JPH11193495A - 抗菌性金属板とその製造方法 - Google Patents

抗菌性金属板とその製造方法

Info

Publication number
JPH11193495A
JPH11193495A JP10094184A JP9418498A JPH11193495A JP H11193495 A JPH11193495 A JP H11193495A JP 10094184 A JP10094184 A JP 10094184A JP 9418498 A JP9418498 A JP 9418498A JP H11193495 A JPH11193495 A JP H11193495A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plating layer
substrate
antibacterial
layer
metal plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP10094184A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroaki Yoshida
広明 吉田
Hiroshi Yamada
廣志 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daido Steel Co Ltd filed Critical Daido Steel Co Ltd
Priority to JP10094184A priority Critical patent/JPH11193495A/ja
Publication of JPH11193495A publication Critical patent/JPH11193495A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)
  • Apparatus For Disinfection Or Sterilisation (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】安定した抗菌性と、酸化や緑青等の劣化を生じ
にくく耐食性に優れた抗菌性金属板とその製造方法を提
供する。 【解決手段】SUS304等からなる基板2の表面上に
Cuメッキ層3とNiメッキ層5を順次積層して被覆
し、且つこれらのメッキ層3,5を有する基板2を一対
のロールR、R間で圧下率3%以上の冷間圧延を施し
て、上記メッキ層3,5を緻密化し且つ基板2に密着さ
せる。係るメッキ層3,5を有する基板2を焼鈍炉F内
の真空中で加熱して、上記Cuメッキ層3とNiメッキ
層5との間で相互拡散を生じさせ、基板2側がCu含有
量の多いCu−Ni合金層6となり、且つ表面側がNi
含有量の多いNi−Cu合金層8となるよう、Cuの濃
度が厚さ方向で傾斜したCu−Ni系合金の薄層4を形
成した抗菌性金属板1。また、上記薄層4の表面にAg
メッキ層9を被覆した抗菌性金属板10も提案する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば衛生器具、
医療器具、厨房部材等に使用される抗菌性金属板とその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、環境や衛生意識の向上に連れて、
各種の抗菌処理製品が製造・販売されている。上記抗菌
とは、細菌の数を減らしたり、細菌の働きを抑える効果
を指す。係る抗菌処理を施すことにより、殺菌したり細
菌の増殖を抑えて、不快な臭気の発生を防ごうとするも
のである。使用される抗菌剤には、Ag(銀)やCu(銅)
等の無機系のものと、化学薬品の有機系のものとがあ
る。このうち、無機系の抗菌剤は、家庭用の例えば歯ブ
ラシ等のプラスチック製品や、便器或いは便座等のセラ
ミック製品等に多く使用されている。
【0003】ところで、無機系の抗菌剤のうち、Agは
高価でコストアップになるため、一般にはCuが広く使
用されている。このCuによる抗菌作用を高めるには、
Cuの溶出イオン濃度を高めることが必要である。この
ためには、被抗菌処理製品の表面に対しCuメッキを施
す等のCuのコーティング層を被覆することが有効であ
る。特に、各種の衛生器具、医療器具、厨房部材、又は
建材等に使用される金属製品を製造するために使用され
る金属板では、上記Cuメッキを施すことが容易であ
る。
【0004】しかし、Cuのみを単独で表面に被覆した
場合、その抗菌処理製品を使用する途中でCuが酸化し
