JPH1112607A - 焼結歯車粗材 - Google Patents

焼結歯車粗材

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JPH1112607A
JPH1112607A JP9171969A JP17196997A JPH1112607A JP H1112607 A JPH1112607 A JP H1112607A JP 9171969 A JP9171969 A JP 9171969A JP 17196997 A JP17196997 A JP 17196997A JP H1112607 A JPH1112607 A JP H1112607A
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晴郎 大塚
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俊一 朝倉
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    • B21H5/00Making gear wheels, racks, spline shafts or worms
    • B21H5/02Making gear wheels, racks, spline shafts or worms with cylindrical outline, e.g. by means of die rolls
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、転造代を増した場合に転造時に発生
されるバリを、転造加工領域から剥離、除去でき、かつ
バリが噛み込まれることにより歯面を傷付ける不具合を
解消するとともに、より緻密化され強度を高めた歯面を
もつ焼結歯車を得ることができる焼結歯車粗材を提供す
る。 【解決手段】本発明の焼結歯車粗材1Aは、金属粉末か
ら形成される仮歯面20aと歯底面23をもち、転造に
より仮歯面20aを加工して目的とする歯面20を形成
するのに用いられる焼結歯車粗材であって、前記仮歯面
20aと歯底面23との境界部22aには、仮歯面20
aの転造時に発生する余肉を吸収可能な凹部24aをも
つことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、焼結歯車粗材に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、歯車を転造により製造する場合、
金属粉末を成形型で加圧成形するとともに、焼結するこ
とによって、製品と相似形で、製品寸法に対し転造代
(圧縮代)分、大きな形状の焼結歯車粗材を用い、この
焼結歯車粗材の歯形を転造仕上げ加工(以下、転造と称
す)し、かつ転造時に歯形の表層部(歯面)を緻密化し
て製品(焼結歯車)とすることが知られている(特開昭
50ー66461号公報、特表平6ー501988号公
報参照)。
【0003】この種、焼結歯車は、製造コスト面で優れ
るため、歯面の強度を一層高めることを可能とすること
によってその用途を拡大することが要望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、例えば、図1
1、図12に示される焼結歯車粗材1Cの転造代a(仮
歯面20c位置から焼結歯車1の歯面20位置までの圧
縮代)を、予め増すことによって、転造装置4(図5参
照)を用い、焼結歯車1と相似する形状の第1転造ダイ
ス(固定ダイス)5と第2転造ダイス(送りダイス)6
とで転造し、歯面20をより緻密化することが考えられ
る。(なお、仮歯面とは、転造後の焼結歯車の歯面と相
似形状のもので転造代分、転造後の歯面に相当する位置
より外側に設けられた未転造の歯面を称す。以下、同
じ)。
【0005】しかし、予め、転造代aを増した焼結歯車
