JPH11228126A - 沈降シリカ及びその製造方法 - Google Patents

沈降シリカ及びその製造方法

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JPH11228126A
JPH11228126A JP3528798A JP3528798A JPH11228126A JP H11228126 A JPH11228126 A JP H11228126A JP 3528798 A JP3528798 A JP 3528798A JP 3528798 A JP3528798 A JP 3528798A JP H11228126 A JPH11228126 A JP H11228126A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エラストマーや樹脂に充填したとき、バラン
スのとれた補強効果を発現する沈降シリカを提供する。 【解決手段】 セチルトリメチルアンモニウムブロマイ
ド(CTAB)の吸着により測定した比表面積が180
〜270m2/gであって、水銀圧入法により測定した
細孔分布に関して、細孔半径400オングストローム以
下の細孔の容積に占める50オングストローム以上、7
0オングストローム以下の細孔半径を有する細孔の容積
の割合が10〜30%、70オングストロームを越え、
100オングストローム以下の細孔半径を有する細孔の
容積の割合が20〜40%、100オングストロームを
越え、150オングストローム以下の細孔半径を有する
細孔の容積の割合が10〜30%の範囲にある沈降シリ
カである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な沈降シリカ
およびその製造方法に関する。詳しくは、特に、エラス
トマーや樹脂等の基材マトリックス中に充填した場合
に、優れた補強性能を発現する沈降シリカである。
【0002】
【従来の技術】珪酸アルカリを酸で中和し、得られた反
応スラリー中の固形成分を回収、乾燥して得られる二酸
化珪素は、沈降シリカあるいはホワイトカーボンと呼ば
れ、各種エラストマー、特に合成ゴムの補強充填剤、農
薬の担体、新聞用紙の填料、合成樹脂の配合剤、塗料・
接着剤・印刷インキ等の増粘剤、練り歯みがきの配合剤
等々、幅広い用途に使用されている。
【0003】沈降シリカは、上記の用途のうち、特にエ
ラストマーや樹脂の充填剤として使用される場合、その
補強効果においてバランスのとれた性能を発揮すること
が要求される。
【0004】従来の沈降シリカ、特に、微粒子径のため
比表面積が大きいシリカでは、エラストマーや樹脂の物
性の1つに対しては効果的に働くが、その代わり他の物
性が悪化することが指摘されてきた。一例として、動的
物性である貯蔵弾性率を高める目的で微粒子径のシリカ
を製造しても、引っ張り強度の低下を招き、バランスの
とれた補強性能が得られなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、エラスト
マーや樹脂等の基材マトリックス中に充填した場合に、
高い貯蔵弾性率と引っ張り強度の向上とを両立し得る、
バランスのとれた補強性能をもつ沈降シリカの開発が望
まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記のよ
うな問題点を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、沈
降シリカの細孔分布とエラストマーや樹脂等の基材マト
リックス中に混合した場合の基材に及ぼすシリカの補強
効果との関係について、以下のような知見を得た。
【0007】従来の沈降シリカの製造方法においては、
シリカの比表面積を大きくすると、シリカ粒子の粒子径
が揃いがちで、そのため、シリカ粒子同士の凝集によっ
て形成される細孔の孔径分布(以下、「細孔分布」とも
いう)がシャープになる傾向がある。
【0008】本発明者らの確認によれば、S(CTAB)が1
80〜270m2/gの範囲にある従来のシリカの1つ
は、ピーク細孔半径が70〜100オングストロームの
間にあって、その前後の50〜70オングストローム、
または、100〜150オングストロームの細孔半径を
有する細孔の容積の割合が比較的小さかった。
【0009】このような比表面積と細孔分布との関係が
