JPH11130595A - 酸化物イオン導電性単結晶及びその製造方法 - Google Patents

酸化物イオン導電性単結晶及びその製造方法

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JPH11130595A
JPH11130595A JP9299182A JP29918297A JPH11130595A JP H11130595 A JPH11130595 A JP H11130595A JP 9299182 A JP9299182 A JP 9299182A JP 29918297 A JP29918297 A JP 29918297A JP H11130595 A JPH11130595 A JP H11130595A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】特に低温域での酸化物イオン導電性に優れ、か
つ、十分な緻密性も有する酸化物イオン導電性単結晶を
提供することを主な目的とする。 【解決手段】組成式REX(SiO461.5X-12(但
し、REはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、G
d、Tb及びDyの少なくとも1種、8≦X≦9.3
3)で示され、アパタイト結晶構造を有する酸化物イオ
ン導電性単結晶、及びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物イオン導電
性単結晶及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】従来より酸化物イオンによる導電現象を利
用した各種の酸化物イオン導電体についての研究開発が
行われている。例えば、酸化物イオン導電体としてホタ
ル石型構造の(Zr020.92(Y230.08、(Ce
20.75(Gd230.25あるいはペロブスカイト型
構造のLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.23等が高いイオ
ン導電性を示すことが知られている。
【0003】特に、(Zr020.92(Y230.08
(ZrO20.85(MgO)0.15等を代表とする安定化
ジルコニアからなる酸化物イオン導電性セラミックス
は、排気ガス又は溶融金属中における酸素濃度を測定す
る酸素センサ、あるいは固体電解質型燃料電池等への応
用が提案され、すでに一部で実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、安定化
ジルコニアはホタル石型構造であるため、ゲスト陽イオ
ンのモル比を上げて酸素空孔を増やそうとすると、酸素
空孔とゲスト陽イオンとの会合現象が起こり、かえって
酸化物イオン導電率を低下させてしまいかねない。この
点において、安定化ジルコニアでは、その酸化物イオン
導電性を向上させるにあたって一定の限界がある。
【0005】一方、低温域で高い酸化物イオン導電性を
示す酸化物イオン導電体として、例えば(Bi23
0.75(Y230.25、BaTh0.9Gd0.13等が知ら
れている。これらの導電率は200℃で1×10-6Sc
-1と比較的良好であるものの、安定化ジルコニアに比
べると焼結体の緻密性等に欠け、その強度面において問
題がある。
【0006】最近では、希土類元素の酸化物と二酸化ケ
イ素とを主成分とし、主構成相の結晶系が六方晶系から
なる酸素イオン導電体も開発されている(特開平8−2
08333号公報)。
【0007】しかしながら、上記酸素イオン導電体も、
未だ酸化物イオン導電性が不十分であり、なお改善する
余地がある。また、上記技術では、焼成時にアルミナ製
の焼成治具(ボート等)を用いて焼結を行っているが、
1650℃付近以上の温度では焼成治具との反応が起こ
ることから、焼成温度に制約があり、それ故に十分な緻
密性を得ることができない。さらに、上記酸素イオン導
電体では、酸素センサ用の電解質として用いた場合、酸
素ガスが透過する等の問題もある。
【0008】従って、本発明は、特に低温域での酸化物
