JPH11263627A - 光学素子のプレス成形方法および成形型 - Google Patents

光学素子のプレス成形方法および成形型

Info

Publication number
JPH11263627A
JPH11263627A JP34327598A JP34327598A JPH11263627A JP H11263627 A JPH11263627 A JP H11263627A JP 34327598 A JP34327598 A JP 34327598A JP 34327598 A JP34327598 A JP 34327598A JP H11263627 A JPH11263627 A JP H11263627A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molding
glass
mold
fine pattern
mold member
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP34327598A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaki Omori
正樹 大森
Nobuyuki Nakagawa
伸行 中川
Sunao Miyazaki
直 宮▲崎▼
Keiji Hirabayashi
敬二 平林
Shigeru Hashimoto
茂 橋本
Kiyoshi Yamamoto
潔 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP34327598A priority Critical patent/JPH11263627A/ja
Publication of JPH11263627A publication Critical patent/JPH11263627A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03BMANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
    • C03B11/00Pressing molten glass or performed glass reheated to equivalent low viscosity without blowing
    • C03B11/06Construction of plunger or mould
    • C03B11/08Construction of plunger or mould for making solid articles, e.g. lenses
    • C03B11/084Construction of plunger or mould for making solid articles, e.g. lenses material composition or material properties of press dies therefor
    • C03B11/086Construction of plunger or mould for making solid articles, e.g. lenses material composition or material properties of press dies therefor of coated dies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03BMANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
    • C03B11/00Pressing molten glass or performed glass reheated to equivalent low viscosity without blowing
    • C03B11/06Construction of plunger or mould
    • C03B11/08Construction of plunger or mould for making solid articles, e.g. lenses
    • C03B11/082Construction of plunger or mould for making solid articles, e.g. lenses having profiled, patterned or microstructured surfaces
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03BMANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
    • C03B2215/00Press-moulding glass
    • C03B2215/02Press-mould materials
    • C03B2215/08Coated press-mould dies
    • C03B2215/14Die top coat materials, e.g. materials for the glass-contacting layers
    • C03B2215/24Carbon, e.g. diamond, graphite, amorphous carbon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03BMANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
    • C03B2215/00Press-moulding glass
    • C03B2215/40Product characteristics
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03BMANUFACTURE, SHAPING, OR SUPPLEMENTARY PROCESSES
    • C03B2215/00Press-moulding glass
    • C03B2215/40Product characteristics
    • C03B2215/41Profiled surfaces
    • C03B2215/412Profiled surfaces fine structured, e.g. fresnel lenses, prismatic reflectors, other sharp-edged surface profiles

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガラス素材をプレス成形した後、成形された
ガラス成形品と型部材との熱収縮率の差に起因する大き
な応力がガラス成形品に働く以前に、型部材からのガラ
ス成形品の拘束を解除して、上記ガラス成形品のワレや
クラックを防止する光学素子の成形方法及び成形型を提
供する。 【解決手段】 上下一対の型部材により、加熱軟化状態
のガラス素材をプレス成形して光学素子を得る方法にお
いて、各型部材の成形面により成形されたガラス素材
が、その片方の面だけを、そのガラス粘度で1012dP
aSに相当する温度以上で離型する状態で、型開きする
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学用の成形ガラ
ス素材をプレス成形して、例えば、回折格子やフレネル
レンズなどの、微細パターンを有する高精度な光学有効
面を持った光学素子を得るための、プレス成形方法およ
び成形型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、研削及び研磨工程を経ずに、所定
の表面精度を有する成形用型内にガラス光学素子材料を
収容してプレス成形することにより、光学機器などに使
用されるレンズなどの光学素子を成形する方法が提唱さ
れる(例えば、特公昭61−32263号公報に所
載)。ここでは、ある程度の形状及び表面精度に予備成