粗材1Cは、転造装置4による転造時に不具合を発生さ
せる。この不具合を焼結歯車粗材1C(図11参照)と
第1転造ダイス5(図6参照)との関係で以下に説明す
る。すなわち、焼結歯車粗材1Cの歯2cの歯形領域c
1およびc2は、転造時にそれぞれ、第1転造ダイス5
の回転前方側(ドライブ側)の歯形領域51aおよび回
転後方側(コースト側)の歯形領域51bに加圧され
る。
【0006】この場合、一方の歯形領域c1において、
歯底面23との境界部22付近に材料流れの乱れを生じ
やすい特性がある。このため、焼結歯車1の歯面20の
強度を高める目的で、予め、転造代aを増した焼結歯車
粗材1Cを用いると、歯形領域c1側において前記境界
部22にバリ9(図10、図11参照)およびその根元
90を支持するように隆起した余肉91が発生する。
【0007】バリ9は、根元90が余肉91に支持さ
れ、余肉91との接触面積が大きいため、例えば、潤
滑、冷却、不純物除去などを目的として用いられる圧力
流体(潤滑油、潤滑液、圧縮エアーなど)を吹き付けて
みても、取り除くことが困難であり、形成されつつある
歯面20と転造ダイス5の歯面51との間に噛み込ま
れ、歯面20を傷付ける。
【0008】従って、従来の焼結歯車粗材1Cの場合で
は、前記バリ9および余肉91を発生しない転造代aと
して、ほぼ0.05mm付近が上限とされており、より
緻密で強度に優れた歯面20を得るために必要とする値
(0.1mm以上)の転造代に設定できなかった。本発
明は、前記問題点に鑑みなされたもので、転造代を増し
た場合に転造時に発生されるバリを、転造加工領域から
剥離、除去でき、かつバリが噛み込まれることにより歯
面を傷付ける不具合を解消するとともに、より緻密化さ
れ強度を高めた歯面をもつ焼結歯車を得ることができる
焼結歯車粗材を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の焼結歯車粗材
は、金属粉末から形成される仮歯面と歯底面をもち、転
造により該仮歯面を加工して目的とする歯面を形成する
のに用いられる焼結歯車粗材であって、前記仮歯面と該
歯底面との境界部には、該仮歯面の転造時に発生する余
肉を吸収可能な凹部をもつことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の焼結歯車粗材は、仮歯面
と該歯底面との境界部には、仮歯面の転造時に発生する
余肉を吸収可能な凹部をもつ。このため、焼結歯車粗材
の転造代を従来の場合よりも増やした場合、転造ダイス
の回転前方側(ドライブ側)の歯面に加圧される仮歯面
の転造時に、バリが発生するものの、バリの根元に隆起
しようとする余肉が前記凹部に吸収されるため、バリの
根元が余肉に支持される現象を解消できる。
【0011】そして、根元が余肉に支持されないバリ
は、圧力流体(潤滑油、潤滑液、圧縮エアーなど)を吹
き付けることによって、容易に剥離、除去され(吹き飛
ばされ)圧力流体とともに外部に排出できる。このた
め、本発明の焼結歯車粗材を用いれば、転造代を従来の
場合よりも増やすことができ(従来の焼結歯車粗材にお
ける転造代の上限値0.05mmを超過する実用上の値
に設定でき)、かつ転造時にバリが噛み込まれ歯面を傷
付ける不具合を解消できるとともに、より緻密化され強
度を高めた歯面をもつ焼結歯車を得ることができる。
【0012】前記凹部は、仮歯面と歯底面との間で、仮
歯面が転造されて歯面として形成される予定位置(以
下、歯面形成予定位置と称す)より深い間隔に形成され
る。凹部を形成するには、種々の手段が用いられる。例
えば、焼結歯車粗材の転造代の下層側に所定の厚さの盛
り上げ代を設けて仮歯面から歯底面までを深くしたもの
や、焼結歯車粗材の仮歯面と歯底面との境界で歯底面の
曲率半径よりも小さな曲率半径の窪みを設けて仮歯面か
ら窪みまでを深くしたものなどが用いられる。
