JPH11273940A - マグネットローラーの製造方法 - Google Patents

マグネットローラーの製造方法

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JPH11273940A
JPH11273940A JP31318398A JP31318398A JPH11273940A JP H11273940 A JPH11273940 A JP H11273940A JP 31318398 A JP31318398 A JP 31318398A JP 31318398 A JP31318398 A JP 31318398A JP H11273940 A JPH11273940 A JP H11273940A
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JP
Japan
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magnet roller
ferrite particles
silane
ferrite
weight
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JP31318398A
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Masatoshi Hirai
正俊 平井
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TOCHIGI KANEKA KK
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
TOCHIGI KANEKA KK
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気特性上及び構造上の特性を可能な限り高
めるとともに、特性相互の調整をはかることにより、高
磁力で磁界均一性並びに真直性に優れ機械的強度も優れ
たバランスがとれたマグネットローラーの製造方法を供
せんとする。 【解決手段】 ポリアミド系樹脂、フェライト粒子、表
面処理剤を必須成分とするマグネットローラーにおい
て、酸化ビスマス0.1〜1.0重量%を含むフェライ
ト粒子のpHを10〜7に調整した後に表面処理剤、ポ
リアミド系樹脂と混練し、これを磁場が印加された成形
空間内で成形したことを特徴としている。するマグネッ
トローラーの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機やファクシ
ミリ、プリンタ等に使用される現像ローラーやクリーニ
ングローラー、搬送ローラー等に用いられるマグネット
ローラーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】複写機やファクシミリ、プリンタ等の電
子写真方式の現像装置には現像ローラーやクリーニング
ローラー、更には搬送ローラー等のマグネットローラー
が各種組み込まれている。マグネットローラーとしては
従来、焼結磁石を金属シャフトに貼り合わしたものが主
流であったが、形状の自由度が高く量産にも適し且つ低
コストである等の理由から、近年、合成樹脂バインダー
に磁性粉を配合した樹脂磁石材料を成形して得られるマ
グネットローラーに代わりつつあり、軸部も一体成形さ
れた製品も一般的となっている。このようなマグネット
ローラーには、磁気特性上及び構造上、次の内容が求め
られる。
【0003】先ず磁気特性上、求められる特性として
は、高磁力であること、磁極長手方向の磁力変化( 以
下、リップルと称す) が少なく、各磁極の磁力がマグネ
ットローラー全長にわたって均一であることが挙げら
れ、特に現像極長手方向磁力の均一性が重要視されてい
る。また、構造上、求められる特性としては、成形品歪
みに起因する反りがなく真直性を維持できること、自重
による撓みがないとともに衝撃が作用しても折損しない
機械的強度を有すること、等が挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらマグネットロー
ラーに求められる各特性はマグネットローラーを形成す
る樹脂磁石材料の内容及び成形方法によって主として決
まるが、前記磁気特性上の要求の全てを同時に満たすこ
と、更には磁気特性上の要求と構造上の要求の全てを同
時に満たすことは簡単ではない。例えば、高磁力化をは
かるにはフェライト含率を高めることが一般的には有利
とされているが、その一方でフェライト粒子の高含率化
は樹脂磁石材料の流動性を低下させるため、磁場中成形
時におけるフェライト粒子の配向度の低下要因となり、
フェライト含率を高めるだけでは磁粉含率アップに見合
うだけの磁力向上効果は得られなかった。
【0005】また流動性の低下は組成物中のフェライト
粉分布のバラツキを招き、マグネットローラーの磁力、
特に軸方向に沿った長手方向磁力が不安定となり、磁界
分布にリップルを発生させる原因ともなる。このように
