JPH1099333A - 超音波カラードプラ診断装置および超音波カラードプライメージングの信号処理方法 - Google Patents
超音波カラードプラ診断装置および超音波カラードプライメージングの信号処理方法Info
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- JPH1099333A JPH1099333A JP8260805A JP26080596A JPH1099333A JP H1099333 A JPH1099333 A JP H1099333A JP 8260805 A JP8260805 A JP 8260805A JP 26080596 A JP26080596 A JP 26080596A JP H1099333 A JPH1099333 A JP H1099333A
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Abstract
に除去し、かつ非常に低速度の血流も見逃すことなく検
出する。 【解決手段】超音波カラードプラ診断装置は、時系列の
ドプラデータから成るドプラ信号をピクセル位置毎に得
る。ドプラ信号の特質に応じてクラッタ成分をドプラ信
号から除去するMTIフィルタ部45を備える。MTI
フィルタ部45は、ドプラ信号のクラッタ成分の瞬時的
な位相変化量を推定する手段45aと、推定された位相
変化量に基づきドプラ信号の位相を補正する手段45
b,45cと、位相補正されたドプラ信号からクラッタ
成分に相当する一定値を減算する手段45dとを備え
る。またMTIフィルタ部45は、一定値が減算された
ドプラ信号を変更可能な遮断特性でフィルタリングする
ハイパスフィルタ45gと、その遮断特性をドプラ信号
の性質に応じて制御する手段45e,45fとを備え
る。
Description
ラ法を利用して生体内の血流の動態情報をカラーで得る
超音波カラードプライメージングに係り、とくに、心筋
などの臓器からの反射成分であるクラッタ成分を除去す
るために内蔵しているフィルタの性能向上に関する。
ドプラ効果を利用して、被検体内の血流動態の情報を体
外から非観血的に得る手法で、これを実施する超音波診
断装置は、今や目覚ましい進歩を遂げている。
て、カラードプラ断層法(カラーフローマッピング(C
FM)ともいう)を実施する装置が知られている。この
カラードプラ断層法はレーダ分野で使用されているMT
I(移動目標指示装置)の技術を利用したもので、断層
面の血流速度の2次元分布像を得ることができる。
を送信したことに伴って生体から得られる超音波エコー
は、対応する電気信号に変換された後、実数部、虚数部
のエコー信号に分けられる。この実数部、虚数部のエコ
ー信号は共に、直交位相検波器で基準信号に対して位相
検波され、基準信号からの位相変化を表わすドプラ信号
として抽出される。この実数部および虚数部のドプラ信
号はそれぞれA/D変換器によりデジタル信号に変換さ
れた後、バッファメモリに一旦、各別に格納される。
するCFMモードの場合、同一走査線方向に複数N回
(例えば16回)の超音波パルスの送受信が繰り返され
る。このため、1枚の画像を再構成するのに必要なデジ
タル量のドプラデータは、実数部および虚数部の信号そ
れぞれについて、第1の次元、第2の次元および第3の
次元から成る3次元データとなり、これがMTIフィル
タのバッファメモリに格納される。第1の次元は各走査
線数(番号)を表わし、第2の次元は各走査線に沿った
深さ方向のピクセル数(番号)を表わし、および第3の
次元は各ピクセルについて送受信の繰返しにより得られ
るドプラデータの数(番号)を表わす。
着目すると、N回の超音波パルスの送受信により受信エ
コーが時系列的に得られ、その受信エコーに基づいて位
相検波されたデジタルデータが第3の次元の方向に順次
並べられたものである。この第3の次元の方向に見た時
の信号の変化の速さがドプラ偏移周波数の大小、すなわ
ち物体の移動速度の大小に対応する。
メモリ内に形成された3次元デジタルデータ(ドプラ信
号)は各ピクセル位置の第3の次元方向のデータ列毎
に、そのクラッタ成分が除去される。このフィルタリン
グ原理は以下のようである。
上の速度で移動する移動体からのエコー信号と、実質臓
器のような組織からのエコー信号(クラッタ成分とい
う)とが混在している。信号強度についてはクラッタ成
分の方が血流からのエコー信号よりも大きいが、移動速
度については血流からのエコー信号の方がクラッタ成分
よりも大きい。このため、MTIフィルタのフィルタ回
路をハイパスフィルタとして構成し、その遮断周波数を
クラッタ成分を除去可能な値に設定しておく。これによ
り、検波されたドプラ信号からクラッタ成分が除去さ
れ、血流からのエコー信号が抽出される。
態(血流速度、パワー、分散など)の推定処理に付さ
れ、その推定情報に基づいて2次元画像が作成される。
ルタはクラッタ成分の除去に用いられているが、実質臓
器は実際には様々な原因により微妙に動いている又は動
くことがあるため、そのようなクラッタ成分と特に低速
度の血流からのエコー信号とを明確に分別することがで
きず、従来のMTIフィルタの場合、必ずしも満足のい
くほど、クラッタ成分を的確且つ十分に除去できていな
いという問題がある。
心臓内の血流を診る場合に問題となる)、(2)心臓の
拍動により揺すられて発生する、その周辺臓器の動き、
(3)被検者の呼吸に因る動き(体動)、および、
(4)操作者の手振れによる動き、などにより動いてい
る、または、動くことがある。
図11(a)のように低く設定すると、クラッタ成分を
十分に除去しきれず、検波信号にクラッタ成分が残って
しまう(同図の斜線部A参照)。この場合、血流の運動
情報として診ている筈の画像にクラッタ成分が一体に入
り込んでしまっているから、血流の運動情報の精度に欠
け、誤診を招くなどの恐れがあった。
フィルタの遮断周波数を高く設定すると、クラッタ成分
