JPH11178540A - 調味料の製造方法 - Google Patents

調味料の製造方法

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JPH11178540A
JPH11178540A JP9366085A JP36608597A JPH11178540A JP H11178540 A JPH11178540 A JP H11178540A JP 9366085 A JP9366085 A JP 9366085A JP 36608597 A JP36608597 A JP 36608597A JP H11178540 A JPH11178540 A JP H11178540A
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JP
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fermentation
salt
seasoning
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stage fermentation
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JP9366085A
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Akira Nagasawa
昭 長澤
Takeo Koizumi
武夫 小泉
Yoshibumi Murata
義文 村田
Naoko Ko
直子 高
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KOCHI PREFECTURE SHOHIN KEIKAKU KIKO KK
KH Neochem Co Ltd
Original Assignee
KOCHI PREFECTURE SHOHIN KEIKAKU KIKO KK
Kyowa Hakko Kogyo Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の内外国の醗酵調味料「醤」の利点のみ
に着目し、従来廃棄されていた原料魚介類の残滓を有効
利用し、短期間で風味あふれる新規な調味料を製造でき
るようにすることにある。 【解決手段】 ミンチ状に加工した主原料に、穀物麹、
酵素剤、水を加えて保持し、次いで食塩を添加して保持
する第一段階醗酵と、この第一段階醗酵で得られた分解
物にブドウ糖を添加して良く溶解させた後、耐塩性酵母
の培養液を添加して醗酵させる第二段階醗酵と、この第
二段階醗酵で得られた分解物にブドウ糖を添加して良く
溶解させた後、耐塩性乳酸菌の培養液を添加して醗酵さ
せる第三段階醗酵とを順次行うことを特徴とし、また、
上記した第一段階醗酵、第二段階醗酵、第三段階醗酵と
を順次行って得られた調味原液を圧搾し、油を除去し、
火入れし、おり引きする操作を順次行うことを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、醗酵調味料の製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の調味料は、世界各地で民族や地域
の特性を反映し、夫々の食文化の基礎を築いてきたが、
近年では食生活の多様化に伴い、伝統的食文化が見直さ
れる傾向にあり、調味料の種類や用途もまた各国で多様
化している。特に、調味料の元祖といわれている醗酵調
味料「醤」(ジャン)の類は、上記した傾向が強い。
【0003】日本の代表的な醗酵調味料「醤」は、醤油
である。この醤油は大豆を主原料とし、麹菌を主とする
醗酵微生物によって食塩存在下で醗酵させた後、圧搾し
て得られるものであり、半年から1年以上をかけて醸し
