JPH108177A - 磁気ディスク基板用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

磁気ディスク基板用アルミニウム合金板およびその製造方法

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JPH108177A
JPH108177A JP15974296A JP15974296A JPH108177A JP H108177 A JPH108177 A JP H108177A JP 15974296 A JP15974296 A JP 15974296A JP 15974296 A JP15974296 A JP 15974296A JP H108177 A JPH108177 A JP H108177A
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aluminum alloy
plate
magnetic disk
disk substrate
less
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JP15974296A
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Kenichi Ogura
健一 小倉
Yoichiro Totsugi
洋一郎 戸次
Yoshinari Kubo
嘉成 久保
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Furukawa Electric Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 マトリックスと化合物との自然電位差が小さ
く且つ化合物が微細で、ノジュールやマイクロピットが
発生し難いアルミニウム合金板を提供する。 【解決手段】 2.0〜6.0wt%のMg、0.05〜0.15wt% のC
u、0.10〜0.30wt% のZn、0.05〜0.12wt% のZr、0.2wt%
以下 (0wt%を含む)のSnを含有し、前記Cu、Zn、Zr、Sn
の含有量が 0.15wt%≦2Cu+6Zr-3Zn-0.1Sn ≦0.32wt% の
関係式(式中Cu,Zr,Zn,Sn は各々のwt% )を満足し、さ
らに 0.01wt%を超え 0.05wt%未満のMn、0.01wt% を超え
0.05wt%未満のCrのうちの1種または2種を含有し、残
部不可避不純物元素とAlからなり、前記不可避不純物元
素のうちSiが0.3wt%以下、Feが0.3wt%以下、Tiが 0.02w
t%以下、その他の不可避不純物元素が各々 0.02wt%以下
に規定されたアルミニウム合金の連続鋳造圧延板からな
る磁気ディスク基板用アルミニウム合金板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気ディスク等の
記憶媒体に使用されるディスク用アルミニウム合金板に
関し、特に下地めっきの表層にピットやノジュールが少
なく、磁性体が良好にめっきされる、高容量化が可能な
磁気ディスク基板用アルミニウム合金板および前記合金
板を低コストで製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気ディスクに対してはマルチメ
ディア等のニーズから大容量化および高密度化が求めら
れてきており、磁気ディスクの1ビット当たりの磁気領
域は益々微細化されつつあり、また磁気ヘッドと磁気デ
ィスクとの間隔も減少する傾向にある。このような磁気
ディスクの基板には次のような特性が要求されている。 非熱処理型(非析出硬化型)で各種の加工および使用
時の高速回転に耐えうる十分な強度を有すること、軽
量であり、研磨によりピット等のない良好な鏡面が得ら
れること、下地めっき後の表面が平滑でピット等の欠
陥が生じず、又下地めっき層の密着性が良いこと。前記
特性を満たす磁気ディスク用基板にはJIS-A-5086合金が
用いられている。ここでJIS-A-5086合金は、ピット等の
欠陥の原因になるFeやSi等の不純物元素を規定してマト
リックス中に生成する金属間化合物が小さくなるように
している。また、磁気ディスクの製造は、半連続鋳造法
によりスラブを鋳造し、これを熱間圧延後、焼鈍を交え
ながら冷間圧延して圧延板とし、これを円板状に打抜
き、この円板状体を切削、研削、研磨し、次いで脱脂、
エッチング、ジンケート処理し、次いで磁性体被覆のた
めの下地処理としてNi-P等の硬質非磁性金属を無電解め
っきし、ポリッシング後、その上に Co-Ni-P合金等の磁
