JPH11124632A - 磁気特性および被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性および被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH11124632A
JPH11124632A JP9289548A JP28954897A JPH11124632A JP H11124632 A JPH11124632 A JP H11124632A JP 9289548 A JP9289548 A JP 9289548A JP 28954897 A JP28954897 A JP 28954897A JP H11124632 A JPH11124632 A JP H11124632A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安定して磁気特性および被膜特性に優れる方
向性けい素鋼板を製造する。 【解決手段】 方向性けい素鋼板を製造するにあたり、
1次再結晶焼鈍条件を制御することにより、被成される
酸化層中のラメラ状SiO2を含むシリカ富化層の厚み:w
(μm)を0.2 〜3.6 μm の範囲にすること、添加剤を含
むMgO を主体とする焼鈍分離剤を用い、焼鈍分離剤全体
のS含有量をSO3 として換算した値:s(wt%) を0.1
〜2.8 wt%の範囲にすること、さらに、上wとsとの関
係を0.15≦w・s≦3.3 の範囲にすることとからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は変圧器その他の電
気機器の鉄心等に用いられる方向性けい素鋼板に関し、
特に1次再結晶焼鈍後の内部酸化層の状態と焼鈍分離剤
とを特定することにより磁気特性を改善する磁気特性お
よび被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法を提
案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼の製造工程は、鋼スラブ
を熱間圧延後に冷間圧延を施し、ついで1次再結晶焼鈍
を施したのち2次再結晶のために最終仕上げ焼鈍を行う
のが一般的である。このうち、最終仕上げ焼鈍中に2次
再結晶が起こり、圧延方向に磁化容易軸の揃った粗大な
結晶粒が生成する。この最終仕上焼鈍は、長時間行う必
要があるため、鋼板の焼付防止を目的として、通常はこ
の焼鈍前にMgOを主体とする焼鈍分離剤を水に懸濁させ
てスラリー状にして塗布する。
【0003】このMgOは、かような焼鈍分離剤としての
役割のほかに、最終仕上焼鈍に先んじて行われる1次再
結晶焼鈍により鋼板表面に生成するSiO2を主体とする酸
化層と反応することによって、フォルステライト (Mg2S
iO4)被膜を形成させるという働きがある。この形成され
たフォルステライト被膜は、上塗りされるりん酸塩系絶
縁コーティングと地鉄部分とを密着させる一種のバイン
ダーとしての働きや、それ自体絶縁被膜としての働き
や、鋼板に張力を付与することにより磁気特性を改善す
る働き等がある。したがって、均一な厚みを持ち、鋼板
との密着性のよいフォルステライト被膜を形成させるこ
とが必要であり、それゆえに焼鈍分離剤の影響は大であ
る。
【0004】また、焼鈍分離剤には、これまで述べた以
外に鋼板の析出物の生成、成長挙動や2次再結晶挙動を
変化させて磁気特性に影響を及ぼす作用もある。例え
ば、MgOをスラリー化した際に持ち込まれる水分量が多
すぎると鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、被膜
に点状欠陥が生成したりする。また、MgOに含まれる不
純物が焼鈍中に鋼板に浸入することにより2次再結晶挙
動が変化することなども知られている。したがって、焼
鈍分離剤の成分、粉体特性の良否は、方向性けい素鋼板
の磁気特性、被膜特性を左右する重要な要因といえる。
【0005】このため焼鈍分離剤については、方向性電
