JPH11172370A - 高溶接性高耐候性鋼 - Google Patents

高溶接性高耐候性鋼

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JPH11172370A
JPH11172370A JP10102541A JP10254198A JPH11172370A JP H11172370 A JPH11172370 A JP H11172370A JP 10102541 A JP10102541 A JP 10102541A JP 10254198 A JP10254198 A JP 10254198A JP H11172370 A JPH11172370 A JP H11172370A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩害が懸念される環境における優れた耐食性
を示し、溶接用鋼として十分な母材強度・靭性および溶
接性を有する鋼材の提供する。 【解決手段】 重量%で、C:0.03〜0.15%、
Si:0.05〜0.55%、Mn:0.3〜2.0
%、Cu:0.30〜1.00%、Ni:1.0〜5.
5%、Al:0.010〜0.090%、N:0.00
10〜0.0070%、P:0.030%以下、S:
0.010%以下、Cr:0.1%以下を含有し、残部
がFeおよび不可避的不純物からなり、必要に応じて、
Ti,Ca,Mg,REM,Mo,W,Nb,V,Bの
1種以上を含有することを特徴とする高溶接性高耐候性
鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海浜地区や融雪塩
を散布する地区など、高飛来海塩粒子環境で塩害が懸念
される大気環境における橋梁、鉄塔などの鋼構造物など
に使用される、優れた溶接性と環境の飛来海塩粒子量に
応じた耐候性を有する鋼材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、海岸地帯などの塩害が発生する場
所で使用する鋼構造部材の防食としては、普通鋼材の塗
装使用、めっき鋼板の使用、溶射やモルタルライニング
などの表面被覆の使用、ステンレスやチタンなどの高合
金高耐食材料の使用が挙げられる。さらに、鋼構造物の
維持管理費を低減する技術として、耐候性鋼材(JIS
G3141溶接構造用耐候性鋼)の無塗装使用が挙げら
れる。
【0003】塗装の場合、塗り替えが必然的に必要なた
めに維持管理費がかかるといった問題があった。また、
めっきの場合、構造体の溶融めっきでは熱応力による変
形やめっきの剥離などといった問題があった。溶射やモ
ルタルライニングの場合も、防食皮膜の剥離や劣化など
が問題であった。さらに高合金の耐食材料の場合、材料
コストが高く主要構造部材として広く使えないといった
問題があった。
【0004】耐候性鋼材は、無塗装使用の場合、使用後
数年〜10年で鋼材表面に防食性に優れた緻密な安定さ
びが形成し、この安定さびがその後の鋼材の腐食の進行
を防ぐという鋼材である。鋼構造物には、溶接性を考慮
した耐候性溶接構造用鋼が、橋梁や建築物を中心にこれ
まで多く使用されてきた。しかしながら、「無塗装耐候
性橋梁の設計・施工要領(改訂案):建設省土木研究
所、鋼材倶楽部、日本橋梁建設協会、平成5年3月」に
示されるように、海浜地区や融雪塩を散布する地区など
飛来海塩粒子量が多い地域では、鋼材表面に付着した塩
分によって保護性に優れた安定さびの形成が阻害される
ため、無塗装使用に適さないといった問題点があった。
【0005】耐候性鋼の海浜地区での鋼材の耐候性向上
については、例えば特公昭56−9356号公報の発明
では、含P(0.03〜0.20%)で溶接性に優れ、
かつ海水が関与した腐食環境や一般大気環境で優れた耐
候性を有する鋼材が開示されている。また、特開平2−
125839号公報に記載の発明では、低Si−P−C
u−Niの複合添加にCaとAlの複合酸化物の添加が
有効であるとしている。また、特開平5−51668号
公報の発明では、酸化物を鋼材中に微細分散させて鋼材
表面のpH低下を抑制することが有効であるとしてい
る。また、特開平7−242993号公報に記載の発明
では、Ni−Cr−Alの複合添加が有効であるとして
いる。
【0006】このように、従来の耐候性鋼の欠点である
