JPH1128036A - 羽化前甲虫の飼育床および飼育方法 - Google Patents

羽化前甲虫の飼育床および飼育方法

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JPH1128036A
JPH1128036A JP23659497A JP23659497A JPH1128036A JP H1128036 A JPH1128036 A JP H1128036A JP 23659497 A JP23659497 A JP 23659497A JP 23659497 A JP23659497 A JP 23659497A JP H1128036 A JPH1128036 A JP H1128036A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】甲虫特にクワガタムシ類の幼虫を、簡便な方法
により、死滅或いは奇形を生じさせることなく安定して
羽化させるとともに、相当の体長を有しつつも良形の成
虫を得るための飼育床と飼育方法を提供する 【構成】培地2にヒラタケなどの腐朽菌類菌糸を接種し
て適宜環境下で培養し、子実体ないし子実体原基4bの
形成が認められた段階で、多孔質の木質材、望ましくは
腐朽材3を乾燥させたものを飼育床内吸湿手段且つ幼生
の顎部ないし角部発達促進手段として埋設し、これをク
ワガタ類主体の羽化前甲虫幼生Sの飼育床1とし、幼生
を蛹化させ羽化に至るまで、菌糸生育に伴う増加水分に
よる浸潤状態を現出させずに飼育する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
【0002】本発明は、羽化前甲虫の飼育床および飼育
方法に関する。
【0003】昆虫、特に甲虫の中でもオオクワガタ、ノ
コギリワガタ、ヒラタクワガタ等は、雄の姿形が独特の
魅力を持ち、高い市場性を有する。特にオオクワガタ
は、僅かの大きさの違いが市場価値の大きな違いに直結
する。本発明は、オオクワガタを中心とする甲虫の羽化
前幼生、いわゆる幼虫の飼育に使用する飼育床および飼
育方法に関する。
【0004】
【従来の技術】
【0005】従来より甲虫、特にクワガタ虫の幼虫の飼
育には、マット飼育法、腐朽材飼育法、菌糸培養体飼育
法などが行われてきた。
【0006】なかでも菌糸培養体飼育法は、比較的近年
に出現したものであり、菌糸培養体飼育法、すなわち植
物遺体ないし植物繊維離解物、天然土ないし人工土、添
加物、栄養素、水分等より構成されるキノコ菌糸培地を
遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中にキノコ種菌を接
種し菌糸を育成させたものを幼虫の飼育床として利用す
るものである。
【0007】
【解決すべき課題】
【0008】マット飼育法は、朽木や腐葉等を土質化さ
せたものを飼育床マットとして使用するもので、飼育床
製造コストが廉価に抑えられる反面、幼虫の生育に必要
な栄養素に乏しく、良形の成虫が得られにくい、という
課題があった。
【0009】腐朽材飼育法では、幼虫が硬質の餌である
腐朽材を食べることが、クワガタムシの顎や雄の角の発
達を助長し、小ぶりながらもがっちりとした良形のもの
が得られる反面、幼虫の成長に必要とされる栄養分が不
足がちになり、大きな成虫が得にくく、飼育に手間がか
かる点が課題とされていた。
【0010】上記2種の従来技術と比較すれば、菌糸培
養体飼育法は、幼虫の必要とする栄養分が多いため、相
当の体長がある大きな成虫になる。しかしその反面体幅
が細く、良形とはなりにくく、また菌糸の成長が加水分
解作用を伴うため、飼育床内が水分過多、云うなれば浸
潤状態となり、蛹から成虫になるときに水分の浸潤によ
り死ぬものや、飼育床の脆弱さにより蛹室が押しつぶさ
れ、これによって成虫の奇形が多く出現するという課題
があった。
【0011】このような課題を解決するために従来試み
られてきたことは、水分浸潤状態を改善するために、飼
育床容器の底部に排水孔を穿設することであったが、こ
の方法では排水孔より菌糸成長や幼虫の成育に有害とな