イオン導電性に優れ、かつ、十分な緻密性も有する酸化
物イオン導電性単結晶を提供することを主な目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来技術の
問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定構成からなる
単結晶が上記目的を達成できることを見出し、ついに本
発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明は、下記の酸化物イオン
導電性単結晶及びその製造方法に係るものである。
【0011】1.組成式REX(SiO46
1.5X-12(但し、REはLa、Ce、Pr、Nd、S
m、Eu、Gd、Tb及びDyの少なくとも1種、8≦
X≦9.33)で示され、アパタイト結晶構造を有する
酸化物イオン導電性単結晶。
【0012】2.La、Ce、Pr、Nd、Sm、E
u、Gd、Tb及びDyの少なくとも1種の希土類元素
の酸化物ならびに二酸化ケイ素を含む混合物をを成形
し、焼結した後、得られた焼結体から単結晶育成するこ
とを特徴とする酸化物イオン導電性単結晶の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の酸化物イオン導電性単結
晶は、組成式REX(SiO461.5X-12(但し、RE
はLa、Ce、 Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb
及びDyの少なくとも1種、8≦X≦9.33)で示さ
れる。
【0014】上記REとしては、La、Ce、Pr、N
d、Sm、Eu、Gd、Tb及びDyの少なくとも1種
の希土類元素を用いるが、これらはいずれも300℃に
おける導電率が通常1×10-7Scm-1以上を示す。こ
の中でもLa、Ce、Pr、Nd、Sm及びEuの少な
くとも1種は、より低温で優れた導電率(1×10-7
cm-1以上(200℃))を発揮できる点で好ましい。
かかる観点から、特にLa、Ce、Pr、Nd及びSm
の少なくとも1種がより好ましく(1×10-7Scm-1
以上(100℃))、La、Ce、Pr及びNdの少な
くとも1種が最も好ましい(1×10-7Scm-1以上
(30℃))。
【0015】なお、REが、上記以外の希土類元素であ
る場合(すなわち、Y、Ho、Er、Tm、Yb、L
u、Sc等の比較的イオン半径の小さい元素である場
合)は、単結晶として得ることができず、主構成相が単
斜晶系を含む混合相(多結晶体)等になってしまうので
好ましくない。
【0016】上記Xの値は、通常は8≦X≦9.33と
し、好ましくは9≦X≦9.33とすれば良い。Xの値
が8未満の場合には、アパタイト結晶構造又は正方晶系
等からなる主構成相のほか、同定不可能な希土類−ケイ
酸塩との混合相等が微量に混在する。また、9.33を
超える場合には、アパタイト結晶構造又は単斜晶系から
なる主構成相のほか、同定不可能な希土類−ケイ酸塩と
の混合相等が微量に混在する。
【0017】本発明の単結晶の結晶構造は、アパタイト
結晶構造(空間群:P63/m)を有する。
【0018】本発明の単結晶は、300℃における導電
率が通常1×10-7Scm-1以上であることが好まし
い。特に、200℃における導電率が通常1×10-7
cm-1以上であること、さらには100℃における導電
率が通常1×10-7Scm-1以上であることがより好ま
しい。最も好ましくは30℃における導電率が通常1×
10-7Scm-1以上である。
【0019】本発明にいう導電率は、その単結晶におい
て最も高くなるようにして交流複素インピーダンス解析
法により測定された導電率を示す。すなわち、本発明の
単結晶では、c軸方向の導電性が最も優れているので、
導電率はc軸方向における導電率を示すこととなる。な
お、単結晶における結晶方向の特定は、X線回折分析等
により、公知の手段に従って行うことができる。
【0020】本発明の単結晶は、例えばLa、Ce、P
r、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb及びDyの少なくと