性体をスパッタリングして行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記JIS-A-50
86合金製の基板は無電解めっき後の表面平滑性が充分で
はなかった。即ち、切削、研削、研磨、ジンケート処理
等の前処理の際に、金属間化合物が脱落してピットにな
る場合があり、このピットは無電解めっき厚さが20μm
程度であれば、その後のポリッシングで消えることが多
いが、昨今、端部のダレ防止と、経済的な面からポリッ
シング量を減らしているため、ポリッシング後も ピッ
トが残存する場合がある。このように磁気ディスクの表
面品質の向上には、アルミニウム合金基板中の金属間化
合物の個数や大きさを減少させる対策が講じられてきた
が必ずしも十分な成果が得られなかった。さらに種々の
対策が講じられる中で、処理工程が複雑になり、製造コ
ストが高くなってきている。
【0004】このようなことから、本発明者等は鋭意研
究を行い、微量添加元素の種類及び添加量を調整する等
によって、ピットが少なく表面品質の良好な磁気ディス
ク基板用アルミニウム合金板を提案した(特開平2-9763
9 号公報)。このものは既に実用化されており、高い評
価を受けている。しかし、磁気ディスクは高容量化の傾
向にあり、近年では2GB/枚以上の記憶容量が要求さ
れるようになり、表面品質の更なる向上が要求されてい
る。高容量化にはヘッドの浮上高さ(グライドハイト)
を低くする方法があるが、浮上高さを低くするにあたっ
ては障害が2つある。1つは下地めっき後のディスク表
面に生じるノジュール(半球状の突起)で、このノジュ
ールにヘッドが衝突するとヘッドクラッシュが起きる恐
れがある。もう1つは下地めっき後のディスクの極表層
に生じる小さなピット(マイクロピット)で、このもの
は電気的エラーの原因になる。
【0005】このようなことから、本発明者等は、ノジ
ュールやマイクロピットの発生原因について詳細に研究
を行い、その原因は、エッチングやジンケート処理の際
に、素材に分散している金属間化合物(Mg2Si 、Mg2A
l3、 Al-Fe系、 Al-Cu系、Al-Mg-Zn系)が溶解したり、
金属間化合物の回りのマトリックスが溶解したりして素
材表面に凹部が形成されるためであることを見出した。
【0006】前記の溶解反応には、マトリックスと金属
間化合物との間に存在する自然電位差が影響し、化合物
がマトリックスに対して貴な場合は化合物の周りのマト
リックスが溶解して凹部が形成され、化合物がマトリッ
クスに対して卑な場合は化合物自体が溶解して凹部が形
成される。前者の化合物はAl-Mg-Zn系化合物やMg2Al3
合物等であり、後者の化合物は Al-Fe系化合物や Al-Cu
系化合物等である。Mg2Si化合物の場合は、周りのマト
リックスも溶けるが、Mgも溶けるので内部に非常に不活
性なSiが残った凹部が形成される。時にはSiが脱落して
ピットになる。
【0007】ノジュールの発生機構は、前処理時に基板
表面に比較的小さな穴またはシャープな穴が発生し、ジ
ンケート処理時に穴の中央部に優先的にジンケートが成
長してノジュールとなる場合と、化合物が凹部に残存し
表面から突出する場合とがある。前者の例がAl-Mg-Zn系
化合物やMg2Al3化合物であり、後者の例が Al-Fe系やAl
-Cu系等の化合物である。
【0008】ピットの発生機構は、前処理の際に基板表
面に比較的大きな穴が発生し、めっき層がその穴の形状
になぞらえて成長してピットになる。化合物の中では A
l-Fe系化合物と Mg2Si化合物が、他の化合物に較べてサ
イズが大きい。そのため、大きなノジュールやピットは
Al-Fe系化合物と Mg2Si化合物を減らすか、その大きさ
を小さくすることにより低減できる。また、この Al-Fe
系化合物と Mg2Si化合物は自然電位がマトリックスより
も高い(貴な)ため、マトリックスの自然電位をより高
め(貴とし)、両者の自然電位差を小さくすることによ
りノジュールやピットを低減することが可能である。
【0009】また、磁気ディスク基板用アルミニウム合
金板の製造は、半連続鋳造法(水冷鋳造法)で得た鋳塊
を、熱間圧延及び冷間圧延してなされている。前記半連
続鋳造法では、鋳造時の冷却速度が遅いため本来固溶す
る元素が金属間化合物として析出するので、ノジュール
やマイクロピットが発生し易い。また、半連続鋳造法で
は鋳塊厚さが厚いため、鋳塊を冷間圧延する際のパス回
数が多く、製造コストが高い。
【0010】本発明は、マトリックスと化合物(Al-Fe
系化合物や Mg2Si化合物)との自然電位差が小さく、し
かもマトリックス中の前記化合物が微細でノジュールや
マイクロピットが発生し難い、磁気ディスク基板用アル
