JPH11100536A - 高隠蔽性液状組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 厚塗り時の塗膜乾燥性と塗膜密着性が優れて
いる高隠蔽性液状組成物を提供する。 【解決手段】 酸化チタンなどの隠蔽材２０〜５０重量
％と、溶剤３０〜７０重量％と、前記溶剤に可溶なアク
リル樹脂などの結合剤５〜２０％とからなるもの。但し
隠蔽材はアルミナ処理酸化チタンであり、有機溶剤は溶
解性パラメーター６．４以上７．６以下の無極性有機溶
剤である

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、修正液や下塗用絵
の具などのような高い隠蔽性を有する乾燥塗膜を形成す
る高隠蔽性液状組成物に関し、更に詳細には、厚塗り塗
膜乾燥性に優れ、且つ、塗膜密着性に優れた高隠蔽性液
状組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】高隠蔽性液状組成物は、修正液や下塗用
絵の具などのように、文字や図柄を隠蔽・修正する為に
用いるものである。高隠蔽性液状組成物による隠蔽は、
隠蔽材と結合剤とが溶剤の蒸発によって紙面に固着し、
乾燥塗膜を形成することによっておこなわれる。

【０００３】従来の技術として修正液を一例に挙げて説
明する。修正液は、隠蔽材と、結合剤と、前記結合剤を
溶解し、かつ隠蔽する筆跡などを溶解しない溶剤とを主
成分としている。隠蔽材としては、酸化チタンや酸化亜
鉛のような高い隠蔽性を示す顔料を使用する。溶剤とし
ては、万年筆、水性サインペン等の水性インキの筆跡を
隠蔽する場合、水性インキによる筆跡を溶解しないトル
エン、キシレン、１，１，１−トリクロロエタン、トリ
クロロエチレン等の有機溶剤を使用する。また油性ボー
ルペン、油性マーカー等の油性インキによる筆跡や、タ
イプライターによる印字、乾式複写機による複写などを
隠蔽する場合、これらの筆跡や印字、複写を溶解しない
水を使用する。さらに近年、筆跡の種類によって溶剤を
使いわけるといった煩雑さを解消する為、水性インキ及
び油性インキによる筆跡に対する溶解性が低いシクロヘ
キサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン
等のシクロヘキサン系の有機溶剤を使用する。結合剤
は、溶剤の種類によって選択される。溶剤として有機溶
剤を使用する場合、結合剤としては、アクリル樹脂、ビ
ニルアルキルエーテル樹脂、環化ゴム、スチレン−ブタ
ジエン共重合体系エラストマー等を使用し、水を使用す
る場合には、（メタ）アクリル酸エステル系樹脂エマル
ジョン、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂エマルジ
ョン、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンを使用す
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】修正液の厚塗り塗膜乾
燥時間を短縮することと、塗膜密着性を強くすることで
ある。修正液は隠蔽を目的としているので、厚めに塗り
がちである。よって修正液は塗布厚が厚くても塗膜乾燥
時間が短いことが求められる。修正液の塗膜乾燥時間
は、修正液を塗布した時から、筆記可能な乾燥塗膜を形
成するまでの時間をいう。また厚塗りとは修正液の塗布
厚が０．３ｍｍ以上の場合のことである。塗膜密着性
は、紙面に形成している乾燥塗膜部分を折り曲げた時の
剥離しにくさや乾燥塗膜上に筆記した時の破れにくさな
ど、乾燥塗膜のねばり強さと硬度のことである。修正液
の塗膜乾燥時間を短くする為には、蒸発速度が速い有機
溶剤を使用することが必要である。しかし修正液の塗布
厚が厚い場合には、塗膜表面に結合剤の皮膜が形成され
て塗膜中に有機溶剤が残留しやすくなる為、たとえ蒸発
速度が速い溶剤を使用しても、その溶剤が塗膜中に残留
しやすい性質であれば、厚塗り塗膜乾燥時間が長くな
る。よって厚塗り塗膜乾燥時間を短くする為には、蒸発
速度が速い溶剤を使用することに加え、有機溶剤が塗膜
中に残留しにくい有機溶剤を使用することが必要であ
る。有機溶剤を塗膜中に残留しにくくする為には、有機
溶剤と結合剤の相溶性を、若干悪くすることが必要であ
る。有機溶剤と結合剤の相溶性を若干悪くすると、有機
溶剤と結合剤の親和性が弱くなるので、有機溶剤が塗膜
中に残留しにくくなり、厚塗り塗膜乾燥時間が短くな
る。しかし有機溶剤と結合剤の相溶性が悪いと、塗膜密
着性が弱くなるという問題点がある。これは、有機溶剤
と結合剤の相溶性が悪い状態は、有機溶剤分子と結合剤
分子の混ざり方が粗い状態であるので、隠蔽材の付着量
が少なく、また結合剤間の距離が広がっていることもあ
り、結合力が弱い部分ができるということである。この
結合力が弱い部分が原因で、塗膜密着性が弱くなる。塗
膜密着性を強くするには、有機溶剤と結合剤の相溶性を
良くすることが必要である。有機溶剤と結合剤の相溶性
が良いと、有機溶剤分子と結合剤分子の混ざり方が密な
ので、隠蔽材の付着量が多く、また結合剤間の距離が狭
いので、結合力が強い。よって塗膜密着性が強い。以上
より、厚塗り塗膜乾燥時間と塗膜密着性とは、結合剤と
有機溶剤との相溶性によって変化するが、その効果は相
反していることが判る。そして、厚塗り塗膜乾燥時間を
短縮することと、塗膜密着性を強くすることとを両立さ
せることは未だに達成できていない。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、隠蔽材と、結
合剤と、有機溶剤とを少なくとも含む高隠蔽性液状組成
物において、前記隠蔽材としてアルミナ処理酸化チタン
を使用し、前記有機溶剤として溶解性パラメーター６．
４以上７．６以下の無極性有機溶剤を使用することを特
徴とする高隠蔽性液状組成物を要旨とする。