出された特有の芳香に優れた点があり、魚肉臭や畜肉臭
をマスキングする効果等もある。
【0004】しかしながらこの醤油には、塩味が強く感
じられ、うま味・こく味・厚味等の呈味性にやや欠ける
点、製造期間が半年から1年以上もの長期間を要する
点、高食塩濃度のため、いくつかの含塩調味料との併用
の際に使用量の制限が生じる点、等の欠点が指摘され
る。
【0005】また、東南アジア諸国の代表的な醗酵調味
料「醤」としては、魚醤油が挙げられる。この魚醤油は
魚介類を主原料とし、自然醗酵法によって食塩存在下で
醗酵熟成させた後、圧搾して得られるものであり、うま
味・こく味・厚味等の呈味性を強く示す優れた点があ
る。
【0006】しかしながら一方ではこの魚醤油には、独
特の臭気や生臭さが非常に強く調味料としての汎用性に
欠ける点、製法が単純で自然醗酵的な分だけ製造ロット
毎の品質差が大きい点、製造期間が数か月から3年もの
長期間を要する点、高食塩濃度のため、いくつかの含塩
調味料との併用の際に使用量の制限が生じる点、等の欠
点が指摘される。
【0007】上記したように、従来の醗酵調味料「醤」
には種々の利点と欠点とが併存している一方、現在の調
味料業界では、食生活の多様化に伴い、多種多様の調味
液が開発され、その原料として使用される調味料には、
差別化された風味が要求されるように至っている。
【0008】そこで上記した従来の醗酵調味料「醤」の
欠点を解消するべく、例えば、特公平4−20581号
公報、特公平5−41220号公報、特公平7−408
99号公報等で開示された発明の提案が多々なされてい
る。
【0009】特公平4−20581号公報に開示された
発明は、食用動物性蛋白質原料に蛋白可溶化酵素と麹の
自己消化液を作用させる構成で、苦味を有さず、しかも
コクのある良好な旨味を有する調味液を、短時間で且つ
安価に製造できるとしている。
【0010】しかしながら、麹の自己消化液の使用には
様々な問題がある。つまりこの発明では、麹の自己消化
液を得るために、麹から酵素群を抽出する工程と、その
固液を分離する工程とが必要であり、製造過程が複雑化
して手間がかかり、製造コストが嵩む要因となる。一般
に工業過程では、予期せぬ問題が生じることが多いた
め、できるだけ単純な方が望ましい。
【0011】また、高濃度(高窒素濃度)の調味液を製
造する場合、自己消化液では水分量が圧倒的に多いので
かなり希薄な状態での反応となる。従って、後に濃縮等
の工程が必要となり、ここでも手間のかかる問題が生じ
る。
【0012】そもそも麹は、製造時の温度・湿度やその
後の保管期間・温度・湿度等の外的影響を受け易く、こ
れに伴って既に生成されている酵素群も影響を受け、酵
素活性力の低下・失活等を起こし易い。このような背景
よりすると、麹を使用するまでの期間はなるべく短期間
とし、更にその温度変化(品温変化)は最低限にすると
いう条件が望ましい訳であり、この点でも特公平4−2
0581号公報に開示された発明には難点がある。
【0013】次に、特公平5−41220号公報に開示
された発明は、液汁基質に酵母を加えた酵母醗酵液と、
液汁基質に乳酸を加えた乳酸醗酵液とを、夫々別個のタ
ンクで生成し、混合させる構成で、香味を有する調味液
を短期間で安定的且つ容易に製造できるとし、特公平7
−40899号公報で開示された発明は、第一工程で得
られた醤油醸造用諸味に、乳酸菌を接種して乳酸発酵諸
味と所定の酵母を接種してアルコール醗酵諸味とを夫々
個別のタンク内で製造する第二工程を経、更に両タンク
内の諸味を混合熟成する第三工程より構成され、製造期
間が短縮できるとしている。
【0014】上記した各発明は、従来の一つのタンクで
醗酵させる場合の欠点に鑑みて複数のタンクを採用した
ものと考えられる。即ち、同一タンク内で、先ず乳酸菌
醗酵をさせてから酵母醗酵させる過程を採る場合には、
乳酸菌の生育に伴って生成される酢酸が酵母の生育を阻
