JPH11228927A - 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート - Google Patents

感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート

Info

Publication number
JPH11228927A
JPH11228927A JP5150998A JP5150998A JPH11228927A JP H11228927 A JPH11228927 A JP H11228927A JP 5150998 A JP5150998 A JP 5150998A JP 5150998 A JP5150998 A JP 5150998A JP H11228927 A JPH11228927 A JP H11228927A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sensitive adhesive
component
pressure
heat
adhesive composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP5150998A
Other languages
English (en)
Inventor
Kotaro Yoneda
耕太郎 米田
Daisuke Kamiya
大介 神谷
Akiyoshi Koketsu
明美 纐纈
Hitoshi Kato
仁 加藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toagosei Co Ltd
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toagosei Co Ltd filed Critical Toagosei Co Ltd
Priority to JP5150998A priority Critical patent/JPH11228927A/ja
Publication of JPH11228927A publication Critical patent/JPH11228927A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Adhesive Tapes (AREA)
  • Polymerisation Methods In General (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 保存状態での耐ブロッキング性に優れ、一
方、加熱処理により粘着性を発現させた場合には、十分
な接着性能を発現する感熱粘着剤組成物及び該粘着剤層
を基材上に有する感熱粘着シートを提供する。 【解決手段】 下記成分A、下記成分B及び下記成分C
からなる水性エマルジョン型の感熱粘着剤組成物であっ
て、60℃未満の乾燥によって耐ブロッキング性に優れ
た粘着剤層を形成し、該粘着剤層は、60℃以上の加熱
によって十分な接着剤性能を発現することを特徴とする
感熱粘着剤組成物。 成分A:酸価1meq/g以上の樹脂が塩基により中和
された水溶性樹脂。 成分B:ラジカル重合性単量体の乳化重合により得られ
た、ガラス転移温度が−20℃以下の重合体。 成分C:20℃で固体である、平均粒子系0.5μm以
上の微粒子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感熱粘着剤組成物
及び感熱粘着シートに関し、詳しくは、加熱処理前の保
存時は耐ブロッキング性に優れ、一方、加熱処理によっ
て粘着性を発現させた場合には、十分な接着性能を発現
する感熱粘着剤組成物及び該粘着剤層を基材上に有する
感熱粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】通常、粘着シートは、粘着面に剥離紙
(離型紙)を被覆して、保存、流通、販売等なされてい
る。また、粘着テープのような巻上げ式の製品では、使
用時に巻き戻しが可能なように、裏面に剥離処理を施し
た基材が用いられている。剥離紙は、粘着シートを物品
に貼った後には不要なものとなるものであり、省資源の
点や低コスト化等の理由から、剥離紙の不要な粘着シー
トが求められている。更に、粘着テープにおいても基材
としてその裏面に剥離処理を施していないものを用いる
ことができれば、粘着テープ基材の製造工程を簡略化す
ることができ、しかも低コスト化が可能になる。
【0003】上記のような剥離紙の不要な粘着シートと
しては、特開平8−269420号公報等が知られてお
り、同公報には、ディレードタック型粘着剤として、5
重量%以上を可溶化させたカルボキシル基を有するガラ
ス転移温度が20℃以上の樹脂を含有する樹脂含有溶液
及びガラス転移温度が−30℃以下の樹脂からなるアク
リル系樹脂水性エマルジョン型粘着剤組成物が開示され
ている。そして、これらの先行文献にはその粘着剤が、
常温では非粘着性であり、一定温度以上での加熱により
粘着力が発現すると記載されている。
【0004】しかしながら、上記の感熱粘着剤において
も、シートの積み重ね、巻き上げ等で圧力のかかった状
態での保存、長期保管した際にはブロッキングを生じ、
ブロッキングに関しては、今だ解決されていないのが現
状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、加熱
処理前における耐ブロッキング性に優れ、かつ、加熱処
理後においては特定値以上の粘着力を発現する粘着剤層
を形成可能な感熱粘着剤組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記感着粘着剤組成物から形成さ
れた粘着剤層を基材上に有する感熱粘着シートを提供す
ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、加熱処理
前においては成分Aを海(連続層)とし成分Bを島(不
連続層)とする海島構造を有し、加熱処理によってこの
海と島とが逆転して成分Aを島とし成分Bを海とする海
島構造に変化する粘着剤層を形成する粘着剤組成物、及
び上記粘着剤層を備えた感熱粘着シートによれば、上記
課題を解決可能であることを見出した。更に成分Cの添
加により、更に耐ブロッキング性が改良され、発現時の
接着性を損なうことなく、保管時の圧力によるブロッキ
ングを防ぐ効果を有することを見出して本発明を完成す
るに至った。
【0007】即ち、本発明における第1発明の感熱粘着
剤組成物は、下記成分A、下記成分B及び下記成分Cか
らなる水性エマルジョン型の感熱粘着剤組成物であっ
て、60℃未満の乾燥によって耐ブロッキング性に優れ
た粘着剤層を形成し、該粘着剤層は、60℃以上の加熱
処理によって十分な粘着性能を発現することを特徴とす
る。 成分A:酸価1meq/g以上の樹脂が塩基により中和
された水溶性樹脂。 成分B:ラジカル重合性単量体の乳化重合により得られ
た、ガラス転移温度が−20℃以下の重合体。 成分C:20℃で固体である、平均粒子径0.5μm以
上の微粒子。
【0008】本発明の感熱粘着剤組成物から形成される
粘着剤層は、加熱処理前及び加熱処理後においてそれぞ
れ上記の構造を有するので、成分Aとして常温で非粘着
性或いは極めて低粘着性の材料を使用することにより、
加熱処理前において不必要に粘着性が発揮されることを
防止できる。更に成分Cとして非粘着性微粒子を分散さ