高磁力化と磁界分布の均一化を両立させることは簡単で
はない。
【0006】また高磁力化と磁界分布の均一化の両立が
困難であるばかりでなく、これらとマグネットローラー
に求められる構造上の特性とを両立させることも簡単で
はない。例えば、高含率になると、流動性低下により成
形品中のフェライト分布のバラツキが大きくなるため通
常の射出成形では、成形品に部分的歪みが発生し、反り
が生ずる。また、流動性を高めすぎると軸体としての成
形品の強度( 以下、軸強度と称す) が低下し、使用途上
で折損等が発生するという問題が浮上する。
【0007】このように磁気特性上及び構造上の求めら
れる特性、即ち、高磁力であること、磁界分布が均一で
あること、反りがないこと、軸強度が高いこと、を全て
満たすことは容易ではなく、従来よりこれらを調整する
試みが為されており、例えばフェライト粒子の形状の選
定、フェライト粒子への表面処理、金属石鹸等の添加、
高温下での成形等が提案されているが、いまだ前記各特
性を総合的に満足できる範囲にバランス良く調整された
マグネットローラーは得られていない。
【0008】本発明はかかる現況に鑑みてなされたもの
であり、マグネットローラーに要求される磁気特性上及
び構造上の特性を可能な限り高めるとともに、特性相互
の調整をはかることにより、高磁力で磁界均一性並びに
真直性に優れ軸強度も優れたバランスがとれたマグネッ
トローラーの製造方法を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明者が検討したところ、これら課題は従来主とし
て検討されてきた、フェライト含率やバインダー樹脂の
種類等に対する検討のみでは不十分であり、フェライト
粒子の形状特性及び形状分布をより詳細に検討する必要
があり、更にまったく新たな視点としてフェライト粒子
のpHの検討も必要であるとの結論にいたった。
【0010】このような認識に立って完成した本発明は
次の内容を有する。請求項1記載の発明は、ポリアミド
系樹脂、フェライト粒子、表面処理剤を必須成分とする
マグネットローラーにおいて、酸化ビスマス0.1〜
1.0重量%を含むフェライト粒子のpHを10〜7に
調整した後に表面処理剤、ポリアミド系樹脂と混練り
し、磁場が印加された成形空間内で成形したことを特徴
とするマグネットローラーの製造方法である。
【0011】請求項1記載の発明は、フェライト粒子の
微粒子化を防止するためにフェライト粒子に適量の酸化
ビスマスを含有させ、且つフェライト粒子の親水性を制
御してフェライト粒子と表面処理剤との反応性を高める
ためにフェライト粒子のpH( ここで、フェライト粒子
のpHとは、JIS K 6221規格による測定値、
例えば、試料1gに対して10ミリリットルの割合で蒸
留水を加えたものを時計皿で覆い、15分間煮沸した
後、室温まで冷却し、傾斜法または遠心分離法によりそ
の上澄み液を除去して泥状物を残し、この泥状物の中に
例えばガラス電極pH計の電極を入れて測定したpHを
いう。) を一定の範囲に調整することが最大の特徴であ
る。酸化ビスマスはフェライト粒子の作製過程で配合す
る。例えば酸化鉄及び炭酸ストロンチウムと一緒に酸化
ビスマスを配合し、これらを焼成した後、粉砕する。焼
成過程でフェライト粒子の結晶化が進むが、酸化ビスマ
スがフェライト粒子中に0.1〜1.0重量%存在する
ことにより、結晶の成長が促進され、この結果、粉砕し
たときのフェライト粒子の微粒子化が抑制される。また
バインダー樹脂に配合する前のフェライト粒子のpHを
10〜7としていることにより、フェライト表面の親水
性が高まり、表面処理剤との未反応部分が減るため、表
面処理効果が安定し、高含率でありながら、高流動性、
高い軸強度を実現できる。
【0012】請求項2記載の発明は、ポリアミド系樹脂
の平均分子量が9000〜13000、平均粒子径が5
0〜250μmの範囲である請求項1記載のマグネット
ローラーの製造方法である。ポリアミド系樹脂の平均分
子量と平均粒子径をこのように設定することにより、フ
ェライト粒子との混合性が高まるとともに樹脂磁石材料
の流動性が高まり、磁粉分布の均一化と成形品の軸強度
が共に向上する。
【0013】請求項3記載の発明は、ポリアミド系樹脂
の配合量が8〜15重量%、フェライト粒子が85〜9
2重量%、表面処理剤が0.1〜2重量%である請求項
1または2記載のマグネットローラーの製造方法であ
る。ポリアミド系樹脂の平均重合度と平均粒子径をこの
ように設定することにより、フェライト粒子との混合性
が高まるとともに樹脂磁石材料の流動性が高まり、磁粉
分布の均一化と成形品の軸強度が共に向上する。
【0014】請求項4記載の発明は、フェライト粒子が
ストロチウムフェライトまたはバリウムフェライトであ
る請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネットロー
ラーの製造方法である。
【0015】請求項5記載の発明は、(粒子最大直径/
粒子厚さ)で定義されるフェライト粒子の板状比が2.