害する問題があり、逆に酵母醗酵をさせてから乳酸菌醗
酵させる過程を採る場合には、酵母の生育が盛んである
と、乳酸菌の生育速度が変化して乳酸生成量が低下する
問題があったからである。
【0015】しかしながら、上記した各発明は、製造過
程が極めて複雑であり、最低でも二本のタンクが必要と
なり、設備投資が嵩むばかりか、施設の設置面積も大き
くなり、コストの高いものになってしまう。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】現在の水産加工工場現
場では、原料魚介類の解体加工の際に生じる残滓の処理
をいかに解決するかが一つの課題になっている。即ち、
原料魚介類の解体加工の際に生じる内臓・骨・頭・えら
・ヒレ・尾部等の所謂粗(アラ)には、多量の蛋白質、
エキス成分が含まれていることが認識されているが、こ
れ等の粗を有効活用することは希で、大部分は残滓とし
て多額の費用をかけて廃棄処理されている。
【0017】この発明は、上述した従来技術の欠点、不
都合、不満点を解決するため開発されたもので、前記し
た従来の内外国の醗酵調味料「醤」の利点のみに着目
し、従来廃棄されていた原料魚介類の残滓を有効利用
し、短期間で風味あふれる新規な調味料を製造すること
ができるようにすることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明は、ミンチ状に加工した主原料に、穀物麹、酵素
剤、水を加えて保持し、次いで食塩を添加して保持する
第一段階醗酵と、この第一段階醗酵で得られた分解物に
ブドウ糖を添加して良く溶解させた後、耐塩性酵母の培
養液を添加して醗酵させる第二段階醗酵と、この第二段
階醗酵で得られた分解物にブドウ糖を添加して良く溶解
させた後、耐塩性乳酸菌の培養液を添加して醗酵させる
第三段階醗酵とを順次行うことを特徴とする調味料の製
造方法である。
【0019】第一段階醗酵では、主原料をミンチ状に加
工することにより蛋白質を分解させて醗酵を促進させ、
穀物麹を添加することにより主原料の蛋白質を分解醗酵
させ且つ副原料である穀物麹の蛋白質を所謂自己消化に
より分解醗酵させる。この主原料の分解と麹の自己消化
により、単純な魚肉だけの分解では得られない複雑な味
成分が付与される。
【0020】また、酵素剤を添加することによって主原
料の蛋白質の分解と同時に生成されるグルタミンをグル
タミン酸に変換させ、旨味成分の多様化を図る。
【0021】そして、食塩濃度・窒素濃度の調製のため
所定量の水を加え、魚体や麹の原料蛋白と酵素とを均一
に接触反応させるために撹拌を行い、製品の安定化を図
るのである。
【0022】更に、味付けと、腐敗防止のため食塩を添
加するが、その添加は、蛋白質分解が充分に達成される
程度に時間をずらしてから行う。
【0023】第二段階醗酵ではこの第一段階醗酵で得ら
れた分解物にブドウ糖を添加し、耐塩性酵母の培養液を
添加して醗酵させると、耐塩性酵母がブドウ糖に作用
し、アルコール類、カルボニル化合物類、エステル類等
を生成して醤油らしい香りが付与される。
【0024】耐塩性酵母は、本培養液の食塩濃度に調製
した培養液に於いて予め馴化培養されていると速やかに
醗酵作用が開始され、醗酵期間を短縮させることができ
るので好ましい。
【0025】第三段階醗酵ではこの第二段階醗酵で得ら
れた分解物にブドウ糖を添加して、耐塩性乳酸菌の培養
液を添加して醗酵させると、耐塩性乳酸菌が乳酸等の有
機酸による酸味と、醤油らしい香りが付与される。この
成分は、ブドウ糖がもとになって乳酸菌の醗酵作用によ
って生成されるので、ここでもブドウ糖を添加すること
になる。
【0026】また、本発明は、上記した第一段階醗酵、
第二段階醗酵、第三段階醗酵とを順次行って得られた調
味原液を圧搾し、油を除去し、火入れし、おり引きする
操作を順次行うことを特徴とする調味料の製造方法であ
る。
