JPH1092431A - リチウムイオン2次電池用負極材及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン2次電池用負極材及びその製造方法

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JPH1092431A
JPH1092431A JP8265094A JP26509496A JPH1092431A JP H1092431 A JPH1092431 A JP H1092431A JP 8265094 A JP8265094 A JP 8265094A JP 26509496 A JP26509496 A JP 26509496A JP H1092431 A JPH1092431 A JP H1092431A
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graphite
negative electrode
metal
electrode material
secondary battery
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Hiroshi Ejiri
宏 江尻
Norimune Yamazaki
典宗 山崎
Hideyuki Nakajima
秀行 中嶋
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PETOCA KK
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 黒鉛化触媒作用を有する金属(例え
ばNi、Co)で被覆した黒鉛層間距離が0.347n
m以上のPAN系炭素繊維を800℃〜1400℃で熱
処理し得られた、黒鉛層間距離が0.340nm以下の
黒鉛質繊維を使用するリチウムイオン2次電池用負極
材。 黒鉛化触媒作用を有する金属で被覆した黒鉛層
間距離が0.347nm以上のPAN系炭素繊維を80
0℃〜1400℃で熱処理し、次いで平均粒径10〜5
0μm粉砕し、無機酸で金属分を除去処理し、400℃
〜1200℃で再熱処理する製法。 【効果】 黒鉛化があまり発達していないPAN系炭素
繊維を黒鉛化触媒作用を持つ特定の金属で被覆し、低温
熱処理した黒鉛質繊維からなるリチウムイオン2次電池
用負極材に関し、従来の黒鉛材料と同等の電池特性を持
ち、リチウムイオンの放電開始電圧が通常の黒鉛材に比
べ低く、サイクル特性に優れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素系材料を使用
するリチウムイオン2次電池用負極材に関する。詳細に
は、本発明は、黒鉛化があまり発達していないPAN系
炭素繊維を黒鉛化触媒作用を持つ特定の金属で被覆し、
低温熱処理した黒鉛質繊維からなるリチウムイオン2次
電池用負極材に関し、従って、該負極材は従来の黒鉛材
料と同等の電池特性を持つと共にリチウムイオンの放電
開始電圧が通常の黒鉛材に比べ低く、サイクル特性に優
れている効果を有する。
【0002】
【従来の技術】一般に、アルカリ金属、例えばリチウム
を負極活物質として用いた2次電池は、高エネルギー密
度及び高起電力である他、非水電解液を用いるために作
動温度範囲が広く、長期保存に優れ、さらに軽量小型で
ある等の多くの利点を有している。従って、このような
非水電解液リチウムイオン2次電池は、携帯用電子機器
電源をはじめとして、電気自動車、電力貯蔵用などの電
池として実用化が期待されている。このリチウムイオン
2次電池用負極材として、現在最も期待されているのが
炭素系材料(炭素材或いは黒鉛材)である。
【0003】一般的に、炭素系材料は、黒鉛構造の発達
程度により炭素材と黒鉛材とに分類され、リチウムイオ
ン2次電池の負極材として使用した場合、その特性は下
記のように、充放電容量、サイクル特性等において著し
い相違が見られている。炭素材は黒鉛結晶子の大きさが
小さく結晶の配列も乱れているためか、初期の充電容量
