JP3724846B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、カラーフローマッピングモードにより血流情報の2次元分布を得ることのできる超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、超音波診断装置は超音波パルス反射法を応用したものである。プローブから送信された超音波パルスは音響インピーダンスの境界で反射、屈折、また波長より小さい血球等の反射体で散乱を繰り返しながら被検体内を伝搬していく。音響インピーダンスの境界で反射した超音波は、送信時と同じ経路(以下、ラスタと称する)を逆に伝搬(実際には同じラスタを伝搬してきた反射波を強調する)してプローブで受信される。超音波パルスは、視野深度等によって決まる一定の繰り返し周波数(通常、レート周波数と称される)の逆数の周期(以下、レート周期と称する)で繰り返し送信される。Bモードでは、アベレージング数が1であれば、1本のラスタに対して超音波を1回だけ送受信しながらラスタを順次切換えていき、最後のラスタの後、最初のラスタに戻って同様の動作を繰り返す。カラーフローマッピングモード(以下、CFMモードと略す)では、1本のラスタに対して超音波を複数回M、例えば16回繰り返して送受信しながらラスタを順次切換えていき、最後のラスタの後、最初のラスタに戻って同様の動作を繰り返す。
【0003】
CFMモードでは、血流の平均流速、流速のばらつきを示す分散、散乱エコーの強さを示すパワー等の血流情報が2次元分布としてリアルタイムでカラー表示される。これにより血流の流れの方向や、逆流、シャント流等の異常血流の様子を一目で認識することができるようになった。
【0004】
近年、パワーをフレーム間で加算平均してカラー表示する表示法(以下、カラーアンギオ法と称する)が開発され、実用化に向けて進んでいる。このカラーアンギオ法には次のような利点がある。
(1)平均流速表示に見られる折り返しがない。
(2)角度依存性が少ない。
(3)直交する血流でも検出可能である。
(4)高感度である。
【0005】
なお、従前からパワー値を観測データ数Mで加算平均する処理は実用されていたが、この場合のデータの観測周期はレート周期に等価で非常に近接しており、加算平均の効果、つまり時間的にランダムに変化するノイズ同士を相殺的に低下させるという効果は少なく、拍動に起因すると思われるバースト的なノイズは除去できない。それに対し、カラーアンギオ法では、フレーム間の間隔はレート周期の数百倍で非常に長く、加算平均の効果は著しく、S/Nの向上が期待できる。
【0006】
また、S/Nの向上には強い加算処理、つまり多くの観測データ数で加算平均することが有効であるが、強い加算処理を行うと、表示のリアルタイム性が低下し、画像がぼけるという問題点がある。
高いS/Nを維持したままリアルタイム性を上げるためには、毎秒当たりのフレーム数(フレームレート)を上げればよいが、現在では、フレームレートは(1)式で決まり、容易にフレームレートを上げることは困難であった。なお、(1)式では、Bモードのスキャンを含んでいない。BモードのスキャンとCFMモードのスキャンとが1フレーム分のスキャンに混合されてなされることが一般的であり、実際のフレームレートはさらに低下する。
【0007】
F=PRF/(N×M) …(1)
ただし、 F;フレームレート
N;CFMモードの1フレーム分のラスタ本数
M;CFMモードの1本のラスタに対する超音波送受信の繰り返し回数
PRF;レート周波数
フレームレートを上げる技術として、受信時に複数方向からの受信信号を得るという並列同時受信技術があるが、従来の2倍から4倍が限度であり、それ以上のフレームレートの向上は不可能である。更に、並列同時受信の装置は回路規模が大きく、また並列同時受信には原理的に感度の低下が避けられないという問題点がある。したがって、CFMモードでフレームレートの向上が強く望まれておる。
【0008】
また、CFMモードには、クラッタ成分と血流成分との分離能に関する次のような問題もある。CFMでは、位相検波後のドプラ信号からクラッタ成分を除去し、血流成分だけを抽出するためにMTIフィルタと呼ばれるハイパスフィルタが用いられる。CFMモードでは1本のラスタに対して送受信がM回繰り返される。つまり、MTIフィルタには1/PRF の一定周期でM個のデータが送り込まれる。したがってMTIフィルタはこのM個のデータに対してフィルタをかけるしかない。このことはフィルタの時間窓が有限長Mで打ち切られることに相当する。これを周波数軸上で見ると、
1/M・sin(πfM)/πfM
を畳み込むことに等価であり、スペクトラムが広がってしまうことが避けられない。このため、広がったクラッタ成分のスペクトラムが血流成分のスペクトラムに重なり、クラッタ成分を除去し、血流成分を抽出することが不可能である。
【0009】
また、MTIフィルタのフィルタ特性を急峻にするためには、フィルタの次数を上げる必要があるが、データ幅よりも高次のフィルタは構成できない。実際には、MTIフィルタ出力の自己相関を演算し、結果を平均化するので、データ幅よりもかなり次数の低いフィルタしか使用できない。更にデータが有限であると、IIRフィルタのようにインパルスが無限に続くフィルタをかける場合に、過渡応答の問題が生じる。
【0010】
このようにCFM法において非常に重要である血流とクラッタを分離は、現実のMTIフィルタでは最適に行われているとは言い難い。カラーアンギオは組織の動きによるモーション・アーティファクトに弱いので、クラッタの除去は重要な問題である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、CFMモードにおいて高いフレームレートを実現する超音波診断装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、CFMモードにおいてクラッタ成分と血流成分との分離能を向上させることのできる超音波診断装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1局面は、被検体の断面を超音波でスキャンし、得られた反射信号からドプラ効果による周波数偏移に基づいて血流情報の2次元分布を生成する超音波診断装置において、前記超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを所定の周期で繰り返すスキャン手段と、前記スキャン手段によりを用いて前記2次元分布を前記所定の周期で繰り返し生成する生成手段とを具備し、前記生成手段は、前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、前記ドプラ信号をディジタル化して各サンプル点ごとに前記所定の周期で得られたドプラデータを得る手段と、前記ドプラデータに基づいて比較的高周波の血流成分を各サンプル点ごとに得るハイパス特性を有するMTIフィルタと、前記血流成分から前記血流情報を求める手段とを含み、前記MTIフィルタは、前記所定の周期で繰り返し得られる前記ドプラデータを無限長で扱うことの可能な再帰型フィルタである
