JPH11202111A - 光学系 - Google Patents

光学系

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JPH11202111A
JPH11202111A JP10005681A JP568198A JPH11202111A JP H11202111 A JPH11202111 A JP H11202111A JP 10005681 A JP10005681 A JP 10005681A JP 568198 A JP568198 A JP 568198A JP H11202111 A JPH11202111 A JP H11202111A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 回折面上に保護層を設けても像の質が低下す
るのを防ぎ、さらに、不要次数光の影響を抑えて、高い
像の質を得ることができる光学系。 【解決手段】 帯域光が入射する光学系であり、レリー
フ型回折光学素子2と、このレリーフ型回折光学素子2
に入射するかレリーフ型回折光学素子2を経た光の波長
帯域を制限する手段3とを有し、レリーフ型回折光学素
子2は、表面にレリーフ形状を有する光学部材4と、そ
の光学部材4とは異なる材料からなり、光学部材4の表
面上に形成された保護層5とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学系とそれを含
む撮像装置に関し、特に、レリーフ面に保護層を設けた
レリーフ型回折光学素子を含み帯域光が入射する光学
系、及び、この光学系を含む撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、収差補正や光学系の小型化等のた
め、回折光学素子、特にレリーフ型回折光学素子がよく
用いられるようになってきた。レリーフ型回折光学素子
とは、図1に断面を示すように、表面に形成された深さ
方向に構造を持つレリーフパターンによって光を回折す
るものである。このレリーフパターンは非常に微細であ
り、可視光を利用する場合、通常そのピッチは数μmか
ら数百μm程度である。
【0003】このように、微細なパターンが表面に形成
されているため、レリーフ型回折光学素子の表面は汚れ
やすい。溝の底に埃等がたまりやすく、また、指紋等の
汚れが付着しても通常の屈折レンズとは異なり拭き取る
ことは困難である。また、凹凸パターンの凸部は欠けや
すく、傷が付きやすい。そのため、例えばカメラの撮像
光学系に回折光学素子を用いた場合、レリーフパターン
の形成された回折面を物点側の第1面に配置することは
できない。
【0004】このような問題に対して、回折面に保護層
を形成し、表面を平坦化する方法がある。例えば特開平
2−43503号においては、表面にレリーフ格子パタ
ーンを形成したグレーティング層上に保護層を設け、表
面を平坦化している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、回折面
上に保護層を形成すると、光学性能が低下し、この回折
光学素子を利用した光学系ではフレアーやゴースト等が
強く発生し、像の画質が低下してしまう場合もある。
【0006】レリーフ型の回折光学素子には、レリーフ
形状のある溝深さに対して、ある波長である回折次数光
の回折効率が最高となり、波長がそれからずれるとその
回折次数光の回折効率は低くなるという性質がある。例
えば、図1(a)に示すように断面が鋸歯形状の回折光
学素子は、空気中に置かれている場合には、溝深さdが
次の式(10)を満たすとき、波長λ0 でm次光の回折
効率が100%となる。
【0007】 d=mλ0 /{n1 (λ0 )−1} ・・・(10) ここで、n1 (λ0 )は回折光学素子のレリーフ面の材
料の波長λ0 における屈折率である。以降、このような
回折効率が最高値となる波長λ0 を最適化波長と呼ぶ。
【0008】最適化波長λ0 を510nmとした場合
の、可視域における1次光の回折効率を図2に示す。た
だし、回折光学素子はBSL7((株)オハラ製。nd
=1.51633,νd =64.1)からなっていると
する。図2から分かるように、波長510nmにおいて
は回折効率は100%となるが、それより長波長及び短
波長の領域では回折効率が低下する。このとき、その低
下分は他の回折次数光、主に0次光と2次光として回折
する。図3に、最適化波長λ0 の場合の0次光及び2次
光の回折効率を示す。0次光は長波長域で回折効率が高
くなり、2次光は短波長域で回折効率が高くなる。
【0009】したがって、白色光のように波長範囲の広
い光を回折光学素子に入射すると、像の形成に使用する
回折次数光(ここでは、1次光)以外の不要な回折次数
光(ここでは、主に0次光及び2次光)が発生し、それ
はフレアーやゴースト等の原因となり、像の質が悪化し
てしまう。
【0010】このレリーフ型回折光学素子の回折面上
に、図4のように、回折光学素子の材料と異なる材料か
らなる保護層を形成した場合を考える。この保護層をな
す材料の屈折率をn2 とすると、保護層がない場合と同
様に、回折次数m、最適化波長λ0 で回折効率を100
%とするためには、溝深さd’を次の式(11)のよう
にする必要がある。
【0011】 d’=mλ0 /{n1 (λ0 )−n2 (λ0 )} ・・・(11) 例えば、レリーフ型回折光学素子をBSL7、保護層を
PC(ポリカーボネート)とした場合、最適化波長λ0
を510nmとすると、可視域における1次光の回折効
率は図5ののようになる。なお、図中のは保護層を
設けない場合の1次光の回折効率であり、図2と同じも
のである。図5から分かるように、この場合も、回折効
率は最適化波長から離れるに従って下るが、保護層がな
い場合よりも下がり方が大きい。特に短波長域での低下
が大きい。また、0次光と2次光の回折効率は図6のよ
うになり、1次光の回折効率が低下した分、0次光と2
次光の回折効率が高くなる。
【0012】このように、レリーフ型回折光学素子の回
折面上に保護層を設けると、回折効率の波長依存性が大
きくなり、像形成に使用する回折次数光の回折効率が最
適化波長に対して短波長域及び長波長域で低下し、像形
成に不要な回折次数光の回折効率がこれらの波長域で高
くなることがある。したがって、保護層を設けること
で、不要次数光による像への影響、すなわちフレアーや
ゴースト等が強くなり、像の質の劣化が大きくなる場合
がある。
【0013】本発明はこの点に着目してなされたもので
あり、その目的は、回折面上に保護層を設けても像の質
が低下するのを防ぎ、さらに、不要次数光の影響を抑え
て、高い像の質を得ることができる光学系とそれを含む
撮像装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の光学系は、帯域光が入射する光学系において、前記
光学系は、レリーフ型回折光学素子と、このレリーフ型
回折光学素子に入射する、あるいは、レリーフ型回折光
学素子を経た光の波長帯域を制限する手段とを有し、該
レリーフ型回折光学素子は、表面にレリーフ形状を有す
る光学部材と、該光学部材とは異なる材料からなり、前
記光学部材の表面上に形成された保護層とを有すること
を特徴とするものである。
【0015】この光学系は、後記の光学系の第1から第
3の実施の形態が対応する。この発明においては、レリ
ーフ型回折光学素子と波長帯域制限手段とを有する。こ
こで、レリーフ型回折光学素子は、表面に回折面として
のレリーフ形状を有する光学部材と、その表面上に形成
され、その光学部材とは異なる材料からなる保護層とを
有する。そのため、このレリーフ型回折光学素子に白色
光等の帯域光が入射すると、帯域光は回折面で回折さ
れ、像形成に必要な回折次数の回折光の他に、像形成に
は不要な次数の回折光も発生する。このレリーフ型回折
光学素子の回折面上には保護層が設けられているため、
保護層を設けない場合と比べて、短波長域と長波長域で
特に不要次数光が強くなる場合もある。
【0016】例えば、表面にレリーフ形状を有する光学
部材がBSL7、保護層がPCであり、可視光の1次光
を像形成に使用する場合を考える。最適化波長を510
nmとすると、1次光の回折効率は図5に示したように
なり、像形成に不要な0次光及び2次光の回折効率は図
6に示したようになる。
【0017】レリーフ型回折光学素子の回折面で発生し
たこれらの回折光は、波長帯域制限手段に入射する。波
長帯域制限手段は、レリーフ型回折光学素子の回折面で
発生した回折光の中、像形成に不要な次数の回折光の影
響を低減するものである。例えば、波長帯域制限手段が
図7のような透過率分布を有するものであるとすれば、
不要次数光の強度が高い波長域で透過率が低いため、こ
の波長帯域制限手段を透過した不要次数光の相対的な強
度分布は図8のようになり、強度は大幅に低減する。た
だし、ここで、レリーフ型回折光学素子の回折面に入射
する光の強度分布は波長に対して一様であるとしてい
る。また、強度の相対値は、レリーフ型回折光学素子の
回折面に入射する前の強度を1としている。
【0018】一方、像形成に必要な1次光は、使用する
波長域すなわち可視域においては波長域制限手段の透過
率が高く、波長に対して略平坦なため、全体的に若干強
度が弱くなるだけで波長に対する強度分布は大きくは変
わらずに波長帯域制限手段を透過する。
【0019】以上から、レリーフ型回折光学素子の回折
面で回折した回折光が波長帯域制限手段を透過すると、
像形成に必要な回折次数光は効率良く透過し、像形成に
不要な回折次数光は大幅に除去できることが分かる。
【0020】以上は、レリーフ型回折光学素子の回折面
より光の射出側に波長帯域制限手段が配置されている場
合であったが、波長帯域制限手段はレリーフ型回折光学
素子の回折面より光の入射側に配置されていてもよい。
この場合は、物点からの白色光はまず波長帯域制限手段
に入射する。そして、像形成に必要な波長域の光は効率
的に透過し、像形成に不要な回折次数光の回折効率が高
くなる波長域の光は除去され、レリーフ型回折光学素子
の回折面に入射する。レリーフ型回折光学素子の回折面
で回折を受けると、像形成に必要な回折次数光と共に不
要次数光も発生するが、すでに不要次数光の回折効率が
高くなる波長域の光の強度は弱くなっている。そのた
め、発生した不要次数光の強度も弱く、像へ及ぼす影響
も小さくなっている。
【0021】この発明においては、像形成に必要な回折
次数光は、波長帯域制限手段を効率良く透過し、像形成
に不要な回折次数光は波長帯域制限手段で大幅に除去で
きるため、レリーフ型回折光学素子の回折面上に保護層
を設け不要次数光の影響が大きくなった場合でも、不要
次数光の影響、つまりフレアーやゴースト等を効率良く
低減することができる。そのため、高い質の像を得るこ
とができる。
【0022】また、像の質を落とすことなく、回折面上