たり、場合によっては緑青が発生し、却って有害になる
という問題を有する。また、Cuメッキの被覆層が酸化
したり、緑青に変化すると、Cuメッキが被覆されてい
た金属板自体も酸化や腐食等の劣化を招き易くなる。こ
のため、その金属板を用いた抗菌処理製品の耐久性を低
下させるという問題もあった。
【0005】一方、最近では抗菌性ステンレス鋼板も注
目されている。この抗菌性ステンレス鋼板は、ステンレ
ス鋼にCuを3〜4wt%程度添加したものが主流であ
る。しかし、係る抗菌性ステンレス鋼板では、その表層
にクロム酸化膜等の安定した不導体膜が形成されている
ため、上記積極的に添加したCuの溶出量は極めて微量
となる。また、上記Cuは微細な析出物の形で存在して
いるため、Cuの溶出は非常に短時間で終了してしま
い、抗菌性の持続という点からも不十分である。このた
め、実際には抗菌性が殆んど発揮されないという問題を
有している。
【0006】
【発明が解決すべき課題】本発明は、以上における従来
の技術が抱える問題点を解決し、安定した抗菌作用が得
られ、且つ緑青や腐食等の劣化を生じにくく耐食性に優
れた抗菌性金属板とその製造方法を提供することを課題
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するため、金属板の表面にCuの濃度が傾斜してい
るCu−Ni径合金の薄層を形成することに着想して成
されたものである。即ち、本発明の抗菌性金属板は、ス
テンレス鋼等からなる基板と、この基板の少なくとも一
方の表面に形成され且つ厚さ方向においてCuの濃度が
傾斜しているCu−Ni系合金の薄層とを有する、こと
を特徴とする。また、上記Cu−Ni系合金の薄層が、
上記基板側にCu含有量が多く且つ表面側にNi含有量
が多くなるように厚さ方向においてCuとNiとの濃度
が傾斜している、抗菌性金属板も含まれる。これらによ
れば、Cuは金属板の表面付近では単独で存在せず、N
iとの合金を形成している。従って、Cuはその抗菌作
用を維持しつつ酸化や緑青化しにくいので、安定した抗
菌性と耐食性とを有する抗菌性金属板とすることができ
る。
【0008】加えて、上記Cu−Ni系合金の薄層の表
面に、Ag又はAg基合金からなるAgメッキ層を被覆
した、ことを特徴とする抗菌性金属板も含まれる。これ
によれば、Cu−Ni系合金の薄層の表面に、更にAg
又はAg基合金からなるAgメッキ層が被覆されている
ので、一層優れた抗菌作用が得られる。しかも、仮に上
記Agメッキ層が剥離等しても、上記Cu−Ni系合金
の薄層におけるCuの抗菌作用を持続させることができ
るので、長期間に渉って抗菌性と耐食性とを併有する清
潔な抗菌性金属板とすることが可能となる。
【0009】また、本発明は以上の抗菌性金属板を得る
ため、ステンレス鋼等からなる基板の少なくとも一方の
表面上にCuメッキ層を被覆する工程と、上記Cuメッ
キ層の表面上にNiメッキ層を被覆する工程と、上記メ
ッキ済みの基板に対し拡散焼鈍を行うことにより、基板
の表面に厚さ方向においてCuの濃度が傾斜しているC
u−Ni系合金の薄層を形成する工程とを含む、ことを
特徴とする抗菌性金属板の製造方法も提案する。これに
より、CuメッキとNiメッキを行い且つ拡散焼鈍によ
る両メッキ層間の相互拡散により、厚さ方向に沿って異
なる組成を有するCu−Ni系合金(全率型固溶体)の薄
層を連続形成した抗菌性金属板を確実に製造することが
できる。
【0010】また、上記基板の表面上にCuメッキ層を
被覆する工程の前に、予め基板の表面上に下地用のNi
メッキを被覆する工程が含まれている、抗菌性金属板の
製造方法もまれる。これにより、Cuメッキ層による上
記基板の表面上への密着力を高めることができ、一層優
れた抗菌性金属板を提供することができる。更に、上記
Niメッキを被覆する工程と拡散焼鈍工程との間に、上
記のCuとNiとの2層のメッキ層を被覆した基板を圧
下率3%以上で冷間圧延する工程を有する、抗菌性金属
板の製造方法もまれる。この冷間圧延により上記各メッ
キ層同士を緻密化し且つ基板に強固に密着させると共
に、各メッキ層間の相互拡散も活発になり、上記Cu−
Ni系合金の薄層を一層確実に得ることが可能となる。
【0011】更に、前記Cuメッキ層とNiメッキ層の
厚さがそれぞれ0.5〜15μmの範囲内にあり、及び
/又は、前記拡散焼鈍の温度が350〜650℃の範囲
内にある、抗菌性金属板の製造方法も含まれる。これに
よれば、上記Cu−Ni系合金の薄層を確実に形成した
抗菌性金属板を安定して製造することができる。尚、メ
ッキ層の厚さが0.5μm未満では、拡散焼鈍が不十分
