JPH1081586A - 気相合成ダイヤモンドおよびその製造方法 - Google Patents
気相合成ダイヤモンドおよびその製造方法Info
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- JPH1081586A JPH1081586A JP25387396A JP25387396A JPH1081586A JP H1081586 A JPH1081586 A JP H1081586A JP 25387396 A JP25387396 A JP 25387396A JP 25387396 A JP25387396 A JP 25387396A JP H1081586 A JPH1081586 A JP H1081586A
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Abstract
するダイヤモンド膜とその低コストの製造方法を提供す
る事。 【構成】基板の上にダイヤモンドを初め低速度で気相合
成して粒径の大きい結晶を核発生させ、次いで高速度で
気相合成して厚み方向に柱状結晶の粒径を増大させ、基
板を除去することによってダイヤモンドの自立膜を作
る。基板側を研削して基板側の結晶粒の小さい部分を除
くとさらに良い。結果として結晶粒の大きい柱状結晶の
集合としてのダイヤモンドが得られる。柱状の結晶であ
って粒径が大きく、厚み方向には粒界が少ないので厚み
方向の熱伝導率κtが13W/cmK以上になる。2段
階目での成長速度は大きいので成長速度はかなり大きく
合成のコストも下げられる。従来のように熱伝導率を上
げるには成長速度を下げるという方法によらないので、
膜厚方向に高熱伝導率を持つダイヤモンドを低コストで
作製することができる。ラマン散乱の1332cm-1ピ
ークの半値幅が4cm-1以上であっても熱伝導率は13
W/cmK以上の高いものが得られる。
Description
た気相合成ダイヤモンドおよびその製造方法に関する。
特にヒートシンクなどに適する膜厚方向に高い熱伝導率
を有するダイヤモンド膜を製造する方法に関する。
優れた特性を有する卓越した材料である。ダイヤモンド
の気相合成法は、このように優れた性質を有するダイヤ
モンドを大面積のウエハ−として比較的安価に製造する
ことを可能にした。ダイヤモンドは多くの美点を有する
から多様な応用の途が開けている。ダイヤモンドの優れ
た性質の内、何を利用するかによってその用途も異なっ
てくる。ここでは熱伝導率が高いという性質を利用す
る。
も有望なものに半導体素子のヒートシンクがある。特に
発熱著しい半導体レ−ザ(LD)の冷却のためダイヤモ
ンドのヒートシンクは最良のものである。ダイヤモンド
は特に熱伝導率が高いから放熱性に優れている。素子で
発生する熱を低温側(ヒートシンクの他面)へ迅速に導
き他の材料に伝えあるいは空気中に放射する。
イヤモンドといっても製造法によってその熱伝導率が甚
だしく異なる。試料によって、2倍あるいは3倍の違い
があることもある。この点で温度が同じであれば熱伝導
率がほぼ同じになる金属などとは違う。
くのか?大面積のダイヤモンドは現在のところ気相合成
法によって作製される。気相合成法といってもさまざま
の方法がある。おなじ方法であっても基板温度、基板の
表面状態、ガスの圧力、ガスの流量などの条件によって
も製品のダイヤモンドの膜質は大きく異なる。硬度、靱
性、耐摩耗性、絶縁性などが違う。レ−ザなどの冷却素
子として利用しようとする場合は特に熱伝導率が問題に
なる。熱伝導率が低いダイヤモンドではあまり有用でな
い。熱伝導率の値は特に重要な因子になる。ダイヤモン
ドの熱伝導率を厳密に評価しなければならない。
高い物質の熱伝導率評価は非常に困難である。熱伝導率
が高いことや形状的制約のため直接測定が困難である。
そこでもっと測定し易い他の性質と関連づけて熱伝導率
を評価したいものである。
の結晶性によって影響されると考えられている。ダイヤ
モンドの結晶性は一般にラマン散乱分光法によって評価
される。ラマン散乱分光法において、ダイヤモンド結晶
は1332cm-1にピークを有する。ダイヤモンドの結
晶性が優れているほどこのピークは鋭く半値幅(FWH
M)が狭くなる。ピークの高さと半値幅の狭さによって
ダイヤモンド結晶性を評価できる。熱伝導率を下げる要
因について明確な知見が得られていないが、結晶性と熱
伝導率には相関があると考えられている。そこでラマン
散乱の半値幅と熱伝導率の間には強い関係があるとし、
ラマン散乱半値幅によって熱伝導率の大体の評価が可能
であるとする意見も出されている。
-3713 これは合成速度を極力抑えることによって時間を掛けて
ダイヤモンド結晶を作製している。そして、ラマン散乱
の1332cm-1ピークの半値幅が1.5cm-1〜1.