本発明の第2局面は、被検体の断面を超音波でスキャンし、得られた反射信号から血流情報の2次元分布と、Bモード像とを生成する超音波診断装置において、前記2次元分布用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第1のスキャンと、前記Bモード像用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第2のスキャンとを交互に所定の周期で繰り返すスキャン手段と、前記第1のスキャンで得られた複数フレーム分の反射信号を用いて前記2次元分布を前記所定の周期で繰り返し生成する第1の生成手段と、前記第2のスキャンで得られた反射信号を用いて前記Bモード像を前記第所定の周期で繰り返し生成する第2の生成手段とを具備し、前記第1の生成手段は、前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、前記ドプラ信号をディジタル化して各サンプル点ごとに前記所定の周期で得られたドプラデータを得る手段と、前記ドプラデータに基づいて比較的高周波の血流成分を得るハイパス特性を有するMTIフィルタと、前記血流成分から前記血流情報を求める手段とを含み、前記MTIフィルタは、前記所定の周期で繰り返し得られる前記ドプラデータを無限長で扱うことの可能な再帰型フィルタである。
本発明の第3局面は、被検体の断面を超音波でスキャンし、得られた反射信号から血流情報の2次元分布と、Bモード像とを生成する超音波診断装置において、前記2次元分布用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第1のスキャンを第1の周期で所定回数繰り返し、前記第1のスキャンに続いて前記Bモード像用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第2のスキャンを行うというサイクルを第2の周期で繰り返すスキャン手段と、前記第1のスキャンで得られた前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、前記ドプラ信号をディジタル化しドプラデータを得るディジタル化手段と、前記ディジタル化手段でディジタル化された前記ドプラデータに基づいて前記第2のスキャンが行われている間のドプラデータを推定する推定手段と、前記ディジタル化手段でディジタル化されたドプラデータと前記推定手段で推定されたドプラデータとに基づいて比較的高周波の血流成分を得るハイパス特性を有するMTIフィルタと、前記血流成分から前記血流情報の2次元分布を前記第1の周期で繰り返し生成する生成手段とを有する手段と、前記第2のスキャンで得られた反射信号を用いて前記Bモード像を前記第2の周期で繰り返し生成する手段とを具備し、前記MTIフィルタは前記ディジタル化手段でディジタル化され各サンプル点ごとに前記所定の周期で得られたドプラデータと前記推定手段で推定されたドプラデータとを無限長で扱うことの可能な再帰型フィルタである。
【0016】
【作用】
本発明によれば、血流情報の2次元分布を得るいわゆるカラーフローマッピングにおいて、フレームレートの向上と、血流成分とクラッタ成分との分離能向上とをともに達成することができるものである。まず、カラーフローマッピングのフレームレートの向上に関して、超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを所定の周期で繰り返し、各サンプル点ごとに所定の周期で得られたドプラデータからMTIフィルタを介して比較的高周波の血流成分を得るもので、つまり、フレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでを個々に1回づつ送受信するのに要する所定の周期で繰り返しカラーフローマッピング(2次元カラー血流画像)が得られるものである。また、カラーフローマッピングにおいて、従来のように、各ラスタについて少なくとも2回ずつ送受信を繰り返しながらラスタを順次切換えていく場合、ドプラ信号をこの場合では2回の有限長で扱わざるを得なかったが、本発明では、各サンプル点では、フレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでを個々に1回づつ送受信するのに要する所定の周期で継続的に無限長でにドプラデータが得られ、それをそのまま無限長データとして再帰型フィルタで扱うことができ、したがって、過渡応答の問題は生じることなく、1フレーム分のスキャンがある程度繰り返された以後では、血流成分とクラッタ成分とのクロストークが完全に排除され、クラッタ成分を確実に除去し、血流成分だけを有効に抽出することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。
(第1実施例)
図1は第1実施例に係る超音波診断装置のブロック図である。本実施例に係る超音波診断装置は、システムコントローラ1をシステム全体の制御中枢として次のように構成されている。システムコントローラ1には操作スイッチ8が接続されここから各種情報、命令が入力されるようになっている。
【0021】
プローブ2は、電気/機械変換器としての複数の圧電素子を有する。複数の圧電素子は一列に配列され、プローブ2の先端に装備される。プローブ2には送信系3と受信系4とが接続される。送信系3は、パルス発生器3A、送信遅延回路3B、パルサ3Cとを有する。パルス発生器3Aは例えば6KHzのレート周波数でレートパルスを発生する。このレートパルスはチャンネル数に分配され、送信遅延回路3Bに送られる。送信遅延回路3Bは、超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を各レートパルスに与える。パルサ3Cは、送信遅延回路3Bからレートパルスを受けたタイミングでプローブ2に電圧パルスを印加する。これによりプローブ2から超音波パルスが被検体内に送信される。
【0022】
被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射した反射波はプローブ2で受信される。プローブ2からの受信信号は、受信系4に取り込まれる。受信系4は、プリアンプ4A、受信遅延回路4B、加算器4Cを有する。受信信号は、チャンネル毎にプリアンプ4Aで増幅され、受信遅延回路4Bにより受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えられ、そして加算器4Cで加算される。これにより受信指向性に応じた方向からの反射波が強調された反射信号が得られる。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定され、この総合的な指向性による超音波の伝搬経路をラスタと称する。なお、一般的には送信指向性と受信指向性は一致される。