磁鋼板の品質改善のため様々な手段が提案されている。
例えば、特開昭50−145315号公報では、目開き44μm ふ
るい通過分を98%以上含有し、かつ20μm 以下の粒子を
80%以上含有する微細酸化チタンを焼鈍分離剤に1〜20
重量%含有させることにより耐熱性絶縁被膜を形成させ
る方法が開示されている。この他、特公昭54−14566 号
公報には、マッフル炉により高温焼成されたマグネシヤ
の不純物の濃度、水和量およびふるい通過性を特定する
ことにより良好なフォルステライト被膜を形成させる方
法が開示されている。また、特開昭62−156227号公報で
は低活性マグネシヤの粒子最表面層に焼成後のマグネシ
ヤの重量あたり0.3 〜2.0 %の範囲で水和層形成処理を
施して活性化することにより被膜特性、磁気特性を改善
する方法が開示されている。
【0006】さらに、MgOを主成分とする焼鈍分離剤
に、助剤を添加することにより、磁気特性を改善するこ
とも試みられ、例えば、特公昭57−32716 号公報や特公
昭57−57952 号公報にはSrSO4 などのSr化合物を、特開
昭60−174881号公報にはTiO2を、また特開昭61−204314
号公報にはBiまたはBi含有物質を、それぞれ添加させた
焼鈍分離剤が提案されている。
【0007】これらの技術によりある程度被膜特性、磁
気特性は向上してきたものの、コストの増大を招いた
り、製品特性が向上しても安定的に生産できず、歩留ま
りを低下させたりする場合が多く、十分な効果が得られ
ているとはいい難かった。特に、1次再結晶焼鈍から仕
上焼鈍にかけての被膜形成に関与する工程では、製造条
件の微妙な変動により被膜形成不足や被膜欠陥、密着性
不良などの問題が生じやすく、工業的に大量生産する観
点からは、焼鈍分離剤をさらに改良する必要性が高かっ
た。
【0008】一方、脱炭焼鈍後焼鈍分離剤塗布前の鋼板
表面性状と焼鈍分離剤との関係で、特開昭61−170515号
公報には脱炭焼鈍時に形成される酸化膜量に応じて、Mg
Oを主成分とする焼鈍分離剤中のS濃度を調整する技術
が提案開示されている。しかしながら、このように単な
る酸化膜量を因子として選択する方法では、実際に磁気
特性の向上効果は認められるものの、安定的に磁気特性
を改善することや被膜特性を改善することに関しては未
だ十分ではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】この発明は上記の事情
に鑑みてなされたものであり、1次再結晶焼鈍条件なら
びに焼鈍分離剤組成を調整することにより磁気特性、被
膜特性を安定的に向上させうる磁気特性および被膜特性
に優れる方向性けい素鋼板の製造方法を提案することを
目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の要旨構成は以
下の通りである。
【0011】Siを2〜4.5 wt%の範囲で含有する鋼素材
を、加熱炉にて加熱後熱間圧延し、1回もしくは中間焼
鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終冷延板厚に仕上
げたのち、1次再結晶焼鈍をし、その後スラリー状焼鈍
分離剤を塗布し乾燥してから最終仕上焼鈍を行う一連の
工程よりなる方向性けい素鋼板の製造方法において、1
次再結晶焼鈍時の雰囲気、温度および時間を制御するこ
とにより、1次再結晶焼鈍で被成される酸化層中のラメ
ラ状SiO2を含むシリカ富化層の厚み:w (μm)を0.2 μ
m 以上、3.6 μm 以下の範囲にすること、添加剤を含む
MgOを主体とする焼鈍分離剤を用い、MgO中の不純物と
添加剤とを含めた焼鈍分離剤全体のS含有量をSO3 とし
て換算した値:s (wt%)を0.1wt%以上、2.8 wt%以
下の範囲にすること、さらに上記wとsとの関係を0.15
≦w・s≦3.3 を満たす範囲に調整することとからなる
磁気特性および皮膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製
造方法(第1発明)。