海浜地区での耐候性が優れた鋼材は開発されているが、
溶接構造用鋼材として必須である溶接性は、必ずしも十
分ではなかった点が問題であった。また、特開平2−1
25839号公報に記載の発明および特開平5−516
68号公報に記載の発明は、いずれも数%のNi添加鋼
を基本成分とした発明であるが、これらの鋼材は海浜地
区での耐候性は優れているものの、飛来海塩粒子量の適
用限界が不明であったため、実構造物への適用可否を判
断することが難しいといった課題があった。また、発明
者らによる研究調査の結果、例えば特公昭56−935
6号公報の発明では、含P(0.03〜0.20%)の
鋼材でも、溶接継手部の機械的特性に一定以上の品質を
求める場合、溶接時の入熱制限や予熱などが不可欠であ
るといった問題点があった。
【0007】一方、耐候性については言及していない
が、溶接性を改善した鋼材としては、例えば特公昭60
−24576号公報の発明では、Mn等を基本成分とし
て含有する鋼に、粒子径を特定したTi酸化物、Ti酸
化物とTi窒化物の複合体を含有させることにより、溶
接熱影響部における切欠靭性を改善した溶接用高靭性鋼
が得られるとしている。また、特公昭61−11724
5号公報の発明では、特定量のC,Si,Mn,P,
N,Al,S,Bを含有させ、かつ特定粒子径、特定粒
子数のTi酸化物およびTi窒化物+MnSの複合体の
両者を同時に含有させることにより、溶接熱影響部の低
温切欠靭性の優れた鋼材を得られるとしている。
【0008】しかし、これらの鋼材は、Cu,Niおよ
びTiを添加している場合でも、鋼材の海浜地区での耐
候性能およびその性能に基づく用途については一切述べ
られていない。また、使用される環境の飛来海塩粒子量
に応じて、好ましいNi添加量の範囲が異なることにつ
いても述べられていない。それゆえ、これらの溶接性に
優れた鋼板を海浜地区での無塗装使用に適用するために
は、海浜地区での耐候性に及ぼす化学成分の影響を改め
て別途に検討する必要があった。
【0009】本発明は、かかる課題を解決するためにな
されたもので、塩害が懸念される環境で安定さびを形成
して優れた耐候性を示し、かつ溶接構造用鋼として十分
な母材強度、靭性および溶接性を有する鋼材を提供する
ものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、耐候性鋼
が飛来海塩粒子の多い大気環境で、耐食性に優れた保護
さび膜を形成しにくいことに着目し、従来の耐候性鋼の
低合金鋼の成分系を基にして研究を重ねてきた。その結
果、飛来海塩粒子の少ない内陸部においては鋼材の耐候
性向上に有効であるCrは、海浜地区や融雪塩を散布す
る地区などの高飛来海塩粒子環境では、耐候性に対して
顕著な悪影響があることが判明した。
【0011】また、種々の合金元素について耐候性向上
の検討を実施した結果、Cu−1%以上のNiの複合添
加が海浜地区での安定さび生成に顕著に作用することが
明らかになった。さらに、Cu−Ni系の適用限界(安
定さびが十分形成する上限の年平均飛来海塩粒子量)
は、Ni添加量でほぼ整理できることが判明した。Ni
は高価な添加元素であることから、この知見によって腐
食環境の厳しさに応じて最も経済性に優れた鋼材を提供
することが可能となった。
【0012】次に、Cu−Ni系の母材特性について検
討した。一般に、C,P,Sを低減し、Si,Mnおよ
びAlで脱酸を行うことで、母材の強度、靭性に優れた
鋼材が得られるという知見を利用した。さらに、Niを
1%以上添加する本発明鋼の場合でも、耐候性向上を目
的としてTiを添加することが好ましい。この場合、添
加するTiに対してN含有量を制御することにより、フ
ェライト相中にTiNを微細分散析出することができ、
入熱量の大きい溶接条件で生じる溶接熱影響部の靭性劣
化を低減することができることが判明した。
【0013】さらに、本発明で完成した鋼材は、塗装や
溶射などの防食被覆された状態でも、普通鋼や従来の耐
候性鋼に比較して、遥かに優れた皮膜耐久性を有するこ
とが判明した。これは、皮膜の局所的な欠陥部から下地
鋼板の腐食が進行しても、生成したさびが緻密で保護性
に優れるため、防食皮膜の更なる剥離や皮膜下腐食の進
展を抑制するものと推察される。
【0014】本発明は上記知見に基づくものであって、