となり前記Cu−Ni系合金の薄層が形成できにくくな
り、また、15μmを超えると拡散焼鈍しても相互拡散
が不十分になり前述した傾斜濃度のCu−Ni系合金に
なり難くなるため、これらを除外した範囲とした。特
に、Niメッキ層は以上の理由を含めて、1〜5μmの
範囲内の厚さとすることが望ましい。上記各メッキの方
法には、電解メッキ、及び/又は、無電解メッキを用い
る。また、上記拡散焼鈍は、焼鈍炉内を真空又は不活性
雰囲気にして、上記温度の範囲に所要時間に渉り加熱す
ることにより行う。更に、焼鈍温度が350℃未満では
拡散が不十分となり得ると共に、650℃を超えるとC
uが発錆し初めるので、これらを除外すべく上記温度範
囲とした。
【0012】加えて、前記拡散焼鈍工程の後に、得られ
た基板における前記Cu−Ni系合金の薄層の表面上に
厚さ0.1〜3μmのAg又はAg基合金からなるAg
メッキ層を被覆する工程を有する、抗菌性金属板の製造
方法も含まれる。これによれば、高価なAg又はAg基
合金のAgメッキ層を薄く被覆してCu−Ni系合金の
薄層の表面上に確実に被覆できるので、高い抗菌作用と
耐食性とを有する抗菌性金属板を比較的安価に提供する
ことが可能となる。尚、上記Agメッキ層は、その厚さ
が0.1μm未満では、メッキ自体が困難化し且つ抗菌
作用も不安定化すると共に、その厚さが3μmを超える
と抗菌作用が飽和し且つコスト高になるため、これらを
除外した範囲の厚さとした。また、前記基板の材質は、
ステンレス鋼を例示したに過ぎず、Fe系金属やその合
金は勿論、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、非
鉄金属やその合金を用いることもできる。更に、これら
の基板に折り曲げ、打抜き等の各種の加工を施して、種
々の用途に適応して抗菌性と耐食性を付与させた形態も
含まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下において本発明の実施に好適
な形態を図面と共に説明する。図1(A)は、本発明の一
つの形態の抗菌性金属板1の部分断面図を示す。この抗
菌性金属板1は、例えばSUS304等のオーステナイ
ト系のステンレス鋼からなる基板2の表面にCu−Ni
系合金の薄層4を被覆したものである。この薄層4は、
上記基板2側にCu含有量が多いCu−Ni合金層6を
有し、且つ表面側にNi含有量が多いNi−Cu合金層
8を有すると共に、Cuの含有量(濃度)が表面側に向か
って連続的に減少するように、その厚さ方向においてC
uとNiとの濃度が傾斜している。上記Cu−Ni合金
層6には、例えばキュプロニッケル(Cu−10〜30w
t%Ni)等が含まれる。
【0014】このCu−Ni系合金の薄層4では、抗菌
作用を有するCuが単独で存在せず、CuとNiとの合
金とすることにより、Cuの酸化や緑青の発生を防ぐと
共に、Cuの抗菌作用を可及的に持続させることを図る
ものである。即ち、CuをNiとの合金とすると、酸化
による耐食性の低下や緑青の発生を抑制できるが、厚さ
方向に沿ってCuの含有量を増減(傾斜)させることによ
り、Cuによる抗菌作用の低下を緩やかなものにしたも
のである。係るCu−Ni系合金の薄層4を得るため、
追って説明するように、予め基板2側にCuメッキ層3
を表面側にNiメッキ層5を積層し、且つ両者の厚さを
求める傾斜濃度に応じて調整して、拡散焼鈍することに
より各元素を相互拡散させてCu−Ni系合金の薄層4
とされる。尚、基板2の表面上にCuメッキ層3を強固
に密着させるため、事前に基板2の表面に下地用のNi
メッキ層(図示せず)を薄く形成しておくことが望まし
い。
【0015】図1(B)は、上記抗菌性金属板1における
Cu−Ni系合金の薄層4の表面に、更にAg又はAg
基合金からなる薄いAgメッキ層9を被覆した形態の抗
菌性金属板10の部分断面図を示す。この金属板10
は、Cu−Ni系合金の薄層4に加えて、Ag又はAg
基合金からなるAgメッキ層9が被覆されているので、
更に優れた抗菌作用が得られる。且つ、仮に上記Agメ
ッキ層9が剥離等しても、Cu−Ni系合金の薄層4に
よるCuの抗菌作用を持続することができるので、長期
間に渉って抗菌性と耐食性とを併有する清潔な抗菌性金
属板10となる。
【0016】次に、前記抗菌性金属板1の製造方法につ
いて、図2により説明する。先ず、図2(A)に示すよう
に、例えばSUS304等のステンレス鋼からなる基板
2の一方の表面上に、Cuメッキ層3を被覆する。この
被覆は、無電解銅メッキのみによるか、又はその後で電
解銅メッキを施すことにより、厚さ0.5乃至15μm
