JPH11144848A - Ptc発熱体およびその製造方法 - Google Patents

Ptc発熱体およびその製造方法

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JPH11144848A
JPH11144848A JP31085397A JP31085397A JPH11144848A JP H11144848 A JPH11144848 A JP H11144848A JP 31085397 A JP31085397 A JP 31085397A JP 31085397 A JP31085397 A JP 31085397A JP H11144848 A JPH11144848 A JP H11144848A
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JP
Japan
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heating element
paste
polyethylene glycol
polyethylene oxide
solvent
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JP31085397A
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English (en)
Inventor
Shoichi Sugaya
昭一 菅谷
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Daito Tsushinki KK
Original Assignee
Daito Tsushinki KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好な安定したPTC特性が容易に得られ生
産性が向上する信頼性の高いPTC発熱体を提供する。 【解決手段】 絶縁性で柔軟性を有した基板2の一平面
上に、導電ペーストにて櫛形状の電極3,3を対向形成
する。電極3,3間にスクリーン印刷にてペーストを塗
布形成して加熱硬化し、発熱部5を形成する。ペースト
は、カーボンブラックと、ポリエチレングリコールと、
ポリエチレンオキサイドと、溶剤とを混合した導電ペー
ストに架橋剤を混合して調製する。発熱部5上に絶縁性
で柔軟性の保護層を被覆形成する。比較的低い結晶融点
で結晶化度が高く良好なPTC特性を示し分子量が異な
る2種類の結晶性高分子化合物を混合するため、溶剤量
を減少できる。ペースト状態で長期間安定した性状に維
持でき、安定した特性の発熱部5を形成する製造工程を
簡略化できる。略均一な組成で架橋でき結晶性を向上で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶性高分子化合
物に導電性粒子が分散された正の抵抗温度係数(Positi
ve Temperature Coefficient:PTC)を示すPTC組
成物を用いたPTC発熱体およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、一定の温度範囲で抵抗値が急激に
上昇するPTC組成物を用いた発熱体は、通電により一
定の温度範囲に達すると、PTC特性により抵抗値が急
激に上昇し電流を低減させることにより一定の発熱温度
に保たれるため、温度制御性が良好で通常の発熱体のよ
うな温度制御回路が不要となるとともに、一定の温度に
達するまでの時間が短いなどの優れた特性を有するた
め、様々な分野で広く用いられている。なお、PTC組
成物を構成する材料として、セラミックス系のものと高
分子系のものが知られているが、セラミックス系のもの
は硬くて脆く加工性が低いため、特に薄くて広い発熱面
積が要求されるような場合には高分子系のものが用いら
れている。
【0003】そして、高分子系のPTC組成物は、カー
ボンブラックなどの導電性粒子を結晶性高分子化合物に
分散させたもので、結晶融点における結晶性高分子化合
物の熱膨張により導電性粒子による導電パスを切り離す
ことでPTC特性を発現させるので、PTC特性の発現
する温度は結晶性高分子化合物の結晶融点と一致するこ
ととなる。
【0004】一方、高分子系のものでも結晶性ではなく
ガラス転移点以上の温度領域で熱膨張係数が大きくなる
高分子を用いたものも知られているが、PTC特性の立
ち上がりが緩やかであるため、抵抗値の増大により電流
を低下させる自己温度制御が結晶性高分子化合物を用い
たものに比して温度制御性が劣ることとなる。
【0005】このため、発熱体に用いる高分子系の材料
としては、所望の加熱温度に対応した融点を有する結晶
性高分子化合物を用いることが好ましく、その結晶化度
は大きい方がよい。
【0006】そこで、結晶性高分子化合物のPTC組成
物を用いた発熱体としては、例えば特開昭59−660
93号公報、特開昭59−110101号公報、特開昭
60−140692号公報、特開昭60−158586
号公報、特開昭62−65401号公報、および、特開
平2−72580号公報などに記載のように、加熱溶解
したポリエチレングリコールにグラファイトを攪拌混合
して型に流し込んで形成する構成が知られている。
【0007】しかしながら、これら特開昭59−660
93号公報、特開昭59−110101号公報、特開昭
60−140692号公報、特開昭60−158586
号公報、特開昭62−65401号公報、および、特開
平2−72580号公報などに記載の発熱体では、ポリ
エチレングリコールを加熱溶解させてグラファイトと攪
拌混合するため製造性の向上が図れない。また、長期使
用においては、信頼性を向上させるために高分子成分を
架橋させる必要があるが、その架橋方法についての記載
はない。
【0008】また、結晶性高分子化合物のPTC組成物
を用いた発熱体として、例えば特開昭61−18185
9号公報や特開昭61−181860号公報などに記載
のように、分散工程の効率化のためにカーボンブラック
とポリエチレンオキサイドとを加熱混練して形成する構
成が知られている。
【0009】しかしながら、これら特開昭61−181
859号公報や特開昭61−181860号公報などに
記載の発熱体では、カーボンブラックとポリエチレンオ
キサイドとを加熱混練するため、分散の点では生産性の