【0023】
スキャンコントローラ9は、送信系3、受信系4を制御して後述するスキャンシーケンスを実行する。
受信系4からの反射信号は、カラーフローマッピング(CFM)処理系6に送られる。CFM処理系6は、位相検波回路6A、アナログディジタルコンバータ6B、MTIフィルタ6C、自己相関器6D、演算部6E、パワー算出部6F、フレーム間フィルタ6Gから構成される。位相検波回路6Aは、図示しないが、基準信号発生器、90°移相器、2系統のミキサ、2系統のローパスフィルタとから直交位相検波回路として構成される。受信系4からの反射信号は、2系統のミキサにそれぞれ取り込まれる。基準信号発生器は、送信超音波の基本周波数f0 (例えばf0 =3.5MHz)の基準信号を発生する。この基準信号は、一方のミキサで受信系4からの反射信号と掛け合わされる。また、基準信号は、90°移相器を介して他方のミキサで受信系4からの反射信号と掛け合わされる。2系統のミキサそれぞれの出力信号には高調波成分が含まれている。この高調波成分は、ローパスフィルタで除去される。これにより、ドプラ効果により周波数偏移を受けた偏移周波数でビートするドプラ信号が系統毎に抽出される。
【0024】
2系統のドプラ信号はアナログディジタルコンバータ6Bにより別々にディジタル化される。これによりラスタ上で例えば0.5mm間隔の複数のサンプル点各々のドプラデータが得られる。一方の系統のドプラデータは実数部として、また他方の系統のドプラデータは虚数部としてMTIフィルタ6Cに送られる。MTIフィルタ6Cは、各系統のドプラデータから心筋などの運動速度の遅い反射体からの比較的低周波のクラッタ成分を除去し、比較的高周波の血流成分を抽出するものであり、ドプラデータを無限長で扱うことが可能なように再帰型のIIRディジタルハイパスフィルタとして構成される。
【0025】
MTIフィルタ6Cからの血流のドプラデータは系統別に自己相関器6Dと、パワー算出部6Fとに送られる。自己相関器6Dは、現在のフレームの血流のドプラデータと1フレーム前の血流のドプラデータとの複素共役をとることによりサンプル点毎に自己相関値を得る。この相関データは、演算部6Eに供給される。演算部6Eは、実数部と虚数部のなす角度を計算して、これを速度データを得る。速度データは表示系7に送られ、平均速度の2次元分布(流速画像)としてカラーでビジュアルに表示される。
【0026】
パワー算出部6Fは、MTIフィルタ6Cからの血流のドプラデータの実数部と虚数部を二乗加算することにより、超音波の波長より小さい反射体(血球)による散乱の強さを表すパワーをサンプル点毎に算出する。フレーム間フィルタ6Gは、同じサンプル点どうしのパワーの経時的変化からノイズを除去するものであり、パワー算出部6Fからのパワーデータを無限長で扱うことが可能なように再帰型のIIRディジタルローパスフィルタとして構成される。ノイズを除去されたパワーデータはカラーアンギオデータとして表示系7に送られ、カラーアンギオ画像としてビジュアルに表示される。
【0027】
表示系7は、ディジタルスキャンコンバータ(DSC)7A、カラー処理回路7B、ディジタルアナログコンバータ7C、カラーモニタ7Dとから構成される。ディジタルスキャンコンバータ7Aは流速データ又はカラーアンギオデータの2次元分布をテレビ走査で読み出す。読み出されたデータはカラー処理回路7Bでカラー信号(RGB)に変換され、ディジタルアナログコンバータ7Cを介してカラーモニタ7Dに画像として表示される。
【0028】
図2はMTIフィルタ6Cの回路図である。アナログディジタルコンバータ6Bからのドプラデータは、係数a0 の乗算器61を介して加算器62に送られる。MTIフィルタ6Cは、アナログディジタルコンバータ6Bからのドプラデータを無限長で扱うことが可能なように、加算器62への帰還路を有する。この帰還路は2系統設けられる。一方の帰還路には、1フレーム周期分の遅延回路として機能するフレームメモリ63と係数a1 の乗算器65とが介在される。他方の帰還路には2フレーム周期分の遅延回路として機能する2段のフレームメモリ63,64と、係数a2 の乗算器66とが介在される。加算器62は乗算器61,65,66からのデータを加算して出力する。この加算データは、上記2系統の帰還路を通って加算器62に帰還されると共に、直接、第2の加算器69に送られ、またフレームメモリ63と係数b1 の乗算器67とを順に介して第2の加算器69に送られ、さらにフレームメモリ63とフレームメモリ64と係数b2 の乗算器68とを順に介して第2の加算器69に送られる。第2の加算器69は加算器62、乗算器67,68からのデータを加算する。
【0029】
図3はフレーム間フィルタ6Gの回路図である。パワー算出部6Fからのパワーデータは、係数αの乗算器70を介して加算器71に送られる。フレーム間フィルタ6Gは、パワー算出部6Fからのパワーデータを無限長で扱うことが可能なように加算器71への帰還路を有する。帰還路には1フレーム周期分の遅延回路として機能するフレームメモリ72と係数1−αの乗算器73とが介在される。
【0030】
次に本実施例の動作を説明する。ここで、図4に示すように、1フレームのラスタ本数は60本とし、各ラスタをスキャン順序にしたがってr1 ,r2 ,r3 ,…,r59,r60として識別するものとする。レート周波数PRFは、6KHzとする。
図5はスキャン手順を示すタイムチャートである。超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信される。超音波が1回送信される毎に、ラスタが順次切り換えられる。なお、従来のCFMモードでは、超音波が同一ラスタに対して複数回、例えば16回繰り返し送信される毎に、ラスタが順次切り換えられる。このように1回の送受信毎に1番目のラスタr1 から最後のラスタr60までラスタを順次切り換えていくことにより、1フレーム分のスキャンが終了する。1フレーム分のスキャンが終了すると、それに続いて、1番目のラスタr1 まで戻り同様のスキャンがなされる。このような1フレーム分のスキャンは、60/PRFの一定の周期で繰り返される。或る1つのサンプル点に着目すると、このサンプル点からの反射信号は、60/PRFの一定の周期で繰り返し取得されることになる。
【0031】
