JPH11269159A - グリシジル化合物の精製方法 - Google Patents

グリシジル化合物の精製方法

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JPH11269159A
JPH11269159A JP9264298A JP9264298A JPH11269159A JP H11269159 A JPH11269159 A JP H11269159A JP 9264298 A JP9264298 A JP 9264298A JP 9264298 A JP9264298 A JP 9264298A JP H11269159 A JPH11269159 A JP H11269159A
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JP
Japan
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glycidyl compound
glycidyl
crude
purifying
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JP9264298A
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Masahiko Yamanaka
正彦 山中
Tomio Nobe
富夫 野辺
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New Japan Chemical Co Ltd
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New Japan Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 比較的簡便に、且つ工業的に有利な条件下
で、グリシジル化合物中の揮発性物質の混在量を可及的
に低減せしめ得る新規な精製方法を提供する。 【構成】 粗グリシジル化合物を分子蒸留することによ
り、グリシジル化合物の前留分及び粗グリシジル化合物
に混在する揮発性物質を除去する。この揮発性物質とし
ては、無極性乃至微極性のカラムを使用したガスクロマ
トグラフ分析において、安息香酸メチル(沸点:199
℃)より保持時間の短い成分として把握できる化合物が
挙げられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グリシジル化合物
の工業的な精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、グリシジル化合物の製造方法とし
て、例えば、次の2つの方法が知られている。
【0003】(1)二段階合成法 活性水素含有化合物(例えば、アルコール類、フェノー
ル類、カルボン酸類、アミン類など)とエピハロヒドリ
ン類とを溶媒の存在下又は無溶媒下、所望により触媒と
して酸性化合物或いは塩基性化合物の存在下に加熱して
付加反応せしめてハロヒドリン体を得、次いで水酸化ナ
トリウムなどの塩基性化合物を用いて脱ハロゲン化水素
することによりこれを閉環反応せしめて粗グリシジル化
合物を生成させる。その後、副生した塩類及び脱ハロゲ
ン化水素剤として使用した塩基性化合物の残留物を水洗
又は濾別し、加熱、減圧下に溶媒などを留去した後、濾
過して目的物を得る(例えば、垣内弘編著「新エポキシ
樹脂」(1985年)第58〜104頁、特開平4−8
2880号)。
【0004】(2)一段階合成法 上記と同様の活性水素含有化合物とエピハロヒドリン類
及び/又はハロヒドリン類とを溶媒の存在下又は無溶媒
下、水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物を用いて縮合
して粗グリシジル化合物を生成させ、以下、二段階合成
法におけると同様の後処理方法により目的物を得る(例
えば、垣内弘編著「新エポキシ樹脂」(1985年)第
28〜43頁)。
【0005】しかしながら、上述の一段階合成法又は二
段階合成法のいずれの方法によっても、最終製品中に
は、エピハロヒドリン類、ハロヒドリン類、副反応や熱
分解反応により生成した低分子量成分の他、溶媒反応に
おいて用いた溶媒などの揮発性物質が、通常、0.1〜
2重量%程度の濃度で残存する。
【0006】このような揮発性物質が混在するグリシジ
ル化合物を原料として得られるエポキシ樹脂組成物を塗
床材、塗料、接着剤、シール材などとして適用した場
合、エポキシ樹脂組成物の硬化中及び硬化後の対象物か
ら揮発性物質が徐々に発生する。このことは、特に空気
を汚染することにより新生児室、病室などにおける安全
衛生性を低下させ、食品、医薬品、エレクトロニクス材
料を取り扱う産業分野においては製品などの汚染や品質
不良の原因となるなどの悪影響を引き起こす。そのた
め、グリシジル化合物中の揮発性物質は、例えば50p
pm以下、好ましくは10ppm以下まで低減されてい
ることが望まれている。