る雑菌が侵入しやすい、という課題があった。
【0012】本発明はこのような課題にかんがみ、甲虫
特にクワガタムシ類の幼虫を、簡便な方法により、死滅
或いは奇形を生じさせることなく安定して羽化させると
ともに、相当の体長を有しつつも良形の成虫を得るため
の飼育床と飼育方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題解決のための手段】本発明は、上記課題解決の主
要手段として、植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土
ないし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成される
キノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中
にキノコ種菌を接種し菌糸を育成させた羽化前甲虫の飼
育床において、溜水除去孔を容器底部に穿設することな
く、吸湿手段を前記羽化前甲虫飼育床中の容器内下方に
備設した構成、並びにこのような飼育床において、塊状
ないしチップ状腐朽木ないし木質植物遺体を埋設した構
成としている。
【0014】上記吸湿手段は、培地充填容器の下部ない
し底部に埋設された吸湿性に富む多孔性木質材、例えば
羽化前甲虫飼育床に埋設される塊状ないしチップ状腐朽
木ないし木質植物遺体であってこれらを乾燥させたもの
であれば、吸湿手段であると同時に良形の成虫を育成す
る課題解決手段ともなりうる。上記多孔性木質材が、甲
虫蛹室よりやや大きめの洞状部分を有すれば、蛹室の保
全のための課題解決の手段となりうる。
【0015】上記課題解決の手段において、飼育床中に
接種されるキノコ菌種は、シイタケ、ヒラタケ、エノキ
タケ、ナメコ、カワラタケなどの腐朽性菌類とされ、そ
の飼育床にて飼育される対象となるものは、主としてク
ワガタ類甲虫の羽化前幼生、いわゆるクワガタムシの幼
虫である。
【0016】このような課題解決手段となる飼育床に
て、主としてクワガタ類甲虫、特に高い市場性を有する
オオクワガタの幼虫を飼育するわけであるが、その際に
は、上記のヒラタケ菌種をはじめとする腐朽性菌種種菌
を、後に幼虫の飼育床とする培地に接種して適宜環境下
で熟成、即ち菌糸を良好に育成させ、子実体の発生ない
しは子実体原基形成が視認可能となった時点で、クワガ
タムシ類の幼虫をこれに移植する。
【0017】上記乾燥腐朽木を典型例とする飼育床内埋
設物の水分含有割合は、該飼育床内埋設物の無水状態重
量比にして、飼育開始時において0.80以下、以後1
ヶ月後時点において1.00以下、2ヶ月後時点におい
て1.35以下、3ヶ月後時点において1.60以下の
範囲に維持されれば、ほぼ課題解決の手段となる飼育方
法となるものである。
【0018】特に望ましいのは、上記飼育床内埋設物の
水分含有割合が、該飼育床内埋設物の無水状態重量比に
して、飼育開始時において0.15〜0.60、以後1
ヶ月後時点において0.30〜0.90、2ヶ月後時点
において0.35〜1.15、3ヶ月後時点において
0.75〜1.50の範囲に維持される飼育床状態であ
る。
【0019】
【作用】一般に腐朽性菌類にあっては、菌糸の成長が進
むにつれ、その生化学的作用、特に加水分解作用により
培地内、即ち飼育床内にはかなりの水分が生じるが、本
発明の主要作用効果を略述すれば、上述の飼育床構成、
飼育方法により、生じる水分は吸湿手段に吸収されるた
め、飼育床内が浸潤状態となるような状況は生じにくく
なるということである。
【0020】この作用につき、さらに詳述すると、腐朽
していない木質材は、木の道管、仮道管中に水分を吸水
できるが、木質繊維質層には、多量の水分を保持するこ
とができない。しかし腐朽が進むと木質材中に無数の間
隙ができ、いわゆる多孔質となるため、吸湿力、水分保
持能力は頗る良好となる。従って多孔質の木質材であれ
ば、例えばピートモスなど、培地素材となりうる木質素
材も、菌糸或いは甲虫幼生の生育に適したpH度を整
え、必要に応じて硬質塊状とすれば、本発明の吸湿手段
となりうる。
【0021】絶対乾燥腐朽材は、乾燥重量の4〜5倍の