ミニウム合金板、及び前記合金板を効率良く製造する方
法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
2.0〜6.0wt%のMg、0.05〜0.15wt% のCu、0.10〜0.30wt
% のZn、0.05〜0.12wt% のZr、0.2wt%以下(0wt%を含
む)のSnを含有し、前記Cu、Zn、Zr、Snの含有量が 0.1
5wt%≦2Cu+6Zr-3Zn-0.1Sn ≦0.32wt% の関係式(式中C
u,Zr,Zn,Sn は各々のwt% )を満足し、さらに 0.01wt%
を超え 0.05wt%未満のMn、0.01wt% を超え 0.05wt%未満
のCrのうちの1種または2種を含有し、残部不可避不純
物元素とAlからなり、前記不可避不純物元素のうちSiが
0.3wt%以下、Feが0.3wt%以下、Tiが 0.02wt%以下、その
他の不可避不純物元素が各々 0.02wt%以下に規定された
アルミニウム合金の連続鋳造圧延板からなることを特徴
とする磁気ディスク基板用アルミニウム合金板である。
【0012】請求項2記載の発明は、前記アルミニウム
合金板の表層において、長径が 5μmを超える Mg2Si化
合物粒子の単位面積(1mm2)当たりの個数が20個以下で
あることを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク基板
用アルミニウム合金板である。
【0013】請求項3記載の発明は、前記アルミニウム
合金板の表層において、長径が 5μmを超える Al-Fe系
化合物粒子の単位面積(1mm2)当たりの個数が40個以下
であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気ディ
スク基板用アルミニウム合金板である。
【0014】請求項4記載の発明は、アルミニウム合金
の連続鋳造圧延板に冷間圧延と焼鈍が施されていること
を特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の磁気
ディスク基板用アルミニウム合金板である。
【0015】請求項5記載の発明は、請求項1記載のア
ルミニウム合金を双ロール式連続鋳造機により鋳造し、
前記鋳造機から製出される板状鋳塊をコイル状に巻取
り、その後、最終焼鈍を施す磁気ディスク基板用アルミ
ニウム合金板の製造方法であって、前記板状鋳塊を 150
℃以下の温度に冷却してからコイル状に巻取るか、また
は板状鋳塊を 150℃を超える温度で巻取り、巻取り後の
板状鋳塊の 240℃から 150℃にかけての冷却を30〜600
℃/hr の冷却速度で行い、前記最終焼鈍終了後の240℃
から 150℃にかけての冷却を30〜 600℃/hr の冷却速度
で行うことを特徴とする請求項1、2、3、4のいずれ
かに記載の磁気ディスク基板用アルミニウム合金板の製
造方法である。
【0016】請求項6記載の発明は、請求項1記載のア
ルミニウム合金を双ロール式連続鋳造機により鋳造し、
前記鋳造機から製出される板状鋳塊をコイル状に巻取
り、次いで冷間圧延後、最終焼鈍を施す磁気ディスク基
板用アルミニウム合金板の製造方法であって、双ロール
式連続鋳造機により鋳造される板状鋳塊の厚さを 4mm以
下とし、コイル状に巻取った板状鋳塊を所定厚さに冷間
圧延し、この冷間圧延材に最終焼鈍を施し、前記最終焼
鈍後の 240℃から 150℃にかけての冷却を30〜 600℃/h
r の冷却速度で行うことを特徴とする請求項1、2、
3、4のいずれかに記載の磁気ディスク基板用アルミニ
ウム合金板の製造方法である。
【0017】請求項7記載の発明は、冷間圧延を、圧延
率 20%以上のパスを3以下のパス回数で行うことを特徴
とする請求項6記載の磁気ディスク基板用アルミニウム
合金板の製造方法である。
【0018】請求項8記載の発明は、請求項1記載のア
ルミニウム合金を双ロール式連続鋳造機により鋳造する
際の鋳塊に掛かる圧下荷重Pが下記式を満足することを
特徴とする請求項5、6、7のいずれかに記載の磁気デ
ィスク基板用アルミニウム合金板の製造方法である。 P≧ 3.3×10-5・t・w・D0.5 ・V・exp (1600/
T) 但し、Pは圧下荷重(単位tonf)、tは出側板厚(単位
mm)、wは出側板幅(単位mm)、Dはロール直径(単位
mm)、Vはロール周速度(単位m/min.) 、Tは出側板
表面温度(単位K)。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明における合金元素
の作用とその量の規定理由を説明する。Mgは強度向上に
寄与する。その量を 2.0〜6.0wt%に規定した理由は、2.