は的確に除去できるが、同時に血流からのエコー信号も
その一部または大半が除去されてしまう(同図斜線部B
参照)。とくに、運動速度の低い血流は画面から消えて
しまうような事態も起こり、到底、診断の目的を達成す
ることはできない。
のエコー信号の抽出とに対する遮断特性の要求は相反す
るものがある。加えて、血流速度は診断部位、個人差に
応じても変わる。このため、MTIフィルタの遮断周波
数はどうしても妥協的な値に設定して置かざるを得ない
ことから、従来ではどうしてもクラッタ成分の低減効果
を十分に得ることが難しいと同時に、低速度で運動する
血流の検出能の低い状態を受容せざるを得ないという問
題があった。
が有する問題に鑑みてなされたもので、クラッタ成分と
低速度の血流からのエコー成分とを確実かつ精細に分別
できるようにすることで、動きのある実質臓器からのク
ラッタ成分を確実に除去し、かつ非常に低速度の血流も
見逃すことなく検出し、高検出能の2次元分布の血流像
を生成できる超音波診断装置を提供することを、その目
的とする。
め、本発明の超音波カラードプラ診断装置は、被検体内
の断面に沿って超音波信号を各走査線方向に複数回ずつ
送信するとともに当該被検体から反射されてくる超音波
エコー信号を受信する送受信手段と、前記超音波エコー
信号に基づき前記各走査線方向それぞれの同一位置から
反射されてきた複数の時系列のドプラデータから成るド
プラ信号をその位置毎に得るドプラ信号抽出手段と、前
記ドプラ信号ぞれぞれの特質にしたがって決まる特性を
用いて前記被検体の臓器が前記超音波信号を反射したこ
とに伴うクラッタ成分を当該ドプラ信号それぞれから除
去するクラッタ成分除去手段と、このクラッタ成分除去
手段によりクラッタ成分が除去された前記ドプラ信号そ
れぞれに基づいて前記断面の血流の情報をカラー表示す
る表示手段とを備えたことを特徴とする。
前記ドプラ信号それぞれの前記クラッタ成分の瞬時的な
位相変化量を推定する位相推定手段と、この位相推定手
段により推定された位相変化量に基づき前記ドプラ信号
それぞれの位相を補正する位相補正手段と、この位相補
正手段により位相補正された前記ドプラ信号のそれぞれ
から前記クラッタ成分に相当する一定値を減算する減算
手段とを備える。
信号それぞれの一部のドプラデータのみを用いて前記瞬
時的な位相変化量を推定する手段である。また例えば、
前記位相推定手段は、前記一部のドプラデータとして時
間的に隣接したドプラデータ間の複素共役乗算を含む演
算を行って前記位相変化量を推定する手段である。さら
に例えば、前記位相推定手段は、前記一部のドプラデー
タとして空間的に隣接した複数のサンプル点の平均され
た特徴に基づき前記位相変化量を推定する手段である。
また、前記位相推定手段は、前記同一位置から得られる
前記ドプラ信号全体のパワー値に応じて前記位相変化量
を修正する修正手段を含むようにしてもよい。
位相推定手段により推定された位相変化量に基づいて前
記クラッタ成分の位相変化をキャンセルする複素数信号
を生成する信号生成手段と、この信号生成手段により生
成された複素数信号を前記ドプラ信号それぞれに乗算す
る乗算手段とを備える。
のそれぞれを形成する複数のドプラデータの内の任意番
目のドプラデータを前記一定値として前記減算を行う手
段であってもよい。
段は、前記減算手段により一定値が減算された前記ドプ
ラ信号それぞれを変更可能な遮断特性でフィルタリング
するハイパスフィルタと、このハイパスフィルタの遮断
特性をそのドプラ信号のそれぞれの特徴に応じて制御す
る遮断特性制御手段とを備えることである。また、前記
クラッタ成分除去手段は、前記位相補正手段により位相
補正された前記ドプラ信号のそれぞれを変更可能な遮断
特性でフィルタリングするハイパスフィルタと、このハ
イパスフィルタの遮断特性をそのドプラ信号のそれぞれ
の特徴に応じて制御する遮断特性制御手段とを備えるこ
ともできる。これらの場合に、前記遮断特性制御手段
は、前記ドプラ信号それぞれの特徴として少なくともそ
の信号のパワー値を演算する手段と、そのパワー値に応
じて前記ハイパスフィルタの遮断周波数または次数の少
なくとも一方を制御する制御手段とを備えることができ
る。
位相補正手段により位相補正された前記ドプラ信号それ
ぞれの補正位相量を打ち消す補正位相打消し手段を備え
るようにしてもよい。この補正位相打消し手段は、前記
信号生成手段により生成された複素数信号を位相反転さ
せる位相反転手段と、この位相反転手段により位相反転
された複素数信号を前記ハイパスフィルタから出力され
た前記ドプラ信号のそれぞれに乗算する乗算手段とを備
えることができる。
段は、前記ドプラ信号のそれぞれについて実数部、虚数
部毎に直交位相検波を行う手段である。
メージングの信号処理方法は、被検体内の断面に沿って
超音波信号を各走査線方向に複数回ずつ送信するととも
に当該被検体から反射されてくる超音波エコー信号を受
信し、前記超音波エコー信号に基づき前記各走査線方向
それぞれの同一位置から反射されてきた複数の時系列の
ドプラデータから成るドプラ信号をその位置毎に得て、
前記ドプラ信号ぞれぞれの特質に応じて前記被検体の臓
器が前記超音波信号を反射したことに伴うクラッタ成分
を当該ドプラ信号それぞれから除去し、前記クラッタ成
分が除去された前記ドプラ信号それぞれに基づいて前記
断面の血流の情報をカラー表示する超音波カラードプラ
イメージングの信号処理方法であって、前記クラッタ成
分の除去のときに、前記ドプラ信号それぞれからの前記
クラッタ成分の瞬時的な位相変化量を推定し、この位相
変化量に基づき前記ドプラ信号それぞれの位相を補正
し、この位相補正された前記ドプラ信号のそれぞれから
前記クラッタ成分に相当する一定値を減算する、ことを
特徴とする。
参照して説明する。
1の実施形態を超音波診断装置を説明する。
と電気信号の間で双方向に信号変換可能な超音波プロー
ブ1と、この超音波プローブ1に接続された送信系回路