せることにより、圧力のかかった状態においても耐ブロ
ッキング性はより良好なものとなる。
【0009】この感熱粘着剤組成物は、第2発明のよう
に、成分Aが高分子乳化剤であって前記成分Bの乳化重
合に使用されたものであり、成分Bが成分Aの存在下に
おいてラジカル重合性単量体を乳化重合させて得られた
重合体であることが耐水性、液の保存安定性の点から好
ましい。
【0010】成分Aと成分Bとの好ましい重量比は、第
3発明のように、10/90〜50/50の範囲であ
る。また、成分Cの割合は、成分A及び成分Bから成る
水性重合体エマルジョン100固体重量部に対して、1
〜20固体重量部の範囲である。
【0011】また、成分Aは、第4発明に記載のよう
に、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単位及び疎水
性のラジカル重合性単量体単位を主構成単位とする共重
合体の中和物であることが好ましい。また、成分Cは、
第5発明に記載のように、ポリオレフィン系微粒子であ
ることが好ましい。
【0012】そして、本発明における第6発明は、第1
発明〜第5発明の感熱粘着剤組成物から形成された粘着
剤層を基材上に有する感熱粘着シートに関する。即ち、
第6発明の感熱粘着シートは、上記成分Aが海であり上
記成分Bが島である海島構造を備えた粘着剤層を基材上
に有し、上記成分Cは主として成分A中に分散してお
り、成分Cが非粘着性であるために、温度25℃におい
ては、耐ブロッキング性に優れる粘着シートであって、
60℃以上の加熱処理によって、上記粘着剤層の海と島
とが逆転して上記成分Aが島で、上記成分Bが海である
海島構造となることにより、上記粘着力が100g/2
5mm以上に変化することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
尚、以下において、アクリル及び/又はメタクリルを
「(メタ)アクリル」と、アクリレート及び/又はメタ
クリレートを「(メタ)アクリレート」という。
【0014】また、本明細書中において重合体の「ガラ
ス転移温度」(以下、「Tg」という。)とは、以下の
計算式から求められる値をいう。尚、この計算式中
に用いられるTgのみは絶対温度(K)で表し、明細書
中の他の部分において用いられるTgは摂氏温度(℃)
で表す。
【0015】
【数1】 1/Tg=〔W(a)/Tg(a) 〕+〔W(b)/Tg(b) 〕+〔W(c)/Tg(c) 〕+ ・・・ 上記の式中; Tg =重合体のTg(K) W(a) =重合体における単量体(a) からなる構造単位の
重量分率 W(b) =重合体における単量体(b) からなる構造単位の
重量分率 W(c) =重合体における単量体(c) からなる構造単位の
重量分率 Tg(a) =単量体(a) の単独重合体のガラス転移温度
(K) Tg(b) =単量体(b) の単独重合体のガラス転移温度
(K) Tg(c) =単量体(c) の単独重合体のガラス転移温度
(K)
【0016】本明細書に記載の「海島構造」はよく知ら
れた概念であり、例えば「新版高分子辞典(高分子学会
・高分子辞典編集委員会編集、朝倉書店発行)」第31
頁の「海島構造」の項に詳しく記載されている。本明細
書において「海島構造を有する」とは、海(連続層)が
完全に連続しており島(不連続層)の全てが海中に独立
して分散している構造に限らず、海が部分的に途切れて
いる状態及び島の一部が互いに融合している状態等をも
含む意味である。
【0017】(1)成分Aについて 本発明における成分Aは、水溶性樹脂であって、酸価1
meq/g以上の樹脂が塩基により中和されたものであ
る。
【0018】(1−1)酸価 まず、本明細書中において「酸価」とは、樹脂又は重合
体の固形分あたりの酸価を指し、常法により算出された
理論酸価をいう。また、重合体又は樹脂が塩基により中
和されている場合には中和前における酸価を指す。酸価
の単位として用いる「meq/g」は、樹脂又は重合体
の固形分1g中の酸のミリグラム当量数を表す。
【0019】(1−2)組成 上記酸価を有する成分Aとしては、上記酸価を有するカ
ルボキシル基又はスルホン酸基を有するラジカル重合性
単量体単位及び他のラジカル重合性単量体単位からなる
共重合体、ロジン誘導体等が挙げられる。
【0020】本発明においては、上記成分Aとしてα,
β−エチレン性不飽和カルボン酸単位及び疎水性のラジ
カル重合性単量体単位を主構成単位とする共重合体が好
ましく使用され、上記共重合体のうちガラス転移温度が
20℃以上のものがより好ましく使用される。上記α,
β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えばアク
リル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマ
ル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸等を
挙げることができ、これら単量体の1種又は2種以上を
用いることができる。上記酸価を与えるα,β−エチレ
ン性不飽和カルボン酸の使用量は、用いる不飽和カルボ
ン酸の種類によって異なるが、成分Aの合成に用いられ
る全単量体の合計重量に基づいて、通常3〜40重量%
程度であることが好ましい。
【0021】上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸
と共に用いるラジカル重合性単量体としては、水100
gに対する溶解度が2g以下である疎水性ラジカル重合
性単量体が好ましく、例えば、メタクリル酸メチル、
(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプ
ロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)ア
クリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、
(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シク
ロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、
(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸
イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル及び(メ
タ)アクリル酸イソノニル等の(メタ)アクリル酸アル
キル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン
等のビニル芳香族系単量体等が挙げられる。これらの単
量体の使用量は、成分Aの合成に用いられる全単量体の
合計量を基準にして、30〜80重量%が好ましい。
【0022】また、成分Aを合成するために、上記α,
β−エチレン性不飽和カルボン酸以外の親水性ラジカル
重合性単量体を必要に応じて使用してもよい。このよう
な親水性ラジカル重合性単量体としては、例えば、アク
リル酸メチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メ
タ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリ
ル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコール
モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール
モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミ
ド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸グリ
シジル、スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩並び
に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
及びそのナトリウム塩等が挙げられる。
【0023】尚、成分Aはグラフト共重合体の塩基中和
物であってもよい。このグラフト共重合体としては、親
水性主鎖及び疎水性側鎖からなるグラフト共重合体、又
は、疎水性主鎖及び親水性側鎖からなるグラフト共重合
体が好ましく用いられる。この場合には、成分Aの疎水
性部分と成分Bとの親和性が高いので組成物の液安定性
に優れ、また加熱後粘着剤層において成分Aの親水性部
分が島の内側に、疎水性部分が島の外側に配向するの
で、この粘着剤層の耐水性が良好となる。また、成分A
の疎水性部分と成分Bとの親和性が高いので、粘着剤組
成物の液安定性が良好となる。
【0024】(1−3)ガラス転移温度 成分Aは、そのガラス転移温度が20℃以上であること
が好ましく、30〜130℃であることがより好まし
く、40〜120℃であることが更に好ましい。但し、
上述のように成分Aがグラフト共重合体である場合には
この限りではなく、上記グラフト共重合体全体のガラス
転移温度は−30〜100℃(より好ましくは−20〜
60℃、更に好ましくは0℃以上20℃未満)であるこ
とが好ましい。また、上記グラフト共重合体の親水性部
分のガラス転移温度が20℃以上(より好ましくは30
〜130℃、更に好ましくは40〜120℃)であり、
疎水性部分のガラス転移温度が−20℃以下(より好ま
しくは−30℃以下、更に好ましくは−40℃以下)で
あることが好ましい。
【0025】成分Aのガラス転移温度、或いはその親水
性部分又は疎水性部分のガラス転移温度が上記範囲未満
であると、加熱処理前における粘着剤層の粘着力が高く
なりすぎて、「剥離紙や基材裏面の剥離処理などのよう
な粘着剤層に対する剥離処理を行うことなく使用可能な
粘着シートを提供する」という本発明の目的を達成し難
くなる場合がある。一方、ガラス転移温度が上記範囲を
超えると、粘着性を発現させるために必要な加熱温度が
高くなるためエネルギーコストが嵩むので好ましくな
い。
【0026】(1−4)製造方法 上記成分Aがラジカル重合性単量体の重合体である場
合、この成分Aを得るための重合法としては種々の重合
法が採用でき、例えば放射線照射による重合法、ラジカ
ル重合開始剤を用いる方法などの公知の方法を使用でき
る。そのうちでも、ラジカル重合開始剤を用いる重合法
が重合操作の容易性、得られる中和前共重合体における
分子量調節の容易性などの点から好ましい。また、重合
法としては、溶液重合法、バルク重合法、懸濁重合法、
乳化重合法、沈殿重合法などがあげられるが、溶液重合
法又は乳化重合法を用いることが好ましい。
【0027】この溶液重合法においては、上記ラジカル
重合性単量体を有機溶媒に溶解し、適当なラジカル重合
性開始剤を用いて重合を行うことによって成分Aを円滑
に得ることができる。この有機溶媒としては、ケトン
系、酢酸エステル系、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水
素系、アルコール系等から選択される1種又は2種以上
の有機溶媒を使用可能であり、このうちメチルエチルケ
トン及び/又はイソプロピルアルコールを用いることが
好ましく、脱溶剤行程のコスト、及び連鎖移動作用が小
さいことより、メチルエチルケトンの使用が更に好まし
い。また、上記溶液重合に用いるラジカル重合開始剤と
しては、一般のラジカル重合に用いられているもののい
ずれもが使用可能であり、例えば過硫酸塩系重合開始
剤、アゾ系重合開始剤、レドックス系重合開始剤等を挙
げることができる。重合開始剤の好ましい使用量は、単
量体の合計量を基準にして、0.1〜5重量%である。
【0028】また、上記成分Aを乳化重合法により製造
する場合には、例えば特開平6−271779号公報に
開示されているように、上記ラジカル重合性単量体を乳
化剤とともに水に混合分散して単量体エマルジョンを作
成し、適当なラジカル重合性開始剤を用いて反応器に連
続添加して重合を行うことによって上記成分Aを円滑に
得ることができる。
【0029】成分Aを得るための重合温度は、10〜1
50℃程度であるのが好ましく、60〜100℃である
のがより好ましい。また、重合時間は1〜100時間が
適当であり、より好ましくは3〜10時間である。
【0030】また、成分Aの数平均分子量は、1,00
0〜50,000であることが好ましい。数平均分子量
が1,000未満であると粘着剤層の耐水性が不足しや
すくなる。一方、数平均分子量が50,000を超える
と高粘度となって成分Aの製造が困難となるとともに、
成分Aの水に対する溶解性が不十分となって組成物の液
安定性が低下したり、成分Aの存在下において成分Bの
乳化重合を行う場合に重合が不安定となったりする。ま
た、粘着剤層の加熱によって海と島とを逆転させること
が困難となったり、或いは粘着剤層の加熱前及び/又は
加熱後において海島構造を形成し難くなる場合がある。
この数平均分子量を調節するために、重合系に連鎖移動
剤を適宜添加してもよい。
【0031】成分Aは、上記のようにして合成された成
分Aの酸性基、例えばカルボキシル基、スルホン酸基等
の一部又は全部が塩基で中和されたものである。中和に
用いる塩基としては、アンモニア;アルキルアミン、ア
リルアミン及びアルカノールアミン等のアミン類;水酸
化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸
化物;マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金
属塩;等を使用可能である。このうち、アンモニア、メ
チルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロ
ピルアミン等の沸点110℃以下の塩基を用いることが
好ましく、アンモニアを用いることが特に好ましい。こ
の場合には、塗工後の乾燥工程において粘着剤層から塩
基が除去されやすくなるので、耐水性に優れた粘着剤層
を得ることができる。
【0032】本発明における成分Aは、必ずしも完全に
中和されていなくてもよいが、この成分Aが水溶性とな
る程度には中和されている必要がある。具体的には、成
分Aのもつ酸性基の30モル%以上が中和されているこ
とが好ましく、50モル%以上が中和されていることが
より好ましい。酸性基の中和量が50モル%未満である
場合、成分Aの水に対する溶解性が不足すると、経時に
より液が分離する等、粘着剤組成物が不安定となりやす
い。また、成分Aの界面活性能が低いため、この成分A
の存在下において成分Bを乳化重合させる場合に重合が
不安定となりやすい。
【0033】尚、成分Aは、架橋密度が低いか或いは実
質的に非架橋の樹脂であることが好ましい。成分Aが過
度に架橋していると、この成分Aの水に対する溶解性が
不十分となりやすい。また、加熱前粘着剤層において海
島構造の海を形成する成分Aの架橋密度が高すぎると、