も1種の希土類元素の酸化物ならびに二酸化ケイ素を含
む混合物を成形し、焼結した後、得られた焼結体から単
結晶育成することによって得ることができる。
【0021】希土類元素の酸化物としては、上記元素の
酸化物であれば特に制限されず、例えばLa23、Ce
2、Pr611、Nd23、Sm23、Eu23、Gd
23、Tb47、Dy23等を用いることができる。こ
れらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いること
もできる。また、これら酸化物は、粉末状として用いる
のが好ましく、通常は平均粒径0.5〜5μm程度、好
ましくは0.8〜3μmとすれば良い。
【0022】また、二酸化ケイ素(SiO2)も、特に
制限されず、例えば沈降性シリカ、シリカゲル、結晶性
シリカ等をいずれも使用でき、また市販品(試薬)をそ
のまま用いることもできる。二酸化ケイ素も、粉末状又
は顆粒状として用いるのが好ましく、通常は平均粒径
0.5〜5μm程度、好ましくは0.8〜3μmとすれ
ば良い。
【0023】次いで、希土類元素の酸化物と二酸化ケイ
素とを所定の組成となるように秤量し、均一に混合す
る。混合方法は、各原料を均一に混合できる限り特に制
限されず、公知の湿式混合又は乾式混合を採用すること
ができる。例えば、各原料をボールミルに投入し、アル
コール中で湿式混合することもできる。本発明では、異
物(不純物)の混入等をできるだけ回避するという点か
ら湿式混合が好ましい。なお、本発明の効果を妨げない
範囲内において、必要に応じて公知のバインダー等の原
料以外の成分を添加しても良い。
【0024】得られた混合物は、必要に応じて、焼結に
先立って予め仮焼を行っても良い。仮焼温度は、用いる
希土類元素の酸化物の種類等に応じて適宜選択すれば良
いが、通常は1000〜1300℃程度、好ましくは1
100〜1200℃とする。仮焼雰囲気は、通常は大気
中又は酸化性雰囲気とすれば良い。仮焼時間は、仮焼温
度、仮焼雰囲気等に応じて適宜設定すれば良い。なお、
仮焼体が塊状物、粒状物等として得られる場合もある
が、必要に応じて公知の方法に従って粉砕すれば良い。
仮焼体が粉末状として得られる場合は、さらに粉砕して
も良いし、そのままの状態で成形に用いることも可能で
ある。次の成形工程で用いる粉末の平均粒径は、成形方
法等により適宜設定することができるが、通常1〜3μ
m程度とすれば良い。
【0025】続いて、上記混合物(仮焼した場合は、そ
の仮焼体又はその粉砕物)を成形する。成形方法は、公
知の成形方法をそのまま採用すれば良く、例えばラバー
プレス成形、押出し成形、ホットプレス成形、射出成形
等のいずれの方法も採用することができる。成形すべき
形状は、後工程である単結晶育成に適した形状である限
り特に制限されない。
【0026】次いで、成形体の焼結を行う。焼成温度
は、原料組成等に応じて適宜変更すれば良いが、通常は
1300〜1700℃程度、好ましくは1600〜17
00℃とする。焼成雰囲気は、通常は大気中又は酸化性
雰囲気中とすれば良い。焼結時間、昇温速度等は、成形
体の組成、焼結温度等に応じて適宜設定すれば良い。
【0027】最後に、得られた焼結体から単結晶育成を
行う。単結晶の育成方法は、焼結体を出発原料として使
用できる限りは公知の方法をいずれも採用でき、本発明
で用いる組成等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、
融液固化法、融液析出法、融液反応法等の融液から育成
する方法等が採用できる。本発明の製造方法では、特
に、融液固化法、融液析出法等による育成方法が好まし
い。単結晶育成の具体的な条件も、各方法で適用されて
いる条件内で、原料組成等に応じて適宜設定することが
できる。
【0028】
【発明の効果】本発明の酸化物イオン導電性単結晶は、
特定組成を有する単結晶から構成されているので、高温
域はもとより、低温域(特に室温付近)でも優れた導電
性を発揮することができる。
【0029】具体的には、上記REとしてLa、Ce、
Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb及びDyの少なく