2および受信・処理系回路3とを備える。
たアレイ型圧電振動子を備える。アレイ型振動子は複数
の圧電素子を並列に配置し、その配置方向を走査方向と
したもので、複数の圧電素子それぞれが送受信の各チャ
ンネルを形成する。
するパルス発生器11と、このパルス発生器11から出
力された基準レートパルスをチャンネル毎に遅延して駆
動パルスを発生させる送信回路12とを備える。送信回
路12から出力されたチャンネル毎の駆動パルスは、超
音波プローブ1の複数の振動子のそれぞれに供給され
る。駆動パルスの送信遅延時間は各チャンネル毎に制御
され、レート周波数毎に繰返し供給される。駆動パルス
の供給に応答して各振動子から超音波パルスが出射され
る。この超音波パルスは被検体内を伝搬ながら、制御さ
れた送信遅延時間により送信ビームを形成し、音響イン
ピーダンスの異なる境界面でその一部が反射してエコー
信号になる。戻ってきたエコー信号の一部または全部は
振動子で受信され、対応する電気信号に変換される。
ーブ1に接続された受信回路21のほか、この受信回路
21の出力側に置かれたBモード処理回路22、CFM
モード処理回路23、および表示回路24を備える。受
信回路21は、プローブ1の振動子に接続されたチャン
ネル毎のプリアンプと、このプリアンプのそれぞれに接
続された遅延回路と、その遅延回路の遅延出力を加算す
る加算器とを備える。このため、プローブ1により受信
されたエコー信号は、その対応する電気量のアナログ信
号が受信回路21に取り込まれ、チャンネル毎に増幅さ
れた後、受信フォーカスのために遅延制御され、加算さ
れる。これにより、受信遅延時間の制御に応じて決まる
フォーカス点を有する受信ビームが演算上で形成され、
所望の指向性が得られる。
路22およびCFMモード処理回路23に分岐して接続
されている。Bモード処理回路22はBモードの白黒の
断層像データを作成を担うもので、図示しない対数増幅
器、包絡線検波器、およびA/D変換器を備えている。
このため、受信回路21で整相加算されたエコー信号は
対数増幅器で対数的に増幅され、その増幅信号の包絡線
が包絡線検波器で検波され、さらにA/D変換器でデジ
タル信号に変換された表示系回路24にBモード画像信
号として送られる。
フレームメモリおよび書込み/読出し制御回路を備えた
デジタルスキャンコンバータ(DSC)31、ピクセル
のカラー付与処理を行うカラー処理器32、D/A変換
器33、および表示用のTVモニタ34を備える。Bモ
ード処理回路22から出力されたデジタル量の包絡線検
波信号は、DSC31のBモード用フレームメモリに書
き込まれる。
観測するCFMモードの画像データの作成を担う回路群
であり、その入力側は、受信回路21から出力されたエ
コー信号を実数部Q,虚数部Iに対応して2系統で入力
するように分岐されている。実数部Qおよび虚数部Iの
信号系毎に、ミキサ41A(41B)、LPF42A
(42B)、およびA/D変換器43A(43B)をこ
の順に備える。CFM処理回路23はさらに、A/D変
換器43A、43Bからの実数部および虚数部の処理信
号を一旦格納するバッファメモリ44A,44B、この
格納信号に基づいてフィルタリング処理を行うMTIフ
ィルタ部45、およびこのフィルタ部出力に基づいて血
流動態に関する各種の演算を行う演算回路46を備え
る。CFM処理回路23はさらに、参照用の基準信号を
発振する基準発振器47と、この基準信号に正確に90
度の位相差を与えてミキサ41A,41Bにそれぞれ供
給する位相器48とを備える。基準発信器47と送信系
回路2のパルス発生器21とは互いに同期して駆動す
る。基準信号は超音波信号と略同一の周波数を有する。
コー信号は、実数部、虚数部の信号系それぞれにおい
て、ミキサ41A(41B)により基準信号との間で乗
算された後、LPF42A(42B)によりその高周波
成分が除去されて、ベース帯域の信号となる。すなわ
ち、エコー信号はその実数部、虚数部毎に、ミキサ41
A(41B)およびLPF42A(42B)による位相
検波(直交位相検波)がなされ、基準信号からの位相差
を反映したベース帯域のドプラ信号として抽出される。
このドプラ信号はその実数部、虚数部毎に、A/D変換
器43A(43B)によりデジタルデータに変換され、
バッファメモリ44A(44B)に一旦格納される。
44A,44Bに個別に格納されているドプラデータ群
を用いて心臓壁などで反射してきた不要なエコー信号を
除去するために介挿してある。このMTIフィルタ部4
5の処理は、本発明に係るフィルタリングの手法を達成
するものである。その具体的な構成は図2に示すようで
あり、その処理については後述する。MTIフィルタ部
45により、実質臓器からのドプラ成分(クラッタ成分
と呼ぶ)が全体のドプラ信号から確実かつ精度良く除去
されて血流からのドプラ成分のみが抽出される。
れた実数部、虚数部のドプラデータはそれぞれ演算回路
46に送られる。演算回路46は、実数部、虚数部のド
プラデータを用いて血流の動態情報を推定する、例えば
自己相関器およびこの相関結果を用いる平均速度演算
器、分散演算器、パワー演算器を有しており、血流の平
均速度、速度分布の分散、血流からの反射信号のパワー
などの情報が推定演算される。この演算結果はCFMモ
ード画像データとしてDSC31のCFM用フレームメ
モリに一旦格納される。
リおよびCFMモード用フレームメモリに格納された画
像データが各別に標準TV方式で読み出される。さら
に、この読出しと並行して、両フレームメモリの共通画
素同士の一方が択一的に選択され、Bモード画像(背景
像)にCFMモード画像が重畳された1フレームの画像
データが形成される。この画像データはカラー処理器3
2でカラー付与処理が施された後、D/A変換器により
所定タイミング毎にアナログ信号に変換され、TVモニ
タ34に表示される。この結果、白黒のBモード像を背
景に血流速度の2次元カラー像が表示される。