生じる理由は下記の機構によるものと推定される。即
ち、珪酸アルカリ水溶液の鉱酸による中和で合成される
沈降シリカの生成過程は、一般に、大別すると3段階で
構成される。まず、核粒子の生成が起こる。これは、
中和反応で生成するシリカの濃度が反応系の温度、pH
等の条件で決まる一定の濃度を上まわったときに起こ
る。次に、核粒子がある程度成長した後、凝集が起こ
る。その後、粒子の成長がさらに進行して最終シリカ
が得られる。比表面積が大きいシリカ、すなわち、粒子
径が小さいシリカは、の粒子成長が十分に進行してい
ないシリカであって、そのようなシリカは、粒子径に差
がつきにくく、その結果、粒子間の空隙である細孔のサ
イズに差がなく、細孔分布がシャープになる。
【0010】そして、上記した従来の比表面積の大きい
沈降シリカがバランスのとれた補強性能を達成できなか
った理由は、細孔分布がシャープとなることに起因し、
該細孔分布をブロードとするほど、それをエラストマー
や樹脂等の基材マトリックス中に充填した場合に、応用
物性として高い貯蔵弾性率と引っ張り強度の向上とを両
立する方向に改善されることを見い出した。
【0011】さらに、そのような比表面積が大きく、か
つ、細孔分布がブロードの沈降シリカは、低温で珪酸ア
ルカリ水溶液中に珪酸アルカリ水溶液と鉱酸とを同時に
添加してシリカを析出させ、析出したシリカが凝集した
後に、高温に昇温する方法によって得られることを確認
し、本発明を完成するに至った。
【0012】即ち、本発明は、セチルトリメチルアンモ
ニウムブロマイド(CTAB)の吸着により測定した比
表面積(S(CTAB))が180〜270m2/gであっ
て、水銀圧入法により測定した細孔分布に関して、細孔
半径400オングストローム以下の細孔の容積に占める
50オングストローム以上、70オングストローム以下
の細孔半径を有する細孔の容積の割合が10〜30%、
70オングストロームを越え、100オングストローム
以下の細孔半径を有する細孔の容積の割合が20〜40
%、および100オングストロームを越え、150オン
グストローム以下の細孔半径を有する細孔の容積の割合
が10〜30%の範囲にあることを特徴とする沈降シリ
カを提供する。
【0013】また、本発明の沈降シリカの有利な態様と
して、窒素吸着法により測定した比表面積(S(BET))
と水銀圧入法により測定した比表面積(S(PO))との比
S(BET)/S(PO)が0.8〜1.0となるような比表面
積を有するものを提供する。
【0014】また、本発明の沈降シリカのもう一つの有
利な態様として、水銀圧入法により測定した細孔分布に
関して、細孔半径400オングストローム以下の細孔の
容積に占める50オングストローム以上、150オング
ストローム以下の細孔半径を有する細孔の容積の割合が
50%以上であるものをも提供する。
【0015】さらに、本発明は、そのような沈降シリカ
を製造する方法として、珪酸アルカリ水溶液中に珪酸ア
ルカリ水溶液と鉱酸とを反応系の温度を40〜75℃に
保ちながら同時に添加してシリカを析出せしめ、該シリ
カの凝集を確認した後に、反応系の温度を90〜100
℃に昇温することを特徴とする沈降シリカの製造方法を
提供する。
【0016】上述の方法で製造された沈降シリカは、比
表面積が大きいにもかかわらずブロードな細孔分布をも
つため、これをエラストマーや樹脂に充填した場合、動
的粘弾性と引っ張り強度の2つの性能を両立し、その意
味でバランスのとれた補強効果を達成できる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の沈降シリカは、S(CTAB)
が180〜270m2/gであり、好ましくは190〜
260m2/gがよく、さらに好ましくは200〜25
0m2/gであるという特徴を有する。
【0018】即ち、S(CTAB)の値は、一般にエラストマ
ーや樹脂の物性値との相関がとれやすい指標とされる。
従って、S(CTAB)が180m2/gより小さいとシリカ
による補強効果が不十分となるので好ましくない。ま
た、270m2/gより大きいS(CTAB)である場合、シ
リカの表面活性が高くなって、シリカ同士の凝集が強く
なり適度な分散を困難にするだけでなく、ろ過性能の悪
化や容器への付着等が起こり易く、取扱いが困難な粉体
となるため好ましくない。
【0019】本発明の沈降シリカは、水銀圧入法により
測定した細孔分布に関して、細孔半径400オングスト