水分を含むことが可能であるが、腐朽が進んでいない木
質材の場合、飼育床容器内で徐々に腐朽がすすみ、その
生化学的作用として加水分解がともなう。そのため菌糸
成長により生じる水分に加えてさらに余分な水分が生じ
るため、本発明の吸湿手段とするにはやや適しない。
【0022】しかし腐朽が進んだ木質材は、本発明で使
用される腐朽性菌類が順調な生育を行うために必要な栄
養に乏しく、腐朽の進行度もこれに応じて小さいものに
留まり、余分な水分産出量は僅かなものであるため、本
発明においては有効な吸湿手段となりうる。ちなみに、
木質材中の菌糸体も、その内に多くの微小間隙を有する
ため、水分を良好に保持しうる。
【0023】本発明にて羽化前甲虫の飼育床となるもの
の典型例は、少なくとも2種類挙げることが可能であ
る。
【0024】その第1は、木粉に添加栄養剤として小麦
粉、ふすま、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等を加え適度な
水分で加湿し培地とするものである。
【0025】本発明で用いられる腐朽材には、ナラ、ク
ヌギ、カシ、シイ、シデ、ブナ、エノキなどの広葉樹の
原木に、ヒラタケ、シイタケ、エノキタケ、ナメコ、カ
ワラタケ他の腐朽性菌を接種し、これら菌類の菌糸が木
材中に十分に生育し腐朽度が進んだもの、望むらくは、
菌類子実体を1〜数回腐朽材中より発生させ収穫を経た
ものを用いるものがよい。このような腐朽度の進んだ木
質材、いわゆる腐朽材を乾燥させ、腐朽材中の水分含量
が腐朽材乾燥重量比70〜90パーセント以下にしたも
のを使用する。
【0026】このようにして得られた腐朽材を容器に入
る大きさに切り、容器の下方に置設し、その側面、上面
に上記培地を充填する。本発明飼育床の飼育箱となる容
器は、フィルターの付いた耐熱状のものが望ましい。加
熱殺菌・冷却後に上記培地に本発明で使用される腐朽性
菌類種菌を接種し、適宜環境下で菌糸培養を行い50〜
120日前後経過後、子実体或いは子実体原基が視認さ
れる程度に菌糸生育が進んだ時点で、これを羽化前甲虫
の飼育床として使用する。。
【0027】第2の方法は、前記培地で培養した菌をそ
のまま使用するものである。腐朽材も前記第1の方法の
ものと同様に乾燥腐朽材を使用する。ここで用いられる
腐朽材は、培地とは別に加熱殺菌しておき、冷却後無菌
室内で滅菌した容器に別に殺菌した乾燥腐朽材を下部に
入れ、その側面・上部に菌糸生育の進んだ菌糸塊状の培
地を充填し、さらに20〜30日間培養期間経過後の時
点で、これを羽化前甲虫の飼育床として使用する。
【0028】羽化前甲虫の前期幼生、いわゆる幼虫は、
上記飼育床に移植され、環境条件等を生育に適したもの
に整えてやると、飼育床中に豊富に存在するキノコ菌糸
を食し、順調に成長してゆく。キノコ菌糸には、幼虫の
成長に必要な栄養分が多量に含まれているからである。
【0029】幼虫生育過程においても、キノコ菌糸はそ
の成長に伴う生化学的作用として、木粉や澱粉を加水分
解し、最終生成物である水を大量に産出し、容器内に水
過飽和の状態、いうなれば浸潤状態を現出させる。この
ような水浸潤状態下においては、甲虫の幼虫は、蛹〜成
虫になる過程で羽化不全、或いは呼吸不全、病原微生物
の繁殖等の原因で死んでしまうことが多い。
【0030】本発明の発明者は、このような水過飽和、
浸潤状態に陥らないためにはどのようにすればよいか、
また甲虫の幼虫が順調に生育するための飼育床の湿潤状
態環境はいかようなものか、ということにつき研究を重
ねた結果、乾燥した腐朽材を菌糸培養体の下部に置き、
飼育床内の生化学的変化により作り出された水分を乾燥
腐朽材に吸収させることにより水過飽和を解決すること
に想到し、かつこの乾燥腐朽材をきのこ菌培養体と一体
化させ、その腐朽材の含有水分がほぼ70〜90重量パ
ーセント以下であれば、幼虫飼育の生理環境を保ち、幼
虫の死滅を防止しうることを発見した。この発見を産業
上利用可能な発明として完成させたのが、本発明であ
る。
【0031】乾燥腐朽木を典型例とする飼育床内埋設物
の水分含有割合は、該飼育床内埋設物の無水状態重量比