び動作の説明を、本発明のフィルタリングの原理説明と
併せて行う。
査線方向への超音波パルスの送受信がN回(例えば16
回)繰り返される。この送受信1回毎に得られるエコー
信号に基づいて、バッファメモリ44A,44Bに直交
位相検波されたドプラデータがそれぞれ格納される。こ
のため、バッファメモリ44A,44Bのそれぞれに格
納されるベース帯域のデジタルのドプラデータは3次元
になる。図3に示すように、第1の次元は各走査線数
(番号)1〜Lを表わし、第2の次元は各走査線に沿っ
た深さ方向のピクセル数(番号)1〜Mを表わし、およ
び第3の次元は各ピクセルについて送受信の繰返しによ
り得られるドプラデータの数(番号)1〜Nを表わす。
ドプラデータの数を以下、「データ数」という。CFM
モードでは、各ピクセルで時系列に得られたN個のドプ
ラデータ(図3斜線部分参照)を独立に処理して各ピク
セル毎の血流の動態情報を得る。
4に示すように、バッファメモリ44A,44Bから実
数部Q、虚数部Iのデジタル量のドプラ信号Zi(i=
0〜N−1)が走査面の各位置毎に供給される。図4に
おける縦軸方向は振幅値に相当する。
は以下の4つに集約される。 (1)隣接するドプラデータ間でのクラッタ成分の瞬時
的な位相変化を推定し、その推定量に応じてドプラ信号
全体の位相変化を補正する(すなわち、クラッタ成分の
瞬時的な位相変化を打ち消す)。なお、本発明での「瞬
時的」の用語はN個のドプラデータの観測時間よりも短
いことを意味している。 (2)上記(1)の補正処理を行った後で、クラッタ成
分に相当する一定振幅値を減算してクラッタ成分を除去
する。 (3)上記(1)または(2)の処理後に、ハイパスフ
ィルタリングを行ってクラッタ成分を除去する。そのフ
ィルタリングの特性を上記(2)の処理による出力信号
の特徴に応じて変化させる。 (4)必要に応じて上記(1)の処理に伴う位相変化の
影響を打ち消して、従来から使用されてきている速度概
念に合わせた血流速度情報を得る。
め、走査断面上のある1点(ピクセル)からのドプラ信
号を形成する上記N個のデジタル量のドプラデータ列に
ついて説明する(図3の斜線部分参照)。残りの点それ
ぞれのN個のドプラデータ列についても同一の処理が実
施されるものとする。
フィルタ部45はその入力側に図2に示す如く、実数
部、虚数部それぞれのドプラ信号Ziを受けるクラッタ
位相変化量推定器45aおよび複素乗算器45cと、ク
ラッタ位相変化量推定器45の推定信号を受ける乗算信
号発生器45bとを備える。乗算信号発生器45bで発
生した乗算信号は複素乗算器45cに供給される構成を
採る。また特徴(2)を実現するため、複素乗算器45
cで乗算された実数部、虚数部のドプラ信号をそれぞれ
入力して一定値減算を行う一定値減算器45dを備え
る。
て、その処理の原理を説明する。各ピクセル位置のドプ
ラデータ列(ドプラ信号)は、図4(a)に示すように
N個の離散的なドプラデータから成る。このデータ列
は、実質臓器によりドプラ偏移を受けて戻ってきたドプ
ラ信号(クラッタ成分)と血流によりドプラ偏移を受け
て戻ってきたドプラ信号とに分けて(1)式のように記
述することができる。
成分を、第2項は血流からのドプラ信号をそれぞれ表わ
している。Aはクラッタ成分の振幅を、aは血流からの
ドプラ信号の振幅をそれぞれ表わしている。一般に、そ
れらの振幅はA>>aである。図4(a)にはドプラ信
号の波形を例示している。同図では、クラッタ成分の運
動速度が観測時間の前半ほど遅く、後半になるほど早く
なる場合を想定している。添字iはドプラ信号のデータ
番号(0〜N−1)を意味し、φ0、ψ0は最初のドプ
ラデータの位相(初期位相)、φi、ψiはi番目のド
プラデータの0番目のドプラデータに対する位相差を表
わしている。
の位相項は、その周波数を一定と仮定するならば、それ
ぞれ次式のように記述することができる。
のドプラ信号の観測時間内の平均ドプラ偏移周波数、T
rは同一走査線方向への超音波送受信の繰返し周期であ
る。
の周波数(ドプラ周波数)は一般に観測時間中に一定で
あるとは限らないため、「上記(2a)式による位相変
化=一定」を基礎とする位相推定により得られた位相値
を用いたのでは、十分にクラッタの位相変化をキャンセ
ルすることができない。そこで、本発明では瞬時的な位
相変化を考慮した位相推定演算を行うことを必須の要件
とする。クラッタ成分の周波数が観測時間内で一定であ
るという仮定を基礎にすると、前述した特徴(1)で述
べた、クラッタ成分の瞬時的な位相変化を打ち消すこと
ができなくなる。
信号に含まれているクラッタ成分を除去するため、ドプ
ラ信号の各データZi(i=0,1,2,…,N−1)
に対して、位相補正操作と一定値減算とを組み合わせた
次式に示す処理を施す。
除去され、血流からのドプラ信号のみを得ることができ
る。これを理想的またはそれに近い状態で実施するに
は、クラッタ成分の位相項φiをいかに正確に推定する
かが非常に重要になってくる。このクラッタ成分の位相
項φiの推定法を以下に説明する。
である(ただし、本発明はこの推定法を採用していな
い)。自己相関法は一般に次式により定義されるもの
で、これを使えば観測時間内の平均周波数を計算するこ
とができる。すなわち観測時間(データ数N)での平均
周波数は、
り、*は複素数の位相共役を意味する。
分の速度は観測時間(データ数N)内で必ずしも一定で
はないことから、(4)式のようにN個のドプラデータ
に基づく観測時間内のクラッタの1個の平均周波数を用
いたとしても、(3)式におけるクラッタ成分の除去能
力は依然として低い。したがって、この手法は本発明の
目指すところではない。
化量を捕らえて、その位相変化量でドプラ信号を補正す
る。これにより、クラッタ成分の速度変化をその都度、
補正(修正)し、クラッタ成分の位相変化をキャンセル
したドプラ信号を得る。これを実行するため、本発明で