【０００６】以下、本発明の組成について説明する。隠
蔽材は、アルミナ処理酸化チタンを使用する。アルミナ
処理酸化チタンは、酸化チタンの一次粒子を核にし、そ
の表面上にアルミナのみを被覆したものである。アルミ
ナ処理酸化チタンは、アルミナ−シリカ処理、アルミナ
−シリカ−ジルコニア処理、アルミナ−ジルコニア処
理、無処理の酸化チタンに比べ親油性に優れているとい
う特徴がある。具体例としてはタイペークＣＲ−５０、
同ＣＲ−９７、同ＣＲ−６０、同ＣＲ−６０−２、同Ｒ
−６８０、同ＣＲ−５８、同ＣＲ−６７、同Ｒ−５８
０、同Ｒ−６７０（以上、石原産業（株）製）。チタニ
ックスＪＲ−６００Ａ、同ＪＲ−６００Ｅ、同ＪＲ−６
０２、同ＪＲ−６０２Ｓ、同ＪＲ−６０３、同ＪＲ３０
０、同ＪＲ−３０１（以上、テイカ（株）製）。タイト
ーンＲ−５Ｎ、同Ｒ−５Ｎ２、同Ｒ−５１Ｎ、同Ｒ−６
１Ｎ、同Ｒ−５２Ｎ、同Ｒ−１１、同ＲＫ−１、同ＳＲ
−１、同Ｒ−ＧＬ（以上、堺化学工業（株））、タイピ
ュアＲ−９００、同Ｒ−９２０、同Ｒ−１０１（以上、
デュポン・ジャパン・リミテッド）などのルチル型酸化
チタン、チタニックスＪＡ−４（以上、テイカ（株）
製）、タイペークＡ−２２０（以上、石原産業（株）
製）などのアナターゼ型酸化チタンなどが挙げられる。
これらのアルミナ処理酸化チタンは、単独もしくは２種
以上併用して使用可能である。また、隠蔽性を増すため
に、アルミナ処理酸化チタン以外の酸化チタンを併用す
る事もできる。この場合、アルミナ処理酸化チタン以外
の酸化チタンの種類や使用によっては塗膜密着性が弱く
なる。そこで、アルミナ処理酸化チタン以外の酸化チタ
ンは、処理量が酸化チタン粒子の全重量に対して５重量
％以下のものが良好であり、使用量は、本発明に係る高
隠蔽性液状組成物の隠蔽材全量に対して３０重量％以内
が好ましい。これは、３１重量％以上使用すると塗膜密
着性が弱くなる為である。なお、隠蔽材の使用量は、高
隠蔽性液状組成物全量に対して２０〜５０重量％が好ま
しい。

【０００７】結合剤は、塗膜を形成する為に使用するも
ので、具体的には、アクリル酸エステル重合体、メタク
リル酸エステル重合体、アクリル酸とメタクリル酸エス
テルの共重合体、その他ビニルアルキルエーテル樹脂、
環化ゴム、スチレン−ブタジエン系エラストマー樹脂な
どが挙げられる。特にアクリル樹脂は、塗膜の平滑性が
良好になるので好ましく用いられる。アクリル樹脂の市
販のものとしては、アクリロイドＢ−６６、同Ｂ−６７
（以上、米国、ロース＆ハース社製）が挙げられる。ま
たこれらの結合剤は単独もしくは２種以上併用して使用
可能である。結合剤の使用量は高隠蔽性液状組成物全量
に対して５〜２０重量％が好ましい。