ローム以下の細孔の容積に占める細孔半径50オングス
トローム以上、70オングストローム以下の細孔半径を
有する細孔の容積の割合が10〜30%、70オングス
トロームを越え、100オングストローム以下の細孔半
径を有する細孔の容積の割合が20〜40%、および1
00オングストロームを越え、150オングストローム
以下の細孔半径を有する細孔の容積の割合が10〜30
%の範囲にあることに最大の特徴を有する。
【0020】水銀圧入法により測定した細孔分布に関し
て、上記特定の範囲を満足する本発明の沈降シリカは、
従来シリカとは異なって、微粒子でありながらその細孔
分布がブロードであることを表す。
【0021】従って、上記特定の細孔容積の割合が本発
明の範囲外にある、シャープな細孔分布をもつシリカ
は、エラストマーや樹脂等の基材マトリックス中に充填
した場合、その補強効果に対して動的粘弾性と引っ張り
強度の2つの性能を両立することができない。また、上
記値よりさらにブロードな細孔分布をもつ沈降シリカは
製造することが困難である。
【0022】尚、本発明の沈降シリカにおいて、細孔半
径400オングストロームを越える細孔については特に
制限されない。
【0023】即ち、細孔半径400オングストローム以
下の細孔は、それと同じ程度の大きさの微小なシリカ凝
集粒子がエラストマーや樹脂中で分散する過程に影響を
及ぼすが、細孔半径400オングストロームよりも大き
い細孔、特に1000オングストロームを超える細孔は
そのような分散過程に実質的な影響を及ぼさないことが
確認された。
【0024】本発明の沈降シリカは、上記の特徴を満足
するものであれば良いが、本発明の沈降シリカについ
て、特に、好ましい態様として下記の態様が挙げられ
る。
【0025】本発明では、細孔半径400オングストロ
ーム以下の細孔の容積に占める、50オングストローム
以上、150オングストローム以下の細孔半径を有する
細孔の容積の割合が50%以上であることが好ましい。
かかる範囲の細孔は、沈降シリカが基材マトリックス中
で分散するために有効なファクターであり、その割合が
高いほど好ましい。
【0026】また、本発明の沈降シリカは、窒素吸着法
により測定した比表面積(S(BET))と水銀圧入法によ
り測定した比表面積(S(PO))の比表面積値の比S(BE
T)/S(PO)が0.8〜1.0、特に好ましくは0.85
以上、1.0未満の範囲を満足するものが好適である。
【0027】即ち、比表面積の比S(BET)/S(PO)が
0.8〜1.0の範囲にあるとき、沈降シリカはエラス
トマーや樹脂との混練り初期のなじみがよく、また、エ
ラストマーや樹脂との混練り過程で容易に破壊して分散
し易いために好適である。
【0028】一般に、窒素分子のサイズは4オングスト
ローム程度と考えられ、窒素吸着法においては、試料が
もっているそれと同じ程度の大きさの細孔の中にまで窒
素が入り込んで吸着現象が起こるとされている。一方、
本発明の水銀ポロシメーターでは2000barまで圧
力を加えられるので、細孔半径37.5オングストロー
ムまでの細孔が測定される。そのため、従来の沈降シリ
カ等の微細孔構造をもつ物質では、一般に、S(BET)値
のほうがS(PO)値より大きくなる。
【0029】これに対して、本発明の上記好ましい態様
の沈降シリカでは、S(PO)値がS(BET)値より大きい
か、または、等しいものであり、このようなシリカは、
凝集粒子内部に微細孔を閉じ込めた構造、すなわち、そ
の意味でクローズドポアをもつシリカであると考えられ
る。これは、後述するシリカ製造の過程で、凝集粒子の
外部表面にある微粒子が溶解されて凹凸がなくなると同
時に、溶解した成分が細孔入口付近に析出して細孔入口
を閉塞するため、その内部に微粒子およびその微粒子が
形成する微細孔が内包されると推定される。単純なモデ
ルでは、凝集粒子の外部表面上に薄膜状のシリカ層が形
成されることが想像される。窒素吸着法による比表面積
の測定では、窒素分子が外部表面薄膜状部分のみに吸着
して内部に閉じ込められた微細孔にまで入り込めず、そ
の分だけ比表面積値が小さくなると考えられる。これに
対して、水銀圧入法では、最大2000barの圧力が
加えられるので、凝集粒子外部表面上の薄膜状シリカ層
を壊しながら細孔の測定がなされ、内包されている微細
孔にまで測定範囲が及ぶため、その分だけ窒素吸着法に
