JPH11239814A - 多段スリップ型湿式伸線方法 - Google Patents

多段スリップ型湿式伸線方法

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JPH11239814A
JPH11239814A JP10041834A JP4183498A JPH11239814A JP H11239814 A JPH11239814 A JP H11239814A JP 10041834 A JP10041834 A JP 10041834A JP 4183498 A JP4183498 A JP 4183498A JP H11239814 A JPH11239814 A JP H11239814A
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    • B21C1/02Drawing metal wire or like flexible metallic material by drawing machines or apparatus in which the drawing action is effected by drums
    • B21C1/12Regulating or controlling speed of drawing drums, e.g. to influence tension; Drives; Stop or relief mechanisms
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多段スリップ型湿式伸線方法において、キャ
プスタンと引き抜かれる線材との速度差を適正に設定す
ることにより、伸線速度を増加した場合でも、線材表面
の損傷、断線、ダイスの早期摩耗等の問題を生じること
なく伸線を実現する手段を提供する。 【解決手段】 ダイスとそのダイスを通過した線材を引
抜くキャプスタンとからなる伸線パスを複数段用いる多
段スリップ型湿式伸線方法において、最終段を除く各段
の伸線パスにおける平均スリップ速度を、5〜80m/mi
n の範囲に設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多段スリップ型
湿式伸線機を用いた線材の伸線方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】多段スリップ型湿式伸線方法は、ダイス
とそのダイスを通過した線材に引抜力を与えるキャプス
タンとからなる伸線パスを複数段備える伸線装置を用い
て、線材を連続して順次引き抜いて縮径することによ
り、所望の直径の線を製造するものであり、少なくとも
一部の段において、ダイスおよびキャプスタンを潤滑液
中に浸漬し、キャプスタンと引き抜かれる線材との間に
速度差が設けられるところに特徴がある。
【0003】この多段スリップ型湿式伸線方法は、乾式
潤滑剤を用いてキャプスタン周速と引き抜かれる線材の
速度とが同じである、ノンスリップ型乾式伸線方法に比
べて、伸線装置が簡単かつコンパクトにできること、表
面の平滑性が良好な線材を製造できること等の利点があ
り、特に、スチールコード用鋼線等の細線の製造に広く
用いられている。しかしながら、キャプスタンと引き抜
かれる線材との間に速度差があるため、線材表面の損
傷、線材速度および張力の変化による断線、ダイスの早
期摩耗等の問題が生じやすく、ダイス減面率の設定とと
もに、キャプスタン周速と引き抜かれる線材の速度との
差を設定することが肝要とされている。
【0004】例えば、特許第2614950 号公報には、ダイ
スの仕事率を特定範囲に設定するとともに、第1ダイス
を通過した線材速度をv1 、その線材を引き抜くキャプ
スタンの周速をV1 として、スリップ率をS1 =(1−
1 /V1 )×100 %と定義し、S1 を30%以下とする
多段スリップ型湿式伸線法が開示されている。
【0005】また、特開平9−24413 号公報には、最終
キャプスタンの周速をVc0 、最終ダイスを通過した金
属線材の速度をVw0 としてVc0 =Vw0 となし、任
意のダイスを通過した金属線の速度をVwn 、これを引
き抜くキャプスタンの周速をVcn としてスリップ速度
率Sn をSn ={(Vcn −Vwn )/Vc0 }×100
%と定義し、Sn を3%〜8%とする多段スリップ型湿
式伸線法が開示されている。
【0006】しかしながら、上記のような技術を適用し
ても、線材の表面の損傷、線材速度および張力の変化に
よる断線、ダイスの早期摩耗等の問題が解決されない場
合が多々あり、特に、伸線速度の増加を図る場合や高強
力鋼線を製造する場合に顕著な問題となる。
【0007】一方、高強力鋼線を製造する際のダイス減
面率の設定方法として、例えば特開平9−99312 号公報
には、捻回特性の良好な高強度鋼線を得るべく、伸線加
工歪εを=21n(d0 /d)(ただし、d0 :出発線
径、d:伸線工程中の各段の線径、1nは自然対数)と
し、0≦ε≦0.3 の段ではダイス減面率を10%〜20%
とし、0.3 <ε<3.0 の段ではダイス減面率を15%〜
25%とし、ε≧3.0 の段ではダイス減面率を2%〜15
%とする伸線方法が開示されている。
【0008】また、特開平7−305285号公報には、延性
の良好な高強度鋼線を得るべく、最終ダイスでの伸線加
工歪εが4.0 以上となる伸線加工を行うに当たり、ε
が0.75未満の伸線加工で用いるダイスの減面率を(22.6
7 ε+3)%から29%に、εが0.75以上2.25以下の伸
線加工で用いるダイスの減面率を20%〜29%に、εが
2.25をこえる伸線加工で用いるダイスの減面率を(−6.