が大きいものの、充放電効率が不十分であり、充放電時
の電流密度を高く設定すると電解液の分解を生じサイク
ル特性が低下することや、放電終了時の電位の平旦性が
ないなどの課題を有している。
【0004】また、黒鉛材、例えば天然黒鉛にあって
は、黒鉛化度が高い場合、完全な黒鉛結晶に近いものは
単位重量当たりの充放電可能容量は大きいが、無理なく
取り出せる電流密度が小さく、また、高電流密度での充
放電を行うと、充放電効率が低下する問題があり、他の
人造黒鉛材においても、サイクル特性は炭素材より優れ
るものの、初期の充放電容量において、理論容量に比較
しまだまだ低く、改良の余地がある。加えて、理論容量
に近づけるためには、より黒鉛構造を発達させる必要が
あり、このため高温の熱処理が要求され、コスト面、生
産安定性の面でも改良の余地がある。
【0005】また、炭素系材料の一つにPAN系炭素繊
維があり、PAN系炭素繊維をリチウムイオン2次電池
用負極材として使用することが、特開平7−6754
号、7−161347号、8−180860号、8−1
80870号公報等で研究されているが、PAN系炭素
繊維は難黒鉛化性のためか、ほとんどが1500℃以下
の低温熱処理で、黒鉛化度があまり発達していない炭素
材が主体である。なお、特開平7−161347号公報
には、2600℃の高温焼成されたPAN系炭素繊維の
使用の開示があるが、低温焼成の炭素繊維との混合使用
であり、高温焼成の炭素繊維の単独使用では、比較例2
に放電容量が小さいとの記載があり、通常の焼成で黒鉛
化度を高めたPAN系炭素繊維では、電池容量が大きく
なり難いと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
<黒鉛化触媒作用を持つ特定の金属触媒の作用>なお、
金属元素の黒鉛化触媒作用については、これまでの報告
(例えば、Ber.Deut.Keram.Gas.,
45,224(1968)など)によると、二つの機構
が考えられており、一つは”溶解−再析出”機構であ
り、もう一つは”炭化物生成−分解”機構である。金属
元素の中で、Fe、Ni、Co等VIII族元素は6〜
10個のd−電子を持ち、炭素原子から余分の電子を受
け入れてもそのエネルギー状態は殆ど変化しないので、
炭素を溶解することができる。
【0007】Ti等のIVb族〜Mn等のVIIb族の
元素は2〜5個と比較的少ないd−電子をもつので、炭
素との結合力が強く、炭化物を形成する。このことから
IVb〜VIIb及びVIII族元素は触媒作用をもつ
ことが指摘されている(炭素,102(1980)11
8)。また、炭素質原料の種類と触媒作用についても、
易黒鉛化性炭素中では結晶子が配向しているため、構造
内の欠陥や歪みを取り除くだけで結晶子の成長が起こる
こと、一方、結晶子の配向の程度が低い難黒鉛化性炭素
では、構造内の欠陥や歪みを取り除くだけでは結晶子は
成長できず、成長するには結晶子の完全な再配列が必要
であることが指摘されている。
【0008】また、これら金属元素による黒鉛化触媒作
用を利用し(溶解−析出或いは炭化物生成ー分解のいず
れの機構であっても)得られる黒鉛材では、熱処理され
る過程で、通常、黒鉛化触媒作用をもつ金属元素が、処
理される炭素質原料中の炭素や雰囲気ガス中の窒素と結
合して金属含有の炭化物や窒化物等の化合物を生成し、
黒鉛材中に一部が残留する。更に、残留する炭化物や窒
化物等の化合物は、保管状態にもよるが、空気中の酸素
や水分により酸化され金属酸化物へと変化すると言われ
ている。更に、炭化物によっては水分により加水分解さ
れアセチレンやメタン等の可燃性ガスを発生する危険性
もある。
【0009】これら生成物は、リチウム2次電池の負極
材としては電池の性能に寄与しないばかりか、電解液中
の水分を吸収して可燃性ガスを発生させたり、電解液や
リチウムと反応する恐れがある。従って、このような黒
鉛材は初回の充放電効率やサイクル特性の低い値を示す
傾向にあった。このため、エネルギー密度の高いリチウ