形されたガラスブランクを成形用型内に収容して、加熱
下でプレス成形する。
【0003】このようなプレス成形法では、一般に、成
形用上型部材と成形用下型部材とをそれぞれ成形用胴型
部材内に摺動可能に対向配置し、これら上下型部材およ
び胴型部材により形成されるキャビティ内に成形用ガラ
ス素材を導入し、成形可能温度まで型部材を加熱し、型
を閉じ、適宜な時間、プレスして、型部材の成形面の形
状を成形用ガラス素材に転写し、そして、型部材温度を
成形用ガラス転移温度より十分に低い温度まで冷却し、
プレス圧力を除去し、型を開いて、成形済みの光学素子
(ガラス成形品)を取り出すのである。なお、この場
合、型部材の酸化防止のために、型部材が装備される雰
囲気を非酸化雰囲気、例えば、窒素雰囲気にしている。
【0004】以上のような光学素子のプレス成形法とし
て、例えば、特開昭59−123631号公報に所載の
ものが知られている。ここでは、予め、ガラス素材を成
形用型内に配置して、型とガラスを等温度状態で加熱し
て、所定温度でプレスした後に、200℃になったら、
型を開いてガラス成形品を取り出している。また、回折
格子やフレネルレンズなどの、光学有効面に微細パター
ンを有する光学素子のプレス成形方法が、例えば、特公
平5−73700号公報などに記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の従来例
では、次のような問題点がある。つまり、目的とする光
学素子の形状によって、冷却中に型内で割れを生じ、あ
るいは、光学素子の光学有効面に転写するための型部材
の成形面への融着を生じてしまうことである。これはガ
ラスの熱膨張率が型よりも遥かに大きいためであり、特
に、冷却時にガラスが型の成形面での凹凸を挟み込むよ
うな熱応力を発生する場合に、多く発生する。
【0006】これは、両面凸レンズでは起こらないが、
凹レンズやメニスカスレンズ、特に回折格子やフレネル
レンズなどの、光学有効面に微細パターンを有する光学
素子(例えば、特公平5−73700号公報などに記載
のもの)や複雑な形状のプリズムなどの場合に、問題と
なる。
【0007】なお、ここで、微細パターンとは、0.1
μm以上、50μm以下のオーダーを持つ凹凸形状を意
味する。例えば、図11に示すようなフレネルレンズ
や、図12に示すような回折格子などのガラス成形品を
成形する場合に、その一方の光学有効面に形成されてい
るのが、それである。
【0008】このような、微細パターンを有する光学素
子のプレス成形では、上記従来例に示されているよう
に、そのガラスの転移温度もしくはそのガラスの粘度で
1013dPaSに相当する温度まで型内で冷却すると、
ガラスと型の熱収縮率の差に起因する応力により、微細
パターンの部分で応力集中が起こり、そこで、ガラスに
ワレやクラックを生じ、もしくは、型への融着といった
現象が発生する。
【0009】本発明は、上記事情に基づいてなされたも
ので、その目的とするところは、ガラス素材をプレス成
形した後、成形されたガラス成形品と型部材との熱収縮
率の差に起因する大きな応力がガラス成形品に働く以前
に、型部材からのガラス成形品の拘束を解除して、上記
ガラス成形品のワレやクラックを防止する光学素子の成
形方法を提供することである。
【0010】また、本発明の他の目的とするところは、
少なくとも、片面に微細パターンを有する光学素子など
をプレス成形する場合、離型に際して、微細パターンを
有する面を成形する型部材からのガラス成形品の離脱
を、微細パターンのない面を成形する型部材からのガラ
ス成形品の離脱よりも早めて、光学有効面の精度を損な
わない状態で、しかも、ワレやクラックないガラス成形
品を得るための光学素子の成形型を提供することであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】このため、本発明では、
上下一対の型部材により、加熱軟化状態のガラス素材を
プレス成形して光学素子を得る方法において、各型部材
の成形面により成形されたガラス素材が、その片方の面
だけを、そのガラス粘度で1012dPaSに相当する温
度以上で離型する状態で、型開きすることを特徴とす
る。
【0012】この場合、前記の、成形されたガラス素材
の片方の面だけを離型させる温度が、そのガラス粘度で
109 dPaSに相当する温度以下であること、型部材
からの成形品の取り出しが、そのガラス粘度で1013
PaSに相当する温度以下であることが、その実施の形
態として好ましい。
【0013】更に言うならば、本発明では、上下一対の
型部材により、ガラス素材の少なくとも一面に微細パタ
ーン(0.1μm以上で50μm以下のオーダーを持つ
凹凸形状)を転写して、所要の光学有効面を形成する光
学素子のプレス成形方法において、微細パターンを有す
る成形面を、これを転写したガラス成形品の面から、そ
のガラス粘度で1012dPaSに相当する温度以上で、
離型させるように、プレス成形を実施することを特徴と
する。
【0014】また、本発明では、上下一対の型部材によ
り、ガラス素材の一面に微細パターン(0.1μm以上
で50μm以下のオーダーを持つ凹凸形状)を転写し
て、ガラス成形品に所要の光学機能面を形成する光学素
子のプレス成形型において、上型部材の、微細パターン
を有する成形面の離型時におけるガラス離型性よりも、
下型部材の、微細パターンのない成形面のガラス離型性
が低くなるように、型部材の成形面における材質、ある
いは/および、表面粗さを選択して、両型部材の成形面
を設定したことを特徴とする。
【0015】この場合、上型部材の、微細パターンを有
する成形面を、硬質炭素膜、i−C、アモルファス炭化
水素膜の何れかでコーティングし、下型部材の、微細パ
ターンのない成形面を、TiN,TaN,TiC,Ta
C,SiC,SiNなどの硬質セラミック、または、P
t,Pd,Ir,Rh,Os,Ru,Re,W,Taの
内の一種以上を含む貴金属合金で構成するとよい。
【0016】また、上型部材の、微細パターンを有する
成形面全領域と、下型部材の、微細パターンのない成形
面の、少なくともプレス成形された光学素子の光学有効
面に対応する部分領域とを、硬質炭素膜、i−C、アモ
ルファス炭化水素膜の何れかでコーティングすると共
に、下型部材の前記部分領域以外の成形面の部分領域を
TiN,TaN,TiC,TaC,SiC,SiNなど
の硬質セラミック、または、Pt,Pd,Ir,Rh,
Os,Ru,Re,W,Taの内の一種以上を含む貴金
属合金で構成してもよい。
【0017】更に、上型部材の、微細パターンを有する
成形面全領域と、下型部材の、微細パターンのない成形
面の、少なくともプレス成形された光学素子の光学有効
面に対応する部分領域との表面粗さを、Rmaxで20
nm以下に、また、下型部材の前記領域外の成形面の部
分領域の表面粗さを、Rmaxで50nm以上2000
nm以下にしてもよい。
【0018】なお、これら型部材の成形面の材質、ある
いは/および、表面粗さを選択する場合には、微細パタ
ーンを有する成形面についての離型時の温度を、ガラス
粘度で1012dPaSに相当する温度以上に設定して、
使用するのがよい。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光学素子の成形方
法および成形型についての実施の形態を具体的に説明す
る。
【0020】(第1の実施の形態)図1は本発明に係わ
る第1の実施の形態を示す図であり、図中、符号41は
上型部材、42は下型部材、43は胴型、44は光学素
子などの、ガラス成形品である。
【0021】ここでは、型材料として、超硬合金を用い
ており、その成形面(成形されるべき光学素子の光学有
効面を転写するための成形面)の形状を所定に研削、研
磨加工して、それぞれの型部材が得られる。更に、上型
部材41の成形面には、i−C膜をコーティングし、下
型部材42の成形面には、TiN膜をコーティングして
いる。なお、成形される光学素子は外径=φ30mm、
中心厚=1mm、R1=15mm、R2=200mmの
凹メニスカスレンズである。また、ガラスの素材として
は、SK12(nd=1.58313、νd=59.