に保護層を設けたレリーフ型回折光学素子を組み込むこ
とができるため、耐環境性に優れた光学系を得ることが
できる。
【0023】また、回折面に保護層が設けられているた
め、例えばカメラの望遠レンズ系に使用する場合、回折
面を物点側に配置することが可能となり、設計上の自由
度が大きくなり、応用範囲を広げることができる。
【0024】上記発明の光学系において、レリーフ型回
折光学素子以外の光学系を構成する光学素子の少なくと
も一部が、波長帯域制限手段を構成するようにすること
ができる。
【0025】この構成は、後記の光学系の第1の実施の
形態が対応する。この構成においては、レリーフ型回折
光学素子以外の結像光学系を構成する光学素子の少なく
とも一部が波長帯域制限手段を有する。
【0026】光の進行順に見て、レリーフ型回折光学素
子の後に波長帯域制限手段が配置されている場合を考え
る。このとき、レリーフ型回折光学素子に帯域光が入射
すると、像形成に必要な回折次数光と不要な回折次数光
とが発生する。像形成に不要な回折次数光は波長帯域制
限手段に入射して、回折効率が高くなる波長域の光が波
長帯域制限手段で除去されるため、大幅に低減されて射
出する。一方、像形成に必要な回折次数光も波長帯域制
限手段に入射するが、波長帯域制限手段は像形成に必要
な回折次数光の回折効率が高くなる波長域では透過率が
高く、効率良く透過することになる。したがって、不要
次数光のみ除去されて、像に対する不要次数光の影響が
低減される。
【0027】以上は、レリーフ型回折光学素子、波長帯
域制限手段の順に配置されている場合であるが、その配
置は逆でもよい。ここで、波長帯域制限手段はレリーフ
型回折光学素子とは別の素子であるため、レリーフ型回
折光学素子に特別な処理をする必要はなく、レリーフ型
回折光学素子の保護層は使用する波長域で透明であれば
よい。
【0028】また、レリーフ型回折光学素子はそのまま
で、波長帯域制限手段は制限する波長帯域が異なるもの
に取り換えて、使用する波長域を変えることができる。
逆に、波長帯域制限手段はそのままで、レリーフ型回折
光学素子を別のものに取り換えることもできる。
【0029】この構成においては、波長帯域制限手段が
レリーフ型回折光学素子とは別の素子であるため、レリ
ーフ型回折光学素子には特別処置を施す必要がなく、保
護層も特別のものである必要はない。そのため、レリー
フ型回折光学素子を容易に安価に製作することができ、
安価な結像光学系を得ることができる。
【0030】また、レリーフ型回折光学素子を変えるこ
となく、制限する波長帯域を変えることができ、逆に制
限する波長帯域を変えずに、レリーフ型回折光学素子だ
けを変えることもできる。したがって、目的に合わせて
使用波長域だけを変えたり、使用波長域は変えずに結像
性能を変えたりすることができ、汎用性の高い結像光学
系を得ることができる。
【0031】上記のレリーフ型回折光学素子以外の光学
系を構成する光学素子の少なくとも一部が波長帯域制限
手段を構成する場合に、波長帯域制限手段には、レリー
フ型回折光学素子以外の光学系を構成する光学素子の少
なくとも一部の表面に設けた多層膜が含まれる構成とす
ることができる。
【0032】この構成は、後記の光学系の第1の実施の
形態が対応する。この構成においては、波長帯域制限手
段には、レリーフ型回折光学素子以外の光学系を構成す
る光学素子の少なくとも一部の表面に設けた多層膜が含
まれる。この光学素子は、例えば屈折レンズやプリズム
等である。これらは、元々光学系として必要な光学素子
であり、その光学素子の表面に多層膜を設けるため、波
長帯域を制限するために特に光学部材を追加する必要が
ない。
【0033】この構成においては、多層膜は光学系を構
成する光学素子の少なくとも一部の表面に設けられてお
り、波長帯域を制限するための光学部材を特に追加する
必要がなく、素子数の少ない小型の光学系を得ることが
できる。
【0034】また、前記発明の光学系において、レリー
フ型回折光学素子が波長帯域制限手段を有する構成とす
ることができる。
【0035】この構成は、後記の光学系の第2の実施の
形態が対応する。この構成においては、レリーフ型回折
光学素子が波長帯域制限手段を有する。すなわち、波長
帯域制限手段はレリーフ型回折光学素子とは別の素子で
はなく、レリーフ型回折光学素子内に含まれている。
【0036】このレリーフ型回折光学素子に入射した帯
域光は、レリーフ型回折光学素子の回折面で回折を受
け、像形成に必要な回折次数光と不要な回折次数光が発
生する。それと同時に、発生した不要次数光は不要次数
光の回折効率が高くなる波長域の光強度を低減する波長
帯域制限手段により弱められ、像形成に使用する回折次
数光は効率良く透過する。そのため、レリーフ型回折光
学素子からは像形成に必要な回折次数光と、大幅に強度
が低減された不要次数光が射出することになる。
【0037】この構成においては、レリーフ型回折光学
素子自体が波長帯域制限手段を有するため、入射光を回
折して像形成に必要な回折次数光を発生すると共に、レ
リーフ型回折光学素子だけで像形成に不要な回折次数光
の影響を低減することができる。そのため、不要次数光
の影響を低減するために他の素子を必要とせず、光学系
を小型化することができる。
【0038】上記のレリーフ型回折光学素子が波長帯域
制限手段を有する構成において、波長帯域制限手段はレ
リーフ型回折光学素子の保護層とすることができる。
【0039】この構成は、後記の光学系の第2の実施の
形態が対応する。この構成においては、波長帯域制限手
段はレリーフ型回折光学素子の保護層である。すなわ
ち、レリーフ型回折光学素子の保護層は、回折面を保護
すると同時に、像形成に不要な回折次数光の回折効率が
高くなる波長域の光を吸収し、像形成に使用する波長域
の光を透過する。そのため、回折面上に保護層を形成す
るだけで、像形成に不要な回折次数光の影響を除去する
ことができる。
【0040】この構成においては、保護層が回折面を保
護すると同時に、像形成に不要な回折次数光の影響を除
去することができるため、保護層を形成するだけで不要
次数光の影響の低減された良好な像が得られる。そのた
め、容易で安価にレリーフ型回折光学素子を製造するこ
とができ、安価な光学系を得ることができる。
【0041】上記のレリーフ型回折光学素子が波長帯域
制限手段を有する構成において、波長帯域制限手段は、
レリーフ型回折光学素子の保護層と、レリーフ型回折光
学素子の保護層とは反対の面に設けた多層膜とによって
構成することができる。
【0042】この構成は、後記の光学系の第2の実施の
形態が対応する。この構成においては、波長帯域制限手
段は、レリーフ型回折光学素子の保護層と、レリーフ型
回折光学素子の保護層とは反対の面に設けた多層膜であ
る。このとき、保護層は像形成に不要な回折次数光の回
折効率が高い波長域の中、例えば短波長域で透過率が低
いものであり、多層膜は長波長域で透過率が低いものと
する。すると、レリーフ型回折光学素子に入射した帯域
光の中、短波長域で回折効率が高くなる不要次数光は保
護層で除去され、長波長域で回折効率が高くなる不要次
数光は多層膜で除去され、光が光学系を射出したときに
は、不要次数光は短波長域でも長波長域でも大幅に低減
されていることになる。
【0043】このように、短波長域及び長波長域で強く
なる不要次数光を、短波長域では保護層、長波長域では
多層膜で除去することができ、像における不要次数光の
影響を短波長域と長波長域で別々の手段で低減すること
ができる。したがって、保護層の材料を変えたり、多層
膜の構成を変えれば、短波長域及び長波長域で不要次数
光を除去する波長域を独立に変えることができる。
【0044】以上では、保護層が短波長域で、多層膜が
長波長域で不要次数光の影響を低減する場合であった
が、逆に、保護層が長波長域で、多層膜が短波長域で不
要次数光の影響を低減するものであってもよい。
【0045】この構成においては、レリーフ型回折光学
素子に設けた保護層及び多層膜で不要次数光の短波長域
及び長波長域における影響を別々に除去するため、除去
する波長域を短波長域と長波長域とで独立に制御するこ
とができる。したがって、保護層あるいは多層膜を変え
ることで除去する波長域を短波長域と長波長域で別々に
変えることかでき、一つの手段で制御する場合に比べ
て、不要次数光を除去する波長域の設定の自由度が大き
くなり、使用目的に合わせて制限する波長域を細かく設
定することができ、より使用目的に合った良好な像が得
られる。
【0046】また、保護層及び多層膜は、ある波長に対
してそれより長波長域あるいは短波長域でのみ不要次数
光を除去すればよく、もう一方の波長域には関係なく設
定することができ、一つの手段で両領域を除去する場合
に比べ、使用できる材料が多くなり、実現性が高くな
る。
【0047】また、前記発明の光学系において、レリー
フ型回折光学素子及びレリーフ型回折光学素子以外の光
学系を構成する光学素子の少なくとも一部が、波長帯域
制限手段に含まれる構成とすることができる。
【0048】この構成は、後記の光学系の第3の実施の
形態が対応する。この構成においては、レリーフ型回折
光学素子とレリーフ型回折光学素子以外の光学系を構成
する光学素子の少なくとも一部とが、波長帯域制限手段
に含まれる。このとき、レリーフ型回折光学素子は像形
成に不要な回折次数光の回折効率が高くなる短波長域、
あるいは長波長域で透過率が低く、光学素子の少なくと
も一部はレリーフ型回折光学素子とは反対の波長域で透
過率が低いものである。
【0049】例えば、光の進行順に、レリーフ型回折光
学素子、波長帯域制限手段の一部を構成する光学素子が
配置されている場合、入射帯域光はレリーフ型回折光学
素子に入射し、回折を受けて像形成に必要な回折次数
光、及び、不要な回折次数光が発生する。不要次数光は
まずレリーフ型回折光学素子自体で一方の波長域が除去
され、次に、波長帯域制限手段の一部を構成する光学素
子でもう一方の波長域が除去される。したがって、レリ
ーフ型回折光学素子とこの光学素子を透過した光は主に
像形成に必要な回折次数光であり、不要次数光は大幅に
低減されている。レリーフ型回折光学素子、波長帯域制
限手段の一部を構成する光学素子の配置は上記と逆でも
よい。
【0050】以上説明したように、レリーフ型回折光学
素子と光学素子は、制限する波長域の中、一方は短波長
域を、もう一方は長波長域を制限する。したがって、光
学素子の制限する波長域とは関係なく、レリーフ型回折
光学素子が制限する波長域を決めることができ、その逆
もまた可能となる。
【0051】この構成においては、制限する波長域を、
短波長域と長波長域とで別々の素子で制限するため、制
限する波長域を短波長域と長波長域とで独立に設定する
ことができる。したがって、使用目的に合わせて制限す
る波長域を細かく設定することができ、より使用目的に
合った良好な像が得られる。