のCuメッキ層3を形成したものである。尚、これに先
立って、上記Cuメッキ層3を強固に密着させるため、
予め基板2の表面上に下地用のNiメッキ層(Ni薄膜
メッキ、図示せず)を薄く形成しておくことが望まし
い。次いで、図2(B)に示すように、上記Cuメッキ層
3の表面上に、同様のメッキ方法により、厚さ1〜5μ
mのNiメッキ層5を被覆して積層する。このNiメッ
キ層5を上記Cuメッキ層3と同じかこれよりも比較的
薄く被覆するのは、追って拡散焼鈍によりCu−Ni系
合金の薄層4を形成した際に、Cuメッキ層3から拡散
するCu原子を上記薄層4の表面側に確実に位置させる
ためである。
【0017】更に、図2(C)に示すように、上記Cu及
びNiメッキ層3,5を有する基板2を一対のロール
R,R間において冷間圧延する。この圧延は、圧下率3
%以上として、Cu及びNiメッキ層3,5の各組織を
緻密化すると共に、基板2との密着性を高めるために行
う。従って、圧下率は3%以上、望ましくは5%以上で
あるが、所要厚さのCu−Ni系合金の薄層4を得るた
め、その上限は約20%以下とされる。続いて、図2
(C)の右方に示すように、冷間圧延された上記基板2を
焼鈍炉F内で、加熱してそのCu及びNiメッキ層3,
5に対し拡散焼鈍を施す。この拡散焼鈍は、焼鈍炉F内
を真空にするか、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気と
し、350〜650℃の範囲に加熱して、所要時間保持
するものである。
【0018】これにより、Cuメッキ層3からCu原子
が、またNiメッキ層5からNi原子が拡散し、互いに
相手層内における拡散後の空孔に置換することで固溶体
化して、CuとNiとの合金を生成する。この結果、図
2(D)に示すように、前記Cuメッキ層3は略Cu−N
i合金層6となり、且つNiメッキ層5は略Ni−Cu
合金層8となり、両合金層6,8の境界付近ではCuと
Niが略同量となる。同時に、両合金層6,8の厚さ方
向に沿って、基板2側にCu含有量が多く且つ表面側に
Ni含有量が多くなるように厚さ方向においてCuとN
iとの濃度が傾斜しているCu−Ni系合金の薄層4が
形成され、抗菌性金属板1を得ることができる。尚、前
記抗菌性金属板10を得るには、この金属板1の表面を
研磨して、Agメッキ層9を0.1〜3μmの厚さでA
gメッキすれば良い。
【0019】
【実施例】以下において本発明の具体的な実施例を比較
例と共に説明する。先ず、SUS304等のステンレス
鋼からなる基板2の表面上に、Cuメッキ層3を0.1
〜10.5μmの範囲で厚さを変えて被覆し、予備的に
Cuメッキ層3のみ単独に被覆した各比較例1〜6にお
ける抗菌性と耐食性を測定した。抗菌性の試験は、所謂
フィルム密着法によって行った。即ち、事前に所定密度
で培養した大腸菌を、予め十分に脱脂と殺菌を行った上
記各Cuメッキ層3の表面上に所定面積ずつ摘果し、3
7℃で24時間経過した時点で、各Cuメッキ層3の表
面上に残った生存菌数を測定した。通常、初期菌数に対
して生存菌数が百分の1以下のレベルに下がった場合、
「抗菌性」ありと判定される。また、耐食性の測定は上記
抗菌性試験と同時に行った。即ち、上記大腸菌を摘果し
た際の水分が24時間後に錆を発生していたか否かを、
発生した錆の程度と共に目視で判定した。それらの測定
結果を表1に示す。尚、別に上記大腸菌をガラス板上に
摘果し、上記と同じ条件で保持した場合の生存菌数(ブ
ランク)は、1.9×107個/mlであった。
【0020】
【表1】
【0021】表1の結果から、Cuメッキ層3が厚くな
るに連れて抗菌性(大腸菌殺菌能力)が向上するが、耐食
性も明らかに低下してしまうことが判明した。そこで、
上記基板2の表面上に厚さ7.5μmのCuメッキ層3
を被覆したものを5分割し、それらの表面上にNiメッ
キ層5を0.89〜4.5μmの範囲で厚さを変えて被覆
した。これらを圧下率5%で冷間圧延した後、400℃
の真空中で5分間拡散焼鈍し、表面に前記CuとNiと
の濃度が厚さ方向において傾斜しているCu−Ni系合
金の薄層4が形成された複数の抗菌性金属板1を得た。
係る金属板1も上記と同じ抗菌性と耐食性を測定した。
その結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2の結果、Niメッキ層5が薄いと抗菌
性を有する反面、耐食性が低下する傾向が判る。即ち、
Cuメッキ層3に対しNiメッキ層5が薄いもの程、拡
散によって生成されるCu−Ni系合金の薄層4内のC
u含有量が高くなるため、抗菌性も高くなるが、同時に