とも1種の希土類元素を用いれば300℃で1×10-7
Scm-1以上の導電率を示し、この中でもLa、Ce、
Pr、Nd、Sm及びEuの少なくとも1種を用いれば
200℃で1×10-7Scm-1以上の導電率を示し、L
a、Ce、Pr、Nd及びSmの少なくとも1種を用い
れば100℃で1×10-7Scm-1以上の導電率を示
し、さらにはLa、Ce、Pr及びNdの少なくとも1
種を用いれば30℃で1×10-7Scm-1以上というき
わめて優れた導電率を達成することができる。
【0030】また、本発明の酸化物イオン導電性単結晶
には高い緻密性を与えることもできる。しかも、例えば
酸素センサの電解質に用いた場合であっても酸素ガスを
透過することもない。
【0031】このような特徴を有する本発明の酸化物イ
オン導電性単結晶は、例えば固体電解質として酸素セン
サ、電池、酸素ポンプ等の各種用途に好適に用いること
ができる。
【0032】
【実施例】以下、実施例を示し、本発明に係る酸化物イ
オン導電性単結晶及びその製造方法について比較例を挙
げながら具体的に説明する。
【0033】実施例1〜9 原料として、それぞれ純度99.9%以上である希土類
酸化物La23、CeO2、Pr611、Nd23、Sm
23、Eu23、Gd23、Tb47及びDy23なら
びに二酸化ケイ素SiO2を使用した。次に、次の各方
法によって上記原料から単結晶を作製した。
【0034】(1)ブリッジマン法 まず上記希土類酸化物と二酸化ケイ素とを混合した。混
合は、両者における希土類元素とSiのモル比が9.3
3:6となるような配合とし、ボールミルを使用してア
ルコール中でそれぞれ混練した。その後、各混練物を乾
燥し、それぞれ1300℃で仮焼した。次いで、得られ
た仮焼物をさらにボールミルを用いてアルコール中で粉
砕した。続いて、得られた粉末をラバープレス法により
100MPaの圧力で成形した後、大気中1650℃に
て5時間焼結した。最終的に、得られた焼結体を粉砕し
て粒径2〜3mm程度の粗粒とした。
【0035】次に、上記粗粒を用いて単結晶育成を行っ
た。単結晶育成は、上記粗粒をモリブデン坩堝に入れ、
タングステンヒーターを用いた外部式加熱炉(温度18
00〜1950℃)にて、引き上げ速度1〜10mm/
h、回転数5〜10rpmとし、1%水素ガスを含むア
ルゴン気流中で行った。
【0036】(2)浮遊帯溶融法(FZ法) まず上記希土類酸化物と二酸化ケイ素とを混合した。混
合は、両者における希土類元素とSiのモル比が9.3
3:6となるような配合とし、ボールミルを使用してア
ルコール中でそれぞれ混練した。その後、各混練物を乾
燥し、それぞれ1300℃で仮焼した。次いで、得られ
た仮焼物をさらにボールミルを用いてアルコール中で粉
砕した。続いて、得られた粉末をラバープレス法により
100MPaの圧力で棒状(φ10mm×50mm)に
成形した後、大気中1650℃にて5時間焼結して原料
棒を作製した。
【0037】次に、上記原料棒を用いて単結晶育成を行
った。単結晶育成は、上記原料棒を双楕円形赤外線集中
加熱炉(温度1800〜1950℃)にて、引き下げ速
度1〜10mm/h、回転数50〜100rpmとし、
窒素気流中で行った。
【0038】前記(1)(2)の方法で得られた各試料
をX線回折により分析した結果、各試料とも単結晶であ
り、その結晶構造はアパタイト結晶構造(空間群:P6
3/m)であった。
【0039】各試料の各物性について調べた。まずc軸
方向の酸化物イオン導電特性が測定できるように切り出
し加工した。切り出した試料の両面に白金ペーストを塗
布し、1000℃で焼き付けて電極を形成した後、加熱
炉で温度を調節し、インピーダンスメーターにより周波
数100Hz〜10MHzの範囲で複素インピーダンス
解析を行い、各試料本体の抵抗成分から導電率G(Sc
-1)を求めた。200℃及び300℃における導電率
を表1に示す。表1には、各試料の酸化物イオン導電に
関する活性化エネルギーE(kJmol-1)も併せて示
す。
【0040】また、導電率の温度依存性について調べ
た。その結果を図1に示す。図1は、アレニウスプロッ
