JPH11103872A - クロストリジゥムパーフリンジェンスワクチン - Google Patents

クロストリジゥムパーフリンジェンスワクチン

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JPH11103872A
JPH11103872A JP10210185A JP21018598A JPH11103872A JP H11103872 A JPH11103872 A JP H11103872A JP 10210185 A JP10210185 A JP 10210185A JP 21018598 A JP21018598 A JP 21018598A JP H11103872 A JPH11103872 A JP H11103872A
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ニコラス・ロビン・ウオーターフイールド
Peer Lyng Frandsen
ピール・リン・フランセン
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ジエレミー・マーク・ウエルズ
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 クロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒
素の免疫原性を有し非毒性の変異体またはその免疫原性
断片を提供する。 【解決手段】 本発明は、クロストリジゥムパーフリン
ジェンスβ−毒素の解毒した免疫原性誘導体またはその
免疫原性断片に関し、β−毒素アミノ酸配列に、野生型
β−毒素アミノ酸配列には存在しない変異を有すること
を特徴とする。本発明はまた、かかるβ−毒素をコード
する遺伝子ならびにかかるβ−毒素を発現する発現系に
も関する。さらに、本発明は、天然のβ−毒素を発現す
る細菌発現系に関する。最後に、本発明は、クロストリ
ジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の解毒した免疫原性
誘導体をベースとするワクチンおよび該ワクチンの製造
法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クロストリジゥム
パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)β−毒
素の解毒された免疫原性誘導体、該誘導体をコードする
DNA、該誘導体をコードするDNAを含むクロストリ
ジゥムパーフリンジェンス、野生型β−毒素を発現する
クロストリジゥムパーフリンジェンス以外をベースとす
るグラム陽性細菌発現系、それをベースとするクロスト
リジゥムパーフリンジェンスに対抗するためのワクチ
ン、天然のクロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒
素の製造法、クロストリジゥムパーフリンジェンスβ−
毒素の解毒された免疫原性誘導体の製造法およびクロス
トリジゥムパーフリンジェンスに対抗するためのワクチ
ンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】クロストリジゥムパーフリンジェンス
[クロストリジゥムウェルシュ(C. welchii)としても
知られる。]は、大きいクロストリジウム(Clostridiu
m )属の一種である。この属に属する細菌は全て、胞子
形成嫌気性グラム陽性バシラスである。クロストリジゥ
ムパーフリンジェンス種は、亜種に分けることができ
る。5つの亜種が記載されている。これらの亜種は、一
般に、A〜E「型」として知られている。全ての亜種は
いくつかの毒素を産生し、主要毒素も非主要毒素もあ
る。4個の主要毒素は、α、β、εおよびτ毒素であ
る。全ての種類のクロストリジゥムパーフリンジェンス
はα−毒素を産生する。β−毒素は、クロストリジゥム
パーフリンジェンスB型およびC型によって産生され
る。また、広範囲の非主要毒素は、全ての型のクロスト
リジゥムパーフリンジェンスによって産生される。全て
のクロストリジゥムパーフリンジェンス種が病原性であ
るのは、5種類のクロストリジゥムパーフリンジェンス
にこれらの各種毒素の1以上が存在することが主な理由
である。
【0003】A型は、ヒトおよびブタの両方に対して病
原性であることが知られている。B型は、主に子ヒツ
ジ、ヒツジおよびヤギに対して病原性であり、「子ヒツ
ジの赤痢」および出血性腸炎を引き起こす。C型は、ヒ
ト、ヒツジ、子ウシ、子ヒツジ、ブタおよびトリに対し
て病原性である。それは、「ヒツジの腸毒血症」、出血
性腸炎、壊疽性腸炎および腸性毒血性の原因である。
【0004】上記したように、クロストリジゥムパーフ
リンジェンスB型およびC型は共に、β−毒素を産生す
ることが知られている。β−毒素は、ヒトおよび動物の
壊疽性腸炎の病因において重要な役割を果たすことが知
られている。ヒトの場合、この病気は、ピッグベルと呼
ばれている(Johnsonら、Lancet ii, 496-500 (1987))。
動物では、子ウシ、子ヒツジおよびブタでの壊疽性腸炎
が記載されている(Hauschild, A.H.W. in S. Kadis, T.
C. Montie (編), Microbial toxins, p.159-188, Aca
demic press, Inc., New York (1971)および Willis,
T.A. Anaerobicbacteriology: clinical and laborator
y practice, 第3版, Butterworths, London (1977))。
【0005】クロストリジゥムパーフリンジェンス由来
のβ−毒素は、純粋な形で単離されている(Sakuraiら、
Infect. & Immun. 18:741-745 (1977), Sakurai ら、To
xicon 25: 1301-1310 (1987)) 。毒素の生物物理学的特
性についてはまだあまり知られておらず、従って、その
作用の仕方についても知られていない。しかし、それが
純粋な形で得られたという事実により、動物でのβ−毒
素の毒性ははっきり示すことができた。例えばマウスお
よびモルモットに対する精製したβ−毒素の致死毒性
は、Sakurai らによって示された(Infect. & Immun. 2
1: 678-680 (1978), Sakurai ら、Toxicon 25: 1301-13
10 (1987)) 。
【0006】最近、クロストリジゥムパーフリンジェン
スβ−毒素の核酸配列が Hunter らによって明らかにさ
れた(Infect. & Immun. 61:3958-3965 (1993))。核酸配
列から、β−毒素の大きさは約 35 kDであることが示さ
れた。
【0007】病原性においてB型およびC型由来のクロ
ストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の役割が最も
重要であることから、クロストリジゥムパーフリンジェ
ンスB型およびC型感染に対する免疫の開発においてか
なりの努力が払われている。β−毒素に対して免疫を誘
導する唯一の方法は、保護したい動物に毒素を投与する
ことである。しかし、明らかなように、毒素は解毒した
形で与えられなければならない。そうでないと、ワクチ
ン接種した動物の重病または死を招くからである。
【0008】解毒したβ−毒素(β−トキソイドとも呼
ばれる)をベースとするワクチンは、1960年頃にすでに
利用されていた(例えば、英国特許第 901,433号および
米国特許第 3,288,680号)。しかし、不活性化クロスト
リジゥムパーフリンジェンスβ−毒素をベースとする、
現在利用されている全てのワクチンは、いくつかの重大
な欠点を有する。
【0009】第一に、β−毒素をベースとする全てのワ
クチンは、化学的に解毒され、主にホルマリンで解毒さ
れたβ−毒素を含み、これらの化学的解毒工程を規格化
することは非常に困難であることが長年にわたって示さ
れた。タンパク質を解毒するための古典的な化学的方法
は、タンパク質の構造全体をかなりでたらめに変えると
いう欠点を有する。その結果、化学的解毒の工程中にβ
−毒素の免疫原性も急激に減少する。これは、例えば図
5から分かり、図6では、所定の標準的条件下でβ−毒
素を解毒するためには、ごく一般的に使用される不活性
化化合物であるホルマリンを少なくとも1%必要とする
ことが示されている。しかし、図5および6からは、免
疫原性の力価がホルマリンの量の増加とともに劇的に減
少することが分かる。全力価は、解毒に必要なホルマリ
ンの量が最も低くても(図6)力価が減少するので、決
して得ることはできない。これは、解毒と適正な力価、
すなわち免疫原性の両方を得ることができるのは、非常
に狭い範囲のみであることを示している。この非常に狭
い範囲ならびに少なくとも3つの変数、すなわち解毒時
間、温度および正確なホルマリン濃度があることから、
解毒したβ−毒素を再現性をもって産生することが非常
