JPH11250931A - ナトリウム−硫黄電池用βアルミナセラミックスおよびその製造方法ならびにナトリウム−硫黄電池 - Google Patents

ナトリウム−硫黄電池用βアルミナセラミックスおよびその製造方法ならびにナトリウム−硫黄電池

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JPH11250931A
JPH11250931A JP10069370A JP6937098A JPH11250931A JP H11250931 A JPH11250931 A JP H11250931A JP 10069370 A JP10069370 A JP 10069370A JP 6937098 A JP6937098 A JP 6937098A JP H11250931 A JPH11250931 A JP H11250931A
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alumina
alumina ceramic
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sulfur battery
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JP10069370A
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Hiroki Sugiura
宏紀 杉浦
Toru Shimamori
融 島森
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NGK Spark Plug Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Naイオン導電性がよく、高強度で、かつ運
転時および組立時に破損しにくいNaS電池用βアルミ
ナセラミックスとその製造方法、ならびにこのβアルミ
ナセラミックスを用いたNaS電池を提供する。 【解決手段】 本発明のβアルミナセラミックスは、有
底筒状のセラミックス管と、該セラミックス管の開口部
にガラス接合されたαアルミナ製の絶縁リングと、上記
セラミックス管を収容する有底筒状の陽極容器とを備
え、該セラミックス管の内部には陰極活物質としての金
属ナトリウムが配置され、該陽極容器と該βセラミック
ス管との間には陽極活物質としての硫黄が配置されたN
aS電池の上記セラミックス管に用いられるβアルミナ
セラミックスであって、βアルミナ100重量部に対し
て、酸化イットリウム固溶量1〜5mol%かつ不純物
CaO量600ppm以下のイットリア安定化型酸化ジ
ルコニウムを1〜10重量部含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ナトリウム−硫黄
電池の固体電解質としてのβアルミナセラミックス管に
好適なβアルミナセラミックスおよびその製造方法に関
し、さらに、このβアルミナセラミックス管を用いたナ
トリウム−硫黄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】Na2O・xAl23(x=5〜11)
の組成式で表されるβアルミナセラミックスは、高いナ
トリウムイオン導電性を有するため、特にナトリウム−
硫黄電池用固体電解質として注目されている。ナトリウ
ム−硫黄電池に用いられるβアルミナセラミックスは有
底円筒状のβアルミナセラミックス管で、固体電解質と
しての役割に加えて陰極活物質としての金属ナトリウム
と陽極活物質としての硫黄(多硫化ナトリウム)とのセ
パレータとしての役割も果たしている。
【0003】このようなナトリウム−硫黄電池の概略構
造の一例を図1に示す。有底円筒状のβアルミナセラミ
ックス管1は、固体電解質としてのβアルミナセラミッ
クスからなる。このβアルミナセラミックス管1の開口
部には、αアルミナ製の絶縁リング2がガラス接合され
ている。また、絶縁リング2の上面には陰極蓋3が、下
面には陽極蓋4がそれぞれ熱圧接合されている。前記陰
極蓋3には陰極端子5が溶接され、この陰極端子5の中
央部を貫通して陰極集電体としての陰極パイプ(特許請
求の範囲に記載の「陰極棒」に相当する。)6が溶接さ
れている。陰極パイプ6の下部は前記βアルミナセラミ
ックス管1内に挿入されている。βアルミナセラミック