ム2次電池用の負極材とするには、熱処理後に残存する
これら金属分を取り除く必要がある。
【0010】また、リチウムイオン二次電池用負極材の
電極シートとするためには負極材自身が粉体である必要
があり、上記方法によって得られた炭素質材料も機械的
に粉砕されることが望ましい。粉砕された炭素質材料の
破断面は構造欠陥部が多く、活性であるため、空気中の
水分や酸素によって酸化され、水酸基やカルボキシル基
等含酸素官能基が多く存在している。このような材料を
負極材に用いた場合、初回の充電の際にリチウムイオン
は含酸素官能基と反応し、水酸化リチウムや炭酸リチウ
ム等無機物を生成するだけでなく、活性な部分の存在に
よって電解液の分解も促進させて初回の充放電効率やサ
イクル特性を低下させる原因になるものと考えられ、こ
れらを極力少なくすることが望ましい。
【0011】また、従来、黒鉛材は、電池特性をより向
上させるために、前述のように2500℃以上の高温度
で熱処理し黒鉛化することが要求され、処理のコストが
大幅に高くなる傾向にあった。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
種々検討し、黒鉛化触媒作用に着目し、種々の原料を用
い、使用金属、条件等を検討した結果、黒鉛化があまり
発達していないPAN系炭素繊維を用いても、黒鉛化触
媒作用を持つ特定の金属、特にNiまたはCo金属で被
覆し、800℃以上1400℃以下の低温熱処理でも黒
鉛化が発達し、得られたPAN系炭素繊維(本発明では
「黒鉛質繊維」と称す。)が、従来の黒鉛材料と同等の
電池特性を持つと共にリチウムイオンの放電開始電圧が
通常の黒鉛材に比べ低く、サイクル特性に優れた負極材
になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明は: 黒鉛化触媒作用を有する金属で被覆した黒鉛層間距
離が0.347nm以上のPAN系炭素繊維を800℃
以上1400℃以下の温度で熱処理し得られた、黒鉛層
間距離が0.340nm以下の黒鉛質繊維を使用する、
リチウムイオン2次電池用負極材を提供する。また、 黒鉛化触媒作用を有する金属がNiまたはCoであ
る点にも特徴を有する。また、 黒鉛化触媒作用を有する金属で被覆した黒鉛層間距
離が0.347nm以上のPAN系炭素繊維を800℃
以上1400℃以下の温度で熱処理し、次いで平均粒径
10μm以上50μm以下に粉砕し、次いで無機酸で金
属分を除去処理し、引き続いて400℃以上1200℃
以下の温度で再熱処理する、記載のリチウムイオン2
次電池用負極材の製造方法を提供する。
【0014】以下、本発明を具体的に説明する。 (I)黒鉛質繊維 〈原料〉本発明に供せられるPAN系炭素繊維は、黒鉛
化が発達したものでなく、繊維径が極端に太いものでな
ければ、特に限定されるものではなく、通常市販品を使
用することができる。ただし、黒鉛化の発達に伴い、価
格が高くなることと及び本発明の効果とを勘案し、黒鉛
層間距離が0.347nm以上(最高熱処理温度がほぼ
1500℃以下に相当)のPAN系炭素繊維がコスト面
から見て好ましい。また、繊維径としては、繊維内部へ
の黒鉛化作用及び、電池の負極材として粉砕使用するこ
とを考慮し、20μm以下、好ましくは5μm以上15
μm以下が望ましく、汎用市販品は繊維直径が6〜10
μm程度でありこの面でも好ましい。
【0015】〈黒鉛化触媒作用を有する金属触媒〉本発
明に供せられる黒鉛化触媒作用を有する金属としては、
例えば前記のTi等のIVb族〜Mn等のVIIb族の
金属元素やFe、Co、Ni等のVIII族の金属元素
を挙げることができる。特に、高温で炭素を溶解するN
i又はCoが好ましい。以下、Ni又はCoを例として
黒鉛化触媒作用を説明する。Ni及びCoの融点はそれ
ぞれ、1455℃及び1495℃であるが、比較的低温
で炭素との固溶度をもつNiと炭素及びCoと炭素との
共晶点は、それぞれ1318℃及び1309℃であり、
比較的低温である。
【0016】そして、この温度から冷却すると金属分が