【0013】前記凹部として焼結歯車粗材の転造代の下
層側に所定の厚さの盛り上げ代を設けて仮歯面から歯底
面までを深くした構成においては、仮歯面の転造時に、
バリが発生するものの、転造ダイスに加圧されて形成さ
れる歯面の位置が、前記盛り上げ代分、従来の歯面形成
予定位置よりも高くなり、かつ歯面と歯底面とに若干の
間隔が形成されているため、この間隔にバリの根元に隆
起しようとする余肉を逃がすことにより吸収でき、バリ
の根元が余肉に支持される現象を解消できる。
【0014】前記凹部として焼結歯車粗材の仮歯面と歯
底面との境界で歯底面の曲率半径よりも小さな曲率半径
の窪みを設けて仮歯面から窪みまでを深くした構成にお
いては、仮歯面の転造時に、バリが発生するものの、転
造ダイスに加圧されて形成される歯面位置が、歯底面と
の間の窪み分、深くなり、かつ歯面と歯底面との間に若
干の間隔が形成されているため、この間隔にバリの根元
に隆起しようとする余肉を逃がすことにより吸収でき、
バリの根元が余肉に支持される現象を解消できる。
【0015】なお、前記凹部を形成するための盛り上げ
代は、0.1mm〜0.05mmとすることができる。
前記凹部を形成するための窪みの曲率半径は、0.2m
m〜1.5mmとすることができる。本発明の焼結歯車
粗材は、種々のインボリュート歯車を転造する場合に用
いることができる。
【0016】
【実施例】本発明の焼結歯車粗材の実施例1、2とし
て、転造することにより図1、図2に示す焼結ハスバ歯
車1(圧力角16.5°、ねじれ角20°、モジュール
1.9)を得る場合に適用して説明する。 (実施例1)図1、図2を援用して示す実施例1の焼結
歯車粗材1Aは、転造後の焼結ハスバ歯車1とほぼ相似
形状で、焼結ハスバ歯車1より大きな形状に金属粉末
(FeーNiーMo系)を加圧成形および焼結処理され
たものである。
【0017】実施例1の焼結歯車粗材1Aは、図3、図
4に示されるように、仮歯面20a(鎖線参照)と歯底
面23との境界部22aに、仮歯面20aの転造時に発
生する余肉(図12に示す91参照、以下同じ)を吸収
可能な凹部24aをもつことを特徴とする。凹部24a
(図4参照)は、焼結歯車粗材1Aの製造時に予め、転
造代a1の下層に盛り上げ代b1を設け、仮歯面20a
と歯底面23との間に、従来の歯面形成予定位置S(図
12に示す焼結歯車粗材1Cの転造後の歯面20に相当
する位置参照)よりも高く歯面形成予定位置S1を設定
することによって形成される。
【0018】すなわち、凹部24aは、転造代a1と盛
り上げ代b1とで歯底面23までの深さL1を深くした
仮歯面20aから傾斜して延び歯底面23に至る傾斜面
21aおよび歯底面23との境界点O1と、歯底面23
とで形成される略三角形状の空間領域である。凹部24
aの深さL1は、盛り上げ代b1の値によって設定され
る。前記転造代a1は、0.1mm、盛り上げ代b1
は、0.02mmである。
【0019】なお、実施例1の焼結歯車粗材1Aは、歯
2aのバランス上、歯形領域c1側とc2側とにそれぞ
れ前記凹部24aが形成されるとともに、歯形領域c1
側のみで説明する。この焼結歯車粗材1Aは、図5に示
す転造装置4を用いて転造され、かつ仕上げ加工され
る。
【0020】転造装置4は、それぞれ所定の間隔を隔て
た位置に配置され駆動部40、41と、駆動部40、4
1により回転可能に保持された第1転造ダイス(固定ダ
イス)5、第2転造ダイス(送りダイス)6と、第1転
造ダイス5と第2転造ダイス6との間に焼結歯車粗材1
Aを回転可能に保持する保持軸42と、第1転造ダイス
5の歯50および第2転造ダイス6の歯60が焼結歯車
粗材1Aの歯2aに噛み込み、加圧する転造加工領域7
0に所定の圧力および量の冷却液を兼ねた潤滑液71を
吹き付ける複数の供給通路7、7とを備える。
【0021】駆動部40、41としては、それぞれ電動
あるいはACサーボモータなどの駆動源43、44およ