に困難であることは明らかである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、β−毒素の別
の解毒法が強く望まれている。現在まで、許容できる別
法は見いだされていない。これは次の理由による。すな
わち、解毒の十分なレベルと残存する免疫原性との間の
微妙なバランスが、一方ではタンパク質の構造、他方で
は蛋白質の生物学的特性の間の密接なつながりを暗示し
ているからである。従って、同時にタンパク質の免疫原
性をかなり損なうことなく、タンパク質の構造を変える
ことによりタンパク質の解毒が可能であるということは
予期することができなかった。
【0011】本発明の利点の一つは、上記の問題を回避
するための方法を初めて開示するということであり、遺
伝子操作技術の使用により、驚くべきことに、変異を誘
発すると、その必要な免疫原性をあまり損なうことなく
β−毒素の所望の非毒性誘導体を提供することができ
る、特異的で比較的大きいアミノ酸領域が見いだされ
た。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、一つの態様で
は、本発明は、そのアミノ酸配列に、野生型β−毒素に
は存在しない変異を少なくとも一つ有する、クロストリ
ジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の解毒された免疫原
性誘導体またはその免疫原性断片に関する。その免疫原
性断片は、β−毒素の誘導体の全長のアミノ酸配列は含
まないが、その誘導体の、宿主動物において保護的免疫
応答を誘導することができる領域はなおも含む断片であ
ると理解される。変異は、野生型β−毒素のアミノ酸配
列と比較した、誘導体β−毒素のアミノ酸配列における
変化であると理解される。
【0013】
【発明の実施の形態】変異は、置換、欠失、挿入もしく
は転位またはそれらの組み合わせである。変異は、例え
ば、β−毒素の1以上のアミノ酸が異なる特徴を有する
他のアミノ酸で置き換わるようなものである。適切な置
換は、例えば、アスパラギン酸のリシンによる置換な
ど、負に帯電したアミノ酸の正に帯電したアミノ酸によ
る置換である。別の適する置換は、芳香族アミノ酸の脂
肪族アミノ酸による置換であり、例えば、トリプトファ
ンのグリシンによる置換である。また、疎水正アミノ酸
の親水性アミノ酸による置換、例えばイソロイシンのア
スパラギン酸による置換なども適切である。
【0014】従って、本発明の好ましい形態は、少なく
とも一つの変異が置換変異である、本発明に係るβ−毒
素の誘導体に関する。明らかなように、置換の他に、β
−毒素の非毒性誘導体を提供するが、免疫応答をなおも
誘導することができる1以上のアミノ酸の挿入および/
または欠失を含む変異も本発明の一部である。従って、
同様に好ましい態様では、本発明は、少なくとも一つの
変異が欠失または挿入である本発明に係るβ−毒素の誘
導体に関する。2以上の変異を行う場合、置換および欠
失/挿入変異の組み合わせが等しく可能である。β−毒
素の誘導体は、マウスにおけるそのLD50(実験にお
いて全動物の50%を死に至らしめる用量)が天然のβ
−毒素のLD50より少なくとも10倍高い場合に非毒
性であるとする。天然のβ−毒素のLD50は約 0.15
μg/マウスである。
【0015】上記したように、本発明の利点の一つは、
当技術分野で想定されていたことと反対に、非毒性であ
り、なおも免疫原性であるトキソイドが得られるように
β−毒素のアミノ酸配列を遺伝子的に変えることができ
ることが見いだされたことである。しかし、全ての変異
が所望の非毒性でなおも免疫原性であるβ−毒素の誘導
体をもたらすわけではない。従って、非毒性であり、な
おも免疫原性であるβ−毒素の誘導体を産生する変異を
迅速にスクリーニングし、選択するための試験が開発さ
れている。この試験は、非毒性でなおも免疫原性である
β−毒素の誘導体を産生する多数の変異体のスクリーニ
ングを可能にする。この試験は下記で開示する。
【0016】また、好ましくはβ−毒素の中性および親
水性部分の間の遷移ドメインを形成する領域が、所望の
特性を有するβ−毒素の非毒性誘導体を与える変異を導
入するための標的領域として適することが見いだされ
た。これらの領域は、β−毒素の配列に Hopp-Woods ア
ルゴリズムを適用することにより容易に追跡できる(Hop
p および Woods;Proc. Natl. Acad. Sci. 78:38248-383
8 (1981)) 。従って、この態様のより好ましい形態で
は、本発明は、β−毒素の中性および親水性部分の間の
遷移ドメインに位置する変異を有するβ−毒素の誘導体
に関する。
【0017】変異に対する標的領域として非常に適する
領域は、ペプチドリーダーのメチオニンに対して62の
位置、182の位置、197の位置、アミノ酸番号80
〜103、145〜147、281〜291、295〜
299の間、ならびにアミノ酸位置292のユニークな
システインの下流領域に位置する。従って、さらに好ま
しい形態では、本発明は、変異がペプチドリーダーのメ
チオニンに対して62、182、197の位置およびア
ミノ酸番号80〜103、145〜147、281〜2
91、295〜299の間および/またはアミノ酸位置
292の下流領域の少なくとも一つに位置するβ−毒素
の誘導体に関する。さらに好ましい形態では、変異が6
2の位置、80〜82の位置、95〜97の位置、10
1〜103の位置、145〜147の位置、182の位
置、197の位置、287〜291の位置、295〜2
99の位置にある。
【0018】本発明に係るβ−毒素の非毒性免疫原性誘
導体は、そのタンパク質中のアミノ酸を化学的に置換ま
たは修飾することにより作ることができる。それらはま
た、β−毒素をコードする遺伝子に変異を導入すること
によっても作ることができる。DNA断片に変異を導入
する方法は、下記で説明する。変異したDNA断片は、
次いで、例えば適する発現プラスミドなどのヌクレオチ
ド配列でクローン化し、次いで発現させることができ
る。
【0019】従って、別の態様では、本発明は、本発明
に係るクロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の
遺伝子的に解毒した免疫原性誘導体またはその免疫原性
断片をコードすることを特徴として有する変異したDN
A断片を含むヌクレオチド配列に関する。
【0020】上記したように、この態様の好ましい形態
では、本発明は、β−毒素の中性および親水性部分の間
の遷移ドメインに位置する変異を有するβ−毒素の誘導
体に関する。β−毒素のかかる誘導体は、β−毒素のか
かる誘導体をコードするDNA断片を発現することによ
り作ることができる。従って、好ましい形態では、β毒
素の誘導体をコードする変異したDNA断片が、ベータ
−毒素の誘導体の中性および親水性部分の間の遷移ドメ
インをコードする少なくとも1つのDNA領域に変異を
有する。
【0021】本発明に係るクロストリジゥムパーフリン
ジェンスβ−毒素の解毒した免疫原性誘導体は、例え
ば、β−毒素をコードする遺伝子のランダムな変異誘発
によって得ることかできる。ランダムな変異誘発を誘導
する多くの方法が当技術分野で公知であり、例えば、変
異誘発する化学物質を使用した化学的に誘導される変異
誘発、UV照射もしくはγ−照射による変異誘発または
組換えDNA技術を使用するランダム変異誘発などであ
る。
【0022】また、DNAレベルでの変異は、特異的部
位で行うことができる(部位特異的変異誘発)。これ
は、公知の遺伝子工学技術の助けを借りて行う。例え
ば、制限酵素を使用して標的領域にあるDNA断片また
は標的領域を包含するDNA断片を切り出し、これらの
断片を変異した配列を有する合成断片で置き換えること
ができる。部位特異的変異誘発はまた、標的領域に変異
を導入するための非常に便利な技術である。変異が置換
変異に関する場合、リーディングフレームはもちろん不
変のままである。欠失および/または挿入変異と置換変
異との組み合わせも可能である。
【0023】上記したDNA変異技術は、当技術分野で
周知であり、Maniatis, MolecularCloning, Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-309-6 (198
9)に記載されている。
【0024】本発明に係るβ−毒素の誘導体を発現する
ための適切な細菌発現系はクロストリジゥムパーフリン
ジェンス細菌自身である。天然のβ−毒素遺伝子は、相
同組換えを使用して本発明に係るβ−毒素の誘導体をコ
ードする変異したDNA断片で容易に置き換えることが
できる。相同組換えは当技術分野で周知の技術である。
こうして得られた組換えクロストリジゥムパーフリンジ
ェンスは、従って、本発明に係るクロストリジゥムパー
フリンジェンスβ−毒素の遺伝子的に解毒した免疫原性
誘導体を産生する。従って、さらに別の態様では、本発
明は、上記したように変異したDNA断片を有するヌク
レオチド配列を含むクロストリジゥムパーフリンジェン
スに関する。
【0025】しかし、上記以外のいくつかの問題が、ク