成分Aを構成する分子鎖の移動が制限されて、加熱処理
を行っても海島が逆転し難い場合がある。
【0034】(2)成分Bについて 本発明における成分Bは、ラジカル重合性単量体を乳化
重合させて得られた、Tgが−20℃以下の重合体であ
る。
【0035】(2−1)ガラス転移温度 上記成分BのTgは、−20℃以下である必要があり、
−50℃以下であることが好ましい。成分BのTgが−
20℃を超える場合には、加熱後の粘着剤層において十
分な粘着性能を得ることができないためである。
【0036】(2−2)組成 上記成分Bとしては、ラジカル重合性単量体の乳化重合
により得られ、Tgが上記範囲を満たす種々の重合体を
用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸エス
テルを主成分とするラジカル重合性単量体(以下、「ア
クリル系単量体」という。)の乳化重合物、エチレン及
びビニルエステルを主成分とするラジカル重合性単量体
(以下、「エチレン−ビニルエステル系単量体」とい
う。)の乳化重合物、共役ジエン単量体及びこの共役ジ
エン単量体と共重合可能な単量体(以下、「共役ジエン
系単量体」という。)を主成分とするラジカル重合性単
量体の乳化重合物等を使用可能である。上記成分Bがエ
チレン−ビニルエステル系単量体又は共役ジエン系単量
体の乳化重合物である場合には、加熱後の粘着剤層がポ
リオレフィン系樹脂に対して良好な粘着力を示す粘着剤
組成物が得られやすいという利点がある。一方、上記成
分Bがアクリル系単量体の乳化重合物である場合には、
耐候性や透明性に優れた粘着剤層が得られやすいという
利点がある。
【0037】上記「エチレン−ビニルエステル系単量
体」における「ビニルエステル系単量体」としては、酢
酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン
酸ビニル、ラウリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等
がある。また、上記「共役ビニル系単量体」における
「共役ビニル単量体」としては、ブタジエン、イソプレ
ン、クロロプレン、イソブチレン等が挙げられる。
【0038】そして、上記「アクリル系単量体」として
は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分と
し、必要に応じてこれと共重合し得る他のラジカル重合
性単量体(以下、これを「共重合性単量体」ということ
がある。)を少量、好ましくは40重量%以下併用した
ものが好ましく用いられる。上記「(メタ)アクリル酸
アルキルエステル」としては、アルキル基の炭素数が1
〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好
ましく用いられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メ
チル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸
イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メ
タ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブ
チル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル
酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキ
シル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アク
リル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル及
び(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸
デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることが
でき、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの
1種又は2種以上を用いることができる。特に本発明で
は、成分Bの製造に用いるラジカル重合性単量体とし
て、アルキル基の炭素数が4〜9である(メタ)アクリ
ル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を主成分とし
て用いることが好ましい。
【0039】また、上記したように、成分Bの製造にあ
たっては(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共に、
少量成分として他の共重合性単量体を用いてもよい。こ
のような「他の共重合性単量体」としては、例えば、ス
チレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニ
ル芳香族系単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、
ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽
和カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル
酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル
等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;(メ
タ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリ
ル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコール
モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール
モノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル単量
体;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)
アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタ
クリル酸グリシジル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビ
ニリデン等を挙げることができ、これらの共重合性単量
体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】上記「他の共重合性単量体」を用いる場合
は、成分Bの製造に用いるラジカル重合性単量体の合計
重量に基づいて、その使用割合が上記したように40重
量%以下であることが好ましい。使用割合が40重量%
を超えると、加熱後の粘着剤層の粘着性能が不足しやす
くなるためである。
【0041】(2−4)製造方法 上記成分Bを得る方法の一例として、従来公知の界面活
性剤を乳化剤とする通常の乳化重合法を挙げることがで
きる。ここで使用する界面活性剤としては、高級アルコ
ール硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスル
ホンナトリウム酸塩、アルキルアリルスルホコハク酸塩
及びポリオキシエチレンアルキルアリルグリセリンエー
テルサルフェート等の反応性界面活性剤を使用してもよ
い。
【0042】また、成分Bを得る他の方法としては、第
2発明のように、成分Bの製造に用いるラジカル重合性
単量体を成分Aの存在下において乳化重合させる方法が
挙げられる。この乳化重合法においては、成分Aが界面
活性剤(乳化剤)として機能するので、乳化重合時に保
護コロイドや他の界面活性剤などの乳化剤の使用量を通
常の乳化重合の場合よりも少量にできる。更に、所望に
より他の乳化剤は一切使用しないことも可能である。そ
の結果、通常の乳化重合によって成分Bを製造した場合
に比べて、粘着剤層の耐水性を向上させることができ
る。尚、このように成分Bの製造に用いるラジカル重合
性単量体を成分Aの存在下において乳化重合させると、
成分A及び成分Bの両方を含むエマルジョンが得られ
る。従ってこの場合には、別途成分Aを加えることなく
このエマルジョンから本発明の粘着剤組成物又は粘着剤
層を形成することができ、耐水性の面から、該製造方法
がもっとも好ましい。或いは、こうして得られたエマル
ジョンに、成分Aを更に加えてもよい。
【0043】成分Bを得るための乳化重合に使用し得る
重合開始剤としては、乳化重合に一般に用いられている
重合開始剤のいずれもが使用可能であり、例えば成分A
を得るためのラジカル重合開始剤の例として前述したも
のと同様の有機過酸化物、無機過酸化物又はアゾ系化合
物等を使用することができる。重合開始剤の好ましい使
用量は、単量体の合計量を基準にして、0.1〜5重量
%である。
【0044】この成分Bは、酸性基をもたないことが好
ましいが、上記酸価以下となる範囲で酸性基を有しても
良い。また成分Bは、成分Aを加えた際に系内が不安定
となることを防止するために、成分Aの中和に用いられ
る塩基等により中和してそのpHを成分AのpHに近づ
けておくことが好ましい。
【0045】(3)成分Cについて 本発明における成分Cは20℃で固体である、平均粒子
系0.5μm以上の微粒子であり、平均粒子系が1〜2
0μmであることが好ましい。20℃で固体でなく例え
ば液体の微粒子の場合は、耐ブロッキング性の面で効果
が劣る。成分Cとしては、ポリメチルメタクリレート
(PMMA)樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹
脂、ポリオレフィン樹脂等の微粒子、無機微粒子等が挙
げられ、これらの中でも、接着性能に影響を与えず、ブ
ロッキングを防ぐ点からは、ポリオレフィン微粒子の使
用が好ましく、低密度ポリオレフィンが特に好ましい。
さらに、成分(C)の具体例としては、PMMA系微粒
子として、積水化成品工業(株)製の商品名テクポリマ
ーMB、綜研化学(株)製の商品名MR、松本油脂
(株)製の商品名マツモトマイクロスフェアーM、日本
純薬(株)製の商品名ジュリマーMB等が挙げられ、ポ
リスチレン系微粒子として、日本合成ゴム(株)製の商
品名STADEX、JSR中空粒子、綜研化学(株)製
の商品名SGP等が挙げられ、ポリウレタン系樹脂とし
ては、大日本インキ化学工業(株)製の商品名パーノッ
ク等が挙げられる。また、ポリオレフィン系微粒子とし
ては、熱可塑性エラストマー、低密度ポリオレフィン、
アイオノマー、低分子量ポリオレフィン等が使用可能で
あり、三井石油化学工業(株)製の商品名ケミパール、
中京油脂(株)製の商品名ポリロン等が挙げられ、無機
系微粒子としては、酸化チタン、アルミナ、コロイダル
シリカ等が使用可能であり、日産化学工業(株)製の商
品名スノーッテックス等が挙げられる。
【0046】(4)成分A、成分Bと成分Cとの重量比 本発明の粘着シートの粘着剤層、及び本発明の感熱粘着
剤組成物において、成分Aと成分Bとの重量比は、成分
A/成分B=10/90〜50/50であることが好ま
しく、15/85〜40/60であることが更に好まし
い。成分Aと成分Bとの合計重量に対して成分Aの重量
比が10%未満であると、この加熱処理前の粘着剤層が
成分Aを海とし成分Bを島とする海島構造をとりにくく
なって、加熱処理前の粘着剤層において不必要に粘着力
が発揮される場合がある。一方、成分Aの重量比が50
%を超えると、粘着剤層の耐水性が低下するとともに粘
着力が不足しやすくなるため好ましくない。また、成分
Aの重量比が高すぎると、加熱処理後の粘着剤層におい
て成分Aを島とし成分Bを海とした海島構造を形成しに
くくなる。成分Cの添加量は、成分A、及び成分Bから
なる水性重合体エマルジョンの樹脂成分100重量部に
対して1〜20重量部が好ましい。1重量部未満では、
十分な耐ブロッキング性を得ることが不可能であり、ま
た、20重量部を超えると、加熱活性化後の発現粘着力
が低下し、実用上必要となる粘着性能が得られなくなる
可能性がある。耐ブロッキング性と発現時接着力のバラ
ンスから、5〜20部が特に好ましい。
【0047】(5)液性状 本発明の粘着剤組成物は、その固形分濃度が30〜70
重量%であることが好ましく、35〜65重量%である
ことが更に好ましい。固形分濃度が30重量%未満であ
るとこの組成物の乾燥性が不足し、一方、70重量%を
超える場合には製造が困難となるとともに組成物の粘度
が過剰に高くなりやすい。
【0048】本発明の組成物は通常、水溶性樹脂である
成分Aが外側に位置し、成分Bが内側に位置した粒子か
らなる。従って、成分Aの存在によって成分Bの水への
分散状態が安定化されるので、組成物の液安定性を補う
ために添加される他の乳化剤の使用量を減らすことがで
き、これにより粘着剤層の耐水性が更に向上する。ま
た、本発明の成分Aは水溶性であるので、成分Aが水不
溶性である場合とは異なり、組成物中において成分Aの
沈降や凝集等が生じないため組成物の液安定性が良好で
ある。
【0049】(6)粘着シートについて 本発明の感熱粘着シートは、第1〜第4発明の粘着剤組
成物から形成された粘着剤層を基材上に有し、加熱処理
前においては非粘着である。従って、この状態では剥離
紙や基材裏面の剥離処理などのような粘着剤層に対する
剥離処理を行わなくても商品としてそのまま取り扱うこ
とができる。この粘着シートは、60℃以上の加熱処理
を行うことによって初めて100g/25mm以上の粘
着力を発現する。
【0050】(6−1)基材 本発明の粘着シートにおける基材の種類は、この粘着シ
ートの加熱処理温度に耐え得る材質であれば特に制限さ
れず、粘着シートの用途等に応じて適当なものを使用す
ればよく、例えば、布、紙、皮革、木材、金属、ガラ
ス、各種プラスチックなどからなるフィルムやシート、
板、発泡プラスチックシート等などを挙げることができ
る。前記プラスチックからなる基材としては、ポリエス
テル、ポリアミド、塩化ビニル系重合体、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどからなる基材を
挙げることができる。また、基材の形状は、長尺体、所
定の寸法に切断したもの(例えば方形、円形、楕円形、
その他の形状にあらかじめ切断したもの)などのいずれ
であってもよい。
【0051】(6−2)粘着剤層 本発明の感熱粘着シートでは、粘着剤層の厚さは、用途
などに応じて適宜調節することができるが、一般に、約
1μm〜1mm程度の厚さとすることが好ましい。これ
により、加熱処理後において粘着剤層に良好な粘着性を
発現させることが可能である。
【0052】(6−3)製造方法 本発明の感熱粘着シートは、第1〜第5発明の粘着剤組