【0052】また、一方の波長域を制限する素子はもう
一方の波長域には関係なく設定することができ、一つの
素子が両波長域共制限する場合に比べて、自由度が大き
くなり、実現性が高くなる。
【0053】また、前記発明の光学系において、波長帯
域制限手段は脱着可能である構成とすることができる。
【0054】この構成は、後記の光学系の第1から第3
の実施の形態が対応する。この構成においては、波長帯
域制限手段は脱着可能である。したがって、容易に波長
帯域制限手段を外したり、別の波長帯域制限手段に交換
することができる。
【0055】不要次数光の像への影響は、受光素子の感
度に依存する。例えば像を直接目で観察する場合、人間
の目の比視感度は波長550nm付近でピークを持ち、
400nm付近や700nm付近では非常に低い。した
がって、不要次数光の回折効率が高くなる波長域が40
0nmや700nm辺りであれば、元々目の感度が低い
ため不要次数光の影響は少なく、波長帯域制限手段で不
要次数光を完全に除去する必要がない場合もある。一
方、固体撮像素子で受光する場合は、目とは感度分布が
異なり、さらに短波長、長波長でも感度が高い場合もあ
る。このときには、波長帯域制限手段は不要次数光をよ
り低減するものでなければならない。
【0056】このように、受光素子によって波長帯域制
限手段に要求される性能は異なる。そこで、波長帯域制
限手段は場合によっては変更できることが望ましい。そ
こで、波長帯域制限手段を脱着可能にすれば、例えば目
で直接観察する場合、固体撮像素子で受光しモニターで
観察する場合、写真フィルムで撮影する場合等、様々な
状況に合った性能を持つ波長帯域制限手段に容易に交換
することができる。
【0057】この構成においては、波長帯域制限手段が
脱着可能であるため、観察する状況に合わせて最適な性
能の波長帯域制限手段に容易に交換することができ、そ
れぞれの状況でより良い映像を得ることができる。ま
た、様々な状況に使用でき、汎用性の高い光学系を得る
ことができる。
【0058】また、前記発明の光学系において、以下の
条件式(1)〜(4)の少なくとも一つを満足すること
が望ましい。 0<A0 /Aa <0.1 ・・・(1) λS /λ0 <0.95 ・・・(2) λL /λ0 >1.2 ・・・(3) |C1 −C2 |<20% (使用する波長帯域λ1 <λ<λ2 において) ・・・(4) ただし、 Aa :対象波長帯域における全光量 A0 :対象波長帯域における像形成に不要な次数の回折
光の光量 λ0 :最適化波長 λS :λ0 より短波長で光量を50%カットする波長 λL :λ0 より長波長で光量を50%カットする波長 C1 ,C2 :波長λ0 で利用する回折次数が最適化され
たときの使用する波長域の最短波長λ1 及び最長波長λ
2 における利用する回折次数光の回折効率(%)であ
る。
【0059】この構成は、後記の光学系の第1から第3
の実施の形態が対応する。この構成においては、上記の
条件式(1)〜(4)の少なくとも一つを満足する。
【0060】上記条件式(1)を満足するとき、波長帯
域制限手段を持たない場合に像形成に不要な回折次数光
の光量が無視できないレベルとなる対象波長帯域におい
て、本発明の光学系では、不要次数光の光量はこの対象
波長域における全光量の10%より小さい。したがっ
て、不要次数光の像への影響は小さく、像の質の劣化を
有効に防ぐことが可能になる。
【0061】また、不要次数光の光量は少なければ少な
い程よいが、像における不要次数光の影響が無視できる
程度であれば、必ずしも0でなくてもよい。像形成に必
要な次数光の光量を確保しつつ、不要次数光の光量を完
全に除去するのは非常に困難である。しかし、本発明の
光学系では、不要次数光の光量は0ではない。そのた
め、像の質の劣化を有効に防ぎつつも実現性の高い光学
系となる。
【0062】例えば、BSL7の基板上にPCの保護層
を形成したレリーフ型回折光学素子を含み、図9に示し
た透過率分布を有する波長帯域制限手段で不要次数光を
除去する光学系を考える。このとき、レリーフ型回折光
学素子への入射光の強度が波長によらず一定であるとす
ると、像形成に不要な回折次数光である0次光と2次光
の相対強度は図10のようになる。ただし、レリーフ型
回折光学素子の最適化波長λ0 は510nmであり、レ
リーフ型回折光学素子に入射する前の強度を1としてい
る。
【0063】このとき、波長範囲400〜700nmに
おける全光量(0次光、1次光、2次光の光量の合計)
に占める不要次数光(0次光と2次光)の光量の割合は
およそ0.09となる。
【0064】条件式(2)を満足するとき、最適化波長
λ0 よりも短波長域において波長帯域制限手段が光量を
50%カットする波長λS は、 λS <0.95λ0 ・・・(12) となり、例えば最適化波長λ0 が510nmの場合、λ
S <484.5nmである。
【0065】また、条件式(3)を満足するとき、最適
化波長λ0 よりも長波長域において波長帯域制限手段が
光量を50%カットする波長λL は、 λL >1.2λ0 ・・・(13) となり、例えば最適化波長λ0 が510nmの場合、λ
L >612nmである。
【0066】ここで、λS /λ0 が条件式(2)の上限
値を越えて大きな値となったり、λL /λ0 が条件式
(3)の下限値を越えて小さな値となると、制限する波
長帯域が最適化波長λ0 に接近しすぎて、カラー画像を
形成する波長帯域幅が狭くなり、十分な色再現性を保つ
ことができなくなる。逆に、条件式(2)あるいは条件
式(3)を満足すれば、十分な色再現性を保つことがで
きることになる。
【0067】ところで、前述したように、レリーフ型回
折光学素子の回折効率は、最適化波長λ0 に対して短波
長側でも長波長側でも低下する。最適化波長λ0 が像形
成に使用する波長帯域において短波長側に寄りすぎる
と、長波長域での像形成に必要な回折次数光の回折効率
が下がり、長波長域の色が弱くなる。また、不要次数光
が増加して、像における不要次数光の影響が大きくな
る。したがって、像の質の低下が著しくなる。一方、最
適化波長λ0 が像形成に使用する波長帯域において長波
長側に寄りすぎると、短波長域での像形成に必要な回折
次数光の回折効率が下がり、短波長域の色が弱くなり、
また、不要次数光が増加して、同様に像の質の低下が著
しくなる。そのため、使用する波長域の両端での像形成
に利用する回折次数光の回折効率が略等しくなるよう
に、最適化波長λ0 を決める必要がある。条件式(4)
を満たす場合、この回折効率C1 、C2 の差は20%よ
り小さくなり、使用する波長域内では像形成に必要な回
折次数光の回折効率は高く、不要次数光の回折効率は低
くなる。
【0068】ここで、利用する回折次数を1次とする
と、最適化波長λ0 に対して、任意波長λでのm次回折
効率C(m) は、以下の式(14)で計算することができ
る。
【0069】 C(m) =|sinπ[m−{n1 (λ)−n2 (λ)}(λ0 /λ) /{n1 (λ0 )−n2 (λ0 )}] ÷[πm−π{n1 (λ)−n2 (λ)}(λ0 /λ) /{n1 (λ0 )−n2 (λ0 )}]|2 ・・・(14) したがって、例えばBSL7の基板上にPCの保護層を
設けたレリーフ型回折光学素子を、1次回折光を利用し
て、波長帯域400nm<λ<700nmで使用する
と、条件式(4)を満足するには、最適化波長λ0 はお
よそ464nm〜496nmの波長範囲内とすればよ
い。図11に、最適化波長λ0 を464nmと496n
mとした場合の1次回折光の回折効率を示す。図中の
が最適化波長λ0 が464nmの場合、が最適化波長
λ0 が496nmの場合である。図11から分かるよう
に、最適化波長が464nm〜496nmのとき、1次
光の回折効率は像形成に必要な波長帯域400nm<λ
<700nmにおいて回折効率が高く、また、短波長域
と長波長域での差が小さい。
【0070】上記構成においては、条件式(1)を満た
す場合には、不要次数光の光量が全光量の10%より小
さくなり、不要次数光による像の質の劣化を有効に低減
することが可能となり、質の良い像を得ることができ
る。
【0071】条件式(2)あるいは(3)を満たす場合
には、像形成に使用する波長帯域を狭めすぎず、十分な
色再現性を保つことができるため、質の良い像を得るこ
とができる。
【0072】条件式(4)を満たす場合には、短波長域
あるいは長波長域のみ不要次数光の影響が大きくなった
り、像形成に使用する回折次数光が弱くなったりするこ
とがなく、カラーバランスの保たれた質の良い像を得る
ことができる。
【0073】したがって、条件式(1)〜(4)の少な
くとも一つを満足すれば、質の高い像を得ることができ
る。
【0074】また、前記発明の光学系において、以下の
条件式(5)〜(8)の少なくとも一つを満足すること
が望ましい。 0<A0 /Aa <0.05 ・・・(5) λS /λ0 <0.94 ・・・(6) λL /λ0 >1.22 ・・・(7) |C1 −C2 |<10% (使用する波長帯域λ1 <λ<λ2 において) ・・・(8) ただし、 Aa :対象波長帯域における全光量 A0 :対象波長帯域における像形成に不要な次数の回折
光の光量 λ0 :最適化波長 λS :λ0 より短波長で光量を50%カットする波長 λL :λ0 より長波長で光量を50%カットする波長 C1 ,C2 :波長λ0 で利用する回折次数が最適化され
たときの使用する波長域の最短波長λ1 及び最長波長λ
2 における利用する回折次数光の回折効率(%)であ
る。
【0075】この構成は、後記の光学系の第1から第3
の実施の形態が対応する。この構成においては、上記の
条件式(5)〜(8)の少なくとも一つを満足する。
【0076】条件式(5)を満足する場合、不要次数光
の光量は全光量の5%より小さくなり、条件式(1)を
満たす場合よりもさらに不要次数光の影響は小さくな
る。
【0077】条件式(6)あるいは(7)を満足する場
合、光量を50%カットする波長λS 及びλL , それ
ぞれ λS <0.94λ0 ・・・(15) λL >1.22λ0 ・・・(16) となり、例えば最適化波長λ0 が510nmの場合、λ
S <479.4nm、λL >622.2nmである。条
件式(2)及び(3)に比べ、λS は上限値が,λL
下限値が最適化波長から遠ざかっている。したがって、
カラー画像を形成する波長帯域幅が広がり、より十分に
色再現性を保つことができる。
【0078】条件式(8)を満足する場合、使用する波
長域の両端での像形成に利用する回折次数光の回折効率
1 、C2 の差は10%より小さく、条件式(4)より
小さい。そのため、よりカラーバランスが良く、不要次
数光の影響も小さくなる。
【0079】この構成においては、条件式(5)を満た
す場合には、不要次数光の光量が全光量の5%より小さ
くなり、不要次数光による像の質の劣化をより有効に低