図6(a)は或る1つのサンプル点に関するアナログディジタルコンバータ6Bから出力されるドプラデータ、つまりMTIフィルタ6Cに供給されるドプラデータを時系列に示したものである。上述したようなスキャン手順によれば、ドプラデータは60/PRFの一定の周期で繰り返しMTIフィルタ6Cに供給される。図7(a)はデータを無限長で扱う場合のクラッタ成分、血流成分のスペクトルを示し、図7(b)は従来のようにデータを16の有限長で扱う場合のクラッタ成分、血流成分のスペクトルを示している。MTIフィルタ6Cにはドプラデータが60/PRFの一定の周期で繰り返し供給されるので、スキャンが継続する限りドプラデータを累積的に無限長で取り扱うことができる。したがって、1フレーム分のスキャンがある程度繰り返された以後では、図7(a)に示したように血流成分とクラッタ成分とのクロストークが完全に排除され、クラッタ成分を確実に除去し、血流成分だけを有効に抽出することができる。また、異なる時刻に得た少なくとも2つのドプラデータがあれば、演算部6Eにて血流の平均速度を求めることができる。したがってサンプル点毎に血流の平均速度を60/PRFの一定の周期で繰り返し出力することができる。
【0032】
パワー算出部6Fでは60/PRFの一定の周期で繰り返し供給されるドプラデータの実数部と虚数部とを二乗加算することによりパワーデータを次々と計算し、やはり60/PRFの一定の周期で繰り返し出力する。
【0033】
図6(c)はフレーム間フィルタ6Gから出力されるカラーアンギオデータを時系列に示したものである。パワー算出部6からのパワーデータはサンプル点毎にフレーム間フィルタ処理(加算平均処理)に供される。これによりノイズが低減されたカラーアンギオデータが求められる。フレーム間フィルタ6Gには、パワーデータが60/PRFの一定の周期で繰り返し供給されるので、スキャンが継続する限りパワーデータを累積的に無限長で取り扱うことができる。したがって、スキャンの繰り返しに伴ってノイズ低減効果は徐々に向上していく。また、フレーム間フィルタ6Gからはサンプル点毎にカラーアンギオデータは、やはり60/PRFの一定の周期で繰り返し出力される。
【0034】
図8はカラーアンギオデータの2次元分布(カラーアンギオ画像)が表示される周期を示したものである。上述したようなスキャン手順によると、1フレーム分のスキャンに要する時間、つまり60/PRFの一定の周期で繰り返しパワーデータが得られるので、カラーアンギオデータも同じ周期で得られる。この場合のフレームレートは、(60/PRF)-1、つまり毎秒当たり100枚のカラーアンギオ画像を得ることができる。
【0035】
また、同一点を観測する繰り返し周波数は、従来のPRFから、PRF/60に実質的に低下するので、折り返し流速を40mm/sから4mm/sまで落とせることができ、従って、かなり遅い血流まで観測が可能となる。
(第2実施例)
本実施例では、カラーアンギオ画像と共に、Bモード像(組織断層像)も高いフレームレートで得ることを可能とするものである。
図9は第2実施例による超音波診断装置のブロック図である。図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。スキャンコントローラ19は、送信系3、受信系4を制御して後述するスキャンシーケンスを実行する。受信系4からの反射信号は後述する第1のスキャンが行われている間はCFM処理系6に送られ、後述する第2のスキャンが行われている間はBモード処理系5に送られる。Bモード処理系5は、対数増幅器5A、包絡線検波回路5B、アナログディジタルコンバータ(A/D)5Cから構成される。対数増幅器5Aは、受信系4からの反射信号を対数増幅する。包絡線検波回路5Bは対数増幅器5Aからの出力信号の包絡線を検波する。この検波信号はアナログディジタルコンバータ5Cを介して表示系7に送られ、Bモード画像としてビジュアルに濃淡表示される。
【0036】
次に本実施例の動作を説明する。ここで、図10に示すように、1フレームのラスタ本数は120本とし、各ラスタをスキャン順序にしたがってr1 ,r2 ,r3 ,…,r119 ,r120 として識別するものとする。レート周波数PRFは、6KHzとする。また、Bモードの1フレームは120本のラスタr1 ,r2 ,r3 ,…,r119 ,r120 から構成され、CFMモードの1フレームは60本のラスタr31,r32,r33,…,r89,r90から構成されるものとする。
図11はスキャン手順を示すタイムチャートである。超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信される。通常、CFM用の超音波とBモード用の超音波とは区別される。CFMモード用の超音波としては周波数特性を狭帯域化するために例えば4波以上のバースト波が用いられる。Bモード用の超音波としては距離分解能を向上させるためにために例えば2波以下のバースト波又は単一のパルス波が用いられる。
【0037】
図11に示すように、スキャンコントローラ19の遅延制御により、CFMモードのための1フレーム分のスキャン(第1のスキャン)と、Bモードのための1フレーム分のスキャン(第2のスキャン)とが交互に一定の周期(フレーム周期)で繰り返される。
【0038】
第1のスキャンは第1実施例と同様のスキャン手順であり、CFMモード用の超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信され、超音波が1回送信される毎に、ラスタが順次切り換えられ、1回の送受信毎に1番目のラスタr31から最後のラスタr90までラスタを順次切り換えていくことにより、1フレーム分のスキャンが終了する。
【0039】
第2のスキャンは従来のBモードのためのスキャンと同様であり、Bモード用の超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信され、超音波が1回送信される毎に、ラスタが順次切り換えられ、1回の送受信毎に1番目のラスタr1 から最後のラスタr120 までラスタを順次切り換えていくことにより、1フレーム分のスキャンが終了する。
【0040】
第1のスキャンの最後のラスタr90にCFMモード用の超音波の送信から1/PRFの周期後に、第2のスキャンの1番目のラスタr1 に超音波を送信する。上記フレーム周期は、第1のスキャンに要する時間(60/PRF)と、第2のスキャンに要する時間(120/PRF)との合計((60+120)/PRF)として与えられる。
【0041】
第1のスキャンで得られた反射信号はCFM処理系6に送り込まれ、第2のスキャンで得られた反射信号はBモード処理系5に送り込まれる。
図12に示すように、CFMモード処理系6によりカラーアンギオ画像が一定のフレーム周期で繰り返し得られ、それより60/PRFだけ遅れてBモード処理系5によりBモード像が同じフレーム周期で繰り返し得られる。
【0042】
したがって、カラーアンギオ画像、Bモード像共に、PRF/(60+120)、PRF=6KHzとすると毎秒当たり33フレームのフレームレートで得られる。
【0043】
従来のスキャン手順は、ラスタr1 〜r30まではBモード用の超音波を1回送信する毎にラスタを順次切り換えていき、ラスタr31〜r90までは同じラスタに対してBモード用の超音波を1回送信し、続いてCFMモード用の超音波を例えば8回繰り返し送信する毎にラスタを順次切り換えていき、ラスタr91〜r120 まではBモード用の超音波を1回送信する毎にラスタを順次切り換えていくことで、1フレーム分のスキャンが終了する。したがって、カラーアンギオ画像、Bモード像共に、PRF/(60×8+120)、PRF=6KHzとすると毎秒当たり10フレームのフレームレートで得られる。