にして、飼育開始時において0.80以下、以後1ヶ月
後時点において1.00以下、2ヶ月後時点において
1.35以下、3ヶ月後時点において1.60以下の範
囲に維持されれば、ほぼ上記発見の内容に合致するもの
であり、理想的には、飼育床内埋設物の水分含有割合
が、該飼育床内埋設物の無水状態重量比にして、飼育開
始時において0.80以下、以後1ヶ月後時点において
1.00以下、2ヶ月後時点において1.35以下、3
ヶ月後時点において1.60以下の範囲に維持されるこ
ととすべきである。このような飼育床環境の維持は、室
温域、飼育床容器の大きさ、飼育床となる培地の量を適
宜選択すれば、容易かつ簡便になしうるものである。こ
の吸湿手段は、本発明で典型的に使用される例は、塊状
ないしチップ状の乾燥腐朽材であるが、このような硬質
の木質材は、飼育床内の吸湿手段としての作用を有する
のみならず、さらに第2の顕著な効果を奏するものであ
る。このような硬質木質材は、幼虫の成長に必要な栄養
素は乏しいものの、幼虫が好んで食するものであり、ま
た腐朽材中にキノコ菌糸が縦横に成長するため、一石二
鳥の効果がある。
【0032】またこのような効果のみならず、さらに顕
著な効果として、幼虫がこのような塊状ないしチップ状
腐朽木ないし木質植物遺体、すなわち硬質の木質材を食
すれば、幼虫の摂食運動量も増加し、顎部や体幅の発達
も良好となるため、羽化後成虫の角や顎の形成が頗る良
好となる。その結果、天然産の昆虫に勝るとも劣らぬ角
や顎を有し相当の体長と広い体幅を兼ね備えた立派な成
虫が得られる。
【0033】このようにして、飼育床内の湿潤状態環境
が整備されれば、培地が脆弱化せず、菌糸の成長による
培地内の物理的変動、或いは運搬時に生じる培地内の物
理的変動もおさえられるため、羽化前甲虫の後期幼生、
即ち蛹の過程において蛹室への衝撃や圧迫が抑止され、
従来生じがちであった羽化後成虫の奇形出現度合いも減
少する。
【0034】クワガタムシ等の甲虫の幼虫は、本能的に
上記のような蛹室への有害な衝撃が蛹期に加えられるこ
とを回避しようと、従来例においては一般に蛹室を飼育
箱壁面などの硬質部分に当接させて形成することが多い
が、本発明では腐朽木などの硬質木質材が、蛹室よりや
や大きめの洞状部分を備えたものであれば、成虫の奇形
の原因となる物理的衝撃も洞状部分の内部に加えられる
ことが少なく、幼虫にとっては絶好の蛹室形成場所とな
る。
【0035】
【実施例】 (第1実施例)本実施例で使用の飼育床内埋設腐朽木に
ついては、直径6〜7センチのナラの原木をシイタケの
榾木として使用し、これにシイタケ菌を植菌し、植菌後
16カ月経過後、4回浸水発生を行い、このようにして
十分腐朽腐朽度の進んだもの(含水率50〜60%)を
長さ5センチに輪切りしたものを使用し、これを乾燥手
段を用いて乾燥させ、体乾燥重量含水量比率を0.25
前後とした。
【0036】本実施例飼育床の下地となる培地について
は、ナラ:クヌギ=1:1の木粉に、10%小麦粉と5
%ふすま、0.05%グルタミン酸ナトリウムを加え水
分量が60%になるように構成した。耐熱性のある1リ
ットルポリプロピレン製容器の下部に、上記ナラ榾木を
乾燥させた乾燥腐朽材を置設し、その側面、上部に上記
培地を充填して加熱殺菌、冷却後、ヒラタケ菌を接種
し、適宜環境下で2ヶ月間培養したものを本実施例飼育
床として使用した。図1は、本実施例の幼虫飼育中の態
様を示す透視模式図である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】このような構成の本実施例飼育床につき、
飼育床内に埋設された乾燥腐朽材の水分含有割合の推移
を検証したのが表1のグラフである。表2のグラフは、
本実施例飼育床との比較の上で、非乾燥腐朽材を埋設し
た飼育床の腐朽材水分含有割合の推移を併せて検証して
みたものである。温度環境は、いずれも23℃としてい
る。
【0040】表1、表2に示されるように、飼育床内は
菌糸生育による加水分解作用により、水分が生じ、腐朽
材がこの産出水分を吸収していく過程が明確に認められ
る。表1に示されるように、乾燥腐朽材埋設群は、飼育