減することが可能となり、より質の良い像を得ることが
できる。
【0080】条件式(6)あるいは(7)を満たす場合
には、像形成に使用する波長帯域を狭めすぎず、より十
分な色再現性を保つことができるため、より質の良い像
を得ることができる。
【0081】条件式(8)を満たす場合には、短波長域
あるいは長波長域のみ不要次数光の影響が大きくなった
り、像形成に使用する回折次数光が弱くなったりするこ
とがさらになく、よりカラーバランスの保たれた質の良
い像を得ることができる。
【0082】したがって、条件式(5)〜(8)の少な
くとも一つを満足すれば、より高い質の像を得ることが
できる。
【0083】また、前記発明の光学系において、以下の
条件式(9)を満足することが望ましい。 |C1 −C2 |<5% (使用する波長帯域λ1 <λ<λ2 において) ・・・(9) ただし、C1 ,C2 :波長λ0 で利用する回折次数が最
適化されたときの使用する波長域の最短波長λ1 及び最
長波長λ2 における利用する回折次数光の回折効率
(%)である。
【0084】この構成は、後記の光学系の第1から第3
の実施の形態が対応する。この構成において、条件式
(9)を満足する場合、使用する波長域の両端での像形
成に利用する回折次数光の回折効率C1 、C2 の差は5
%より小さく、条件式(8)より小さい。そのため、さ
らにカラーバランスが良くなり、不要次数光の影響も小
さくなる。
【0085】この構成においては、条件式(9)を満足
する場合、使用する波長域の両端での像形成に利用する
回折次数光の回折効率C1 、C2 の差は5%より小さ
く、条件式(8)よりさらに差が小さいため、短波長域
と長波長域での像形成に使用する回折次数光の強度がよ
り等しくなり、よりカラーバランスを保つことができ
る。また、不要次数光の影響もさらに小さくなり、さら
に高い質の像を得ることができる。
【0086】上記の条件式(1)〜(4)、又は、
(5)〜(8)、あるいは、(9)を満たす場合、波長
λ1 が400nm、波長λ2 が700nmであるように
構成することができる。
【0087】この構成は、後記の光学系の第1から第3
の実施の形態が対応する。この構成においては、前記波
長λ1 が400nm、波長λ2 が700nmである。す
なわち、像形成に使用する波長帯域は400nmから7
00nmとなる。この波長帯域は可視域であり、この波
長帯域の光を利用して像を形成するため、可視光の像が
得られる。
【0088】この構成においては、可視光の像を得るこ
とができるため、目視での観察が可能となる。また、可
視光を利用して像を観察したり撮影する装置は、例えば
カメラや顕微鏡、内視鏡等数多くあり、本発明の光学系
は可視光の像を得ることができるため、これら様々な装
置に利用することができ、利用範囲の広い光学系を得る
ことができる。
【0089】また、前記発明の光学系において、レリー
フ型回折光学素子の表面にレリーフ形状を有する光学部
材と保護層は、何れか一方が他方と比較して高屈折率高
分散の材料からなる構成とすることができる。
【0090】この構成は、後記の光学系の第1から第3
の実施の形態が対応する。この構成においては、レリー
フ型回折光学素子の表面にレリーフ形状を有する光学部
材と保護層は、一方が高屈折率高分散、もう一方が低屈
折率低分散の材料からなる。式(11)から分かるよう
に、表面にレリーフ形状を有する光学部材と保護層の屈
折率差n1 −n2 が小さいと、回折面の溝深さd’を深
くしなければならなくなり、製造が困難になる。そのた
め、溝深さd’をある程度小さくするためには、表面に
レリーフ形状を有する光学部材と保護層を、一方が高屈
折率、もう一方が低屈折率の材料で構成する必要があ
る。
【0091】ところで、市販されているガラスは、高屈
折率のものは分散も高く、低屈折率のものは分散も低い
ものが一般的である。したがって、レリーフ型回折光学
素子の表面にレリーフ形状を有する光学部材をガラスで
構成する場合、高屈折率高分散あるいは低屈折率低分散
の材料とすれば、使用できる材料が多く、その中から目
的に合った材料を選ぶことができる。
【0092】また、表面にレリーフ形状を有する光学部
材あるいは保護層の材料として樹脂を用いると、製造が
容易となり、また安価となるが、光学プラスチック素材
としてはPCの他にPMMA(ポリメチルメタクリレー
ト)やSAN(スチレンアクリロニトリル)、PS(ポ
リスチレン)、ジエチレングリコールビスアリルカーボ
ネート等がある。これらも屈折率が低い程分散が低く、
屈折率が高い程分散が高い。したがって、保護層も高屈
折率高分散あるいは低屈折率低分散の材料で構成する
と、樹脂を用いることができ、製造が容易となる。
【0093】この構成においては、レリーフ型回折光学
素子の表面にレリーフ形状を有する光学部材と保護層
は、一方が高屈折率高分散、もう一方が低屈折率低分散
であるため、両者の屈折率差が大きく、回折面の溝深さ
を浅くすることができ、製造が容易になる。また、ガラ
スは高屈折率高分散あるいは低屈折率低分散の材料が多
くあり、これら多くの材料の中から目的により適した材
料を選ぶことができるようになる。さらに、光学プラス
チック材料も屈折率が低い程分散が低く、屈折率が高い
程分散も高い傾向があり、基板と保護層を、一方を高屈
折率高分散、もう一方を低屈折率低分散の材料で構成す
れば、安く加工性の良いプラスチックを用いることがで
き、製造が容易になり、保護層を設けたレリーフ型回折
光学素子を安価に得ることができるようになる。
【0094】また、前記発明の光学系において、レリー
フ型回折光学素子の表面にレリーフ形状を有する光学部
材と保護層は、何れか一方が他方と比較して高屈折率低
分散の材料からなる構成とすることができる。
【0095】この構成は、後記の光学系の第1から第3
の実施の形態が対応する。この構成においては、レリー
フ型回折光学素子の表面にレリーフ形状を有する光学部
材と保護層は、一方が高屈折率低分散、もう一方が低屈
折率高分散の材料からなる。上記の一方が高屈折率高分
散、もう一方が低屈折率低分散の材料からなる場合に説
明したように、一方が高屈折率、もう一方が低屈折率で
あると、屈折率差が大きくなり、回折面の溝深さを浅く
することができる。
【0096】ここで、表面にレリーフ形状を有する光学
部材と保護層が、一方が高屈折率低分散、もう一方が低
屈折率高分散とすると、レリーフ型回折光学素子の回折
効率の波長依存性が保護層を設けない場合に比べて小さ
くなる。例えば、表面にレリーフ形状を有する光学部材
をLAL56((株)オハラ製。nd =1.6779
0,νd =50.7)とし、保護層をPCとした場合、
及び、表面にレリーフ形状を有する光学部材をLAL5
6とし、保護層を設けない場合の1次光の回折効率の波
長依存性は図12のようになる。ここで、最適化波長は
510nmとした。図中のが上記の保護層を設けた場
合、が設けない場合である。
【0097】図12から分かるように、PCの保護層を
設けると、回折効率の波長依存性が小さくなり、最適化
波長より短波長域、長波長域での回折効率の低下が小さ
くなる。特に短波長域では、回折効率は略100%とな
る。このとき、不要次数光である0次光、2次光の回折
効率は図13のようになる。PCの保護層を設けない場
合の0次光、2次光の回折効率は図14のようになり、
保護層を設けることにより不要次数光の回折効率が小さ
くなることが分かる。特に短波長域では、ほとんど0%
であり、この波長域においては、波長帯域制限手段の減
衰率が小さいものでも不要次数光の影響を十分低減で
き、また、全く低減しなくてすむ場合もある。
【0098】また、長波長域においては、1次光の回折
効率は高くなり、不要次数光の回折効率は低くなるた
め、不要次数光の影響は小さくなる。したがって、不要
次数光の影響が無視できない程大きくなる波長が長波長
側にずれ、波長帯域制限手段で制限しなければならない
波長域も長波長側にずれて、像形成に使用できる波長帯
域が広がり、より色再現性の良い像が得られるようにな
る。
【0099】この構成においては、レリーフ型回折光学
素子の表面にレリーフ形状を有する光学部材と保護層
が、一方が高屈折率低分散、もう一方が低屈折率高分散
の材料で構成されているため、レリーフ型回折光学素子
自体の回折効率の波長依存性が小さくなり、不要次数光
も弱くなる。そのため、より不要次数光の影響の小さい
高い質の像を得ることができる。また、元々不要次数光
の影響が小さいため、波長帯域制限手段で制限すべき波
長帯域は、最適化波長に対して短波長域では短波長側
に、長波長域では長波長側にずれ、像形成に利用できる
波長域が広がり、より色再現性の良い像を得ることがで
きる。
【0100】前記目的を達成する本発明の撮像装置は、
対象物の像を、前記発明の光学系により電子撮像素子上
に結像させるものである。
【0101】この発明は、撮像装置の第1の実施の形態
が対応する。この発明においては、対象物からの光は前
記発明の光学系に入射して透過し、電子撮像素子の光電
変換面上で結像して、電気信号に変換され、検出され
る。ここで、この光学系は、前述の通り、回折面上に保
護層を有するレリーフ型回折光学素子と波長帯域制限手
段とを有し、レリーフ型回折光学素子で発生する像形成
に不要な回折次数光を除去し、回折面上に保護層があっ
ても像における不要次数光の影響を低減して、高い質の
像を形成するものである。したがって、電子撮像素子上
で結像する対象物の像は、不要次数光の影響の少ない高
い質の像となる。
【0102】この発明においては、回折面上に保護層を
形成しても、レリーフ型回折光学素子で発生する不要次
数光の影響を低減し、高い質の像が得られる光学系で電
子撮像素子上に結像するため、不要次数光の影響の少な
い高い質の像を撮像することができる。
【0103】上記発明の撮像装置において、電子撮像素
子に、その出力信号を処理して前記対象物の色情報を補
正する信号処理手段を結合した構成とすることができ
る。
【0104】この構成は、後記の撮像装置の第1の実施
の形態が対応する。この構成においては、電子撮像素子
には、その出力信号を処理して、対象物の色情報を補正
する信号処理手段を結合してある。この発明の撮像装置
が有する結像光学系には、波長帯域制限手段が含まれ、
像形成に不要な回折次数光の影響が無視できなくなる程
大きくなる波長域の光を除去し、不要次数光の影響を低
減する。このとき、像形成に利用する回折次数光もこの
波長域で波長帯域制限手段で多かれ少なかれ除去され
る。したがって、像の色再現性が低下してしまう。
【0105】そこで、この構成では、電子撮像素子に結
合した信号処理手段で対象物の色情報を補正するため、
像形成に利用する回折次数光が波長帯域制限手段で除去
されても、像の色再現性の低下を防ぐように補正するこ
とができる。
【0106】この構成においては、電子撮像素子に結合