ス管1内には金属繊維7が配され、約150℃の保温下
において前記陰極パイプ6よりβアルミナセラミックス
管1内を排気した後、同温度で溶融させた金属ナトリウ
ム8が真空充填される。この充填後、陰極端子5の上端
は封止される。このような陰極室構成体は、円筒形の硫
黄成型体10内に挿入され、さらに、陽極集電端子11
が溶接された陽極集電体を兼ねる電槽(特許請求の範囲
に記載の「陽極容器」に相当する。)9内に挿入され
る。電槽9の上端は前記陽極蓋4と真空溶接され、これ
により電池内は完全密閉される。
【0004】このβアルミナセラミックス管は、電池組
立中および電池運転中に様々な応力を受ける。その応力
集中が材料の限界を超えてβアルミナセラミックス管が
破損すると、陰極活物質としてのナトリウムと陽極活物
質としての硫黄とが直接反応し、これにより急激な発熱
が発生する恐れがあるため、このβアルミナセラミック
ス管に用いられるβアルミナセラミックスには高い強度
が要求される。また、このβアルミナセラミックス管は
電池の構造部材であり導電性に大きく影響するため、高
いナトリウムイオン導電性を持つことも同時に要求され
る。
【0005】高強度なβアルミナセラミックスを得るた
めに、特開昭49−30407号公報にはホットプレス
で予備焼結を行い焼結密度を高める方法が、特開平2−
15576号公報にはβアルミナ製造工程の各段階にお
いて100ミクロン〜200ミクロンの粗粒原料粉末を
除去する方法が開示されている。また、特開昭57−8
2186号公報、特開平2−14891号公報および同
2−15578号公報には、焼結体の破損を防止するた
めに焼結体表面を被覆加工する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のうち特開昭49
−30407号公報および特開平2−15576号公報
に記載の方法は、βアルミナセラミックスをその本質的
な強度に近づけるものである。しかし、βアルミナセラ
ミックスは結晶構造的に伝導面(コンダクションプレー
ン)という二次元的に強度の弱い部分を持つため、αア
ルミナなどのような他のセラミックスに比べてその本質
的な強度は弱い。したがって、これらの公報に記載の方
法では大幅な強度向上を達成することはできない。ま
た、特開昭57−82186号公報、特開平2−148
91号公報および特開平2−15578号に記載の方法
は、表面のみの部分的な改善である。したがって、表面
もしくは表面に開口するクラックやポアに対しての効果
は得られても、セラミックス内部のクローズドポア等に
対しては効果がないため、強度を十分に向上させること
ができない。さらに、製造に要する工数やコストが増加
するという問題もある。このため、上記従来技術によっ
て得られるβアルミナセラミックスは、ナトリウム−硫
黄電池用の固定電解質としてのβアルミナセラミックス
管に用いるにはその強度が未だ不十分である。
【0007】一方、アルミナに酸化ジルコニウムを分散
することによりその母材であるアルミナの強度が向上す
ることは公知であり、この手法をβアルミナに応用した
特許は米国で出願されている(米国特許第435851
6号)。βアルミナに酸化ジルコニウムを分散させたβ
アルミナセラミックスは、酸化ジルコニウムの含有量に
応じて強度が向上する。しかし、ナトリウム−硫黄電池
用、特にβアルミナセラミックス管の開口部にαアルミ
ナからなる絶縁リングがガラス接合された構造のナトリ
ウム−硫黄電池用のβアルミナセラミックス管に用いら
れるβアルミナセラミックスにおいては、上記手法によ
り強度向上を図ると以下のような問題が生じる。
【0008】すなわち、βアルミナセラミックスの強度
を向上させるために酸化ジルコニウムの含有量を増やす
と、酸化ジルコニウムの粒子によりナトリウムイオンの
導電が妨げられて導電特性が劣化する。また、酸化ジル
コニウムの含有量が多くなるにつれてβアルミナセラミ
ックスの熱膨張係数が大きくなり、αアルミナ製絶縁体
リングとの熱膨張係数の差が大きくなるため、ナトリウ
ム−硫黄電池の組立時および運転時などに、その応力に
よりβアルミナセラミックス管が破損しやすい。さら
に、酸化ジルコニウム粉末はβアルミナ粉末よりも高価
であるため、酸化ジルコニウムを多量に添加すると原料
コストが高くなるという問題もある。
【0009】一方、酸化ジルコニウムの含有量を少なく
するとβアルミナセラミックスの強度が不十分となり、