4、Tg=506℃、At=538℃)を用い、所定の
容量のプリフォームを準備した。
【0022】そして、該プリフォームを図1に示すよう
な型内に投入し、型全体を成形装置(図示せず)に設置
して、雰囲気を窒素ガスとし、その中で、600℃に加
熱した。更に、上型部材41を降下させて、プレス成形
を行い、ガラスの厚みが所定の厚みになった後に、型閉
じのまま、型全体を冷却した。
【0023】その後、515℃(ガラス粘度で1012
PaS相当)まで冷却されたとき、上型部材41を上昇
させ、上型部材41と成形品44とを相互に分離(離
型)させた。この時、下型部材42と成形品44とは、
互いに付着したままである。そして、更に冷却して、5
00℃で成形品44を下型部材42から取り出した。こ
の時、下型部材42と成形品44とは付着していなかっ
た。その結果、取り出した成形品4には、何らの割れも
なく、良好な品質が確保された。
【0024】因みに、上型部材41の上昇温度を535
℃、557℃、584℃に変更して、上述と同様な成形
を行ったが、何れも、良好な結果を得た。次に、本発明
の実施の形態との比較例として、上型部材41の上昇温
度を596℃にすると、離型は可能であるが、取り出し
た成形品の光学有効面(光学機能面とも言う)の形状が
所期の形よりも変形していた。更に別の比較例として、
上型の上昇温度を505℃に下げると、取り出した成形
品に、特に、その上型部材41の成形面との間で、割れ
が発生しているのが観察された。
【0025】次に上型部材41の上昇温度を557℃と
し、下型部材42からの成形品44の取り出し温度を4
50℃にしたが、結果は良好であった。これとの比較例
として、取り出し温度を505℃に上げると、取り出す
ことは可能であったが、成形品の上下面の形状(光学有
効面)が所期の形状より変化していた。さらに別の比較
例として、取り出し温度を515℃に上げたが、この場
合は成形品44と下型部材42とが固着しており、その
温度では取り出しが困難であった。以上の結果を以下の
表により示すことにする。
【0026】
【表1】 (第2の実施の形態)図2は本発明に係わる第2の実施
の形態を示す図である。ここで、符号45は上型部材、
46は下型部材、47は成形品を示す。図3及び図4は
成形品の寸法を示す図であり、本発明の、この実施の形
態では、40mm×30mm、厚さ:10mmのプリズ
ムを得ることを目標にしている。
【0027】ここでは、型材料として超硬合金を用い、
型部材の成形面を、研削、研磨によって、図2に示すよ
うな形状に加工している。但し、上下型部材の形状を、
各々単体の材料で製作することは困難であるから、複数
の型部品を組み合わせて、各型部材45、46を形成し
た。更に、上型部材45の、上記プリズムの光学機能面
に対応する成形面には、i−C膜をコーティングし、下
型部材46の成形面には、SiCをコーティングした。
ガラス材料としては、LaK12(nd=1.6691
0、νd=55.4、Tg=530℃、At=562
℃)を用い、所定の容量のプリフォームを準備した。
【0028】該プリフォームを図2に示すような型内に
投入し、第1の実施の形態のように成形装置内に設置
し、窒素ガス雰囲気中で610℃に加熱した。そして、
上型部材45を下降して、プレス成形を行い、所定の形
状になったところで、型全体を冷却した。
【0029】そして、531℃(ガラス粘度で1012
PaS相当)まで冷却された時に、上型部材45を上昇
させ、上型部材45と成形品47とを分離(離型)させ
た。その時に、下型部材46と成形品47とは付着した
ままである。更に、冷却して513℃で成形品47を下
型部材46から取り出した。この時、下型部材46と成
形品47とは互いに付着していなかった。その結果、取
り出した成形品47には割れの発生が無く、良好な品質
を確保していた。
【0030】次に、上型部材45を上昇させる温度を、
549℃、567℃、587℃に変更して、上述と同様
に成形を行ったが、何れも良好な結果が得られた。次
に、比較例として、上型部材45の上昇温度を600℃
にすると、離型は可能であったが、取り出した成形品の
上面形状が変形していた。別の比較例として、更に上型
部材45の上昇温度を522℃に下げた場合、取り出し
た成形品には割れが発生しているのが観察された。
【0031】次に、上型部材45の上昇温度を567℃
にし、下型部材46からの成形品の取り出し温度を46
0℃にしたが、結果は良好であった。その比較例とし
て、次に、取り出し温度を522℃に上げると、取り出
すことは可能であったが、成形品の上下面形状が変形し
ていた。更に、別の比較例として、取り出し温度を53
1℃にしたが、この場合には、成形品と下型部材とが固
着しており、その温度では、取り出すことができなかっ
た。以上の成果を表2に示す。
【0032】
【表2】 (第3の実施の形態)第3の実施の形態では、回折格子
やフレネルレンズなどの微細パターンを有する光学素子
で、プレス成形後の冷却工程において、ワレやクラック
を生じる虞がある場合に対処している。
【0033】即ち、実際、ガラス素材のガラス転移温度
もしくはそのガラスの粘度で1013dPaSに相当する
温度までガラス成形品を型内に保持すると、ガラスと型
との熱収縮率の差に起因して、微細パターンの凹凸個所
に応力集中が起こる。
【0034】これは、微細パターンの凹凸個所における
ガラス成形品と型部材との局部的な熱収縮量差に比べ、
ガラス成形品本体の全体的な熱収縮量差が大きく、特
に、光学有効面の中央よりも、その外周部で、光学有効
面に沿った内部応力が大きくなる傾向を持つと考えられ
る。その結果、温度降下によってガラス粘度が高まる経
過で、熱応力との均衡が崩れ、ワレやクラックを生じる
のである。
【0035】そこで、本発明では、熱応力との均衡が破
れる前に、ガラス成形品の微細パターンを有する光学有
効面を型部材の成形面から離脱させることを考慮して、
それが、そのガラス粘度で1012dPaSに相当する温
度以上であることを特定したのである。これは、微細パ
ターンが、0.1μm以上、50μm以下のオーダーを
持つ凹凸形状において、ワレやクラックの発生防止のた
めに有効である。
【0036】なお、微細パターンの転写精度を確保する
点からは、離型後の成形品の変形、微細パターンの凹凸
形状のだれを避ける意味で、実際の離型時の温度は、可
及的に低い方がよい。従って、実用上は、離型の温度
は、そのガラス粘度で1012dPaS〜10 dPaS
の範囲に設定するのがよい。
【0037】また、微細パターンを有する光学有効面が
片面のみにある光学素子を成形する場合には、離型に際
して、微細パターンが転写された成形品の面(光学有効
面)を、他の面よりも早く型部材の成形面から離脱させ
ることが好ましい。これは、上型部材に微細パターンを
転写する成形面を設け、該成形面におけるガラス成形品
の重力による離型性を有効に利用するだけでなく、下型
部材の成形面でガラス成形品全体を支えて、その変形を
回避する点で、また、その影響で微細パターンの転写精
度が低下するのを避ける点で有効である。
【0038】そのため、本発明では、上下一対の型部材
により、ガラス素材の一面に微細パターン(0.1μm
以上で50μm以下のオーダーを持つ凹凸形状)を転写
して、ガラス成形品に所要の光学機能面を形成する光学
素子のプレス成形型において、上型部材の、微細パター
ンを有する成形面の離型時におけるガラス離型性より
も、下型部材の、微細パターンのない成形面のガラス離
型性が低くなるように、型部材の成形面における材質、
あるいは/および、表面粗さを選択して、両型部材の成