よる比表面積値より大きな値になるのであろう。
【0030】その他に、本発明の沈降シリカについて、
好ましい粉体物性として、以下のような値を挙げること
ができる。
【0031】本発明のシリカの比表面積に関しては、S
(BET)は180〜280m2/g、および、S(PO)は18
0〜300m2/gの範囲に入ることが一般的である。
【0032】本発明のシリカの細孔半径400オングス
トローム以下の細孔の容積は0.7〜2.0mL/gの
範囲、好ましくは、0.9〜1.6mL/gの範囲がよ
い。この範囲では、細孔径と同じ程度の大きさのシリカ
凝集粒子の適度な分散が達成されやすくなる。
【0033】また、ジブチルフタレート吸油量(以下、
「DBP吸油量」と略す)は100〜300ml/10
0gであることが好ましい。この範囲にあると、混練り
時に良好な分散性が得られる。
【0034】更に、見掛け比重は、0.20〜0.35
g/mlの範囲が好ましい。この範囲にあると、混練り
時に良好な作業性が得られる。
【0035】更にまた、水分量は、3〜10wt%がよ
い。この範囲にあると、混練り時の良好な作業性、およ
び、シランカップリング剤との良好な反応性が得られ
る。
【0036】本発明において、上述のような沈降シリカ
を製造する方法は、特に制限されるものではないが、代
表的な製造方法として下記の方法を挙げることができ
る。
【0037】すなわち、珪酸アルカリ水溶液中に珪酸ア
ルカリ水溶液と鉱酸とを反応系の温度を40〜75℃に
保ちながら同時に添加してシリカを析出せしめ、該シリ
カの凝集を確認した後に、反応系の温度を90〜100
℃に昇温することを特徴とする沈降シリカの製造方法が
挙げられる。
【0038】上記のように、本発明の沈降シリカは、珪
酸アルカリを出発原料として、これに鉱酸を加えて中和
沈澱させる、いわゆる湿式法によって製造される。
【0039】本発明の沈降シリカの製造方法は、予め温
度を調整した珪酸アルカリ水溶液の中に、珪酸アルカリ
水溶液と鉱酸とを液中アルカリ濃度が一定となるように
同時に添加して中和沈澱させる方法であって、公知の方
法に対して、特に、反応系の温度の制御方法に特徴を有
する。
【0040】以下の説明において、簡便のために、反応
系の温度を40〜75℃に保って珪酸アルカリ水溶液中
に珪酸アルカリ水溶液と鉱酸とを同時添加する段階を
「低温反応」、昇温後に90〜100℃に保持する段階
を「高温反応」と表記することにする。
【0041】本発明の方法で使用する珪酸アルカリ水溶
液は、一般に使用されているものを何ら制限なく使用す
ることができる。例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウ
ム等が使用でき、珪酸ナトリウムが一般的で好ましい。
珪酸アルカリ水溶液中に溶解しているシリカとアルカリ
のモル比SiO2/M2O(Mはアルカリ金属を表し、例
えば、M=Na、K等である)は、一般に、SiO2
2O=2〜4が使用でき、SiO2/M2O=3.0〜
3.5が好適である。反応に使用するときの濃度はSi
2濃度で表示した場合、10〜200g−SiO2/L
まで水で希釈することが望ましい。また、SiO2に対
してAl23が0.1〜1.0重量%−Al23/Si
2の濃度で含まれている珪酸アルカリ水溶液を用いる
こともできる。さらにまた、珪酸アルカリ水溶液中に電
解質、一般的には硫酸ナトリウムを、1〜100g/L
程度混合させてもよい。
【0042】本発明の方法で使用する鉱酸は、珪酸アル
カリ水溶液と中和反応を起こすものであれば特に限定さ
れない。硫酸、塩酸、硝酸等が使用でき、このうち、硫
酸が汎用的で好ましい。一般的に用いられる硫酸は、2
00〜250g−H2SO4/Lの濃度にまで水で希釈し
て使用される。
【0043】上記添加する珪酸アルカリ水溶液および鉱
酸の供給方法は、特に限定されるものではなく、同時添
加反応時の反応系の温度、pH、および、反応液あるい
は反応スラリー中のシリカ濃度が制御できれば良い。即
ち、適当な濃度の珪酸アルカリ水溶液および鉱酸を、反
応液あるいは反応スラリーへ上部より滴下してもよい
し、供給口を直接反応液中に入れて供給してもよい。ま
た、濃度調整のために、珪酸アルカリ水溶液、鉱酸の他
に、別途に水を供給してもよい。
【0044】また、反応液あるいは反応スラリーは反応
系の濃度が均一になるように攪拌することが望ましい。
かかる攪拌方法は公知の方法を特に制限なく使用するこ
