JP4394795B2 - 射出成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平滑な表面を有する薄肉板部の裏面に突部が設けられて成る成形品を、光輝材を含有した合成樹脂により成形する射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような成形品を成形型への溶融樹脂の注入によって一度に成形すると、突部側に先行して流れる溶融樹脂と、他の部分を遅れて流れる溶融樹脂との合流によって成形品の表面側にフローマークやウエルドラインが生じて成形品の外観を損ねることがあり、特に、アルミ箔、ガラスビーズおよびパールマイカ等の光輝材を含有した合成樹脂では、成形型内での樹脂の流動が比較的遅くなることによって上記フローマークやウエルドラインが成形品の表面側に生じ易くなる。
【0003】
このようなフローマークやウエルドラインの発生を防止する技術は、たとえば特開平4−37516号公報および特開平8−276453号公報等で既に知られており、これらの先行技術では、突部に対応する部分にガス圧を印加するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが上記各公報で開示された技術では、必要量のガス圧を所要位置に印加することが難しく、また成形型内で圧縮された状態にある樹脂中にはガス圧をかなり高めても圧入し難く、成形品の形状および成形型設計の上で大きな制約が加わることになる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、成形品の形状および成形型に大きな制約が加わることを回避して、フローマークやウエルドラインの発生を防止して成形品の外観を向上可能とした射出成形方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、平滑な表面を有する薄肉板部の裏面に複数の円筒状又は平板状の突部が相互に間隔をおいて設けられて成る成形品を、光輝材を含有した合成樹脂により成形する射出成形方法であって、前記複数の突部を連結部で互いに連結して成る、前記薄肉板部を含まない第1半成形品を射出成形する第1のステップと、前記薄肉板部を構成する薄板状の第2半成形品を前記第1半成形品に一体に接合するようにして射出成形する第2のステップと、前記第2のステップで得た成形品の、前記第1半成形品に相当する部分より、前記複数の突部を残して前記連結部だけを切除する第3のステップとを含むことを特徴とする。
【0007】
このような請求項1記載の方法によれば、第1のステップでは連結部で溶融樹脂の通路を確保するようにして複数の突部が連結部で一体に連結されて成る第1半成形品を射出成形することができ、第2のステップでは、薄肉板部となる薄板状の第2半成形品を射出成形しつつ第1半成形品に一体に接合するので、薄板状の第2半成形品の表面にフローマークやウエルドラインが生じることはなく、そして第3のステップでは、第2のステップで得た成形品の、第1半成形品に相当する部分より連結部を切除することで、成形品の外観を向上することができ、特に成形品における薄肉板部の厚みが薄い場合に有効である。しかもガス圧を印加するものではないので、成形品の形状および成形型設計の上で大きな制約が加わることはない。
【0008】
さらに請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成に加えて、固定型と、該固定型に対して進退可能な可動型とを備える成形型を準備し、第1半成形品に対応して固定型および可動型間に形成した第1キャビティに前記合成樹脂を注入して前記第1のステップを実行し、第1半成形品を前記成形型内に収納したまま前記可動型を固定型から所定距離離反せしめることによって前記第2半成形品に対応して前記成形型内に形成した第2キャビティに前記合成樹脂を注入して前記第2のステップを実行することを特徴とし、かかる方法によれば、固定型に対する可動型の進退位置を調節することで第1および第2キャビティをそれぞれ形成し、第1および第2半成形品を同一成形型内で射出成形することができるので、複数の成形型を不要とすることで成形型の設置スペースを少なくすることができ、設備費の低減を図ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面に示した参考例及び本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図5は参考例を示すものであり、図1は成形品の斜視図、図2は図1の2−2線に沿う方向から見た成形品の断面図、図3は第1のステップ実行時の成形型の縦断面図、図4は第2のステップ実行前の状態での図3に対応した成形型の縦断面図、図5は第2のステップ実行時の図3に対応した成形型の縦断面図である。
【0011】