形面を設定したのである。
【0039】因みに、上下の型部材において、上型部材
の成形面に微細パターンを形成し、下型部材の成形面に
平滑な転写面を形成した場合、成形品の重力を考慮しな
ければ、当然、上型部材の成形面の実質的なガラス接触
表面積は、下型部材のそれよりも大きく、型表面に対す
る密着力が大きく、離型性が悪いことが容易に理解され
よう。しかも、実際には、成形品の重力の影響は、型表
面に対する密着力に比べて問題にならない程度であるか
ら、上述の本発明の成形方法のように、プレス成形後の
冷却工程において、比較的高い温度で離型を実行したと
しても、成形型において、微細パターンの有る成形面側
でガラス成形品を先に離脱させるには、特別な配慮が必
要である。
【0040】そして、その最も単純で簡潔な解決方法
は、上述のような型部材の成形面における材質、あるい
は/および、表面粗さの選択に依るのである。なお、本
発明者は、多くの実験過程から、型表面に対するガラス
成形品の離型性は、型の表面粗さと相関があり、同じ材
質でも、粗くなるほど離型性が悪くなることを明らかに
した。
【0041】その一つの成形型に対する実施の形態は、
上型部材の、微細パターンを有する成形面を、硬質炭素
膜、i−C、アモルファス炭化水素膜の何れかでコーテ
ィングするとともに、下型部材の、微細パターンのない
成形面を、TiN,TaN,TiC,TaC,SiC,
SiNなどの硬質セラミック、または、Pt,Pd,I
r,Rh,Os,Ru,Re,W,Taの内の一種以上
を含む貴金属合金で構成するのである。
【0042】また、他の実施の形態は、上型部材の、微
細パターンを有する成形面全領域と、下型部材の、微細
パターンのない成形面の、少なくともプレス成形された
光学素子の光学有効面に対応する部分領域とを、硬質炭
素膜、i−C、アモルファス炭化水素膜の何れかでコー
ティングすると共に、下型部材の前記部分領域以外の成
形面の部分領域をTiN,TaN,TiC,TaC,S
iC,SiNなどの硬質セラミック、または、Pt,P
d,Ir,Rh,Os,Ru,Re,W,Taの内の一
種以上を含む貴金属合金で構成するのである。
【0043】更に、他の実施の形態は、上型部材の、微
細パターンを有する成形面全領域と、下型部材の、微細
パターンのない成形面の、少なくともプレス成形された
光学素子の光学有効面に対応する部分領域との表面粗さ
を、Rmaxで20nm以下(RMSで5nm以下)
に、また、下型部材の前記領域外の成形面の部分領域の
表面粗さを、Rmaxで50nm以上2000nm以下
(RMSで15nm以上350nm以下)にするのであ
る。なお、ここで、RMS値は、200μm角内の平方
自乗平均である。
【0044】なお、これら型部材の成形面の材質、ある
いは/および、表面粗さを選択する場合には、微細パタ
ーンを有する成形面についての離型時の温度を、ガラス
粘度で1012dPaSに相当する温度以上に設定して、
使用するのがよい。
【0045】このように、上型部材の、微細パターンを
有する成形面について、その材質、表面粗さを選択する
ことは、ガラス成形品のワレやクラックを回避するだけ
でなく、型表面に対するガラスの融着を防止する上で有
効である。
【0046】
【実施例】(実施例1)図5は、本発明に係わる光学素
子の成形方法の一つの実施態様を示すものである。図5
(a)において、符号1、2は上下の型部材であり、そ
れらの成形面にはスパッタ法により、TiN膜3、4が
2μmの厚さでコーティングされる。また、上型部材1
については、更に、その上にイオンビーム法により、i
−C膜5が40nmの厚さでコーティングされている。
また、型部材1、2の素材には石英を用いており、これ
らの成形面を平坦に、かつ、表面粗さをRmaxで10
nm(RMSで2nm)に研磨し、また、上型部材1の
成形面には、フォトリソ法により、図5(b)に拡大し
て示したように、微細パターン1aを、成形面の中心か
ら直径φ:10mmの領域だけに形成している。
【0047】符号6は直径φ:12mm、厚み:2.5
mmの円板状のガラス素材である。なお、その組成を表
3に示すホウ珪酸ガラスとした。
【0048】
【表3】 wt% ────────────────────────────────── SiO2 B2O3 Al2O3 Li2O Na2O K2O BaO ZnO Sb2O3 48.1 9.45 3.9 5.95 1.6 0.6 26.5 3.6 0.3 ────────────────────────────────── これらを、公知の加熱装置(図示せず)を用いて、不活
性雰囲気としてのN2中で、570℃に加熱し、図5
(c)に示すように、ガラスの厚みが2mmになるよう
に、2450Nの荷重を60秒間、負荷した。その後、
ガラスを515℃(ガラスの粘度で1012dPaSに相
当する温度)まで、40℃/minの冷却速度で冷却し
て、図5(d)に示すように、上型部材1を上昇させ、
成形されたガラス成形品(光学素子)の、微細パターン
を有する光学有効面を、型部材1の成形面から剥離させ
た。
【0049】更に、下型部材2の成形面上に残されたガ
ラス成形品を、450℃まで、80℃/minの冷却速
度で冷却し、その後、成形型から取出した。成形された
ガラス成形品にはワレやクラックもなく、また、型への
融着、特に、微細パターンを有する面での融着もなかっ
た。また、図5(b)に示すような形状の凹凸形状のエ
ッジの部分7、8は、R:0.5μm以下になってお
り、転写性も良好であった。
【0050】(比較例1)本発明の優位性を示すため
に、以下に比較例を示す。ここでは、離型のために上型
部材1を上昇させる時の温度を490℃(ガラスの粘度
で1013.5dPaSに相当)に設定した以外は、実施例
1と全て、同じ条件でプレス成形しているが、その結果
は、成形されたガラス成形品の微細パターンの一部にク
ラックが発生していた。また、離型のために、505℃
(ガラスの粘度で1012.5dPaSに相当)の温度で、
上型部材1を上昇させた場合にも、同様なクラックが発
生した。
【0051】(比較例2)ここでは、上型部材1の成形
面にi−Cをコーティングしない(TiNのまま)で、
それ以外は、実施例1と全て、同じ条件で成形してい
る。その結果、515℃の温度で、上型部材1を上昇さ
せたとき、ガラス成形品は、下型部材2とは剥離し、上
型部材1に密着したままであった。その後、80℃/m
inの冷却速度で冷却したところ、ガラス成形品は40
0℃で上型部材1から剥離した。そこで、成形型から取
出そうとしたが、ガラス成形品はワレており、上型部材
1の微細パターンの個所にガラスの一部が融着してい
た。
【0052】(比較例3)ここでは、実施例1と同じ型
を用い、ガラス素材として、直径φ:12mm、厚み:
1.5mmの円板を用いて、1.2mm厚さにプレス変
形させた以外、上記実施例1と全て、同じ条件で成形し
ている。その結果、515℃の温度で、上型部材1との
剥離は可能であったが、450℃の温度でも、下型に付
着したままであり、成形型から取出せず、380℃の温
度まで降下したところで、取出したが、この場合には、
微細パターンのない下型の成形面に対応するガラス成形
品の下面の平面部からクラックが発生していた。
【0053】以上のように、本発明の成形方法によれ
ば、ガラスの粘度で1012dPaSに相当する温度以上
で、微細パターンを有するガラス成形品の面を剥離させ
ることにより、微細パターンの凹凸形状の個所にワレや
クラックの発生、あるいは、そこでの融着を防ぐことが
できる。
【0054】また、本発明の成形型によれば、微細パタ