【0012】焼鈍分離剤の添加物が、Sr, Mg, Ti, Cu,
Pb, NiまたはSnの硫酸化合物の1種または2種以上であ
る第1発明に記載の磁気特性および被膜特性に優れる方
向性けい素鋼板の製造方法(第2発明)。
【0013】ここで、ラメラ状SiO2を含むシリカ富化層
(以下単にラメラ状SiO2層という)とは、図2に示すラ
メラ状SiO2層の説明図のように、地鉄表面からラメラ層
が消えるところまでのことをいい、ラメラ状SiO2層の厚
みは、その間の平均間隔のことをいう。
【0014】
【発明の実施の形態】発明者らは、磁気特性、被膜特性
を安定的に向上させることのできる1次再結晶焼鈍後の
内部酸化膜の形成条件と焼鈍分離剤組成について種々検
討した結果、焼鈍分離剤中のSO3 濃度と酸化膜中のラメ
ラ状SiO2層の厚みにより被膜特性、磁気特性が変化する
ことを発見した。以下にこの知見を得るに至った実験例
について述べる。
【0015】C:0.043 wt%(以下%で示す。)、Si:
3.22%、Mn:0.06%、Se:0.02%を含み、残部は実質的
にFeよりなるけい素鋼スラブを1380℃の温度で30分間加
熱後熱間圧延して2.2mm の板厚にしたのち、1050℃・1
分間での中間焼鈍をはさんで0.23mm厚に冷間圧延し、最
終冷延板厚に仕上げた。これを1次再結晶焼鈍後、焼鈍
分離剤をスラリー状にしてロールコーターにより塗布、
乾燥して最終仕上焼鈍を行った。ここで、1次再結晶焼
鈍時の雰囲気の酸化性すなわち、水分、水素分圧比:PH
2O/PH2 を0.1 〜0.6 、温度を800 ℃〜850 ℃の範囲で
種々の値に制御することにより1次再結晶焼鈍後に被成
される内部酸化層中のラメラ状SiO2層の厚みを0.1 μm
〜5.0 μm の範囲内に調節した。また、焼鈍分離剤とし
て0.08%の不純物のSO3 を含むMgOに2%のTiO2と、SO
3 換算で0〜2.82%のSrSO4 を添加し(トータルSO3
で0.08〜2.9 %) 、これらをスラリー化して塗布した。
【0016】このようにして得られた仕上焼鈍後のサン
プルの磁気特性、被膜特性を調査した。得られた結果を
図1に示す。図1はラメラ状SiO2層厚み、分離剤中のSO
3 濃度と製品特性との関係を示すグラフである。この図
からわかるようにラメラ状SiO2層厚み(w)と添加物中
のSO3 濃度(s)により製品特性は大きく変化する。特
にwとsとの積を特定範囲内とすることにより良好な製
品特性が得られる。
【0017】このようにラメラ状SiO2層厚みと添加剤中
のSO3 濃度により製品品質が変化した理由は明らかでは
ないが発明者らは次のように考える。焼鈍分離剤中のSO
3 は仕上焼鈍中に分離し、S分が鋼中に浸入することに
よりインヒビターを補強する効果がある。これに加え被
膜形成を促進する働きがあり、過度に存在すると局所的
に被膜形成が促進されすぎてそれが剥離し、点状の被膜
欠陥が生成する。一方、ラメラ状SiO2層はラメラ状SiO2
層直下の地鉄部分と焼鈍雰囲気や焼鈍分離剤との相互作
用を抑制する働きがある。また、酸素分が内部酸化層中
にトラップされる結果、内部酸化層中の固溶酸素量が増
大し、SiO2の解離浮上、沈降が起こりにくくなる。
【0018】これらのことから考えると、まず磁性に関
しては、ラメラ状SiO2が薄いと雰囲気中に微量に含まれ
る水分によりインヒビターの分解が起こりやすくなるた
め、分離剤にSO3 を多量に添加してSによりインヒビタ
ーを補強する必要がある。ラメラ状SiO2が厚いとSも酸
素も鋼中には入りにくいが、分離剤中のSO3 が多く過度
にSが浸入する場合は、抑制力が強くなりすぎて板厚方
向内部にある方位のずれた2次再結晶核が2次再結晶す
るため、磁気特性が劣化する。従って、SO3 添加量はラ
メラ状SiO2が薄い場合は増量し、厚い場合は減量するこ
とにより各々の弱点を補完して良好な磁気特性が安定し
て得られることになる。
【0019】次に被膜に関しては、ラメラ状SiO2層が薄
いと焼鈍雰囲気の影響を受けやすくなり、SiO2が沈降し