耐食性も低下したものと思われる。一方、Niメッキ層
5が厚くなるに連れて上記薄層4内のCu含有量も相対
的に低下するが、少なくとも抗菌性を有すると共に、且
つ耐食性は向上した。尚、表2において実施例2〜5が
前記表1中の比較例4〜6に比べて高い耐食性を有して
いた。このことから、CuとNiとの濃度が厚さ方向に
おいて傾斜しているCu−Ni系合金の薄層4を被覆し
た本発明の抗菌性金属板1における抗菌性と耐食性の各
効果が理解される。また、表2の結果より上記Niメッ
キ層5は、1μm以上の厚さとするのが望ましいことも
理解される。
【0024】次に、焼鈍温度と抗菌性及び耐食性の関係
について測定した。先ず、幅50mm、厚さ0.4mmのス
テンレス鋼(SUS304)からなる複数の基板2の表面
上に、厚さ2μmのCuメッキ層3と、その上に厚さ2
μmのNiメッキ層5を各々被覆した。次に、これらを
300〜700℃の温度範囲でAr雰囲気下による拡散
焼鈍を連続焼鈍炉中で10分間行い抗菌性金属板1を得
た。これらの抗菌性金属板1について、表層近傍のCu
濃度を電子プローブ微量分析(EPMA)により測定し
た。その結果を図3のグラフに示す。このグラフから焼
鈍温度が300℃(比較例7)では、Cuが表層近傍まで
拡散していなかった。これはCuの拡散速度が低過ぎた
ものと思われる。一方、700℃(比較例8)では表層近
傍のCu濃度が約90%と過分に高い略Cu基合金にな
り、且つ内部のCu濃度は著しく低くなった。また、上
記の同じ実施例6〜12と比較例7,8の各抗菌性金属
板に対して、前記と同じ抗菌性と耐食性の試験を行っ
た。それらの結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】表3の結果から、焼鈍温度が300℃では
抗菌性がなく、350℃以上で抗菌性が認められた。一
方、焼鈍温度が700℃では抗菌性を有するものの、錆
が認められた。後者は、上記図3のグラフで示したよう
に表層におけるCu濃度が高過ぎたため、Cu自体が発
錆したものと思われる。この結果から、焼鈍温度は実施
例6〜12の350℃〜650℃の範囲が望ましいこと
が理解される。但し、600℃以上(実施例11,12)
では、表層側のCu濃度が過半数以上のCu−Ni合金
となるため、抗菌性の持続が低下し易いことに留意する
必要がある。また、650℃を超える温度域で焼鈍を行
うと、基板2のSUS304が鋭敏化(酸化物による粒
界腐食)によって耐食性を低下させ得ることからも、焼
鈍の上限温度は650℃が望ましい。次いで、上記と同
じ基板2に同じ厚さのCuメッキ層3とNiメッキ層5
を被覆し、圧下率5%の冷間圧延を施した後、上記同様
に焼鈍温度を変化させて得た同数の実施例13〜16と
比較例9,10の各抗菌性金属板に対し、同じ抗菌性と
耐食性試験を行った。それらの結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】表4の結果は、表3と略同様であったが、
抗菌性が一層向上した。これは、冷間圧延によりCuメ
ッキ層3とNiメッキ層5との密着性が向上し、Cuと
Niの拡散焼鈍が更に効果的になったものと思われる。
また、基板2とメッキ層3との密着強度が増加したこと
も明らかである。
【0029】更に、前記抗菌性金属板10についても抗
菌性と耐食性を測定した。予め、上記基板2の表面上に
厚さ7.5μmのCuメッキ層3を被覆し、その表面上
に厚さ3.3μmのNiメッキ層5を被覆したものを5
分割し、それぞれ圧下率10%で冷間圧延した後、40
0℃で10分間の真空中での拡散焼鈍を施して表面に前
記CuとNiとの濃度が厚さ方向において傾斜している
Cu−Ni系合金の薄層4が形成された5枚の抗菌性金
属板1を得た。そして、これらの金属板1に各薄層4の
表面上に、(純)Agメッキ層9を0.07〜2.11μm
の範囲で厚さを変えて被覆し5種類の抗菌性金属板10
(実施例20〜24)を得た。これらの各金属板10につ
いても、前記と同じ抗菌性と耐食性を測定した。それら
の結果を表5に示す。
【0030】
【表5】
【0031】表5の結果は、Agメッキ層9の厚さに拘
わらず、抗菌性と耐食性の双方が優れていることが判
る。尚、全ての実施例20〜24は、Cuメッキ層3及
びNiメッキ層5の双方の厚さが近似する表2中の実施
例4に比べても、抗菌性と耐食性で同等かそれ以上とな
ったものと思われる。この結果から、Agメッキ層9を
被覆することにより、一層抗菌性が高まり、耐食性も長
く維持されることが認められ、抗菌性金属板10の優れ
た効果が理解される。