5以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のマグ
ネットローラーの製造方法である。フェライト粒子の扁
平度が小さいことにより、フェライト粒子のバインダー
樹脂への錬り混み性が向上し、樹脂磁石材料の流動性を
高めつつ強度低下を防ぐ効果がより高まる。
【0016】請求項6記載の発明は、表面処理剤が少な
くとも1種類のシラン系カップリング剤を含む複数の表
面処理剤からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の
マグネットローラーの製造方法である。複数の表面処理
剤を用いることにより、強度向上目的と流動性向上目的
のそれぞれに特化した表面処理剤を用いることができ
る。
【0017】請求項7記載の発明は、シラン系カップリ
ング剤がビニル系シラン、アミノ系シラン、エポキシ系
シラン、クローラー系シラン、メルカプト系シラン、ケ
チミン系シラン、メタクリロキシ系シランのうちから1
種または複数種選択されるものである請求項1〜6のい
ずれか1項に記載のマグネットローラーの製造方法であ
る。
【0018】請求項8記載の発明は、マグネットローラ
ーを成形する金型が、磁場が印加された成形空間を有す
るメイン金型と、この成形空間の長手方向にスライド可
能に装着された軸部形成スライド型とを有するものであ
る請求項1〜7のいずれか1項に記載のマグネットロー
ラーの製造方法である。このような成形金型を用いて成
形を行うには、先ず軸部形成スライド型が初期位置にあ
ることによってメイン金型内に形成された最小容積の成
形空間に対し樹脂磁石材料の注入を開始する。樹脂磁石
材料の注入にともなって軸部形成スライド型をスライド
させて成形空間を拡大させる。注入が完了した成形空間
内で成形品の冷却硬化が完了すると、この前記軸部形成
スライド型を成形空間を狭める方向にスライドさせて成
形品を押出して取り出す。このような軸部形成スライド
型をスライドさせながら成形する成形方法(以下、この
スライド型成形と称す)を採用した場合、磁気特性上及
び機械構造上の特性をバランス良く向上させる最適化効
果が一層顕著となる。
【0019】
【発明の実施の形態】次に本発明の詳細を実施例に基づ
き説明する。図1は本発明のマグネットローラーの製造
工程の概略を示す説明図である。マグネットローラーを
製造する工程は、フェライト粒子を作製する工程A、フ
ェライト粒子のpHを調整する工程B、樹脂磁石材料を
作製する工程C、マグネットローラーを成形する工程D
の4つの工程に大別できる。本発明はこれら各工程のそ
れぞれに特徴を有している。以下、各工程の概要と、各
工程における特徴について順に述べる。
【0020】フェライト粒子を作製する工程A 炭酸ストロンチウムまたは炭酸バリウム14〜16重量
%、酸化鉄84〜86重量%及び酸化ビスマス0.1〜
1重量%を混合したものを1100℃〜1250℃の高
温で焼成し、その後、粉砕してフェライト粒子を得る。
酸化ビスマスが含まれていることにより焼成時の結晶化
が促進されて結晶の大型化がすすみ、酸化ビスマスの配
合量が0.1〜1重量%であることによって、結晶化の
促進の程度が後述する粒径のフェライト粒子を得るのに
適した範囲に調整される。0.1重量%未満では、結晶
化促進効果が不十分であり、他方1重量%を越えると結
晶化が促進しすぎる。
【0021】粉砕によって得られるフェライト粒子は、
従来この種の用途に用いられるフェライト粒子に比べ
て、その扁平の度合いが小さい。このため、バインダー
樹脂内での移動に際しての抵抗が小さく磁場中成形に際
して配向度を高められる。具体的には図2で示されるよ
うな形状のフェライト粒子において粒子最大直径Rma
xと粒子厚さTとの比である板状比(Rmax/T)を
2.5以下に設定する。板状比が2.5を越えるとバイ
ンダー樹脂中のフェライト粒子の配向度がばらつきやす
くなり、リップルの原因となる。
【0022】フェライト粒子の大きさは平均粒子径が
1.2μm〜2.0μmの範囲となるように設定するこ
とが好ましい。この範囲であればバインダー樹脂への十
分な充填密度を確保でき、またフェライト粒子が小さす
ぎないことにより含有フェライトの磁力発現への寄与率
が高くなる。
【0023】フェライト粒子がこのような形状特性を有