【0007】しかしながら、グリシジル化合物中の揮発
性物質を効率的に除去し、且つ最終製品の品質劣化を起
こさない精製方法は、まだ確立されておらず、かかる技
術の開発が強く望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、比較的簡便
に、且つ工業的に有利な条件下で、グリシジル化合物中
の揮発性物質の混在量を可及的に低減せしめ得る新規な
精製方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等の検討による
と、グリシジル化合物中の揮発性物質を低減する方法と
しては、反応粗物中の溶媒などを留去する際に加熱温度
を高く設定したり、処理時間を延長したり、水蒸気や窒
素の吹き込みを併用するなど処理条件をより厳しくする
ことが考えられ、事実、当該処理をすることにより、あ
る程度の揮発性物質の除去効果は認められる。しかしな
がら、当該処理によっても揮発性物質の混在量を100
ppm程度にしか低減することができず、更にかかる条
件下で処理した場合には、エポキシ基の開裂や重合が惹
起され、最終製品の色相が悪化したり、エポキシ当量や
粘度が増加するといった欠点が生じる傾向がある。
【0010】本発明者らは、かかる目的を達成すべく更
に鋭意検討の結果、一段階合成法、二段階合成法を問わ
ず、従来公知の方法で調製された粗グリシジル化合物を
特定の条件下で分子蒸留して精製することにより、最終
製品の色相、エポキシ当量、粘度などの品質劣化を起こ
すことなく、揮発性物質の含有量を50ppm以下に低
減することができ、更に抗酸化剤を添加して精製するこ
とにより、揮発性物質の含有量を10ppm以下に低減
し得ることを見いだし、かかる知見に基づいて本発明を
完成するに至った。
【0011】即ち、本発明に係るグリシジル化合物の精
製方法は、粗グリシジル化合物を分子蒸留することによ
り、グリシジル化合物の前留分及び粗グリシジル化合物
に混在する揮発性物質を除去することを特徴とする。
【0012】本発明が適用される粗グリシジル化合物と
しては、常法、例えば二段階合成法に基づいて、活性水
素含有化合物(例えば、アルコール類、フェノール類、
カルボン酸類、アミン類など)とエピハロヒドリン類
[活性水素含有化合物:エピハロヒドリン類=1:0.
8〜1:4(当量)]とを溶媒(例えば、トルエン、キ
シレン、メチルイソブチルケトン)の存在下又は無溶媒
下、所望により触媒として酸性化合物(例えば、塩化第
二錫五水和物、三フッ化ホウ素エーテル錯塩)或いは塩
基性化合物(例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、
塩基ベンジルトリメチルアンモニウム)の存在下に加熱
(例えば、60〜100℃)して付加反応せしめてハロ
ヒドリン体を得、次いで塩基性化合物(例えば、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム)を用いて加熱下(例え
ば、30〜100℃)に脱ハロゲン化水素することによ
り閉環反応せしめて粗グリシジル化合物を生成させる。
その後、副生した塩類及び脱ハロゲン化水素剤として使
用した塩基性化合物の残留物を水洗又は濾別し、加熱
(例えば、80〜120℃)、減圧下(例えば、最終的
に2mmHgまで減圧する。)に溶媒などを留去した
後、濾過して得られる目的物が挙げられる。
【0013】又、例えば、一段階合成法に基づき、上記
と同様の活性水素含有化合物とエピハロヒドリン類及び
/又はハロヒドリン類[活性水素含有化合物:エピハロ
ヒドリン類及び/又はハロヒドリン類=1:1〜1:2
0(当量)]とを溶媒(例えば、トルエン、キシレン、
メチルイソブチルケトン、イソプロパノール)の存在下
又は無溶媒下、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム)を用いて加熱
下(例えば、40〜100℃)に縮合して粗グリシジル
化合物を生成させ、以下、二段階合成法におけると同様
に後処理して得られる目的物が挙げられる。
【0014】かくして得られるグリシジル化合物として
は、一般式(1)
【化2】 [式中、Rは、炭素数2〜50の環構造を有していても
よいアルコール類又はフェノール類又はカルボン酸類又
はイソシアヌル酸又はそれらのアルキレンオキサイド1
〜10モル付加体の残基又はアミン類の残基を表す。n
は1〜6を表す。]で表されるグリシジルエーテル類又
はグリシジルエステル類又はグリシジルアミン類よりな
る群から選ばれた少なくとも1種の化合物が例示され
る。
【0015】グリシジルエーテル類を調製するに際して
適用される活性水素含有化合物としては、オクタノー
ル、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカ
ノール、トリデカノール、テトラメチレングリコール、
ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、