【0032】本発明は、以上において説明した各形態や
実施例に限定されるものでない。例えば、Cu−Ni系
合金の薄層4やその表面に被覆するAg又はAg基合金
からなるAgメッキ層9を基板2の両表面に形成した
り、或いは、基板2の何れか一方の表面における一部に
のみ形成しても良い。また、基板には、前記以外の例え
ばマルテンサイト系やフェライト系のステンレス鋼板、
普通鋼板、又は低合金鋼板を用いたり、或いはFe−N
i系、Fe−Cr系合金板、Ni基又はTi基の合金板
等を用いることもできる。
【0033】更に、本発明の抗菌性金属板は、そのまま
の平板形状として使用する他、打抜き、折り曲げ、又は
深絞り等の加工を施して、容器やパイプ等の形状にして
用いることもできる。例えば、海水用パイプ、薬液や消
毒水用の容器や流し台のシンクタンク、冷水機の貯水タ
ンク、冷蔵庫の食品トレイや内張り板、食器洗い機の本
体ケース、室内外の手摺用ハンドレール、又は、扉等の
建具や家具の取手、建具の枠材等に加工しても良い。或
いは、金属板の端縁のみを折り曲げて家庭用や業務用の
冷蔵庫等の表面材や、建築用内装材等に用いることもで
きる。
【0034】
【発明の効果】以上において説明した本発明の抗菌性金
属板によれば、基板の表面において厚さ方向にCu(N
i)濃度が傾斜して分布するCu−Ni系合金の薄層を
形成したので、細菌に対する抗菌性と錆や緑青等に対す
る耐食性の双方について高く安定した特性を発揮するこ
とができる。また、請求項3の抗菌性金属板によれば、
更にAg系のメッキ層をその表面上に被覆したので、耐
食性を保ちつつ一層優れた抗菌性を発揮することができ
る。更に、本発明の各製造方法によれば、上記の各抗菌
性金属板を確実且つ容易に製造し、提供することが可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)及び(B)は本発明による抗菌性金属板の各
形態を示す部分断面図。
【図2】(A)乃至(D)は本発明の抗菌性金属板の製造方
法における各工程を模式的に示す部分概略図。
【図3】本発明等の抗菌性金属板の表層近傍におけるC
u濃度分布を示すグラフ。
【符号の説明】
1,10…抗菌性金属板 2…………基板 3…………Cuメッキ層 4…………Cu−Ni系合金の薄層 5…………Niメッキ層 6…………Cu−Ni合金層 8…………Ni−Cu合金層 9…………Agメッキ層

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ステンレス鋼等からなる基板と、この基板
    の少なくとも一方の表面に形成され且つ厚さ方向におい
    てCuの濃度が傾斜しているCu−Ni系合金の薄層と
    を有する、ことを特徴とする抗菌性金属板。
  2. 【請求項2】前記Cu−Ni系合金の薄層が、前記基板
    側にCu含有量が多く且つ表面側にNi含有量が多くな
    るように厚さ方向においてCuとNiとの濃度が傾斜し
    ている、ことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性金属
    板。
  3. 【請求項3】請求項1又は2に記載の抗菌性金属板にお
    ける前記Cu−Ni系合金の薄層の表面に、Ag又はA
    g基合金からなるAgメッキ層を被覆した、 ことを特徴とする抗菌性金属板。
  4. 【請求項4】ステンレス鋼等からなる基板の少なくとも
    一方の表面上にCuメッキ層を被覆する工程と、 上記Cuメッキ層の表面上にNiメッキ層を被覆する工
    程と、 上記メッキ済みの基板に対し拡散焼鈍を行うことによ
    り、基板の表面に厚さ方向においてCuの濃度が傾斜し
    ているCu−Ni系合金の薄層を形成する工程とを含
    む、ことを特徴とする抗菌性金属板の製造方法。
  5. 【請求項5】前記ステンレス鋼等からなる基板の表面上
    にCuメッキ層を被覆する工程の前に、予め上記基板の
    表面上に下地用のNiメッキ層を被覆する工程が含まれ
    ている、ことを特徴とする請求項4に記載の抗菌性金属
    板の製造方法。
  6. 【請求項6】前記Niメッキ層を被覆する工程と拡散焼
    鈍工程との間に、前記のCuとNiとの2層のメッキ層
    を被覆した基板を圧下率3%以上で冷間圧延する工程を
    有する、 ことを特徴とする請求項4又は5に記載の抗菌性金属板
    の製造方法。
  7. 【請求項7】前記Cuメッキ層とNiメッキ層の厚さが
    それぞれ0.5〜15μmの範囲内にあり、及び/又
    は、前記拡散焼鈍の温度が350〜650℃の範囲内に