て二重構造の被膜となる。これは被膜密着性にとって不
利な構造であるため、これを補うためにSO3 を多くして
被膜形成量を増やす必要ある。ラメラ状SiO2層が厚いと
内部酸化層中の固溶酸素量が多いため、分離剤中のSO 3
が多いとさらにこれが分解して酸素源となり、鉄系酸化
物が生成しやすくなり、点状被膜欠陥の原因となる。従
って、SO3 添加量はラメラ状SiO2層が薄い場合は増量
し、厚い場合は減量することにより各々の弱点を補完し
て良好な被膜特性が安定して得られることになる。
【0020】以上の点から添加剤中のSO3 濃度(s)は
ラメラ状SiO2の厚み(w)により添加量を調整する必要
があり、これはsとwとの積により評価することができ
ると考えられる。
【0021】なお、前記したように、特開昭61−170515
号公報の鋼板表面の酸化膜量に応じて焼鈍分離剤のS量
を調整する技術では、安定的な磁気特性の改善や被膜特
性の改善が十分でなかった。
【0022】その理由は、まず安定した磁気特性の向上
に関しては、インヒビターの解離固溶現象が酸化膜量を
調節しても十分に制御できなかった点にある。これは、
例えば酸化膜量が多い場合にその膜中の酸素がインヒビ
ターを解離させる現象や、酸化膜量が同一でもラメラ状
SiO2層の存在の有無やその厚みによってインヒビターの
解離固溶に変化が生じることを予見できなかったことに
よるものである。この点、ラメラ状SiO2層の厚みが酸素
やSの被膜中の透過能を左右する重要な因子となってい
ることを新規に見いだしたこの発明とは相違する。
【0023】そして、被膜特性の向上に関しては、酸化
膜層と焼鈍分離剤中のs(SO3)濃度との関係が影響する
ことがこれまで知られていなく、今回この発明により、
ラメラ状SiO2層厚みがフォルステライト被膜の構造を決
定する要因になること、この厚みとs濃度との関係を適
正化することにより、フォルステライト被膜特性の向上
がはかれることなどを始めて見出したものである。よっ
て、以上の各点からこの発明は特開昭60−170515号公報
とは異なる技術思想のもとなされたものといえる。
【0024】次に、この発明の限定理由ならびに好適条
件などについて述べる。この発明の素材である含けい素
鋼の成分組成としては、次の通りである。
【0025】まず、Cは出鋼段階で低下させて脱炭焼鈍
を行わない方法と、ある程度の量を確保して組織の改善
をはかり、その後の脱炭・1次再結晶焼鈍により除去す
る方法とがある。前者の場合はCの悪影響を避けるため
には0.01wt%未満がよく、後者の場合の組織改善のため
の好適範囲は0.01%以上、0.10%未満がよい。
【0026】Siは2〜4.5 %とする。2%以下では鉄損
の低減効果が弱まり、4.5 %以上では冷間圧延性が損な
われる。
【0027】C,Siの他にインヒビター構成成分を添加
する。インヒビターとしてはAlN,MnS,MnSe等がよく
知られているがこれらのいずれを用いてもよい。インヒ
ビターにMnSおよび/またはMnSeを用いる場合はMn:0.
03〜0.10%、S+Se:0.01〜0.03%にすることがよい。
一方、AlNをインヒビターに用いる場合はAl:0.01〜0.
04%、N:50〜120ppmとすることがよい。これらの範囲
よりも低いとインヒビターとして効果が十分でなく、高
いと2次再結晶が不安定になる。また、これらの他にC
u, Sn, Cr, Sb, Ge, Mo, Te, Bi, PまたはVなども用
いることができる。これらの各インヒビターは単独使
用、複合使用いずれも可能であり、有効な濃度としては
トータルで0.01%以上、0.2 %以下がよい。
【0028】ついで、製造条件について述べる。これら
の素材を公知の方法で熱間圧延を行ったあと、1回もし
くは中間焼鈍をはさむ複数回の冷間圧延を行って最終冷
延板厚にする。また、必要に応じて熱延板を冷間圧延前
に焼鈍することも可能である。
【0029】上述の処理ののち1次再結晶焼鈍を行い、
焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を行う。これ