成物を上記した基材の一方または両方の面に塗布し、そ
れを適当な方法で乾燥する等の方法によって製造するこ
とができる。その際、粘着剤組成物の基材への塗布方法
は特に制限されず、例えば、ロールコーター塗布、スプ
レー塗布、流延塗布、ドクターブレード塗布、ハケ塗り
などの任意の方法を用いて行うことができる。基材上に
塗布した粘着剤組成物の乾燥に当たっては、最終的に得
られる粘着シートにおいてその粘着剤層が常温で粘着性
を発現しないような温度、又はその粘着剤層が成分Aが
海となり成分Bが島となる海島構造の粘着剤層を形成可
能な温度で加熱する必要がある。
【0053】(6−4)使用方法 本発明の感熱粘着シートは、試験片を被着体に貼り合わ
せ、40℃、10kg/cm2 で1時間加圧した後、A
STM D1876−61Tに規定するT剥離法による
粘着力が3g/25mm以下であって、従来汎用の粘着
シートとは異なり、常温での耐ブロッキング性に優れて
いる。このため、粘着剤層に対する剥離処理を施すこと
なく、通常の粘着性をもたない製品と同じように単にそ
のまま包装し、または包装せずに、保存、流通、販売す
ることができる。その際に、本発明でいう「剥離処理を
施さない」とは、感熱粘着シートの粘着剤層上を剥離紙
で被覆しないこと、また巻き込み式の粘着テープでは基
材の裏面に特別な剥離処理を施さないことを意味する。
勿論、必要により、例えば25℃での上記粘着力が3〜
10g/25mm程度の場合、粘着シートの用途によっ
ては剥離処理を施して使用してもよい。
【0054】本発明の感熱粘着シートを被着体に貼着さ
せるに当たっては、感熱粘着シートの粘着剤層を加熱す
るか、被着体側を加熱するか、または感熱粘着シートの
粘着剤層と被着体の両方を加熱することによって、感熱
粘着シートを被着体に貼着することができる。粘着剤層
に粘着性を発現させるための加熱温度は、粘着剤組成物
中に含まれる成分A全体のTgに依存し、通常そのTg
よりも10℃以上、好ましくは30℃以上高い温度が適
している。ここで、上記加熱温度が高すぎると、粘着シ
ートの貼り付け作業性や熱効率が低下したり、基材が変
質又は変形したりする恐れがある。このため、上記加熱
温度は60〜180℃とすることが好ましく、60〜1
40℃とすることが更に好ましい。
【0055】一旦被着体に貼着された本発明の粘着シー
トは、温度が常温に戻ったことにより自然に剥がれてし
まうことがなく、その粘着性を失わずに被着体に良好に
貼着している。そして、被着体から本発明の感熱粘着シ
ートを剥がしたいときには、汎用の粘着シートと同様
に、手などで引っ張ることによって被着体から剥がすこ
とができ、その剥がしたものは、粘着剤層が粘着性を保
っているので、同じ被着体または別の被着体に再度貼着
することができる。
【0056】本発明の感熱粘着シートを貼着できる被着
体の素材や種類は特に制限されず、例えば布、紙、皮
革、木材、金属、ガラス、コンクリート、セラミック、
ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩
化ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミ
ド、ポリイミド、スチレン系重合体、ゴム類などのいず
れのものにも良好に貼着することができる。
【0057】
【実施例】以下、実施例及び比較例により、本発明を更
に具体的に説明する。尚、以下の各例において、特に断
らない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」
及び「重量%」を示す。また、以下において使用する略
号及びその内容を下記表1に示す。更に、本明細書にお
いて重合体のTgを算出するために用いた、各単量体の
単独重合体のTg値を併せて示す。
【0058】
【表1】
【0059】[1]粘着剤組成物の調整 下記実施例1〜5は、本発明の成分Aを溶液重合法によ
り合成。得られた成分Aの存在下において、成分Bの製
造に用いるラジカル重合性単量体を乳化重合した粘着剤
組成物に成分Cを添加することにより、以下の水性重合
体エマルジョンからなる感熱粘着剤組成物を合成した。
【0060】(実施例1) (成分Aの合成) (1)単量体としてのMMA70部、ST9部及びAA
1部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタン0.2
部、有機溶媒としてのメチルエチルケトン60部からな
る混合液に、重合開始剤としてのAIBNを1.5部溶
解したものを、撹拌機、コンデンサ、温度計及び窒素導
入管を備えたフラスコに仕込み、窒素雰囲気下において
80℃に20分加熱して重合させた。次に温度を80℃
に保ったまま、MMA10部、ST1部及びAA9部、
メチルエチルケトン40部からなる混合液を4時間かけ
て、フラスコ中に投入した。その後、更に0.5部のA
IBNを投入して同温度に5時間加熱し、固形分含量5
0%の共重合体(酸価1.4meq/g)のメチルエチ
ルケトン溶液を得た。 (2)上記(1)で得られた共重合体のメチルエチルケ
トン溶液200部に、攪拌下においてアンモニア水を徐
々に加えることにより、この共重合体におけるカルボキ
シル基の中和を行って反応液のpHを7〜8程度とし
た。その後、温度50℃の減圧下でメチルエチルケトン
を除去し、カルボキシル基の中和された成分Aの水溶液
aqを得た。この水溶液Aaqの固形分含量は50%であ
り、そのpHは7.7であった。
【0061】(成分Bの合成)BA99部及びHEMA
1部を混合して単量体混合物とした。撹拌機、コンデン
サ、温度計及び窒素導入管を備えたフラスコに、脱イオ
ン水70部及び成分Aの水溶液Aaq40部(有効成分2
0部)を仕込み、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、
t−ブチルハイドロパーオキサイドの10%水溶液5
部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート二水
塩(製鉄化学株式会社製、商品名「ロンガリットC」;
以下、単に「ロンガリット」という。)の10%水溶液
5部、及び上記単量体混合物80部を3時間かけて滴下
した。滴下終了から更に2時間同温度を維持した後、反
応系を冷却して重合を終了させ、アンモニア水により中
和してpHを7〜8とし、固形分含量約50%の水性重
合体エマルジョンを得た。
【0062】(感熱性粘着剤の調整)上記水性重合体エ
マルジョン100固体重量部に対して、ポリオレフィン
系微粒子(三井石油化学製、商品名「ケミパールW−3
08」)を10固体重量部の割合で混合して、感熱粘着
剤を得た。
【0063】(実施例2〜5)感熱粘着剤の調整におい
て、表1に示す添加微粒子を使用した以外は実施例1と
同様に操作して、感熱粘着剤を得た。
【0064】(実施例6)成分Aの合成において、単量
体としてのMMA90部、AA10部に代えてAB−6
45部、MMA45部、及びAA10部にした他は、上
記実施例1と同様に操作して、感熱粘着剤を得た。尚、
「AB−6」は、片末端メタクリロイル化ポリアクリル
酸ブチルマクロモノマー(東亞合成株式会社製、商品名
「マクロモノマーAB−6」、数平均分子量6,00
0)である。この場合、得られた成分Aは、MMA−A
A共重合体からなる親水性の主鎖と、ポリアクリル酸ブ
チルからなる疎水性の側鎖とを有するグラフト共重合体
である。
【0065】
【表1】