【０００８】有機溶剤は、溶解性パラメーター６．４以
上７．６以下の無極性有機溶剤で、具体的には、２，
２，５−トリメチルヘキサン（溶解性パラメーターδ：
６．５）、イソオクタン（同６．９）、ペンタン（同
７．０）、イソヘキサン（同７．０）、ヘキサン（同
７．３）、ヘプタン（同７．４）といったものが挙げら
れる。中でもイソヘキサンが優れている。溶解性パラメ
ーターが７．７以上になると、有機溶剤が塗膜中に残留
する為、厚塗り塗膜乾燥時間が長くなる。溶解性パラメ
ーターが６．４未満であると、有機溶剤と結合剤の相溶
性が悪すぎる為、塗膜密着性が弱く、また経時安定性が
悪い。これらの有機溶剤は単独又は２種以上併用して使
用可能である。これらの有機溶剤と他の有機溶剤を併用
することもできる。この場合、併用する他の有機溶剤
は、水性インキや油性インキ、トナー等の筆跡が溶解し
にくい溶剤が適しており、その使用量は全有機溶剤の３
０重量％以内が好ましい。３１重量％以上使用すると塗
膜中に有機溶剤が残留するため塗膜乾燥時間が長くな
る。これら有機溶剤の全量は、高隠蔽性液状組成物全体
の３０〜７０重量％が好ましい。

【０００９】上記、溶解性パラメーターδとは、溶剤と
結合剤との溶解性や、溶剤と筆跡との溶解性を示す値で
ある。この溶解性パラメーターδの値を求める方法は、
一般に次の３つの方法が知られている。 （１）物品の物理特性に溶解性パラメーターを関係させ
て数量的表現を用いて定義する方法。その算出式を下記
式１に示す。 （２）化学構造から計算する方法。 （３）既知の溶解性パラメーターδの値を持つ物品の溶
解力に、未知の溶解性パラメーターδをの値を持つ物品
の溶解力を、組織的に対比することによって定義する方
法。 本発明の溶解性パラメーターδは、上記３つの方法のう
ち（１）の方法によって求められる値を採用する。これ
は、無極性有機溶剤において、（１）の方法によって求
められる値は、他の方法に比較して、実際の溶解性を正
確に表すためである。

【００１０】

【式１】

【００１１】尚、上記した成分の他に、シリカ、炭酸カ
ルシウムなどの体質顔料を併用しても良い。その他、筆
記面と色調を合わせる為に着色顔料を、顔料の分散安定
性の為に分散剤や沈降防止剤を、塗布性能を更に良好に
する為にフロー向上剤やレベリング剤をというように、
各種添加剤を適宜添加することができる。

【００１２】

【作用】溶解性パラメーター６．４以上７．６以下の無
極性有機溶剤と、アルミナ処理酸化チタンを使用するこ
とによって厚塗り塗膜乾燥時間が短く、紙に対する塗膜
密着性が強いのは以下の作用によると考えられる。溶解
性パラメーター６．４以上７．６以下の有機溶剤は、有
機溶剤と結合剤の相溶性が悪い為、有機溶剤と結合剤の
親和性が弱い。よって厚塗り塗膜乾燥時間が短縮され
る。ここで通常の隠蔽材を使用した修正液では、有機溶
剤と結合剤の相溶性が悪い為、厚塗り塗膜乾燥時間が短
いが、塗膜密着性が弱い乾燥塗膜になる。しかしアルミ
ナ処理酸化チタンを使用すると、他の酸化チタンに比べ
親油性であるので、結合剤に対する親和性が良い。する
とアルミナ処理酸化チタンに結合剤が強く付着する為、
相溶性が悪く、有機溶剤分子と結合剤分子の混ざり方が
粗い状態であってもアルミナ処理酸化チタン間、紙面−
アルミナ処理酸化チタン間の結合力が強く、塗膜密着性
を強くすることができる。以上によって厚塗り塗膜乾燥
時間を短縮し、塗膜密着性も強い修正液を得ることがで
きる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施例として修正液を用いて
例示するが、本発明は、実施例に限定されるものではな
い。 実施例１ タイピュアＲ−９００（デュポン・ジャパン・リミテッド製、アルミナ処理酸 化チタン） ７１重量部 イソヘキサン（丸善石油化学（株）製） ６６重量部 アクリロイドＢ−６６（米国、ロース＆ハース社製、アクリル樹脂） １２重量部 ホモゲノールＬ−１８（花王（株）製、分散剤） １．２重量部 上記成分をボールミルにて２４時間分散処理して修正液
を得た。