そのためナトリウム−硫黄電池の組立時および運転時な
どにおいてβアルミナセラミックス管の破損を招くとい
う問題点があった。以上のように、酸化ジルコニウムを
分散させてβアルミナの強度向上を図る場合には、十分
に高強度なβアルミナセラミックスを得ることは可能で
ある。しかし、ナトリウム−硫黄電池の固体電解質とし
てのβアルミナセラミックスにおいては、強度とともに
要求される各種性能のバランスに優れた酸化ジルコニウ
ム含有量などの諸条件が不明であったため、この用途に
適したβアルミナセラミックスを得ることは困難であっ
た。
【0010】本発明の目的は、ナトリウム−硫黄電池の
固体電解質として好適なβアルミナセラミックス、具体
的には、ナトリウムイオン導電性がよく、高強度で、か
つ運転時および組立時などにおいて破損しにくいβアル
ミナセラミックスおよびその製造方法を提供することに
ある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは様々な実験と調査を重ね、下記に示す
知見を得た。
【0012】(1)ナトリウム−硫黄電池用βアルミナ
セラミックスの信頼性は、母材の強度のみによらず、電
池組立時などに加えられる応力の程度にも大きく依存し
ている。この組立時の応力による具体的な破損個所は、
主にβアルミナセラミックス管とαアルミナ製絶縁リン
グとの接合部位であり、βアルミナ側にクラックが伸展
している。このクラック発生を防止する方法の一つは、
βアルミナの強度を高くすることである。一方、上記接
合部位に発生する応力はαアルミナとβアルミナとの熱
膨張差から発生するために、この熱膨張差を少なくする
ことによってもクラック発生を低減することができる。
なお、αアルミナ製絶縁リングの熱膨張係数は通常、
7.7×10-6/℃〜7.9×10-6/℃である。
【0013】(2)上述のように、βアルミナセラミッ
クス中の酸化ジルコニウム含有量が増加すると、βアル
ミナのナトリウムイオン電導性は低下する。ここで、ナ
トリウムイオン電導性低下の程度は、酸化ジルコニウム
中に含まれるCa不純物の量によっても変化する。具体
的には、Ca不純物量が多いと導電性低下の程度は大き
くなり、Ca不純物量が少ないければ導電性低下の程度
は小さくなる。このナトリウムイオン導電性は、さらに
βアルミナセラミックス全体に含まれるCa不純物の合
計量にも依存する。ただし、βアルミナセラミックス全
体に含まれるCa不純物の合計量に比べて、酸化ジルコ
ニウム中のCa不純物量の方が導電性に対して敏感であ
る。
【0014】(3)酸化ジルコニウムとβアルミナとの
熱膨張率の差により、酸化ジルコニウムの含有量が多く
なるにつれてβアルミナセラミックスの熱膨張率は大き
くなり、αアルミナの熱膨張率との差が大きくなる。
【0015】本発明者は、上記知見をもとにして本発明
を完成したのである。すなわち、請求項1記載のナトリ
ウム−硫黄電池用βアルミナセラミックスは、有底筒状
のβアルミナセラミックス管と、該βアルミナセラミッ
クス管の開口部にガラス接合されたαアルミナ製の絶縁
リングと、上記βアルミナセラミックス管を収容する有
底筒状の陽極容器とを備え、該βアルミナセラミックス
管の内部には陰極活物質としての金属ナトリウムが配置
され、該陽極容器と該βアルミナセラミックス管との間
に形成された空間には陽極活物質としての硫黄が配置さ
れたナトリウム−硫黄電池の上記βアルミナセラミック
ス管に用いられるβアルミナセラミックスであって、β
アルミナ100重量部に対して1〜10重量部のイット
リア安定化型酸化ジルコニウムを含有し、該イットリア
安定化型酸化ジルコニウムにおける酸化イットリウムの
固溶量は該イットリア安定化型酸化ジルコニウムに対し
て1mol%〜5mol%であり、該イットリア安定化
型酸化ジルコニウム中の不純物CaO量が600ppm
以下であることを特徴とする。
【0016】ここで、βアルミナ100重量部に対する
イットリア安定化型酸化ジルコニウム(以下、「YS
Z」(Yttria Stabilized Zirconia)ともいう。)の
含有量は、1〜10重量部(好ましくは2〜7重量部)
とする。これは、βアルミナ100重量部に対するYS
Zの量が1重量部未満であると、βアルミナセラミック
スの強度向上効果が不十分となるためである。一方、Y
SZの量が10重量部を超えるとナトリウムイオン電導
性が劣化する。また、αアルミナとの熱膨張率の差が大
きくなるため、βアルミナセラミックスが破損しやすく