ロストリジゥムパーフリンジェンス由来のクロストリジ
ゥムパーフリンジェンスβ−毒素の毒性および遺伝子的
に変化した非毒性誘導体の単離の際に出合う。第一に、
クロストリジウムは、研究者の健康面から見ると、増殖
させるのが危険な細菌である。β−毒素の産生に対する
クロストリジウム種の増殖は安全性の高い条件下で行な
わなければならないが、その場合、大規模生産は困難で
ある。第二に、前述したように、β−毒素とともに、他
のいくつかの主要/非主要毒素が作られる。これらの他
の毒素の中からβ−毒素を単離し精製することは、例え
ばワクチン製造の場合に必要であるが、困難であり、時
間がかかる。第三に、クロストリジウム種は、胞子形成
性の細菌である。β−毒素調製物から全ての胞子を除去
し、同時にβ−毒素の免疫原性を保持することが必要で
あるが、困難である。なぜならば、これらの胞子は熱お
よび化学薬品に対する耐性が高いからである。従って、
他のクロストリジウム毒素がなく、クロストリジウム胞
子のないβ−毒素を提供するための方法が明らかに必要
とされる。
【0026】クロストリジウムβ−毒素を発現するため
の、グラム陰性細菌である大腸菌(E.coli)をベースと
する非クロストリジウム発現系は以前に記載されてい
る。大腸菌の系は、β−毒素遺伝子の発現に対して Hun
ter らが使用している(Infect.& Immun. 61:3958-3965
(1993))。予想される34 kD のタンパク質に対応する小
さいバンドのみが認められ、β−毒素タンパク質のほと
んどは、大きい118 kDの多重形態で確認された。Steinp
orsdottir ら(FEMS Microbiology Letters 130:273-278
(1995))は、β−毒素遺伝子を、グルタチオンS−トラ
ンスフェラーゼに融合した融合タンパク質として大腸菌
で発現させることを試みた。彼らも、Hunterのように、
高分子量の天然以外のβ−毒素のみを確認した。この論
文では、大腸菌で産生されるタンパク質は、天然のβ−
毒素とは異なるコンホメーションを有するという結論で
締めくくっている。従って、クロストリジウムによって
コードされている他のタンパク質が、天然のβ−毒素の
コンホメーションのフォールディングおよび分泌におい
て更なる役割を果たしているように見える。この理由の
ため、上述したように、構造と免疫原性との間には微妙
なバランスがあるので、クロストリジゥムパーフリンジ
ェンス以外の源から得られ、従って天然形ではないβ−
毒素は、使用する発現系に関係なく、ワクチンの有効な
ベースとなると予想することはできない。
【0027】驚いたことに、クロストリジゥムパーフリ
ンジェンス以外のグラム陽性細菌での天然のβ−毒素遺
伝子の発現により、クロストリジゥムパーフリンジェン
スで産生される天然のβ−毒素の全ての生物学的および
生物物理学的特性ならびに活性を有するが、クロストリ
ジゥムパーフリンジェンスまたは大腸菌で産生されるβ
−毒素よりもかなり望ましい利点をいくつか有する天然
のβ−毒素が得られることが見いだされた。利点とは、
すなわち、a)クロストリジゥムパーフリンジェンス胞
子が混入していない、b)リポ多糖が混入することなく
産生される、c)他の主要/非主要クロストリジウム毒
素を含まないで産生される、およびd)コンホメーショ
ンが天然のものである。このようにして得られたβ−毒
素は、クロストリジウムから得られるβ−毒素よりもホ
ルマリンによってかなり有利に不活性化することができ
る。というのは、不活性化中に考慮すべき唯一の生物学
的物質がβ−毒素自体であるからである。胞子、リポ多
糖および他の大きい/小さいクロストリジウム毒素は、
自体存在しないので、注意する必要がない。
【0028】従って、さらに別の態様では、本発明は、
グラム陽性細菌がクロストリジゥムパーフリンジェンス
でないグラム陽性細菌発現系に関し、該発現系は、野生
型クロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素をコー
ドする遺伝子を含む。
【0029】β−毒素遺伝子は、その天然のプロモータ
ーの制御下におくことができる。また、それは、異種プ
ロモーターの制御下におくこともできる。そのようなプ
ロモーターとしては、例えば Lac−プロモーター(Chang
ら、Nature 275:615 (1978))または Trp−プロモーター
(Goeddelら、N.A.R. 8:4057 (1980)) を挙げることがで
きる。該プロモーターは、β−毒素の過発現を招く強い
プロモーターであってもよく、または、誘導性プロモー
ターであってもよい。どちらのプロモーターも当技術分
野で公知である。
【0030】グラム陽性細菌に対するいくつかの発現系
が記載されており、いくつかのファミリーのグラム陽性
細菌で使用するための多目的発現プラスミドは当技術分
野で公知である。一例として、Simon および Chopin (B
iochimie 70:559-567 (1988)) に記載の、エンテロコッ
カスグラム陽性細菌の宿主範囲の広いpAMβ1 のレプリ
コンをベースとする発現系が挙げられる。このプラスミ
ドの誘導体は、例えばストレプトコッカス、ラクトバシ
ラスおよびバシラス種での外来遺伝子の発現に使用でき
る。クロストリジウム以外のグラム陽性細菌群内では、
ゲノムのAT−含量が比較的高い細菌が、クロストリジ
ウム属由来の遺伝子のクローニングおよび発現に対して
非常に適する。従って、より好ましい形態では、天然の
β−毒素または本発明に係るβ−毒素の誘導体の製造に
使用されるグラム陽性細菌は、ラクトコッカス(Lactoc
occus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ロイコノ
ストック(Leuconostoc)、ペディオコッカス(Pedioco
ccus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エン
テロコッカス(Enterocuccus)、スタフィロコッカス
(Staphylococcus)、バシラス(Bacillus)、サルシナ
(Sarcina)、ルミノコッカス(Ruminococcus)または
リステリア(Listeria)の群から選択される。
【0031】もちろん、本発明に係る変異したβ−毒素
遺伝子をクロストリジウム以外のグラム陽性細菌で発現
することは、さらに有利である。その場合、ホルマリン
による解毒処理は完全に省略できる。そのようにして得
られるβ−毒素の非毒性誘導体は、胞子がないこと、リ
ポ多糖がないこと、他の主要/非主要クロストリジウム
毒素がないこと、および天然形であることの他に、それ
自体が非毒性であるという別の利点を有する。従って、
より好ましい形態では、本発明は、グラム陽性細菌発現
系に関し、該グラム陽性細菌は、クロストリジゥムパー
フリンジェンスではなく、本発明に係る誘導体β−毒素
遺伝子またはその免疫原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列を含む。
【0032】本発明のさらに別の態様は、クロストリジ
ゥムパーフリンジェンスβ−毒素の遺伝子的に解毒され
た免疫原性誘導体をベースとする、クロストリジゥムパ
ーフリンジェンス感染に対抗するためのワクチンに関す
る。該ワクチンは、例えば、本発明に係るクロストリジ
ゥムパーフリンジェンスβ−毒素の解毒された免疫原性
誘導体の免疫学的に十分な量と生理学的に許容される担
体とを混合することにより作ることができる。免疫学的
に十分な量は、宿主動物において保護的免疫応答を誘導
することができる解毒された免疫原性クロストリジゥム
パーフリンジェンスβ−毒素の量であると理解される。
すなわち、本発明のさらに別の態様は、本発明に係るク
ロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の誘導体ま
たはその免疫原性断片および生理学的に許容される担体
を含む、クロストリジゥムパーフリンジェンス感染をな
くすためのワクチンに関する。
【0033】生理学的に許容される担体は、例えば水ま
たは生理学的食塩水である。ワクチンは、例えば、分解
しやすいポリペプチドが分解するのを保護し、ワクチン
の貯蔵寿命を高め、または凍結乾燥の効率を改善するた
めに、さらに安定剤と混合することが多い。有用な安定
剤は、SPGA(Bovarnikら、J. Bacteriology 59:509
(1950))、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニト
ール、トレハロース、澱粉、ショ糖、デキストランまた
はグルコース)、タンパク質(アルブミンもしくはカゼ
インまたはそれらの分解産物など)および緩衝剤(アル
カリ金属リン酸塩など)である。言うまでもなく、化合
物を添加することによりワクチンを安定化するための他
の方法も本発明に含まれる。
【0034】所望により、アジュバント活性を有する1
以上の化合物をワクチンに添加してもよい。アジュバン
トは、免疫系の非特異的刺激剤である。それらは、投与
した免疫原に対する宿主の免疫応答を高める。従って、