トであり、絶対温度(K)の逆数を横軸にし、縦軸には
導電率Gと絶対温度Tの積を対数で示した。なお、これ
らの関係は、下記のアレニウスの式で示される。
【0041】GT=G0exp(−E/kT) (但し、G0:伝導因子、E:活性化エネルギー、k:
ボルツマン定数をそれぞれ示す。) なお、各試料について、前記(1)(2)で得られたも
のはほとんど同じ物性であったため、前記(2)で得ら
れた方の試料の物性を表1及び図1で示す(以下も同
じ)。
【0042】比較例1〜2 原料である希土類酸化物としてY23及びHo23を用
いた以外は、実施例1と同様にして原料を作製し、単結
晶育成を試みた。
【0043】得られた試料についてX線回折により分析
したところ、単結晶は形成されておらず、単斜晶系を主
構成相とする混合相から構成されていることが判明し
た。さらに、任意の面を切り出した試料を実施例1と同
様にして導電率等を測定した。その結果も表1及び図1
に示す。
【0044】
【表1】
【0045】これらの結果より、原料としてY23及び
Ho23を用いた比較例1〜2では200℃及び300
℃のいずれにおいても導電率が1×10-7Scm-1未満
であることがわかる。これに対し、実施例1〜9の試料
ではいずれも300℃で1×10-7Scm-1以上の優れ
た導電率を示すことがわかる。特に、実施例1〜4の試
料においては室温付近(約30℃)でも1×10-7Sc
-1以上の高い導電率を示した。
【0046】実施例10 図2に示すアパタイト結晶構造図から、これらの各酸化
物イオン導電性単結晶における導電性は、SiO4の四
面体と6hと4fサイトに位置する希土類元素によりつ
くられた2aサイトで起こっているものと考えられる。
【0047】そこで、実施例1の酸化物イオン導電性単
結晶(La9.33(SiO462)に対し、c軸の垂直
方向の酸化物イオン導電特性が測定できるように切り出
し加工したものを用いてその導電機構を調べた。すなわ
ち、実施例1と同様に導電率の温度依存性を調べた。そ
の結果を図3に示す。なお、図3には、実施例1の酸化
物イオン導電性単結晶の導電率も併せて示す。
【0048】図3より、実施例10の試料は実施例1の
ものに比べて約1.5桁(1/50)低いことから、酸
化物イオン導電性は主として2aサイトに位置する酸素
イオンがc軸方向に沿って移動することによる可能性が
高いと考えられる。
【0049】比較例3 従来の酸化物イオン導電体の中では最も高い導電性を示
すとされている酸化物イオン導電性セラミックス(Bi
230.75(Y230.25について導電率を求めた。な
お、このセラミックスの作製は、公知の酸化物混合法で
行った。
【0050】まず、上記セラミックスについて、実施例
1と同様にして導電率の温度依存性について調べた。そ
の結果を図1に併せて示す。
【0051】図1に示すように、実施例1〜6の酸化物
イオン導電性単結晶は、特に400℃以下という低温域
における導電率も比較例3のものに比して高く、特に実
施例1の単結晶は比較例3のものよりも3.6桁高い導
電率(200℃)を示し、本発明単結晶が優れた導電性
を発揮することがわかる。
【0052】試験例1 実施例1の単結晶及び比較例3のセラミックスをそれぞ
れ用いて、濃淡電池セルを作製した。濃淡電池セルの作
製に際し、各試料の両面に白金ペーストを塗布と、これ
を900℃で焼き付けて多孔性の白金電極を作製した。
【0053】作製された濃淡電池セルの一方についてO
2濃度(P0)を0.21atm(空気)に一定にし、他
方のO2濃度(P)を1×10-4〜0.21atmの空
気圧の範囲で変化させ、300〜700℃の温度におい
て得られる起電力(EMF)を測定し、これに基づいて
下記のネルンスト式から起電力変化率(mV/decade)
と反応電子数nを求め、その結果を理論値と合わせて下
記の表2に示す。
【0054】(ネルンスト式) EMF=(RT/nF)ln(P/P0) (R:気体定数、F:ファラデー定数、T:絶対温度、
n:反応電子数)
【0055】
【表2】
【0056】表2の結果より、比較例3の酸化物イオン
導電性セラミックスを用いて作製した濃淡電池セルは6