なる。さらに、原材料費が増大してコストアップを招く
ため好ましくない。YSZ中の不純物CaO量は600
ppm以下(好ましくは500ppm以下)とする。C
aO量が600ppmを超えると、βアルミナセラミッ
クスのナトリウムイオン電導性が大幅に劣化するため、
ナトリウム−硫黄電池の固体電解質として好ましくな
い。
【0017】このYSZにおける酸化イットリウムの固
溶量は、上記YSZに対して1mol%〜5mol%
(好ましくは2mol%〜3mol%)とする。これ
は、酸化イットリウムの固溶量が1mol%以下である
と、単斜晶酸化ジルコニウムの割合が増加して正方晶酸
化ジルコニウムの割合が少なくなるので、ジルコニウム
分散粒子の相変態による強度向上が達成されないためで
ある。一方、酸化イットリウムの固溶量が5mol%以
上であると、立方晶酸化ジルコニウムが増加して正方晶
酸化ジルコニウムの割合が少なくなり、その結果やはり
相変態による強度向上が達成されなくなる。また、酸化
イットリウムの割合が多いとコストアップにもつながる
ため好ましくない。
【0018】このナトリウム−硫黄電池用βアルミナセ
ラミックスの熱膨張係数は、請求項2記載のように、
7.7×10-6/℃〜8.0×10-6/℃であることが
好ましい。上述のように、αアルミナの熱膨張係数は通
常7.7×10-6/℃〜7.9×10-6/℃である。こ
のため、βアルミナセラミックスの熱膨張係数が8.0
×10-6/℃を超えると、αアルミナ製絶縁リングとの
ガラス接合時に熱応力を受けてβアルミナセラミックス
管が破損するか、もしくはその応力が残留して電池運転
中にβアルミナセラミックス管の破損を招きやすい。
【0019】また、請求項1または2記載のナトリウム
−硫黄電池用βアルミナセラミックスにおいて、このβ
アルミナセラミックス全体に含まれる不純物Ca量は、
請求項3に記載のように、CaO換算で100ppm以
下であることが好ましい。βアルミナセラミックス全体
に含まれる不純物Caの量がCaO換算で100ppm
を超えると、このβアルミナセラミックスのナトリウム
イオン電導性が大幅に劣化するため、ナトリウム−硫黄
電池用βアルミナセラミックスとしては好ましくない。
【0020】請求項4記載のナトリウム−硫黄電池用β
アルミナセラミックスの製造方法は、請求項1〜3に記
載のβアルミナセラミックスを製造する方法であって、
βアルミナ粉末と、酸化ジルコニウム粉末および/また
は加熱により酸化ジルコニウムになる化合物の粉末と、
酸化イットリウム粉末および/または加熱により酸化イ
ットリウムになる化合物の粉末と、を混合する混合工程
と、上記混合工程で得られた混合粉末を造粒する造粒工
程と、上記造粒工程で得られた造粒粉末を成形する成形
工程と、上記成形工程で得られた成形体を焼成する焼成
工程と、からなることを特徴とする。
【0021】また、請求項4の上記混合工程において、
βアルミナ粉末と酸化ジルコニウム粉末と酸化イットリ
ウム粉末とを混合する代わりに、請求項5記載のよう
に、βアルミナ粉末と、酸化イットリウム1mol%〜
5mol%が固溶したYSZからなるYSZ粉末と、を
混合してもよい。請求項5記載の製造方法によると、酸
化イットリウムの固溶量を制御しやすいという利点があ
る。。このYSZ粉末中の不純物CaO量は、600p
pm以下であることが好ましく、500ppm以下であ
ることがより好ましい。
【0022】請求項4および5記載の製造方法におい
て、原料粉末および造粒粉末の平均粒径は特に限定され
ないが、通常では原料粉末の平均粒径は1.5〜2.5
μm、造粒粉末の平均粒径は30〜80μm程度であ
る。混合工程、造粒工程、成形工程および焼成工程にお
いて用いる方法とその条件についても特に限定されず、
常法に従えばよい。
【0023】そして、請求項6記載のナトリウム−硫黄
電池は、本発明のβアルミナセラミックスを固体電解質
として用いたナトリウム−硫黄電池であって、請求項1
から3のいずれか一項記載のβアルミナセラミックスか
らなる有底筒状のβアルミナセラミックス管と、該βア
ルミナセラミックス管の開口部にガラス接合されたαア
ルミナ製の絶縁リングと、上記βアルミナセラミックス
管を収容する有底筒状の陽極容器と、上記βアルミナセ
ラミックス管中に延びる陰極棒と、該βアルミナセラミ
ックス管の内部に配置された陰極活物質としての金属ナ
トリウムと、該陽極容器と該βアルミナセラミックス管