3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール、ポリエチレングリコール(例えば、重合
度3〜15)、ポリプロピレングリコール(例えば、重
合度2〜12)、ポリテトラメチレングリコール(例え
ば、重合度2〜10)、グリセリン、トリメチロールプ
ロパン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサノール、
シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメ
タノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシ
ル)プロパン(以下「水素化ビスフェノールA」とい
う。)、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタ
ン、シクロヘキサントリオールなどのアルコール類及び
それらのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドな
どのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数としては
1〜10が例示される。)、ビスフェノールF、ビスフ
ェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラ
ックなどのフェノール類及びそれらのエチレンオキサイ
ドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド
付加物(付加モル数としては、1〜10が例示され
る。)、アクリル酸、メタクリル酸、ネオデカン酸、ネ
オドデカン酸、アジピン酸、マレイン酸、ドデカン二
酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフ
タル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒ
ドロフタル酸、トリメリット酸などのカルボン酸やイソ
シアヌル酸などのアルキレンオキサイド付加物(付加モ
ル数としては、1〜10が例示される。)などが例示さ
れる。
【0016】グリシジルエステル類を調製するに際して
適用される活性水素含有化合物としては、アクリル酸、
メタクリル酸、ネオデカン酸、ネオドデカン酸、アジピ
ン酸、マレイン酸、ドデカン二酸、フタル酸、ヘキサヒ
ドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒ
ドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリ
ット酸などのカルボン酸又はその無水物、イソシアヌル
酸などが例示される。
【0017】グリシジルアミン類を調製するに際して適
用される活性水素含有化合物としては、アニリン、パラ
アミノフェノール、アルキル(例えば、炭素数1〜1
0)置換アミノフェノール、メタキシレンジアミン、
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,
4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ
ジシクロヘキシルメタンなどが例示される。
【0018】エピハロヒドリン類やハロヒドリン類とし
ては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−
メチルエピクロロヒドリン、β−メチルエピブロモヒド
リン、グリセロール−1,3−ジクロロヒドリンなどが
代表例であって、これらは単独で又は2種以上組み合わ
せて用いられる。
【0019】本発明に係る揮発性物質としては、従来技
術について言及した際に記述した如く、エピハロヒドリ
ン類、ハロヒドリン類、副反応や熱分解反応により生成
した低分子量成分の他、溶媒反応において用いた溶媒な
どが例示されるが、無極性乃至微極性のカラムを使用し
たガスクロマトグラフ分析において、安息香酸メチル
(沸点:199℃)より保持時間の短い成分として把握
し、このものを本発明に基づいて精製除去することによ
り、本願固有の効果を安定して得ることができる。
【0020】かかる無極性乃至微極性のカラムとして
は、例えば、カラム内面又は充填剤の吸着活性点がほと
んど完全に除去されているか又は更にジメチルシリコン
及び/又はフェニルメチルシリコン系液相(例えば、S
ilicone Gum SE−30、SE−52、S
E−54、SF−96、OV−1、OV−3、OV−
7、OV−11、OV−17、OV−101、DC−2
00、DC−11など)をコーティングした充填カラム
又はキャピラリーカラムが適用可能である。
【0021】本発明に使用される分子蒸留装置として
は、化学工業協会編「化学装置便覧・改訂二版」(19
89年)第687〜688頁に記載されている流下薄膜
式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置が例示され、特