金属Ni、或いは金属Coとして析出すると共に、炭素
は、その大部分が黒鉛に変化して析出する現象が生じ
る。炭素繊維の内部、或いは表面に析出したNiやCo
は、塩酸、硝酸等の無機酸で溶解し除去することは容易
であり、炭素繊維の表面特性に悪影響を及ぼさないよう
にすることは可能である。
【0017】また、析出した金属Ni及び金属Coが、
炭素繊維の構造内部に残留していても、電池特性が低下
するような傾向は殆ど見られなかった。一方、Ni、C
oと同様な性質を持つFeの場合、触媒黒鉛化作用はあ
るものの、同様に冷却してもFe3 C(セメンタイト)
として析出し、黒鉛と金属Feとして遊離して析出しな
い。またこの炭化物が炭素繊維表面に残留すると、湿気
により酸化を受け易かったり、水分及び酸によって可燃
性ガスを発生させる恐れがあり、取り扱い難い材料とな
る。
【0018】また、これらを粉砕し、炭素繊維表面の炭
化物を何らかの処理で除去できたとしても、炭素繊維の
構造内部に上記炭化物が析出されていると、負極材に用
いた場合、電解液中の水分等の影響を受ける可能性があ
り、ガス発生等電池としての安全性あるいは信頼性を低
下させる要因となる。従って、Feのように触媒黒鉛化
作用を有する金属元素であっても、電池用として好まし
くない炭化物等を生成する金属を適用するのは、本発明
においては望ましくなく、Ni又はCo金属の使用が最
適である。ちなみに、MnもFe同様の現象を生じるの
で、本発明には望ましくない。
【0019】〈金属の被覆〉炭素繊維へのNi又はCo
金属の被覆割合は、繊維重量に対し5wt%以上50w
t%以下、好ましくは20wt%以上40wt%以下で
ある。その被覆割合が、5wt%未満では金属の触媒黒
鉛化作用が少なく、炭素繊維の黒鉛化が進行せず好まし
くない。また、50wt%を越えても炭素繊維の黒鉛化
の進行に変化は少なく、一方後述の金属除去を含めたコ
ストが高くなるので好ましくない。炭素繊維へのNi又
はCo金属の被覆方法は、均一に被覆できれば特に限定
されるものではなく、通常の電気メッキ、化学メッキ、
蒸着或いは金属のコロイド溶液への含浸による表面への
塗膜方法や有機金属化合物による表面への塗膜方法等を
使用することができる。また、市販のNi又はCo金属
を被覆したPAN系炭素繊維も条件が合えば使用するこ
とができる。
【0020】〈熱処理温度〉金属を被覆した炭素繊維の
熱処理温度は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で、
800℃以上1400℃以下、好ましくは900℃以上
1200℃以下であることが望ましい。熱処理温度が、
800℃未満では本発明の目的を達成するのに長時間を
要し、1400℃を越えると触媒黒鉛化作用効果に差異
が見られず、熱処理コスト増となるので好ましくない。
900℃以上の熱処理温度が、使用する金属と炭素の共
晶点以下の温度であり好ましい。
【0021】熱処理時間は、被覆金属、処理温度と黒鉛
化度(下記黒鉛層間距離で判断される)に合わせ適宜選
択すれば良く、特に限定されないが、概ね、5時間〜1
5時間程度である。
【0022】〈黒鉛繊維の結晶性〉このように熱処理さ
れて製造された黒鉛質繊維は、黒鉛層間距離が0.34
0nm以下、好ましくは0.338nm以下であること
を要す。黒鉛層間距離が0.340nmを越えると、黒
鉛材の特徴である、初期充放電効率及びサイクル特性の
向上効果が不十分となり好ましくない。なお、本発明で
は黒鉛層間距離(d002 )は、粉末X線回折法により測
定される。
【0023】〈黒鉛質繊維の粉砕化〉このようにして得
られた黒鉛質繊維は、後述のように、触媒に使用したN
i等の金属分を除去するため、及び電池用負極材として
要求される粒径を調整するために、粉砕処理を行う。粉
砕の粒径としては、Ni等金属分を除去するためには2
00μm以下であれば良いが、電池用負極材としては平
均粒径10μm以上50μm以下、より好ましくは10
μm以上30μm以下が望ましい。黒鉛質繊維の平均粒