とができ、例えば、攪拌羽根で混合してもよいし、反応
液の一部を取り出して別の部分へ混合するような循環装
置を使用してもよい。
【0045】本発明の方法では、反応液あるいは反応ス
ラリー中のアルカリ濃度が一定となるように珪酸アルカ
リ水溶液と鉱酸とを同時に添加することが望ましい。ま
た、かかるアルカリ濃度はpHで表すと、pH9〜1
1、好ましくは、pH9.2〜10.5である。従っ
て、そのような範囲のpHとなるように珪酸アルカリ水
溶液および鉱酸の添加濃度、添加速度等のバランスを取
ることが望ましい。
【0046】本発明の方法では、低温反応において細孔
分布のブロードな凝集粒子を生成させ、高温反応におい
て凝集粒子の外部表面の微粒子を溶解することに特徴を
もつが、反応系のpH値をアルカリ側に制御すれば、目
的とする細孔分布が得やすく、また、より容易に微粒子
の溶解が進行するので好ましい。
【0047】本発明の方法において、低温反応では、珪
酸アルカリ水溶液に珪酸アルカリ水溶液と鉱酸とを同時
に添加するとき、反応系の温度を40〜75℃に保つ必
要がある。該温度は、好ましくは、45〜72℃、さら
に好ましくは、50〜70℃である。
【0048】上記低温反応の温度が40℃より低いと、
反応速度が小さくなって反応を制御することが困難にな
るので、好ましくない。また、75℃より高いと、目的
とするブロードな細孔分布が得られなくなるので好まし
くない。
【0049】一般に、同時添加による沈降シリカの製造
においては、反応系の温度が低いほど形成されるシリカ
粒子の粒子径が不揃いである。反対に、高温になるほど
粒子径の揃ったシリカが生成する。このことは、反応系
が高温であるほど、生成するシリカの析出限界粒子径が
大きくなって、それよりも小さい微粒子はその温度では
溶解してしまうことで説明される。本発明で規定するよ
うな細孔分布をもつ沈降シリカを製造するには、粒子径
が適度に不揃いである必要があり、そのために低温反応
における温度の制御が重要となる。
【0050】本発明の方法では、低温反応で析出したシ
リカが凝集したことを確認した後に、昇温して高温反応
を行わなければならない。
【0051】一般に、同時添加による沈降シリカの製造
においては、反応系の温度、pHに応じた一定のシリカ
濃度に到達すると、析出したシリカ粒子どうしの凝集が
起こる。かかるシリカの凝集は、反応スラリーの急激な
粘度上昇現象によって確認することができる。
【0052】シリカの凝集の前に反応系を昇温した場
合、低温反応で生成した微粒子が凝集粒子に内包される
前に溶解し、目的とするブロードな細孔分布が得られ難
い。
【0053】前記した昇温は、シリカ凝集の後であれ
ば、いつ昇温を開始してもよく、所定量の珪酸アルカリ
水溶液および鉱酸の添加を終了した後に昇温して、熟成
時間をとる方法によって高温反応を実施してもよい。
【0054】すなわち、本発明の方法における高温反応
では、90〜100℃において珪酸アルカリ水溶液およ
び鉱酸の同時添加を実施してもよいし、添加することな
く同温度を保持するという意味で熟成を実施してもよ
い。
【0055】熟成には、沈殿した沈降シリカを安定にす
る目的があり、高温反応の時間が、90〜100℃での
珪酸アルカリ水溶液と鉱酸の同時添加の時間と熟成の時
間の合計で30分間以上となるように、熟成時間をとる
ことが好ましい。さらに好ましくは、35〜120分間
程度がよい。
【0056】本発明の方法において、昇温は、どのよう
な方法でも制限なく実施することができる。例えば、ス
チームを反応液あるいは反応スラリーに吹き込んでもよ
いし、反応容器内に発熱体を入れて加熱してもよい。あ
るいは、反応容器の外部からスチームあるいは発熱体で
加熱してもよい。
【0057】本発明の方法では、昇温後の高温反応の温
度は、90〜100℃にする必要がある。好ましくは、
92〜98℃がよい。
【0058】90℃より小さいと、凝集粒子外部表面の
微粒子の溶解が不十分となって凹凸が残存し、エラスト
マーや樹脂に混練りするときの初期の噛み込みが悪くな
るので好ましくない。また、100℃を超える条件を達
成することは難しく、熱コスト上も好ましくない。
【0059】高温反応では、低温反応で生成した粒子径
の不揃いなシリカ粒子から構成される凝集粒子の外部表
面の微粒子が溶解され、その成分が凝集粒子のもつ細孔
の入口付近に析出して細孔を閉塞すると推定される。そ