【0044】
つまり本実施例によれば、カラーアンギオ画像、Bモード像共に、従来の3倍以上のフレームレートが実現されることになる。
なお本実施例は次のように変形可能である。上述の説明では、CFMモード用の超音波とBモード用の超音波とは異なる条件で送信していたが、同じ条件でかまわなければ、上述した第2のスキャンだけを(120/PRF)の周期で繰り返せば良く、この場合、ラスタr1 〜r120 の反射信号は全てBモード処理系5に送り込まれ、ただしラスタr31〜r90の反射信号はBモード処理系5と共にCFM処理系6にも送り込むようにすることが必要である。この場合のフレームレートは、カラーアンギオ画像、Bモード像共に、PRF/120、PRF=6KHzとすると毎秒当たり50フレームが達成される。
【0045】
また、上述の説明では、第1のスキャンと第2のスキャンとを交互に行っていたが、ラスタr1 〜r30まではBモード用の超音波を1回送信する毎にラスタを順次切り換えていき、ラスタr31〜r90までは同じラスタに対してBモード用の超音波を1回送信し、続いてCFMモード用の超音波を1回だけ送信する毎にラスタを順次切り換えていき、ラスタr91〜r120 まではBモード用の超音波を1回送信する毎にラスタを順次切り換えていって1フレーム分のスキャンを終了させ、このような1フレーム分のスキャンを同じくフレーム周期((60+120)/PRF)で繰り返していくようにしてもよい。この場合のフレームレートは33で同じである。
【0046】
また、上述の説明では、フレーム間フィルタ6GがDSC7Aの前にあるが、フレーム間フィルタ6GはDSC7Aの後にあっても良い。
(第3実施例)
第3実施例は、第2実施例より計測可能な最高流速を高めると共に、カラーアンギオ画像のフレームレートを高めることを可能とするものである。
【0047】
図13は第3実施例による超音波診断装置のブロック図である。図9と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。フレームスキャンコントローラ29は、送信系3、受信系4を制御して後述するスキャンシーケンスを実行する。受信系4からの反射信号は第1のスキャンが行われている間はCFM処理系6に送られ、第2のスキャンが行われている間はBモード処理系5に送られる。アナログディジタルコンバータ6BとMTIフィルタ6Cの間にデータ推定回路6Hが挿入される。
【0048】
図14はデータ推定回路6Hの回路図である。第2のスキャンが行われているときには、ドプラデータは得られない。データ推定回路6Hは、第2のスキャンが行われているときのドプラデータを、実測された前後のドプラデータから推定(補間)するものである。アナログディジタルコンバータ6Bから供給されるドプラデータは後続のドプラデータの入力に同期して順次後段のフレームメモリに読み出されるように、アナログディジタルコンバータ6Bの側から順にフレームメモリ80、81、82が多段接続される。現在のドプラデータxn は係数a0 の乗算器83を介して加算器87に送られる。xn の1回前に実測されたドプラデータxn-1 はフレームメモリ80から係数a1 の乗算器84を介して加算器87に送られる。xn の2回前に実測されたドプラデータxn-2 はフレームメモリ81から係数a2 の乗算器85を介して加算器87に送られる。xn の3回前に実測されたドプラデータxn-3 はフレームメモリ82から係数a3 の乗算器86を介して加算器87に送られる。加算器87はこれらドプラデータを加算し、推定データとしてマルチプレクサ(MUX)88に供給する。フレームメモリ81から出力されるドプラデータxn-2 もマルチプレクサ88に供給される。マルチプレクサ88は、加算器87からの推定データと、実測されたドプラデータxn-2 とを択一的に出力する。第2のスキャンが行われているときは、マルチプレクサ88から推定データが出力され、第1のスキャンが行われているときは、フレームメモリ81からのドプラデータ(実測データ)xn-2 が出力される。
【0049】
次に本実施例の動作を説明する。ここでも、図10に示したように、1フレームのラスタ本数は120本とし、各ラスタをスキャン順序にしたがってr1 ,r2 ,r3 ,…,r119 ,r120 として識別するものとする。レート周波数PRFは、6KHzとする。また、Bモードの1フレームは120本のラスタr1 ,r2 ,r3 ,…,r119 ,r120 から構成され、CFMモードの1フレームは60本のラスタr31,r32,r33,…,r89,r90から構成されるものとする。
図15はスキャン手順を示すタイムチャートである。超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信される。ここでも、CFM用の超音波とBモード用の超音波とは区別されるものとする。
【0050】
図15に示すように、スキャンコントローラ19の遅延制御により、CFMモードのための1フレーム分のスキャン(第1のスキャン)が所定回数、例えば4回、一定の周期(60/PRF)で繰り返され、続いてBモードのための1フレーム分のスキャン(第2のスキャン)が行われる。このような一連のスキャンは1サイクルとして一定の周期((60×4+120)/PRF)で繰り返される。
【0051】
第1のスキャンは第1実施例と同様のスキャン手順であり、CFMモード用の超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信され、超音波が1回送信される毎に、ラスタが順次切り換えられ、1回の送受信毎に1番目のラスタr31から最後のラスタr90までラスタを順次切り換えていくことにより、1フレーム分のスキャンが終了する。
【0052】
第2のスキャンは従来のBモードのためのスキャンと同様であり、Bモード用の超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信され、超音波が1回送信される毎に、ラスタが順次切り換えられ、1回の送受信毎に1番目のラスタr1 から最後のラスタr120 までラスタを順次切り換えていくことにより、1フレーム分のスキャンが終了する。
【0053】
第1のスキャンの最後のラスタr90にCFMモード用の超音波の送信から1/PRFの周期後に、第2のスキャンの1番目のラスタr1 に超音波を送信する。