より好ましい形態では、本発明に係るワクチンは、アジ
ュバントを含む。当技術分野で公知のアジュバントの例
としては、フロイントの完全および不完全アジュバン
ト、ビタミンE、非イオンブロックポリマー、ムラミル
ジペプチド、ISCOM(免疫刺激複合体、例えば欧州
特許 EP 109942参照)、サポニン、鉱物油、植物油およ
び Carbopol (ホモポリマー)が挙げられる。特に粘膜
投与に適するアジュバントは、例えば、熱に対して不安
定な大腸菌毒素(LT)またはコレラ毒素(CT)であ
る。他の適するアジュバントは、例えば、水酸化アルミ
ニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、油−
エマルジョン(例えば、Bayol F(R)または Marcol 52
(R))、サポニンまたはビタミンE溶解物である。
【0035】本発明に係るワクチンは、生ワクチンを保
管するための当技術分野で公知の方法を使用して保管す
ることができる。保管は、例えば0℃より下の温度で行
うことができる。
【0036】凍結乾燥も公知であり、ワクチンの保存に
対して適切な方法である。凍結乾燥は、ワクチンを非凍
結乾燥ストックを保存するのに必要な温度よりも十分高
い温度でストックしておくことができるように安定化さ
せるという利点を有する。本発明に係るワクチンは、特
にそれを上記したような安定剤と凍結乾燥の前に混合す
る場合は、非常に有効に凍結乾燥させることができる。
【0037】ワクチンは、クロストリジゥムパーフリン
ジェンスB型またはC型感染に対して敏感な全ての宿
主、例えばヒト、子ヒツジ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、とり
および子ウシなどに投与することができる。ワクチン
は、生まれるとすぐに投与することができるが、より後
の段階で投与することもできる。ワクチンの用量は、好
ましくは、動物1匹に対して1〜100μgの誘導体で
あり、その動物の大きさにもよる。例えばブタの場合、
非常に適する用量は20〜80μgである。
【0038】原則的に一般的な全ての投与法を使用する
ことができるが、ワクチンは、好ましくは腹腔内、鼻腔
内、筋肉内、皮下、経口または皮内投与する。
【0039】本発明のさらに別の態様は、クロストリジ
ゥムパーフリンジェンス感染に対抗するためのワクチン
の別の製造法に関する。クロストリジゥムパーフリンジ
ェンスB型またはC型に対して敏感なヒトまたは動物を
宿主とする弱毒化した、または非病原性の生きた細菌お
よびウイルスは、上述したように、本発明に係る変異し
たβ−毒素遺伝子の担体として使用することができる。
これらのいわゆる生きた組換え担体ワクチンは、生理学
的に許容される担体とともに宿主動物に安全に投与する
ことができる。それらは、挙動が非病原性であり、β−
毒素の非毒性誘導体を発現する。生きた組換え担体をベ
ースとするワクチンは、宿主においてクロストリジゥム
パーフリンジェンスβ−毒素の誘導体を直接産生する、
または提示するという利点を有する。
【0040】そのような組換え細菌またはウイルスを接
種した動物は、ベクターの免疫原に対してのみでなく、
その遺伝子コードが組換え担体でさらにクローン化され
るポリペプチドの免疫原性部分に対しても免疫原性応答
を生じる。これは、該組換え担体を投与することによ
り、2以上の病気に対する保護が得られるという利点を
有する。
【0041】現在、多くの生きた組換え担体ウイルスお
よび細菌が当技術分野で公知である。適切な生きた組換
え担体細菌は、例えば、サルモネラ種および大腸菌種で
ある。当技術分野で生きた組換え担体として頻繁に使用
されるウイルスは、アデノウイルス、レトロウイルス、
ワクシニアウイルスおよびヘルペスウイルスである。ま
た、特定の経口投与可能な担体ウイルスとして適切なの
は、ブタパルボウイルスである。β−毒素をコードする
遺伝子を運ぶための生きた組換え担体ウイルスとして有
用な別のウイルスは、ヘルペスウイルス仮性狂犬病ウイ
ルス(PRV)(例えば、欧州特許第 606,437号に記
載)である。β−毒素遺伝子を運ぶ該PRVは、ブタを
PRVおよびクロストリジゥムパーフリンジェンスC型
の両方の感染に対して保護するであろう。
【0042】すなわち、本発明に係る変異したβ−毒素
遺伝子を運ぶ生きた組換え担体生物を含む、クロストリ
ジゥムパーフリンジェンス感染に対抗するためのワクチ
ンも本発明の一部である。
【0043】明らかなように、天然のβ−毒素は、クロ
ストリジゥムパーフリンジェンスにおける最も重要な毒
性因子ではないとしても、重要である。従って、天然の
β−毒素遺伝子が上記した本発明に係る変異したβ−毒
素遺伝子で置換されたクロストリジウム菌株は、重要な
毒性因子を失っている。かかる菌株は、β−毒素がその
毒性型ではなく、非毒性誘導体型で作られるので、弱毒
化生ワクチンとして使用することができる。かかる弱毒
化生ワクチンの利点は、それが、非毒性であるが、なお
も免疫原性であるβ−毒素を産生し、さらに、天然のク
ロストリジゥムパーフリンジェンス株の他の全ての免疫
原抗原を有するということである。
【0044】従って、天然のβ−毒素遺伝子が本発明に
係る変異したβ−毒素遺伝子で置換された生きた弱毒化
クロストリジゥムパーフリンジェンス株を含むワクチン
も本発明に含まれる。
【0045】また、本発明に係るβ−毒素誘導体の他
に、他の病原体由来の免疫原を含むワクチンも本発明に
含まれる。これにより、一回のワクチン投与工程で、種
々の病気に対するワクチン接種が可能である。この態様
のより好ましい形態では、本発明に係るワクチンが、ア
クチノバシラスプリューロニューモニエ(Actinobacill
us pleuropneumoniae)、仮性狂犬病ウイルス、ブタイ
ンフルエンザウイルス、ブタパルボウイルス、伝染性胃
腸炎ウイルス、ロタウイルス、エシエリヒアコリ(Esch
erichia coli)、エリシペロスリックスルシオパシエ
(Erysipelothrix rhusiopathiae)、パスッレラムルト
シダ(Pasteurella multocida)、ボルデテラブロンチ
セプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ
(Salmonella)種、ミコプラズマニューモニエ(Mycoplas
ma hypopneumoniae)、ヘモフィラスパラスイス(Haemo
philus parasuis)およびヘリコバクター(Helicobacte
r)様細菌から成る群から選択される他の病原体を含
む。
【0046】本発明はまた、天然のクロストリジゥムパ
ーフリンジェンスβ−毒素の製造法に関し、該方法は、
該β−毒素をコードするDNA断片を含むヌクレオチド
配列をクロストリジゥムパーフリンジェンス以外のグラ
ム陽性細菌で発現させることを基本とする。
【0047】さらに、本発明は、本発明に係るクロスト
リジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の非毒性誘導体の
製造法を提示する。これらの方法は、β−毒素の誘導体
をコードするDNA断片を含むヌクレオチド配列をグラ
ム陽性細菌で発現させることを基本とする。
【0048】また、本発明は、クロストリジゥムパーフ
リンジェンス感染に対抗するためのワクチンの製造法を
提供する。該方法は、例えば、本発明に係るクロストリ
ジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の誘導体および生理
学的に許容される担体を混合することを含む。
【0049】
【実施例】実施例1 発現プラスミド pKS90、pTREX1A 、pTREX7および pTREX
14の構築:pKS90 プラスミドは、pTREX1プラスミドをベ
ースとするコピー数の高い(40〜80コピー/細胞)θ−
複製グラム陽性プラスミドであり、pTREX1プラスミド自
体は、以前に公開された pIL253 プラスミドの誘導体で
ある。pIL253は、pAMb1 の広いグラム陽性宿主範囲のレ
プリコンを組み入れ(Simon, D.および A. Chopin,1988,
ベクタープラスミドファミリーの構築およびその Stre
ptococcus lactisでの分子クローニングに対する用途、
Biochimie, 70:59-567) 、L. lactis 性因子による移動
性がない。pIL253はまた、pIL501を一例とする接合性の
親プラスミドによる輸送または効果的な移動に必要な t
ra機能に欠ける。腸球菌 pAMb1レプリコンは、以前に、
Streptococcus 、Lactobacillus および Bacillus 種な
らびに Clostridium acetobutylicum などの種々の種に
転移されており(Gibson, E.M., N.M. Chace, S.B. Lond
onおよび J. London, 1979, J. Bacteriol. 137:614-61
9; LeBlanc, D.J., R.J. Hawley, L.N. Lee および E.