び減速装置(図示せず)と、前記第1転造ダイス5、第
2転造ダイス6の回転数を同期させた状態で、任意の値
に制御する制御部(図示せず)と、駆動源43、44か
らの駆動力を第1転造ダイス5、第2転造ダイス6に伝
達する駆動軸45、46などを備えたものが用いられ
る。
【0022】また、駆動部46は、第2転造ダイス6を
第1転造ダイス5に対し軸間隔Lを制御する送り量制御
部47をもつ。次いで、前記転造装置4により焼結歯車
粗材1Aを転造し焼結歯車1とする場合を説明する。前
記焼結歯車粗材1Aは、図5に示されるように、転造装
置4の第1転造ダイス5と、第2転造ダイス6との間に
セットされる。このとき、焼結歯車粗材1Aは、その周
方向に180°離れた両側(図5で左右)に第1転造ダ
イス5と第2転造ダイス6が配置され、かつそれぞれ各
中心軸P、P1、P2が直線上に、配列された位置関係
となる。
【0023】そして、焼結歯車粗材1Aの歯2と、第1
転造ダイス5の歯50および第2転造ダイス6の歯60
とが噛み合わされる(図5参照)。なお、説明上、図6
には、焼結歯車粗材1Aの歯2aと、第1転造ダイス5
の歯50との噛み合わせ状態を上下位置関係で示す。第
1転造ダイス5、第2転造ダイス6は、駆動部40、4
1により互いに同じ方向に回転数80rpmで回転され
る。第1転造ダイス5の歯50および第2転造ダイス6
の歯60は、それぞれ焼結歯車粗材1Aの複数の歯2
a、2a間に押し込まれて焼結歯車粗材1Aと逆方向に
回転しながら噛み合う。例えば、焼結歯車粗材1Aが図
6の矢印Y1で示す時計方向に回転する場合には、図6
の矢印Y2で示す反時計方向に回転し、焼結歯車粗材1
Aが反時計方向に回転する場合には時計方向に回転しな
がら噛み合う。
【0024】この状態で、第2転造ダイス6は、送り量
制御部47によって、順次、第1転造ダイス5との軸間
隔Lを縮める方向(図5の矢印Z1参照)に往移動す
る。すると焼結歯車粗材1Aは、第1転造ダイス5と第
2転造ダイス6とで挟持される圧力が高められつつ、仮
歯面2a(図4参照)を転造代a1分、圧縮され、目的
とする歯面2に仕上げ加工される。なお、仮歯面20a
が前記歯面20として形成されるまでに要する第1転造
ダイス5と第2転造ダイス6の回転時間は、8秒であ
る。
【0025】この転造装置4による焼結歯車粗材1Aの
転造時に、仮歯面2aが第1転造ダイス5の歯面51お
よび第2転造ダイス6の歯面61によって、圧縮され、
かつ歯面20に形成されつつあるとき、転造代a1を増
したことにより、第1転造ダイス5および第2転造ダイ
ス6の回転前方側(ドライブ側)に対向する歯形領域c
1側(図4、6参照)で材料流れの乱が大きくなってバ
リ9(図4参照)が発生するものの、その根元90を支
持するように隆起しようとする余肉(図11の91参
照)は凹部24aで吸収される。
【0026】なお、前記隆起しようとする余肉を凹部2
4aで吸収できる理由としては、転造時における仮歯面
2aの圧縮率が大きいことにより余肉が発生すると予想
される領域部分には、予め、余肉の隆起分に相当する逃
げ空間として凹部24aが形成されているため、仮歯面
2aが圧縮されるに伴って、凹部24aの深さL1が浅
くなりつつ、余肉が傾斜面21(図4の実線で示す領域
部分)の一部に変化することによって吸収され、かつバ
リ9の根元90に余肉が隆起することを抑制されるもの
と考えられる。
【0027】バリ9は、根元90を支持する余肉をもた
ないため、図12に示す従来の場合と較べ、前記支持に
よる接触面積を大幅に減少(小さく)でき、複数の供給
通路7、7から所定の圧力で噴出する潤滑液71を吹き
付けるのみで、発生と同時に剥離、除去でき、かつ潤滑
液71とともに転造加工領域70外に排出される。そし
て得られた焼結歯車1は、歯面20と、第1転造ダイス
5の歯50、第2転造ダイス6の歯60との間で、バリ