【0027】上記三段階の醗酵を経て得られた醗酵物を
圧搾して調味原液を得、この調味原液から、油分を除去
した調味液だけを取り出す。油分中には、魚特有の生臭
さが凝集されているため、これが極少量でも混入したま
ま加熱を行うと、調味液中にこの臭いが移行してしま
う。また、加熱すると、化学構造の理由から熱に弱い脂
肪酸が酸化され、それに伴い酸化臭を発生させる。従っ
て、油分除去は、加熱前に行わなければならない。
【0028】油分を除去した調味液を火入れ即ち加熱す
ることにより、生臭さを消し、生調味液中に生息する醗
酵菌を殺菌し、品質の保全を図り、生調味液に溶存して
いる各種の酵素を熱で失活させて品質の変化を防ぐこと
ができる。
【0029】生調味液中に溶存していた未分解の蛋白質
は、火入れ時の熱により無機物と結合して澱として沈殿
し、濁りの原因になるのでおり引きして除去する。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明に於いての主原料は、原料
魚介類の解体加工の際に生じる、多量の蛋白質、エキス
成分が含まれている内臓・骨・頭・えら・ヒレ・尾部等
の粗である。これは、現在の水産加工工場現場で問題と
なっている解体加工の際に生じる残滓を有効活用するこ
とに着目したものであるが、本発明では魚介類に限定さ
れるものではなく、鶏肉等の動物性蛋白質のみならず、
大豆等の植物性蛋白質にも理論上は対応できるものであ
る。
【0031】第一段階醗酵に於いては先ず、主原料を、
その蛋白質が容易に分解して醗酵の促進が図れるように
する。
【0032】ミンチ状に加工した主原料に加える穀物麹
は、主原料の蛋白質をペプタイドやアミノ酸単位まで分
解醗酵させることと、副原料であるこの穀物麹の蛋白質
を所謂自己消化によりペプタイドやアミノ酸単位まで分
解醗酵させる。この主原料の分解と同時に麹の自己消化
が進むことにより、単純な魚肉だけの分解では得られな
い複雑な味成分が付与されるのである。
【0033】穀物麹としては、各種の醤油麹や味噌麹、
例えば濃口醤油麹、淡口醤油麹、溜醤油麹等が考えられ
る。これは、蒸煮大豆を主とする麹原料に種麹として麹
菌、即ち、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus or
yzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae
)等のアスペルギルス属に属する菌を接種培養させた
ものである。
【0034】また、従来から食用に供されることの知ら
れている各種の微生物、例えばアスペルギルス・ニガー
(Aspergillus niger )や、ペニシリウム属(Penicill
ium)、リゾップス属(Rhizopus)等の固体培養物(即
ち麹)も利用できる。
【0035】更に麹原料は、蛋白質原料としては、例え
ば大豆、脱脂大豆、脱皮大豆、大豆蛋白ミール、小麦グ
ルテン、トウモロコシグルテン等が考えられ、炭水化物
原料としては、例えば小麦、大麦、米、トウモロコシ等
が考えられる。
【0036】穀物麹と共に主原料に加える酵素剤は、主
原料の蛋白質の分解と同時に生成されるグルタミンをグ
ルタミン酸に変換させて、旨味成分の多様化を図るため
である。
【0037】酵素剤としてはグルタミナーゼの他、代用
品としてエキソ型のペプチターゼが用いられる。これに
は、例えば細菌、カビ、酵母、放線菌等の各種微生物起
源のエキソ型ペプチターゼや、動植物起源のエキソ型ペ
プチターゼが含まれる。これ等は穀物麹との併用が可能
で、その種類は一種以上何種で良い。また、グルタミナ
ーゼ酵素活性の非常に強い麹があれば、穀物麹単独の使
用も可能である。
【0038】そして、食塩濃度・窒素濃度の調製のため
所定量の水を加え、製品の安定化を図るべく魚体や麹の
原料蛋白と酵素とを均一に接触反応させるために撹拌を