ーンのない成形面の材質を、離型性の低い材料にするこ
とにより、微細パターンを有する成形面から、他の特別
な装置を用いることなく、転写後のガラス成形品を高温
で容易に剥離させることができる。ただし、光学素子の
形状の特異性によっては、微細パターンのない面にクラ
ックが発生する場合もある。
【0055】(実施例2)この実施例では、図6に示す
ような成形型を用いて光学素子の成形を行った。ここで
は、上下の型部材9、10のに材料に石英を用い、これ
らの成形面を平担に、かつ、表面粗さをRmaxで10
nm(RMSで2nm)に研磨した。そして、上型部材
9の成形面には、フォトリソ法により、実施例1と同様
な微細パターンを形成した。また、この型部材9、10
には、スパッタ法により、TiN膜11、12を、それ
ぞれ、2μmの厚さでコーティングし、更に、上型部材
9の成形面にはイオンビーム法により、i−C膜13を
40nmの厚さで形成した。また、下型部材10の成形
面には、マスクをすることにより、中心から直径φ:1
1mmの領域内だけ、i−C膜14を40nmの厚さで
形成した。なお、ガラス素材15は、直径φ:12m
m、厚み:1.5mmの円板を用い、その硝種は実施例
1と同じものとした。
【0056】これらを用いて、実施例1と同様の条件
で、プレス成形したところ、前記比較例3と異なり、4
50℃の温度でも取出し可能で、ガラス成形品の平面部
にクラックがなく、また、光学有効面での微細パターン
の転写性も良好であった。
【0057】以上のように、微細パターンを有する成形
面と、微細パターンのない成形面の光学有効面に相当す
る領域とを、離型性に優れたi−C膜とし、微細パター
ンのない成形面の、光学有効面以外の領域を、離型性の
低いTiN膜のままにすることにより、微細パターンを
有する成形面をガラス素材に転写し、そのガラスの粘度
で1012dPaSに相当する温度で、上記成型面からガ
ラス成形品を剥離することが可能となり、光学有効面内
のワレや、クラック、融着を防ぐことができる。
【0058】(実施例3)この実施例では、型部材の成
形面について、実施例2の成形型において、TiNをS
iCに、i−Cをグラファイトターゲットを用いたスパ
ッタ法による硬質炭素膜に変更した以外は、同様に作製
している。また、ガラス素材は、直径φ:12mm、厚
み:1.5mmの円板で、その組成には、表2に示す燐
酸系ガラスを採用した。
【0059】
【表4】 wt% ────────────────────────────────── P2O5 B2O3 Al2O3 Li2O Na2O K2O BaO ZnO SiO2 48.7 0.93 2.12 1.74 4.12 6.53 4.60 30.9 0.34 ────────────────────────────────── これらを不活性雰囲気のN2 中で、385℃の温度に加
熱し、ガラスの厚みが1.2mmになるように、245
0Nの荷重を60秒間、負荷した。その後、ガラスを3
60℃(ガラスの粘度で1011dPaSに相当する温
度)まで、20℃/minの冷却速度で冷却して、上型
部材を上昇させ、微細パターンを有する成型面からガラ
ス成形品の上面を剥離させた。更に、ガラスを310℃
まで、40℃/minの冷却速度で冷却して、成形型か
らガラスを取出した。
【0060】成形されたガラス成形品にはワレやクラッ
クもなく、型への融着もなかった。また、成形面から転
写された微細パターンも、エッヂがR:0.5μm以下
で、転写性も良好であった。
【0061】(比較例4)実施例3との比較のため、こ
こでは、離型のために上型部材を上昇させる時の温度を
335℃(ガラスの粘度で1013.4dPaSに相当する
温度)にしたが、それ以外は、実施例3と全て、同じ条
件でプレス成形した。その結果、成形されたガラスは、
微細パターンの一部にクラックが発生していた。また、
別に、離型する時の温度を345℃(ガラスの粘度で1
12.3dPaSに相当する温度)にした場合について
も、同様なクラックが発生した。しかし、離型(上型部
材の上昇)の際の温度を、350℃(ガラスの粘度で1
11.8dPaSに相当)にした場合には、発生しなかっ
た。
【0062】(比較例5)ここでは、実施例3と同様に
成形し、上型部材の温度を360℃で、上昇させて、微
細パターンを有する成形面からガラス成形品の上面を剥
離させた後、図7に示すような、下からの突き出し棒1
6で、下型部材とガラス成形品の下面を強制的に剥離さ
せ、ガラス成形品を成形型から取出した。その結果、成
形されたガラス成形品17の微細パターンのある面に
は、ワレやクラックもなく、型への融着もなかった。し
かし、取出されたガラス成形品は、下面剥離時の外力に
より、図8に示す様な変形が生じた。
【0063】以上のように、微細パターンを有する成形
面と、微細パターンのない成形面の光学有効面に相当す
る領域とを、離型性の優れた硬質炭素膜とし、微細パタ
ーンのない面での上記領域以外の面を、離型性の低いS
iCにすることにより、特別な剥離機構などを用いるこ
となく、微細パターンを有する成形面をガラス素材に転
写し、そのガラスの粘度で1011dPaSに相当する温
度で、ガラス成形品の上記転写面を剥離することが可能
となり、剥離時に生ずるガラスの変形や、光学有効面内
のワレ、クラック、融着を防ぐことができる。
【0064】(実施例4)ここでは、図9に示すような
成形型を用いてプレス成形した。上型部材18には石英
を用い、これを平面に研磨し、表面粗さをRmaxで1
0nm(RMSで2nm)とした。その後、フォトリソ
法により、実施例1と同じに、微細パターンを形成し
た。下型部材19にはバインダレス超硬合金を用い、こ
れを平面に研磨した。ここでは、全面をまず1/4um
のダイヤモンドパウダーを用いて研磨することにより、
表面粗さをRmaxで13nm(RMSで3nm)と
し、その後に、中心から直径φ:11mmより外の領域
19aのみを、3μmのダイヤモンドパウダーで研磨す
ることにより、表面粗さをRmaxで50nm(RMS
で15nm)とした。
【0065】そして、この型部材18、19に、スパッ
タ法により、TiN膜20、21を2μmの厚さでコー
ティングし、更に、上下型部材の両方に、イオンビーム
法によりi−C膜22、23を、40nmの厚さで形成
した。なお、ガラス素材24は、直径φ:12mm、厚
み:1.5mmの円板で、その硝種には、実施例1と同
じものを用いた。
【0066】これらを用いて、実施例1と同様の条件
で、プレス成形したところ、515℃での上型型部材の
成形面とガラス成形品の上面との剥離、及び、450℃
での成形型からの取出しも可能で、ガラス成形品のワレ
やクラック、型への融着もなく、微細パターンの転写性
も、エッヂがR:0.5μm以下になっており、良好で
あった。
【0067】また、微細パターンのない成形面を、その
中心から直径φ:11mmより外の領域のみを、#80
0のカーボンランダムであらし、その表面粗さをRma
xで2000nm(RMSで350nm)とした。この
成形型を用いても、上述同様なガラス成形品の形成が可
能であった。
【0068】(比較例6)ここでは、微細パターンのな
い成形面の中心から直径φ:11mmより外の領域のみ
を、2μmのダイヤモンドパウダーで研磨することによ
り、表面粗さをRmaxで40nm(RMSで10n
m)とした以外は、実施例4と全て、同じ条件でプレス
成形した。その結果、10回の成形で2回、515℃で
の上型部材とガラス成形品の上面との剥離時に、ガラス
が上型部材に密着したままで、先に成形品の下面が剥離