9が噛み込まれることによる歯面20の傷を発生させな
い。
【0028】このように、実施例1の焼結歯車粗材1A
は、より緻密化して転造後の歯面20の強度を高めた焼
結歯車1を得る目的で、転造代a1を増しても、転造時
にバリ9の根元90を支持するように発生していた余肉
を凹部24aで吸収でき、かつ発生させずに済む。この
バリ9は、根元90を支持する余肉をもたないため、転
造加工領域70に吹き付けられる潤滑液71を利用する
のみの簡易な手段によって、外部に剥離、除去でき、か
つ焼結歯車1の歯面20を傷付けない。
【0029】従って、実施例1の焼結歯車粗材1Aによ
れば、前記従来の焼結歯車粗材1Cの場合の転造代aの
上限を超過する転造代a1に設定でき、かつ得られた焼
結歯車1は、その歯面20の強度を前記転造代a1を増
した量に比例して高めることができ、かつバリ9の噛み
込みによる傷がなく、製品品質に優れるため、その用途
を拡大できる。
【0030】(実験例)ここで、前記実施例1の焼結歯
車粗材1Aを用いた場合の効果を確認するため、本発明
者は、予め、転造代a1を種々設定した複数の焼結歯車
粗材1Aを用意し、それぞれ仕上げ転造時に発生するバ
リ9を圧力流体を吹き付けることによって剥離、除去で
きる転造代a1の値との関係について実験した。
【0031】(実験条件)実施例1の焼結歯車粗材1A
における転造代a1を下記のとおり種々変化させた場合
で実験した。図5に示す転造装置4の第1転造ダイス5
および第2転造ダイス6を用い、それらの回転数を若干
変化させた2つの場合を、それぞれ転造代a1を0.0
2〜0.12mmの範囲で実験し、その結果をそれぞれ
図7に実験例1を示し、図8に実験例2を示した。
【0032】前記バリ9を吹き飛ばすための圧力流体と
してエアーを用い、その噴射圧力を5Kgf/cm2
ノズル径φ5mmとした。図7に示す場合は、それぞれ
第1転造ダイス5および第2転造ダイス6の回転数を8
0rpmとし、仮歯面20aの転造開始から歯面20形
成終了までの圧縮に要する時間を、8秒間とした。
【0033】図8に示す場合は、それぞれ第1転造ダイ
ス5および第2転造ダイス6の回転数を40rpmと
し、仮歯面20aの転造開始から歯面20形成終了まで
の圧縮に要する時間を、8秒間とした。実験例1の結果
を図7、実験例2の結果を図8に示す。図7、図8は、
それぞれ横軸に圧縮工程1回当たりの転造代に相当する
圧縮量(mm)を示し、縦軸に圧縮工程回数および圧縮
工程回数に比例する累計転造代に相当する圧縮量(m
m)を示す。
【0034】なお、圧力流体によってバリ9を吹き飛ば
し、剥離、除去できる転造代a1を白丸印で示した。 (実験結果)前記図7、8の白丸印で示されるように、
0.08〜0.09mm以上の転造代に設定しても、発
生したバリ9は、いずれの場合でも剥離、除去できるこ
とが判明した。また、第1転造ダイス5および第2転造
ダイス6の回転数は、ほぼ関係ないことも判明した。
【0035】従って、実施例1の焼結歯車粗材1Aを用
いた場合、通常必要とされる転造代a1の範囲(最大転
造代を0.1mmとした範囲)では、いずれも、転造加
工領域70に向かって吹き付けられる圧力流体を利用し
てバリ9を吹き飛ばし、剥離、除去できることが判明し
た。従って、前記のように種々実験した結果、従来の場
合よりも、転造代a1を増した場合であっても、バリ9
の根元90を支持するように隆起する余肉91を発生さ
せずにすみ、かつ転造加工領域70に向かって吹き付け
られる圧力流体71の作用によって、バリ9を吹き飛ば
し、剥離、除去できることを確認し得た。
【0036】(比較例)比較例として、図11、図12
に示す従来の焼結歯車粗材1Cを用い実験例3、4を実
施した実験結果を図13、図14に示す。なお、圧力流
体によってバリ9を吹き飛ばし、剥離、除去できる転造
代aを白丸印で示し、剥離、除去できない転造代aを黒