向上が可能であるが、効率的な印刷を行うためのペース
ト化や、信頼性を向上させるための架橋についての記載
はない。
【0010】さらに、結晶性高分子化合物のPTC組成
物を用いた発熱体として、例えば特開平2−17217
9号公報などに記載のように、ポリエチレンオキサイド
をトルエンに溶解して黒鉛を混合した溶液を型に流し込
んで乾燥し形成する構成が知られている。
【0011】しかしながら、この特開平2−17217
9号公報などに記載の発熱体では、ポリエチレンオキサ
イドの溶解度が低いトルエンを用いるため、トルエンの
配合割合が非常に多くなり、印刷に適した粘度を持つペ
ーストが得られず、生産性の向上が図れない。
【0012】一方、結晶性高分子化合物のPTC組成物
を用いた発熱体として、例えば特開昭62−15615
9号公報などに記載のように、結晶性高分子化合物の溶
解度が低いアセトニトリルや、結晶性高分子化合物との
溶解度は高いが沸点が比較的低い塩化エチレン、クロロ
ホルム、トリクロルエチレン、塩化メチレンなどの溶剤
にポリエチレングリコールなどの結晶性高分子化合物を
溶解させて導電性粒子を混合したペースト状とし、有機
過酸化物や放射線により結晶性高分子化合物を架橋して
発熱部を形成する構成が知られている。
【0013】しかしながら、この特開昭62−1561
59号公報などに記載の発熱体では、比較的低沸点の溶
剤を用いているため、ペースト状に調整して塗布形成す
るまでに溶剤が揮発してしまい、安定した粘性に保持す
ることが煩雑であるとともに、ペースト状態での長期間
の保存が困難で、製造性の向上が図りにくい。また、放
射線により架橋する場合には、特別な設備が必要で製造
工程も複雑となるため、生産性の向上が図りにくい。さ
らに、架橋させる際に有機過酸化物を用いたのでは、結
晶性高分子化合物の主鎖中でランダムに架橋するおそれ
があり、結晶性が低下し、安定した良好なPTC特性が
得られにくくなる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、例え
ば特開昭59−66093号公報、特開昭59−110
101号公報、特開昭60−140692号公報、特開
昭60−158586号公報、特開昭62−65401
号公報、特開平2−72580号公報、特開昭61−1
81859号公報、および、特開昭61−181860
号公報などに記載の結晶性高分子化合物を架橋させない
発熱体では、安定した良好な特性が得られない。また、
特開平2−172179号公報や特開昭62−1561
59号公報などに記載の比較的低沸点で結晶性高分子化
合物の溶解度が低い溶剤を用いる発熱体では、良好な発
熱部が形成しにくく、安定した良好な特性が得られない
とともに、製造性の向上が図れない。さらに、特開昭6
2−156159号公報などに記載の低沸点の溶剤を用
いてペースト状とし有機過酸化物や放射線により架橋さ
せる発熱体では、良好な発熱部が形成しにくく、安定し
た良好な特性が得られないとともに、製造性の向上が図
れない。
【0015】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもの
で、良好な安定したPTC特性が容易に得られ生産性が
向上する信頼性の高い発熱体およびその製造方法を提供
することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のPTC発
熱体は、絶縁性の基板と、この絶縁性の基板上に設けら
れた少なくとも一対の電極と、導電性粒子、ポリエチレ
ングリコール、ポリエチレンオキサイド、これらポリエ
チレングリコールおよびポリエチレンオキサイドを溶解
させる溶剤、および、前記ポリエチレングリコールおよ
び前記ポリエチレンオキサイドを反応させる架橋剤を含
有したペーストが前記一対の電極に跨がって塗布され硬
化処理されて形成された発熱部と、この発熱部を覆って
設けられた絶縁性の保護層とを具備したものである。
【0017】そして、絶縁性の基板上に設けた少なくと
も一対の電極に跨がって、導電性粒子、ポリエチレング
リコール、ポリエチレンオキサイド、溶剤、および、架
橋剤を混合したペーストを塗布して硬化処理し発熱部を
形成し、この発熱部上に保護層を被覆形成する。ここ
で、発熱部は、比較的に結晶化度が高く、比較的低い結
晶融点のポリエチレングリコールおよびポリエチレンオ
キサイドを含有するペーストにて形成されるため、比較
的低い温度で良好なPTC特性が得られる。そして、分
子量が比較的小さいポリエチレングリコールと分子量が
比較的大きいポリエチレンオキサイドとを適宜混合する
ため、比較的少量の溶剤でも、塗布工程が容易な粘性を
有するとともに、長期間保管においても固化することな
く塗布形成に適した粘性が維持されるペーストが得ら
れ、塗布形成の際にペーストの性状調整が不要となり、
製造中の溶剤の揮発量も少なくなり、製造工程が簡略化
して生産性が向上する。また、溶剤の使用量が少なくな
るため、例えば溶剤の揮発により形成した発熱部の厚さ
寸法が略均一となり、安定した特性が得られる。さら
に、ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサ
イドを架橋剤にて架橋させることにより、略均一な組成
で架橋して結晶性が向上し、長期間にわたって良好なP
TC特性が得られるとともに、比較的高い電圧が印加さ
れても損傷せず、特性がばらつかないで信頼性が向上す
る。また、発熱部は絶縁性の保護層にて保護された状態
であるため、水分や酸素などによる発熱部の化学的劣化
や外部からの応力などによる物理的損傷などが防止され
るとともに、一対の電極間に電圧を印加した際に周辺部
分への漏電などが防止される。
【0018】請求項2記載のPTC発熱体は、請求項1
記載のPTC発熱体において、ポリエチレングリコール
およびポリエチレンオキサイドは、結晶融点が60℃以
上となる分子量であるものである。
【0019】そして、ポリエチレンオキサイドの60℃
以上の結晶融点に対応してポリエチレングリコールの分
子量を結晶融点が60℃以上となるように設定すること
により、PTC特性の発現により発熱する発熱温度の変
動範囲が狭くなり、安定した温度での発熱が可能とな
る。
【0020】請求項3記載のPTC発熱体は、請求項1
または2記載のPTC発熱体において、架橋剤は、イソ
シアネート化合物であるものである。
【0021】そして、架橋剤としてイソシアネート化合