した。この後、ガラス成形品を450℃まで冷却して、
取出したところ、微細パターンの一部にクラックが発生
していた。
【0069】(比較例7)ここでは、微細パターンのな
い成形面の中心から直径φ:11mmより外の領域のみ
を、サンドブラストにより、表面粗さをRmaxで25
00nm(RMSで400nm)とした以外は、実施例
4と全て、同じ条件でプレス成形した。その結果、51
5℃での上型部材の成形面とガラス成形品の上面との剥
離、及び、450℃での成形型からの取出しも可能であ
ったが、成形品の下面周辺部からクラックが発生し、一
部、型への融着も発生していた。
【0070】(比較例8)ここでは、微細パターンを有
する成形面の全面と、微細パターンのない成形面の中心
から直径φ:11mmの領域を、1.5μmのダイヤモ
ンドパウダーを用いて研磨することにより、表面粗さを
Rmaxで25nm(RMSで6nm)とし、微細パタ
ーンのない成形面の中心から直径φ:11mmより外の
領域を、#800のカーボランダムで粗し、表面粗さを
Rmaxで2000nm(RMSで350nm)とした
成形型を用いたが、その他は、実施例4と全て、同じ条
件でプレス成形した。その結果、515℃での上型部材
の成形面とガラス成形品の上面との剥離、及び、450
℃での成形型からの取出しも可能で、成形品のワレやク
ラック、型への融着もなく、微細パターンの転写性も、
エッヂがR:0.5μm以下になっており、良好であっ
たが、成形品全体が曇っており、透過率が公差外であっ
た。しかし、微細パターンを有する成形面の全面と微細
パターンのない成形面の中心から直径φ:11mmの領
域を、1μmのダイヤモンドパウダーを用いて研磨する
ことにより、表面粗さをRmaxで20nm(RMSで
5nm)にしたところ、成形したガラス成形品は、若干
の曇はあるものの、その透過率は公差内であった。
【0071】以上のように、微細パターンを有する面と
微細パターンのない面の光学有効面相当の領域の表面粗
さをRmaxで20nm(RMSで5nm)以下とし、
微細パターンのない成形面の上記以外の領域の表面粗さ
を、Rmaxで50nm以上2000nm以下(RMS
で15nm以上350nm以下)にすることにより、特
別な剥離機構を用いることなく、微細パターンを有する
成形面を、ガラス素材に転写し、そのガラスの粘度で1
12dPaSに相当する温度で、剥離することが可能と
なり、剥離時に生ずるガラスの変形や、冷却時のワレ、
クラック、融着を防ぐことができる。
【0072】(実施例5)ここでは、図10に示すよう
な成形型を用いてプレス成形するが、上下の型部材2
5、26にはバインダレス超硬合金を用い、これを平面
に研磨し、表面粗さをRmaxで12nm(RMSで3
nm)とした。型部材25は、フォトリソ法により、図
10(b)に拡大して示すような、微細パターン25a
を、直径φ:10mmの領域だけ形成した。型部材26
は、その成形面の中心から直径φ:11mmより外の領
域26aのみを、#800のカーボランダムあらし、表
面粗さをRmaxで2000nm(RMSで350n
m)とした。これら型部材25、26にスパッタ法によ
り、TiN膜27、28を2μmの厚さでコーティング
し、更に、上下型部材の両方にイオンビーム法により、
i−C膜29、30を、40nmの厚さで形成した。な
お、ガラス素材31は直径φ:12mm、厚み:2.5
mmの円板で、その硝種は実施例1と同じものを用い
た。
【0073】これらを用いて、実施例1と同様の条件で
プレス成形したところ、515℃での上型部材の成形面
とガラス成形品の上面との剥離、及び、450℃での型
からの取出しも可能で、成形品のワレやクラック、型へ
の融着もなく、微細パターンの転写性も、エッヂがR
0.5μm以下になっており、良好であった。
【0074】(比較例9)ここでは、微細パターンのな
い成形面の中心から直径φ:11mmより外の領域のみ
を、4μmのダイヤモンドパウダーで研磨することによ
り、表面粗さをRmaxで80nm(RMSで18n
m)とした以外は、実施例5と全て、同じ条件でプレス
成形した。その結果、10回の成形で3回、515℃で
の上型型部材の成形面とガラス成形品の上面の剥離時
に、ガラスが上型部材に密着したままであり、その下面
が剥離した。この後、ガラス成形品を450℃まで冷却
して、取出したところ、微細パターンの一部にクラック
が発生していた。しかし、微細パターンのない型の中心
から直径φ:11mmより外の領域のみを、5μmのダ
イヤモンドパウダーで研磨することにより、表面粗さを
Rmaxで300nm(RMSで25nm)とした以外
は、実施例5と全て、同じ条件でプレス成形したとこ
ろ、10回の成形で、10回とも515℃での上型部材
の成形面とガラス成形品の上面の剥離及び450℃での
型からの取出しも可能で、成形品のワレやクラック、型
への融着もなく、微細パターンの転写性も、エッヂが
R:0.5μm以下になっており、良好であった。
【0075】以上説明したように、実施例4、5から、
微細パターンを有する成形面と微細パターンのない成形
面の少なくとも光学有効面に相当する領域との表面粗さ
に対して、微細パターンのない成形面の、ガラスと接触
する他の領域の面の表面粗さをより粗くすることによ
り、特別な剥離機構を用いることなく、微細パターンを
有する成形面で転写し、そのガラスの粘度で1012dP
aSに相当する温度で剥離することが可能となり、剥離
時に生ずるガラス成形品の変形や冷却時のワレ、クラッ
ク、融着を防ぐことができる。また、微細パターンの形
状による離型性の変化に対しても、微細パターンのない
成形面の、光学有効面の相当領域以外の表面粗さを、R
maxで50nm以上2000nm以下(RMSで、1
5nm以上350nm以下)の範囲内で選ぶことによ
り、対応可能となる。
【0076】なお、これまでに述べた実施例では、離型
性の良い表面材としてi−C、硬質炭素膜をあげたが、
アモルファス炭化水素膜でも同様な結果が得られ、離型
性の低い表面材としてTiN、SiCを挙げたが、Ta
N,TiC,TaC,SiNなどの硬質セラミックある
いは、Pt,Pd,Ir,Rh,Os,Ru,Re,
W,Taの内の一種以上を含む貴金属合金でも同様な結
果が得られた。
【0077】また、本発明の成形方法の実施の形態で
は、片面のみに微細パターンを有する光学有効面の光学
素子を形成する場合について述べたが、上下の両面に微
細パターンを有する光学有効面の光学素子を形成する場
合にも、離型温度を特定した本発明の成形方法を採用す
ることができる。この場合には、離型の際に、ガラス成
形品を、その外周部で保持するなどの別の保持手段を用
いればよい。
【0078】
【発明の効果】本発明は、以上説明したようになり、ガ
ラス素材をプレス成形した後、成形されたガラス成形品
と型部材との熱収縮率の差に起因する大きな応力がガラ
ス成形品に働く以前に、型部材からのガラス成形品の拘
束を解除して、上記ガラス成形品のワレやクラックを防
止する。
【0079】また、本発明では、微細パターンを有する
ガラス光学素子を、その微細パターンの個所で、ワレや
クラックの発生、型へのガラスの融着のない成形が可能
となる。
【0080】また、本発明の成形方法で採用される成形
型によれば、片面に微細パターンを有するガラス光学素
子を、特別な機構を追加することなく、容易に微細パタ
ーンの個所での離型を実現することができる。勿論、こ
の発明によれば、微細パターンの形状毎に異なる離型性
に対しても、容易に対処することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す型の概略断面