先ず図1および図2において、この成形品5は、アルミ箔、ガラスビーズおよびパールマイカ等の光輝材をたとえば0.1〜7%含有したAASやAES等の合成樹脂により射出成形される第1半成形品6と、第1成形品6と同一材料により射出成形される第2半成形品7とが一体に接合されることで構成されるものであり、平滑な表面を有する板部8の裏面に、たとえばボスとして機能する円筒状の突部9や、たとえばリブとして機能する平板状の突部10が設けられて成る。
【0012】
第1半成形品6は、成形品5の板部8よりも薄い薄肉板部11と、該薄肉板部11の裏面から突出する前記突部9,10とを一体に有するようにして射出成形されるものであり、また第2半成形品7は、第1半成形品6の前記薄肉板部11と共同で前記板部8を構成する板状にして射出成形され、前記薄肉板部11の表面側に一体に接合される。
【0013】
このような成形品5を成形するために、図3で示すような成形型12が用いられるものであり、該成形型12は、固定型13と、該固定型13に対する進退を可能とした可動型14とを備える。
【0014】
固定型13には可動型14側に突出した突部15が一体に設けられ、可動型14には該突部15を相対摺動可能に嵌合せしめる嵌合凹部16が設けられる。また固定型13には、該固定型13の前記突部15ならびに前記可動型14の前記嵌合凹部16間に溶融合成樹脂を注入するためのゲート17が設けられるとともに、該ゲート17を開閉するためのピン18と、該ピン18を軸方向に駆動するシリンダ19とが設けられる。
【0015】
このような成形型12によって成形品5を成形するにあたっては、第1および第2のステップを順次実行するのであるが、先ず第1のステップでは、図3で示すように、第1半成形品6に対応した第1キャビティ20を固定型13および可動型14間に形成する。すなわち固定型13および可動型14間の間隔を、第1半成形品6における薄肉板部11の厚さt1に対応させるように、可動型14の進退位置を調節し、ゲート17を開いて溶融樹脂を第1キャビティ20に注入する。
【0016】
この第1のステップにより、薄肉板部11と、該薄肉板部11の裏面から突出する突部9,10とを一体に有する第1半成形品6が射出成形されることになる。而して前記薄肉板部11の厚さt1は、0.1mm≦t1≦5mmに設定されることが望ましい。
【0017】
上記第1のステップの実行後、たとえば1〜180秒だけ冷却した後、第2のステップを実行することになるが、この第2のステップでは、先ず図4で示すように、第1半成形品6を成形型12内に収納したまま可動型14を固定型13から所定距離離反せしめることにより、第2半成形品7に対応した第2キャビティ21を成形型12内に形成する。すなわち可動型14とともに移動した第2半成形品7の薄肉板部11と固定型13との間隔を、第2半成形品7の厚さt2に対応させるように可動型14の進退位置を調節し、図5で示すように、ゲート17を開いて第2キャビティ21に溶融樹脂を注入する。
【0018】
この第2のステップにより、第1半成形品6における薄肉板部11の表面側に一体に接合するようにして第2半成形品7が射出成形されることになり、この第2半成形品7の厚さt2は、0.1mm≦t2≦5mmに設定されることが望ましい。
【0019】
上記第2のステップの処理が終了した後には、たとえば1〜180秒だけ冷却した後、成形型12を開くことにより成形品5を得ることができる。
【0020】
次にこの参考例の作用について説明すると、光輝材を含有した合成樹脂により成形品5を成形するにあたっては、薄肉板部11と該薄肉板部11の裏面から突出する突部9,10とを一体に有する第1半成形品6を第1のステップで射出成形し、薄肉板部11と共働して成形品5の板部8を構成する板状の第2半成形品7を薄肉板部11の表面側に一体に接合するようにして第2のステップで射出成形するようにした。
【0021】
このような射出成形方法によれば、第1半成形品6において薄肉板部11の表面にフローマークやウエルドラインが生じていたとしても、薄肉板部11の表面を第2半成形品7で覆うことになるので、第2半成形品7の表面すなわち成形品5の表面にはフローマークやウエルドラインが残ることはない。したがって成形品5の外観を向上することができ、ガス圧を印加するものではないので、成形品5の形状および成形型12の設計の上で大きな制約が加わることもない。
【0022】
また第1のステップでは、固定型13および可動型14間に形成した第1キャビティ20に合成樹脂を注入するようにして第1半成形品6を成形し、第2のステップでは、第1半成形品6を成形型12内に収納したまま可動型14を固定型13から所定距離離反せしめることによって形成した第2キャビティ21に合成樹脂を注入し、第2半成形品7の成形ならびに第1半成形品6への一体接合を行なうようにしているので、複数の成形型を不要とすることで成形型12の設置スペースを少なくすることができ、設備費の低減を図ることができる。
【0023】
図6および図7は本発明の実施例を示すものであり、図6は成形品の斜視図、図7は成形品を構成する第1および第2半成形品の分解斜視図である。
【0024】