床として完成化後ほぼ6ヶ月間、良好な吸湿手段となる
ことを示し、6ヶ月後の時点においても飼育床内の目立
った浸潤状態は認められなかった。
【0041】これに対し非乾燥腐朽材埋設群は、飼育床
として完成化後4ヶ月の時点より吸水能力が低下してい
く過程が確認され、6ヶ月後においてはほぼ過飽和状態
となり、このような水分過飽和状態においては、飼育床
内の過剰水分の浸潤水位上昇が明確に認められた。
【0042】本実施例飼育床1は、完成品化時点におい
ては、図1に示されるように、培地素材2、埋設された
乾燥腐朽木3および生育したヒラタケのキノコ菌糸4a
より構成される。乾燥腐朽木3は、洞状部3aを備えて
いる。また飼育床1の表面にはヒラタケの子実体原基4
bの形成が認められる。
【0043】この飼育床1は、広口瓶状の耐熱性ポリプ
ロピレン製1リットル容器である飼育容器5に8分目よ
り9分目辺りまで充填され、その飼育床下方には乾燥腐
朽材3が置設されている。飼育容器5は、フィルタ付き
の蓋6を備えている。
【0044】この飼育床に移植された羽化前甲虫幼生
は、コクワガタの幼虫Sである。コクワガタの幼虫に限
らず、クワガタムシ類の幼虫は、硬質木質材を好んで食
するため、図1に示されるように腐朽木3の内部にひそ
んでいることが多い。しかしヒラタケ菌糸4は、その培
地素材2とともに、コクワガタ幼虫Sの優良な餌となる
ため、コクワガタ幼虫Sは、飼育床内を縦横に動き回
る。
【0045】その他の飼育環境、温度、暗度、湿度につ
いては、一般のクワガタムシ類幼虫の飼育方法に準じた
ものである
【0046】このような本発明の作用効果確認のための
対照群には、腐朽材を埋設せず上記同様にヒラタケ菌種
菌を接種し菌糸を生育させた培地のみからなるものを、
2ヶ月間同様に培養し、これの従来例飼育床として使用
した。
【0047】
【表3】
【0048】表3は、コクワガタ(0.3〜0.8g)
羽化前前期幼生、すなわち幼虫30匹づつを、室温18
℃で6ヶ月間飼育した後、蛹時の態様を示す透視模式図
である図2に示されるように、洞状部3a内で蛹化さ
せ、次に25℃に室温を上昇させ蛹Tを成虫にした結果
である。但し洞状部内3aで蛹室を作るか否かは個体に
よって異なる。飼育容器5の壁面に蛹室を形成する例も
多い。
【0049】この表3に示されるように、コクワガタ虫
の生存率は、腐朽材埋設群の方が高く、また成虫の奇形
出現率も低くなり、腐朽材を入れた本発明実施例群の優
位性が検証された。
【0050】ただ蛹化の時点以降の飼育床表面において
は、飼育床中の菌糸を幼虫が活発に食したため、図2に
示されるように、子実体の形成はもはや殆ど見られない
のが通常である。
【0051】(第2実施例)本実施例は、直径8〜9セ
ンチのクヌギ原木を榾木として、これにヒラタケ菌を接
種し、8ヶ月間菌糸培養した後、2回ヒラタケ子実体を
発生させ収穫を経たものを飼育床内埋設腐朽材とした。
この腐朽材を長さ9センチに切断したもの(含水量の対
腐朽材乾燥重量比0.90〜1.10)、即ち通常腐朽
材と、腐朽材を同様に切断し乾燥させたもの(含水量の
対腐朽材乾燥重量比0.20〜0.25)即ち乾燥腐朽
材とし、吸湿手段ないし埋設木質材とした。これらの腐
朽材は、殺菌後使用した。
【0052】一方ヒラタケ菌の培地については、ナラ:
クヌギ=1:1の木粉を用い、これに10%小麦粉と5
%ふすま、0.05%グルタミン酸ナトリウムを加え、
水分量が60%になるように水を添加し、これを培地と
した。この培地を加熱殺菌・冷却後、ヒラタケ菌を接種
して適宜環境下で2ヶ月間培養し、菌糸を生育させ、菌
糸培養体とした。
【0053】この菌培養体とは別に、殺菌しておいた
2.0リットルの容器へ、無菌室中で通常の腐朽材、乾
燥腐朽材の2種類の上記殺菌腐朽材下部に置設し、その
側面・上部に上記菌糸培養体を充填したのち、さらにこ
れを20日間再培養したのち羽化前甲虫幼生飼育床とし
て使用するのが、本実施例である。これら2種類の本実
施例の対照群として、腐朽材が入っていない菌培養体だ
けのものを作成し同様に羽化前甲虫幼生飼育床して用
い、本実施例の効果検証手段とした。