J. St. Martin, 1978,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 7
5:3484-3487; Ouitram, J.D. および M. Young,1985, F
EMS Micro. Lett. 27:129-134)、これは、利用できる宿
主の範囲が潜在的に広いことを示している。pTREX1(お
よび pTREX1A)は、基本構成的転写ベクターを表してい
るが、誘導体 pKS90は、発現レベルを増加させるため
に、ラクトコッカス翻訳開始領域への翻訳共役を利用し
ている。pKS90 およびその直接の親であるpTREX1の構築
の詳細を下記に示す。
【0050】pTREX1:推定上のRNA安定化配列、翻訳
開始領域(TIR)、標的遺伝子を挿入するための多重
クローニング部位および転写ターミネーターを含む人工
DNA断片を、2個の相補的オリゴヌクレオチドをアニ
ーリングし、Tfl DNAポリメラーゼで伸長することに
より作製した。センスおよびアンチセンスオリゴヌクレ
オチドは、クローニングを容易にするために、各々それ
らの5’端にNheIおよびBamHIに対する認識部位を含め
た。この断片は、pUC19 の誘導体である pUC19NT7 の X
baI および BamHI部位の間でクローン化した。pUC19
は、EcoRI および HindIII部位の間でクローン化した p
LET1(Wells, J.M., P.W. Wilson および R.W.F. LePag
e, 1993, J. Appl. Bact. 74:629-636) 由来のT7発現カ
セットを含む。得られた構築物は、pUCLEXと命名した。
次いで、pUCLEXの完全な発現カセットを、HindIIで切断
し、平滑にした後、EcoRI で切断して pIL253 の EcoRI
および SacI(平滑)部位でクローン化することにより
取り出し、ベクター pTREXを作製した。推定上のRNA
安定化配列およびTIRは、大腸菌T7バクテリオファ
ージ配列から誘導し、一つのヌクレオチド位置で改変し
て、 Lactococcus lactis のリボソーム 16sRNAに対
するシャイン・ダルガルノ(SD)モチーフの相補性を
高めた。P1と命名した Lactococcus lactis MG1363染
色体プロモーターを、発現カセットに存在する EcoRIお
よび BglII部位の間でクローン化して、pTREX1を作製し
た。このプロモーターは、以前に、プロモータープロー
ブベクター pSB292 を使用して単離され、プライマー伸
長およびDNA配列分析により解析されている (Nick.
R. Waterfield, R.W.F. Le Page, P.W. Wilsonおよび
J.M. Wells,Gene, 165, 1995, 9-15) 。プロモーター断
片は、VentDNAポリメラーゼを使用してPCRにより
増幅した。PCR断片には、クローン化したプロモータ
ーの上流の全てのDNA配列および3’から転写開始部
位までの15までの塩基を含めた。このプロモーターの
転写開始部位の下流に存在するシャイン・ダルガルノ
(SD)配列は、発現カセットに示される開始コドン以
外の部位での翻訳開始を回避するために、PCR増幅し
たプロモーター断片から慎重に除いた。pTREX7および p
TREX14と命名した同様の2つのベクターも、P1の代わ
りに EcoRIおよびBglII部位の間でクローン化した、よ
り弱いP7およびP14プロモーターを使用して作製し
た。これらのプロモーター断片を作製するために使用し
たPCRプライマーを図1dに示す。pTREX1A プラスミ
ドは、pTREX1に変わるものであり、XbaI結合発現カセッ
トが、pET3A 由来の XbaI-SpeI T7-発現カセット断片で
置き換わっている。従って、SD配列は、Lactococcus
に対しては最適化されていない。完全な pTREX1A 配列
および発現カセットを示す構成図を図1に示す。
【0051】pKS90:pKS90 プラスミドは、pTREX1の誘導
体であり、同じ転写プロモーターP1を使用するが、S
Dおよびラクトコッカス染色体由来のリゾルベース遺伝
子P11(Nick. R. Waterfield, R.W.F. Le Page, P.W.
Wilson および J.M. Wells, Gene,165, 1995, 9-15)
の最初の20個のコドンを含む改変したTIRを有す
る。これは、pTREX1の BglIIおよび BamHI部位の間で、
新規TIRを含む人工DNA配列をクローニングするこ
とにより達成した。この方法で使用するオリゴヌクレオ
チド配列を図2に示す。PCRプライマー配列を慎重に
選択することにより、PCR誘導される標的遺伝子をこ
のTIRに翻訳可能なように結合させることができ、こ
れは、pTREX1親プラスミドから得たものと比較して、発
現レベルを増加させることが分かった。完全なpKS90 配
列および発現カセットを示す構成図を図2に示す。
【0052】活性β−毒素を分泌する Lactococcus lac
tis の組換え菌株の構築:Hunterら(Infect. & Immun.