に遠心式分子蒸留装置が推奨される。
【0022】当該装置及びその操作条件は、通常、蒸発
面上におけるグリシジル化合物の滞留時間が1分間以
下、真空度が5mmHg以下、蒸発面の加熱温度が18
0℃以下であることが好ましい。真空度が5mmHgを
超える場合には、揮発性物質を充分に除去することが困
難であり、又、グリシジル化合物の滞留時間が長過ぎる
場合や蒸発面の加熱温度が高過ぎる場合には、熱分解や
エポキシ基の開裂、重合などを起こす危険性がある。
【0023】揮発性物質を留去するに際し、グリシジル
化合物の一部の量(以下「前留分カット率」と称する)
は揮発性物質と共に留去されるが、該留去されるグリシ
ジル化合物の量は、蒸発面に供給される粗物量に対して
定常的に0.5〜10重量%の範囲内に調節されている
ことが好ましい。かかる調節は、例えば、蒸発面の温
度、蒸発面への粗物の給液速度などの操作条件を適宜選
択することにより行う。前留分カット率が0.5重量%
未満となる操作条件下では揮発性物質を充分に除去する
ことが困難であり、10重量%を超えて前留分を除去し
ても効果上の有意差は認められず、経済的に不利であ
る。
【0024】更に、グリシジル化合物の粗物に抗酸化剤
を添加して精製することが好ましく、かかる操作によ
り、グリシジル化合物中の揮発性物質の混在量を10p
pm以下に低減することができる。抗酸化剤を添加しな
いで精製した場合には、グリシジル化合物の熱分解によ
る低分子量分解物が最終製品中に混入し、揮発性物質の
混在量が10ppmを越える場合が多い。
【0025】本発明において適用される抗酸化剤として
は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、
2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル
−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メ
トキシフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−
t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブ
チルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチ
ル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデ
ンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、
4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェ
ノール)、α−トコフェロール、1,1,3−トリス
(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニ
ル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−ト
リス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジ
ル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート]などのヒンダードフェノール系化合
物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチ
オジプロピオネートなどの有機スルフィド類、トリデシ
ルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノ
ニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類な
どが例示され、特にヒンダードフェノール系化合物が推
奨される。
【0026】抗酸化剤の好ましい添加量は、所定の効果
が得られる限り特に限定されるものではないが、通常、
グリシジル化合物の粗物に対して0.01〜0.5重量
%程度である。
【0027】本発明に係るグリシジル化合物の精製方法
は、グリシジル化合物の製造工程において、反応粗物の
後処理工程の一部として実施しても良いし、或いは0.
1〜2重量%程度の揮発性物質を含有した従来のグリシ
ジル化合物を一旦製造した後に、別途、本発明に係る精
製方法を適用して精製しても良い。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明に係るグリシジル化合物の
精製方法の具体例を以下に掲げる。尚、所定の効果が得
られる限り、当該処理条件に限定されるものではない。
【0029】活性水素含有化合物とエピハロヒドリン類
及び/又はハロヒドリン類を原料として得られるグリシ
ジル化合物の粗物に対し、必要に応じて、系内の粘度を
好ましくは10Pa・s以下に低下せしめる目的で不活
性な溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘ
キサン、ヘプタン、オクタン、メチルエチルケトン、メ
チルイソブチルケトンなど)を添加し、副生塩や未反応
の塩基性化合物を、濾過、水洗、遠心分離などの工程を
適宜組み合わせることにより除去する。次いで、通常、
80〜130℃程度の温度条件下で、好ましくは3〜2
0mmHg程度の減圧下、0.5〜3時間程度攪拌し
て、水及び溶媒などの揮発性物質を留去した後、必要に
応じて濾過又は遠心分離して固形物を除去する。
【0030】しかる後に、処理すべきグリシジル化合物
に所定量の抗酸化剤を添加し、分子蒸留装置内におい
て、60〜100℃程度の温度条件下で液を循環させな
がら、好ましくは5mmHg以下の真空度とする。次い
で、蒸発面の加熱温度及び蒸発面への給液速度を調節
し、所定の前留分カット率が得られるような操作条件に
て精製を行う。これらの操作条件は、分子蒸留装置の形
式、蒸発面の面積、真空ポンプの能力及びグリシジル化
合物の分子量、粘度、蒸気圧などに依存し、適宜決定さ
れる。
【0031】その後、分子蒸留操作によって得られた残
渣を濾過又は遠心分離して固形物を除去することによ
り、エポキシ基の重合や開裂などによるエポキシ当量の
増加や粘度の増大、色相の悪化を起こさずに、揮発性物
質の残存量が著しく低減されたグリシジル化合物が得ら
れる。
【0032】
【実施例】以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明を詳
しく説明する。尚、各例において得られるグリシジル化
合物の分析値は、次の方法により測定した。
【0033】色数:APHA比色法による。
【0034】エポキシ当量:臭化テトラエチルアンモニ
ウム−過塩素酸滴定法による。
【0035】粘度(25℃):B型回転粘度計による。
【0036】揮発性物質含量:液相としてSilico
ne Gum SE−30をコーティングしたカラムと
水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ装置
を使用し、カラム温度を100℃から210℃まで10
℃/minの条件で昇温させて試料を分析することによ
り、内部標準物質として添加した安息香酸メチル(沸
点:199℃)より保持時間の短い成分の総量を求め
る。
【0037】実施例1 回転式攪拌装置、デカンタ、温度計及びガス導入管を備
えた4つ口フラスコに水素化ビスフェノールA1215
g(5モル)、キシレン580g及び塩化第二錫五水和
物15gを仕込み、100℃でエピクロロヒドリン11
10g(12モル)を60分間かけて滴下した後、更に
30分間攪拌を続けて付加反応を終了した。次いで、塩
化ベンジルトリメチルアンモニウム35g、50%水酸
化ナトリウム水溶液1130gを添加後、80℃、5時
間攪拌を続けて閉環反応を終了した。副生した塩化ナト
リウム及び未反応の水酸化ナトリウムを水洗により除去
した後、120℃、3mmHgで1時間、脱水・脱溶媒
して粗物(反応粗物−A)1860gを得た。その後、
上記反応粗物に抗酸化剤として2,6−ジ−t−ブチル
−4−メチルフェノール2gを溶解し、蒸発面の直径1
50mm、処理液の滞留時間が1秒間以下の遠心式分子
蒸留装置(日本車輌社製MS−150型分子蒸留装置)
を用い、70℃の温度条件下、給液速度3リットル/h
で1時間、液を循環させた後、0.005mmHgの真
空度で、給液速度1.5リットル/h、蒸発面の温度1
35℃の操作条件に調節することにより、給液量に対し
て前留分5重量%を定常的に留去した。得られた残渣を
濾過した結果、色数10、エポキシ当量213、粘度
2.3Pa・s、揮発性物質含量10ppm(定量限
界)以下の水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテ
ル1730gを得た。
【0038】実施例2 実施例1に準じて調製した反応粗物−Aを分子蒸留処理
する際、操作条件を、給液速度2.0リットル/h、蒸
発面の温度135℃に調節することにより、給液量に対
する前留分カット率を1重量%に変更した他は実施例1
に準じて処理した結果、色数10、エポキシ当量21
4、粘度2.3Pa・s、揮発性物質含量36ppmの
水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル1760
gを得た。
【0039】実施例3 実施例1と同様の反応器に、1,6−ヘキサンジオール
590g(5モル)及び三フッ化ホウ素エーテル錯塩1
5gを仕込み、100℃でエピクロロヒドリン1390
g(15モル)を90分間かけて滴下した後、更に撹拌
を30分間続けて付加反応を終了した。次いで水酸化ナ
トリウム480gを添加後、50℃、3mmHgにて脱
水しつつ5時間撹拌を続けて閉環反応を終了した。副生
した塩化ナトリウム及び未反応の水酸化ナトリウムを濾
過により除去して粗物(反応粗物−B)1290gを得
た。その後、実施例1と同様の分子蒸留装置に、粗物及
び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.