した信号処理手段で対象物の色情報を補正するため、不
要次数光の影響を低減するための波長帯域制限手段によ
る像の色再現性の低下を防ぎ、色再現性の良い画像情報
を得ることができる。
【0107】前記目的を達成するもう1つの本発明の撮
像装置は、対象物の像を、レリーフ型回折光学素子以外
の光学系を構成する光学素子の少なくとも一部が波長帯
域制限手段を構成しているか、あるいは、レリーフ型回
折光学素子及びレリーフ型回折光学素子以外の光学系を
構成する光学素子の少なくとも一部が波長帯域制限手段
に含まれる構成の前記発明の光学系により電子撮像素子
上に結像させる撮像装置において、波長帯域制限手段に
含まれる光学素子の少なくとも一部は、電子撮像素子の
光電変換面を保護するカバーガラスであるものである。
【0108】この発明は、後記の撮像装置の第1の実施
の形態が対応する。この発明においては、波長帯域制限
手段に含まれる光学素子の少なくとも一部は、電子撮像
素子の光電変換面を保護するカバーガラスである。した
がって、電子撮像素子のカバーガラスにレリーフ型回折
光学素子で発生した不要次数光の少なくとも一部が入射
すると、カバーガラスで除去され、像形成に必要な回折
次数光のみ電子撮像素子の光電変換面に入射する。カバ
ーガラスは一般には電子撮像素子に元々備わるものであ
り、波長帯域制限のために素子を追加する必要がない。
【0109】この発明においては、元々電子撮像素子に
備わった光電変換面を保護するカバーガラスに波長帯域
制限手段の少なくとも一部の機能を持たせたため、波長
帯域制限のために素子を追加する必要がなく、部品点数
を削減したり、撮像装置を小型化することができる。
【0110】
【発明の実施の形態】以下、本発明のとそれを含む撮像
装置の実施の形態について説明する。 (光学系の第1の実施の形態)図15に、本発明の光学
系の第1の実施の形態の模式図を示す。この光学系は対
象物の像を結像させるものであり、レンズ群1、レリー
フ型回折光学素子2、波長帯域制限手段3を有する。対
象物からの帯域光は、図の左側からレンズ群1に入射
し、屈折、透過した後、レリーフ型回折光学素子2に入
射する。レリーフ型回折光学素子2で回折を受け、像形
成に必要な回折次数光は波長帯域制限手段3を透過し、
結像する。一方、像形成に不要な回折次数光は、波長帯
域制限手段3で除去される。
【0111】レリーフ型回折光学素子2は、表面に凹凸
のレリーフ形状を有する光学部材4と、この表面にレリ
ーフ形状を有する光学部材4の回折面上に形成した保護
層5とからなる。回折面上に保護層5を形成してあるた
め、回折面の溝に汚れがたまることなく、保護層5の表
面に汚れが付いても平面であるため拭き取りやすい。ま
た、回折面に傷が付き、レリーフパターンの形状が崩れ
ることも防ぐことができる。
【0112】レリーフ型回折光学素子2のレリーフ形状
としては、図1に示したように、様々な形状があるが、
特に図1(a)に示したような断面が鋸歯形状であるも
のが望ましい。レリーフ形状が鋸歯形状の場合、ある回
折次数光のある波長における回折効率を100%とする
ことができ、レリーフ型回折光学素子2に入射した光を
有効に利用することができる。
【0113】レリーフ型回折光学素子2の表面にレリー
フ形状を有する光学部材4は、この実施の形態では、図
16(a)及び(b)に平面図及び断面図を示すよう
に、平行平板状の光学材料基板6上に同心円状に断面が
鋸歯形状のレリーフパターン7を形成して構成する。こ
こで、レリーフパターン7は、1次光を利用するよう
に、また、他のレンズ素子との相互関係により結像性能
が最適となるように形成する。
【0114】表面にレリーフ形状を有する光学部材4と
保護層5の材料としては、様々なものがあるが、本実施
の形態では、表面にレリーフ形状を有する光学部材4を
BSL7、保護層5はPCとする。このとき、レリーフ
型回折光学素子2の1次光の回折効率は図5の、不要
次数光である0次光と2次光は図6のようになる。ただ
し、最適化波長は510nmとしている。保護層5を設
けない場合には、1次光の回折効率は図5の、0次光
と2次光は図3のようになり、保護層5を設けると、最
適化波長の短波長側及び長波長側で1次光の回折効率が
下がり、不要次数光の回折効率が高くなることが分か
る。特に短波長域でその傾向が強い。不要次数光はフレ
アーやゴーストの原因となり、像の質の劣化につながっ
てしまう。
【0115】本実施の形態では、レリーフ型回折光学素
子2から発生した1次光及び不要次数光は、波長帯域制
限手段3に入射する。波長帯域制限手段3が図7に示し
たような透過率分布を持つ場合、この波長帯域制限手段
3に白色光が入射すると、およそ440nm以下の波長
の光、及び、およそ620nm以上の波長の光は波長帯
域制限手段3を透過できず、除去される。また、およそ
440nm以上620nm以下の波長の光は波長帯域制
限手段3を効率良く透過する。
【0116】レリーフ型回折光学素子2に全波長域で強
度が一定の白色光が入射したとすると、レリーフ型回折
光学素子2で回折され、波長帯域制限手段3を透過した
ときの不要次数光の強度の相対値は図8のようになる。
ただし、レリーフ型回折光学素子2に入射する前の強度
を1としている。図8から分かるように、不要次数光の
強度は大幅に低減される。したがって、この実施の形態
によれば、レリーフ型回折光学素子2に保護層5を設け
て不要次数光の回折効率が高くなっても、結像に不要な
回折光の強度を無視できる程度に低減することができ、
不要次数光の影響、例えばフレアーやゴースト等が低減
された質の高い像を得ることができる。
【0117】また、像の質を落とすことなく、回折面上
に保護層5を設けたレリーフ型回折光学素子2を光学系
に組み込むことができるため、耐環境性に優れた光学系
を得ることができる。さらに、回折面に保護層5が設け
られているため、例えばカメラの望遠レンズ系に使用す
る場合、回折面を物点側に配置することが可能となり、
設計上の自由度が大きくなり、応用範囲を広げることが
できる。
【0118】ここで、波長帯域制限手段3としては、例
えば、吸収フィルター、干渉フィルター等のように透過
率に波長特性があるフィルターを用いることができる。
例えば図7に示したような透過率分布を持つバンドパス
フィルターを波長帯域制限手段3として用いれば、およ
そ440nm以下、及び、およそ620nm以上の波長
の光を除去し、およそ440nmから620nmの波長
帯域の光を効率良く透過して、不要次数光を低減するこ
とができる。
【0119】フィルターは必ずしもバンドパスフィルタ
ーである必要はなく、例えば不要次数光の回折効率が高
くなる波長域の中、図17に示すように短波長域で透過
率が低くなるような分光透過率を有するフィルターと、
図18に示すように長波長域で透過率が低くなるような
分光透過率を有するフィルターとを組み合わせて全体と
して図7に示したような透過率分布を持つようにしても
よい。
【0120】また、波長帯域制限手段3は、図15に模
式的に示したように、レンズ群1及びレリーフ型回折光
学素子2から独立した素子でなくてもよく、光学系を構
成する光学素子の表面の少なくとも1面に多層膜を設け
て構成してもよい。例えば、レンズ群1を構成する光学
素子の中、ある光学素子、例えば屈折レンズの一方の面
に不要次数光の回折効率が高くなる波長域の中、短波長
域で透過率が低くなる多層膜を設け、もう一方の面に長
波長域で透過率が低くなる多層膜を設けると、この屈折
レンズを透過する白色光は短波長域及び長波長域で低減
され、不要次数光が低減される。
【0121】光学系を構成する光学素子の少なくとも1
面に設けた多層膜で短波長域及び長波長域の少なくとも
一方の波長域の光を除去すれば、元々光学系を構成する
光学素子の表面に設けたものであるから、他の光学部材
を特に追加する必要がなく、素子数の少ない小型の光学
系を得ることができる。
【0122】また、レンズ群1を構成する光学素子を、
不要次数光の回折効率が高くなる波長域で透過率が低く
なる材料で構成してもよい。例えば、レンズ群1を構成
する光学素子の一つを図7のような透過率分布を有する
材料で形成すれば、不要次数光の回折効率が高くなる波
長域の光はこの光学素子で除去される。この場合も、元
々光学系を構成する光学素子自体が波長帯域を制限する
機能を持つため、特に他の光学部材を追加する必要がな
く、素子数の少ない小型の光学系を得ることができる。
【0123】また、以上の手段を組み合わせてもよい。
例えば、不要次数光の回折効率が高くなる波長域の中、
図17に示すように短波長域で透過率が低い材料で形成
されたレンズ群1を構成する光学素子の表面に、図18
に示すように長波長域で透過率が低い多層膜を設け、全
体として図7に示したような透過率分布となるようにし
てもよい。
【0124】なお、図15では、光の進行順に、レンズ
群1、レリーフ型回折光学素子2、波長帯域制限手段3
の配置としたが、これに限らない。波長帯域制限手段3
は、対象物から像を検出する素子、例えば固体撮像素
子、眼球、フィルター等に至る光路中の任意の位置に配
置しても、同様の効果を得ることができる。
【0125】(光学系の第2の実施の形態)図19に、
本発明の光学系の第2の実施の形態の模式図を示す。こ
の光学系は、レンズ群1、レリーフ型回折光学素子2を
有する。レリーフ型回折光学素子2は波長帯域制限手段
を含み、この波長帯域制限手段は、像形成に不要な回折
次数光の回折効率が高くなる波長域の光を除去し、像形
成に使用する回折次数光の回折効率が高くなる波長域の
光を効率良く透過するものである。
【0126】対象物からの帯域光は、図の左側からレン
ズ群1に入射し、屈折、透過した後、レリーフ型回折光
学素子2に入射する。レリーフ型回折光学素子2で回折
を受けて発生した複数の回折次数光の中、像形成に必要
な回折次数光は結像する。一方、像形成に不要な回折次
数光は、レリーフ型回折光学素子2が含む波長帯域制限
手段で除去される。したがって、第1の実施の形態と同
様に、レリーフ型回折光学素子2に保護層5を設けて
も、像形成に不要な次数の回折光の強度を無視できる程
度に低減することができ、不要次数光の影響、例えばフ
レアーやゴースト等が低減された質の高い像を得ること
ができる。
【0127】また、レリーフ型回折光学素子2が波長帯
域制限手段を含んでいるため、レリーフ型回折光学素子
2自体で不要次数光を除去することができ、特に他の素
子を追加する必要がなく、素子数の少ない小型の光学系
を得ることができる。
【0128】ここで、レリーフ型回折光学素子2が含む
波長帯域制限手段としては、例えば保護層5がある。保
護層5を、例えば図7に示したような分光透過率を有す
る材料で形成した場合、この保護層5に白色光が入射す
ると、およそ440nm以下の波長の光、及び、およそ
620nm以上の波長の光は保護層5を透過できず、除
去される。また、およそ440nm以上620nm以下