61: 3958-3965 (1993)) によって発表された、β−毒素
をコードする遺伝子を含む pJF2000DNA(J. Frey, I
nstitute for veterinary bacteriology, ベルン大学,
CH-3012 Berne,スイス) を大腸菌 SURE にエレクトロポ
レーションにより導入した。独立した6個の形質転換体
由来のプラスミドDNAを単離し、制限消化によって調
べ、プールした。これらの菌株は、15%グリセロール
中、−70℃で保管した。結合した翻訳開始領域(およ
び上流のRNA安定化ステムループ)を有するcpb遺
伝子を、XbaI/BamHIまたは SmaI/BamHI で消化すること
により、このプールしたプラスミドDNA調製物から切
り出した。精製したcpb遺伝子断片を、各々、構成的
発現のレベルが高、中および低である発現ベクター pTR
EX1A、pTREX14 および pTREX7 の多重クローニング部位
に連結した。XbaI/BamHIを末端とするcpb断片は、Xb
aI/BamHIで消化した pTREX1ANEW に連結し、SmaI/BamHI
を末端とするcpb断片は、BamHI/BglII (平滑)pTRE
X14 および pTREX7 DNAに連結した。これらの構築物
は、カゼインから遊離させたペプチドをその生物に利用
させることができる、染色体にコードされたペプチダー
ゼ pep5 に欠けた、特別に無能力化した菌株 Lactococc
uslactis pep5- acmA- にうまくエレクトロポレーショ
ン導入した。しかし、この目的には、他のどの Lactoco
ccus lactis 菌株も適する。各種類の正しい単離物を、
制限消化分析を使用して同定し、15%グリセロール
中、−70℃で保管した。これらの種類の菌株は、L. l
actis pep5- acmA- [pTREX1Acpb]、L. lactispep5- acm
A- [pTREX14cpb]および、L. lactis pep5- acmA- [pTRE
X7cpb] と命名した。さらに、cpb遺伝子は、VentD
NAポリメラーゼおよびプラスミド pJF2000由来の Bam
HIを末端とするオリゴヌクレオチドを使用するPCRに
よって増幅した。このPCR産物は、TIR結合ベクタ
ー pKS90の BamHI部位でクローン化した。
【0053】対数増殖中期細胞および上清から抽出した
全タンパク質を、SDS−PAGEを使用して分解した
後、ニトロセルロースフィルターに移した。これらのフ
ィルターを、MAB(モノクローナル抗体)精製したβ
−毒素を対照として使用して、Cpbに対するモノクロ
ーナルおよびポリクローナル抗体でプローブした。正し
い大きさ(約 30 kDA)の1個のタンパク質産物が、ウェ
スタンブロット法およびSDS−ゲルのクーマシーブル
ー染色によって、全部で4個の菌株の培養上清で検出さ
れた。各菌株によって分泌されるβ−毒素の量は、使用
する発現ベクターのプロモーターの相対的強さと一致し
た。細胞内毒素は検出できなかった。これは、クロスト
リジウム輸出配列が Lactococcusで効果的に作用するこ
とを示唆している。pTREX1A 発現体 L. lactis MG1363
pep5- acmA- [p3-1/5]および pKS90発現体 L. lactis M
G1363 pep5- acmA- [p5-123]の濾過した上清は、活性毒
素を含むことが分かり、組換えβ−毒素に対する正の対
照となる。
【0054】cpb変異体遺伝子:変異体cpb遺伝子
は、プラスミド pJF2000(J. Frey により提供された)
に存在する元の鋳型cpb遺伝子(クロストリジゥムパ
ーフリンジェンスC型からクローン化した)から Vent
DNAポリメラーゼによって増幅されるPCR断片を使
用する in vitro 遺伝子構築によって作製した。この構
築で使用したプライマーおよび使用した構築法の一例を
図3に示す。これらの変異体は、末端cpbF2および
cpbR PCRプライマーの5’端に BamHI部位を含
めることにより、pKS90 発現プラスミドの BamHI部位で
クローン化することができた(上記参照)。cpbAT
G開始コドンに対して適切に位置したBamHI 部位が導入
されたPCRプライマーを選択することにより、変異体
cpb遺伝子を pKS90のP11 TIR に翻訳可能なように結
合させることができた。この方法を使用して、一連の変
異体発現菌株を作製した。これらの変異体遺伝子の正確
な配列(pKS90 でクローン化した後)は、3〜4倍の重
複性で自動配列決定により決定し、遺伝子配列および発
現プラスミドにおける位置を確認した。これらのベクタ
ーでの変異体遺伝子のクローン化は、天然のcpb N
−末端輸出リーダーによって培養上清への遺伝子産物の
分泌を可能にした。培養上清はフィルター滅菌し、動物
のバイオアッセイで直接使用した。
【0055】
【表1】
【0056】変異体発現菌株:pKS90 をベースとするト
キソイド発現プラスミドは、特別に無能力化した ラク
トコッカス宿主菌株の L. lactis MG1363 pep5- acmA-
中で増殖するが、他のラクトコッカス菌株も使用するこ
とができる。この菌株は、プロファージおよびプラスミ
ドを除去した菌株であり、かなり栄養要求性で、天然乳
汁の環境では生存することができない。さらに、他のラ
クトコッカス菌株よりも増殖速度が遅い。上記したよう
に構築した非毒性の発現菌株を表1に示す。この表で
は、どのアミノ酸が変異し、その変異がどこに位置する
かを示す。
【0057】トキソイド発現菌株は、0.5% w/vのグルコ
ースおよび 5 g/ml のエリスロマイシンを補充したM1
7培地 (Difco 触媒番号 1856-17) で増殖させることが
できる。通気は必要でなく、それどころか無酸素条件が
好ましいが、必須ではない。最適の増殖温度は30℃で
ある。これら全ての菌株によって産生される種々のトキ
ソイドタンパク質は、培地で 5 g/ml 未満のレベルまで
蓄積することが分かっている。モノクローナルおよびポ
リクローナル抗体の両方を使用したウェスタンブロット
分析により、正しいサイズのタンパク質モノマーは、上
記で挙げた、命名されている全ての発現菌株により、上
清に分泌されることが確認された。変異体タンパク質の
一例であるM4(4−3)のN−末端配列決定により、
リーダーペプチドは、ラクトコッカス細胞質からの輸送
中に正しく切断されることが確認された。
【0058】cpb遺伝子のランダムな変異誘発に対す
るプロトコール:典型的なPCR反応混合物は次のよう
に作る。
【0059】10 mM のトリス−HCl(pH 8.7、25
℃) 50 mM のKCl、5 μg/mlのウシ血清アルブミン 0.5 μM の各PCRプライマー (cpbg2: 5'-ggaggatccaaatgaagaaaaaatttatttcattagtt
atag-3') (cpbR: 5'-atggatccgtctaaatagctgttactttgtgag-3') 4 mMのMgCl20.5 mMのMnCl2 3.4 mMの強制dNTPおよび 0.2 mM の他の3種類のd
NTP(dNTP濃度は、0.1 〜 10 mMの範囲にするこ
とができる。) 600 pMの鋳型DNA(pJF2000 cpb クローンまたは他の
cpb誘導体) 2UのTaq DNAポリメラーゼ加熱サイクル条件は次の通りだった。
【0060】(94℃で30秒、50℃で60秒、72
℃で180秒)を30サイクル、次いで72℃で600
秒のインキュベート。
【0061】この反応は、4種類のdNTPの各々を強
制ヌクレオチドとして使用することにより行い、次いで
プールした。こうして、置換の適切なランダム混合物が
得られる。プールしたPCR断片は次いで、BamHI 消化
し、BamHI 消化したpKS90 に連結した。この連結混合物
を Lactococcus lactis MG1363に入れて形質転換した。
形質転換体は液体培養で増殖させ、濾過した上清を、実
施例3に記載した invitro β−毒素アッセイで試験し
た。
【0062】実施例2 Lactococcus lactisの培養:L. lactis 産生遺伝子で変
性したβ−毒素を、0.5% w/vのグルコースおよび 5μg/
mlのエリスロマイシンを補充したM17培地(例えば、
Difco 触媒 1856-17)で増殖させた。通気は必要でな
く、無酸素条件が好ましいが、必須ではない。最適の増
殖温度は30℃である。対数増殖中はグルコースの添加
が必要である。
【0063】抗原調製物:培養上清を、遠心分離によっ
て細胞から分離した。上清を滅菌濾過した後、誘導体を
硫酸アンモニウム(0.3 g/g)で沈殿させた。沈殿物はP
BSに再懸濁した。あるいは、培養上清は、<10,000 D
a のフィルター上で濃縮させることができる。
【0064】マウスの致死性:L. lactis中で産生した
β−毒素の誘導体は、最初に、滅菌濾過した培養上清を
腹腔内注入(約20 g体重のNRMIマウスに0.5 ml)するこ
とにより試験した。誘導体 pM 6-1 、6-5 および6-7
は、天然毒素と同様のレベルの致死性であった。pM 6-
1、6-5 および6-7 は、アミノ酸位置 Cys292→ Ala292
で改変されている。
【0065】
【表2】
【0066】次の実験では、誘導体を含む上清を硫酸ア
ンモニウムで沈殿させた。各誘導体を含む沈殿物を 10
倍少ない体積のPBSに再懸濁した。各誘導体を、マウ
スに腹腔内注入した。誘導体 pM 1-4 、pM 1-10 、pM 3
-69 および pM 7-15は全て、野生型毒素の致死レベルで
は非毒性である。それらは、非常に高い濃度(20〜40μ