物を用いるため、イソシアネート化合物のイソシアネー
ト基がポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキ
サイドの末端に存在する水酸基と反応し、耐熱性に優れ
た化学結合が得られ、PTC特性の発現による発熱時の
損傷が防止されるとともに、ポリエチレングリコールお
よびポリエチレンオキサイドの分子末端の官能基である
水酸基を基点として反応するので、分子主鎖中でランダ
ムに結合点が形成されて結晶性が低下することが防止さ
れ、良好な安定したPTC特性が容易に得られる。
【0022】請求項4記載のPTC発熱体は、請求項1
ないし3いずれか一記載のPTC発熱体において、溶剤
は、ハロゲン化アリールであるものである。
【0023】そして、沸点が比較的高く、ポリエチレン
グリコールおよびポリエチレンオキサイドの溶解性が高
いハロゲン化アリールを溶剤に用いるため、長期間安定
した性状のペーストが得られるとともに、発熱部の塗布
形成の際の溶剤の揮発が少ないので、製造工程における
作業性が向上し、生産性が向上する。また、ポリエチレ
ングリコールおよびポリエチレンオキサイドや架橋剤と
反応する反応基を有しないとともに、疎水性で水分をほ
とんど吸収しないため、ポリエチレングリコールおよび
ポリエチレンオキサイドの架橋が阻害されないので、結
晶性が向上し、発熱部の良好な組成が得られ、安定した
良好なPTC特性が得られ、信頼性が向上する。
【0024】請求項5記載のPTC発熱体は、請求項3
または4記載のPTC発熱体において、イソシアネート
化合物は、イソシアネート基を複数有したものである。
【0025】そして、架橋剤として、イソシアネート基
を複数有したイソシアネート化合物を用いるため、ポリ
エチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドの架
橋が複数方向に進行して2次元的あるいは3次元的に架
橋するので安定した構造の発熱部が得られ、良好な安定
したPTC特性が容易に得られる。
【0026】請求項6記載のPTC発熱体は、請求項1
ないし5いずれか一記載のPTC発熱体において、基板
および保護層は、柔軟性部材にて形成されたものであ
る。
【0027】そして、基板および保護層を柔軟性部材に
て形成するため、加工性が向上し、異形状の発熱面に変
形可能で、汎用性が向上する。
【0028】請求項7記載のPTC発熱体は、請求項1
ないし6いずれか一記載のPTC発熱体において、電極
は、交互に対向する櫛形状に形成されたものである。
【0029】そして、一対の電極を交互に対向する櫛形
状に形成に形成するため、発熱部の全体の温度分布が容
易に略均一となり、容易に広い発熱面が得られる。
【0030】請求項8記載のPTC発熱体の製造方法
は、絶縁性の基板上に少なくとも一対の電極を設け、こ
の電極が設けられた絶縁性の基板上に導電性粒子、ポリ
エチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、これら
ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイド
を溶解させる溶剤、および、前記ポリエチレングリコー
ルおよび前記ポリエチレンオキサイドを反応させる架橋
剤を含有したペーストを前記電極間に跨がって塗布して
硬化させ、前記ペースト上に絶縁性の保護層を被覆形成
するものである。
【0031】そして、絶縁性の基板上に設けた少なくと
も一対の電極に跨がって、導電性粒子、ポリエチレング
リコール、ポリエチレンオキサイド、溶剤、および、架
橋剤を混合したペーストを塗布し硬化して発熱部を形成
し、この発熱部上に保護層を被覆形成する。ここで、発
熱部は、比較的に結晶化度が高く、比較的低い結晶融点
のポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイ
ドを含有するペーストにて形成されるため、比較的低い
温度で良好なPTC特性が得られる。そして、分子量が
比較的小さいポリエチレングリコールと分子量が比較的
大きいポリエチレンオキサイドとを適宜混合するため、
比較的少量の溶剤でも、塗布工程が容易な粘性を有する
とともに、長期間保管においても固化することなく塗布
形成に適した粘性が維持されるペーストが得られ、塗布
形成の際にペーストの性状調整が不要となり、製造中の
溶剤の揮発量も少なくなり、製造工程が簡略化して生産
性が向上する。また、溶剤の使用量が少なくなるため、
例えば溶剤の揮発により形成した発熱部の厚さ寸法が略
均一となり、安定した特性が得られる。さらに、ポリエ
チレングリコールおよびポリエチレンオキサイドを架橋
剤にて架橋させることにより、略均一な組成で架橋して
結晶性が向上し、長期間にわたって良好なPTC特性が
得られるとともに、比較的高い電圧が印加されても損傷
せず、特性がばらつかないで信頼性が向上する。また、
発熱部は絶縁性の保護層にて保護された状態であるた
め、水分や酸素などによる発熱部の化学的劣化や外部か
らの応力などによる物理的損傷などが防止されるととも
に、一対の電極間に電圧を印加した際に周辺部分への漏
電などが防止される。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明のPTC発熱体の実
施の一形態を図面を参照して説明する。
【0033】図1において、1は発熱体で、この発熱体
1は薄くて発熱面積が広い面状に形成されている。そし
て、発熱体1は、絶縁性で柔軟性を有する材料、例えば
ポリエチレンテレフタレートなどにて薄板状に形成され
た基板2を備えている。ここで、基板2は、絶縁性およ
び柔軟性を有し、結晶性高分子化合物を用いてPTC特
性を発現させる発熱体1における発熱温度となる60℃
程度で変性しない耐熱性を有し、さらに、水分やガスの
透過率が低く、安価で入手しやすい材料であるポリエチ
レンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0034】また、基板2の一平面上には、図1ないし
図3に示すように、例えば導電ペーストにてスクリーン
印刷などにより一対の電極3,3が設けられている。そ
して、これら電極3,3は、略平行に帯状の電極部3aが
基板2の長手方向の両側縁にそれぞれ位置して対向する
ように設けられ、これら電極部3aの一縁から対向方向に
沿って細長帯状の帯状部3bが交互に対向するように突出