行いながら、40〜60℃好ましくは約50℃で、4〜
9時間好ましくは約4時間保持し、主原料の蛋白質を分
解し、及びグルタミン酸に変換させるのである。
【0039】約50℃での保持が好ましいとしたのは、
穀物麹由来の蛋白質分解酵素の活性に適しているからで
あり、これにより主原料由来の蛋白質が速やかに分解さ
れる。
【0040】約4時間の保持が好ましいとしたのは、保
持時間が4時間に満たないと蛋白質の分解が不充分で、
旨味の主成分であるグルタミン酸の先駆体であるグルタ
ミン生成率が低下し、旨味に欠けた調味液になる虞れが
あるからである。また、ペプチドやアミノ酸も旨味を形
成する成分であるが、これ等の成分も保持時間が4時間
に満たないと生成が不充分となる。
【0041】また、保持時間が9時間を越えると、蛋白
質の分解が過度となる。原料蛋白質から分解・生成され
たペプチドの殆どがアミノ酸単位まで分解されてしま
い、その結果単調な味の調味液となる虞れがある。
【0042】更に、味付けと、保存中の腐敗防止を目的
として食塩を添加する。但し、魚肉に食塩を加えて混和
していくと、魚肉中の蛋白質がゾル状に変性して繊維状
分子が絡まりあった非常に粘度の高い状態となる。この
ように粘度が高くなると、穀物麹、酵素剤との反応が不
均一になって、均一混合が困難となり、また、設備的に
も特殊な混合タンクが必要となる。更には、食塩の添加
により、活性阻害を受け、その結果蛋白質分解が不充分
となる虞れもある。
【0043】従って、上記した不都合が生じないよう
に、食塩の添加は、蛋白質分解が充分に達成される約4
時間程度を経過した後に行うのである。
【0044】食塩の添加後、1日1回程度撹拌し、約3
0℃で約6日間保持する。この温度は、目的とする酵素
の活性温度が上限40℃から下限30℃にあることから
設定される。また、味のバランスを考慮すると、保持日
数が6日間に満たないとペプチドからアミノ酸への蛋白
質の分解が不足し、8日間を越えると変化がなく、無意
味である。
【0045】食塩添加後の保持期間中に容器装置に蓋を
すると蓋の内面に水蒸気が溜り、その水滴が混合物表面
に落下すると表面層の食塩濃度が低下し、部分的ではあ
るが雑菌・カビ等が繁殖し易くなる異常醗酵となる。そ
の結果調味料に不要な風味が付与されてしまうので、上
記異常醗酵を防止するべく撹拌を行う。食塩存在下で魚
体成分分解物を得る上記過程が第一段階醗酵である。
【0046】次に第二段階醗酵で、この第一段階醗酵で
得られた分解物にブドウ糖を添加して良く溶解させた
後、耐塩性酵母の培養液を添加して醗酵させると、耐塩
性酵母がブドウ糖に作用して、約0.5%のアルコール
を生成して醤油らしい香りの風味が付与される。
【0047】しかしながら、0.5%を越えてアルコー
ルを生成させた場合、苦味が生じ、原料の香りが殆どマ
スキングされてしまってその特徴をだすことができない
等の問題が生じる。そこでアルコールは0.5%以下に
抑える必要があるのであるが、原料臭が非常に強い場合
は、逆にアルコールを積極的に生成させてこの臭いをマ
スキングしてしまう対策手段もある。
【0048】ここで、種々ある耐塩性酵母にあって、特
にザイゴサッカロマイセス・ルキシイ(Zygosaccharomy
ces rouxio)を用いるのは、醤油らしい香りを生成させ
るために最も適した酵母だからである。醤油製造に於い
てこの酵母は醗酵の主体をなしており、上記した香りを
生成させる。
【0049】また、耐塩性酵母の輸送・保存中の環境
は、通常、食塩濃度10%、温度4℃に維持される。こ
の条件下での酵母はいわば眠っている状態にあり、その
まま添加しても新しい環境に馴れるまでに時間がかか
り、目的とする醗酵作用が起きるのに時間を要する。
【0050】耐塩性酵母培養の培地組成割合は表1の如
くであり、培養液100に対して市販酵母を0.05添
加する。培養条件としては、培養液を調製し、常圧の1