22ε+43)%〜(−5.56+32.5)%とする伸線方法が開
示されている。
【0009】しかしながら、上記のようなダイス減面率
を多段スリップ型湿式伸線方法に適用した場合でも、キ
ャプスタンと引き抜かれる鋼線との速度差の設定が不適
正であると、鋼線の表面の損傷、断線、ダイスの早期摩
耗等の問題が生じ、捻回特性等の延性もさほど改善され
ない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明の目
的は、上記の従来技術の問題点をふまえ、多段スリップ
型湿式伸線方法において、キャプスタンと引き抜かれる
線材との速度差を適正に設定することにより、伸線速度
を増加した場合でも、線材表面の損傷、断線、ダイスの
早期摩耗等の問題を生じることなく伸線を実現する手段
を提供することにある。
【0011】また、この発明の目的は、さらにダイス減
面率を適正に設定し、とりわけ高強度鋼線の高速伸線に
も好適に適用し得る伸線方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、ダイスとそ
のダイスを通過した線材を引抜くキャプスタンとからな
る伸線パスを複数段用いる多段スリップ型湿式伸線方法
において、最終段を除く各段の伸線パスにおける、下記
式で定義される、平均スリップ速度Si を、5〜80m/
min の範囲に設定することを特徴とする多段スリップ型
湿式伸線方法である。 記 Si =Vci −Vwi ここで、Vci :各段のキャプスタンの周速 Vwi :各段のダイス通過後の線材の平均速度
【0013】ここで、総伸線加工歪の40%以上に相当す
る伸線加工を、減面率が20%以上のダイスを用いて行う
こと、とりわけ減面率が20%以上のダイスを用いた伸線
加工は、初段からの累積伸線加工歪が0.5 以上かつ2.5
未満の線材を伸線する伸線パスにて行うこと、が好まし
い。
【0014】
【発明の実施の形態】さて、この発明で用いる多段スリ
ップ型湿式伸線装置は、図1に示すように、ダイス1お
よびその出側に配置したキャプスタン2を1つの伸線パ
スとして、この伸線パスを多段に設けて成る。この装置
に導入された線材3は、伸線パスの各段において、ダイ
ス1を通過後にキャプスタン2に巻き付けられ、ダイス
1での引抜力を与えられて伸線加工が行われる。そし
て、この伸線パスを複数段でわたって最終の第n段まで
行うことによって、所望の径まで縮小された線が得られ
る。
【0015】ここで、最終段の伸線パスを除く各段、例
えば第i段目の伸線パスについて、そのダイス1の孔径
および第i段目のダイス1で引き抜かれた線材3の直径
をD i 、第i段目のダイス1で引き抜かれた線材3の平
均速度をVwi 、そして第i段目目のキャプスタン2の
周速をVci とし、そこでの平均スリップ速度Si を、 Si =Vci −Vwi と定義したとき、この平均スリップ速度Si を5〜80m
/min に設定することが、肝要である。ここで、停止状
態から所定の定常伸線速度に達するまでの過渡期におい
ては、Vci とVwi とはともに変化し、従って平均ス
リップ速度Si も変化するから、この発明では、少なく
とも定常伸線速度における平均スリップ速度Si を5〜
80m/min に設定する。
【0016】なお、第i段目のダイス1を通過後の線材
の平均速度Vwi は、Vwi =Vw n ×(Di /Dn
2 で計算される。ただし、Vwn は最終の第n段におけ
る最終ダイス1n で引き抜かれた線の平均速度およびD
n は最終ダイス1n で引き抜かれた線4の直径である。
【0017】ところで、多段スリップ型湿式伸線方法に
おけるスリップ条件の設定は、キャプスタン周速に対す
るスリップ速度の比に注目して行われてきた。これに対
して、この発明の伸線方法は、最終段を除く各段の伸線