した状態に設けられて櫛形状に形成されている。なお、
一対の電極3,3は、例えば金属箔をエッチング処理す
るなどして設けてもよいが、導電性ペーストのスクリー
ン印刷により形成する方法が製造工程が簡略で生産性が
向上する点で好ましい。
【0035】そして、電極3,3の電極部3a,3aの一端
部側には、ラグ端子などの端子4がかしめなどによりそ
れぞれ一体的に設けられている。
【0036】さらに、基板2の電極3,3が設けられた
表面には、図1に示すように、電極3,3が設けられて
いる領域に一対の電極3,3の帯状部3b,3b間に跨がる
ように、ペーストが例えばスクリーン印刷により膜状に
塗布され加熱による硬化処理にて形成された発熱部5が
設けられている。この発熱部5を形成するペーストは、
導電性粒子である例えばカーボンブラックと、比較的低
い結晶融点で結晶化度が高く良好なPTC特性が得られ
る結晶性高分子化合物であるポリエチレングリコールお
よびポリエチレンオキサイドと、溶剤とが混合された導
電ペーストに架橋剤が混合されてペースト状に調製され
たものである。
【0037】そして、ポリエチレングリコールおよびポ
リエチレンオキサイドは、ロールミル、加圧ニーダ、バ
ンバリーミキサなどにより調合したり、溶液重合による
グラフト化により配合比を調整してもよい。ここで、ポ
リエチレングリコールは、入手が容易な最大平均分子量
は約2万程度で、分子量が多くなるにしたがって結晶融
点が高くなり、平均分子量が6000以上の範囲では結
晶融点が60℃強で飽和する。一方、ポリエチレンオキ
サイドは、ポリエチレングリコールと化学的に同じ構造
を示すが製造方法が異なり、一般的に入手が容易な平均
分子量は10万以上のものであるが、結晶融点は60℃
強であり、平均分子量が6000以上のポリエチレング
リコールと略同範囲である。
【0038】このため、PTC特性の発現により発熱部
5が発熱する発熱温度の変動範囲を狭く設定するために
は、ポリエチレングリコールの平均分子量は、結晶融点
が60℃強となるポリエチレンオキサイドに対応して結
晶融点が60℃強となるように6000以上、好ましく
は2万程度のものを用いる。
【0039】また、入手が容易なポリエチレングリコー
ルの最大平均分子量は2万程度であるので、ポリエチレ
ングリコールのみを溶剤に溶解させた場合、粘性が低
く、特に発熱部5を成形する際のペーストの印刷に必要
な十分な粘性とならず、製造工程が煩雑となり、生産性
の向上が図れなくなる。一方、ポリエチレンオキサイド
を単独で溶剤に溶解させると、多量の溶剤を用いること
により例えば印刷形成に必要な粘性が得られるが、その
後の加熱硬化処理で多量の溶剤が揮発するために十分な
膜厚や均一な構造を得ることが困難になり、良好なPT
C特性が得られなくなる。このため、ポリエチレングリ
コールおよびポリエチレンオキサイドの双方を用いて、
適正な粘性を得るとともに溶剤の使用量を低減する。
【0040】そして、ポリエチレングリコールおよびポ
リエチレンオキサイドの配合比は、それぞれの平均分子
量にて設定され、例えばポリエチレングリコールの平均
分子量が2万程度で、ポリエチレンオキサイドの平均分
子量が20〜30万程度の場合、ポリエチレンオキサイ
ドの配合比は、ポリエチレングリコールに対して約10
〜70重量%である。なお、最適な配合比は、溶剤の添
加量によって変動するが、例えばポリエチレングリコー
ルおよびポリエチレンオキサイドの総重量が1gで溶剤
が2.5〜5mlである場合、ポリエチレンオキサイドの
ポリエチレングリコールに対する配合比は、約20〜5
0重量%である。
【0041】一方、ポリエチレングリコールおよびポリ
エチレンオキサイドを溶解させてペースト化する溶剤と
しては、ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオ
キサイドの溶解度および沸点が高く、ポリエチレングリ
コールおよびポリエチレンオキサイドの架橋を阻害せ
ず、また水分も架橋を阻害するため水分を吸収しない疎
水性のもの、例えば沸点が132℃のモノクロルベンゼ
ン、沸点が180℃のo−ジクロルベンゼン、沸点が1
73℃のm−ジクロルベンゼン、沸点が159℃のo−
ジクロルトルエン、沸点が162℃のp−クロルトルエ
ンなどのハロゲン化アリールを用いる。そして、溶剤の
添加量は、ポリエチレングリコールおよびポリエチレン
オキサイドの総和の1g当たり10ml以下、好ましくは
8ml以下、さらに好ましくは5ml以下とする。なお、こ
の程度の添加量で、ポリエチレングリコールおよびポリ
エチレンオキサイドの配合比により適正な粘性の導電ペ
ーストが得られる。さらに、導電ペースとが長期室温状
態で固化することなく安定した性状で保存可能な溶剤の
添加量は、2.5ml以上である。したがって、溶剤の添
加量は、2.5ml以上5ml以下に設定することが特に好
ましい。
【0042】また、架橋剤は、ポリエチレングリコール
およびポリエチレンオキサイド主鎖にランダムな結合点
を生じさせないように架橋を進行させる例えばイソシア
ネート化合物が好ましい。すなわち、ポリエチレングリ
コールおよびポリエチレンオキサイドの末端に存在する
水酸基と加熱により反応して耐熱性に優れた化学結合を
形成するイソシアネート基を有したイソシアネート化合
物が主鎖に結合点を形成することにより結晶性が低下し
てPTC特性が低下することを防止するため好ましい。
また、イソシアネート化合物としては、イソシアネート
基を2個有するジイソシアネート、あるいは3個のイソ
シアネート基を有するトリイソシアネートは、架橋が2
次元的あるいは3次元的に進行し、特にトリイソシアネ
ートではトリイソシアネートを中心として3方向に架橋
が進行して安定した3次元網状構造のマトリックスを形
成して発熱部5の安定した組成が得られてPTC特性が
安定し、信頼性が向上する点で好ましい。
【0043】なお、このイソシアネート化合物を架橋剤
として用いる場合、イソシアネート基と反応するアミノ
基や水酸基などの官能基を有する溶剤を用いると、溶剤
とイソシアネート化合物とが反応してポリエチレングリ
コールおよびポリエチレンオキサイドの架橋が阻害され
てしまうため、これらイソシアネート化合物と反応しな
い溶剤を選択しなければならない。そして、上述したハ
ロゲン化アリールは、架橋を阻害する水分をほとんど吸
収しない疎水性で、かつ、イソシアネート基と反応する
官能基を有しない点でも良好な溶剤となる。