g/ml)でのみ毒性になる。誘導体 pM 4-18および pM 6-
16も、野生型毒素の致死レベルでは非毒性である。それ
らは、より高い濃度(30〜50μg/ml)ですら毒性でな
い。残り3個の誘導体 pM 2 、pM 3-3および pM 4-3
は、わずかに毒性であった(野生型毒素のLD50は 0.1
5 μg/マウスである。)。表2も参照。
【0067】モルモットでの皮膚壊死性:自家繁殖の白
皮症モルモットの両側の4x8cmを脱毛した。0.2 ml
の抽出物を動物の両側の各4箇所に皮内注入した。その
動物を24、48および72時間後に調べて、注入部位
の病変に対して得点を付けた。注入部位に明らかな壊死
(++++)、ひどい紅斑(+++)、紅斑(++
+)、赤変(+)、反応なし(0)。
【0068】誘導体 pM 4-1 、1-10、3-3 、4-3 、6-16
および 7-15 は、非常に高い濃度ですら皮膚壊死性でな
い。誘導体 pM 6-1 、6-5 および 6-7は、5 μg/mlのレ
ベルで皮膚壊死性であった。それらは、0.5 μg/mlでは
皮膚壊死性でなかった。濃縮後、誘導体 pM 3-69は、6
μg/mlの用量で皮膚壊死性に変わった。これは、天然毒
素より少なくとも60倍少ない皮膚壊死性であることに相
当する。誘導体 pM 4-18は、天然毒素より15倍少ない皮
膚壊死性を有する。誘導体 pM 2 は、各々1μg/mlおよ
び 2μg/mlの試験濃度では皮膚壊死性作用を何ら示して
いない。従って、pM 2は、毒性が天然毒素より少なくと
も20倍小さい。表3も参照。
【0069】
【表3】
【0070】ワクチン調製物:抗原調製物にフロイント
の不完全アジュバント(50%)または Alhydrogen
(20%)を各々入れた。
【0071】ブタの免疫感作:誘導体 pM 3-69を約 40
μg/mlの濃度で調製し、アジュバントを入れて最終濃度
を20μg/mlとした。ブタに、2週間間隔で2 mlの筋肉内
注入を行った。第一回目の接種の前、第二回目の接種の
前および第二回目の接種の2週間後に血液サンプルを採
取した。第一回目の接種の24時間後のブタの副作用を観
察した。副作用は認められなかった。
【0072】実施例3:ランダムに変異誘発したβ−毒
素遺伝子から得られるβ−毒素の非毒性誘導体を検出す
るための迅速スクリーニング試験: BT−細胞試験の手順:5%の子ウシ血清を含むイーグ
ル培地における、トリプシン処理したBT(Bovine Tur
binate細胞)細胞の 1.5 x 105細胞/ml の培養物を、9
6−ウェルマイクロタイタープレートに移した(100 μ
l/ウェル)。プレートは、37℃、3%CO2で24時
間インキュベートした。試験したいβ−毒素のサンプル
を、希釈プレートにおいて、20℃のPBS(pH 7.
0)で希釈した。培地を細胞から注意深く捨てて、各ウ
ェルに100 μl のβ−毒素希釈物を入れた。次いで、細
胞を37℃、3%CO2で3O分インキュベートした。
サンプルを注意深く捨てて、37℃に調節した5%の子
ウシ血清を含む新しいイーグル培地を添加した。細胞
は、上記と同様の条件下で3日間インキュベートした。
次いで、培地をマイクロタイタープレートから捨て、ギ
ムザ染色溶液(5μl/ウェル)を添加した。10分後、
染色剤を捨てて、プレートを水で3回洗浄し、少なくと
も20分放置して乾燥させた。全てのウェルの多核細胞
の存在および単層の不規則性をチェックした。特定のウ
ェルにこれらのサインがない場合は、そのウェルにβ−
毒素の非毒性誘導体が存在することを示す。非毒性を示
したそれらのβ−毒素誘導体は、以下に説明する半定量
的ELISA試験で免疫原性の試験を行った。
【0073】半定量的ELISA:ウサギにおいて、天
然のクロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素に対
して誘導された特異性の高い抗体をタンパク質Aカラム
上で精製し、ELISAプレートに約2μg/mlのこれら
の特異抗体を被覆した。β−毒素誘導体を含む上清を3
倍に希釈してプレートに添加した。1時間インキュベー
トした後、ホースラディッシュ−ペルオキシダーゼ複合
ポリクローナルウサギ抗−クロストリジゥムパーフリン
ジェンスβ−毒素抗体を使用して検出を行った。それら
のβ−毒素誘導体がELISAにおいて反応して、天然
のβ−毒素よりも1000倍以上低い力価になれば、本
発明に係るβ−毒素は所望する非毒性で、なおも免疫原
性である誘導体であると見なした。
【0074】実施例4 ブタでのワクチン接種実験: ワクチンの調製:誘導体 pM 1-4 を Lactococcus lacti
s 菌株 pM 1-4 によって産生した。醗酵の後、細胞を遠
心分離(100000 x g で35分間)により除去した。次い
で、上清1 g につき、0.31 gの硫酸アンモニウムを添加
した。混合物を4℃で3時間放置して沈殿させた。1000
00 x gで45分間遠心分離を行った後、沈殿物を最初の
体積の1/30に溶解し、PBSに対して透析した。誘
導体 pM 1-4 の最終的な含量は、SDS−PAGEによ
りBSA規準に対して定量した。最後に、誘導体の溶液
を Diluvac Forteと1:1の比で混合した。ワクチンに
おける pM 1-4 の最終濃度は80μg/mlであった。
【0075】ワクチン接種:5週齢のブタ5匹を使用し
た。0および21日目に2mlをブタに筋肉内接種した。
【0076】観察:動物の全身的状態を、ワクチン接種
後の最初の3時間、次の評価に従って記録した。
【0077】0=症状なし 1=やや元気なし、粗い毛並(1時間未満)。
【0078】2=元気なし、震え(1時間未満)。
【0079】3=元気なし、震え、横たわる、および水
の摂取が少ない(1時間未満)。
【0080】4=嘔吐、全く元気なし(1時間未満)。
【0081】5=1時間より長く元気なく、後に餌を食
べない。
【0082】血液サンプリングおよび力価の測定:血液
のサンプリングを、1回目のワクチン接種の前(0日
目)、2回目のワクチン接種の前(21日目)および2
回目のワクチン接種の2週間後(35日目)に行い、競
合ELISAによって抗−β−毒素抗体を分析した。簡
単に述べると、天然のβ−毒素に対して誘導されたモノ
クローナル抗体をELISAプレートにおいて被覆し
た。血清の順次希釈物を、別のプレート上で固定濃度の
β−毒素と反応させた。毒素と血清を含む抗体との混合
物をMab被覆プレートに写し、残っている天然β−毒
素含量を測定した。力価を、WHO抗毒素規準1959
と比較して、未阻害β−毒素の50%阻害として計算し
た。
【0083】結果: 観察:ブタは、いずれのワクチン接種によっても、臨床
反応を示さなかった。表4を参照。
【0084】血清学:1頭のブタ(No.52 )は、1回目
のワクチン接種に対して応答した。2回目のワクチン接
種後は、4頭全てのブタが血清変換を示し、平均の抗−
β−毒素力価は、ELISAでの測定で 66 i.u.であっ
た。個々の力価は表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】結論:全てのブタは、β−毒素を阻害する
抗−β−毒素抗体を産生することにより、遺伝子的に改
変したβ−毒素によるワクチン接種に対して応答した。
【図面の簡単な説明】
【図1a】プラスミド pTREX1ANEW の構成を示す図であ
る。MLS抗生物質耐性マーカーのコード配列は、影を
つけた四角で示す。Ori pAMB1:プラスミド pAMB1由来の
複製起点、MLS:マクロライド、lincosamindes 、ス
トレプトグラミンB抗生物質耐性遺伝子。pIL253のEcoR
I 部位および平滑化 SacI 部位の間でクローン化した発
現カセットの構造を下に示す。カセットの種々の機能領
域は、陰影をつけた四角で示す。ユニークな制限部位を
示す。SD:L. lactis 16S rRNAと相補的なシャイ
ン・ダルガルノ配列。ATG:SDによって供給された
翻訳開始コドン。
【図1b】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配列を
示す図である。
【図1b−1】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配
列を示す図である。
【図1b−2】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配
列を示す図である。
【図1b−3】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配
列を示す図である。
【図1b−4】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配
列を示す図である。
【図1b−5】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配
列を示す図である。
【図1b−6】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配
列を示す図である。
【図1b−7】制限酵素位置を含む、完全な pTREX1A配
列を示す図である。
【図1c】類似性の高い pTREX1 発現カセットの特徴を
示す図である。
【図1d】pTREX7、-14 および -1Aで使用するPCR誘
導プロモーター断片を作るために使用されるオリゴヌク
レオチド(5’−3’を示す)を示す図である。
【図2a】TIR結合ベクター pKS90を示す図であり、
pKS90 発現カセットを模式図的に示す。
【図2b】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列を示