正面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す型の概略断面
正面図である。
【図3】同じく、これによって得られる光学素子の平面
図である。
【図4】同じく、正面図である。
【図5】本発明の第3の実施例で用いる成形型とプロセ
スを示す概略図である。
【図6】同じく、本発明の第4の実施例で用いる成形型
を示す概略図である。
【図7】同じく、比較例5で用いる離型機構を示す概略
図である。
【図8】同じく、比較例5で成形されたガラスの形状を
示す図である。
【図9】同じく、本発明の第5の実施例で用いる成形型
を示す概略図である。
【図10】同じく、本発明の第6の実施例で用いる成形
型を示す概略図である。
【図11】成形されるフレネルレンズを示す概略図であ
る。
【図12】成形される回折格子を示す概略図である。
【符号の説明】
1、2 型部材 1a 微細パターンを有する成形面 3、4 TiN膜 5 i−C膜 6 ガラス素材 7、8 エッジ 9、10 型部材 11、12 TiN膜 13、14 i−C膜 15 ガラス素材 16 突き出し棒 17 ガラス成形品(光学素子) 18、19 型部材 19a 表面粗さの異なる面 20、21 TiN膜 22、23 i−C膜 24 ガラス素材 25、26 型部材 27、28 TiN膜 29、30 i−C膜 31 ガラス素材 41、45 上型部材 42、46 下型部材 43、47 胴型 44、48 成形品
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平林 敬二 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 橋本 茂 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 山本 潔 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上下一対の型部材により、加熱軟化状態
    のガラス素材をプレス成形して光学素子を得る方法にお
    いて、各型部材の成形面により成形されたガラス素材
    が、その片方の面だけを、そのガラス粘度で1012dP
    aSに相当する温度以上で離型する状態で、型開きする
    ことを特徴とする光学素子のプレス成形方法。
  2. 【請求項2】 前記の、成形されたガラス素材の片方の
    面だけを離型させる温度が、そのガラス粘度で109
    PaSに相当する温度以下であることを特徴とする請求
    項1に記載の光学素子の成形方法。
  3. 【請求項3】 型部材からの成形品の取り出しが、その
    ガラス粘度で1013dPaSに相当する温度以下である
    ことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の光学素子
    の成形方法。
  4. 【請求項4】 成形される光学素子の片方の面形状が、
    冷却時に型部材の対応面を挟み込む形状であることを特
    徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の光学素子の
    成形方法。
  5. 【請求項5】 上下一対の型部材により、ガラス素材の
    少なくとも一面に微細パターン(0.1μm以上で50
    μm以下のオーダーを持つ凹凸形状)を転写して、所要
    の光学有効面を形成する光学素子のプレス成形方法にお
    いて、微細パターンを有する成形面を、これを転写した
    ガラス成形品の面から、そのガラス粘度で1012dPa
    Sに相当する温度以上で、離型させるように、プレス成
    形を実施することを特徴とする光学素子のプレス成形方
    法。
  6. 【請求項6】 上下一対の型部材により、ガラス素材の
    一面に微細パターン(0.1μm以上で50μm以下の
    オーダーを持つ凹凸形状)を転写して、ガラス成形品に
    所要の光学機能面を形成する光学素子のプレス成形型に
    おいて、上型部材の、微細パターンを有する成形面の離
    型時におけるガラス離型性よりも、下型部材の、微細パ
    ターンのない成形面のガラス離型性が低くなるように、
    上記型部材の成形面における材質、あるいは/および、
    表面粗さを選択して、両型部材の成形面を設定したこと
    を特徴とする光学素子のプレス成形型。
  7. 【請求項7】 上型部材の、微細パターンを有する成形
    面を、硬質炭素膜、i−C、アモルファス炭化水素膜の
    何れかでコーティングし、下型部材の、微細パターンの
    ない成形面を、TiN,TaN,TiC,TaC,Si
    C,SiNなどの硬質セラミック、または、Pt,P
    d,Ir,Rh,Os,Ru,Re,W,Taの内の一
    種以上を含む貴金属合金で構成したことを特徴とする請
    求項6に記載の光学素子の成形型。
  8. 【請求項8】 上型部材の、微細パターンを有する成形
    面全領域と、下型部材の、微細パターンのない成形面
    の、少なくともプレス成形された光学素子の光学有効面
    に対応する部分領域とを、硬質炭素膜、i−C、アモル
    ファス炭化水素膜の何れかでコーティングすると共に、
    下型部材の前記部分領域以外の成形面の部分領域をTi
    N,TaN,TiC,TaC,SiC,SiNなどの硬
    質セラミック、または、Pt,Pd,Ir,Rh,O
    s,Ru,Re,W,Taの内の一種以上を含む貴金属
    合金で構成したことを特徴とする請求項6に記載の光学
    素子の成形型。
  9. 【請求項9】 上型部材の、微細パターンを有する成形
    面全領域と、下型部材の、微細パターンのない成形面
    の、少なくともプレス成形された光学素子の光学有効面
    に対応する部分領域との表面粗さを、Rmaxで20n
    m以下に、また、下型部材の前記領域外の成形面の部分
    領域の表面粗さを、Rmaxで50nm以上2000n
    m以下にしたことを特徴とする請求項6に記載の光学素
    子の成形型。
  10. 【請求項10】 微細パターンを有する成形面について
    の離型時の温度を、ガラス粘度で1012dPaSに相当
    する温度以上に設定して、使用されることを特徴とする
    請求項6〜9の何れかに記載の光学素子のプレス成形
    型。
JP34327598A 1997-12-05 1998-12-02 光学素子のプレス成形方法および成形型 Pending JPH11263627A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP34327598A JPH11263627A (ja) 1997-12-05 1998-12-02 光学素子のプレス成形方法および成形型

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-335422 1997-12-05
JP33542297 1997-12-05
JP34327598A JPH11263627A (ja) 1997-12-05 1998-12-02 光学素子のプレス成形方法および成形型

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11263627A true JPH11263627A (ja) 1999-09-28