パスにおいて、平均スリップ速度の値そのものを、5〜
80m/min の範囲に設定することを特徴とする。この要
旨構成は、次の知見に基づくものである。
【0018】まず、一般に、多段スリップ型伸線方法に
おいては、最終段では実質的にVw n =Vcn とする
が、最終段以外の各段では、キャプスタンにより線材を
引き抜くためにVci >Vwi として操業を行う。ま
た、定常伸線速度における各段のキャプスタンの周速を
一定にすることも通例である。ところが、Vci >Vw
iである段での線速は常に一定とは限らず、Vwi を平
均値として、その上下に時間的に変動し得る。
【0019】例えば、第i段目において、線材の速度
(以下、線速と示す)がVwi よりも大きくなったとす
る。この状態は、Vci >Vwi であるがために起こり
得る状態である。すると、その上流の第i−1段目の線
材の張力が上昇し、キャプスタンと線材との接触圧の増
加による線速の増加が生じ、さらに上流の段への伝播も
起こり得る。そして、ある段における線速の増加に、そ
の上流の段の線速増加が追随できない場合は、断線が生
じる。一方、下流の第i+1段目ではダイス後方張力
(第i+1段目のダイスに入線する線材の張力)が減少
し、ダイス面圧の上昇、引抜力の減少等が生じ、さらに
下流の段への伝播も起こり得る。この第i段目における
線速がVwi よりも大きくなった状態は、定常状態とし
て持続するものではない。つまり、前段目から第i段目
へと引き抜かれる線材の量が、第i段目から次段目へと
引き抜かれる線材の量よりも大きいために、第i段目の
キャプスタン後の張力が減少し、次いで第i段目の線速
が逆に平均線速Vwi よりも小さくなるという状態を生
じるのである。
【0020】上記のような線速の変動は、引き抜かれる
線材の劣化、断線あるいはダイスの早期摩耗等の原因と
なるものであり、各段の線速がなるべく変動しない状
態、すなわち線速とキャプスタン周速との速度差がなる
べく変動しない状態にて、多段スリップ型の伸線を行う
ことが望ましい。
【0021】そこで、発明者らは、キャプスタン周速V
i に対する平均線速Vwi の設定条件と線速変動量と
の関係について鋭意調査、研究したところ、最終段以外
の各段における平均スリップ速度の絶対値Si (Si
Vci −Vwi )を5m/min 以上80m/min 以下に設
定することにより、各段における線速の変動が少ない安
定した状態で多段スリップ型湿式伸線を行い得ることを
見出した。
【0022】すなわち、Si が80m/min を超えると、
キャプスタンが線速を増加させようとする作用が大きく
なり、線速が不安定となる。また、例え線速が平均線速
Vw i に近い値に安定したとしても、キャプスタン周速
との差が大きいため、線材表面の損傷、消費エネルギー
の増加等の問題が付随する。これに対して、Si を80m
/min 以下に設定した場合は、線速の変動が少ない安定
した状態で伸線される。特に好ましいのは、Si を50m
/min 以下に設定することであり、線材表面状態や消費
エネルギーについても良好な結果を得ることができる。
【0023】一方、Si の下限値について、各段のSi
を0に設定してノンスリップ型伸線のように常にキャプ
スタン周速と同じ線速で伸線することも、理論的には考
えられるが、実際には、ダイス孔径のばらつきやダイス
の摩耗により、常に各段のS i を0にしておくことは非
常に困難である。そこで、最終段以外の各段では、Vc
i >Vwi すなわちSi >0として操業することにな
る。この場合、Si の値を5m/min 未満に設定する
と、起こり得る線速変動幅は小さくなるが、キャプスタ
ン周速と線速との差が小さいため、Si >0ですべり摩
擦により引き抜く状態のみならず、Si =0で静止摩擦
により引き抜く状態も生じ得る。従って、キャプスタン