することで、フェライト粒子のバインダー樹脂への錬り
混み性が向上し、フェライト粒子を高含率で充填するこ
とを可能にしながら、樹脂磁石材料の流動性低下を来す
こともなく、また軸強度の低下も来さずマグネットロー
ラーに求められる磁気特性上及び構造上の特性の全てが
実用上、好ましい範囲となる。
【0024】フェライト粒子のpHを調整する工程B 前記工程で得られたフェライト粒子は、次工程でのバイ
ンダー樹脂との混合に先だってそのpHを10〜7とな
るよう調整する。前記工程で作製された直後のフェライ
ト粒子はpHが11.5程度であり、親水性に劣る。p
H調整の目的はフェライト粒子表面の親水性を高め、次
工程での表面処理剤との反応を促進させて表面処理剤に
よる効果を安定させることにより、高含率でありながら
も、高流動性を実現するためである。pH調整の具体的
方法としては、水洗、薬剤中和の他、1ヶ月以上のエー
ジングが挙げられる。
【0025】樹脂磁石材料を作製する工程C pH調整がなされたフェライト粒子85〜92重量%と
表面処理剤0.1〜2重量%をバインダー樹脂であるポ
リアミド系樹脂を8〜15重量%及び添加剤と混合・混
練りする。ここで用いる表面処理剤としては、少なくと
も1種類のシラン系カップリング剤を含む複数の表面処
理剤からなるものを用いることが好ましい。カップリン
グ剤はフェライト粒子表面を改質してフェライト粒子と
バインダー樹脂との親和性を高めるものである。カップ
リング剤としては目的とする効果の異なる複数種類のカ
ップリング剤、例えば、樹脂磁石材料の流動性向上を主
目的とするカップリング剤と、成形物の強度向上を主目
的とするカップリング剤を併用することなどが考えられ
る。複数種のカップリング剤を用いることで、1種類の
カップリング剤に多くの機能を求める必要がなくなるた
めカップリング剤の選択の幅が広がる。
【0026】カップリング剤には、シラン系やチタネー
ト系のものが使用可能であるが軸部強度確保の理由から
少なくともシラン系のカップリング剤が1種含まれるこ
とが好ましい。シラン系カップリング剤の例としてはビ
ニル系シラン、アミノ系シラン、エポキシ系シラン、ク
ローラー系シラン、メルカプト系シラン、ケチミン系シ
ラン、メタクリロキシ系シラン等が挙げられる。カップ
リング剤の配合量は0.1重量%未満では、流動性向上
や強度向上効果が不十分であり、また1重量%を越えて
もそれ以上の効果の向上はないことから、0.1〜1重
量%の範囲から選択する。カップリング剤の他、可塑
剤、安定剤や滑剤、補強剤等も適宜使用される。
【0027】フェライト粒子の配合量は85〜92重量
%とする。85重量%未満ではマグネットローラーに要
求される磁気特性、特に表面磁力を実現するうえで不十
分であり、他方92重量%を越えると成形が困難とな
る。
【0028】バインダー樹脂としてはポリアミド系樹脂
であれば種々のものが使用できるが、例えばナイロン6
などが挙げられる。ナイロン6は流動性に優れるととも
にフェライト粒子との親和性にも優れ、且つ硬化後は、
高強度及び高硬質な成形物となるため使用に適してい
る。ナイロン6は粉末状態でフェライト粒子と混合・混
練りする。使用するナイロン6は平均分子量9000〜
13000であって且つその平均粒子径が50μm〜2
50μmのものを用いる。またその配合量は樹脂磁石材
料全体に対して8〜15重量%の範囲とする。平均分子
量が9000未満では強度が不足し、たわみも発生す
る。一方、13000を越えると流動性が低下する。ま
た平均粒子径が50μm未満では粉砕のコストが高くな
りすぎる。一方、250μm以上ではフェライト粒子と
の均一混合性が低下する。
【0029】マグネットローラーを成形する工程D このようにして得られた樹脂磁石材料を用いてマグネッ
トローラーを成形する。成形法としては、従来公知の磁
場配向射出成形法や磁場配向押出成形法等を採用しても
良いが、ここでは本発明者等が提案するスライド型成形
法が好適である。この成形方法は従来公知の磁場配向射
出成形法及び磁場配向押出成形法が抱える問題を解決す
べく本発明者等が提案しているものである。
【0030】例えば、磁場配向射出成形法には次のよう
な問題がある。 a)成形体の取り出しを成形体の長手方向に直交するエ
ジェクトピンで行うため成形体取り出し時に反りが生じ