らの工程はこの発明では良好な磁気特性及び被膜特性を
得るために厳重に管理する必要があり、また、1次再結
晶焼鈍は焼鈍の雰囲気、温度および時間を制御すること
により内部酸化層中のラメラ状SiO2層の厚み:wを0.2
μm 以上、3.6 μm 以下にする。このwが薄すぎると仕
上焼鈍中のインヒビターの分解が著しく起こることによ
り磁気特性が劣化し、被膜形成不足となって被膜特性も
劣化する。一方、厚すぎると方位のずれた2次再結晶粒
が生成して磁気特性不良となるとともに被膜形成が進み
すぎて被膜の密着性も劣化する。ラメラ状SiO2層の厚み
を制御するための焼鈍の雰囲気、温度および時間は特に
限定するものではないが、通常、雰囲気は水蒸気で水素
分圧比:PH2O/PH2 で0.05以上、0.68以下、温度は750
℃以上、900 ℃以下、時間は30秒間以上、180 秒間以下
が良好となる。
【0030】なお、1次再結晶焼鈍の加熱時の雰囲気と
均熱時の雰囲気とを別々に制御して被膜特性を向上させ
る方法が知られているが、この発明ではその方法を用い
ることによりラメラ状SiO2層厚みを調節することもでき
る。さらに、AlNをインヒビターとする場合に1次再結
晶焼鈍の前または途中または後に窒化処理を行う方法が
知られているが、この発明でこのような方法を同時に行
っても差し支えない。
【0031】1次再結晶焼鈍後にはMgOを主体とする焼
鈍分離剤を用いる。このとき、添加剤とMgO不純物とを
含めた焼鈍分離剤全体でのS含有量をSO3 として換算し
た値:sを0.1 以上、2.8 %以下とする。MgO不純物を
この範囲にまで高める方法としては、原料に海水その他
S含有量の多いMg源を用いること、製造工程途中で硫酸
化合物を添加することなどが有効である。添加剤にSr,
Ti等の硫酸化合物を用いることはSO3 の効果の他にSr,
Ti等の陽イオンの効果も加味されるためさらに効果的で
ある。なお、MgSO4 の場合は特に分解したMgイオンが被
膜形成を助勢する働きがあり、MgO中のMgとは異なる作
用を持つため有効である。
【0032】発明者らが検討した硫酸化合物で、特に効
果があったのがSr, Mg, Ti, Cu, Pb, NiまたはSnの硫酸
塩である。これらは、単独使用、複合使用いずれも可能
である。添加量は焼鈍分離剤全体でSO3 換算値:sで0.
1 以上、2.8 %以下とする。sが少なすぎると磁気特
性、被膜特性いずれにも効果がなく、多すぎると点状の
被膜欠陥が生成するとともに磁気特性も劣化する。
【0033】さらにこの発明ではラメラ状SiO2層の厚み
w (μm)と焼鈍分離剤中のSO3 換算値:s(%)との積
を0.15以上、3.3 以下とする。0.15より低ければ2次再
結晶不良となるとともに被膜形成不足となる。一方、3.
3 より高ければ方位のずれた2次粒が成長すると共に被
膜形成過多となり点状被膜欠陥が発生する。
【0034】焼鈍分離剤を塗布後、仕上焼鈍を行う。仕
上焼鈍は公知の方法でよい。その後、絶縁張力コートを
施してフラットニング焼鈍をして製品に仕上げることも
よい。かかる処理工程によって優れた磁気特性、被膜特
性を有する方向性けい素鋼板を得ることができる。
【0035】
【実施例】
実施例1 C:0.06%、Si:3.28%、Al:0.02%、N:50ppm 、M
n:0.07%、S:0.005%およびCu:0.06%を含み残部は
実質的にFeよりなるスラブを1400℃の温度に加熱後、2.
2mm 厚に熱間圧延し、1050℃・2分間の中間焼鈍をはさ
んで0.35mmまで冷間圧延したのち、最終冷延板厚に仕上
げた。上記において、冷間圧延後に1次再結晶焼鈍を行
い、その焼鈍条件を、水蒸気の水素分圧比:PH2O/PH2
で0.10〜0.75、温度を700 ℃〜950 ℃、時間は20秒間〜
240 秒間の範囲でそれぞれ変化させることにより内部酸
化層中のラメラ状SiO2層の厚みを種々変化させた。その
後、窒化処理を施したあと、スラリー化することにより
持込まれる水分量が2.0 %、また不純物のSO3 濃度が0.