00℃で15分間殺菌した後、酵母を添加するものであ
り、培養温度は30℃とし、培養時間は20〜24時間
とする。また、この間80rpm/min程度の振とうを行
う。
【0051】
【表1】
【0052】そこで、予めの馴化培養として、添加後の
環境に近い状態(食塩濃度15%、温度30℃)に馴れ
させと、添加した酵母は速やかに醗酵作用を開始するた
め、醗酵期間を短縮させることができる。
【0053】分解物にブドウ糖を添加し、耐塩性酵母の
培養液を添加した後、約30℃で約5日間発酵させる。
耐塩性酵母であるザイゴサッカロマイセス・ルキシイの
増殖最適温度が30℃のためこの値に設定するが、醸造
学の見地よりすると、27から33℃程度の変化には対
応できる。また、この設定で醗酵させた場合、酵母と同
時に添加したブドウ糖の全量をアルコールに変換させる
には、約5日間を必要としたが、これは平均値で、上限
は10日間、下限は4日間である。以上の過程が第二段
階醗酵である。
【0054】次に第三段階醗酵で、この第二段階醗酵で
得られた分解物にブドウ糖を添加して良く溶解させた
後、耐塩性乳酸菌の培養液を添加して醗酵させる。この
第三段階醗酵工程で目的とする生成成分は、乳酸等の有
機酸と醤油らしい香りであり、この成分は、ブドウ糖が
もとになって乳酸菌の醗酵作用によって生成される。こ
の意味からここでもブドウ糖を添加することになる。
【0055】耐塩性乳酸菌(ペディオコッカス・ハロフ
ィリス)は、酸味と醤油らしい香りを付与する。醗酵微
生物は、調理の際の所謂隠し味を製品に付与するのに大
きな役割を果たす。
【0056】醗酵は、約30℃で約4日間させる。耐塩
性乳酸菌(ペディオコッカス・ハロフィリス)の増殖最
適温度が30℃であるので、これを設定温度基準にする
が、醸造学の見地よりすると、27から33℃程度の変
化には対応できる。また、この設定で醗酵させた場合、
乳酸菌と同時に添加したブドウ糖の全量を乳酸等の有機
酸に変換させるには、約4日間を必要としたが、これは
平均値で、上限は7日間、下限は3日間である。以上の
過程が第三段階醗酵である。
【0057】上記三段階の醗酵を経て得られた醗酵物
を、例えばナイロン等の袋に入れ、圧力をかけながら約
一昼夜搾ることにより調味原液を得ると共に、副生物と
して搾り粕が得られる。この搾り粕は醗酵作用によって
微量栄養成分が豊富であるから、配合飼料の原料の一部
として有効である。
【0058】得られた調味原液を静置すると、比重の関
係から油層(上層)と調味液層(下層)とに分離するの
で、下層の調味液だけを取り出す。本発明で使用する主
原料である魚由来の油分の中には、魚特有の生臭さが凝
集されているため、油分を除去するのである。
【0059】この魚の生臭さが極少量でも混入したまま
加熱を行うと、調味液中にこの臭いが移行してしまう。
また、生臭さの他にも、化学構造の理由から熱に弱い脂
肪酸が酸化され、それに伴い酸化臭を発生させて官能的
にも好ましくない臭いが発生する。従って、油分除去
は、加熱前に行うことになる。
【0060】次いで、油分を除去した調味液を火入れ即
ち加熱することにより、生臭さが消えて食欲をそそる良
い香りを出すことができ、また、生調味液中に生存する
醗酵菌を熱で殺すことにより品質の保全が図れ、更に
は、生調味液に溶存している各種の酵素を熱で失活させ
ることにより品質の変化を防ぐことができる。
【0061】更に、生調味液中に溶存していた未分解の
蛋白質は、火入れ時の熱により無機物と結合し、「澱」
として沈殿する。この澱は調味液の濁りの原因になるの
で除去する必要がある。この澱は、約三日間静置すると
全てが沈積するのでおり引きとして除去する。
【0062】
【実施例】以下に、実際の製造例を説明するが、ここで
の数値は相対的なものであって限定されるものでないこ
とは勿論である。
【0063】先ず、第一段階醗酵で、魚肉及び粗10.