0wt%未満では十分な強度が得られず、装置に組込む際に
反りが発生し、ディスクが回転するとディスク外周部の
振れが大きくなる等の不具合が生じ、6.0wt%を超えると
Al-Mg系金属間化合物が生成するとともに、溶解鋳造時
の高温酸化によって MgO等の非金属介在物が多量に生成
するためである。Mg含有量は、強度および製造の容易さ
の兼合いから 2.0〜5.0wt%が特に望ましい。
【0020】Cuはマトリックスの自然電位を貴にしてピ
ットやノジュールの発生を抑制する。Cuの添加量を0.05
〜0.15wt% に規定した理由は、 0.05wt%未満ではその効
果が十分に得られず、 0.15wt%を超えると Al-Cu系の析
出物が多くなりノジュールが増えたり、めっき後のムラ
(ノジュールの集合体)が発生して表面が不均一になる
為である。
【0021】Znはジンケート処理後の表面を滑らかに
し、めっきムラ等の発生を抑える。その含有量を0.10〜
0.30wt%に規定した理由は、 0.10wt%未満ではその効果
が十分に得られず、 0.30wt%を超えるとマトリックスの
自然電位が卑になりピットやノジュールが増加するため
である。
【0022】Zrは自然電位を貴にしてピットやノジュー
ルを低減させる。また Al-Zr系の析出物を生成すること
で素材の切削性を改善する。その添加量を0.01〜 0.12w
t%に規定した理由は、 0.01wt%未満ではその効果が十分
に得られず、 0.12wt%を超えると Al-Zr系の粗大な化合
物が生成しピットやノジュールが生じ易くなるためであ
る。
【0023】Snは鋳塊の表面品質を改善する。その含有
量を0.2wt%以下に規定した理由は、0.2wt%を超えると素
材の電位が卑になりピットやノジュールの形成原因とな
るためである。Snは含有されていなくても良い。
【0024】MnとCrは鋳造時に微細な金属間化合物を生
成し、その一部はマトリックス中に固溶して強度を向上
させる。また切削性や研削性を向上させる。さらに再結
晶組織を微細にして、下地めっき(無電解めっき)層の
アルミニウム合金板との密着性を向上させる。MnとCrの
含有量を前記範囲に規定した理由は、下限値未満ではこ
の効果が十分に得られず、上限値を超えると鋳造時に過
剰分が晶出してフィルターにより除去されて無駄とな
り、また粗大な金属間化合物が生成し、エッチングおよ
びジンケート処理だけでなく、切削、研削加工を施す際
にも金属間化合物が脱落してピットが生じるからであ
る。Mn、Crは単独で添加しても効果があるが、共存させ
ることによりその効果は更に大きくなる。
【0025】不可避不純物のうち、Si、Fe、Tiを各々前
述の範囲以下に規定したのは、これらの元素はアルミニ
ウム中には殆ど固溶せず、金属間化合物として存在する
が、その量が多い場合にはAl−Fe系化合物や Mg2Si化合
物等の粗大な金属間化合物が多数生成してピットやノジ
ュールの生成原因となるからである。また他の不可避的
不純物元素(例えばNi、B 等)は、各々 0.02wt%以下で
あれば、本発明で得られる合金板の特性を阻害するよう
なことはない。
【0026】請求項1記載の発明において、連続鋳造圧
延板とは、例えば、対をなす2本のロール間に溶湯を供
給し、ロール表面で凝固した凝固層をそのまま前記2本
のロール間で圧延して得られる板材である。このような
連続鋳造法を実現するものとして双ロール式連続鋳造機
がある。
【0027】本発明において、前記アルミニウム合金板
の表層において、長径が 5μmを超える Mg2Si化合物粒
子の単位面積(1mm2)当たりの個数が20個以下、または
長径が 5μmを超える Al-Fe系化合物粒子の単位面積
(1mm2)当たりの個数が40個以下だとピットまたはノジ
ュールが少なく実用上問題のない表面品質の高容量磁気
ディスクが得られる。
【0028】請求項4記載の発明は、連続鋳造圧延板に
冷間圧延と焼鈍が施されている磁気ディスク基板用アル
ミニウム合金板である。このように連続鋳造圧延板にさ
らに冷間圧延が施されていると、金属間化合物が粉砕さ
れ、その結果、下地めっき面のピットやノジュールが微
細化し望ましい。焼鈍により強度や成形性が調整され
る。