は、より短い時間毎に平均処理して位相変化量を推定す
る。ドプラ信号の隣接データ間の位相変化量の推定演算
自体は、上述の自己相関法と同様にデータ間の複素共役
の乗算により行うが、これに加えて、位相変化量の推定
の安定性を上げるために改善した平均手法を以下のよう
にいくつか提案する。
よる平均周波数の推定法と同様の複素演算を含むが、複
素乗算結果の平均幅が観測時間よりも短く、瞬時的な位
相変化量を推定できる手法である。つまり、上述した自
己相関法の場合、観測時間(データN)内において1つ
の位相補正値のみを出力するが、この第1の平均処理法
によれば、「N−1」個の位相補正値を出力できる。第
1の平均処理法は定量的には次のように表わされる。i
番目とi+1番目のデータとの間のクラッタ成分の位相
変化量は、その近傍の数データを用いて、
幅)「2×I+1」はデータ数Nに比べて十分小さく、
クラッタ成分の位相変化量の推移に十分追随していける
ように選択される。またデータ列の端部においては平均
幅を狭めていき、両端では平均幅=1となるように設定
することで、端部においても位相変化量を出力できるよ
うにしている。なお、平均幅は必ずしも式(5)のよう
に奇数である必要はなく、偶数でもよい。
る処理の順序を変えるものである。具体的には、
をデータ数Nに比べて十分小さく設定する。さらに、ド
プラデータ列の端部における平均処理も、上述した第1
の平均処理法と同じに行う。
る。得られた位相補正値の列に対して最小二乗法により
スムーズな曲線をフィッティングさせ、最終的な複数個
の位相補正量を求める。この様子を図5に模式的に示
す。
位相変化量の推定にはMTIフィルタ部に入力する信
号、すなわち血流からのドプラ信号にクラッタ成分が混
入している位相検波信号が使用されている。つまり、ク
ラッタ成分のみが使用されている訳ではない。しかし、
クラッタ成分の振幅は血流からのドプラ信号のそれに比
べて十分大きいことから、殆どの場合、そのような入力
信号から推定した位相変化量は近似的にクラッタ成分の
位相変化量であると見做すことができる。
ど、そのような仮定を適用できないことがある。一般的
に、超音波信号の空間的な特性は超音波ビームの空間的
な広がりに応じてにじみが在るため、血管内と言えど
も、その外側からクラッタ成分が入り込んでくる。この
ため、血管が細い場合、クラッタ成分の血管内への入り
込みが大きいから、上述した「入力信号から推定した位
相変化量は近似的にクラッタ成分の位相変化量であると
見做す」との仮定が成り立つ。しかし、血管が太くなる
ほど、図6(a),(b)に示すように、血管の中心部
にまで入り込むクラッタ成分の量が少なくなってしまう
場合も想定される。この場合、中心部ではクラッタ成分
と血流からのドプラ信号の成分とが同程度または逆転し
てしまうことも考えられる。このような場合、本発明で
は、以下の2通りのいずれかの手法で対処する。
位相変化量を求める式(5)に、さらに空間的に平均す
るファクタを加えて、以下の式のように演算する。
の深さ方向へのピクセル番号、各ピクセル位置での超音
波送受信の繰返しに伴うデータ番号を示す添字である
(図3参照)。それぞれの方向への平均幅は、「2K+
1」,「2J+1」,「2I+1」である。
号に比べて非常に大きいため、血管内の平均処理する空
間範囲に血管外からクラッタ成分が入れば、推定される
位相変化量はクラッタ成分により支配的に決定されるこ
とになる。空間平均を求める際、重み付け係数を用いて
重み付け処理を行うこともできる。具体的な重み付け係
数としては例えば、平均範囲の中心付近ほど大きく、端
部では小さく設定される。このように平均処理された結
果は、平均範囲の中心位置における位相補正量として用
いられる。
(7)などを用いて求められた位相補正量を、ドプラ信
号のパワー値に応じて修正する手法である。この修正処
理は以下の式により実行される。
は係数を示す。
7にその一例を示す。具体的には、血管外のようにクラ
ッタ成分が非常に大きい部分(k(p)=1の部分)で
は位相補正量を修正しないが、血管の内部に入り、MT
Iフィルタへの入力信号が小さくなるにつれて、位相補
正量に掛ける係数k(p)を徐々に小さくする。これに
より、図6の血管中心部のようにクラッタ成分が小さい
ため、位相補正量が血流速度に大きく影響されるような
場合、係数が小さくなり、位相補正があまり行われない
ようになる。この係数制御はクラッタ成分の除去という
点においても合理性を有する。つまり、太い血管の内部
では元々クラッタ成分が少ないから、本発明の手法を用
いてクラッタ成分に対する低減性能を高めるという必要
性は元来少ないのである。
で実施してもよいし、また同時に実施してもよい。同時
に実施した方がその効果は大きい。
法(または対処法との組み合わせ手法)により得られた
各ドプラデータ間での瞬時的な位相補正量θiに基づ
き、次式のように演算を行い、クラッタ成分を除去す
る。
定位相値を用いた位相補正の複素乗算を表わし、第2項
目はクラッタ成分の除去のための一定値(ドプラデータ
列の最初の値)減算を表わしている。
量推定器45aは前述した式(5),式(6),
(7)、式(4)を改善した式(8),または、式
(5),(6)若しくは(7)を改善した式(9)に基
づく演算を行って、クラッタ成分の瞬時的な位相変化量
θiを推定する。乗算信号発生器45bはクラッタ位相
変化量推定器45aにより推定された現在のサンプリン
グの瞬時的な位相変化量およびそれ以前のサンプリング
で推定していた位相変化量を用いて複素数の乗算信号
られる。複素乗算器45cには実数部、虚数部毎のデジ
タル量のドプラ信号Ziが供給されており、これによ
り、この乗算器45cにて、ドプラ信号Ziとの
プラ信号の虚数部I信号が例えば図4(a)のようにな
っているとする。この波形は、大きい振幅かつ低速度で
変化するクラッタ成分のドプラ偏移成分に、図では表さ
れ難いが小振幅で変化する血流のドプラ偏移成分が重畳