    ある、 ことを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の抗菌
    性金属板の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項4乃至7に記載の各工程を経て前記
    拡散焼鈍工程を行った後に、得られたメッキ済みの基板
    における前記Cu−Ni系合金の薄層の表面上に厚さ
    0.1〜3μmのAg又はAg基合金からなるAgメッ
    キ層を被覆する工程を有する、ことを特徴とする抗菌性
    金属板の製造方法。
JP10094184A 1997-11-04 1998-04-07 抗菌性金属板とその製造方法 Withdrawn JPH11193495A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10094184A JPH11193495A (ja) 1997-11-04 1998-04-07 抗菌性金属板とその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-301543 1997-11-04
JP30154397 1997-11-04
JP10094184A JPH11193495A (ja) 1997-11-04 1998-04-07 抗菌性金属板とその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11193495A true JPH11193495A (ja) 1999-07-21

Family

ID=26435467

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10094184A Withdrawn JPH11193495A (ja) 1997-11-04 1998-04-07 抗菌性金属板とその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11193495A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007297713A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Inha-Industry Partnership Inst 活性炭素−多種金属複合体の製造方法
US20130302640A1 (en) * 2010-12-23 2013-11-14 Hans-Georg Neumann Fitting with antibacterial coating and method for manufacturing the same
JP2016196700A (ja) * 2015-04-03 2016-11-24 株式会社ケミカル山本 ステンレス鋼表面の抗菌化処理方法
CN107310221A (zh) * 2017-06-26 2017-11-03 太原科技大学 一种抗菌不锈钢复合材料及其制造方法
WO2018124116A1 (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 古河電気工業株式会社 表面処理材及びその製造方法、並びにこの表面処理材を用いて作製した部品
WO2018124115A1 (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 古河電気工業株式会社 表面処理材およびこれを用いて作製した部品
WO2018124114A1 (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 古河電気工業株式会社 表面処理材およびこれを用いて作製した部品
CN113046719A (zh) * 2021-03-16 2021-06-29 江苏集萃脑机融合智能技术研究所有限公司 确定二维材料生长合金催化剂中金属原子最佳配比的方法

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007297713A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Inha-Industry Partnership Inst 活性炭素−多種金属複合体の製造方法
US20130302640A1 (en) * 2010-12-23 2013-11-14 Hans-Georg Neumann Fitting with antibacterial coating and method for manufacturing the same