易く、反りを抑制するためには冷却時間を長くしなけれ
ばならない。 b)空の状態のキャビティ(成形空間)の中へ溶融物を
注入するため、注入時のフローによって成形体表面上に
皺状の薄い固化膜が発生して表面粗度が粗くなってしま
い、ひいてはこれが表面近傍部分での磁性粉の配向乱れ
につながり表面磁束密度がばらつく。 c)空のキャビティ内に樹脂磁石材料を一挙に注入する
ためジェッティングや空気の巻き込み現象が生じやすく
成形体の均質性が損なわれやすく、表面磁力分布が乱れ
る。 d)射出成形法では樹脂磁石材料の十分な流動性が必要
であるため、フェライト含率を上げて高磁力化をはかる
ことに限界がある。
【0031】また、磁場配向押出成形法では次のような
問題がある。 a)射出成形法に比べれば生産性は高いとはいうもの
の、押出し物がバインダーとして熱硬化性樹脂や硬質の
熱可塑性樹脂を用いたものである場合、押出し線速を上
げることが難しく生産性向上に限界がある。 b)押出し物の溶融粘度が低い場合、サイジング金型が
必要となり、長手方向の外径の寸法精度を向上させるこ
とが難しい。 c)磁性粉を磁場配向させる場合、押出し時にダイス内
壁より受ける摩擦抵抗による磁性粒子の配向乱れやダイ
ス外での固化するまでにおける配向乱れのため、高配向
化が困難であり、高磁力化が難しい。
【0032】図3〜7として示すスライド型成形法は、
磁場配向射出成形法及び磁場配向押出成形法が抱える前
記各問題を解決したものであり、特に長手方向における
表面磁力が均一なマグネットローラーを得るうえで適し
ている。スライド型成形法の概略は次のようなものであ
る。
【0033】スライド型成形法では図3に示すように、
内部にマグネットローラーを成形するための成形空間2
を有し、周囲に永久磁石等の磁場発生器3を配置したメ
イン成形型1に、マグネットローラーの一端部を形成す
るためのスライド型4を前記メイン成形型1の軸方向に
スライド自在に装着した金型を用いる。そしてこの金型
を用いてマグネットローラーを成形するには、図4の初
期状態から図5に示すように、成形空間2内に溶融した
樹脂磁石材料5を注入し、樹脂磁石材料5の注入圧でス
ライド型4を図中左側に後退させながら磁場中でマグネ
ットローラーを成形する。成形物7が硬化したならば、
図6に示すように樹脂磁石材料5を射出注入する側の型
板6を取り外したうえ、スライド型4を前進移動させて
成形物7をメイン成形型の軸方向に押出して図7に示す
ように取り出すというものである。
【0034】この方法によれば、成形空間2の容積が、
溶融した樹脂磁石材料5の注入速度に合わせて拡大する
ため、溶融した樹脂磁石材料5が成形空間内で乱れるこ
とはない。このためフェライト粒子を効率的に配向させ
ることができ、マグネットローラーの長手方向における
表面磁力の均一化がはかれ、従来の射出成形法や押出成
形法によって作製されたものに比べて軸方向における磁
気特性が均質なマグネットローラーを得ることができ、
前記フェライト粒子の形状特性及びバインダー樹脂の特
性限定条件と組み合わせることにより、マグネットロー
ラーに求められる磁気特性及び構造上の特性の最適化が
よりはかられる。
【0035】
【実施例】本発明者等は、本発明において、フェライト
粒子のpH値及びバインダー樹脂の平均粒子径、平均分
子量の各要素が、成形後のマグネットローラーにおい
て、リップル、軸強度、反りに与える影響について試験
を行い、その特性を検証した。試験は次の手順にしたが
った。
【0036】先ず、試験に際して平均粒子径1.5μ
m、板状比2.0であって0.3重量%の酸化ビスマス
を含むフェライト粒子を用意した。次いでこのフェライ
ト粒子に対して、pH調整処理を施して表1として示す
ようなpHの異なるA,B,C,Dの4種類のフェライ
ト粒子を準備した。これらのうちA,Bは酸化ビスマス
0.1〜1.0重量%、pH10〜7の範囲であること
から請求項1で規定したフェライト粒子の数値範囲を満
たしており、他方、C,Dは満たしていない。
【0037】
【表1】
【0038】またバインダー樹脂としては表2において
a〜hで示す平均粒子径及び平均分子量の異なる8種類
のポリアミド樹脂( ナイロン6パウダー) を準備した。
これらのうちa,b,f,gは樹脂の平均分子量が90
00〜13000、平均粒子径が50〜250μmの範