5gを仕込み、70℃の温度条件下、給液速度3リット
ル/hで1時間、液を循環させた後、0.01mmHg
の真空度で、給液速度1.5リットル/h、蒸発面の温
度115℃の操作条件に調節することにより、給液量に
対して前留分3重量%を定常的に留去した。得られた残
渣を濾過した結果、色数70、エポキシ当量153、粘
度22mPa・s、揮発性物質含量10ppm(定量限
界)以下の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエー
テル1222gを得た。
【0040】実施例4 実施例1と同様の反応器に、4−メチルヘキサヒドロ無
水フタル酸840g(5モル)、エピクロロヒドリン1
203g(13モル)、50%塩化テトラメチルアンモ
ニウム水溶液33gを仕込み、80℃で90分間攪拌し
て付加反応を終了した後、トルエン750gを添加し
た。次いで、45%水酸化ナトリウム水溶液1065g
を120分間かけて滴下しつつ80℃で共沸脱水を行
い、閉環反応を終了した。副生した塩化ナトリウム及び
未反応の水酸化ナトリウムを濾別し、120℃、5mm
Hgで2時間脱水・脱溶媒して粗物(反応粗物−C)1
470gを得た。粗物を濾過後、抗酸化剤として2,6
−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール2gを溶解
し、蒸発面の加熱面積0.034m2の流下薄膜式分子
蒸留装置(神鋼ファウドラー社製2−03型薄膜蒸留装
置)を用い、0.2mmHgの真空度で、処理液の滞留
時間が10〜50秒間、給液速度約0.5リットル/
h、蒸発面の温度140℃の操作条件に調節することに
より、給液量に対して前留分8重量%を定常的に留去し
た。得られた残渣を濾過した結果、色数20、エポキシ
当量171、粘度0.53Pa・s、揮発性物質含量1
0ppm(定量限界)以下の4−メチルヘキサヒドロフ
タル酸ジグリシジルエステル1319gを得た。
【0041】実施例5 分子蒸留処理の際、反応粗物−Cに抗酸化剤を添加しな
い他は実施例4に準じて処理した結果、色数30、エポ
キシ当量171、粘度0.52Pa・s、揮発性物質含
量41ppmの4−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリ
シジルエステル1321gを得た。
【0042】実施例6 実施例1と同様の反応器に、4,4’−ジアミノジフェ
ニルメタン792g(4モル)、エピクロロヒドリン3
700g(40モル)及びイソプロパノール1500
g、水200gを仕込み、80℃で120分間撹拌し
た。次いで、60℃にて45%水酸化ナトリウム180
0gを120分間かけて滴下した後、減圧下、脱水・脱
溶媒しつつ30分間撹拌し、更に60℃、5mmHgで
30分間撹拌して反応を終了した。トルエン2000g
を添加し、副生した塩化ナトリウム及び未反応の水酸化
ナトリウムを水洗により除去した後、100℃、3mm
Hgで1時間、脱水・脱溶媒して粗物1570gを得
た。その後、実施例1と同様の分子蒸留装置に、粗物及
び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール2g
を仕込み、85℃の温度条件下、給液速度3リットル/
hで1時間、液を循環させた後、0.002mmHgの
真空度で、給液速度1.5リットル/h、蒸発面の温度
140℃の操作条件に調節することにより、給液量に対
して前留分2重量%を定常的に留去した。得られた残渣
を濾過した結果、色数(ガードナー)9、エポキシ当量
120、粘度35Pa・s、揮発性物質含量10ppm
(定量限界)以下のテトラグリシジルジアミノジフェニ
ルメタン1090gを得た。
【0043】比較例1 実施例1に準じて調製した反応粗物−Aについて、分子
蒸留処理を行わずに、濾過処理のみ行ったところ、目的
とする水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル1
851gを得た。ちなみに、このものの分析値は、色数
10、エポキシ当量214、粘度2.2Pa・s、揮発
性物質含量1100ppmであった。
【0044】比較例2 実施例1に準じて調製した反応粗物−Aを分子蒸留処理
する際、操作条件を、給液速度1.5リットル/h、蒸
発面の温度120℃に調節することにより、前留分を留
出させなかった他は実施例1に準じて処理したところ、
目的とする水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテ
ル1787gを得た。ちなみに、このものの分析値は、
色数10、エポキシ当量214、粘度2.3Pa・s、
揮発性物質含量160ppmであった。
【0045】比較例3 実施例3に準じて調製した反応粗物−Bについて、分子
蒸留処理を行わずに、120℃、3mmHgで2時間脱
水した後、濾過した他は実施例3に準じて処理したとこ
ろ、目的とする1,6−ヘキサンジオールジグリシジル
エーテル1288gを得た。ちなみに、このものの分析
値は、色数120、エポキシ当量164、粘度35mP
a・s、揮発性物質含量110ppmであった。
【0046】比較例4 実施例4に準じて調製した反応粗物−Cについて、分子
蒸留処理を行わずに、濾過処理のみ行ったところ、目的
とする4−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエ
ステル1460gを得た。ちなみに、このものの分析値
は、色数20、エポキシ当量171、粘度0.52Pa
・s、揮発性物質含量620ppmであった。
【0047】比較例5 実施例4に準じて調製した反応粗物−Cについて、分子
蒸留処理を行わずに、さらに140℃、5mmHgで8