図16(a)は或る1つのサンプル点に関するアナログディジタルコンバータ6Bから出力されるドプラデータを時系列に示し、同図(b)はデータ推定回路6Hから出力される当該サンプル点に関するドプラデータを時系列に示している。第1のスキャンが繰り返されている間、実測されたドプラデータが、フレームメモリ80,81を介して2周期分((60×2)/PRF)の遅延を受けて一定の周期((60)/PRF)でマルチプレクサ88から繰り返し出力される。第1のスキャンが4回繰り返された後、第2のスキャンが行われる。第2のスキャンに要する時間は第1のスキャン2回分に相当する。したがって、2回分のドプラデータが測定されないことになる。第2のスキャンが行われている間、フレームメモリ80,81,82にはそれぞれxn-1 ,xn-2 ,xn-3 のドプラデータがラッチされている。第2のスキャン終了後、最初の第1のスキャンによりドプラデータxn が供給されると、4回分のドプラデータxn ,xn-1 ,xn-2 ,xn-3 はそれぞれ乗算器83,84,85,86を介して加算器87に送り込まれ、これらドプラデータから推定(補間)した推定データx'nが作成される。この推定データx'nは、実測されたドプラデータが出力される周期((60)/PRF)に沿ってマルチプレクサ88を介して出力される。第2のスキャン終了後、2回目の第1のスキャンによりドプラデータxn+1 が供給されると、4回分のドプラデータxn+1 ,xn ,xn-1 ,xn-2 はそれぞれ乗算器83,84,85,86を介して加算器87に送り込まれ、これらドプラデータから推定(補間)した推定データx'n+1が作成される。この推定データx'n+1は、実測されたドプラデータが出力される周期((60)/PRF)に沿ってマルチプレクサ88を介して出力される。推定データx'n+1が出力された以降は、実測されたドプラデータがフレームメモリ80,81を介して2周期分((60×2)/PRF)の遅延を受けて一定の周期((60)/PRF)でマルチプレクサ88から4回繰り返し出力される。このような動作が繰り返される。
【0054】
MTIフィルタ6Cには実測されたドプラデータと推定されたドプラデータとが一定の周期((60)/PRF)で次々と供給される。このようにMTIフィルタ6Cにはドプラデータが60/PRFの一定の周期で繰り返し供給されるので、スキャンが継続する限りドプラデータを累積的に無限長で取り扱うことができ、第1実施例と同様にスキャンがある程度繰り返された以後では、血流成分とクラッタ成分とのクロストークが完全に排除され、クラッタ成分を確実に除去し、血流成分だけを有効に抽出することができる。
【0055】
パワー算出部6Fでは60/PRFの一定の周期で繰り返し供給されるドプラデータの実数部と虚数部とを二乗加算することによりパワーデータを次々と計算し、やはり60/PRFの一定の周期で繰り返し出力する。パワー算出部6からのパワーデータはサンプル点毎にフレーム間フィルタ処理(加算平均処理)に供される。これによりノイズが低減されたカラーアンギオデータが求められる。フレーム間フィルタ6Gには、パワーデータが60/PRFの一定の周期で繰り返し供給されるので、スキャンが継続する限りパワーデータを累積的に無限長で取り扱うことができる。したがって、スキャンの繰り返しに伴ってノイズ低減効果は徐々に向上していく。また、フレーム間フィルタ6Gからはサンプル点毎にカラーアンギオデータは、やはり60/PRFの一定の周期で繰り返し出力される。
【0056】
図17はカラーアンギオ画像とBモード画像との作成周期を示している。上述したようなスキャン手順及びデータ推定によれば、1フレーム分の第1のスキャンに要する時間、つまり60/PRFの一定の周期で繰り返しパワーデータが得られるので、カラーアンギオ画像も同じ周期で得られる。この場合のフレームレートは、(60/PRF)-1、つまり毎秒当たり100枚のカラーアンギオ画像を得ることができる。100フレームという高フレームレートで表示されるために演算部6E、フレーム間フィルタ部6Gにおいて、かなり強いフレーム間フィルタをかけてもリアルタイム性を阻害しない。CFMにおいてフレームレートが100というのは画期的なことである。速度表示、カラーアンギオ表示のいずれにもこのフレームレートで表示されることになる。
【0057】
また、本実施例による折り返し流速は13mm/sである。折り返し流速はまだかなり低いが、甲状腺、乳腺、手足の血管等の部位では十分実用可能である。もっとも、カラーアンギオの場合は、血流は折り返っても血流の方向の情報はないので連続的に表示されるために一向に構わない。
【0058】
また、カラーアンギオ画像と共に、Bモード画像も約17のフレームレートで得られる。
なお、データ推定の精度を高める方法としては、適応信号処理を行う方法が知られている。「ディジタル信号処理(辻井重男、久保田一著;オーム社、1986年)」で述べられているように、推定データ(出力信号)はそれまでの実測データとインパルス応答hから推定できる。
(第4実施例)
図18は第4実施例による超音波診断装置のブロック図である。図9と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。スキャンコントローラ39は、送信系3、受信系4を制御して後述するスキャンシーケンスを実行する。パワー算出部6Fとフレーム間フィルタ6Gとの間に補間演算部6Iが挿入される。補間演算部6Iはパワー算出部6Fで算出されたパワーの2次元分布を空間的に補間するものである。
【0059】
図18は補間演算部6Iのブロック図である。入力バッファ90はパワー算出部6Fで算出されたパワーの2次元分布を一時的に保持する。補間演算部91は入力バッファ90からのパワーに基づいて、実測していないサンプル点のパワーデータを空間的に補間し作成する。実測されたパワーデータと、補間されたパワーデータとは座標変換部92の制御にしたがって所定の順番で補間演算部91から出力される。
【0060】
次に本実施例の動作を説明する。ここでも、図10に示したように、1フレームのラスタ本数は120本とし、各ラスタをスキャン順序にしたがってr1 ,r2 ,r3 ,…,r119 ,r120 として識別するものとする。レート周波数PRFは、6KHzとする。また、Bモードの1フレームは120本のラスタr1 ,r2 ,r3 ,…,r119 ,r120 から構成され、CFMモードの1フレームは60本のラスタr31,r32,r33,…,r89,r90から構成されるものとする。
図20は1サイクル分のスキャンの手順を示す図である。超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信される。ここでも、CFM用の超音波とBモード用の超音波とは区別されるものとする。
【0061】
図20に示すように、スキャンコントローラ19の遅延制御により、Bモードのための1フレーム分のスキャンが行われ、これに続いてCFMモードのための1フレーム内の第1フィールドのスキャン(第1のCFMスキャン)が行われ、これに続いて、Bモードのための1フレーム分のスキャンが行われ、これに続いてCFMモードのための1フレーム内の第2フィールドのスキャン(第2のCFMスキャン)が行われる。このような1サイクル分のスキャンが、 (2×(15×16+120))/PRFの周期で繰り返される。Bモードのスキャンだけに着目すると、このスキャンは、サイクル周期の半分の(15×16+120))/PRFの周期で繰り返されることになる。同様に、CFMモードのスキャンだけに着目すると、第1のCFMスキャンと第2のCFMスキャンとは、サイクル周期の半分の(15×16+120))/PRFの周期で交互に繰り返されることになる