【0029】請求項5記載の発明は、請求項1記載のア
ルミニウム合金を双ロール式連続鋳造法にて行う方法で
ある。双ロール式連続鋳造法は、冷却速度が速いため鋳
塊表層では粗大な金属間化合物の生成が抑制され、ロー
ルの圧下荷重によって金属間化合物が粉砕され、また鋳
塊の厚さを薄くできる。したがって冷間圧延を経ずに製
品化できる。また製造工程が省略でき製造コストを節減
できる。これに対し、半連続鋳造法では、鋳塊が鋳造組
織のままのため粗大なFe系金属間化合物が存在してお
り、また圧下荷重が掛からないため、板厚を薄く鋳造で
きない。したがって、そのままでは製品にできない。
【0030】更に、連続鋳造終了後の巻取工程にて、 1
50℃以下でコイルに巻上げることが可能な場合は良い
が、 150℃を超える温度でコイルに巻上げると、巻上げ
後 Mg2Si化合物が析出する。このとき 240〜150 ℃の間
の冷却速度を30℃/hr にすればMg2Si化合物は殆ど析出
しない。冷却速度が 600℃/hr を超えると熱ひずみが発
生し、板状鋳塊の平坦度が低下する。そのため前記冷却
速度は30〜 600℃/hr が望ましい。また冷却速度を 240
〜150 ℃の温度範囲に規定するのは、 240℃を超えると
Mg2Si化合物は析出せず、 150℃未満では析出に時間が
かかり問題がなくなるためである。
【0031】連続鋳造圧延板の巻取り前後の板状鋳塊の
冷却速度を前記のように規定することにより、板状鋳塊
表層中の長径が5μmを超える Mg2Si化合物の個数密度
を20個/mm2以下に、長径が5μmを超える Al-Fe系化合
物の個数密度を40個/mm2以下に、それぞれ抑えることが
できる。尚、打抜き後に施す最終焼鈍においても冷却速
度を同様に規定することにより同様の効果が得られる。
コイル巻取り前後の板状鋳塊の冷却方法は任意である
が、強制空冷、ミストクエンチ噴射、水槽内通過等の方
法が簡便で望ましい。
【0032】請求項6記載の発明では、双ロール式連続
鋳造機により鋳造される板状鋳塊の厚さを 4mm以下に薄
くする。このように薄くすることにより後工程の工数が
減らせコスト節減が計れる。またコイル状に巻取った板
状鋳塊を所定厚さに冷間圧延し、この冷間圧延材に最終
焼鈍を施す。前記最終焼鈍後の 240℃から 150℃にかけ
ての冷却を30〜 600℃/hr の冷却速度で行う。このよう
にすることにより、化合物の析出が抑えられ、また析出
したとしても析出物(化合物)は微細である。
【0033】請求項7記載の発明では、冷間圧延を、圧
延率 20%以上のパスを3以下のパス回数で行う。このよ
うに1パス当たりの圧延率を大きくすることで化合物を
より微細に粉砕できる。パス回数を4以上にしてもその
効果は飽和する。尚、冷間圧延中に中間焼鈍を行うとマ
トリックスが軟化して微細化効果が低下する。したがっ
て、冷間圧延中に中間焼鈍は行わない方が良い。しかし
トータルの圧延率が大きくなり過ぎ、冷間圧延途中で剪
断帯に起因する圧延方向と直交する方向に縞模様が発生
するような場合は破断の恐れがあるので、中間焼鈍を行
うようにする。
【0034】請求項8記載の発明では、双ロール式連続
鋳造法によって板状に鋳造する際の条件を、圧下荷重P
(単位tonf)、出側板表面温度T(単位K)、出側板厚
t(単位mm)、出側板幅w(単位mm)、ロール周速度V
(単位m/min.)、ロール直径D(単位mm)とした時に、
下記式を満足するように行う。 P≧ 3.3×10-5・t・w・D0.5 ・V・exp (1600/T) 上記式の圧下荷重の範囲を満足することにより、金属間
化合物が充分に粉砕され、下地めっき後のピットやノジ
ュールの形成がより良好に抑制される。
【0035】
【実施例】
(実施例1)表1に示す組成の合金を溶解し、この溶湯
に脱ガス、沈静処理を施し、次いでフィルターで異物を
ろ過したのち、双ロール式連続鋳造機を用いて厚さ0.82
mmの板状鋳塊を鋳造した。この板状鋳塊から外径96mm内
径24mmのドーナツ板を打抜き、これを 340℃で4時間焼
鈍した後、表面に前処理と下地めっきを行った。尚、鋳
造、前処理、下地めっきの条件は下記の通りである。 (鋳造条件) 圧下荷重:8tonf 、出側表面温度:638K、出側板厚:0.