【0044】そして、カーボンブラックと、ポリエチレ
ングリコールおよびポリエチレンオキサイドと、溶剤と
が混合された導電ペーストに架橋剤が混合されて調整さ
れたペーストにより発熱部5を形成する方法としては、
スクリーン印刷、メタルマスクを用いたマスキング印
刷、ロール転写、ドクターブレード法、刷毛塗りなどの
種々の方法でもよいが、生産性および塗布工程の安定性
の点から、スクリーン印刷が好ましい。このペーストの
塗布後に加熱して架橋を進行させて硬化させることによ
り、発熱部5が形成される。
【0045】また、基板2上に設けられた発熱部5の表
面には、図示しない絶縁性の材料にて保護層が膜状に被
覆形成されている。なお、この保護層を形成する材料と
しては、特に基板を柔軟性の材料にて形成して可撓性を
持たせる場合には、柔軟性を有しているものが好まし
い。また、通水・通湿性や吸水・吸湿性を有しないもの
を用いる。さらに、ペーストによる印刷形成やラミネー
ト形成など、いずれの方法でもよい。
【0046】次に、上記実施の一形態の製造工程につい
て説明する。
【0047】まず、カーボンブラックと、所定の分子量
のポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイ
ドと、溶剤としてのハロゲン化アリールとを所定の配合
割合で例えばロールミル、加圧ニーダ、バンバリーミキ
サなどにより混合してペースト状の導電ペーストを調製
する。さらに、この導電ペーストに架橋剤を所定の配合
割合で混合してペーストを調製する。
【0048】一方、図2および図3に示すように、あら
かじめ例えばポリエチレンテレフタレートなどにてシー
ト状に形成された基板2の一平面上に、導電ペーストに
てスクリーン印刷して櫛形状の一対の電極3,3を対向
して設ける。
【0049】そして、調製したペーストを電極3,3が
設けられた基板2の表面に、電極3,3が設けられてい
る領域に一対の電極3,3の帯状部3b,3bに跨がってス
クリーン印刷などにより膜状に塗布し、例えば架橋剤と
してトリイソシアネートを用いる場合には加熱して硬化
させ、発熱部5を形成する。なお、この加熱条件は、使
用する架橋剤により適宜設定する。
【0050】この後、発熱部5の表面にこの発熱部5を
覆うように保護層を塗布形成し、電極3,3の電極部3
a,3aに端子であるラグ端子4,4を設けて発熱体1を
形成する。
【0051】次に、上記実施の一形態の発熱動作を説明
する。
【0052】まず、発熱体1を所定の位置に取り付け、
端子4に電力供給線を接続する。なお、取り付ける位置
が湾曲する場合には、湾曲面に沿って発熱体1を湾曲変
形して取り付ける。
【0053】そして、電力供給線を介して電圧を電極
3,3に印加する。この電圧の印加により、発熱部5の
温度が上昇し、発熱部5を構成するポリエチレングリコ
ールおよびポリエチレンオキサイドの結晶融点である6
0℃程度に上昇すると、発熱部5の抵抗値が上昇して電
流量が低下することで電力が低下した後、一定の電力に
保たれるようになる。その結果、さらなる温度上昇が抑
制され、温度が一定となる。
【0054】上述したように、上記実施の一形態は、比
較的低い結晶融点で結晶化度が高く良好なPTC特性が
得られ溶剤と長期間安定して保存可能な、分子量が比較
的小さいポリエチレングリコールと分子量が比較的大き
いポリエチレンオキサイドとを適宜混合するため、溶剤
の添加量を少なくでき、長期間安定した特に印刷形成に
良好な粘性が得られる。このため、導電ペースととして
長期間安定した性状で保存できるとともに、例えば加熱
硬化による発熱部5の形成の際の溶剤の揮発量が少なく
なるので、膜状に発熱部5を形成した際の十分な膜厚が
得られ、膜厚が不均一となることによる特性のばらつき
を防止できるなど、安定した特性の発熱部5を形成する
製造工程を簡略化でき、生産性を向上できる。
【0055】また、ポリエチレンオキサイドの60℃以
上の結晶融点に対応してポリエチレングリコールの分子
量を結晶融点が60℃以上となるように設定することに
より、PTC特性の発現により発熱する発熱温度の変動
範囲を狭くでき、安定した特性が得られ、信頼性を向上
できる。そして、例えばポリエチレングリコールやポリ
エチレンオキサイドを分子量の異なる複数種類を混合し
て配合することにより、発熱部5の発熱温度域も可変で
き、一定となる発熱温度が異なる複数種類の発熱体1も
形成可能となる。
【0056】さらに、ポリエチレングリコールおよびポ
リエチレンオキサイドの配合比を適宜可変することによ
り、溶剤の添加量を可変できるとともに粘性を可変で
き、発熱部5の形成の際のペーストの塗布形成方法に容
易に対応でき、製造性を向上できる。
【0057】また、溶剤として、沸点が比較的高くポリ
エチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドの溶
解性が高く、かつ、ポリエチレングリコールおよびポリ
エチレンオキサイドや架橋剤と反応する反応基を有しな
いとともに疎水性で水分をほとんど吸収しないハロゲン
化アリールを溶剤に用いることにより、発熱部5の塗布
形成時などの溶剤の揮発を抑制でき、作業性を向上でき
るとともに、保存状態管理が容易で室温でも長期間安定
した性状のペーストが得られる。そして、ポリエチレン
グリコールおよびポリエチレンオキサイドの架橋が阻害
されないので、架橋が確実に進行し、結晶性を向上でき
安定した良好なPTC特性が得られ、信頼性の高い発熱
体1が得られる。また、塗布形成の際の揮発が少なくな
るため揮発する溶剤を回収する装置や空気清浄機などを
簡略化できるなど、製造工程も簡略化できる。
【0058】そして、ポリエチレングリコールおよびポ
リエチレンオキサイドを架橋剤にて架橋させるため、長
期間にわたって比較的高い電圧が印加されても発熱部5
が損傷することを防止でき、特性がばらつかないので信
頼性を向上できる。
【0059】また、架橋剤としてイソシアネート化合物
を用いることにより、イソシアネート化合物のイソシア
ネート基がポリエチレングリコールおよびポリエチレン
オキサイドの末端に存在する水酸基と反応し、耐熱性に
優れた化学結合が得られ、PTC特性の発現による発熱
時の損傷を防止できる。さらに、ポリエチレングリコー
ルおよびポリエチレンオキサイドの主鎖中でランダムに
結合点が形成されて結晶性が低下することを防止でき、
良好な安定したPTC特性が容易に得られる。そして、