丸印で示した。
【0037】また、実験例3は、前記実験例1と同じ実
験条件であり、実験例4は、前記実験例2と同じ実験条
件である。 (実験結果)従来の焼結歯車粗材1Cの場合には、緻密
な歯面20を得るために図13、図14の黒丸印で示さ
れるように、0.1mm以上の転造代aにすると、第1
転造ダイス5の歯面51および第2転造ダイス6の歯面
61と、転造された歯面20との間にバリ9が噛み込ま
れて、傷となり製品品質を阻害することが判明した。
【0038】また、図13、図14の白丸印で示される
ように、0.08〜0.09mm以下の転造代aに設定
することによって、発生したバリ9を剥離、除去できる
が、0.1mm以上の転造代aに設定すると転造時に圧
力流体が作用しても、剥離、除去できないことが判明し
た。また、第1転造ダイス5および第2転造ダイス6の
回転数は、ほぼ関係ないことも判明した。
【0039】(実施例2)実施例2の焼結歯車粗材1B
は、図9、図10に示されるように、仮歯面20b(鎖
線参照)と歯底面23との境界部22bに、仮歯面20
bの転造時に発生する余肉(図12に示す91参照、以
下同じ)を吸収可能な凹部24bとして、略円弧形状の
空間領域を形成したこと以外は実施例1の焼結歯車粗材
1Aと同じである。
【0040】すなわち、焼結歯車粗材1Bは、従来の場
合と同じ歯面形成予定位置S(図12に示す焼結歯車粗
材1Cの転造後の歯面20に相当する位置参照)にまで
圧縮される仮歯面20bと、歯底面23との境界部22
bに、仮歯面20bの転造時に発生する余肉(図11に
示す従来の場合に発生する余肉91参照)を吸収可能な
凹部24bをもつ。
【0041】凹部24b(図10参照)は、焼結歯車粗
材1Bの製造時に予め、従来の場合と同じように設定さ
れた歯面形成予定位置S(図12に示す焼結歯車粗材1
Cの転造後の歯面20に相当する位置参照)よりも前記
実施例1の盛り上げ代S1に相当する値分、深い位置S
2で、境界部22bの歯底面23の一部を抉るようにし
て設けられた円弧状面230によって形成される。
【0042】すなわち、凹部24bは、仮歯面20bか
ら歯底面23側に向かって傾斜して延びる傾斜面21b
と、前記歯面形成予定位置Sとの境界点O2より深い位
置S2に形成され、かつ傾斜面21bと歯底面23との
間を接続する円弧状面230によって形成される円弧形
状の空間領域である。円弧状面230は、歯底面23の
曲率半径より小さな曲率半径をもつ。円弧状面230の
曲率半径は、0.3mmである。
【0043】この凹部24bの深さL2は、切下げ代b
2の値によって設定される。前記転造代a2は、0.1
5mm、切下げ代b2は、0.02mmである。なお、
実施例2の焼結歯車粗材1Bの場合には、前記凹部24
bを、歯2bの歯形領域c1側のみ、あるいはc2側と
の両方に形成することができる。実施例2の焼結歯車粗
材1Bの凹部24bは、実施例1の焼結歯車粗材1Aの
凹部24aと同じ作用によって、転造時に発生しようと
する余肉を吸収することができる。
【0044】従って、実施例2の焼結歯車粗材1Bの場
合にも、前記実施例1の焼結歯車粗材1Aの場合と同
じ、効果を得ることができる。
【0045】
【発明の効果】本発明の焼結歯車粗材は、金属粉末から
形成される仮歯面と歯底面をもち、転造により仮歯面を
加工して目的とする歯面を形成するのに用いられる焼結
歯車粗材であって、仮歯面と歯底面との境界部には、仮
歯面の転造時に発生する余肉を吸収可能な凹部をもつこ
とを特徴とする。
【0046】このため、本発明の焼結歯車粗材による
と、より緻密化して転造後の歯面の強度を高めた焼結歯
車を得る目的で転造代を増した分、転造時にバリが発生
するものの、その根元を支持するように隆起しようとす
る余肉は前記凹部で吸収される。前記バリは、その根元
を支持する余肉をもたないため、転造加工領域に吹き付
けられる圧力流体(潤滑油、潤滑液、圧縮エアーなど)