の波長の光は保護層5を効率良く透過する。
【0129】レリーフ型回折光学素子2に全波長域で強
度が一定の白色光が入射したとすると、レリーフ型回折
光学素子2で回折され、レリーフ型回折光学素子2の保
護層5を透過したときの不要次数光の強度の相対値は図
8のようになる。ただし、レリーフ型回折光学素子2に
入射する前の強度を1としている。図8から分かるよう
に、レリーフ型回折光学素子2に保護層5を設けても、
結像に不要な次数の回折光の強度を無視できる程度に低
減することができ、不要次数光の影響、例えばフレアー
やゴースト等が低減された質の高い像を得ることができ
る。
【0130】また、波長帯域制限手段として、他に、例
えば図20に示すように、レリーフ型回折光学素子2の
保護層5とは反対の面に設けた多層膜8としてもよい。
このとき、例えば、保護層5は図17に示したように不
要次数光の回折効率が高くなる波長域の中、短波長域で
透過率が低く、多層膜8は図18に示したように長波長
域で透過率が低くなるものとすれば、全体としては図7
に示したような透過率分布となり、不要次数光を除去
し、像形成に利用する波長域の光を効率良く透過するこ
とになる。
【0131】この場合にも、レリーフ型回折光学素子2
に保護層5を設けても、結像に不要な次数の回折光の強
度を無視できる程度に低減することができ、不要次数光
の影響、例えばフレアーやゴースト等が低減された質の
高い像を得ることができる。
【0132】(光学系の第3の実施の形態)図21に、
本発明の光学系の第3の実施の形態の模式図を示す。こ
の光学系は、レンズ群1、レリーフ型回折光学素子2を
有する。レリーフ型回折光学素子2、及び、レリーフ型
回折光学素子2以外の光学系を構成する光学素子の少な
くとも一部とが、波長帯域制限手段を構成する。この波
長帯域制限手段は、像形成に不要な回折次数光の回折効
率が高くなる波長域の光を除去し、像形成に使用する回
折次数光の回折効率が高くなる波長域の光を効率良く透
過するものである。
【0133】例えば、レリーフ型回折光学素子2が、図
17に示すように不要次数光の回折効率が高くなる波長
域の中、短波長域で透過率が低くなるような手段を有
し、レリーフ型回折光学素子2以外の光学系を構成する
光学素子の少なくとも一部が、図18に示すように、長
波長域で透過率が低くなるような手段を有している場
合、これらから構成される波長帯域制限手段全体として
は、図7に示すような透過率分布となる。
【0134】したがって、この光学系に白色光が入射す
ると、不要次数光の回折効率が高くなる波長域の光は除
去され、像形成に使用する波長域の光は効率良く透過す
る。そのため、第1及び第2の実施の形態と同様に、レ
リーフ型回折光学素子2に保護層5を設けても、像形成
に不要な次数の回折光の強度を無視できる程度に低減す
ることができ、不要次数光の影響、例えばフレアーやゴ
ースト等が低減され、質の高い像を得ることができる。
【0135】また、レリーフ型回折光学素子2自体が不
要次数光の中、短波長域あるいは長波長域の光を除去で
きるため、この波長域の不要次数光を除去するために他
の光学部材を追加する必要がなく、素子数の少ない小型
の光学系を得ることができる。
【0136】ここで、波長帯域制限手段を構成するレリ
ーフ型回折光学素子2が有する手段としては、例えば保
護層5がある。保護層5を不要次数光の回折効率が高く
なる波長域の中、短波長域あるいは長波長域で透過率が
低い材料で形成すれば、このレリーフ型回折光学素子2
に入射した帯域光は回折され、同時に不要次数光の回折
効率が高くなる波長域の中、一方の波長域の光は除去さ
れ、像形成に使用する波長域の光は効率良く透過する。
元々必要な保護層5で不要次数光の一部を除去するた
め、保護層5を形成するだけで他に特別な処置をする必
要がなく、容易にレリーフ型回折光学素子2を得ること
ができる。
【0137】また、波長帯域制限手段を構成するレリー
フ型回折光学素子2が有する手段としては、他には、例
えばレリーフ型回折光学素子2の保護層5とは反対の面
に形成した多層膜がある。不要次数光の回折効率が高く
なる波長域の中、短波長域あるいは長波長域で透過率が
低くなるように多層膜を形成すれば、保護層5で不要次
数光の一部を除去する場合と同様に、不要次数光の中、
短波長域あるいは長波長域の光を除去することができ
る。このとき、保護層5の材料としては使用する波長域
で透明であればよく、使用できる材料が増え、実現性が
高くなる。
【0138】一方、波長帯域制限手段を構成するレリー
フ型回折光学素子2以外の光学系を構成する光学素子の
少なくとも一部が有する手段としては、例えば光学系を
構成する光学素子の表面の少なくとも1面に設けた多層
膜がある。例えば、レンズ群1を構成する光学素子の中
のある光学素子、例えば屈折レンズの一面に不要次数光
の回折効率が高くなる波長域の中、レリーフ型回折光学
素子2で除去されない波長域で透過率が低くなる多層膜
を設ければよい。元々光学系に必要な素子に多層膜を設
けるため、他に光学部材を追加する必要がなく、素子数
の少ない小型の光学系を得ることができる。
【0139】また、波長帯域制限手段を構成するレリー
フ型回折光学素子2以外の光学系を構成する光学素子の
少なくとも一部の手段としては、他には、不要次数光の
回折効率が高くなる波長域の中、レリーフ型回折光学素
子2で除去されない波長域で透過率が低くなる材料で形
成したレンズ群1を構成する光学素子であってもよい。
また、図22に示すように、不要次数光の回折効率が高
くなる波長域の中、レリーフ型回折光学素子2で除去さ
れない波長域で透過率か低くなる光学部材9、例えばフ
ィルターを追加してもよい。これらの場合でも、多層膜
を設けた場合と同様に、不要次数光の一部を除去するこ
とができる。
【0140】以上の第1から第3の実施の形態におい
て、波長帯域制限手段は、具体的には像形成に不要な次
数の回折光量が無視できないレベルとなる対象波長帯域
において、この対象波長帯域における全光量(Aa )に
対する像形成に不要な次数の回折光の光量(A0 )が、 0<A0 /Aa <0.1 ・・・(1) を満足するよう構成するのが好ましい。すでに説明した
ように、この条件式(1)を満たせば、像形成に不要な
次数の回折光による像の質の劣化を有効に無視すること
が可能となる。
【0141】さらに具体的には、最適化波長λ0 よりも
短波長領域において波長帯域を制限する場合には、光量
を50%カットする、すなわち波長帯域制限手段の透過
率が50%となる波長λS が以下の条件式(2)を満足
することが望ましい。
【0142】 λS /λ0 <0.95 ・・・(2) また、最適化波長λ0 よりも長波長領域において波長帯
域を制限する場合には、光量を50%カットする、すな
わち波長帯域制限手段の透過率が50%となる波長λL
が以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
【0143】 λL /λ0 >1.2 ・・・(3) ここで、λS /λ0 やλL /λ0 が条件式(2)及び
(3)の範囲から外れると、すでに説明したように、カ
ラー画像を形成する波長帯域幅が狭くなり、十分な色再
現性を保つことができなくなったりするため、好ましく
ない。
【0144】さて、前述したように、レリーフ型回折光
学素子の波長に対する回折効率は、最適化波長λ0 に対
して、短波長側でも長波長側でも低下する。保護層を形
成すると、特に短波長側で低下が大きくなる場合もあ
る。このため、良好な色再現性を保ち、かつ、像形成に
不要な次数の回折光の影響を十分に低減するには、最適
化波長λ0 は、使用する波長帯域λ1 <λ<λ2 に対し
て、 |C1 −C2 |<20% ・・・(4) を満足するように定めることが望ましい。ただし、
1 、C2 は、波長λ0 で利用する回折次数が最適化さ
れたときの、それぞれ波長λ1 、λ2 における利用する
回折次数光の回折効率(%)を示す。
【0145】すでに述べたように、上記の|C1 −C2
|を条件式(4)の上限値を越えて大きな値とすると、
短波長領域又は長波長領域での不要な回折次数光が増加
して像の質の低下が著しくなるため、上記のように波長
帯域の制限をすると、カラーバランスを保つことが困難
となる。
【0146】なお、すでに述べたように、上記の条件式
(1)〜(4)の代わりに、下記の条件式(5)〜
(8)の中少なくとも一つを満たすようにするとさらに
よい。
【0147】 0<A0 /Aa <0.05 ・・・(5) λS /λ0 <0.94 ・・・(6) λL /λ0 >1.22 ・・・(7) |C1 −C2 |<10% ・・・(8) さらに望ましくは、下記の条件式(9)を満たすように
するとよい。
【0148】 |C1 −C2 |<5% ・・・(9) 以上の条件式(1)〜(9)を満足するようにすると、
十分に不要次数光の影響を低減し、また、十分な色再現
性を保ち、高い質の像を形成することのできる光学系を
得ることができる。
【0149】ところで、波長λ1 は400nm、波長λ
2 は700nmであると、特に好ましい。このとき、使
用する波長帯域は400nm〜700nmの可視域とな
る。したがって、この光学系を用いれば、目視で観察す
ることのできる装置を得ることができる。また、例えば
カメラや顕微鏡、内視鏡等のように、可視光の像を観察
撮影する装置は数多くあり、使用波長帯域が400nm
〜700nmであれば、可視光の像を観察する様々な装
置に利用することができ、利用範囲の広い光学系とな
る。
【0150】ここで、例えば図15に示した構成におい
て、レリーフ型回折光学素子2が、表面にレリーフ形状
を有する光学部材4がPMMA、保護層5がPCからな
り、1次回折光が波長490nmで最適化されていると
する。このとき、このレリーフ型回折光学素子2の1次
光及び不要次数光である0次光と2次光の回折効率は図
23のようになる。使用する波長帯域を400nm〜7
00nmとすると、|C1 −C2 |は約4%となり、条
件式(9)を満たしている。
【0151】ここで、波長帯域制限手段3を、分光透過
率が図24に示すようになるよう構成する。すると、こ
の光学系に白色光を入射すると、光学系を透過した1次
光及び0次光、2次光の相対強度分布は図25のように
なる。ただし、光学系への入射光の強度は波長によらず
一定であるとし、その強度を1とする。このとき、波長
帯域400nm〜700nmにおける全光量に占める不
要次数光(0次光、2次光)の割合はおよそ0.046
となり、条件式(5)を満たしている。
【0152】また、図24から分かるように、波長帯域
制限手段3の透過率が50%となる波長λS 及びλL
それぞれ約453nmと610nmである。いま、最適
化波長λ0 は490nmであるから、λS /λ0 は約
0.92、λL /λ0 は約1.24であり、条件式
(6)及び(7)も満たしている。