イソシアネート化合物としてイソシアネート基を複数有
する例えばジイソシアネートやトリイソシアネートを用
いることにより、イソシアネート化合物を中心として複
数方向に架橋を進行でき、2次元的あるいは3次元的な
安定した網目構造の発熱部5が得られ、良好な安定した
PTC特性が容易に得られ、信頼性を向上できる。
【0060】そして、導電ペーストに架橋剤を混合して
ペーストを調製し、このペーストをスクリーン印刷によ
り塗布形成して発熱部5を形成するため、例えばPTC
特性を発現する発熱部を容易に効率よく膜状に形成で
き、生産性を向上できるとともに、容易に薄くて発熱面
積の広い発熱体を形成できる。
【0061】また、発熱部5を絶縁性の保護層にて保護
するため、水分や酸素などによる発熱部の化学的劣化や
外部からの応力などによる物理的損傷などを防止できる
ともに、一対の電極3,3間に電圧を印加した際に周辺
部分への漏電などを防止できる。
【0062】そして、基板2および保護層を柔軟性の材
料にて形成することにより、発熱体1を変形可能に形成
でき、発熱体1の取付個所が平面でなくても容易に取り
付けでき、汎用性を向上できる。
【0063】また、電極3,3を櫛形状に交互に対向さ
せて形成したため、発熱部5の全体に略均一に電流が流
れて、容易に広い発熱面が得られるとともに、広い発熱
面でも温度分布を容易に略均一にできる。
【0064】なお、上記実施の形態において、基板2を
例えばポリエチレンテレフタレートなどの柔軟性を有す
る材料にて形成したが、例えば絶縁性を有し硬質で高い
耐熱性を有するセラミックスを用いるなど、絶縁性であ
ればいずれの材料にて形成してもよい。
【0065】そして、導電性粒子としては、カーボンブ
ラックに限らず、グラファイト、ファーネスブラック、
カーボンファイバ、カーボンビーズ、金属酸化物などの
半導体である導電性を有したセラミックス、純金属や合
金または金属をコーティングした金属粒子など、いずれ
のものでもよく、またこれら導電性粒子を適宜組み合わ
せて用いてもよい。
【0066】また、溶剤は、ハロゲン化アリールに限ら
ず、沸点が比較的高くポリエチレングリコールおよびポ
リエチレンオキサイドの溶解度が比較的高く、架橋を阻
害しないいずれのものでもよい。
【0067】さらに、架橋剤は、イソシアネート化合物
に限らず、ポリエチレングリコールおよびポリエチレン
オキサイドを良好に架橋させるいずれのものでもよい。
【0068】また、基板2に電極3,3を設けた後に発
熱部5を形成して説明したが、基板2に発熱部5を形成
した後、電極3,3を設けてもよい。
【0069】さらに、電極3,3は、櫛形状に限らず、
いずれの形状でもよい。
【0070】また、電極3,3に端子4を設けて説明し
たが、例えばリード線などを半田などにて直接接続した
り、使用時に所定の箇所に取り付けた発熱体1に別途電
力供給線に端部に設けたクリップ状の端子を電極に挟持
させるように接続するなどしてもよい。
【0071】
【実施例】次に、上記実施の形態に基いて各種発熱体1
を形成し、特性を測定した。
【0072】ここで、まず、カーボンブラック(旭カー
ボン株式会社製 商品名:旭#60H)と、ポリエチレング
リコール(MERCK-Scnehard社製 商品名:PEG20000、平
均分子量は2万)と、ポリエチレンオキサイド(明成化
成工業株式会社製 商品名:アルコックスR-1000 平均
分子量は25〜30万)とを、それぞれ重量比で36:
60:40で約80℃に加熱したロールミルを用いて1
5分間混練してPTC組成物を調製する。そして、この
混練後の溶融状態のPTC組成物を、ポリエチレングリ
コールおよびポリエチレンオキサイドの総和である高分
子成分1gに対して約3mlの溶剤であるo−ジクロルベ
ンゼンを入れた容器に投入し、加熱しつつヘラで練って
ペースト状とした。なお、ヘラによる加熱混練の際に揮
発して失われるo−ジクロルベンゼンは、全体の重量を
測定しつつ初めの溶剤量が保たれるように適宜添加して
補った。
【0073】そして、目視により完全に溶解したと判断
した後、室温程度まで冷却した。この後、全体の重量を
測定し、高分子成分1gに対してo−ジクロルベンゼン
が3.5mlとなるように添加し、導電性ペーストを調製
し、密閉容器に2日間保存した。
【0074】また、架橋剤であるトリイソシアネート
(大日本インキ化学工業株式会社製商品名:バーノック
D-750 )をo−ジクロルベンゼン10mlに対して2gを
溶解した溶液を調製し、この架橋剤を含有する溶液を、
2日間保存した後に秤量して分集した導電ペースト20
gに、高分子成分1gに対してトリイソシアネートが
0.1gとなるように添加し、ペーストを調製した。な
お、このペーストの溶剤であるo−ジクロルベンゼンの
含有量は約4mlとなる。
【0075】一方、縦寸法が148mm、横寸法が210
mm、厚さ寸法が0.125mmのポリエチレンテレフタレ
ートにてフィルム状に形成した基板2の一面に、導電ペ
ースト(藤倉化成株式会社製 商品名:ドータイトFA-3
53)を用いて櫛状の電極3,3を形成した。なお、電極
3,3は、電極部3aの幅寸法が8mm、長さ寸法が186
mm、厚さ寸法が約50μm、帯状部3bの幅寸法が0.6
mm、長さ寸法が118mm、厚さ寸法が約50μm、帯状
部3bの先端と電極部3aとの間隙が2mm、一方の電極3の
帯状部3b,3bのピッチが4mmとなるように形成した。
【0076】そして、別途調製した上述のペーストを、
電極3,3を形成した基板2上にスクリーン印刷にて塗
布し、80℃の恒温槽で1時間放置して、溶剤を揮発さ
せペーストを加熱硬化して発熱部5を形成した。なお、
この発熱部5は、縦寸法が約113mm、横寸法が186
mm、厚さ寸法が約0.1mmに形成した。そして、この発
熱部5のスクリーン印刷は、作業が煩雑とならず良好に
塗布形成できた。
【0077】さらに、電極3,3の電極部3a,3aに端子
4であるラグ端子をかしめによって取り付け固定する。
【0078】この後、縦横の寸法は基板2と同寸法で厚
さ寸法が0.1mmの一平面に変性低密度ポリエチレンが
コートされたポリエチレンテレフタレートを、変性低密
度ポリエチレン側が発熱部5に対向するように積層し、
加熱した珪素樹脂ロールにて熱圧着して保護層とし、面
状の発熱体1を形成した。
【0079】そして、作製した発熱体1の周囲温度を2
0℃から75℃に変化させた際の抵抗値の変化を測定し