82mm、出側板幅:150mm 、ロール周速:15.0m/min.、ロ
ール直径:480mm 、コイル冷却速度:10℃/hr 、最終焼
鈍冷却速度:10℃/hr 。 (前処理及びめっき処理条件)脱脂(上村工業製AD68-5
0%,6分)→エッチング(上村工業製AD101-10%, 2分)→
エッチング(上村工業製AD101-10%, 2分)→デスマット
(HNO330%, 1分)→第1ジンケート(上村工業製AD301,
30%, 1分)→硝酸剥離(HNO330%, 1分)→第2ジンケー
ト(上村工業製AD301-30%,20秒)→Ni-P下地めっき(上
村工業製HDX,めっき厚さ13μm)。
【0036】得られた磁気ディスク基板用アルミニウム
合金板について Mg2Si化合物と Al-Fe系化合物の個数を
走査式電子顕微鏡(SEM)により調査し、またNi-Pの
下地めっき後のものについてマイクロピットとノジュー
ルの個数を光学顕微鏡により調査した。計測面積は3mm2
とし、1mm2当たりの個数で表した。また表面粗度を調査
した。表面祖度は、万能表面粗さ計SE-3H (小坂研究所
製)を用い、JIS-B-0601の規定に従って中心線粗さRa
(μm)を4点測定し、その平均値で示した。結果を表
1に示す。
【0037】尚、個数の表示は次のようにして行った。
Mg2Si化合物は、長径が 5μmを超えるものが、 5個/mm
2未満のものを◎、 5〜10個/mm2のものを○、10個/mm2
を超え20個/mm2未満のものを△、20個/mm2以上のものを
×とした。Al-Fe系化合物は、長径が 5μmを超えるも
のが10個/mm2未満のものを◎、10〜20個/mm2のものを
○、20個/mm2を超え40個/mm2未満のものを△、40個/mm2
以上のものを×とした。マイクロピットは、長径が 5μ
mを超えるものが 5個/mm2未満のものを◎、 5〜15個/m
m2のものを○、15個/mm2を超え25個/mm2未満のものを
△、25個/mm2以上のものを×とした。ノジュールは、長
径が10μmを超えるものが 5個/mm2未満のものを◎、 5
〜15個/mm2のものを○、15個/mm2を超え25個/mm2未満の
ものを△、25個/mm2以上のものを×とした。
【0038】
【表1】
【0039】表1より明らかなように、本発明例品 (N
o.1〜5)はマイクロピットやノジュールが少なく良好な
表面品質を呈した。また表面粗度も小さかった。径の大
きい化合物が多数存在するもの(No.2,5)もマイクロピッ
トやノジュールは少なかった。これはマトリックスが貴
な為エッチングやジンケート処理の際に化合物近辺のマ
トリックスが溶解しなかった為である。これに対して、
比較例品はマイクロピットやノジュールが多いか、或い
は表面粗度が大きかった。
【0040】(実施例2)表1のNo.bの合金を、双ロー
ル式連続鋳造法により厚さ0.92mmの板状鋳塊に鋳造し、
または半連続鋳造法と圧延とにより厚さ0.82mmの板材に
加工した。得られた前記板状鋳塊又は板材を外径96mm内
径24mmのドーナツ状に打抜き、これに 340℃で 4hrの最
終焼鈍を施した。最終焼鈍後の冷却速度は 100℃/hr と
した。板状鋳塊または板材の製造条件は下記の通りであ
る。 〔製造条件〕 (1) 双ロール式連続鋳造法(板状鋳塊) 圧下荷重を12tonf、出側表面温度を638K、出側板厚を0.