囲であることから請求項2で規定するバインダー樹脂に
関する数値範囲を満たし、他方、c,d,e,hは満た
していない。
【0039】
【表2】
【0040】先ずフェライト粒子A,B及びバインダー
樹脂a,b,c,d,e,f,gをそれぞれ組みあわせ
たうえアミノプロピルジメトキシシラン及びアミノプロ
ピルトリエトキシシランの2種類の表面処理剤と混合・
混練りして樹脂磁石材料を得たのち、この樹脂磁石材料
を磁場が印加された成形空間内に注入してスライド型成
形によってマグネットローラーを得た。これらマグネッ
トローラーに関してリップル、軸強度、反りの各特性に
ついて評価した結果を表3に示す。尚、ここで「軸強
度」は、軸部を保持し60cmの高さから水平に落下さ
せたときに折損するか否かで評価した。
【0041】
【表3】
【0042】一方、前記フェライト粒子C,D及びバイ
ンダー樹脂c,d,e,hをそれぞれ組み合わせたうえ
前記と同様、アミノプロピルジメトキシシラン及びアミ
ノプロピルトリエトキシシランの2種類の表面処理剤と
混練して樹脂磁石材料を得たのち、この樹脂磁石材料を
用いて前記と同様、スライド型成形によりマグネットロ
ーラーを得た。これらマグネットローラーについても前
記と同様、リップル、軸強度、反りについて評価した。
結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】また、表面処理剤の使用種類数及び成形法
が前記各特性に与える影響についても評価を行った。評
価はフェライト粒子A,B,C,Dとバインダー樹脂
a,b,c,d,e,f,g,hのそれぞれを組み合わ
せたうえ、アミノプロピルトリエトキシシランと混練し
て樹脂磁石材料を得たのち、この樹脂磁石材料を磁場が
印加された成形空間を有する従来金型である射出成形金
型に注入してマグネットローラーを得た。これらマグネ
ットローラーについて前記と同様、リップル、軸強度、
反りについて評価を行った。結果を表5に示す。尚、表
3,表4,表5に記載された評価の基準は表6に示され
る。
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】表3からわかるように酸化ビスマスの配合
量及びフェライト粒子のpHが請求項1で規定する数値
範囲にあるフェライト粒子A,Bを用いた場合、リップ
ル特性、軸強度、反りのいずれの点についても実用上、
満足できる結果が得られ、そのなかでも平均粒子径及び
平均重合度が請求項2で規定した数値範囲内にあるバイ
ンダー樹脂a,b,f,gを用いたものは特に好ましい
結果が得られた。一方、表4に示すようにpHが請求項
1で規定する数値の範囲外であるフェライト粒子を用い
たものでは、リップル特性、軸強度、反りのいずれの点
についても実用上、満足できるものではなかった。また
その成形方法として従来の射出成形法を採用し、且つ表
面処理剤も1種類しか用いなかった場合は、表5に示す
ようにリップル特性、軸強度、反りのいずれの点につい
ても評価が下がった。但し、この場合であってもフェラ
イト粒子A,Bを用いたものは使用可能なレベルにあっ
た。
【0048】
【発明の効果】本発明のマグネットローラーの製造方法
は、その樹脂磁石材料に配合するフェライト粒子中に酸
化ビスマスを0.1〜1.0重量%含ませ、且つそのフ
ェライト粒子のpHを10〜7の範囲に調整しているの
で、酸化ビスマスの存在によりフェライト粒子の微粒化
を防止して抗磁力等の磁気特性を高めることができ、且
つフェライト粒子のpHが10〜7の範囲にあることに
よりフェライト粒子表面における親水性が高まり、表面
処理剤との未反応部分が減るため、表面処理による効果
が安定し、高含率でありながら、高流動性、高い軸強
度、真直性を実現でき、マグネットローラーとして要求
される磁気特性上及び構造上の特性がバランスよく実現
できる。
【0049】また請求項3記載のように、ポリアミド系
樹脂の平均分子量を9000〜13000、平均粒子径
を50〜250μmとした場合、フェライト粒子との混
合性が高まるとともに樹脂磁石材料の流動性が高まり、
磁粉分布の均一化と成形品の軸強度の増強をはかること
ができる。
【0050】請求項5記載のように、フェライト粒子の
板状比を2.5以下となして扁平度を小さくした場合、