を吹き付けることのみの簡易な手段によって、剥離、除
去され(吹き飛ばされ)圧力流体とともに外部に排出で
きる。
【0047】従って、本発明の焼結歯車粗材によれば、
前記従来の焼結歯車粗材の場合の転造代の上限を超過す
る転造代に設定でき、かつ得られた焼結歯車は、歯面の
強度を、前記転造代を増した量に伴う緻密化により高め
ることができるとともに、バリの噛み込みによる傷がな
く、製品品質に優れるため、その用途を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、2の焼結歯車粗材および焼結歯車粗
材を用いて転造された焼結歯車を示す正面図。
【図2】実施例1、2の焼結歯車粗材および焼結歯車粗
材を用いて転造された焼結歯車を示す側面図。
【図3】図1における実施例1の焼結歯車粗材の歯を拡
大して示す拡大部分図。
【図4】図3における焼結歯車粗材の歯の要部をさらに
拡大して示す拡大部分図。
【図5】実施例1の焼結歯車粗材に仕上げ転造加工を施
す転造装置の使用状態を示す概略平面図。
【図6】図5における転造装置による焼結歯車粗材の転
造時に、ダイスの歯と、焼結歯車粗材の歯との噛み合い
状態を示す概略正面図。
【図7】実施例1の焼結歯車粗材を用い第1転造ダイス
および第2転造ダイスの回転数を80rpmとして仕上
げ転造加工を施した場合における転造代(圧縮量)と、
転造時に発生するバリを除去できる可能性との関係を示
す図。
【図8】実施例1の焼結歯車粗材を用い第1転造ダイス
および第2転造ダイスの回転数を40rpmとして仕上
げ転造加工を施した場合における転造代(圧縮量)と、
転造時に発生するバリを除去できる可能性との関係を示
す図。
【図9】図1における実施例2の焼結歯車粗材の歯を拡
大して示す拡大部分図。
【図10】図9における焼結歯車粗材の歯の要部をさら
に拡大して示す拡大部分図。
【図11】従来の焼結歯車粗材の歯を拡大して示す拡大
部分図。
【図12】図11における焼結歯車粗材の歯の要部をさ
らに拡大して示す拡大部分図。
【図13】従来の焼結歯車粗材を用い第1転造ダイスお
よび第2転造ダイスの回転数を80rpmとして仕上げ
転造加工を施した場合における転造代(圧縮量)と、転
造時に発生するバリを除去できる可能性との関係を示す
図。
【図14】従来の焼結歯車粗材を用い第1転造ダイスお
よび第2転造ダイスの回転数を40rpmとして仕上げ
転造加工を施した場合における転造代(圧縮量)と、転
造時に発生するバリを除去できる可能性との関係を示す
図。
【符号の説明】
1…焼結歯車 2…歯形 20…歯面 23…歯底
面 1A、1B…焼結歯車粗材 2a、2b……仮歯形 20a、20b…仮歯面 21
a、21b…傾斜面 22a、22b…傾斜面と歯底面との境界部 2
4a、24b…凹部 4…転造装置 5…第1転造ダイス(固定転造ダイス) 6…第2転造ダイス(送り転造ダイス ) 7…潤滑油供給管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大塚 晴郎 富山県富山市不二越本町一丁目1番1号 株式会社不二越内 (72)発明者 朝倉 俊一 富山県富山市不二越本町一丁目1番1号 株式会社不二越内 (72)発明者 畑下 康治 富山県富山市不二越本町一丁目1番1号 株式会社不二越内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属粉末から形成される仮歯面と歯底面を
    もち、転造により該仮歯面を加工して目的とする歯面を
    形成するのに用いられる焼結歯車粗材であって、 前記仮歯面と該歯底面との境界部には、該仮歯面の転造
    時に発生する余肉を吸収可能な凹部をもつことを特徴と
    する焼結歯車粗材。
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