82mm、出側板幅を150mm 、ロール周速を14.8m/min.、ロ
ール直径を 480mm、コイル巻取りの際の 240℃から 150
℃にかけての冷却速度を 100℃/hr とした。 (2) 半連続鋳造法と圧延 厚さ60mmのスラブを鋳造し、片側 5mmずつ面削した後、
厚さ 5.5mmに熱間圧延し、次いで中間焼鈍を交えながら
厚さ0.82mmに冷間圧延した。熱間圧延後、及び中間焼鈍
後における 240℃から 150℃にかけての冷却速度は 100
℃/hr とした。
【0041】
【表2】
【0042】表2より明らかなように、本発明例品(No.
16) はマイクロピットやノジュールが少なく、表面品質
に優れている。これに対し、比較例品(No.17〜22) で
は、冷間圧延率が大きいものは表面品質が改善されてい
る。しかし全体の圧延加工率 (50mm→0.82mm,98%) が大
きくパス回数が多いので製造コストが高い。
【0043】(実施例3)表1のNo.bまたはNo.kの合金
を用い、双ロール式連続鋳造法により磁気ディスク基板
用アルミニウム合金板を製造した。鋳造条件は種々に変
化させた。得られた合金板について実施例1と同じ調査
を行った。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】表3より明らかなように、本発明例品(No.
23〜36) はマイクロピットやノジュールが少なく、表面
品質に優れている。中でもP≧Lの条件を満足するもの
(No.30〜36) は表面品質が特に良好であった。またコイ
ル巻上げ時或いは最終焼鈍時の冷却速度が遅いもの(No.
23〜25,30,32) は、析出が進行し他のもの(No.27〜29,
33〜36)に較べて表面品質が若干低下した。また鋳塊厚
さが0.82〜1.20mmと薄く冷間圧延なしで製品にできたた
め製造コストを大幅に低減できた。これに対し、比較例
品の No.37〜42は、P≧Lの条件を満足するもの(No.39
〜42) でも、合金組成が本発明で限定した範囲外でマト
リックスと化合物との自然電位差が大きいため、大径の
ピットやノジュールが多数発生して表面品質が低下し
た。
【0046】(実施例4)表1のNo.bまたはNo.kの合金
を用い、双ロール式連続鋳造法により板状鋳塊を鋳造し
た。この板状鋳塊に冷間圧延を施し、さらにこの冷間圧
延板に最終焼鈍を施して磁気ディスク基板用アルミニウ
ム合金板を製造した。得られた合金板について実施例1
と同じようにしてマイクロピットとノジュールの個数を
調査した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】表4より明らかなように、本発明例品(No.
43〜56) は、実施例3の場合より、大径の化合物数が減
少し全般に表面品質が向上した。これはマトリックスと
金属間化合物との間の自然電位差が小さかった上、冷間
圧延により化合物がより微細化した為である。表面品質
は、冷間圧延での圧延率が大きい程、またパス回数が多
い程向上した。またコイル巻上げ時或いは最終焼鈍時の
冷却速度が遅いもの(No.43〜46,50,51) は析出が進行
し、他のもの(No.47〜49, 52〜56) に較べて表面品質が
幾分低下した。また鋳塊厚さが1.50〜2.82mmと薄いため
冷間圧延でのパス回数が少なく製造コストも低減でき
た。これに対して比較例品は、合金組成が本発明で限定
した範囲外で、マトリックスと化合物との間の自然電位
差が大きいため、いずれもマイクロピットやノジュール
が多く表面品質が劣った。
【0049】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の磁気ディ
スク基板用アルミニウム合金板は、マトリックスと Mg2
Si化合物などとの間の自然電位差が小さく、また連続鋳
造圧延板なので、化合物が粉砕されて微細となりピット
やノジュールが生じ難く表面品質に優れる。鋳塊のコイ
ル巻取り時などにおける冷却速度を規定することにより
化合物をより微細化できる。さらに連続鋳造圧延板に冷
間圧延を施すことにより化合物がより微細化し、表面品
質が一層向上する。また鋳塊厚さを薄くできるので圧延
工程を低減でき、製造コストを安くできる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2.0〜6.0wt%のMg、0.05〜0.15wt% のC
    u、0.10〜0.30wt% のZn、0.05〜0.12wt% のZr、0.2wt%