径が10μm未満では、表面に活性部をもつ粒径の小さ
い黒鉛粒子が多くなるため、Liイオンが表面で水酸化
リチウムや炭酸リチウム等無機物となって不可逆となる
Liが多くなり、且つ電解液の分解も激しくなる。その
結果、充放電効率を低下させ、電気容量の発現も期待で
きなくなる。
【0024】また、黒鉛質繊維の平均粒径が50μmを
越えると粒子同士の導電性効果が薄れ、初回の充放電効
率、放電容量及びサイクル特性が低下する。粉砕の方法
は、上記粒径範囲を満たすことができるものであれば良
く、特に制限はないが、例えば、ボールミル、ジェット
ミル、カッテイングミル等を使用することができる。
【0025】〈Ni等金属分の除去及び再熱処理〉電池
の単位重量(または容積)当たりの充放電容量を向上さ
せるため、黒鉛質繊維の表面或るいは内部に残留してい
るNi又はCo金属を取り除く必要がある。Ni又はC
o金属は、粉砕されたものの方が除去され易く、上記の
ように粒径200μm以下の範囲に粉砕後処理すること
が望ましい。Ni等の金属分は、希塩酸或いは希硝酸等
の無機酸水溶液に浸漬し、溶解させ、水洗処理等するこ
とで十分除去できる。
【0026】また、粉砕時発生する黒鉛質繊維の破断面
では構造欠陥となっている部分が露出しており、活性な
炭素原子は酸化され、水酸基やカルボキシル基等含酸素
官能基として存在する場合が多い。このような黒鉛質繊
維をリチウムイオン2次電池用負極材に用いると、リチ
ウムイオンが活性な炭素原子と反応したり、含酸素官能
基と反応し水酸化リチウムや炭酸リチウム等の無機物を
生成したりして、リチウムの不可逆容量を増加させる。
また、水分の吸着も見られ、これに起因し水酸化リチウ
ムも生成し、同様にリチウムの不可逆容量を増加させ、
初回の充放電効率及びサイクル特性を低下させる原因と
なる。従って、これら構造欠陥部あるいは含酸素官能基
を極力減少させることが電池の性能をより向上させる上
で重要になってくる。
【0027】これらを減少させるには、Ni等金属分を
除去した後に、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、或
いは減圧下で熱処理することが好ましい。熱処理温度は
400℃以上1200℃以下、好ましくは600℃以上
1000℃以下望ましい。熱処理温度が400℃未満で
は、炭素ラジカルや含酸素官能基を減少させるのに長時
間を要し、また、1200℃以上では熱処理効果に差異
はなくコストが高くなるので好ましくない。
【0028】更に、不活性雰囲気中に塩化水素ガスを含
有させて熱処理を行うと、より効果が期待でき、更に
は、無機酸で処理後に一部残留するNi又はCo金属も
より効果的に除去することが可能となり好ましい。この
際、塩化水素ガスの含有量については、特に限定される
ものでないが、装置への腐食性、排ガス処理の効率及び
経済性の観点から、10vol %以下、好ましくは1vol
%以上5vol %以下が望ましい。また、塩化水素を含有
させる場合、不活性雰囲気としては、希ガス、中でもア
ルゴンガス雰囲気が好ましい。
【0029】(II)負極の構成:本発明により得られ
た黒鉛質繊維は、通常の手法により負極とすることが出
来る。すなわち、ポリエチレンやポリテトラフルオロエ
チレン等のバインダーを添加し、有機溶媒あるいは水溶
媒を用いスラリー状とし、厚さ10〜50μmの銅、ニ
ッケル等からなる金属箔上の片面または両面に塗布し、
圧延、乾燥を行い、厚さ50〜200μm程度のシート
状物とする方法が広く用いられている。その後、所定の
幅・長さにスリットし、正極及びセパレーターと共に巻
取り製缶する方法が一般的である。このため、黒鉛質繊
維の粒径としては、100μm以下が要求される。要求
される粒径範囲にない黒鉛質繊維の粒径の調整は、粉砕
後任意の時期に、分級機及び篩い等で処理することで可
能である。
【0030】(III)電池:本発明による黒鉛質繊維
を負極に用い、リチウムイオン2次電池を作製する場合
には、電解液としてはリチウム塩を溶解し得るものであ