【0153】したがって、この場合の光学系は、十分に
不要次数光の影響を低減し、かつ、色再現性も良く、質
の高い像を形成することができるものとなる。
【0154】また、以上の実施の形態において、波長帯
域制限手段は脱着可能であることが望ましい。結像光学
系で形成した像を検出する場合、受光する素子によって
波長感度特性は異なり、それぞれの素子に最適な波長帯
域、波長強度分布を持つ光で像を形成する必要がある。
例えば、対象物の像を目視で観察する場合やCCDカメ
ラで受光しモニターで観察する場合、写真フィルムで感
光させて写真を撮る場合等、様々な場合があるが、波長
帯域制限手段が脱着可能であると、波長帯域制限手段を
取り換えてそれぞれの場合に適した波長帯域の光がそれ
ぞれの場合に適した波長強度分布で入射するようにする
ことが容易にでき、様々な撮像装置に対応できる汎用性
のある光学系を得ることができる。
【0155】さらに、以上の実施の形態において、レリ
ーフ型回折光学素子2は、図16に示したような、平板
状の基板6にレリーフパターン7を形成したものに限ら
ず、球面基板や非球面基板上にレリーフパターン7を形
成して構成することもできるし、レリーフパターン7も
同心円状に限らず、結像光学系の機能に応じて例えば、
回転非対称な結像性能を必要とする場合には、楕円状の
パターンとしたり、シリンドリカルレンズと同等の機能
を有するように平行パターンとすることもできる。な
お、実施の形態においては、像形成に1次光を用いるよ
うにしたが、さらに高次の次数を用いてもよい。
【0156】また、以上の実施の形態において、レリー
フ型回折光学素子2を構成する表面にレリーフ形状を有
する光学部材4はBSL7あるいはPMMA、保護層5
はPCとしたが、表面にレリーフ形状を有する光学部材
4及び保護層5の材料はこれに限らない。BSL7及び
PMMAはPCに比べると低屈折率低分散であり、PC
はBSL7及びPMMAに比べると高屈折率高分散であ
るが、表面にレリーフ形状を有する光学部材4と保護層
5をこのような組合せとすると、すでに説明したよう
に、組み合わせて使用できる材料が多くなる。また、両
者の屈折率差が大きくなるため、レリーフパターン7の
溝深さを浅くすることができ、製造が容易になる。さら
に、光学プラスチックを用いることができ、製造が容易
で安価なレリーフ型回折光学素子を得ることができるよ
うになる。したがって、光学系も安価になる。
【0157】表面にレリーフ形状を有する光学部材4と
保護層5の組合せは、互いに比較して、高屈折率低分散
の材料と、低屈折率高分散の材料の組合せとしてもよ
い。この組合せの一例としてLAL56とPCがある。
LAL56はPCに比べて高屈折率低分散であり、PC
はLAL56と比べると低屈折率高分散である。すでに
説明したように、このような組合せとすると、レリーフ
型回折光学素子2の回折効率の波長依存性が低減でき、
像形成に利用する回折次数光の回折効率が全波長域で高
くなり、不要な回折次数光の回折効率は低くなる。その
ため、より不要次数光の影響の小さい高い質の像を得る
ことができる。また、波長帯域制限手段で制限すべき波
長帯域が狭くなり、像形成に利用できる波長域が広が
り、より色再現性の良い像が得られるようになる。
【0158】(撮像装置の第1の実施の形態)図26
に、本発明の撮像装置の第1の実施の形態の模式図を示
す。この撮像装置は、対象物の像を、光学系10を経
て、電子撮像素子である固体撮像素子11の光電変換面
上に結像させ、この固体撮像素子11の出力信号を信号
処理回路12で処理して映像信号を得るようにしたもの
である。光学系10は、光学系の第1の実施の形態で示
したものであり、レンズ群1、レリーフ型回折光学素子
2、及び、波長帯域制限手段を含む光学部材13を有す
る。
【0159】レリーフ型回折光学素子2は、光学系の第
1の実施の形態で説明したように、表面にレリーフ形状
を有する光学部材4と保護層5とからなるものである。
また、光学部材13には、図27に示した分光透過率を
有する波長帯域制限手段を設けると共に、ローパスフィ
ルターを設ける。また、固体撮像素子11には、その光
電変換面上に、図28に示す分光特性を有するR,G,
B3原色のモザイク状の色フィルターを設ける。
【0160】このようにして、固体撮像素子11におい
て、光学系10を経て結像された物体の像を、その光強
度に応じて電気信号に変換して信号処理回路12に供給
し、ここで所要に応じてR,G,Bそれぞれの信号強度
の正規化や表現する色をシフトさせる等の方法により、
物体のカラー情報が損なわれないように補正してカラー
映像信号に変換し、図示しないメモリーに書き込んだ
り、パソコンや表示装置あるいはプリンター等の外部に
出力する。なお、このような処理は、外部の制御装置あ
るいは撮像装置に組み込まれたCPUにより制御する。
【0161】図29は、図26に示す構成において、光
学部材13が波長帯域制限手段を含まない場合に、固体
撮像素子11に入射するレリーフ型回折光学素子2にお
ける0次光及び2次光の分光特性を示すものである。
【0162】また、図30は、この実施の形態におい
て、上述したように、光学部材13に図27に示した分
光特性を有する波長帯域制限手段を設けた場合の0次光
及び2次光の分光特性を示すものである。ただし、レリ
ーフ型回折光学素子2を構成する表面にレリーフ形状を
有する光学部材4はPMMA、保護層5はPCからなる
としており、最適化波長λ0 は500nmとしている。
また、図29、図30共、Gを基準としてホワイトバラ
ンスを取った後であり、図30は、さらに波長帯域制限
手段で光量が減った分を増幅して補った後である。
【0163】不要次数光を低減していない図29では、
不要次数光である0次光及び2次光の光量のR,G,B
それぞれでの全光量に対する割合は、Rでは0.14
3、Gでは0.033、Bでは0.032であり、Rで
特に割合が大きく、赤いフレアーやゴーストが生じる可
能性がある。一方、不要次数光を低減した図30では、
0次光と2次光の割合は、Rでは0.090、Gでは
0.031、Bでは0.020であり、Rでの不要次数
光の影響が特に低減されている。したがって、この実施
の形態によれば、レリーフ型回折光学素子2に保護層5
を設けても、結像に不要な次数の回折光の強度を無視で
きる程度に低減することができる。
【0164】なお、この実施の形態では、波長帯域制限
手段を光学部材13に設けるようにしたが、レンズ群1
の前に配置したり、レンズ群1から固体撮像素子11の
光電変換面に至る光路の任意の位置に配置しても、同様
の効果を得ることができる。特に、固体撮像素子11の
光電変換面を保護するカバーガラスを、波長帯域制限手
段、例えば波長帯域制限フィルターで構成すれば、部品
点数の削減、光学システムの小型化の点で効果的であ
る。
【0165】この実施の形態では、光学系10として結
像光学系の第1の実施の形態で述べた光学系を用いた
が、光学系の第2及び第3の実施の形態で述べた光学系
を用いてもよい。何れの場合も、レリーフ型回折光学素
子2に保護層5を設けても、結像に不要な次数の回折光
の強度を無視できる程度に低減することができ、不要次
数光の影響のない高い質の像で対象物を撮像することの
できる撮像装置を得ることができる。
【0166】また、波長帯域制限手段は脱着可能である
ことが望ましい。すでに説明したように、波長帯域制限
手段が脱着可能であれば、容易に波長帯域制限手段を交
換することができる。そのため、様々な撮影条件に合わ
せて波長帯域制限手段を交換し、制限波長帯域や使用す
る光の波長強度分布を最適化してより高い質の像で対象
物を撮像することのできる撮像装置が得られる。
【0167】さらに、レリーフ型回折光学素子2は、図
16に示したような、平板状の基板6にレリーフパター
ン7を形成したものに限らず、球面基板や非球面基板上
にレリーフパターン7を形成して構成することもできる
し、レリーフパターン7も同心円状に限らず、結像光学
系の機能に応じて例えば、回転非対称な結像性能を必要
とする場合には、楕円状のパターンとしたり、シリンド
リカルレンズと同等の機能を有するように平行パターン
とすることもできる。なお、実施の形態においては、像
形成に1次光を用いるようにしたが、さらに高次の次数
を用いてもよい。
【0168】また、光学系の実施の形態で述べたよう
に、撮像装置の光学系10における波長帯域制限手段
は、既述の条件式(1)〜(4)の少なくとも一つを満
足する、あるいは、条件式(5)〜(8)の少なくとも
一つを満足する、あるいは、条件式(9)を満足するこ
とが望ましい。これらの条件式を満足すれば、光学系は
十分に不要次数光の影響を低減し、また、十分な色再現
性を保ち、高い質の像を形成することのできるものとな
り、不要次数光の影響の低減された、色再現性の良い高
い質の像で対象物を撮像することのできる撮像装置を得
ることができる。
【0169】この実施の形態におけるレリーフ型回折光
学素子2は、PMMAからなる表面にレリーフ形状を有
する光学部材4とPCからなる保護層5で構成されてい
るが、表面にレリーフ形状を有する光学部材4と保護層
5の材料の組合せはこれに限らない。すでに述べたよう
に、どちらか一方がもう一方に比べて高屈折率高分散の
材料で、もう一方が低屈折率低分散の材料とを組み合わ
せれば、製造が容易で安価なレリーフ型回折光学素子2
を得ることができ、撮像装置も安価になる。例えば、P
MMAとPCの組合せの他に、BSL7とPCの組合せ
等、他にも多数ある。
【0170】また、どちらか一方がもう一方に比べて高
屈折率低分散の材料で、もう一方が低屈折率高分散の材
料とを組み合わせれば、レリーフ型回折光学素子2の回
折効率の波長依存性が低減でき、より不要次数光の影響
が低減され、また、より色再現性の良い高い質の像で対
象物を撮像することのできる撮像装置を得ることができ
る。例えば、LAL56とPCの組合せ、BSM16
((株)オハラ製。nd=1.62041,νd =6
0.3)とSANの組合せ等がある。
【0171】この実施の形態においては、電子撮像素子
として固体撮像素子を用いたが、撮像管を用いる場合で
も、この発明を有効に適用することができ、同様の効果
を得ることができる。
【0172】以上の本発明の光学系及びそれを含む撮像
装置は例えば次のように構成することができる。 〔1〕 帯域光が入射する光学系において、前記光学系
は、レリーフ型回折光学素子と、このレリーフ型回折光
学素子に入射する、あるいは、レリーフ型回折光学素子
を経た光の波長帯域を制限する手段とを有し、該レリー
フ型回折光学素子は、表面にレリーフ形状を有する光学
部材と、該光学部材とは異なる材料からなり、前記光学
部材の表面上に形成された保護層とを有することを特徴
とする光学系。
【0173】〔2〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、前記レリーフ型回折光学素子以外の光学系を構成す