す図である。
【図2b−1】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2b−2】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2b−3】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2b−4】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2b−5】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2b−6】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2b−7】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2b−8】制限酵素位置を含む、完全なpKS90 配列
を示す図である。
【図2c】pKS90 のTIR領域を形成する人工DNA配
列を作るために使用されるオリゴヌクレオチドを示す図
である。
【図3a】Cpβ−変異体の構築で使用されるプライマー
を示す図である。
【図3b】CpβM1について使用する構築法の例を示す
図である。
【図4】クロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素
のアミノ酸配列を示す図である。
【図5】ホルマリン対力価のグラフを示す図である。
【図6】群における死亡動物(%)のグラフを示す図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI //(C12N 15/09 ZNA C12R 1:92) (72)発明者 ピール・リン・フランセン デンマーク国、デー・カー−2840・ホル ト、ボルイメースター・シユネイダーズ・ バイ・56 (72)発明者 ジエレミー・マーク・ウエルズ イギリス国、シー・ビイ・5・8・エス・ テイー・ケンブリツジ、フエン・デイト ン、ハイ・ストリート・42

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 そのアミノ酸配列に、野生型β−毒素に
    は存在しない変異を有する、クロストリジゥムパーフリ
    ンジェンス(Clostridium perfringens)β−毒素の解
    毒された免疫原性誘導体またはその免疫原性断片。
  2. 【請求項2】 変異が置換変異であることを特徴とす
    る、請求項1に記載のクロストリジゥムパーフリンジェ
    ンスβ−毒素の誘導体またはその免疫原性断片。
  3. 【請求項3】 変異が挿入および/または欠失であるこ
    とを特徴とする、請求項1に記載のクロストリジゥムパ
    ーフリンジェンスβ−毒素の誘導体またはその免疫原性
    断片。
  4. 【請求項4】 変異がβ−毒素の中性部分と親水性部分
    との間の遷移ドメインに位置することを特徴とする、請
    求項1ないし3のいずれかに記載のクロストリジゥムパ
    ーフリンジェンスβ−毒素の誘導体またはその免疫原性
    断片。
  5. 【請求項5】 変異がペプチドリーダーメチオニンに対
    して62、182もしくは197の位置またはアミノ酸
    番号80〜103、145〜147、281〜291、
    295〜299の間もしくはアミノ酸位置292の下流
    の領域の一つに位置することを特徴とする、請求項1な
    いし4のいずれかに記載のクロストリジゥムパーフリン
    ジェンスβ−毒素の誘導体またはその免疫原性断片。
  6. 【請求項6】 変異がアミノ酸番号80〜82、95〜
    97、101〜103または287〜291の間の領域
    の一つに位置することを特徴とする、請求項1ないし5
    のいずれかに記載のクロストリジゥムパーフリンジェン
    スβ−毒素の誘導体またはその免疫原性断片。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の解
    毒された免疫原性クロストリジゥムパーフリンジェンス
    β−毒素またはその免疫原性断片をコードする変異され
    たDNA断片を含むヌクレオチド配列。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載のヌクレオチド配列を含
    むクロストリジゥムパーフリンジェンス。
  9. 【請求項9】 グラム陽性細細菌をベースとする発現系
    であって、該グラム陽性細菌はクロストリジゥムパーフ
    リンジェンスではなく、野生型クロストリジゥムパーフ
    リンジェンスβ−毒素をコードする遺伝子を含む発現
    系。
  10. 【請求項10】 グラム陽性細菌をベースとする発現系
    であって、該グラム陽性細菌はクロストリジゥムパーフ
    リンジェンスではなく、該グラム陽性細菌が請求項7に
    記載のヌクレオチド配列を含む発現系。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし6のいずれかに記載の
    クロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の誘導体
    またはその免疫原性断片および生理学的に許容される担
    体を含むことを特徴とする、クロストリジゥムパーフリ
    ンジェンス感染に対抗するためのワクチン。
  12. 【請求項12】 アジュバントを含むことを特徴とす
    る、請求項11に記載のワクチン。
  13. 【請求項13】 生きた組換え担体生物を含み、該担体
    生物が請求項7に記載のDNA断片を有することを特徴
    とする、クロストリジゥムパーフリンジェンス感染に対
    抗するためのワクチン。
  14. 【請求項14】 生きた弱毒化クロストリジゥムパーフ
    リンジェンス株を含み、天然のβ−毒素遺伝子が請求項
    7に記載のヌクレオチド配列で置き換わっていることを
    特徴とする、クロストリジゥムパーフリンジェンス感染
    に対抗するためのワクチン。
  15. 【請求項15】 さらに他の病原体由来の免疫原を含む
    ことを特徴とする、請求項11ないし14のいずれかに
    記載のワクチン。
  16. 【請求項16】 他の病原体が、アクチノバシラスプリ
    ューロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumonia
    e)、仮性狂犬病ウイルス、ブタインフルエンザウイル
    ス、ブタパルボウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ロタ
    ウイルス、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)、エ
    リシペロスリックスルシオパシエ(Erysipelothrix rhu
    siopathiae)、パスツレラムルトシダ(Pasteurella mu
    ltocida)、ボルデテラブロンチセプチカ(Bordetella
    bronchiseptica)、サルモネラ(Salmonella)種、ミコプ
    ラズマヒポニューモニエ(Mycoplasma hypopneumonia
    e)、ヘモフィラスパラスイス(Haemophilus parasui
    s)およびヘリコバクター(Helicobacter)様細菌から
    成る群から選択されることを特徴とする、請求項15に記
    載のワクチン。
  17. 【請求項17】 天然のクロストリジゥムパーフリンジ
    ェンスβ−毒素の製造法であって、該β−毒素をコード
    するDNA断片を含む請求項7に記載のヌクレオチド配
    列がグラム陽性細菌で発現され、該グラム陽性細菌がク
    ロストリジゥムでないことを特徴とする方法。
  18. 【請求項18】 請求項7に記載のβ−毒素の誘導体を
    コードするDNA断片を含むヌクレオチド配列がグラム
    陽性細菌で発現されることを特徴とする、請求項1ない
    し6のいずれかに記載のクロストリジゥムパーフリンジ
    ェンスβ−毒素の誘導体の製造法。
  19. 【請求項19】 グラム陽性細菌がラクトコッカス(La
    ctococcus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ロイ
    コノストック(Leuconostoc)、ペディオコッカス(Ped
    iococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、
    エンテロコッカス(Enterococcus)、スタフィロコッカ
    ス(Staphylococcus)、バシラス(Bacillus)、サルシ
    ナ(Sarcina)、ルミノコッカス(Ruminococcus)また
    はリステリア(Listeria)の群から選択されることを特
    徴とする、請求項17または18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 請求項1ないし6のいずれかに記載の
    クロストリジゥムパーフリンジェンスβ−毒素の誘導体
    および生理学的に許容される担体を混合することを含む
    ことを特徴とする、クロストリジゥムパーフリンジェン
    ス感染に対抗するためのワクチンの調製法。
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