1 %のMgOに6%のTiO2と3%のSrSO4(SO3 換算で1.3
%) を添加した焼鈍分離剤を塗布したのち乾燥した。し
かるのち、仕上げ焼鈍として700 ℃〜1000℃までを昇温
速度20℃/h で昇温し、引続きdryH2 雰囲気で1150℃・
5時間の純化焼鈍を行った。
【0036】このようにして得られた鋼板の磁気特性及
び被膜密着性を調査した。それらの調査結果を表1にま
とめて示す。
【0037】
【表1】
【0038】表1から明らかなように、ラメラ状SiO2
厚みがこの発明の範囲内にあるとき良好な磁気特性及び
被膜特性を得ることができる。
【0039】実施例2 C:0.04%、Si:3.28%、Mn:0.07%、Se:0.02%およ
びSb:0.025 %を含み残部は実質的にFeよりなるスラブ
を1400℃の温度に加熱後、2.6mm 厚に熱間圧延し、1000
℃・2分間の中間焼鈍をはさんで0.30mmまで冷間圧延
し、最終冷延板厚に仕上げた。これを表2の1,2の条
件で1次再結晶焼鈍することにより内部酸化層中のラメ
ラ状SiO2層厚みを0.2 μm と1.3 μm とに変化させた。
その後、不純物のSO3 濃度が0.1 %、水和水分量1.2 %
のMgOと1.5 %のTiO2及び各種の硫酸化合物をSO3 換算
で0.5 %添加した焼鈍分離剤を塗布したのち乾燥した。
しかるのち仕上焼鈍として820 ℃の温度で50時間保定し
た後dryH2 雰囲気で1150℃・5時間の純化焼鈍を行っ
た。
【0040】
【表2】
【0041】このようにして得られた鋼板の磁気特性を
調査した。それらの調査結果を表3にまとめて示す。
【0042】
【表3】
【0043】表3から明らかなように、Sr, Mg, Ti, C
u, Pb, NiまたはSnの各硫酸塩を用いたこの発明の適合
例は良好な磁気特性と被膜特性が得られている。
【0044】実施例3 各種の化学組成を持つスラブを1400℃の温度に加熱し、
2.2mm 厚に熱間圧延し、1050℃・2分間の中間焼鈍をは
さんで0.30mmまで冷間圧延し、最終冷延板厚に仕上げ
た。これを前掲表2の条件で1次再結晶焼鈍することに
より内部酸化層中のラメラ状SiO2層厚みを0.2 μm と1.
3 μm とに変化させた。その後、持ち込み水分量2.0
%、不純物SO3 濃度0.1 %のMgOと0.8 %のCuSO4(SO3
換算で0.4 %) を添加した焼鈍分離剤を、塗布したのち
乾燥した。しかるのち仕上焼鈍として700 ℃〜1000℃ま
での昇温速度を20℃/h で昇温後dryH2 雰囲気で1150℃
・5時間の純化焼鈍を行った。このようにして得られた
鋼板の磁気特性を調査した。それらの調査結果を表4に
まとめて示す。
【0045】
【表4】
【0046】表4から明らかなようにこの発明範囲(適
合例)においては高い磁気特性が実現されている。
【0047】
【発明の効果】この発明は、方向性けい素鋼板の製造に
おいて、1次再結晶焼鈍で被成される酸化膜層中のラメ
ラ状SiO2層の厚み:wおよび焼鈍分離剤中のS量をSO3
として換算した値:sをそれぞれ特定するとともに、上
記両者の積を特定するものであり、この発明によれば、
磁気特性、被膜特性の良好な方向性けい素鋼板を安定し
て製造することが可能となり、品質向上、歩留り向上に
大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラメラ状SiO2層厚み、分離剤中のSO3 濃度と製
品特性の関係を示すグラフである。
【図2】ラメラ状SiO2層の説明図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siを2〜4.5 wt%の範囲で含有する鋼素
    材を、加熱炉にて加熱後熱間圧延し、1回もしくは中間
    焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終冷延板厚に仕
    上げたのち、1次再結晶焼鈍をし、その後スラリー状焼
    鈍分剤を塗布し乾燥してから最終仕上焼鈍を行う一連の
    工程よりなる方向性けい素鋼板の製造方法において、 1次再結晶焼鈍時の雰囲気、温度および時間を制御する
    ことにより、1次再結晶焼鈍で被成される酸化層中のラ
    メラ状SiO2を含むシリカ富化層の厚み:w (μm)を0.2
    μm 以上、3.6 μm 以下の範囲にすること、 添加剤を含むMgOを主体とする焼鈍分離剤を用い、MgO
    中の不純物と添加剤とを含めた焼鈍分離剤全体のS含有
    量をSO3 として換算した値:s (wt%)を0.1wt%以
    上、2.8 wt%以下の範囲にすること、 さらに上記wとsとの関係を0.15≦w・s≦3.3 を満た
    す範囲に調整することとからなる磁気特性および被膜特
    性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 焼鈍分離剤の添加物が、Sr, Mg, Ti, C
    u, Pb, NiまたはSnの硫酸化合物の1種または2種以上
    である請求項1に記載の磁気特性および被膜特性に優れ
    る方向性けい素鋼板の製造方法。
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