9cm-1という高品質のダイヤモンドを作製できたとい
う。その熱伝導率が20W/cmKであったと述べてい
る。すばらしく高い熱伝導率のダイヤモンドである。こ
の結果からも結晶性に優れると熱伝導率も高くなるらし
い。さらにこの文献は、熱伝導率の異方性についても指
摘している。面方向の熱伝導率と厚み方向の熱伝導率と
は値が違う、というのである。
ヤモンドであるのに熱伝導率の異方性があるのは奇妙で
ある。これは結晶方位による異方性ではなく基板との関
係による異方性である。
ンドは成長方向(厚み方向)に長く延びた柱状結晶とな
る、それで厚み方向と面方向(厚みと直交する)では熱
伝導率が相違するのであると説明している。つまり厚み
方向には粒界をあまり越えずに熱が伝わるので熱伝導率
が高くなり、面方向には多くの粒界を越えなくてはなら
ないので熱が伝わり難いというものである。これは結晶
そのものの異方性でなく結晶形状の異方性による熱伝導
率異方性である。通常の気相合成ダイヤモンドはそのよ
うな高い熱伝導率を示さないし等方性の熱伝導率を持
つ。しかし高い熱伝導率の場合異方性が現れるというこ
とである。それは新しい発見であった。
散乱の半値幅が7cm-1〜15cm-1のダイヤモンドを
作製したところ、熱伝導率が10W/cmK以上であっ
たということを述べている。またラマン散乱の半値幅に
よって熱伝導率のおおよそを評価できるという考えをと
っている。
狭い高品質のダイヤモンドが高い熱伝導率を持つという
ことはほぼ事実のようである。しかし高品質ダイヤモン
ドを気相合成によって作るには合成速度を極端に遅くす
るしかない。原料ガス中の炭化水素の濃度を低くし励起
源のパワーも抑えつつ時間を掛けて薄いダイヤモンド膜
を合成すると品質の優れたダイヤモンドを気相合成でき
る。しかし低速合成は当然に製造のコストを押し上げ
る。ダイヤモンドはもともと高価であるが、そのような
方法によって作ったものはより一層高価になる。レ−ザ
など比較的安価な半導体素子のヒートシンクにはとても
使えない。高品質のダイヤモンドをより安価に作るとい
うことが強く望まれる。
いて熱伝導率が10W/cmKを越えるダイヤモンドの
製造方法を提案している。しかしその後ヒートシンクな
ど半導体基板に対する熱伝導率の要求はますます厳しく
なってきた。現在では13W/cmK以上の熱伝導率が
要求されている。
より安価に製造する事が希求されているのである。高熱
伝導率ダイヤモンドをより安価に製造する方法を提供す
る事が本発明の目的である。本発明者は、より高熱伝導
率のダイヤモンドをより安価に得るために鋭意検討実験
を重ねた。
は、合成速度の指標として単位時間当たりの成長膜厚
(μm/hr)ではなく、単位時間単位投入電力量当た
りの合成重量(g/hrkW)を採用する。たとえ同一
の条件で合成しても、基板の大きさ、投入電力によって
成長膜厚は変動する。合成コストの指標としては役に立
たない。合成コストを評価するには、一定エネルギーに
よってどれだけの分量のダイヤモンドが合成できるのか
という値によらなければならない。エネルギーは時間と
パワー(電力)の積である。それで単位時間単位投入電
力でダイヤモンド重量を割った値g/hrkWがコスト
の指標になるのである。
ってダイヤモンドの合成実験を行い、合成したダイヤモ
ンドを様々の角度から評価した。そして適当な条件にお
いて、基板の上にダイヤモンドの多結晶が柱のように成
長するが、その柱状結晶は成長と共に次第に数が減り寸
法が大きくなってくるという事が分かった。そして結晶
の粒子が小さいほど熱伝導率が低いということも分かっ
てきた。つまり結晶粒子を大きくすると熱伝導率も大き
くできるのである。
な手順よりなる。 (1)基板を用意する工程と、(2)気相合成法により
ダイヤモンドを基板の上に成長させる工程と、(3)ダ
イヤモンド成長面を研磨する工程と、(4)基板を除去
する工程と、(5)ダイヤモンドの基板側の一部を5μ
m以上研削する工程。
って成長させ、成長面側Gのダイヤモンドをまず機械研
削あるいはレ−ザによって研削する。つぎに基板を除去