る光学素子の少なくとも一部が、前記波長帯域制限手段
を構成することを特徴とする光学系。
【0174】〔3〕 上記〔2〕記載の光学系におい
て、前記波長帯域制限手段には、前記レリーフ型回折光
学素子以外の光学系を構成する光学素子の少なくとも一
部の表面に設けた多層膜が含まれることを特徴とする光
学系。
【0175】〔4〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、前記レリーフ型回折光学素子が前記波長帯域制限手
段を有することを特徴とする光学系。
【0176】〔5〕 上記〔4〕記載の光学系におい
て、前記波長帯域制限手段は、前記レリーフ型回折光学
素子の保護層であることを特徴とする光学系。
【0177】〔6〕 上記〔4〕記載の光学系におい
て、前記波長帯域制限手段は、前記レリーフ型回折光学
素子の保護層と、前記レリーフ型回折光学素子の保護層
とは反対の面に設けた多層膜とによって構成されること
を特徴とする光学系。
【0178】〔7〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、前記レリーフ型回折光学素子及び前記レリーフ型回
折光学素子以外の光学系を構成する光学素子の少なくと
も一部が、前記波長帯域制限手段に含まれることを特徴
とする光学系。
【0179】〔8〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、前記波長帯域制限手段は着脱可能であることを特徴
とする光学系。
【0180】
〔9〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、以下の条件式(1)〜(4)の少なくとも一つを満
足することを特徴とする光学系。 0<A0 /Aa <0.1 ・・・(1) λS /λ0 <0.95 ・・・(2) λL /λ0 >1.2 ・・・(3) |C1 −C2 |<20% (使用する波長帯域λ1 <λ<λ2 において) ・・・(4) ただし、 Aa :対象波長帯域における全光量 A0 :対象波長帯域における像形成に不要な次数の回折
光の光量 λ0 :最適化波長 λS :λ0 より短波長で光量を50%カットする波長 λL :λ0 より長波長で光量を50%カットする波長 C1 ,C2 :波長λ0 で利用する回折次数が最適化され
たときの使用する波長域の最短波長λ1 及び最長波長λ
2 における利用する回折次数光の回折効率(%)であ
る。
【0181】〔10〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、以下の条件式(5)〜(8)の少なくとも一つを満
足することを特徴とする光学系。 0<A0 /Aa <0.05 ・・・(5) λS /λ0 <0.94 ・・・(6) λL /λ0 >1.22 ・・・(7) |C1 −C2 |<10% (使用する波長帯域λ1 <λ<λ2 において) ・・・(8) ただし、 Aa :対象波長帯域における全光量 A0 :対象波長帯域における像形成に不要な次数の回折
光の光量 λ0 :最適化波長 λS :λ0 より短波長で光量を50%カットする波長 λL :λ0 より長波長で光量を50%カットする波長 C1 ,C2 :波長λ0 で利用する回折次数が最適化され
たときの使用する波長域の最短波長λ1 及び最長波長λ
2 における利用する回折次数光の回折効率(%)であ
る。
【0182】〔11〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、以下の条件式(9)を満足することを特徴とする光
学系。 |C1 −C2 |<5% (使用する波長帯域λ1 <λ<λ2 において) ・・・(9) ただし、C1 ,C2 :波長λ0 で利用する回折次数が最
適化されたときの使用する波長域の最短波長λ1 及び最
長波長λ2 における利用する回折次数光の回折効率
(%)である。
【0183】〔12〕 上記
〔9〕、〔10〕又は〔1
1〕記載の光学系において、波長λ1 が400nm、波
長λ2 が700nmであることを特徴とする光学系。
【0184】〔13〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、前記レリーフ型回折光学素子の表面にレリーフ形状
を有する光学部材と保護層は、何れか一方が他方と比較
して高屈折率高分散の材料からなることを特徴とする光
学系。
【0185】〔14〕 上記〔1〕記載の光学系におい
て、前記レリーフ型回折光学素子の表面にレリーフ形状
を有する光学部材と保護層は、何れか一方が他方と比較
して高屈折率低分散の材料からなることを特徴とする光
学系。
【0186】〔15〕 対象物の像を上記〔1〕記載の
光学系により電子撮像素子上に結像させることを特徴と
する撮像装置。
【0187】〔16〕 上記〔15〕記載の撮像装置に
おいて、前記電子撮像素子に、その出力を処理して前記
対象物の色情報を補正する信号処理手段を結合したこと
を特徴とする撮像装置。
【0188】〔17〕 対象物の像を上記〔2〕又は
〔7〕記載の光学系により、電子撮像素子上に結像させ
る撮像装置において、前記波長帯域制限手段に含まれる
光学素子の少なくとも一部は、前記電子撮像素子の光電
変換面を保護するカバーガラスであることを特徴とする
撮像装置。
【0189】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によると、像形成に必要な回折次数光は、波長帯域制限
手段を効率良く透過し、像形成に不要な回折次数光は波
長帯域制限手段で大幅に除去できるため、レリーフ型回
折光学素子の回折面上に保護層を設け不要次数光の影響
が大きくなった場合でも、不要次数光の影響、つまりフ
レアーやゴースト等を効率良く低減することができる。
そのため、高い質の像を得ることができる。また、像の
質を落とすことなく、回折面上に保護層を設けたレリー
フ型回折光学素子を組み込むことができるため、耐環境
性に優れた光学系を得ることができる。また、回折面に
保護層が設けられているため、例えばカメラの望遠レン
ズ系に使用する場合、回折面を物点側に配置することが
可能となり、設計上の自由度が大きくなり、応用範囲を
広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レリーフ型回折光学素子のレリーフパターンを
示す断面図である。
【図2】レリーフ型回折光学素子の1次光の回折効率の
例を示す図である。
【図3】図2の場合の0次光及び2次光の回折効率を示
す図である。
【図4】保護層を設けたレリーフ型回折光学素子の例の
断面図である。
【図5】図2の場合の保護層を設けた場合と設けない場
合の1次光の回折効率を示す図である。
【図6】図2の場合で保護層を設けた場合の0次光と2
次光の回折効率を示す図である。
【図7】本発明に基づく波長帯域制限手段の透過率分布
の一例を示す図である。
【図8】図7の波長帯域制限手段を用いた場合の不要次
数光の相対的な強度分布を示す図である。
【図9】本発明に基づく波長帯域制限手段の透過率分布
の別の例を示す図である。
【図10】図9の波長帯域制限手段を用いた場合の不要
次数光の相対的な強度分布を示す図である。
【図11】レリーフ型回折光学素子の異なる最適化波長
に対する1次光の回折効率の例を示す図である。
【図12】高屈折率低分散と低屈折率高分散の材料の組
合せからなるレリーフ型回折光学素子の回折効率の波長
依存性を示す図である。
【図13】図12の場合の0次光、2次光の回折効率を
示す図である。
【図14】図12の場合で保護層を設けない場合の0次
光、2次光の回折効率を示す図である。
【図15】本発明の光学系の第1の実施の形態の模式図
である。
【図16】本発明に用いるレリーフ型回折光学素子の一
例の平面図と断面図である。
【図17】本発明に基づく波長帯域制限手段を2つの素
子で構成する場合の一方の分光透過率を示す図である。
【図18】本発明に基づく波長帯域制限手段を2つの素
子で構成する場合の他方の分光透過率を示す図である。
【図19】本発明の光学系の第2の実施の形態の模式図
である。
【図20】本発明の光学系の第2の実施の形態の変形の
模式図である。
【図21】本発明の光学系の第3の実施の形態の模式図
である。
【図22】本発明の光学系の第3の実施の形態の変形の
模式図である。
【図23】本発明の一具体例におけるレリーフ型回折光
学素子の1次光及び不要次数光の回折効率を示す図であ
る。
【図24】図23の場合に用いる波長帯域制限手段の分
光透過率を示す図である。
【図25】本発明の一具体例における1次光及び0次
光、2次光の相対強度分布を示す図である。
【図26】本発明の撮像装置の第1の実施の形態の模式
図である。
【図27】図26の撮像装置で用いる波長帯域制限手段
の分光透過率を示す図である。
【図28】図26の撮像装置で用いる色フィルターの分
光特性を示す図である。
【図29】図26の撮像装置で波長帯域制限手段を含ま
ない場合の0次光及び2次光の分光特性を示す図であ
る。
【図30】図26の撮像装置で波長帯域制限手段を設け
た場合の0次光及び2次光の分光特性を示す図である。
【符号の説明】
1…レンズ群 2…レリーフ型回折光学素子 3…波長帯域制限手段 4…表面に凹凸のレリーフ形状を有する光学部材 5…保護層 6…平行平板状の光学材料基板 7…レリーフパターン 8…多層膜 9…光学部材 10…光学系 11…固体撮像素子 12…信号処理回路 13…波長帯域制限手段を含む光学部材

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 帯域光が入射する光学系において、前記
    光学系は、レリーフ型回折光学素子と、このレリーフ型
    回折光学素子に入射する、あるいは、レリーフ型回折光
    学素子を経た光の波長帯域を制限する手段とを有し、該
    レリーフ型回折光学素子は、表面にレリーフ形状を有す
    る光学部材と、該光学部材とは異なる材料からなり、前
    記光学部材の表面上に形成された保護層とを有すること
    を特徴とする光学系。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の光学系において、前記レ
    リーフ型回折光学素子以外の光学系を構成する光学素子
    の少なくとも一部が、前記波長帯域制限手段を構成する
    ことを特徴とする光学系。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の光学系において、前記レ
    リーフ型回折光学素子が前記波長帯域制限手段を有する
    ことを特徴とする光学系。
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