Family

ID=26575166

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP34327598A Pending JPH11263627A (ja) 1997-12-05 1998-12-02 光学素子のプレス成形方法および成形型

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11263627A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6989114B1 (en) 1999-07-13 2006-01-24 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. Micro-shape transcription method, micro-shape transcription apparatus, and optical-component manufacture method
JP2008001568A (ja) * 2006-06-23 2008-01-10 Fujinon Corp ガラス成形装置およびガラス成形方法
WO2009057772A1 (ja) * 2007-11-02 2009-05-07 Sumitomo Electric Industries, Ltd. 回折光学素子およびその製造方法
JP4524515B2 (ja) * 2000-07-10 2010-08-18 富士電機デバイステクノロジー株式会社 磁気ディスク用ガラス基板のプレス成形用金型の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
WO2011021694A1 (ja) * 2009-08-20 2011-02-24 旭硝子株式会社 フレネルレンズ構造体、集光装置、カバーガラス付き太陽電池用フレネルレンズ、および、カバーガラス付き太陽電池用フレネルレンズの製造方法
JP2011116598A (ja) * 2009-12-04 2011-06-16 Panasonic Corp 光学レンズ用プレス成形金型、ガラス製光学レンズ、及びガラス製光学レンズの製造方法
CN114751632A (zh) * 2021-01-08 2022-07-15 Hoya株式会社 玻璃制成型模具的制造方法和光学元件的制造方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6989114B1 (en) 1999-07-13 2006-01-24 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. Micro-shape transcription method, micro-shape transcription apparatus, and optical-component manufacture method
JP4524515B2 (ja) * 2000-07-10 2010-08-18 富士電機デバイステクノロジー株式会社 磁気ディスク用ガラス基板のプレス成形用金型の製造方法および磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
JP2008001568A (ja) * 2006-06-23 2008-01-10 Fujinon Corp ガラス成形装置およびガラス成形方法
WO2009057772A1 (ja) * 2007-11-02 2009-05-07 Sumitomo Electric Industries, Ltd. 回折光学素子およびその製造方法
US8294996B2 (en) 2007-11-02 2012-10-23 Sumitomo Electric Industries, Ltd. Diffractive optical element and method of manufacturing the same
WO2011021694A1 (ja) * 2009-08-20 2011-02-24 旭硝子株式会社 フレネルレンズ構造体、集光装置、カバーガラス付き太陽電池用フレネルレンズ、および、カバーガラス付き太陽電池用フレネルレンズの製造方法
JP2011116598A (ja) * 2009-12-04 2011-06-16 Panasonic Corp 光学レンズ用プレス成形金型、ガラス製光学レンズ、及びガラス製光学レンズの製造方法
KR101502337B1 (ko) * 2009-12-04 2015-03-16 파나소닉 주식회사 광학렌즈용 프레스성형 금형, 유리 제 광학렌즈 및 유리 제 광학렌즈의 제조방법
CN114751632A (zh) * 2021-01-08 2022-07-15 Hoya株式会社 玻璃制成型模具的制造方法和光学元件的制造方法
CN114751632B (zh) * 2021-01-08 2024-04-02 Hoya株式会社 玻璃制成型模具的制造方法和光学元件的制造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6070436A (en) Manufacturing method for molded glass articles
JP4690100B2 (ja) ガラス光学素子用成形型およびガラス光学素子の製造方法
JP2002255574A (ja) ガラス光学素子のプレス成形方法
JP2005330152A (ja) 光学素子の成形方法及び光学素子
JP2005298262A (ja) 光学素子の量産方法
JPH11263627A (ja) 光学素子のプレス成形方法および成形型
JP2004359481A (ja) レンズ成形用レプリカ型の製造方法
JP4094210B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法及びそれに用いるガラス光学素子用成形型
JP3587499B2 (ja) ガラス成形体の製造方法
JP2001302260A (ja) 光学素子の成形方法
JP2002187727A (ja) ガラス基板の製造方法およびガラス基板成形用金型
JP2001114523A (ja) 光学素子成形用金型、光学素子成形用金型の製造方法及び光学素子成形用金型の使用方法
JP2001322830A (ja) ガラス光学素子のプレス成形方法およびそれにより成形したガラス光学素子
JPH0451495B2 (ja)
JP2001158628A (ja) ガラス光学素子のプレス成形方法
JP2001010831A (ja) ガラス光学素子用成形型及び該成形型を用いたガラス光学素子の製造方法
JPH11268920A (ja) 光学素子成形用成形型およびその製造方法
JP2875621B2 (ja) 光学ガラス成形体の製造方法と光学ガラス素子の製造方法及び製造装置
JP2533889B2 (ja) 光学素子製造方法
JP2004210550A (ja) モールド成形金型
JPH0455134B2 (ja)
JP2006206394A (ja) 光学素子成形型およびその製造方法、並びにこれを用いた光学素子の製造方法
JP4256190B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP3185299B2 (ja) ガラスレンズ成形用型およびガラスレンズ成形装置
JP4567893B2 (ja) 光学素子の製造方法および光学素子成形用成形型の製造方法