00℃ではじめて理論値に対応した値になっているのに
対し、実施例1の単結晶を用いて作製した濃淡電池セル
は350℃の低い温度で理論値に対応した値になってい
ることから、本発明品がより低い温度で酸素センサとし
ての機能等を発揮できることがわかる。
【0057】実施例11〜12及び比較例4〜7 原料として純度99.9%以上のLa23と、試薬級の
沈降性シリカとをそれぞれ用い、表3に示す組成にした
以外は実施例1と同様にして各試料をそれぞれ作製し
た。
【0058】得られた各試料について、実施例1と同様
にして結晶構造を調べた。実施例11及び12の試料は
単結晶であり、その結晶構造はアパタイト結晶構造(空
間群:P63/m)であった。これに対し、比較例4〜
7の試料は単結晶ではなかった。特に、比較例5及び6
の試料は、アパタイト結晶構造からなる主構成相のほ
か、同定不可能な希土類−ケイ酸塩との混合相が混在す
る多結晶体から構成されていた。また、比較例7の試料
では、単斜晶系からなる主構成相のほか、同定が不可能
な希土類−ケイ酸塩との混合相が微量に混在していた。
比較例4の試料は、正方晶系からなる主構成相のほか、
同定不可能な希土類−ケイ酸塩との混合相等が微量に混
在していた。
【0059】また、実施例1と同様にして、各試料にお
ける200℃及び300℃の導電率を求めた。その結果
を表3に示す。なお、表3には、各活性化エネルギーも
併せて示す。
【0060】
【表3】
【0061】表3に示すように、c軸方向の導電率が測
定できるように切り出し加工した実施例11及び12の
各試料は、実施例1の試料に匹敵する高い導電率を示す
ことがわかる。なお、これらは、X=8〜9.33の範
囲で大きな違いは認められなかった。一方、任意の面を
切り出した比較例4〜7の試料は、これらの実施例のよ
うな高い導電率は得られていないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜9及び比較例1〜3における各試料
の導電率の温度依存性を示す図である。
【図2】アパタイト結晶構造を示す図である。
【図3】実施例1及び10における各試料の導電率の温
度依存性を示す図である。
【図4】実施例1、11及び12ならびに比較例4〜7
における各試料の導電率の温度依存性を示す図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】組成式REX(SiO461.5X-12(但
    し、REはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、G
    d、Tb及びDyの少なくとも1種、8≦X≦9.3
    3)で示され、アパタイト結晶構造を有する酸化物イオ
    ン導電性単結晶。
  2. 【請求項2】300℃における導電率が1×10-7Sc
    -1以上である請求項1記載の酸化物イオン導電性単結
    晶。
  3. 【請求項3】REが、La、Ce、Pr、Nd、Sm及
    びEuの少なくとも1種である請求項1記載の酸化物イ
    オン導電性単結晶。
  4. 【請求項4】REが、La、Ce、Pr、Nd及びSm
    の少なくとも1種である請求項1記載の酸化物イオン導
    電性単結晶。
  5. 【請求項5】REが、La、Ce、Pr及びNdの少な
    くとも1種である請求項1記載の酸化物イオン導電性単
    結晶。
  6. 【請求項6】La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、G
    d、Tb及びDyの少なくとも1種の希土類元素の酸化
    物ならびに二酸化ケイ素を含む混合物を成形し、焼結し
    た後、得られた焼結体から単結晶育成することを特徴と
    する酸化物イオン導電性単結晶の製造方法。
  7. 【請求項7】焼結に先立って、予め混合物を仮焼し、得
    られた仮焼体を粉砕し、得られた粉末を成形する請求項
    6記載の製造方法。
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