【0066】(比較例1)感熱粘着剤の調整において、
ポリオレフィン系微粒子を使用しない以外は実施1例1
と同様に操作した。 (比較例2)感熱粘着剤の調整において、ポリオレフィ
ン系微粒子(三井石油化学株式会社製、商品名:ケミパ
ールW−308)の添加量を30重量部にした以外は実
施例1と同様に操作した。
【0067】(比較例3)成分Bの合成において、成分
Aに代えてドデシルベンゼンスルホン酸Naを使用した
他は、上記実施例1と同様に操作した。
【0068】[2]粘着剤組成物の評価 上記実施例1〜5及び比較例1〜3により得られた粘着
剤組成物から形成された粘着剤層又は粘着シートにつ
き、耐ブロッキング性と粘着性能の評価を行った。その
結果を下記表2に示す。
【0069】(粘着シートの作成)ラベル用コート紙を
基材として、これに乾燥後の塗膜の厚みが20μm〜3
0μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、40℃で5
分間乾燥して粘着シートを作成した。
【0070】(耐ブロッキング性評価)上記粘着シート
を幅25mm長さ約250mmに裁断した試験片(以
下、「加熱処理前試験片」という。)を、コート紙表面
に貼り合わせ、卓上テストプレス(株式会社神藤金属工
業所製)にて温度40℃、10Kg/cm2 で1時間加
圧した後、ASTM D1876−61Tに規定するT
剥離法に準じて粘着力を測定した。即ち、上記条件下に
おいて、試験基材であるコート紙表面に上記試験片を貼
り合わせ、圧着。圧着後に300mm/minの引張速
度で、試験板に対するT剥離粘着力を測定した。耐ブロ
ッキング性の評価は以下の3段階で示した。 A;3g/25mm以下で特に耐ブロッキング性に優れ
るもの B;3g/25mm以上、5g/25mm以下で、少し
ブロッキングするが、実用上問題のないもの C;5g/25mm以上、10g/25mm未満で、ブ
ロッキングするため、実用上やや問題のあるもの D;10g/25mm以上で、ブロッキングがひどく、
実用上問題のあるもの
【0071】(粘着性能評価)上記加熱処理前試験片に
対して140℃で2分間の加熱処理を行った後に温度2
3℃湿度65%の雰囲気下に24時間放置した試験片
(以下、「加熱処理済試験片」という。)について、J
IS Z 0237に規定する180度ひきはがし法に
準じて粘着力を測定した。即ち、温度23℃、湿度65
%の条件下において、試験板である研磨したステンレス
板に上記試験片を貼り、2Kgのゴムローラーを一往復
して圧着した。圧着から30分後に、300mm/mi
nの引張速度で、試験板に対する180度ひきはがし粘
着力を測定した。粘着性能の評価は以下の3段階で示し
た。 a;500g/25mm以上 b;100g/25mm以上、500g/25mm未満 c;100g/25mm未満 総合評価として以下の3段階で示した ○;耐ブロッキング、粘着性能のバランスがよく、特に
品質の優れるもの △;耐ブロッキング、粘着性能のバランスがよいもの ×;耐ブロッキング、粘着性能のバランスが悪いもの
【0072】
【表2】
【0073】[2]粘着剤層の構造 厚さ50μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の塗
膜の厚みが20μm〜30μmとなるように実施例3の
粘着剤組成物を塗布し、40℃で5分間乾燥させて粘着
剤層を形成した。この粘着剤層(以下、「低温乾燥粘着
剤層」という。)をルテニウム酸水溶液の存在下におい
て蒸気染色し、更にエポキシ樹脂包理したものを、超薄
切片法により透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察
した。一方、上記と同様に実施例3の粘着剤組成物を塗
布し、160℃にて2分間乾燥させて得られた粘着剤層
(以下、「高温乾燥粘着剤層」という。)を、同様に処
理して透過型電子顕微鏡により観察した。尚、ルテニウ
ム酸蒸気により染色する上記方法によると、ポリスチレ
ン、ポリオレフィン等は強く染色される一方、ポリメタ
クリル酸メチル等はあまり染色されないことが知られて
いる(Macromolecules,Vol.16,No.4,1983,P.589〜598)。
【0074】得られたTEM写真を図1及び図2に示
す。図1は、低温乾燥粘着剤層を倍率25,000で観
察したものであり、ルテニウム酸により染色されやすい
部分(成分A;染色されやすいSTが共重合されてい
る)が海となり、薄く染色された粒径2〜3μmのポリ
オレフィン粒子(成分C)、染色されにくい部分(成分
B)が島となった海島構造が形成されていることが判
る。また図2は、高温乾燥粘着剤層を倍率25,000
で観察したものであり、図1とは異なりルテニウム酸に
より染色されにくい部分(成分B)が海となり染色され
やすい部分(成分A、成分C)が島となった海島構造が
形成されている。即ち、加熱により成分Aと成分Bとの
海島が逆転したことが判る。
【0075】尚、本発明においては、前記具体的実施例
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0076】
【発明の効果】本発明の感熱性粘着剤組成物から形成さ
れる粘着剤層又はこの粘着剤層を有する本発明の感熱粘
着シートは、耐ブロッキング性と粘着性能のバランスが
取れた感熱性粘着シートである。このとき、加熱後粘着
剤層が成分A、及び成分Cが島であり成分Bが海である
海島構造を有することにより、成分A、成分B及び成分
Cとが均一に混じり合った構造に比べて加熱処理後にお
ける粘着力が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3の粘着剤組成物を40℃で乾燥させて
得られた粘着剤層の構造を示す透過型電子顕微鏡写真で
ある。
【図2】実施例3の粘着剤組成物を160℃で乾燥させ
て得られた粘着剤層の構造を示す透過型電子顕微鏡写真
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08F 2/44 C08F 2/44 C (72)発明者 加藤 仁 愛知県名古屋市港区船見町1番地の1 東 亞合成株式会社名古屋総合研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記成分A、下記成分B及び下記成分Cか
    らなる水性エマルジョン型の感熱粘着剤組成物であっ
    て、60℃未満の乾燥によって耐ブロッキング性に優れ
    た粘着剤層を形成し、該粘着剤層は、60℃以上の加熱
    処理によって十分な接着性能を発現することを特徴とす
    る感熱粘着剤組成物。 成分A:酸価1meq/g以上の樹脂が塩基により中和
    された水溶性樹脂。 成分B:ラジカル重合性単量体の乳化重合により得られ
    た、ガラス転移温度が−20℃以下の重合体。 成分C:20℃で固体である、平均粒子径0.5μm以
    上の微粒子。
  2. 【請求項2】成分Bが成分Aの存在下においてラジカル
    重合性単量体を乳化重合させて得られた重合体である請
    求項1記載の感熱粘着剤組成物。
  3. 【請求項3】成分Aと成分Bとの重量比が10/90〜
    50/50であり、成分Aと成分Bの合計量100重量
    部に対し成分Cが1〜20重量部である請求項1または
    2記載の感熱粘着剤組成物。
  4. 【請求項4】成分Aが、α,β−エチレン性不飽和カル
    ボン酸単位及び疎水性のラジカル重合性単量体単位を主