【0054】羽化前甲虫幼生として、本実施例では、オ
オクワガタの幼虫(3〜5g)各々20匹づつを、20
℃の室温中で7ヶ月間飼育した後、25℃に室温を上げ
飼育し蛹とさせたのち羽化させ成虫とした。その結果を
記したものが表4である。このような飼育期間中、同時
に容器中の水のたまり具合も観察した。
【0055】なお本実施例における飼育中の飼育床及び
幼虫の態様、及び蛹化の態様は実施例1に準じ、図1、
図2に示されるものとほぼ同様である。云うまでもな
く、蛹室は洞状部3a内に限られるものではない。
【0056】
【表4】
【0057】表4に示されるように、本実施例対照群の
場合、羽化することなく死亡する例が多く見られた。ま
た羽化を迎え成虫となっても、成虫の羽や足に奇形を有
するものが多く認められた。
【0058】本実施例において、対照群、腐朽材埋設
群、乾燥腐朽材埋設群のそれぞれの群について、飼育容
器5中の水分のたまり具合を観察したところ、対照群の
全てに、容器の中程以上に至るまで水分浸潤が視認され
た。通常腐朽材埋設群では、飼育容器5の中程まで水が
たまっているものが20例中13例あった。これに対し
乾燥腐朽材埋設群では、飼育容器5の下部に少量の水分
浸潤の認められたものが7例あるのみであった。
【0059】また蛹室内を観察してみると、対照群は非
常に水分が多く、飼育床の脆弱さゆえに崩壊しやすいの
がほとんどであったのに対し、通常腐朽材埋設群のもの
は、蛹室内が乾燥しているのが認められた。
【0060】このことからオオクワガタが蛹から成虫と
なる時期、即ち羽化の前後においては、蛹室の水分過多
が、死亡率の高さや奇形発生率の高さに大きく影響する
ものであると推察された。
【0061】
【表5】
【0062】表5は羽化を遂げたオスの成虫の全長が同
サイズのものを選び、虫体の横幅(最大長の部位)を計測
した結果である。両腐朽材埋設区の成虫は、横幅のある
がっちりとした成虫になることが検証された。
【発明の効果】以上詳述したように、本発明羽化前甲虫
幼生の飼育床及び飼育方法によれば、甲虫特にクワガタ
ムシ類の幼虫を、簡便な方法により、死滅或いは奇形を
生じさせることなく安定して羽化させるとともに、相当
の体長を有しつつも体幅のある良形の成虫を得るための
飼育床と飼育方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1実施例又は第2実施例の甲虫幼生飼
育中、幼虫飼育時の態様を示す透視模式図である。
【図2】本発明第1実施例又は第2実施例の甲虫幼生飼
育中、蛹時の態様を示す透視模式図である。
【符号の説明】
1 飼育床 2 培地 3 腐朽材ないし乾燥腐朽木 3a 洞状部 4a キノコ菌糸 4b 子実体原基 5 飼育容器 6 フィルタ付き蓋 S クワガタ幼虫 T クワガタ蛹

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土な
    いし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキ
    ノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中に
    キノコ種菌を接種し菌糸を育成させた羽化前甲虫の飼育
    床において、溜水除去孔を容器底部に穿設することな
    く、吸湿手段を前記羽化前甲虫飼育床中の容器内下方に
    備設したことを特徴とする羽化前甲虫の飼育床。
  2. 【請求項2】植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土な
    いし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキ
    ノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中に
    キノコ種菌を接種し菌糸を育成させた羽化前甲虫の飼育
    床において、該羽化前甲虫飼育床中に、塊状ないしチッ
    プ状腐朽木ないし木質植物遺体を埋設したことを特徴と
    する羽化前甲虫の飼育床。