時間脱水・脱溶媒を継続した後、濾過した他は実施例4
に準じて処理したところ、目的とする4−メチルヘキサ
ヒドロフタル酸ジグリシジルエステル1433gを得
た。ちなみに、このものの分析値は、色数70、エポキ
シ当量182、粘度0.77Pa・s、揮発性物質含量
230ppmであった。上記のように脱水・脱溶媒条件
をより厳しくしても、ある程度の揮発性物質の除去効果
は認められるものの不十分であり、一方、生成物の着
色、エポキシ当量や粘度の増加などの品質劣化を招く。
【0048】
【発明の効果】本発明に係るグリシジル化合物の精製方
法により、最終製品の着色、エポキシ当量の増加、粘度
の増大などの品質劣化を起こすことなく、より簡便に揮
発性物質の混在量を著しく低下させることが可能にな
る。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗グリシジル化合物を分子蒸留すること
    により、グリシジル化合物の前留分及び粗グリシジル化
    合物に混在する揮発性物質を除去することを特徴とする
    グリシジル化合物の精製方法。
  2. 【請求項2】 グリシジル化合物の前留分量が、分子蒸
    留装置の蒸発面に供給される粗グリシジル化合物量に対
    して0.5〜10重量%である請求項1に記載のグリシ
    ジル化合物の精製方法。
  3. 【請求項3】 揮発性物質が、無極性乃至微極性のカラ
    ムを使用したガスクロマトグラフ分析において、安息香
    酸メチル(沸点:199℃)より保持時間の短い成分と
    して把握できる化合物である請求項1又は2に記載のグ
    リシジル化合物の精製方法。
  4. 【請求項4】 抗酸化剤の存在下に分子蒸留することを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかの請求項に記載のグ
    リシジル化合物の精製方法。
  5. 【請求項5】 抗酸化剤が、2,6−ジ−t−ブチル−
    4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノ
    ール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、
    2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、オクタデシ
    ル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフ
    ェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4
    −メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メ
    チレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノー
    ル)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t
    −ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチ
    ル−6−t−ブチルフェノール)、α−トコフェロー
    ル、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ
    −5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリ
    メチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル
    −4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びペンタエリス
    リチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−
    4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]からなる群
    から選ばれる少なくとも1種のヒンダードフェノール系
    化合物である請求項4に記載のグリシジル化合物の精製
    方法。
  6. 【請求項6】 粗グリシジル化合物が、(1)活性水素
    含有化合物とエピハロヒドリン類とを付加反応せしめて
    ハロヒドリン体を得、次いで該ハロヒドリン体を閉環反
    応せしめて得られか、又は(2)活性水素含有化合物と
    エピハロヒドリン類及び/又はハロヒドリン類とを縮合
    して得られるグリシジル化合物の反応粗物である請求項
    1〜6のいずれかの請求項に記載のグリシジル化合物の
    精製方法。
  7. 【請求項7】 粗グリシジル化合物が、一般式(1) 【化1】 [式中、Rは、炭素数2〜50の環構造を有していても
    よいアルコール類又はフェノール類又はカルボン酸類又
    はイソシアヌル酸又はそれらのアルキレンオキサイド1
    〜10モル付加体の残基又はアミン類の残基を表す。n
    は1〜6を表す。]で表されるグリシジルエーテル類又
    はグリシジルエステル類又はグリシジルアミン類よりな
    る少なくとも1種の化合物と揮発性物質との混合物であ
    る請求項6に記載のグリシジル化合物の精製方法。
  8. 【請求項8】 揮発性物質の混在量が50ppm以下で
    ある請求項1〜7のいずれかの方法で精製されて得られ
    るグリシジル化合物。
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