の結果、薄膜状のシリカ層に覆われたモデルで説明され
るように、粒子径が不揃いのシリカ粒子が形成するブロ
ードな細孔分布の細孔を内部に閉じ込めた凝集粒子が生
成すると考えられる。
【0060】本発明では、沈降シリカを安定にする目的
で、高温反応を実施した後、反応液のpHが2〜6にな
るまで鉱酸のみを添加して中和反応を完結させることが
好ましい。
【0061】本発明の製造方法では、中和反応が完結
し、全てのシリカが析出した時点での反応スラリー中の
シリカ濃度を30〜80g/L、好ましくは、40〜7
0g/Lとすることが望ましい。これは、S(CTAB)を目
的の範囲にし易いからである。
【0062】本発明において、以上のようにして得られ
た沈降シリカは、ろ過、洗浄、乾燥等、後処理すること
によって、適当な嵩比重やDBP吸油量を有するものと
なる。それらの後処理方法は、特に制限されず、公知の
方法を採用することができる。
【0063】例えば、反応スラリーをフィルタープレス
でろ過、洗浄して得られたケークを静置乾燥する方法
や、反応スラリーをフィルタープレスでろ過、洗浄した
後、適度な濃度にしたスラリーを噴霧乾燥する方法等が
挙げられる。
【0064】また、嵩比重を補強用充填材に適合する大
きさまで調整する目的で、公知の方法を用いて粉砕処理
あるいは造粒処理を施すこともできる。さらに、補強用
充填剤として特異な性能を付与するため、公知の方法を
用いて、シリコーンオイル等で表面改質することも可能
である。
【0065】以下に、本発明の方法の代表的な実施態様
を示す。
【0066】先ず、反応槽に予め所定の濃度に調製した
珪酸アルカリ水溶液の一定量を入れ、40〜75℃の目
的温度に調整する。攪拌しながら、液中のアルカリ濃度
が一定となるように珪酸アルカリ水溶液および鉱酸の同
時添加を開始する。まず、核が析出し、次に、凝集が起
こって反応スラリーの粘度が上昇することを確認した
後、任意の時点で同時添加を一旦停止して、昇温する。
90〜100℃の目的温度に到達したら、珪酸アルカリ
水溶液と鉱酸の同時添加を再開するか、または、そのま
まの温度で熟成を実施する。その後、必要に応じて鉱酸
のみを添加し、反応スラリーのpHを2〜6とする。最
後に、ろ過によって沈降シリカを回収し、水による洗浄
を行って、乾燥する。さらに必要に応じて、粉砕処理、
造粒処理、および、表面改質処理を施す。
【0067】
【作用】本発明が提供する沈降シリカは、高い比表面積
を有すると共にブロードな細孔分布をもつため、樹脂、
エラスマー等の基材マトリックス中に充填した場合に、
適度に分散してバランスのとれた応用物性を発現するも
のと推定される。
【0068】
【実施例】以下に実施例・比較例を示し、本発明の特徴
を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に
制限されるものではない。
【0069】本発明で実施した各物性値の測定方法を示
す。
【0070】(1)セチルトリメチルアンモニウムブロ
マイド(CTAB)の吸着による比表面積(S(CTAB))
の測定 ASTM D3765−92記載の方法に準拠して実施
した。
【0071】ただし、ASTM D3765−92の方
法はカーボンブラックのS(CTAB)を測定する方法なの
で、若干の改良を加えた方法とした。すなわち、カーボ
ンブラックの標品であるITRB(83.0m2/g)
を使用せず、別途にCTAB標準液を調製し、これによ
ってエアロゾルOT溶液の標定を行い、シリカ表面に対
するCTAB1分子当たりの吸着断面積を35平方オン
グストロームとしてCTABの吸着量から比表面積を算
出した。これは、カーボンブラックとシリカとでは表面
状態が異なるので、同一比表面積でもCTABの吸着量
に違いがあると考えられるからである。
【0072】(2)水銀圧入法による細孔分布、およ
び、比表面積(S(PO))の測定 カルロ・エルバ社製 ポロシメーター2000型にて測
定した。本装置では、Washburnの関係式に接触角θ=1
41.3゜、水銀の表面張力σ=480dyne/cm
を採用している。2000barまで加圧するので、測
定範囲は細孔半径37.5〜約75000オングストロ
ームであった。
【0073】(3)窒素吸着法による比表面積(S(BE
T))の測定 S. Brunauer, P. H. Emmett, E. Teller, J. Am. Chem.