た。その結果、60℃前後で急激に抵抗値が上昇し、約
62℃で最大抵抗値を示した。さらに、20℃の抵抗値
に対する最大抵抗値の上昇桁数は平均で3.6桁とな
り、十分なPTC特性が得られたことが認められた。
【0080】また、これら抵抗値の上昇確認試験に用い
た発熱体1を、交流電圧100Vで1時間程度の電圧エ
ージングを行い、最終的な発熱体1とした。なお、抵抗
値は平均で約64Ωであった。
【0081】この得られた発熱体1はロール状に丸め変
形させても、外観の異常は認められず、また丸め変形後
の抵抗値の変化もなく、良好な変形性が付与されている
ことが認められた。
【0082】そして、発熱体1を粘着剤が塗布された厚
さ寸法が1mmのステンレス板に貼り付け、交流電圧10
0Vを1670時間印加し、発熱体1の表面温度を測定
した。その結果、温度は55〜60℃で安定しており、
温度分布もほぼ均一であった。また、電圧印加後の抵抗
値を測定した結果、平均で約58Ωで、試験前の抵抗値
と同程度に維持され、長時間の使用でも安定した特定が
認められた。
【0083】次に、上記実験において調製したペースト
を密閉容器中内に室温で30日間保存し、この保存後の
ペーストを用いて上記実験と同様に発熱体1を形成し
た。そして、抵抗値を測定した結果、約50Ωで、上記
2日間保存したペーストを用いて形成した発熱体1の抵
抗値と同程度であった。また、交流電圧100Vを12
00時間印加し、発熱体1の表面温度を測定した。その
結果、温度は55〜60℃で安定しており、温度分布も
ほぼ均一であった。また、電圧印加後の抵抗値を測定し
た結果、平均で約48Ωで、試験前の抵抗値と同程度に
維持されていた。したがって、ペーストを長期保存して
も発熱部5のスクリーン印刷が同様に容易にでき、得ら
れた発熱体1の特性も劣化しないことが確認できた。
【0084】次に、上記実験に用いたペーストのポリエ
チレンオキサイドの代わりに、平均分子量が15〜40
万のポリエチレンオキサイド(住友精化株式会社製 商
品名:PE0-1 )を用い、それぞれ重量比で19.5:8
0:20で配合し、同様に調製して発熱体1を形成し
た。
【0085】そして、作製した発熱体1の周囲温度を2
0℃から75℃に変化させた際の抵抗値の変化を測定し
た。その結果、60℃前後で急激に抵抗値が上昇し、約
64℃で最大抵抗値を示した。さらに、20℃の抵抗値
に対する最大抵抗値の上昇桁数は平均で4桁となり、十
分なPTC特性が得られたことが認められた。
【0086】また、これら抵抗値の上昇確認試験に用い
た発熱体1を、交流電圧100Vで約30分間の電圧エ
ージングを行い、最終的な発熱体1とした。なお、抵抗
値は平均で約94Ωであった。そして、この発熱体1を
粘着剤が塗布された厚さ寸法が1mmのステンレス板に貼
り付け、交流電圧100Vを1050時間印加し、発熱
体1の表面温度を測定した。その結果、温度は55〜6
0℃で安定しており、温度分布もほぼ均一であった。ま
た、電圧印加後の抵抗値を測定した結果、平均で約10
7Ωで、試験前の抵抗値と同程度に維持され、長時間の
使用でも安定した特定が認められた。
【0087】
【発明の効果】請求項1記載のPTC発熱体によれば、
絶縁性の基板上に設けた少なくとも一対の電極に跨がっ
て、比較的に結晶化度が高く、比較的低い結晶融点のポ
リエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドを
含有するペーストにて発熱部を形成するため、比較的低
い温度で良好なPTC特性が得られる。そして、分子量
が比較的小さいポリエチレングリコールと分子量が比較
的大きいポリエチレンオキサイドとを適宜混合するた
め、比較的少量の溶剤でも、塗布工程が容易な粘性を有
するとともに、長期間保管においても固化することなく
塗布形成に適した粘性が維持されるペーストが得られ、
塗布形成の際にペーストの性状調整が不要となり、製造
中の溶剤の揮発量も少なくなり、製造工程を簡略化でき
生産性を向上できる。また、溶剤の使用量が少なくなる
ため、例えば溶剤の揮発により形成した発熱部の厚さ寸
法が略均一となり、安定した特性が得られる。さらに、
ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイド
を架橋剤にて架橋させることにより、略均一な組成で架
橋して結晶性を向上でき、長期間にわたって良好なPT
C特性が得られるとともに、比較的高い電圧が印加され
ても損傷せず、特性がばらつかないで信頼性を向上でき
る。また、発熱部は被覆形成した絶縁性の保護層にて保
護された状態であるため、水分や酸素などによる発熱部
の化学的劣化や外部からの応力などによる物理的損傷な
どが防止されるとともに、一対の電極間に電圧を印加し
た際に周辺部分への漏電などを防止できる。
【0088】請求項2記載のPTC発熱体によれば、請
求項1記載のPTC発熱体の効果に加え、ポリエチレン
オキサイドの60℃以上の結晶融点に対応してポリエチ
レングリコールの分子量を結晶融点が60℃以上となる
ように設定するため、PTC特性の発現により発熱する
発熱温度の変動範囲を狭くでき、安定した温度で発熱で
きる。
【0089】請求項3記載のPTC発熱体によれば、請
求項1または2記載のPTC発熱体の効果に加え、架橋
剤としてイソシアネート化合物を用いるため、イソシア
ネート化合物のイソシアネート基がポリエチレングリコ
ールおよびポリエチレンオキサイドの末端に存在する水
酸基と反応し、耐熱性に優れた化学結合が得られ、PT
C特性の発現による発熱時の損傷を防止できるととも
に、ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサ
イドの分子末端の官能基である水酸基を基点として反応
するので、分子主鎖中にランダムに結合点が形成されて
結晶性が低下することを防止でき、良好な安定したPT
C特性が容易に得られる。
【0090】請求項4記載のPTC発熱体によれば、請
求項1ないし3いずれか一記載のPTC発熱体の効果に
加え、沸点が比較的高くポリエチレングリコールおよび
ポリエチレンオキサイドの溶解性が高いハロゲン化アリ
ールを溶剤に用いるため、長期間安定した性状のペース
トが得られるとともに、発熱部の塗布形成の際の溶剤の
揮発を少なくでき、製造工程における作業性を向上で
き、生産性を向上できる。また、ポリエチレングリコー
ルおよびポリエチレンオキサイドや架橋剤と反応する反