と線材との間の摩擦係数が、すべり摩擦係数と静止摩擦
係数との間で大きく変動し、キャプスタン出側での張力
変動が大きくなる結果、次段のダイスにおける後方張力
が大きく変動し、ダイスの摩耗、線材の品質劣化等をも
たらす。この張力変動は、さらに上流の段へも伝播し得
る。以上の現象を防止するには、常にすべり摩擦により
引き抜くことが有効であり、そのために、最終段以外の
各段でのSi を5m/min 以上に設定する必要がある。
【0024】また、Si >0と設定したときのキャプス
タンが線速を増加させようとする作用は、キャプスタン
への線材の巻付け回数が多いほど大きくなる。このた
め、線速の変動を小さくするためには、線材をダイスか
ら引き抜くことが可能な範囲内で、キャプスタンへの線
材の巻付け回数をなるべく少なく設定することが望まし
い。ただし、引抜力過剰による断線を防止すべく、最終
段を含む各段のダイスにおける引抜力Zi とダイス通過
後の線材の引張強さTi との比Zi /Ti (i=1〜
n)が60%以下となるように、各段のダイス減面率およ
びキャプスタンへの線材の巻付け回数を設定することが
望ましい。
【0025】次に、この発明の伸線方法におけるダイス
減面率の設定について説明する。なお、説明にあたり、
以下の用語を、次の通りに定義して用いる。 (1)「ダイス加工歪εD 」は、一段の伸線パスにおけ
る伸線加工歪とする。すなわち、i−1段目のパスで引
き抜かれた線材の直径Di-1 、i段目のパスで引き抜か
れた線材の直径をDi とすれば、i段目の伸線パスにお
けるεD は、ε D =2×1n(Di-1 /Di )である。 (2)「累積伸線加工歪εc 」は、ある伸線パスで引き
抜かれるに至った線材の伸線加工歪とする。すなわち、
初段の伸線パスで引き抜かれる前の線材の直径をD0
i段目の伸線パスで引き抜かれた線材の直径をDi とす
れば、i段目の伸線パスを通過した線材のεc は、2×
1n(D0 /Di )であり、i段目以前の伸線パスのダ
イス加工歪εD の合計値に相当する。 (3)「総伸線加工歪εT 」は、最終段の伸線パスで引
き抜かれるに至った線材の伸線加工歪とする。すなわ
ち、初段の伸線パスで引き抜かれる前の線材の直径をD
0 、最終段の伸線パスで引き抜かれた線材の直径をDn
とすれば、総伸線加工歪εT は、εT =2×1n(D0
/Dn )であり、全伸線パスのεD の合計値に相当す
る。
【0026】さて、平均スリップ速度Si を、この発明
の適合範囲に設定し、かつ総伸線加工歪の40%以上に相
当する伸線加工を、減面率を20%以上に設定したダイス
にて行うことにより、鋼線の表面の損傷、断線、ダイス
の早期摩耗等の問題を生じることなく、延性に優れた高
強度鋼線をより有利に製造することができる。具体的に
は、減面率を20%以上に設定したダイスにおけるダイス
加工歪εD の合計値が、総伸線加工歪εT の40%以上と
なるように、パススケジュールを設計するのである。
【0027】上記のようにパススケジュールを設定する
のは、多段伸線の過程において減面率を20%以上に設定
したダイスでの加工の割合を40%以上とすることによ
り、その割合が40%未満のときに比べて、線材表層部へ
の加工歪の集中的蓄積を大幅に抑制するためである。特
に、ゴム物品補強用高強度鋼線等に好適であり、ゴムの
加硫に伴う加熱による延性低下が少なく、耐久性の高い
高強度鋼線を得ることができる。
【0028】上記の条件を満足するパススケジュールを
設定するにあたり、減面率を20%以上に設定したダイス
での伸線加工は、高い減面率での伸線加工が比較的容易
である伸線パス、すなわち累積伸線加工歪εc が0.5 以
上かつ2.5 未満の線材を伸線する伸線パスにて行うこと
が好ましい。なぜなら、εc が0.5 未満の線材は、表面