との間に形成された空間に配置された陽極活物質として
の硫黄と、を備えることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、実施例および比較例により
本発明をさらに具体的に説明する。
【0025】(1)βアルミナ粉末の調製 まず、βアルミナセラミックス管の製造に用いるβアル
ミナ粉末を調製した。出発原料としては、αアルミナ、
炭酸ナトリウム、および、安定化剤としての炭酸リチウ
ムを用いた。ここで用いたアルミナの純度は99.9%
であった。また、炭酸ナトリウムおよび炭酸リチウムと
しては試薬1級を用いた。このαアルミナ、炭酸ナトリ
ウムおよび炭酸リチウムを、それぞれアルミナ、酸化ナ
トリウムおよび酸化リチウムとして90.4重量%、
8.85重量%および0.75重量%となるような割合
で混合し、1250℃で10時間仮焼した後振動ミルに
より粉砕して、平均粒径1.9μmのβアルミナ粉末を
得た。
【0026】(2)βアルミナセラミックス管の作製 上記(1)で得たβアルミナ粉末100重量部と、表1
および表2に示す量のYSZ粉末(平均粒径0.5μ
m)とを水溶媒で混合してスラリとし、次いでスプレー
ドライ造粒して造粒粉末を得た。ここで、実施例および
比較例に用いた各YSZ粉末の酸化イットリウム固溶量
は、それぞれ表1に示す割合である。また、表1に示す
実施例A〜Tおよび比較例a〜oではCaO不純物濃度
が470ppmのYSZ粉末を用い、表2に示す比較例
p〜sではCaO不純物濃度が680ppmのYSZ粉
末を用いた。この造粒粉末を、成形圧力2,000kg
f/cm2のCIP(静水圧加圧成形)法によって、焼
結後に外形400mmL×45mmφ、肉厚2.5mm
tとなるような有底円筒形状に成形した。この成形体を
温度1,500℃〜1,600℃で1時間保持して焼成
し、βアルミナセラミックス管を得た。
【0027】(3)性能評価 得られたβアルミナセラミックス管につき、βアルミナ
セラミックスの特性として、内圧強度、ナトリウムイオ
ン電導の比抵抗、熱膨張係数、およびβアルミナセラミ
ックス全体に含まれる不純物Ca量(CaO換算とし
て)を下記の方法により評価した。その結果を表1およ
び表2に示す。
【0028】(1)内圧強度;有底円筒状のβアルミナセ
ラミックス管に対してその内側全体に圧力を印加し、破
壊した時点の強度を有底円筒の形状から計算して求めた
ものである。各ロットにつき8本のβアルミナセラミッ
クス管を用いて内圧強度を測定し、それらの平均値を求
めた。 (2)比抵抗値;有底円筒形状のまま、Na−Naセルを
用いた4端子法で、350度におけるナトリウムイオン
伝導値(比抵抗値)を測定した。 (3)熱膨張係数;有底円筒状のβアルミナセラミックス
管から試験片を切り出し、室温から100℃までの範囲
で熱膨張係数を測定した。 (4)βアルミナセラミックス中の不純物Ca量は、化学
分析にて測定し、CaO換算で算出した。
【0029】さらに、同一ロットのβアルミナセラミッ
クス管を用いて、図1に示す構造のナトリウム−硫黄電
池を作製した。この製造過程でβアルミナセラミックス
管とαアルミナ製絶縁リングとをガラス接合する工程が
あり、従来のβアルミナセラミックス管においてはこの
工程においてβアルミナセラミックス管の破損が問題と
なっていた。そこで、実施例および比較例の各βアルミ
ナセラミックス管について、このガラス接合工程の歩留
りを調査した。なお、ガラス接合条件は、室温から10
00℃まで2℃/minで上昇し、1000℃に1時間
保持した後、1.5℃/minで降温する条件とした。
また、完成した電池を用いて電池運転を行い、電池寿命
に最も影響のあるヒートサイクル試験での破損の有無を
調査した。条件は、室温から350℃(電池作動温度)
までの昇降温を繰り返し、各回毎に電池特性(充放電特
性)を評価した。その結果を表1および表2に示す。な
お、表1および表2の耐ヒートサイクルの欄に示す「サ
イクル回数」は、βアルミナとαアルミナとの接合部が
破損して正常な充放電が行えなくなる不具合が生じるま
でのヒートサイクル回数である。ヒートサイクルの回数
は50サイクルまでとし、50サイクルに耐久したもの
は「不具合無し」と表示した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】表1から明らかなように、本発明のβアル
ミナセラミックスは、350℃における比抵抗が4.0