応基を有しないとともに、疎水性で水分をほとんど吸収
しないため、ポリエチレングリコールおよびポリエチレ
ンオキサイドの架橋が阻害されないので、結晶性を向上
でき、発熱部の良好な組成が得られ、安定した良好なP
TC特性が得られ、信頼性を向上できる。
【0091】請求項5記載のPTC発熱体によれば、請
求項3または4記載のPTC発熱体の効果に加え、架橋
剤として、イソシアネート基を複数有したイソシアネー
ト化合物を用いるため、ポリエチレングリコールおよび
ポリエチレンオキサイドの架橋が複数方向に進行して2
次元的あるいは3次元的に架橋するので安定した構造の
発熱部が得られ、良好な安定したPTC特性が容易に得
られる。
【0092】請求項6記載のPTC発熱体によれば、請
求項1ないし5いずれか一記載のPTC発熱体の効果に
加え、基板および保護層を柔軟性部材にて形成するた
め、加工性を向上でき、異形状の発熱面に変形でき、汎
用性を向上できる。
【0093】請求項7記載のPTC発熱体によれば、請
求項1ないし6いずれか一記載のPTC発熱体の効果に
加え、一対の電極を交互に対向する櫛形状に形成に形成
するため、発熱部の全体の温度分布が容易に略均一とな
り、容易に広い発熱面が得られる。
【0094】請求項8記載のPTC発熱体の製造方法に
よれば、絶縁性の基板上に設けた少なくとも一対の電極
に跨がって、比較的に結晶化度が高く、比較的低い結晶
融点のポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキ
サイドを含有するペーストにて発熱部を形成するため、
比較的低い温度で良好なPTC特性が得られる。そし
て、分子量が比較的小さいポリエチレングリコールと分
子量が比較的大きいポリエチレンオキサイドとを適宜混
合するため、比較的少量の溶剤でも、塗布工程が容易な
粘性を有するとともに、長期間保管においても固化する
ことなく塗布形成に適した粘性が維持されるペーストが
得られ、塗布形成の際にペーストの性状調整が不要とな
り、製造中の溶剤の揮発量も少なくなり、製造工程を簡
略化でき生産性を向上できる。また、溶剤の使用量が少
なくなるため、例えば溶剤の揮発により形成した発熱部
の厚さ寸法が略均一となり、安定した特性が得られる。
さらに、ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオ
キサイドを架橋剤にて架橋させることにより、略均一な
組成で架橋して結晶性を向上でき、長期間にわたって良
好なPTC特性が得られるとともに、比較的高い電圧が
印加されても損傷せず、特性がばらつかないで信頼性を
向上できる。また、発熱部は被覆形成した絶縁性の保護
層にて保護された状態であるため、水分や酸素などによ
る発熱部の化学的劣化や外部からの応力などによる物理
的損傷などが防止されるとともに、一対の電極間に電圧
を印加した際に周辺部分への漏電などを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のPTC発熱体の実施の一形態を示す保
護層を設ける前の平面図である。
【図2】同上PTC発熱体の発熱部を設ける前の平面図
である。
【図3】同上電極を示す一部を拡大した平面図である。
【符号の説明】
1 PTC発熱体 2 基板 3 電極 5 発熱部

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁性の基板と、 この絶縁性の基板上に設けられた少なくとも一対の電極
    と、 導電性粒子、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオ
    キサイド、これらポリエチレングリコールおよびポリエ
    チレンオキサイドを溶解させる溶剤、および、前記ポリ
    エチレングリコールおよび前記ポリエチレンオキサイド
    を反応させる架橋剤を含有したペーストが前記一対の電
    極に跨がって塗布され硬化処理されて形成された発熱部
    と、 この発熱部を覆って設けられた絶縁性の保護層とを具備
    したことを特徴とするPTC発熱体。
  2. 【請求項2】 ポリエチレングリコールおよびポリエチ
    レンオキサイドは、結晶融点が60℃以上となる分子量
    であることを特徴とした請求項1記載のPTC発熱体。
  3. 【請求項3】 架橋剤は、イソシアネート化合物である
    ことを特徴とした請求項1または2記載のPTC発熱
    体。
  4. 【請求項4】 溶剤は、ハロゲン化アリールであること
    を特徴とした請求項1ないし3いずれか一記載のPTC
    発熱体。
  5. 【請求項5】 イソシアネート化合物は、イソシアネー
    ト基を複数有したことを特徴とする請求項請求項3また
    は4記載のPTC発熱体。
  6. 【請求項6】 基板および保護層は、柔軟性部材にて形
    成されたことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一
    記載のPTC発熱体。
  7. 【請求項7】 電極は、交互に対向する櫛形状に形成さ
    れたことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一記載
    のPTC発熱体。
  8. 【請求項8】 絶縁性の基板上に少なくとも一対の電極
    を設け、 この電極が設けられた絶縁性の基板上に導電性粒子、ポ
    リエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、これ
    らポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイ
    ドを溶解させる溶剤、および、前記ポリエチレングリコ
    ールおよび前記ポリエチレンオキサイドを反応させる架
    橋剤を含有したペーストを前記電極間に跨がって塗布し
    て硬化させ、 前記ペースト上に絶縁性の保護層を被覆形成することを
    特徴としたPTC発熱体の製造方法。
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Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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