の潤滑性が未だ良好でなく、εc が小さくなる上流の伸
線パスほど、高い減面率での伸線加工が困難になるため
である。特に、ゴム物品補強用高強度鋼線製造のための
黄銅めっき鋼線材の伸線において顕著である。一方、ε
c が2.5 以上の線材を加工する伸線パスにおいては伸線
速度が速くなり、かつ線材の変形抵抗も高くなるため、
εc が大きくなる下流の伸線パスほど、高い減面率での
伸線加工が困難となるためである。
【0029】より具体的には、線材のεc を横軸に、こ
れを伸線するダイスの減面率を縦軸にとって図示したと
きに、εc が0.5 以上かつ2.5 未満である領域に20%以
上の最大減面率を持つ、山なりの形状となるように、パ
ススケジュールを設定することが特に好ましい。
【0030】なお、ダイスには、一般に使用されている
形状のものが適用でき、例えば鋼線材を伸線する場合に
は、アプローチ角が8°から15°およびベアリング長さ
がダイス孔径の0.3 倍から0.8 倍のものが使用できる。
また、ダイス材質は、焼結ダイヤモンドのほか、安価な
超硬合金ダイスも使用できる。
【0031】
【実施例】約0.82重量%の炭素を含有する、直径が約5.
5 mmの高炭素鋼材に、乾式伸線を施して直径が約1.72mm
の鋼線材を製造した。この鋼線材にパテンティング処理
と黄銅めっき処理とを施し、黄銅めっき鋼線材を製造し
た。得られた黄銅めっき鋼線材に、多段スリップ型湿式
伸線を施し、直径が0.30mmの黄銅めっき鋼線を製造し
た。なお、定常伸線速度における最終ダイス通過後の鋼
線の速度は、800 m/min とした。また、ダイスには、
アプローチ角が約12°およびベアリング長さがダイス孔
径の約0.5 倍の超硬合金ダイスを用いた。
【0032】多段スリップ型湿式伸線を行うに当たり、
キャプスタン周速比の異なる2種類の伸線装置aおよび
bと、累積伸線歪εc とダイス減面率との関係がほぼ山
なりである5種類のパススケジュールA,B,C,Dお
よびEとを組み合わせ、表1に示す7種類の条件を適用
した際の、最終ダイス直前の線速張力の変動情況および
伸線量当たりの最終ダイス摩耗量を測定して比較した。
なお、用いた2種類の伸線装置のキャプスタン周速比を
表2に、5種類のパススケジュールの詳細およびキャプ
スタンへの線材巻付け回数を表3ないし表7に示す。こ
こで、表2において、ドラフト番号とは、最終段を
〔1〕とし、上流に向かって順に付した伸線装置の伸線
パスの各段に固有の番号である。また、あるドラフトに
おけるキャプスタン周速比とは、(そのドラフトのキャ
プスタン周速−直上流のキャプスタン周速)/(直上流
のキャプスタン周速)×100 (%)で求められる値であ
る。
【0033】表1に示す各条件における各伸線パスの平
均スリップ速度を図2に、また各パススケジュールの累
積伸線歪εc とダイス減面率との関係を図3に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】その結果、最終段を除く各伸線パスの平均
スリップ速度が5〜80m/min の範囲にある、実施例1
から4の条件での伸線においては、最終ダイス直前の線
材張力の変動が著しく少なく、ほぼ一定の張力で伸線す
ることができた。これに対し、比較例1から3の条件で
の伸線は、線材張力のスパイク状変動が検出された。ま
た、実施例1から4における伸線量当たりの最終ダイス
摩耗量は、比較例1から3におけるそれのほぼ2分の1
であった。
【0042】また、各実施例および各比較例の条件で製
造された鋼線の、加熱後捻回値を次の条件で測定して比
較した。 (1)加熱条件:ゴムの加硫のための加熱を想定し、14
5 ℃で40分間とした。 (2)捻回条件:加熱した鋼線を、試験長を50mmとし、
軸線方向に約1.0 kgの張力をかけながら約60回/分の回