する。これは基板をエッチングなどによって化学的に除
くか、或いは基板を研削し機械的に除去するか何れであ
っても差し支えない。ダイヤモンドの自立膜になる。基
板面側Bが露呈する。これを機械的研削あるいはレ−ザ
による研削によって、底面の部分を少なくとも5μm除
去する。
面側Bも研削するから両面が平坦平滑なダイヤモンド板
になる。ここで基板面側Bというのは基板に付着してい
た方の面ということであり、基板を除去する事によって
初めて露出する面である。既に基板は取り除かれている
が基板が付いていた面ということで基板面側Bというこ
とにする。反対側の面が成長面側Gである。
発明の特徴を顕著に示している。その理由を述べる。基
板の上に柱状の多結晶が成長するが結晶の直径が基板か
ら遠ざかるに従って大きくなる。基板側は結晶粒が小さ
いが徐々にこれが大きくなるのである。そこで一旦ダイ
ヤモンドを成長させ基板から取り除いた後、基板に付着
していた側を研削し除去すると粒径の小さい部分のダイ
ヤモンドがなくなる。
粒界が熱伝導率を下げているのであるから粒界を減らす
と熱伝導率を上げることができる。本発明は基板側を削
る事によって結晶粒の小さい部分を除去し熱伝導率を上
げるようにしている。前記の(5)の工程にはそのよう
な意味がある。図2は、本発明のダイヤモンド膜の柱状
結晶の断面図である。図1の従来例のダイヤモンド膜と
比較すると基板面側の粒径がかなり大きくなっているこ
とが分かる。
て、次の条件を課すと一層良い。 (a)窒素ガス濃度を全ガス中に於いて原子比で50p
pm以下に抑える。 (b)最初の10μm〜50μmの厚みまでは、単位時
間単位投入電力当たり4mg/hrkW以下で成長さ
せ、それ以後の成長速度を5mg/hrkW以上の速度
で成長させる。つまり成長速度をVとすると、前期速度
Viと後期速度Veがあって、Vi≦4mg/hrk
W、Ve≧5mg/hrkWとするのである。
VD法が最適である。窒素ガスはダイヤモンドの性質を
劣化させるので原料ガス中に全く含まれないというのが
最も望ましい。しかし窒素ガスは市販の水素や炭化水素
ガスには必ず含まれる不純物である。(a)は不純物で
ある窒素を50ppm以下にして劣化を抑制する事とい
う意味である。(b)は成長速度を速くしてコストを下
げるため後半での速度を高めるということである。
て、特に、 (d)基板面側を20μm以上研削するとより熱伝導率
を増加させることができる。 (e)レ−ザ光線による平面研削がより望ましい。
ンドは次の性質を持つ。 (イ)膜厚方向の熱伝導率κtが13W/cmK以上で
ある。 (ロ)基板側のダイヤモンド結晶の粒径σbが4μm以
上である。より好ましくは10μm以上である。 (ハ)ラマン散乱分光法におけるダイヤモンドのピーク
(1332cm-1)の半値幅が4cm-1以上であっても
良い。 (ニ)さらにκt≧17W/cmK、κl≧14W/c
mKであることが望ましい。κt>1.2κlという強
い異方性を持つと更に良い。
モンドをヒートシンクを初めとする半導体基板製品に利
用しようとする時、熱伝導率が大きいということが重要
である。特に膜厚方向の熱伝導率の高い事が必須であ
る。本発明は既に述べたように、高熱伝導率のダイヤモ
ンドを低コストで製造する事を目的にしている。膜厚方
向と面平行方向の熱伝導率異方性がどうして発生するの
か?これに対する考察から膜厚方向の熱伝導率をさらに
増進するような改良の方途を見つけることができよう。
状の結晶の集合である。それぞれの柱状結晶は徐々に太
く成長してゆく。もちろん結晶の数は成長方向に減少し
てゆく。つまり初め存在した柱状結晶は次第に姿を消
し、いくつかの柱状結晶が有力になってさらに肥大して
行く傾向にある。つまり基板近くでの結晶粒径は小さく
結晶の密度が高い。基板から離れるに従って結晶粒径は
大きくなり結晶の数は減ってくる。柱状であるという性
質は保存される。柱状であるから基板に直交する方向の
熱伝導率κtは、基板平行な方向の熱伝導率κlよりも
大きい。κt>κlである。
着目した。B側の結晶粒径を制御する事によって、κt