した状態となっている。この波形について、クラッタ成
分の瞬時的な位相変化量による位相補正を行った信号波
形は同図(b)のように、クラッタ成分に起因した大振
幅かつ低周波の波形うねり分が無くなり、その殆どは血
流が受けているドプラ偏移に対応した変動のみを有す
る、略一定値振幅の波形となる。
した式(10)の第2項目の減算が実施される。つま
り、クラッタ成分の瞬時的な位相変化をキャンセルした
ドプラ信号からその最初の位相φ0時の振幅値「A・e
xp{j・φ0}」をクラッタ成分の振幅値として見做
して一律に減算する。このクラッタ成分除去を行った信
号波形は図4(b)から同図(c)のようになる。つま
り、波形の振幅値がほぼ零付近まで下がり、クラッタ成
分が良好に除去される。
定値は、ドプラ信号のN個のデータの中のある値(例え
ば、式(10)に示したような最初のドプラデータの
値、または、それ以降のある瞬時の値)に設定してもよ
いし、また、そのN個のドプラデータの平均値に設定し
てもよい。
はクラッタ成分を除去するために行われるが、その後段
でハイパスフィルタ処理を行う場合、一定値減算は必ず
しも必要ではない。しかしながら、以下に説明するよう
に、本発明の別の特徴である、ハイパスフィルタの遮断
特性をドプラ信号の性質に応じて制御させる場合、その
制御情報として式(10)の演算結果を利用するので、
ハイパスフィルタを設置するか否かに関わらず、一定値
減算までの処理が必要となる。
(3)を説明する。この特徴(3)を実現するため、M
TIフィルタ部45は図2に示すように、一定値減算器
45dの出力信号を受けるハイパスフィルタ45gおよ
びクラッタ情報検出器45eを備えるとともに、クラッ
タ情報検出器45eの出力信号を受けてハイパスフィル
タ45eの遮断特性を制御するフィルタ特性設定器45
fを備える。ハイパスフィルタ45eの構成は、FIR
型でも、IIR型であってもよく、フィルタ特性設定器
45fが設定した次数、遮断周波数にしたがって通過信
号をハイパスフィルタリングできるようになっている。
図8には、IIR型のハイパスフィルタの構成例を示す
(なお、同図にはドプラ信号の実数部または虚数部の一
方に対するフィルタ構成のみを示す)。
うである。図4(c)に示した曲線は、一定値減算によ
りクラッタ成分が完全に除去され、クラッタ成分よりも
周波数が高い血流からのドプラ信号のみが残っている場
合を想定している。しかし、実際には、クラッタ成分の
瞬時的な位相変化量をその近傍の数データのみを用いて
推定するにしても推定精度に限界があるため、式(1
0)に基づく処理だけではクラッタ成分がある程度残る
ことがある。この取り切れなかったクラッタ成分はハイ
パスフィルタによりさらに除去することとし、その遮断
特性をアダプティブに制御するものである。
をクラッタ成分除去(一定値減算)後のドプラ信号の性
質に応じて制御するものである。ドプラ信号の性質を把
握するための情報として上記(10)式の演算結果を用
いて、パワー値および分散値が以下のように演算され
る。
フィルタの特性を設定する。仮にクラッタ成分の変化が
小さければ、式(10)に基づく処理によりクラッタ成
分の殆どが除去されるので、信号のパワー値は小さい。
反対に、クラッタ成分の変化が大きければ、かかるパワ
ー値は大きくなる。よって、パワー値が小さければ、後
段のハイパスフィルタの遮断周波数は低く設定したとし
てもクラッタ成分はフィルタにより十分低減されること
になる。反対に、パワー値が大きければ、フィルタの遮
断周波数を高く設定すれば、クラッタ成分は確実に除去
される。
の制御例を図9(a)に示す。ある一定値以下のパワー
値の場合、フィルタの遮断周波数は予め定めた最低値f
minに設定される。パワー値が高くなるにしたがって
フィルタの遮断周波数fcが上げられる。遮断周波数だ
けでなく、フィルタの次数を上げ、減衰特性がより急峻
になるように制御してもよい(図9(b)参照)。
信号のパワー値単独のほか、そのパワー値に分散値を組
み合わせてもよい。この場合には例えば、同じパワー値
の場合、分散値が大きいほど、残留クラッタ成分が高周
波数帯にも広がっていると判断し、フィルタの遮断周波
数を高く制御する。
実数部、虚数部のドプラ信号は、さらにハイパスフィル
タ45gによりハイパス処理される。このフィルタリン
グによって、残存していたクラッタ成分がさらに確実に
除去される。とくに、このフィルタリング時には、ドプ
ラ信号の性質が判定され、ハイパスフィルタ45gの特
性がアダプティブに制御される。例えば、クラッタ成分
除去後のドプラ信号のパワー値が大きいほど、クラッタ
成分が未だ残っていると判断され、ハイパスフィルタ4
5gの遮断周波数が高められ、遮断帯域が広げられて、
クラッタ成分の除去能力が強調される。パワー値が小さ
いと、クラッタ成分が既に十分除去されていると判断さ
れて、遮断周波数が下げられ、血流からのドプラ信号成
分の通過が強調される。
(4)を説明する。MTIフィルタ部45は図2に示す
ように、ハイパスフィルタ45gの出力側に複素乗算器
45iを備え、この複素乗算器45iに位相反転器45
hから位相反転信号が供給されるようになっている。位
相反転器45hは乗算信号発生器45bの出力信号を受
けて所定の位相反転処理を後述するように行う構成であ
る。
る。上記特徴(1)〜(3)に係る処理によってクラッ
タ成分は確実に除去されるが、除去されて残った血流か
らのドプラ信号は式(3)に示すように、クラッタ成分
の位相変化量φiだけ、位相シフトを受けている。この
位相シフト後の位相値をそのまま受け入れれば、クラッ
タ成分に対する相対的な血流速度を得ることができる。
つまり、この実質臓器に対する血流速度、すなわち真の
血流速度が得られる。ところが、従来得ている血流速度
はこれとは異なり、真の血流速度ではない、超音波プロ
ーブに対する速度である。しかし、慣習的に超音波プロ
ーブに対する速度が血流速度として長く使用されている