    構成単位とする共重合体の中和物である請求項1〜3の
    いずれかに記載の感熱粘着剤組成物。
  5. 【請求項5】成分Cが、ポリオレフィン微粒子である請
    求項1〜請求項4のいずれかに記載の感熱粘着剤組成
    物。
  6. 【請求項6】請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載
    の感熱粘着剤組成物から形成された、粘着剤層を基材上
    に有し、温度40℃、10kg/cm2 で1時間加圧し
    て被着体に貼り合わせた試験片のASTM D1876
    −61Tに規定するT剥離法による温度25℃における
    粘着力が3g/25mm以下であり、60℃以上の加熱
    処理によって、JIS Z 0237に規定する180
    度ひきはがし法による温度25℃における粘着力が10
    0g/25mm以上に変化することを特徴とする感熱粘
    着シート。
JP5150998A 1998-02-17 1998-02-17 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート Pending JPH11228927A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5150998A JPH11228927A (ja) 1998-02-17 1998-02-17 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5150998A JPH11228927A (ja) 1998-02-17 1998-02-17 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11228927A true JPH11228927A (ja) 1999-08-24

Family

ID=12888981

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP5150998A Pending JPH11228927A (ja) 1998-02-17 1998-02-17 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11228927A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004076581A1 (ja) * 2003-02-28 2004-09-10 Soken Chemical & Engineering Co., Ltd. エマルジョン型粘着剤およびその製造方法
JP2007217612A (ja) * 2006-02-17 2007-08-30 Sakata Corp 紙製封筒用又は紙製箸袋用水性熱圧着組成物
JP2012201839A (ja) * 2011-03-28 2012-10-22 Chuo Rika Kogyo Corp 接着性積層体
WO2019188284A1 (ja) * 2018-03-30 2019-10-03 東洋紡株式会社 ポリオレフィン系接着剤組成物

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004076581A1 (ja) * 2003-02-28 2004-09-10 Soken Chemical & Engineering Co., Ltd. エマルジョン型粘着剤およびその製造方法
US7375161B2 (en) 2003-02-28 2008-05-20 Soken Chemical & Engineering Co., Ltd. Emulsion-type pressure sensitive adhesive and process for producing the same
US7608656B2 (en) 2003-02-28 2009-10-27 Soken Chemical & Engineering Co., Ltd. Emulsion pressure-sensitive adhesive and process for producing the same
JP2007217612A (ja) * 2006-02-17 2007-08-30 Sakata Corp 紙製封筒用又は紙製箸袋用水性熱圧着組成物
JP2012201839A (ja) * 2011-03-28 2012-10-22 Chuo Rika Kogyo Corp 接着性積層体
WO2019188284A1 (ja) * 2018-03-30 2019-10-03 東洋紡株式会社 ポリオレフィン系接着剤組成物
CN111918944A (zh) * 2018-03-30 2020-11-10 东洋纺株式会社 聚烯烃类粘接剂组合物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0913443A1 (en) Heat-sensitive and pressure-sensitive adhesive sheet
EP0919603B1 (en) Process for producing labeled article
JPH115959A (ja) 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート
JP2000506925A (ja) 感圧接着性微小球を含有する感圧接着フィルム
JPH08506852A (ja) 剥離剤及び高剥離接着再剥離性接着剤を含むシステム
JPH0684490B2 (ja) 再剥離性粘着剤組成物
JP3838808B2 (ja) 再剥離型感圧接着剤組成物
JPH1036788A (ja) 感熱粘着シート
JP2001200227A (ja) 感熱性粘着剤組成物および感熱性粘着シート又はラベル
JP2001011396A (ja) シートの施工方法
TWI406924B (zh) 再剝離性黏合片、其製法及再剝離性黏合片積層體
JPH11228927A (ja) 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート
JP3431768B2 (ja) 感熱粘着剤用組成物および感熱粘着シート
JPH115960A (ja) 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート
JP5976528B2 (ja) 再剥離性粘着シートの製造方法
JPH11193368A (ja) 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート
JP2000355680A (ja) 成形体の製造方法
JPH115958A (ja) アルカリ剥離性粘着剤組成物及びアルカリ剥離性粘着シート
JP2001200235A (ja) 感熱性粘着剤組成物およびその製造方法ならびに感熱性粘着シート又はラベル
JPH10231464A (ja) 感熱粘着剤組成物および感熱粘着シート
JP2001131503A (ja) 感圧接着シート
JPS61148278A (ja) 粘着性微細球水性懸濁液
JPH11217556A (ja) 感熱粘着剤組成物及び感熱粘着シート
JPH11217555A (ja) 感熱粘着剤組成物及びその製造方法並びに感熱粘着シート
JP2003201457A (ja) 感熱性粘着剤組成物および感熱性粘着シート又はラベル