Bモードのスキャンは従来と同様であり、Bモード用の超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信され、超音波が1回送信される毎に、ラスタが順次切り換えられ、1回の送受信毎に1番目のラスタr1 から最後のラスタr120 までラスタを順次切り換えていくことにより、1フレーム分のスキャンが終了する。
【0062】
第1のCFMスキャンは、第1のフィールドを対象としたインタレース・スキャンで行われる。第1のフィールドは、CFMモードの1フレームを構成する60本のラスタr31,r32,r33,…,r89,r90のうち、奇数番目のラスタr31,r33,…,r87,r89から構成される。これら奇数番目のラスタに対して、従来のCFMモードと同様のスキャン、つまりCFMモード用の超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信され、同一のラスタに対して所定回数、例えば16回超音波の送受信が連続的に繰り返される毎に、ラスタが順次切り換えられていく。
【0063】
第2のCFMスキャンは、第2のフィールドを対象としたインタレース・スキャンで行われる。第2のフィールドは、CFMモードの1フレームを構成する60本のラスタr31,r32,r33,…,r89,r90のうち、偶数番目のラスタr32,r34,…,r88,r90から構成される。これら偶数番目のラスタに対して、従来のCFMモードと同様のスキャン、つまりCFMモード用の超音波は1/PRFの一定の周期で繰り返し送信され、且つ反射波が受信され、同一のラスタに対して所定回数、例えば16回超音波の送受信が連続的に繰り返される毎に、ラスタが順次切り換えられていく。
【0064】
図21はパワー算出部6F、補間演算部6I、フレーム間フィルタ6Gの各出力を時系列で示す図である。パワー算出部6Fからのパワーは補間演算部6Iに送られる。補間演算部6Iにより実測したパワーから、第1のCFMスキャンのときは飛ばした偶数番目のラスタ上のサンプル点のパワーが、また第2のCFMスキャンのときは飛ばした奇数番目のラスタ上のサンプル点のパワーがそれぞれ補間される。これにより60本のラスタに相当する1フレーム分のパワーデータの2次元分布が繰り返し得られる。このパワーデータの2次元分布は、フレーム間フィルタ6Gでローパスフィルタ処理に供される。これによりノイズが軽減されたカラーアンギオデータの2次元分布が、(15×16+120))/PRFの周期で作成される。したがってカラーアンギオ画像のフレームレートは、PRF=6KMzとすると、約10フレームとなる。Bモード像も同じフレームレートで得られる。従来のノンインターレース・スキャンの場合、両画像のフレームレートは共に5.5フレームであり、2倍近いフレームレートが実現されている。
【0065】
ここで仮に、被検体が動いていなかったとすると、このような処理によって得られたカラーアンギオ画像、つまりインタレース・スキャンして、フレーム間フィルタ処理に供された画像と、従来のようにノンインタレース・スキャンをしてフレーム間フィルタ処理に供された画像とは、補間演算及びフレーム間フィルタ処理が線形処理であるので、等価的である。S/Nという観点でみると、ノイズが完全にランダムならばノンインタレース・スキャンでの加算の方が優れているが、実際には時間的に近接した隣のラスタでのノイズの相関が高いために、両者の差はあまりない。また、一般にインタレース・スキャンを行うと、被写体が動いたときに画像のぶれが起きる。しかし上記構成では、瞬時画像はフィールドの粗いラスタから構成するために画像のぶれは生じない。しかも、インタレース・スキャンでフィールドで粗いスキャンを行っても、カラーアンギオでは加算処理(フレーム間LFP処理)を行うために、ノンインタレースと同じラスタ密度の画像を得ることができるのである。
本発明は上述した実施例に限定されることなく種々変形して実施可能である。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、血流情報の2次元分布を得るいわゆるカラーフローマッピングにおいて、フレームレートの向上と、血流成分とクラッタ成分との分離能向上とをともに達成することができるものである。まず、カラーフローマッピングのフレームレートの向上に関して、超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを所定の周期で繰り返し、各サンプル点ごとに所定の周期で得られたドプラデータからMTIフィルタを介して比較的高周波の血流成分を得るもので、つまり、フレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでを個々に1回づつ送受信するのに要する所定の周期で繰り返しカラーフローマッピング(2次元カラー血流画像)が得られるものである。また、カラーフローマッピングにおいて、従来のように、各ラスタについて少なくとも2回ずつ送受信を繰り返しながらラスタを順次切換えていく場合、ドプラ信号をこの場合では2回の有限長で扱わざるを得なかったが、本発明では、各サンプル点では、フレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでを個々に1回づつ送受信するのに要する所定の周期で継続的に無限長でにドプラデータが得られ、それをそのまま無限長データとして再帰型フィルタで扱うことができ、したがって、過渡応答の問題は生じることなく、1フレーム分のスキャンがある程度繰り返された以後では、血流成分とクラッタ成分とのクロストークが完全に排除され、クラッタ成分を確実に除去し、血流成分だけを有効に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係る超音波診断装置のブロック図。
【図2】図1のMTIフィルタの回路図。
【図3】図1のフレーム間フィルタの回路図。
【図4】1フレームを構成するラスタの模式図。
【図5】第1実施例によるスキャン手順を示すタイムチャート。
【図6】第1実施例の動作説明図。
【図7】クラッタ成分、血流成分のスペクトルを示す図。
【図8】カラーアンギオデータの2次元分布(カラーアンギオ画像)が表示される周期を示す図。
【図9】第2実施例による超音波診断装置のブロック図。
【図10】Bモードの1フレームを構成するラスタとCFMモードの1フレームを構成するラスタとを示す図。
【図11】第2実施例のスキャン手順を示すタイムチャート。