Ω・cm以下とナトリウムイオン伝導度が良好で、ナト
リウム−硫黄電池に適している。これは、酸化ジルコニ
ウムの添加量を適量に抑え(YSZとして10重量部以
下)、かつ不純物CaO量の少ない酸化ジルコニウムを
用いたことによる。また、本発明のβアルミナセラミッ
クスは、ガラス接合時の歩留まりも90%以上と高く、
また電池運転時のヒートサイクルにも45回以上耐え、
実用上問題ない信頼性を得ている。これは、酸化ジルコ
ニウムの添加による強度向上効果に加えて、αアルミナ
製絶縁リングの熱膨張係数を考慮してβアルミナセラミ
ックスの熱膨張係数を所定範囲としたことによる。一
方、表1の比較例から明らかなように、βアルミナセラ
ミックスの強度は高くてもαアルミナとの熱膨張差が大
きいものは、ガラス接合工程での歩留まりが悪く、また
ヒートサイクルにおいても破損しやすく電池の信頼性が
低い。
【0033】表2に示す比較例は、本発明範囲よりもC
aO量の多いYSZを用いた場合であり、βアルミナセ
ラミックス全体としてのCaO量は100ppm以下で
あっても、βアルミナの比抵抗がナトリウム−硫黄電池
には使用できないほど高くなる。これは、βアルミナの
焼結時に酸化ジルコニウムが液相になるため内部のCa
が容易に移動可能となり、このためβアルミナ表面にC
a酸化物もしくは水酸化物の高抵抗層が形成されるため
と考えられる。
【0034】なお、本発明においては、前記具体的実施
例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の
範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【発明の効果】
【0035】βアルミナに酸化ジルコニウムを添加する
と、酸化ジルコニウムはβアルミナマトリックス中に分
散する。この分散粒子によりβアルミナセラミックスの
結晶成長が抑制されて微細な組織となり、酸化ジルコニ
ウム分散粒子の相変態によるクラック進展抑制効果とあ
いまってβアルミナセラミックスの強度が向上する。し
かし、このβアルミナセラミックスをナトリウム−硫黄
電池の固体電解質として用いる場合には、酸化ジルコニ
ウムの添加量が多すぎるとナトリウムイオン導電性が低
下し、電池性能が低下する。また、βアルミナセラミッ
クスの熱膨張率が大きくなるため、αアルミナ製絶縁リ
ングとの接合部分においてクラックが発生し易くなり、
電池の破損に対する信頼性が低下する。
【0036】本発明のβアルミナセラミックスは、βア
ルミナセラミックスに含有される酸化ジルコニウムの
量、この酸化ジルコニウムに固溶させる酸化イットリウ
ムの量(これにより酸化ジルコニウムの結晶相が制御さ
れる)、および不純物CaOの量を所定範囲とすること
により、ナトリウム−硫黄電池用としての性能および信
頼性に優れる。また、このβアルミナセラミックスの熱
膨張係数と、βアルミナセラミックス全体に含まれる不
純物Caの量とを所定範囲とすることにより、さらに高
性能、高信頼性のβアルミナセラミックスとなる。ま
た、本発明の方法によると、ナトリウム−硫黄電池に好
適な、高性能で高信頼性のβアルミナセラミックスを容
易に製造することができる。さらに、本発明のナトリウ
ム−硫黄電池は、本発明のβアルミナセラミックスから
なるβアルミナセラミックス管を用いて構成されている
ことから、電池としての性能および信頼性に優れる。
【0037】なお、本発明のβアルミナセラミックス
は、ナトリウム−硫黄電池の固体電解質としてβアルミ
ナセラミックス管に用いられる他、ナトリウム溶融塩電
池、アルカリ金属を用いた熱電変換装置(AMTEC;
Alkali-Metal-Thermo-Electric-Converter)、SOxセ
ンサーなどにおけるナトリウムイオン導電物質としても
好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ナトリウム−硫黄電池の概略構造を例示する断
面図である。
【符号の説明】
1 βアルミナセラミックス管 2 絶縁リング 6 陰極パイプ(陰極棒) 8 金属ナトリウム 9 電槽(陽極容器) 10 硫黄

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有底筒状のβアルミナセラミックス管
    と、該βアルミナセラミックス管の開口部にガラス接合
    されたαアルミナ製の絶縁リングと、上記βアルミナセ