ればよいが、特に非プロトン性の誘電率が大きい有機溶
媒が好ましい。また、上記有機溶媒としては、例えば、
プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、テト
ラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオ
キソラン、4−メチル−ジオキソラン、アセトニトリ
ル、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネー
ト、ジエチルカーボネート等を挙げることができる。こ
れらの溶媒を単独あるいは適宜混合して用いることが可
能である。電解質としては、安定なアニオンを生成する
リチウム塩、例えば、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リ
チウム、六塩化アンチモン酸リチウム、六フッ化リン酸
リチウム(LiPF6 )等が好適である。
【0031】また、リチウムイオン2次電池の正極とし
ては、例えば、酸化クロム、酸化チタン、酸化コバル
ト、五酸化バナジウム等の金属酸化物や、リチウムマン
ガン酸化物(LiMn2 4 )、リチウムコバルト酸化
物(LiCoO2 )、リチウムニッケル酸化物(LiN
iO2 )等のリチウム金属酸化物;硫化チタン、硫化モ
リブデン等の遷移金属のカルコゲン化合物;及びポリア
セチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール等の導電
性を有する共役系高分子物質等を単独又は混合して用い
ることが出来る。
【0032】これらの正極と負極との間に合成繊維製又
はガラス繊維製の不織布、織布やポリオレフィン系多孔
質膜、ポリテトラフルオロエチレンの不織布等のセパレ
ータを設ける。本発明の2次電池は、前記セパレータ、
集電体、ガスケット、封口板、ケース等の電池構成要素
と本発明の特定の負極を用い、常法に従って円筒型、角
型或いはボタン型等の形態のリチウムイオン2次電池に
組立てることができる。
【0033】
【実施例】本発明を以下の実施例により、更に具体的に
説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものでは
ない。なお、実施例・比較例で行った充放電試験法を以
下に示す。 〔充放電試験〕粉体状繊維をプレスロールでシート化し
たものをニッケルメッシュに圧着し負極とし、正極及び
参照極には金属リチウム箔を用い三極セルで評価した。
電解液にはエチレンカーボネート(EC)/ジメチルカ
ーボネート(DMC)を容積比で1/1に調整した混合
炭酸エステル溶媒に、電解質として過塩素酸リチウムを
1Mになるように溶解したものを用いた。充放電の測定
は電位範囲0〜2(VvsLi/Li+ )とし、カットオフ
電圧0.01Vの定電流( 100mA/g)定電圧充
電、定電流( 100mA/g)放電にて10サイクルで
行った。
【0034】(実施例1)PAN系炭素繊維(東邦レー
ヨン製ベスファイトHTAー3000;黒鉛層間距離
0.3498nm)を電気メッキによりNi金属を繊維
重量に対し10、30、及び50wt%被覆したものを
3種で用い、窒素雰囲気中でそれぞれ1000℃、10
hrの熱処理を行い、3種の黒鉛化の進行したNi被覆
黒鉛質繊維を得た。これらのNi被覆黒鉛質繊維を粉砕
し、それぞれ平均粒径、22、28及び25μmの粉体
状とし、その後、これらの粉体状Ni被覆黒鉛質繊維を
5wt%の硝酸水溶液に浸漬し、水洗して、黒鉛質繊維
表面及び内部に介在している金属Niを除去した。Ni
の除去率はほぼ100%であった。
【0035】更に、これらを窒素雰囲気下1000℃、
1hrの熱処理を行い、粉体状黒鉛質繊維を3種得た。
これらの粉体状黒鉛質繊維のX線回折による結晶性解析
結果を表1に示す。このようにして得られた粉体状黒鉛
質繊維に対して、ポリテトラフルオロエチレンを3wt
%添加混練し電極シートを作製し負極とした後、3極セ
ルで充放電試験を行い充放電容量特性を測定した。電極