その要旨は下記の通りである。 (1)重量%で、 C :0.03〜0.15%、 Si:0.05〜0.55%、 Mn:0.3〜2.0%、 Cu:0.30〜1.00%、 Ni:1.0〜5.5%、 Al:0.010〜0.090%、 N :0.0010〜0.0070%、P:0.030%以下、 S :0.010%以下、 Cr:0.1%以下 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるこ
とを特徴とする高溶接性高耐候性鋼。 (2)さらに重量%で、Ti:0.005〜0.02%
を含み、Ti/N:2.0〜3.5であることを特徴と
する前記(1)記載の高溶接性高耐候性鋼。 (3)さらに重量%で、Ca:0.0005〜0.01
00%、Mg:0.0005〜0.0100%、RE
M:0.0005〜0.0100%の1種または2種以
上を含むことを特徴とする前記(1)または(2)記載
の高溶接性高耐候性鋼。 (4)さらに重量%で、Mo:0.1〜1.0%、W:
0.1〜1.0%の1種または2種を含むことを特徴と
する前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の高溶接性
高耐候性鋼。 (5)さらに重量%で、Nb:0.002〜0.020
%、V:0.01〜0.05%、B:0.0003〜
0.0050%のうち1種または2種以上を含むことを
特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の高
溶接性高耐候性鋼。 (6)表面が有機樹脂、金属または無機物で被覆された
ことを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記
載の高溶接性高耐候性鋼。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施する形態につ
いて説明する。まず、本発明の鋼における化学組成の限
定理由とその作用について述べる。C:Cは、構造材料
としての強度を確保するために必要であり、0.03%
以上添加するが、0.15%を超えて含まれると溶接継
手部のマトリックスの靭性が低下し、溶接性が阻害され
るため、その上限を0.15%とした。
【0016】Si:Siは脱酸のための必須元素で、
0.05%以上添加するが、0.55%を超えて添加す
ると、溶接部に高炭素島状マルテンサイトが生成し、溶
接性が阻害されるため、その上限を0.55%とした。
【0017】Mn:Mnは脱酸、強度調整および不純物
であるSをMnSとして固定し、Sによる熱間脆性の防
止、および後述するTiNの微細分散析出サイトである
MnSの生成のために0.3%以上添加するが、2.0
%を超えて添加すると溶接性が阻害されるので、その範
囲を0.3〜2.0%とした。
【0018】Cu:Cuは鋼中Feと共に溶出し、さび
層の形成時にさび粒子の結晶・粗大化を抑制し、さびの
緻密さを保持するため、飛来海塩粒子の多い環境での耐
候性を向上させるのに必須の元素であり、0.30%以
上の添加で有効である。その効果は多いほどよいが、
1.0%を超えると溶接性低下や熱間加工における割れ
が問題となるので、その範囲を0.3〜1.0%とし
た。溶接性を優先的に考慮すれば、0.30〜0.50
%が好ましい。
【0019】Ni:Niは、さび層中に0.5%以上含
まれると鋼中Feと共に溶出し、さび層中にほぼ均一に
含まれることにより、さび層表面に飛来海塩粒子として
付着したClイオンのさび層/地鉄界面への浸透を抑制
し、さび層内部を低Cl環境としてさび粒子の結晶化・
粗大成長を抑制することにより、さび層の緻密さを保持
する作用がある。また、鋼中Ni添加量の増加に従っ
て、Clイオンを含む水溶液中での乾湿繰り返し腐食環
境で鋼材の耐食性を向上する。本発明者らの研究によれ
ば、さび層中に0.5%以上Niが含まれるためには、
1.0%以上のNi添加が有効であることが明らかとな
った。また、5.5%を超えるとコスト高となるので、
1.0%〜5.5%とした。好ましくは、使用環境の飛
来海塩粒子量に応じてNi添加量をさらに限定すれば、
経済性、溶接性共に好ましいことが明らかとなった。使
用環境の年平均飛来海塩粒子量が、0.05〜0.2mg
/100cm2 /dayの場合、1.0〜2.5%のNi添加
が好ましい。0.2〜0.5mg/100cm2 /dayの場