Soc. 60(1), 309 (1938)に記載された理論に基づい
て、一点法と呼ばれる簡便測定法として一般に設計、市
販されている測定装置(柴田科学器械工業社製 迅速表
面積測定装置SA−1100型)によって実施した。
【0074】(4)DBP吸油量の測定 JIS K6220 に準拠して測定した。
【0075】(5)見掛け比重の測定 JIS K6220 に準拠して測定した。
【0076】(6)水分量の測定 試料を105℃の乾燥器で2時間乾燥した後の重量変化
を測定し、重量減少率で表わした。
【0077】実施例1 シリカとアルカリのモル比SiO2/Na2O=3.35
の珪酸ナトリウムを使用して、まず、10Lの反応槽に
シリカ濃度が10g/Lの珪酸ナトリウム溶液を2.2
L仕込んだ。攪拌羽根で反応液を十分に攪拌しながら、
加熱して該反応溶液の温度を65℃にし、この温度を保
持した状態で、同じモル比でシリカ濃度90g/Lの珪
酸ナトリウム溶液を36mL/minの添加速度で、ま
た、濃度220g/Lの硫酸を6.2mL/minの添
加速度で同時に添加を開始した。60分経過後、反応槽
内の粘度が上昇しているのを確認したので、珪酸ナトリ
ウム溶液および硫酸の同時添加を中断して、昇温した。
その30分後、反応スラリーの温度は95℃となった。
この温度を維持しながら、珪酸ナトリウム溶液および硫
酸の同時添加を再開した。添加速度は65℃での反応と
同じとし、95℃での同時添加は65分間実施した。同
時添加終了後、95℃を保持したまま攪拌を継続し、5
分間熟成した。その後、95℃のまま硫酸をpHが3.
5になるまで添加した。この時点での反応スラリー中の
シリカ濃度(以下、最終シリカ濃度という)は、56g
/Lであった。この反応スラリーをろ過、水洗し、回収
したシリカケークを150℃乾燥器内で乾燥した。
【0078】得られたシリカのS(CTAB)は201m2
g、また、S(BET)は217m2/g、S(PO)は231m
2/gであった。比表面積の比S(BET)/S(PO)は0.9
4となる。水銀ポロシメーターによる細孔分布において
は、細孔半径400オングストローム以下の細孔の容積
は1.27mL/gであり、その中に占める50〜70
オングストロームの細孔の容積の割合が11%、70〜
100オングストロームの細孔の容積の割合が23%、
100〜150オングストロームの細孔の容積の割合が
29%、したがって、50〜150オングストロームの
細孔の容積を総計した割合は63%であった。
【0079】以上の粉体物性を表1にまとめて示す。
【0080】実施例2 低温反応の温度を55℃とし、高温(95℃)での同時
添加時間を70分間にした以外は、実施例1と同様の方
法で沈降シリカを製造した。反応スラリーの最終シリカ
濃度は56g/Lであった。
【0081】得られたシリカの粉体物性は表1に示す。
【0082】実施例3 高温反応の温度を98℃、高温での同時添加時間を60
分間とした以外は、実施例1と同様の方法で沈降シリカ
を製造した。反応スラリーの最終シリカ濃度は55g/
Lであった。
【0083】得られたシリカの粉体物性は表1に示す。
【0084】実施例4 高温反応の温度を90℃、高温での同時添加時間を60
分間とし、同時添加終了後の熟成時間を20分間にした
以外は、実施例1と同様の方法で沈降シリカを製造し
た。反応スラリーの最終シリカ濃度は55g/Lであっ
た。
【0085】得られたシリカの粉体物性表1に示す。
【0086】実施例5 高温(95℃)での同時添加時間を37分間とし、同時
添加終了後の熟成時間を23分間にした以外は、実施例
1と同様の方法で沈降シリカを製造した。反応スラリー
の最終シリカ濃度は52g/Lであった。
【0087】得られたシリカの粉体物性は表1に示す。
【0088】実施例6 低温(65℃)反応での同時添加時間を90分間、高温
(95℃)での同時添加時間を30分間とし、同時添加
終了後の熟成時間を40分間にした以外は、実施例1と
同様の方法で沈降シリカを製造した。反応スラリーの最
終シリカ濃度は55g/Lであった。
【0089】得られたシリカの粉体物性は表1に示す。
【0090】実施例7 低温反応の温度を55℃、低温において130分間の同
時添加をした後、昇温して、高温(95℃)では同時添
加はせず、そのかわり熟成時間を110分間にした以外
は、実施例1と同様の方法で沈降シリカを製造した。反
応スラリーの最終シリカ濃度は56g/Lであった。
【0091】得られたシリカの粉体物性は表1に示す。
【0092】比較例1 反応温度を85℃で一定とし、同時添加時間を115分
間、同時添加終了後の同温度(85℃)での熟成時間を
10分間とした以外は、実施例1と同様の方法で沈降シ
リカを製造した。反応スラリーの最終シリカ濃度は55