転速度で捻った。 (3)捻回値:鋼線が表面クラック発生または破断に至
るまでに、鋼線の直径の100 倍の長さ当たりに加えた捻
り量を捻回値とした。捻回値が大きいほど捻回特性に優
れる。
【0043】その結果を、図4に示すように、減面率20
%以上のダイスによる伸線加工の割合が40%以上である
鋼線は、減面率20%以上のダイスによる伸線加工の割合
が40%未満である鋼線よりも、著しく優れた加熱後捻回
特性を示した。しかしながら、比較例2および3におい
ては、減面率20%以上のダイスによる伸線加工の割合は
比較例1よりも大きいが、最大平均スリップ速度が比較
例1よりも大きく、鋼線の加熱後捻回特性は比較例1よ
りも劣るもとなった。これに対し、平均スリップ速度が
この発明の条件を満たし、かつ減面率20%以上のダイス
による伸線加工の割合が40%以上である実施例3および
4による鋼線は、比較例1よりもさらに優れた加熱後捻
回特性を示した。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の多段ス
リップ型湿式伸線方法に従って、キャプスタン周速と引
き抜かれる線材の速度との差を適正に設定することによ
り、伸線中の線速および張力の断続的変動が抑制され、
ダイスの早期摩耗、断線、線材の損傷等の問題を解決す
ることができ、高品質の線材を効率的に製造することが
できる。
【0045】さらに、この発明の多段スリップ型湿式伸
線方法において、総伸線加工歪の40%以上に相当する伸
線加工を、減面率が20%以上のダイスにて行うことに
より、延性が良好でかつ加熱時効によっても延性が劣化
し難い線を製造することができる。このため、例えば高
強度鋼線の高速伸線に好適であり、得られる鋼線は、高
い耐久性が要求されるゴム物品補強材等として、好適に
用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多段スリップ型湿式伸線装置を示す図である。
【図2】実施例および比較例における各伸線パスの平均
スリップ速度を示すグラフである。
【図3】実施例および比較例に用いたパススケジュール
の、累積伸線歪εc とダイス減面率との関係を示すグラ
フである。
【図4】実施例および比較例による鋼線の、加熱後捻回
値を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ダイス 1n 最終ダイス 2 キャプスタン 2n 最終キャプスタン 3 線材 4 線

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイスとそのダイスを通過した線材を引
    抜くキャプスタンとからなる伸線パスを複数段用いる多
    段スリップ型湿式伸線方法において、最終段を除く各段
    の伸線パスにおける、下記式で定義される、平均スリッ
    プ速度Si を、5〜80m/min の範囲に設定することを
    特徴とする多段スリップ型湿式伸線方法。 記 Si =Vci −Vwi ここで、Vci :各段のキャプスタンの周速 Vwi :各段のダイス通過後の線材の平均速度
  2. 【請求項2】 請求項1において、総伸線加工歪の40%
    以上に相当する伸線加工を、減面率が20%以上のダイス
    を用いて行うことを特徴とする多段スリップ型湿式伸線
    方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、減面率が20%以上の
    ダイスを用いた伸線加工は、初段からの累積伸線加工歪
    が0.5 以上かつ2.5 未満の線材を伸線する伸線パスにて
    行うことを特徴とする多段スリップ型湿式伸線方法。
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