特性の結果を合わせて表1に示す。
【0036】(比較例1)実施例1のPAN系炭素繊維
を粉砕及び分級し、平均粒径20μmの粉体状とし、さ
らに窒素雰囲気下1000℃、1hrの熱処理を行い、
粉体状炭素繊維を得た。この粉体状炭素繊維の黒鉛層間
距離は殆ど変化しなかった。このようにして得られた粉
体状炭素繊維を用い、実施例1と同様に負極を作製し、
3極セルで充放電試験を行い充放電容量特性を測定し
た。電極特性の結果を合わせて表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】以上の通り、本発明のリチウムイオン2
次電池用負極材は、黒鉛化があまり発達していないPA
N系炭素繊維を用いても、黒鉛化触媒作用を持つ特定の
金属で被覆し、低温熱処理でも黒鉛化が発達し、得られ
たPAN系黒鉛質繊維が、従来の黒鉛材料と同等の電池
特性を持つと共にリチウムイオンの放電開始電圧が通常
の黒鉛材に比べ低く、サイクル特性に優れている効果を
有する。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年9月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正内容】
【0034】(実施例1)PAN系炭素繊維(東邦レー
ヨン製ベスファイトHTA−3000;黒鉛層間距離
0.3498nm)を電気メッキによりNi金属を繊維
重量に対し、30、及び50wt%被覆したものを3
種で用い、窒素雰囲気中でそれぞれ1000℃、10h
rの熱処理を行い、3種の黒鉛化の進行したNi被覆黒
鉛質繊維を得た。これらのNi被覆黒鉛質繊維を粉砕
し、それぞれ平均粒径、22、28及び25μmの粉体
状とし、その後、これらの粉体状Ni被覆黒鉛質繊維を
5wt%の硝酸水溶液に浸漬し、水洗して、黒鉛質繊維
表面及び内部に介在している金属Niを除去した。Ni
の除去率はほぼ100%であった。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 黒鉛化触媒作用を有する金属で被覆した
    黒鉛層間距離が0.347nm以上のPAN系炭素繊維
    を800℃以上1400℃以下の温度で熱処理し得られ
    た、黒鉛層間距離が0.340nm以下の黒鉛質繊維を
    使用することを特徴とするリチウムイオン2次電池用負
    極材。
  2. 【請求項2】 黒鉛化触媒作用を有する金属がNiまた
    はCoであることを特徴とする、請求項1記載のリチウ
    ムイオン2次電池用負極材。
  3. 【請求項3】 黒鉛化触媒作用を有する金属で被覆した
    黒鉛層間距離が0.347nm以上のPAN系炭素繊維
    を800℃以上1400℃以下の温度で熱処理し、次い
    で平均粒径10μm以上50μm以下に粉砕し、次いで
    無機酸で金属分を除去処理し、引き続いて400℃以上
    1200℃以下の温度で再熱処理することを特徴とす
    る、請求項1記載のリチウムイオン2次電池用負極材の
    製造方法。
JP8265094A 1996-09-17 1996-09-17 リチウムイオン2次電池用負極材及びその製造方法 Pending JPH1092431A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002222649A (ja) * 2001-01-25 2002-08-09 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 非水電解質二次電池用負極材料及びその製造方法並びにそれを用いた非水電解質二次電池
WO2017178492A1 (en) * 2016-04-11 2017-10-19 Sgl Carbon Se Polyacrylonitrile-based graphite fiber

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