ので、本実施形態でもその慣習にしたがって血流速度を
得ることも可能とする。その場合、式(10)で用いら
れている位相補正量を符号反転させて、次式のように作
用させる。ハイパスフィルタ45gを通過した後のドプ
ラ信号をSiとすると、
得る。
素信号を生成し、この信号を複素乗算器45iに与え
る。ハイパスフィルタ45gによりクラッタ成分が除去
されたドプラ信号には、複素乗算器45iにより、その
逆位相の信号が掛けられる。これにより、クラッタ成分
に対する位相補正の影響が打ち消されて、超音波プロー
ブに対する血流速度を求め得る信号に変換される。な
お、組織に対する血流速度を推定、表示する場合には、
かかる処理は必要がない。
れたドプラ信号は演算回路46に送られ、血流速度、ド
プラ信号のパワー、速度分布の分散などの血流情報が演
算される。これらの情報は前述したように、TVモニタ
34で適宜な態様で表示される。
のように構成され動作するので、クラッタ成分が心拍や
呼吸などの影響により動いていても、クラッタ成分を確
実かつ精度良く除去でき、殆ど血流からのドプラ信号の
みを効果的に抽出できる。とくに、観測時間よりも短
い、瞬時毎に位相変化量を求めてクラッタ成分の位相変
化をその都度補正(キャンセル)しているので、観測時
間全体で1つの位相補正量を使って位相補正する場合に
比べて著しく位相補正精度が向上する。これにより、殆
ど一定振幅値のクラッタ成分(これには未だ血流からの
ドプラ信号が重畳している)を抽出することができ、そ
の後に実行するクラッタ成分除去のための一定値減算の
処理が従来よりも極めて有効となる。このように前段階
として、クラッタ成分のみをその特質を利用して分別除
去するので、血流速度が遅い場合でもクラッタ成分に隠
れている血流からのドプラ信号を確実に抽出でき、低速
度の血流の検出能が飛躍的に向上する。したがって、診
断能の高いかつ信頼性が向上した血流情報を提供でき
る。
残存するクラッタ成分がある場合は、ハイパスフィルタ
により確実に除去される。しかも、ハイパスフィルタの
遮断特性はそのフィルタに入力するドプラ信号のパワー
値などの性質に応じてアダプティブに制御される。これ
により、依然としてクラッタ成分の除去能力を高く保持
するか、または血流からのドプラ信号の通過能力を一層
高めるか、その遮断特性が好適に制御される。したがっ
て、これによって、クラッタ成分の性質が変動しても、
常に高い安定したクラッタ成分の除去能力を保有でき、
血流の表示能を一層高めることができる。
態を図10に基づき説明する。
カラードプラ診断装置が採用するMTIフィルタ部45
のブロック構成を示す。なお、そのほかの構成および動
作は第1の実施形態のものと同等である。
うに、ハイパスフィルタ45gを、第1の実施形態のと
きのように一定値減算器45dの出力端ではなく、1段
目の複素乗算器45cの出力端に直接接続されている。
この結果、クラッタ成分の位相補正がなされたドプラ信
号は、クラッタ成分を除去することなく、直接ハイパス
フィルタ45gに送られ、そこでクラッタ成分が除去さ
れる。このハイパスフィルタ45gの遮断特性は第1の
実施形態のときと同じように、一定値減算貴意45dに
より一定値減算がなされた(クラッタ成分が除去され
た)信号を用いて制御されている。
ある。前述した式(10)で表されるクラッタ低減処理
の内、第2項目の一定値減算処理は、位相補正された図
4(b)の信号がほぼフラットになる場合、いわゆるD
C分をカットの処理と等価になる。この場合、後段にハ
イパスフィルタ45g設置する場合、このフィルタによ
ってDCカットを行えるから、必ずしも一定値減算の処
理は必要がない。
する一定値減算処理を省略し、クラッタ成分の性質を判
定する回路にのみ一定値減算器45eを挿入すればよ
い。これにより、MTIフィルタ部の設計の自由度を上
げることもできる。
波カラードプラ診断装置およびその信号処理方法は、ク
ラッタ成分が心拍や呼吸などに起因して微妙に動いてい
るため、クラッタ成分の瞬時的な位相変化の除去を基礎
に置くもので、ドプラ信号のドプラデータ間の瞬時的な
位相量を推定し、その推定値でドプラ信号を逐次補正す
ることで、クラッタ成分の位相変化を瞬時的に捕らえて
それをキャンセルでき、その後に続く一定値減算によっ
てクラッタ成分を確実かつ精度良く除去できる。とく
に、血流速度が遅い場合でもクラッタ成分を高精度に分
離・除去して、血流からのドプラ信号を抽出できる。し
たがって、表示する血流情報にクラッタ成分の影響が現
れるという好ましくない事態を確実に防止し、血流の検
出能、表示能を向上させ、高精度の血流情報を装置使用
者に提供することができる。
の入力ドプラ信号のパワー値などの性質に応じてアダプ
ティブに制御しているので、診断部位や使用条件が変わ
っても常に安定して高精度な血流検出能を維持でき、装
置の信頼性を向上させることができる。
断装置のブロック図。
ック図。
送受信に伴うエコーデータの組を模式的に示す説明図。
(ドプラ信号)の離散的な波形図。
にじみ説明する図。
る1つの対処に関わる、信号パワー値と係数との関係
図。
制御するための遮断周波数の制御および帯域特性の制御
の様子を個別に示すグラフ。
ロック図。
性の不都合を説明する図。
Claims (16)
- 【請求項1】 被検体内の断面に沿って超音波信号を各
走査線方向に複数回ずつ送信するとともに当該被検体か
ら反射されてくる超音波エコー信号を受信する送受信手
段と、前記超音波エコー信号に基づき前記各走査線方向
それぞれの同一位置から反射されてきた複数の時系列の
ドプラデータから成るドプラ信号をその位置毎に得るド
プラ信号抽出手段と、前記ドプラ信号ぞれぞれの特質に
したがって決まる特性を用いて前記被検体の臓器が前記
超音波信号を反射したことに伴うクラッタ成分を当該ド
プラ信号それぞれから除去するクラッタ成分除去手段
と、このクラッタ成分除去手段によりクラッタ成分が除
去された前記ドプラ信号それぞれに基づいて前記断面の