    以下(0wt%を含む)のSnを含有し、前記Cu、Zn、Zr、Sn
    の含有量が 0.15wt%≦2Cu+6Zr-3Zn-0.1Sn ≦0.32wt% の
    関係式(式中Cu,Zr,Zn,Sn は各々のwt% )を満足し、さ
    らに 0.01wt%を超え 0.05wt%未満のMn、0.01wt% を超え
    0.05wt%未満のCrのうちの1種または2種を含有し、残
    部不可避不純物元素とAlからなり、前記不可避不純物元
    素のうちSiが0.3wt%以下、Feが0.3wt%以下、Tiが 0.02w
    t%以下、その他の不可避不純物元素が各々 0.02wt%以下
    に規定されたアルミニウム合金の連続鋳造圧延板からな
    ることを特徴とする磁気ディスク基板用アルミニウム合
    金板。
  2. 【請求項2】 前記アルミニウム合金板の表層におい
    て、長径が 5μmを超える Mg2Si化合物粒子の単位面積
    (1mm2)当たりの個数が20個以下であることを特徴とす
    る請求項1記載の磁気ディスク基板用アルミニウム合金
    板。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム合金板の表層におい
    て、長径が 5μmを超える Al-Fe系化合物粒子の単位面
    積(1mm2)当たりの個数が40個以下であることを特徴と
    する請求項1又は2記載の磁気ディスク基板用アルミニ
    ウム合金板。
  4. 【請求項4】 アルミニウム合金の連続鋳造圧延板に冷
    間圧延と焼鈍が施されていることを特徴とする請求項
    1、2、3のいずれかに記載の磁気ディスク基板用アル
    ミニウム合金板。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のアルミニウム合金を双ロ
    ール式連続鋳造機により鋳造し、前記鋳造機から製出さ
    れる板状鋳塊をコイル状に巻取り、その後、最終焼鈍を
    施す磁気ディスク基板用アルミニウム合金板の製造方法
    であって、前記板状鋳塊を 150℃以下の温度に冷却して
    からコイル状に巻取るか、または板状鋳塊を 150℃を超
    える温度で巻取り、巻取り後の板状鋳塊の 240℃から 1
    50℃にかけての冷却を30〜600 ℃/hr の冷却速度で行
    い、前記最終焼鈍終了後の 240℃から 150℃にかけての
    冷却を30〜 600℃/hr の冷却速度で行うことを特徴とす
    る請求項1、2、3、4のいずれかに記載の磁気ディス
    ク基板用アルミニウム合金板の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1記載のアルミニウム合金を双ロ
    ール式連続鋳造機により鋳造し、前記鋳造機から製出さ
    れる板状鋳塊をコイル状に巻取り、次いで冷間圧延後、
    最終焼鈍を施す磁気ディスク基板用アルミニウム合金板
    の製造方法であって、双ロール式連続鋳造機により鋳造
    される板状鋳塊の厚さを 4mm以下とし、コイル状に巻取
    った板状鋳塊を所定厚さに冷間圧延し、この冷間圧延材
    に最終焼鈍を施し、前記最終焼鈍後の 240℃から 150℃
    にかけての冷却を30〜 600℃/hr の冷却速度で行うこと
    を特徴とする請求項1、2、3、4のいずれかに記載の
    磁気ディスク基板用アルミニウム合金板の製造方法。
  7. 【請求項7】 冷間圧延を、圧延率 20%以上のパスを3
    以下のパス回数で行うことを特徴とする請求項6記載の
    磁気ディスク基板用アルミニウム合金板の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1記載のアルミニウム合金を双ロ
    ール式連続鋳造機により鋳造する際の鋳塊に掛かる圧下
    荷重Pが下記式を満足することを特徴とする請求項5、
    6、7のいずれかに記載の磁気ディスク基板用アルミニ
    ウム合金板の製造方法。 P≧ 3.3×10-5・t・w・D0.5 ・V・exp (1600/
    T) 但し、Pは圧下荷重(単位tonf)、tは出側板厚(単位
    mm)、 wは出側板幅(単位mm)、Dはロール直径(単位mm)、 Vはロール周速度(単位m/min.) 、Tは出側板表面温
    度(単位K)。
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