【図12】カラーアンギオ画像とBモード画像とが得られる周期を示す図。
【図13】第3実施例による超音波診断装置のブロック図。
【図14】図13のデータ推定回路の回路図。
【図15】第3実施例によるはスキャン手順を示すタイムチャート。
【図16】第3実施例の動作説明図。
【図17】カラーアンギオ画像とBモード画像が得られる周期を示す図。
【図18】第4実施例による超音波診断装置のブロック図。
【図19】図18の補間演算部のブロック図。
【図20】第4実施例による1サイクル分のスキャンの手順を示す図。
【図21】第4実施例の動作説明図。
【符号の説明】
1…システムコントローラ、 2…プローブ、
3…送信系、 3A…パルス発生器、
3B…送信遅延回路、 3C…パルサ、
4…受信系、 4A…プリアンプ、
4B…受信遅延回路、 4C…加算器、
6…カラーフローマッピング処理系、6A…位相検波回路、
6B…アナログディジタルコンバータ、6C…MTIフィルタ、
6D…自己相関器、 6E…演算部、
6F…パワー算出部、 6G…フレーム間フィルタ、
7…表示部、 7A…ディジタルスキャンコンバータ、
7B…カラー処理回路、 7C…ディジタルアナログコンバータ、
7D…カラーモニタ、 8…操作スイッチ、
9…スキャンコントローラ。

Claims (6)

  1. 被検体の断面を超音波でスキャンし、得られた反射信号からドプラ効果による周波数偏移に基づいて血流情報の2次元分布を生成する超音波診断装置において、
    前記超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを所定の周期で繰り返すスキャン手段と、
    前記スキャン手段によりを用いて前記2次元分布を前記所定の周期で繰り返し生成する生成手段とを具備し、
    前記生成手段は、前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、前記ドプラ信号をディジタル化して各サンプル点ごとに前記所定の周期で得られたドプラデータを得る手段と、前記ドプラデータに基づいて比較的高周波の血流成分を各サンプル点ごとに得るハイパス特性を有するMTIフィルタと、前記血流成分から前記血流情報を求める手段とを含み、
    前記MTIフィルタは、前記所定の周期で繰り返し得られる前記ドプラデータを無限長で扱うことの可能な再帰型フィルタであることを特徴とする超音波診断装置。
  2. 前記生成手段は、前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、前記ドプラ信号から血球による散乱の強さを表すパワーを前記断面内の複数の点について求める手段と、前記パワーを前記点毎にフレーム間フィルタ処理に供することにより前記血流情報を得る手段とを有することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
  3. 被検体の断面を超音波でスキャンし、得られた反射信号から血流情報の2次元分布と、Bモード像とを生成する超音波診断装置において、
    前記2次元分布用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第1のスキャンと、
    前記Bモード像用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第2のスキャンとを交互に所定の周期で繰り返すスキャン手段と、
    前記第1のスキャンで得られた複数フレーム分の反射信号を用いて前記2次元分布を前記所定の周期で繰り返し生成する第1の生成手段と、
    前記第2のスキャンで得られた反射信号を用いて前記Bモード像を前記第所定の周期で繰り返し生成する第2の生成手段とを具備し、
    前記第1の生成手段は、前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、前記ドプラ信号をディジタル化して各サンプル点ごとに前記所定の周期で得られたドプラデータを得る手段と、前記ドプラデータに基づいて比較的高周波の血流成分を得るハイパス特性を有するMTIフィルタと、前記血流成分から前記血流情報を求める手段とを含み、
    前記MTIフィルタは、前記所定の周期で繰り返し得られる前記ドプラデータを無限長で扱うことの可能な再帰型フィルタであることを特徴とする超音波診断装置。
  4. 前記第1の生成手段は前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、前記ドプラ信号から血球による散乱の強さを表すパワーを前記断面内の複数の点について求める手段と、前記パワーを前記点毎にフレーム間フィルタ処理に供することにより前記血流情報を得る手段とを有することを特徴とする請求項4記載の超音波診断装置。
  5. 被検体の断面を超音波でスキャンし、得られた反射信号から血流情報の2次元分布と、Bモード像とを生成する超音波診断装置において、
    前記2次元分布用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第1のスキャンを第1の周期で所定回数繰り返し、前記第1のスキャンに続いて前記Bモード像用の超音波の1回の送信毎にフレームを構成する1番目のラスタから最後のラスタまでラスタを順次切換えながら1フレーム分のスキャンを行う第2のスキャンを行うというサイクルを第2の周期で繰り返すスキャン手段と、
    前記第1のスキャンで得られた前記反射信号を検波して偏移周波数成分を有するドプラ信号を得る手段と、
    前記ドプラ信号をディジタル化しドプラデータを得るディジタル化手段と、
    前記ディジタル化手段でディジタル化された前記ドプラデータに基づいて前記第2のスキャンが行われている間のドプラデータを推定する推定手段と、
    前記ディジタル化手段でディジタル化されたドプラデータと前記推定手段で推定されたドプラデータとに基づいて比較的高周波の血流成分を得るハイパス特性を有するMTIフィルタと、
    前記血流成分から前記血流情報の2次元分布を前記第1の周期で繰り返し生成する生成手段とを有する手段と、
    前記第2のスキャンで得られた反射信号を用いて前記Bモード像を前記第2の周期で繰り返し生成する手段とを具備し、
    前記MTIフィルタは前記ディジタル化手段でディジタル化され各サンプル点ごとに前記所定の周期で得られたドプラデータと前記推定手段で推定されたドプラデータとを無限長で扱うことの可能な再帰型フィルタであることを特徴とする超音波診断装置。
  6. 前記生成手段は前記血流成分から血球による散乱の強さを表すパワーを前記断面内の複数の点について求める手段と、前記パワーを前記点毎にフレーム間フィルタ処理に供することにより前記血流情報を得る手段とを有することを特徴とする請求項5記載の超音波診断装置。
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