合、2.5〜3.5%のNi添加が好ましい。0.5〜
0.8mg/100cm2 /dayの場合、2.5〜5.5%の
Ni添加が好ましく、0.8mg/100cm2 /dayを超え
る場合、1.0%〜3.5%のNi添加鋼への塗装など
の防食被覆使用が好ましい。
【0020】Al:Alは脱酸元素として0.010%
以上必要であるが、添加量が多いと介在物が増加するた
め、上限を0.090%とする。
【0021】Ti,N:Tiは必要に応じて、鋼中に一
定量以上かつNと一定の割合の範囲でTiとNが同時に
含まれる場合、TiNとしてフェライト相中に微細分散
析出し、鋼中のCuおよびNiがFeと共に均一に溶出
する反応を促進し、Clイオンの浸透を抑制する緻密な
さび層の形成を助長する。この効果を得るには0.00
10%以上のNと0.0050%以上のTi添加が必要
である。また、0.02%超のTi、または0.007
0%超のNを添加すると、粗大な析出物の析出が起こ
り、靭性を劣化させるのでTi,Nの範囲をそれぞれ
0.005〜0.02%、0.0010〜0.0070
%とした。
【0022】さらにTi/Nが2.0未満の場合、Ti
N粒子が十分フェライト相中に析出せず、3.5を超え
る場合、TiN粒子の粗大凝集が生じて微細、分散状態
が得られず、耐候性および溶接性の向上が得られないた
め、Ti/Nの範囲を2.0〜3.5とした。
【0023】P:Pは耐候性を向上するのに有効な元素
であるが,0.030%を超えて含まれると溶接性が劣
化するので、その範囲を0.030%以下とした。特に
大入熱溶接特性を十分確保する場合、0.005%以下
が好ましい。
【0024】S:Sは鋼材の靭性や耐候性を劣化させる
不可避的不純物であり、少ないほど好ましい。特に0.
01%を超えて含まれると介在物が増加すると共に、継
手部フェライト相の靭性を著しく劣化させるので、その
範囲を0.01%以下とした。十分な耐候性を確保する
ためには、0.005%以下が好ましい。
【0025】Cr:CrはFeよりも卑な金属のため、
数%の添加では海塩粒子の多い環境中での耐候性を阻害
するほか、溶接性を阻害するため、少なければ少ないほ
どよい。0.1%以下であれば、耐候性や溶接性への阻
害作用はほぼ無視できるので、その範囲を0.1%以下
とした。
【0026】Ca,Mg:CaおよびMgは必要に応じ
て添加するものであり、これらを添加すると、鋼中に酸
化物または硫化物として存在し、地鉄から溶出すること
により、Ca(OH)2 やMg(OH)2 などを形成し
て、さびコロイド粒子生成初期の成長を抑制するため、
さび粒子の微細析出、凝集を促進する。その効果は0.
0005%以上の添加で有効であり、0.0100%で
飽和するので、それらの元素の範囲を0.0005%〜
0.0100%とした。
【0027】REM:REMも必要に応じて添加するも
のであり、介在物の形態を制御して板厚方向の引張特性
を改善し、ラメラーティアの軽減や低温靭性の向上に有
効である。このために0.0005%以上含有するが、
添加量が多すぎると介在物が増加するため、上限を0.
0100%とした。
【0028】Mo,W:MoおよびWは、必要に応じて
0.1%以上添加すると地鉄から溶出したのち、モリブ
デン酸およびタングステン酸を生成し、さび粒子表面に
吸着して凝集したさび粒子間で生じた空隙を負電荷過剰
として、Clイオンや硫酸イオンなどの陰イオンの地鉄
界面への浸透を抑制し、耐候性または安定さびを形成す
る限界飛来海塩粒子量をさらに向上させる作用がある
が、その効果は1.0%で飽和する。それゆえ、耐候性
の向上を優先する場合には、0.1〜1.0%が好まし
い。
【0029】また、Moは母材強度を上昇させる効果が
あり、厚手材、高強度材などに対して0.02%以上添
加するが、0.20%を超えて添加すると溶接継手部に
上部マルテンサイトや島状マルテンサイトなどを生成し
て、継手靭性を著しく低下する。それゆえ、溶接性を十
分に確保する場合は、0.020〜0.20%が好まし
い。
【0030】Nb,V,B:Nb,V,Bは、母材強度
を上昇させる効果があり、厚手材、高強度材に対して、
Nbは0.002%以上、Vは0.01%以上、Bは
0.0003%以上添加するが、いずれの元素も次の範
囲を超えて添加すると靭性が劣化するため、Nb:0.
