムゲート
の切り残しや切り過ぎによる外観不良が生じることがな
い。また、バルブゲート８の配設位置は、前述のよう
に、成形品としてのバンパーＰのグリルおよびヘッドラ
ンプの取付位置に相当しているので、車体への搭載状態
において、ゲート周辺部に外観不良部分があったとして
もグリルおよびヘッドランプによって見えなくなり、車
体としての外観を損なうことがない。

【００２５】なお、この実施例においては、第１ゲート
および第２ゲートからなる３点ゲートによる射出成形の
例を示したが、本発明は、必ずしも３点ゲートのみに限
定されることはなく、成形品のサイズや形状によっては
さらに多くのバルブゲートを使用することも可能であ
る。

【００２６】また、本発明においては、例えばグリルや
ランプのような他部材を取付けることによって見えなく
なる部分にバルブゲート８を配設するようにしているの
で、当該部分の肉厚を増したとしても実質的に成形品の
外観に悪影響を与えることはない。したがって、図４に
示すように、成形品、つまりバンパーＰのグリルおよび
ヘッドランプ取付部分に厚肉部１１が形成されるように
キャビティＣの寸法を拡大し、当該部分にバルブゲート
８を配設することも必要に応じて好ましく、このように
なすことにより、第１ゲート８ａから流入した樹脂と、
第２ゲート８ｂ，８ｃから流入した樹脂とをより高温・
高圧状態で融合させることが可能となり、溶融樹脂の圧
力分布が均一なものとなって成形品の反りや歪み、ウエ
ルドの発生を抑えることができるというさらに優れた効
果がもたらされるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ） 本発明の一実施例に係わる射出成形型
の構造を示す縦断面図である。 （ｂ） 図１（ａ）に示した射出成形型におけるホット
ランナーブロックおよびバルブゲートの配置を示す斜視
図である。

【図２】図１に示した射出成形型における成形品（キャ
ビティ）に対するバルブゲートの位置関係を示す斜視図
である。

【図３】図１に示した射出成形型におけるホットランナ
ーブロックの取付け構造を示す斜視図である。

【図４】成形品の被隠蔽部に増肉部を設けた場合のバル
ブゲートとの位置関係を示す斜視図である。

【図５】（ａ） 従来の自動車バンパー用射出成形型の
構造を示す縦断面図である。 （ｂ） 図５（ａ）に示した射出成形型におけるホット
ランナーブロックおよびバルブゲートの配置を示す斜視
図である。

【図６】図５に示した射出成形型における成形品（キャ
ビティ）に対するフィルムゲート，ランナーおよびバル
ブゲートの位置関係を示す斜視図である。

【図７】複雑形状を備えた成形品の形状例を示す斜視図
である。

【符号の説明】

１ 射出成形型 ２ キャビティ型（固定型） ３ コア型（可動型） ５ａ，７ａ ホットランナー ８ バルブゲート Ｃ キャビティ

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数のバルブゲートを順次開放して溶融
   樹脂をキャビティ内に注入する射出成形方法において、 成形品の使用状態において他部材により隠蔽される部分
   に相当するキャビティ部位にバルブゲートを配設し、該
   バルブゲートを介して溶融樹脂をキャビティ内に直接注
   入することを特徴とする射出成形方法。
2. 【請求項２】 成形品が自動車用バンパーであって、グ
   リルあるいはランプ取付部分に相当するキャビティ部位
   にバルブゲートを直接配設することを特徴とする請求項
   １記載の射出成形方法。
3. 【請求項３】 ホットランナーを経て固定型と可動型の
   間に形成されるキャビティに通じる樹脂流路を開閉する
   複数のバルブゲートを備えた射出成形型において、 成形品の使用状態において他部材により隠蔽される部分
   に相当するキャビティ部位を臨む位置に前記バルブゲー
   トが配設してあることを特徴とする射出成形型。
4. 【請求項４】 ホットランナーを形成するホットランナ
   ーブロックが固定型に対してスライド可能に取付けてあ
   ることを特徴とする請求項３記載の射出成形型。
5. 【請求項５】 ホットランナーを形成するホットランナ
   ーブロック同士が相対移動可能に接続されていることを
   特徴とする請求項３または請求項４記載の射出成形型。
6. 【請求項６】 成形品が自動車用バンパーであって、グ
   リルあるいはランプ取付部分に相当するキャビティ部位
   を臨む位置にバルブゲートが配設してあることを特徴と
   する請求項３ないし請求項５のいずれかに記載の射出成
   形型。
7. 【請求項７】 成形品のグリルあるいはランプ取付部分
   が増肉されるべく、当該部分に相当する部位のキャビテ
   ィ幅が拡大してあることを特徴とする請求項６記載の射
   出成形型。