先ず図6において、この成形品5′は、アルミ箔、ガラスビーズおよびパールマイカ等の光輝材をたとえば0.1〜7%含有したAASやAES等の合成樹脂により成形されるものであり、平滑な表面を有する板部8の裏面に、たとえばボスとして機能する円筒状の突部9や、たとえばリブとして機能する平板状の突部10が設けられて成る。
【0025】
前記成形品5′の成形にあたっては、第1〜第3のステップを順次実行するものであり、第1のステップでは、図7で示すように、各突部9,10を連結部22で連結して成る第1半成形品6′を射出成形し、第2のステップでは、板部8を構成する板状の第2半成形品7′を第1半成形品6′に一体に接合するようにして射出成形し、さらに第3のステップでは、連結部22を切除する。
【0026】
この実施例は、成形品5′における板部8の厚みが薄いことにより、上記参考例と同様の成形方法を実行し得ない場合に有効であり、第1のステップでは連結部22で溶融樹脂の通路を確保するようにして複数の突部9,10が連結部22で一体に連結されて成る第1半成形品6′を射出成形することができる。また第2のステップでは板状の第2半成形品7′を射出成形しつつ第1半成形品6′に一体に接合するので、第2半成形品7′の表面にフローマークやウエルドラインが生じることはなく、第3のステップで連結部22を切除することで形成される成形品5′の外観を向上することができ、成形品5′の形状および成形型設計の上で大きな制約が加わることもない。
【0027】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、第1のステップでは連結部で溶融樹脂の通路を確保するようにして複数の突部が連結部で一体に連結されて成る第1半成形品を射出成形することができ、次いで、第2のステップでは、薄肉板部となる薄板状の第2半成形品を射出成形しつつ第1半成形品に一体に接合するので、薄板状の第2半成形品の表面にフローマークやウエルドラインが生じることはなく、そして第3のステップでは、第2のステップで得た成形品の、第1半成形品に相当する部分より連結部を切除することで、成形品の外観を向上することができ、特に成形品における薄肉板部の厚みが薄い場合に有効である。またガス圧を印加するものではないので、成形品の形状および成形型設計の上で大きな制約が加わることはない。
【0029】
さらに請求項2の発明によれば、複数の成形型を不要として成形型の設置スペースを少なくすることができ、設備費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例の成形品の斜視図である。
【図2】 図1の2−2線に沿う方向から見た成形品の断面図である。
【図3】 第1のステップ実行時の成形型の縦断面図である。
【図4】 第2のステップ実行前の状態での図3に対応した成形型の縦断面図である。
【図5】 第2のステップ実行時の図3に対応した成形型の縦断面図である。
【図6】 本発明の実施例の成形品の斜視図である。
【図7】 成形品を構成する第1および第2半成形品の分解斜視図である。
【符号の説明】
5′・・・成形品
6′・・・第1半成形品
7′・・・第2半成形品
8・・・板部
9,10・・・突部
11・・・薄肉板部
12・・・成形型
13・・・固定型
14・・・可動型
20・・・第1キャビティ
21・・・第2キャビティ
22・・・連結部

Claims (2)

  1. 平滑な表面を有する薄肉板部(8)の裏面に複数の円筒状又は平板状の突部(9,10)が相互に間隔をおいて設けられて成る成形品(5′)を、光輝材を含有した合成樹脂により成形する射出成形方法であって、
    前記複数の突部(9,10)を連結部(22)で互いに連結して成る、前記薄肉板部(8)を含まない第1半成形品(6′)を射出成形する第1のステップと、
    前記薄肉板部(8)を構成する薄板状の第2半成形品(7′)を前記第1半成形品(6′)に一体に接合するようにして射出成形する第2のステップと、
    前記第2のステップで得た成形品(5′)の、前記第1半成形品(6′)に相当する部分より、前記複数の突部(9,10)を残して前記連結部(22)だけを切除する第3のステップとを含むことを特徴とする射出成形方法。
  2. 固定型(13)と、該固定型(13)に対して進退可能な可動型(14)とを備える成形型(12)を準備し、第1半成形品(6′)に対応して固定型(13)および可動型(14)間に形成した第1キャビティ(20)に前記合成樹脂を注入して前記第1のステップを実行し、第1半成形品(6′)を前記成形型(12)内に収納したまま前記可動型(14)を固定型(13)から所定距離離反せしめることによって前記第2半成形品(7′)に対応して前記成形型(12)内に形成した第2キャビティ(21)に前記合成樹脂を注入して前記第2のステップを実行することを特徴とする請求項1記載の射出成形方法。
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