02%以下、V:0.05%以下およびB:0.005
0%以下と限定した。
【0031】防食被覆:本発明鋼に、有機樹脂による塗
装、金属溶射、またはめっきを施して、塩害が懸念され
る大気環境で使用した場合、普通鋼や従来の耐候性鋼に
同様の防食被覆を施した場合に比べて遥かに優れた耐候
性、耐久性を示す。有機樹脂としては、エポキシ樹脂
系、フタル酸系、ウレタン樹脂系、ビニルブチラール樹
脂系およびその他の樹脂系でいずれも塗装耐久性が向上
する。
【0032】また、金属被覆では、Zn,Zn−Al,
Alめっきおよび溶射などで優れた耐候性を示す。いず
れの場合も、被覆層の微視的あるいは巨視的な欠陥から
地鉄の腐食が進行した際、Ni,Cuなどを含有した緻
密なさび層が形成され、それ以降の腐食の進展を抑制す
る。また、特開昭53−65232号公報、特開昭55
−97477号公報および特開昭55−97478号公
報などに開示されている耐候性鋼の初期さび汁流出防止
技術としてのさび安定化処理皮膜を本発明鋼に塗布する
ことにより、高海塩粒子環境でも初期さび汁を防止しな
がら、安定さびが形成される。
【0033】
【実施例】表1(表1−1)及び表2(表1−2)に示
す化学組成の鋼を溶製し、熱間圧延および必要に応じて
熱処理を施して厚さ25mmの厚鋼板を試作した。中入熱
溶接(50kJ/cm)および大入熱溶接(120kJ/cm)
で実継手を製作し、溶接継手部の靭性を−40℃でのシ
ャルピー衝撃試験の吸収エネルギーで評価した。
【0034】また、試作鋼の高海塩粒子環境での耐候性
を評価するために、千葉県富津市臨海部の4カ所で暴露
試験を1,3,7年実施した。なお、その暴露地点は、
離岸距離(平均飛来海塩粒子量)が各々地点V:5m
(1.3mdd)、地点W:50m(0.8mdd)、
地点X:200m(0.5mdd)、地点Y:800m
(0.2mdd)とした。
【0035】試作鋼の耐候性および適用限界飛来海塩粒
子量を次の評価で求めた。すなわち、さびの外観評点評
価、さびのイオン透過抵抗測定、腐食量から求めた平均
板厚減少量の3項目である。
【0036】さびの安定化の状況を、さび層の外観評点
1〜4で評価し、4が最も良く、安定さび形成を示し、
1が層状の剥離錆が認められ、さびの安定化および腐食
進展の防止が期待できない状態を示すという指標により
評価を行った。
【0037】さびのイオン透過抵抗測定では、交流イン
ピーダンス法によるさびのイオン透過抵抗値を測定し、
3kΩ以上で緻密な安定さび形成と判断した。平均板厚
減少量は、4カ所での腐食量−時間曲線から50年後の
推定板厚減少量を、平均板厚減少量と時間の両対数プロ
ット上で外挿して求め、無塗装橋梁使用の基準である腐
食量0.4mm/50年を無塗装使用可否の目安として、
4カ所の暴露試験結果から適用限界飛来海塩粒子量を求
めた。
【0038】表3(表2−1)及び表4(表2−2)
に、試作鋼の特性値、すなわち溶接性および海浜地区で
の耐候性を示す。表中、さび評点、イオン透過抵抗値
は、4カ所のうち飛来海塩粒子量が最も少ない地点Yに
おける評価結果である。
【0039】比較例A1〜A11は、それぞれC,S
i,Mn,P,Cu,Ni,Al,Ti,Nが過剰のた
め継手靭性値が低く、大入熱溶接性が悪い。また、比較
例C1〜C7は、C,S,Cu,Ni,Crが本発明の
範囲外のため、本発明例と比較すると耐候性が不十分で
ある。比較例C8は、従来の耐候性鋼(JIS G31
41 溶接構造用耐候性鋼板 SMA490)である
が、地点V〜Yの4カ所の中で最も飛来海塩粒子量が少
ない地点Yでも安定さびが形成されず、無塗装使用に適
さないことがわかる。
【0040】D1〜D40は本発明鋼の結果であり、い
ずれの試作鋼も地点Yの環境では、さび評点、イオン透
過抵抗および50年後の推定腐食量は、いずれの評価に
おいても優れた耐候性を有することがわかる。また、4
カ所の暴露試験結果から推定した限界海塩粒子量は、N
i添加量でほぼ分類できることがわかる。すなわち、環
境の年平均飛来海塩粒子量が (1)0.05〜0.2mg/100cm2 /dayの場合、
1.0〜2.5%Ni添加が好ましい。 (2)0.2〜0.5mg/100cm2 /dayの場合、2.