    ラミックス管を収容する有底筒状の陽極容器とを備え、
    該βアルミナセラミックス管の内部には陰極活物質とし
    ての金属ナトリウムが配置され、該陽極容器と該βアル
    ミナセラミックス管との間に形成された空間には陽極活
    物質としての硫黄が配置されたナトリウム−硫黄電池の
    上記βアルミナセラミックス管に用いられるβアルミナ
    セラミックスであって、 βアルミナ100重量部に対して1〜10重量部のイッ
    トリア安定化型酸化ジルコニウムを含有し、該イットリ
    ア安定化型酸化ジルコニウムにおける酸化イットリウム
    の固溶量は該イットリア安定化型酸化ジルコニウムに対
    して1mol%〜5mol%であり、該イットリア安定
    化型酸化ジルコニウム中の不純物CaO量が600pp
    m以下であることを特徴とするナトリウム−硫黄電池用
    βアルミナセラミックス。
  2. 【請求項2】 熱膨張係数が7.7×10-6/℃〜8.
    0×10-6/℃である請求項1記載のナトリウム−硫黄
    電池用βアルミナセラミックス。
  3. 【請求項3】 該βアルミナセラミックス全体に含まれ
    る不純物Ca量が、CaO換算で100ppm以下であ
    る請求項1または2に記載のナトリウム−硫黄電池用β
    アルミナセラミックス。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のいずれか一項に記載の
    ナトリウム−硫黄電池用βアルミナセラミックスを製造
    する方法であって、 βアルミナ粉末と、酸化ジルコニウム粉末および/また
    は加熱により酸化ジルコニウムになる化合物の粉末と、
    酸化イットリウム粉末および/または加熱により酸化イ
    ットリウムになる化合物の粉末と、を混合する混合工程
    と、 上記混合工程で得られた混合粉末を造粒する造粒工程
    と、 上記造粒工程で得られた造粒粉末を成形する成形工程
    と、 上記成形工程で得られた成形体を焼成する焼成工程と、 からなることを特徴とするナトリウム−硫黄電池用βア
    ルミナセラミックスの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1から3のいずれか一項に記載の
    ナトリウム−硫黄電池用βアルミナセラミックスを製造
    する方法であって、 βアルミナ粉末と、酸化イットリウム1mol%〜5m
    ol%が固溶したイットリア安定化型酸化ジルコニウム
    からなるイットリア安定化型酸化ジルコニウム粉末と、
    を混合する混合工程と、 上記混合工程で得られた混合粉末を造粒する造粒工程
    と、 上記造粒工程で得られた造粒粉末を成形する成形工程
    と、 上記成形工程で得られた成形体を焼成する焼成工程と、 からなることを特徴とするナトリウム−硫黄電池用βア
    ルミナセラミックスの製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1から3のいずれか一項記載のβ
    アルミナセラミックスからなる有底筒状のβアルミナセ
    ラミックス管と、 該βアルミナセラミックス管の開口部にガラス接合され
    たαアルミナ製の絶縁リングと、 上記βアルミナセラミックス管を収容する有底筒状の陽
    極容器と、 上記βアルミナセラミックス管中に延びる陰極棒と、 該βアルミナセラミックス管の内部に配置された陰極活
    物質としての金属ナトリウムと、 該陽極容器と該βアルミナセラミックス管との間に形成
    された空間に配置された陽極活物質としての硫黄と、 を備えることを特徴とするナトリウム−硫黄電池。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011521873A (ja) * 2008-05-19 2011-07-28 ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ 複合品及び製造方法
KR101249048B1 (ko) * 2010-12-28 2013-03-29 재단법인 포항산업과학연구원 나트륨유황(NaS) 전지 및 이의 제조방법

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