g/Lであった。
【0093】得られたシリカの粉体物性を表1に示す。
【0094】比較例2 シリカとアルカリのモル比SiO2/Na2O=3.00
の珪酸ナトリウムを使用して、まず、10Lの反応槽に
シリカ濃度が40g/Lの珪酸ナトリウム溶液を7.5
L、および、無水硫酸ナトリウム172gを仕込んだ。
攪拌羽根で反応液を十分に攪拌しながら、加熱して該反
応溶液の温度を40℃にし、この温度を保持した状態
で、濃度220g/Lの硫酸を20mL/minの添加
速度で15分間添加した。その後、反応液を50分間で
95℃まで昇温した。昇温途中で反応槽内の粘度が上昇
しているのを確認した。95℃に保持した反応スラリー
に、再び同じ濃度の硫酸の添加を、添加速度4.9mL
/minで90分間にわたって実施した。硫酸添加終了
後の反応スラリーのpHは5.5、反応スラリー中のシ
リカ濃度は36g/Lであった。この反応スラリーをろ
過、水洗し、回収したシリカケークを150℃乾燥器内
で乾燥した。
【0095】得られたシリカの粉体物性を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】用途例1〜7、比較用途例1、2 本発明の沈降シリカを充填剤として使用した場合の補強
効果を確認するため、実施例、比較例の各沈降シリカを
以下の配合で混練りし、加硫物について応用物性を測定
した。
【0098】 SBR1712 96.25重量部 BR01 30.0 重量部 沈降シリカ 70.0 重量部 シランカップリング剤Si69 7.0 重量部 ステアリン酸 2.0 重量部 パラフィンワックス 1.0 重量部 芳香族系プロセスオイル 7.0 重量部 老化防止剤6C 1.0 重量部 亜鉛華 4.0 重量部 加硫促進剤 CZ 1.5 重量部 硫黄 2.0 重量部 この配合物を160℃、15分間の条件で加硫した。
【0099】応用物性値として、レオメトリックス社製
動的粘弾性測定装置ARESにより、25℃、周波数1
5Hzの条件で歪み分散を測定し、歪み1%のときの貯
蔵弾性率(E’)を採用した。また、JIS K625
1 に準拠して引っ張り試験を実施し、伸び300%時
の引っ張り応力(M300)を採用した。
【0100】表2には、応用物性の測定結果を比較例1
の沈降シリカについての測定値を100とした場合の相
対値で併記した。実施例1〜7の沈降シリカについては
いずれも100以上の値であって、E’とM300を両立
していることが理解される。
【0101】
【表2】
【0102】
【発明の効果】以上の説明により理解されるように、本
発明の沈降性シリカは、種々の基材、特に、樹脂、エラ
スマー等に充填材として添加した場合に、動的粘弾性と
引っ張り強度を両立してバランスのとれた補強効果を発
現する。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セチルトリメチルアンモニウムブロマイ
    ド(CTAB)の吸着により測定した比表面積(S(CTA
    B))が180〜270m2/gであって、水銀圧入法に
    より測定した細孔分布に関して、細孔半径400オング
    ストローム以下の細孔の容積に占める50オングストロ
    ーム以上、70オングストローム以下の細孔半径を有す
    る細孔の容積の割合が10〜30%、70オングストロ
    ームを越え、100オングストローム以下の細孔半径を
    有する細孔の容積の割合が20〜40%、および100
    オングストロームを越え、150オングストローム以下
    の細孔半径を有する細孔の容積の割合が10〜30%の
    範囲にあることを特徴とする沈降シリカ。
  2. 【請求項2】 窒素吸着法により測定した比表面積(S
    (BET))と水銀圧入法により測定した比表面積(S(P
    O))との比S(BET)/S(PO)が0.8〜1.0となる比
    表面積を有する請求項1記載の沈降シリカ。
  3. 【請求項3】 水銀圧入法により測定した細孔分布に関
    して、細孔半径400オングストローム以下の細孔の容
    積に占める50〜150オングストロームの細孔半径を
    有する細孔の容積の割合が50%以上である請求項1及
    び2記載の沈降シリカ。
  4. 【請求項4】 珪酸アルカリ水溶液中に珪酸アルカリ水
    溶液と鉱酸とを反応系の温度を40〜75℃に保ちなが
    ら同時に添加してシリカを析出せしめ、該シリカの凝集
    を確認した後に、反応系の温度を90〜100℃に昇温
    することを特徴とする沈降シリカの製造方法。
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