【００１４】 実施例２ チタニックスＪＲ−３０１（テイカ（株）製、アルミナ処理酸化チタン） ６０重量部 クロノスＫＲ−３８０（チタン工業（株）製、アルミナ−シリカ処理酸化チタ ン） １０重量部 イソヘキサン（前述） ５５重量部 メチルシクロヘキサン（フィリップス石油（株）製、溶解性パラメーター： ７．９） ２０重量部 アクリロイドＢ−６７（米国、ローム＆ハース社製、アクリル樹脂） １３重量部 ＭＡ−１００（三菱化成工業（株）製、カーボンブラック）０．０５重量部 ホモゲノールＬ−１８（前述） １重量部 上記成分を実施例１と同様になして修正液を得た。

【００１５】 実施例３ タイピュアＲ９００（前述） ８５重量部 イソヘキサン（前述） ７０重量部 メチルシクロヘキサン（前述） １１重量部 アクリロイドＢ−６６（前述） １０重量部 キョーワード７００（協和化学工業（株）製、ケイ酸アルミニウム）５重量部 ホモゲノールＬ−１８（前述） １．１重量部 上記成分を実施例１と同様になして修正液を得た。

【００１６】 実施例４ ＪＲ−３０１（前述） ５２重量部 イソヘキサン ３０重量部 イソオクタン（試薬） １０重量部 メチルシクロヘキサン（前述） ７重量部 アクリロイドＢ−６６（前述） １２重量部 ホモゲノールＬ−１８（前述） １重量部 上記成分を実施例１と同様になして修正液を得た。

【００１７】比較例１ 実施例１において、タイピュアＲ９００をＪＲ８０１
（テイカ（株）製、アルミナ−シリカ処理酸化チタン）
に変更した以外は、実施例１と同様になして修正液を得
た。

【００１８】比較例２ 実施例２において、イソヘキサンをメチルシクロヘキサ
ンに変更した以外は、実施例２と同様になして修正液を
得た。

【００１９】比較例３ 実施例３において、タイピュアＲ９００をＪＲ７０１
（テイカ（株）製、アルミナ−シリカ−ジルコニア処理
酸化チタン）に変更した以外は、実施例３と同様になし
て修正液を得た。

【００２０】以上、実施例１〜４、比較例１〜３で得ら
れた修正液について、隠蔽率、厚塗り塗膜乾燥時間、塗
膜密着性の試験を行った。結果を表１に示す。

【００２１】

【表１】

【００２２】＊１隠蔽率：上記修正液を隠蔽率測定用紙
（ＪＩＳＫ５４００）に０．０５ｍｍのアプリケータで
塗布し、乾燥後、４５°、０°拡散反射率を測定して算
出した。 ＊２厚塗り塗膜乾燥時間：上記修正液を上質紙上に０．
３ｍｍのアプリケーターで塗布し、油性ボールペン（ぺ
んてる（株）製ＢＫ７０）で塗膜上に筆記し、筆記可能
な塗膜になった時間を測定した。 ＊３塗膜密着性：上記修正液を上質紙上に０．３ｍｍの
アプリケーターを用いて塗布し、油性ボールペン（ぺん
てる（株）ＢＫ７０）で乾燥塗膜上に徐々に筆圧を上げ
て筆記し、塗膜が剥離してしまった時の筆圧を測定し
た。

【００２３】

【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
高隠蔽性液状組成物は、厚塗り塗膜乾燥性と塗膜密着性
を、溶解性パラメーター６．４以上７．６以下の無極性
有機溶剤とアルミナ処理酸化チタンとを組み合わせるこ
とによって実現し、十分な隠蔽性を有しているととも
に、厚塗り塗膜乾燥時間が短く、塗膜密着性に優れてい
るので、修正液や下塗用絵の具として実用上優れた品質
を有している。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 隠蔽材と、結合剤と、有機溶剤とを少な
   くとも含む高隠蔽性液状組成物において、前記隠蔽材と
   してアルミナ処理酸化チタンを使用し、前記有機溶剤と
   して溶解性パラメーター６．４以上７．６以下の無極性
   有機溶剤を使用することを特徴とする高隠蔽性液状組成
   物。