3kgをミンチ状に加工し、穀物麹1.6kg、酵素剤とし
てのグルタミナーゼ15g 、水1.3kgを加えて撹拌し
ながら、50℃で約4時間保持し、作用させた。この
後、食塩1.8kgを添加し、1日1回程度撹拌して約3
0℃で約6日間保持し、分解物を調製した。
【0064】このグルタミナーゼのユニット数は、市販
のグルタミナーゼダイワC100(商品名)で100G
TU/gである。(0.5%グルタミンに37℃で作用
するとき、反応初期の1分間に1μmol のグルタミン酸
を生成する酵素量を1GTUとする)。
【0065】次いで、第二段階醗酵で、この分解物にブ
ドウ糖67.5g を添加して良く溶解させた後、耐塩性
酵母であるザイゴサッカロマイセス・ルキシイの培養液
(2×107 /g のもの)750g を添加し、30℃で
5日間、醗酵させた。これにより、約0.5%のアルコ
ールを生成させたのであるが、醗酵の風味を強くしたい
ときには、ブドウ糖の量を5%まで増やすこともでき
る。
【0066】耐塩性酵母であるザイゴサッカロマイセス
・ルキシイの培養液の組成実施量は表2の如くである。
【0067】
【表2】
【0068】次いで、第三段階醗酵で、第二段階醗酵で
得られたこの分解物にブドウ糖67.5g を添加して良
く溶解させた後、耐塩性乳酸菌であるペディオコッカス
・ハロフィリスの培養液(2×109 /g のもの)15
g を添加し、30℃で4日間、醗酵させた。
【0069】これを圧搾し、油除去、火入れ、おり引き
を行って、濃い旨味を有する天然調味液12kgを得るこ
とができた。
【0070】この圧搾手段としては、ナイロン等の袋に
入れて上から圧力をかけながら搾る方法とか、酒・醤油
等の醸造用の圧搾機を利用する方法とかがあり、基本的
には如何なる圧搾手段でも良い。また、油除去は、比重
差を利用するか、或いは遠心分離機により達成する。
【0071】火入れは、圧搾及び油除去工程で得られた
濾液を80℃に加温し、10分間保持し、その後常温ま
で冷却する。そしており引きは、火入れの済んだ濾液を
濾過機にかけて清澄な液とするものである。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】さて、表3、4は、上述した本発明液に対
し、魚肉及び粗を原料とする天然発酵調味液の従来の市
販品をサンプル試料とした魚醤油A、魚醤油Bとの一般
成分分析例のデータを示すものにして、夫々100gに
対して成分量gを表し、また、特に全窒素中のアミノ態
窒素の成分量、及びアミノ態窒素/全窒素のパーセンテ
ージを併記してある。
【0075】表3よりすると、本発明液は各試料である
魚醤油A、魚醤油Bよりも顕著に食塩濃度が低いことが
理解でき、これまで困難であった他の含塩調味料との併
用が可能となり、それだけ変化に富んだ賞味をすること
ができる。
【0076】そして表4は、各試料の食塩濃度を本発明
液の表1での食塩濃度10.45%に対応するように水
で調製して、三者の食塩レベルを等しくした場合の分析
例で、各試料の全窒素とアミノ態窒素の値がほぼ半減し
てしまうことが理解できる。窒素成分は、主にアミノ酸
やペプタイド中に混在し、その値は味の強さの指標とな
るものであり、本発明液は各試料に比較して約2倍も多
く含まれていることになる。
【0077】即ち、各試料を含塩調味料との併用が可能
となるように食塩濃度を低く抑えると味が弱くなり、逆
に本発明液は、食塩濃度が低いので他の含塩調味料との
併用が可能でありながら味の強いものになる。
【0078】従って、発明液は、各試料よりも味の濃い
状態であるため、少量で各種食品の旨味やこく味を強化
することができる。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】表5は遊離アミノ酸の分析結果であり、表
6は前記表1と同様に各試料の食塩濃度を本発明液のそ
れに水で調製して三者の食塩レベルを等しくして比較し
たデータであって、mg/gは1g中のmg数値成分で
ある。尚、trace 表記は微量で測定できなかったもの、
また検出されなかった成分はNDで表記した。
【0082】この表5、6のデータから本発明液の優れ