フェライト粒子のバインダー樹脂への錬り混み性が向上
し、樹脂磁石材料の流動性を高めつつ強度低下を防ぐ効
果がより高まる。
【0051】請求項6記載の発明のように表面処理剤が
少なくとも1種類のシラン系カップリング剤を含む複数
の表面処理剤からなる場合、強度向上目的と流動性向上
目的に特化した表面処理剤をそれぞれ独立して選択する
ことができるので表面処理剤の選択が容易となり、強度
と流動性をバランスよく高める効果が促進される。
【0052】請求項8記載のように、特にその成形方法
としてスライド型成形を採用した場合、最適化効果が一
層顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマグネットローラーを製造する工程を
示す説明図
【図2】フェライト粒子の形状についての概念を示す説
明図
【図3】スライド型成形法の説明図
【図4】スライド型成形法の説明図
【図5】スライド型成形法の説明図
【図6】スライド型成形法の説明図
【図7】スライド型成形法の説明図
【符号の説明】
1 メイン金型 2 成型空間 3 磁場発生器 4 スライド型 5 樹脂磁石材料 6 型板 7 成形物

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアミド系樹脂、フェライト粒子、表
    面処理剤を必須成分とするマグネットローラーにおい
    て、酸化ビスマス0.1〜1.0重量%を含むフェライ
    ト粒子のpHを10〜7に調整した後に表面処理剤、ポ
    リアミド系樹脂と混練し、これを磁場が印加された成形
    空間内で成形したことを特徴とするマグネットローラー
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 ポリアミド系樹脂の平均分子量が900
    0〜13000、平均粒子径が50〜250μmの範囲
    である請求項1記載のマグネットローラーの製造方法。
  3. 【請求項3】 ポリアミド系樹脂の配合量が8〜15重
    量%、フェライト粒子が85〜92重量%、表面処理剤
    が0.1〜2重量%である請求項1または2記載のマグ
    ネットローラーの製造方法。
  4. 【請求項4】 フェライト粒子がストロチウムフェライ
    トまたはバリウムフェライトである請求項1〜3のいず
    れか1項に記載のマグネットローラーの製造方法。
  5. 【請求項5】 (粒子最大直径/粒子厚さ)で定義され
    るフェライト粒子の板状比が2.5以下である請求項1
    〜4のいずれか1項に記載のマグネットローラーの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 表面処理剤が少なくとも1種類のシラン
    系カップリング剤を含む複数の表面処理剤からなる請求
    項1〜5のいずれか1項に記載のマグネットローラーの
    製造方法。
  7. 【請求項7】 シラン系カップリング剤がビニル系シラ
    ン、アミノ系シラン、エポキシ系シラン、クローラー系
    シラン、メルカプト系シラン、ケチミン系シラン、メタ
    クリロキシ系シランのうちから1種または複数種選択さ
    れたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のマ
    グネットローラーの製造方法。
  8. 【請求項8】 マグネットローラーを成形する金型が、
    磁場が印加された成形空間を有するメイン金型と、この
    成形空間の長手方向にスライド可能に装着された軸部形
    成スライド型とを有するものである請求項1〜7のいず
    れか1項に記載のマグネットローラーの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008047591A (ja) * 2006-08-11 2008-02-28 Kaneka Corp マグネットローラ
JP2008281681A (ja) * 2007-05-09 2008-11-20 Canon Chemicals Inc マグネットローラ及び該マグネットローラを用いた現像装置

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