  3. 【請求項3】吸湿手段が、培地充填容器の下部ないし底
    部に埋設された、吸湿性に富む多孔性木質材であること
    を特徴とする請求項1記載の羽化前甲虫の飼育床。
  4. 【請求項4】吸湿性に富む多孔性木質材が、羽化前甲虫
    飼育床に埋設される塊状ないしチップ状腐朽木ないし木
    質植物遺体であってこれらを乾燥させたものであるとと
    もに、該乾燥した状態の塊状ないしチップ状腐朽木ない
    し木質植物遺体が吸湿手段を構成することを特徴とする
    請求項1〜3のいずれか記載の羽化前甲虫の飼育床。
  5. 【請求項5】多孔性木質材が、甲虫蛹室よりやや大きめ
    の洞状部分を有することを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれか記載の羽化前甲虫の飼育床。
  6. 【請求項6】飼育床中に接種されるキノコ菌種が、シイ
    タケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナメコ、カワラタケなど
    の腐朽性菌類であることを特徴とする請求項1〜5記載
    の羽化前甲虫の飼育床。
  7. 【請求項7】飼育される羽化前甲虫が、クワガタ類甲虫
    であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の
    羽化前甲虫の飼育床。
  8. 【請求項8】植物遺体ないし植物繊維離解物、天然土な
    いし人工土、添加物、栄養素、水分等より構成されるキ
    ノコ菌糸培地を遮蔽可能な容器中に充填し、該培地中に
    キノコ種菌を接種し、適宜培養温度で菌糸を育成させ、
    このようにして製造された飼育床に、孵化後間もない甲
    虫幼生を移植し、適宜飼育温度で飼育する羽化前甲虫の
    飼育方法において、前記飼育床を請求項1、3〜5のい
    ずれか記載の構成とし、これに請求項6記載の腐朽性菌
    種種菌を接種して適宜環境下で熟成、即ち菌糸を良好に
    育成させ、子実体の発生ないしは子実体原基形成が視認
    可能となった時点を飼育開始時即ち甲虫幼生移植適当時
    とし、請求項1、3〜5のいずれか記載の飼育床内埋設
    物の水分含有割合が、該飼育床内埋設物の無水状態重量
    比にして、飼育開始時において0.80以下、以後1ヶ
    月後時点において1.00以下、2ヶ月後時点において
    1.35以下、3ヶ月後時点において1.60以下の範
    囲に維持される構成としたことを特徴とする羽化前甲虫
    の飼育方法。
  9. 【請求項9】請求項1、3〜5のいずれか記載の飼育床
    内埋設物の水分含有割合が、該飼育床内埋設物の無水状
    態重量比にして、飼育開始時において0.15〜0.6
    0、以後1ヶ月後時点において0.30〜0.90、2
    ヶ月後時点において0.35〜1.15、3ヶ月後時点
    において0.75〜1.50の範囲に維持される構成と
    したことを特徴とする請求項8記載の羽化前甲虫の飼育
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100499853B1 (ko) * 2004-11-30 2005-07-07 남제주군 흰점박이 꽃무지 풍뎅이 유충의 대량 증식방법
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CN105638583A (zh) * 2016-04-08 2016-06-08 泰山医学院 一种从饲养介质中快速分离家蝇蛹的方法
CN108174827A (zh) * 2018-02-27 2018-06-19 福建农林大学 一种潜叶蝇饲养收集装置及其使用方法
CN109819946A (zh) * 2019-04-09 2019-05-31 青川县唐家河野生资源开发有限责任公司 一种组织蜜蜂高效交尾群的方法及装置

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