5〜3.5%Ni添加が好ましい。 (3)0.5〜0.8mg/100cm2 /dayの場合、2.
5〜5.5%Ni添加が好ましい。
【0041】表5(表3)に、試作鋼に有機樹脂塗装を
施し、表面にカッタナイフで1片70mmのクロスカット
傷をつけて地点V(年平均飛来海塩粒子量1.3md
d)に5年間暴露し、クロスカットからの最大塗膜膨れ
幅(塗膜下腐食の最大進展幅)を評価して、塗装した試
作鋼の当該環境における耐候性の評価を示した。
【0042】耐候性向上に必要な成分が本発明範囲外で
ある比較例C1〜C8に塗装した供試材は、いずれも最
大膨れ幅が最小のものでも32mmであり、本発明例D1
〜D40に塗装した供試材は、最大のものでも14mmで
あることから、本発明鋼が塗装を施して使用しても、優
れた耐候性を有することがわかる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【発明の効果】上記実施例からも明らかなように、本発
明は海浜地区や融雪塩の散布などにより塩害が懸念され
る地区における橋梁、鉄塔をはじめとする鋼構造物に対
して、構造用鋼材として必須特性である溶接性と高飛来
海塩粒子でも安定したさびを形成して優れた耐候性を共
に有する鋼材を提供するものであり、また、無塗装使用
および塗装使用においても優れた耐候性を有することか
ら、いずれの使用方法でも鋼構造物の維持管理費の低減
を可能とする。産業上その効果は極めて顕著である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.03〜0.15%、 Si:0.05〜0.55%、 Mn:0.3〜2.0%、 Cu:0.30〜1.00%、 Ni:1.0〜5.5%、 Al:0.010〜0.090%、 N :0.0010〜0.0070% を含有し、さらに不可避的に、 P :0.030%以下、 S :0.010%以下、 Cr:0.1%以下 を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなること
    を特徴とする高溶接性高耐候性鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の鋼に、さらに重量%
    で、 Ti:0.005〜0.02% を含有し、かつTiとNの比が2.0≦Ti/N≦3.
    5であることを特徴とする高溶接性高耐候性鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の鋼に、さらに
    重量%で、 Ca:0.0005〜0.0100%、 Mg:0.0005〜0.0100%、 REM:0.0005〜0.0100% の1種または2種以上を含むことを特徴とする高溶接性
    高耐候性鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    鋼に、さらに重量%で、 Mo:0.1〜1.0%、 W :0.1〜1.0% の1種または2種を含むことを特徴とする高溶接性高耐
    候性鋼。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
    鋼に、さらに重量%で、 Nb:0.002〜0.020%、 V :0.01〜0.05%、 B :0.0003〜0.0050% の1種または2種以上を含むことを特徴とする高溶接性
    高耐候性鋼。
  6. 【請求項6】 表面に有機樹脂、金属または無機物の防
    食被覆を有することを特徴とする請求項1乃至5のいず
    れか1項に記載の高溶接性高耐候性鋼。
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