た点が更に顕著に値として表れる。即ち、動植物性蛋白
質であり、旨味成分の主体であるグルタミン酸やアスパ
ラギン酸が、本発明液では試料よりも約2倍近く含まれ
ているため、旨味・こく味が非常に強いものになる。
【0083】また、本発明液では試料よりも、総アミノ
酸が約1.5倍(約2倍〜2.5倍)の含有量であるこ
とから、強い旨味をもちながら複雑な味を形成してい
る。
【0084】更に、本発明液では試料よりも、食塩に対
する総アミノ酸含有量が高いので、加工時に稀釈した状
態でも伸びのある味を維持することができる。ここでの
伸びのある味とは味の持続性を意味し、舌で味わった
際、漠然と「おいしい」と感じた味をどれだけ長い時間
感じていられるかということである。尚、本発明液で
は、強肝効果の高いタウリンを豊富に含んでいる。
【0085】
【発明の効果】本発明にかかる調味料の製造方法は、上
述したような構成をとり、作用を営むので、製造過程が
極めて簡略化され短時間の製造が可能であり、且つ設備
を最小限に抑えてコストの低廉化を達成することがで
き、水産加工工場現場で生じる原料魚介類の解体加工の
際の残滓を有効利用することができる。
【0086】また、得られる調味料は特有の芳香、旨味
・こく味・厚味等の呈味性を有し、含塩調味料との併用
が可能であり、臭気や生臭さが少なくて調味料としての
汎用性が広く、製造ロット毎の品質に安定性があり、差
別化された風味が得られる等多くの優れた効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる調味料の製造方法の行程を示す
フローチャート図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小泉 武夫 神奈川県横浜市神奈川区西寺尾1丁目27番 14号 (72)発明者 村田 義文 千葉県我孫子市本町2丁目4番3号 (72)発明者 高 直子 高知県高知市青柳町62番1号

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ミンチ状に加工した主原料に、穀物麹、
    酵素剤、水を加えて保持し、次いで食塩を添加して保持
    する第一段階醗酵と、該第一段階醗酵で得られた分解物
    にブドウ糖を添加して良く溶解させた後、耐塩性酵母の
    培養液を添加して醗酵させる第二段階醗酵と、該第二段
    階醗酵で得られた分解物にブドウ糖を添加して良く溶解
    させた後、耐塩性乳酸菌の培養液を添加して醗酵させる
    第三段階醗酵とを順次行うことを特徴とする調味料の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 ミンチ状に加工した主原料に、穀物麹、
    酵素剤、水を加えて保持し、次いで食塩を添加して保持
    する第一段階醗酵と、該第一段階醗酵で得られた分解物
    にブドウ糖を添加して良く溶解させた後、耐塩性酵母の
    培養液を添加して醗酵させる第二段階醗酵と、該第二段
    階醗酵で得られた分解物にブドウ糖を添加して良く溶解
    させた後、耐塩性乳酸菌の培養液を添加して醗酵させる
    第三段階醗酵とを順次行って調味原液を得、更に該調味
    原液を圧搾し、油を除去し、火入れし、おり引きする操
    作を順次行うことを特徴とする調味料の製造方法。
JP9366085A 1997-12-24 1997-12-24 調味料の製造方法 Withdrawn JPH11178540A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012039889A (ja) * 2010-08-12 2012-03-01 Oku Tain 茶茎葉及び/又はサツマイモ茎葉を用いた発酵食品及びその製造方法
JP2015181414A (ja) * 2014-03-25 2015-10-22 株式会社木の屋石巻水産 発酵調味料および発酵調味料の製造方法

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