JP2016196700A (ja) * 2015-04-03 2016-11-24 株式会社ケミカル山本 ステンレス鋼表面の抗菌化処理方法
WO2018124116A1 (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 古河電気工業株式会社 表面処理材及びその製造方法、並びにこの表面処理材を用いて作製した部品
WO2018124115A1 (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 古河電気工業株式会社 表面処理材およびこれを用いて作製した部品
WO2018124114A1 (ja) * 2016-12-27 2018-07-05 古河電気工業株式会社 表面処理材およびこれを用いて作製した部品
JPWO2018124114A1 (ja) * 2016-12-27 2018-12-27 古河電気工業株式会社 表面処理材およびこれを用いて作製した部品
JPWO2018124116A1 (ja) * 2016-12-27 2018-12-27 古河電気工業株式会社 表面処理材及びその製造方法、並びにこの表面処理材を用いて作製した部品
JPWO2018124115A1 (ja) * 2016-12-27 2019-01-10 古河電気工業株式会社 表面処理材およびこれを用いて作製した部品
CN107310221A (zh) * 2017-06-26 2017-11-03 太原科技大学 一种抗菌不锈钢复合材料及其制造方法
CN113046719A (zh) * 2021-03-16 2021-06-29 江苏集萃脑机融合智能技术研究所有限公司 确定二维材料生长合金催化剂中金属原子最佳配比的方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI503421B (zh) 具優異抗菌性之肥粒鐵系不鏽鋼板及其製造方法
JPH11193495A (ja) 抗菌性金属板とその製造方法
JP2010146926A (ja) 可動接点部品用銀被覆材およびその製造方法
JPH10237643A (ja) 抗菌性金物およびその製造方法
EP3098333A1 (en) Electrolytic bath for producing antibacterial metal coatings containing nickel, phosphorus and nanoparticles of an antibacterial metal (ni-p-manp's)
JP3171130B2 (ja) 電磁誘導加熱用の炊飯器鍋
JP4911560B2 (ja) 抗菌性アルミニウム展伸材及びその製造方法
JP4031679B2 (ja) 電池缶用Niメッキ鋼板およびその製造方法
JP3471470B2 (ja) Cu含有ステンレス鋼の抗菌性改善方法
JP5025367B2 (ja) 抗菌性物品における抗菌性薄膜の作製方法
JPH0860303A (ja) 抗菌性を有するフェライト系ステンレス鋼及び製造方法
JPH1129879A (ja) 抗菌処理した金属材料及びその抗菌処理方法
CN111304654A (zh) 一种钢带表面镀铂方法
JP7277823B2 (ja) ホットスタンプ成形体
CN109414905A (zh) 压延接合体及其制造方法
CN219578955U (zh) 一种具有复合硬质涂层的骨科用刀
CN215127127U (zh) 锅体及烹饪器具
JPH11348175A (ja) 抗菌性金属板およびその製造方法
JP2577246B2 (ja) 加工耐食性の優れた塗装下地用表面処理鋼板の製造方法
JP2954868B2 (ja) Cu含有ステンレス鋼の抗菌性改善方法
EP1347070B1 (en) Steel sheet for porcelain enameling and method for production thereof, and enameled product and method for production thereof
JPH0860302A (ja) 抗菌性を有するオーステナイト系ステンレス鋼及び製造方法
JP3093917B2 (ja) ラミネート鋼板およびその原板
JP3704323B2 (ja) 電池缶用Niメッキ鋼板の製造方法
JP3947444B2 (ja) 電池缶用Niメッキ鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050607