血流の情報をカラー表示する表示手段とを備えたことを
特徴とする超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項2】 前記クラッタ成分除去手段は、前記ドプ
ラ信号それぞれの前記クラッタ成分の瞬時的な位相変化
量を推定する位相推定手段と、この位相推定手段により
推定された位相変化量に基づき前記ドプラ信号それぞれ
の位相を補正する位相補正手段とを備えた請求項1記載
の超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項3】 前記クラッタ成分除去手段は、前記位相
補正手段により位相補正された前記ドプラ信号のそれぞ
れから前記クラッタ成分に相当する一定値を減算する減
算手段とを備えた請求項2記載の超音波カラードプラ診
断装置。 - 【請求項4】 前記位相推定手段は、前記ドプラ信号そ
れぞれの一部のドプラデータのみを用いて前記瞬時的な
位相変化量を推定する手段である請求項2又は3記載の
超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項5】 前記位相推定手段は、前記一部のドプラ
データとして時間的に隣接したドプラデータ間の複素共
役乗算を含む演算を行って前記位相変化量を推定する手
段である請求項4記載の超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項6】 前記位相推定手段は、前記一部のドプラ
データとして空間的に隣接した複数のサンプル点の平均
された特徴に基づき前記位相変化量を推定する手段であ
る請求項4記載の超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項7】 前記位相推定手段は、前記同一位置から
得られる前記ドプラ信号全体のパワー値に応じて前記位
相変化量を修正する修正手段を含む請求項2又は3記載
の超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項8】 前記位相補正手段は、前記位相推定手段
により推定された位相変化量に基づいて前記クラッタ成
分の位相変化をキャンセルする複素数信号を生成する信
号生成手段と、この信号生成手段により生成された複素
数信号を前記前記ドプラ信号それぞれに乗算する乗算手
段とを備える請求項2又は3記載の超音波カラードプラ
診断装置。 - 【請求項9】 前記減算手段は、前記ドプラ信号のそれ
ぞれを形成する複数のドプラデータの内の任意番目のド
プラデータ又は平均値を前記一定値として前記減算を行
う手段である請求項3記載の超音波カラードプラ診断装
置。 - 【請求項10】 前記クラッタ成分除去手段は、前記減
算手段により一定値が減算された前記ドプラ信号それぞ
れを変更可能な遮断特性でフィルタリングするハイパス
フィルタと、このハイパスフィルタの遮断特性をそのド
プラ信号のそれぞれの特徴に応じて制御する遮断特性制
御手段とを備える請求項3記載の超音波カラードプラ診
断装置。 - 【請求項11】 前記クラッタ成分除去手段は、前記位
相補正手段により位相補正された前記ドプラ信号のそれ
ぞれを変更可能な遮断特性でフィルタリングするハイパ
スフィルタと、このハイパスフィルタの遮断特性をその
ドプラ信号のそれぞれの特徴に応じて制御する遮断特性
制御手段とを備える請求項2又は3記載の超音波カラー
ドプラ診断装置。 - 【請求項12】 前記遮断特性制御手段は、前記ドプラ
信号それぞれの特徴として少なくともその信号のパワー
値を演算する手段と、そのパワー値に応じて前記ハイパ
スフィルタの遮断周波数または次数の少なくとも一方を
制御する制御手段とを備えた請求項10または11記載
の超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項13】 前記クラッタ成分除去手段は、前記位
相補正手段により位相補正された前記ドプラ信号それぞ
れの補正位相量を打ち消す補正位相打消し手段を備えた
請求項8記載の超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項14】 前記補正位相打消し手段は、前記信号
生成手段により生成された複素数信号を位相反転させる
位相反転手段と、この位相反転手段により位相反転され
た複素数信号を前記ハイパスフィルタから出力された前
記ドプラ信号のそれぞれに乗算する乗算手段とを備えた
請求項13記載の超音波カラードプラ診断装置。 - 【請求項15】 前記ドプラ信号抽出手段は、前記ドプ
ラ信号のそれぞれについて実数部、虚数部毎に直交位相
検波を行う手段である請求項1記載の超音波カラードプ
ラ診断装置。 - 【請求項16】 被検体内の断面に沿って超音波信号を
各走査線方向に複数回ずつ送信するとともに当該被検体
から反射されてくる超音波エコー信号を受信し、前記超
音波エコー信号に基づき前記各走査線方向それぞれの同
一位置から反射されてきた複数の時系列のドプラデータ
から成るドプラ信号をその位置毎に得て、前記ドプラ信
号ぞれぞれの特質に応じて前記被検体の臓器が前記超音
波信号を反射したことに伴うクラッタ成分を当該ドプラ
信号それぞれから除去し、前記クラッタ成分が除去され
た前記ドプラ信号それぞれに基づいて前記断面の血流の
情報をカラー表示する超音波カラードプライメージング
の信号処理方法であって、前記クラッタ成分の除去のと
きに、前記ドプラ信号それぞれからの前記クラッタ成分
の瞬時的な位相変化量を推定し、この位相変化量に基づ
き前記ドプラ信号それぞれの位相を補正し、この位相補
正された前記ドプラ信号のそれぞれから前記クラッタ成
分に相当する一定値を減算する、ことを特徴とした信号
処理方法。
Priority Applications (2)
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