を向上させることができるのではないか?さらにB側に
結晶粒径の問題を克服すればより高速により安価に高熱
伝導率ダイヤモンドを合成できるのではないかと考え
た。
しており、基板側Bで結晶粒が小さいという事が分かれ
ば、基板側Bでの結晶粒を大きくすれば良いはずであ
る。基板側の結晶粒径を制御する事によってκtの大き
いダイヤモンドを得る事ができるはずである。
であれば、κt≧13W/cmKとする事ができる、と
いうことを本発明者は発見した。基板側平均粒径σbを
さらに大きくする事によってκt≧17W/cmKにす
ることすら可能である。好ましくは基板側Bでの粒径σ
bを10μm以上とする。粒径はSEM(走査型電子顕
微鏡)観察によって求める事ができる。
Kというふうに本発明の内容を単純に表現する事ができ
る。σb≧10μmなら更に良い。基板から成長し始め
るときは粒径が小さい。4μm以上という訳にいかな
い。柱状成長するから多結晶の粒径は次第に大きくな
る。そこで成長後に基板側を研削して除去し小さい粒径
の多結晶を除くのである。
導率の相関が従来考えられているものほどには強くない
ということをも明らかにする。従来法は、半値幅(FW
HM)が小さい程結晶性が優れ、それが高熱伝導率と等
価であるとしていた。結晶性に優れたダイヤモンドは低
速度で時間を掛けて合成する他に途はなかった。しかし
本発明者はそのような思想が全面的には正しくないと思
う。ヒートシンクとして使うためにはκtが大きければ
良い。つまり膜厚方向に結晶性が大きく長くあれば良
い。面方向にはたくさんの粒界があってもκtにはあま
り影響しない。
幅が小さいということは膜厚方向にも面方向にも結晶性
が優れていることを意味する。しかし高熱伝導率は膜厚
方向だけでよいのである。するとラマン散乱の半値幅が
それほど小さくなくても(前記の1.5〜1.9cm
-1等と比べて)、厚み方向には高い熱伝導率を賦与でき
る。だから本発明では、ラマン散乱1332cm-1のピ
ーク半値幅が4cm-1より大きくても良いという事が分
かった。
る。κtもκlも大きくなくてはいけないということで
あればのように半値幅は2cm-1より小さくなければ
いけないであろう。しかし本発明は特にκtだけ大きけ
れば良いから、半値幅が4cm-1以上であることを許容
する。結晶性に対する制限が緩和されるから成長速度を
より高くできる。
まりに結晶性質が悪いとκtも小さくなってしまう。半
値幅FWHMの許される上限は10cm-1である。つま
り、4cm-1≦FWHM≦10cm-1である。本発明は
基板に関するダイヤモンドの熱伝導率の異方性を利用す
る。異方性を利用するから、当然にκt>κlである
が、より望ましくは、2割以上κtが大きくなるのがよ
い。κt>1.2κlである。
方向の熱伝導率が高いことによる熱伝導率向上効果が小
さくなる。厚すぎるとコストが上がり好ましくない。2
50μm〜1000μmが好ましい。これは基板側を研
削して除去した後の厚みである。
ように次のような手順よりなる。 (1)基板を用意する工程と、(2)気相合成法により
ダイヤモンドを基板の上に成長させる工程と、(3)ダ
イヤモンド成長面を研磨する工程と、(4)基板を除去
する工程と、(5)ダイヤモンドの基板側の一部を5μ
m以上研削する工程。以下にそれぞれの工程について詳
細に述べる。
は気相合成法によってその上にダイヤモンドを成長させ
ることができるものであればどのようなものであっても
良い。例えば、シリコン、モリブデン、Ni、Pt、I
r等を基板とすることができる。単結晶でも多結晶でも
よい。
長させる工程(図4、図5)]この工程はできるだけ高
純度、高品質のダイヤモンドを安価に合成できる方法で
なければならない。合成方法は熱フィラメントCVD
法、火炎法、マイクロ波プラズマCVD法などが適す
る。特に高純度のダイヤモンドを合成できることからマ
イクロ波プラズマCVD法が最適である。
側Bのダイヤモンド粒径をできる限り大きくする必要が
ある。こうした要求に応えるためには次のような2段階
成長が好適である。
さになるまで、単位時間(hr)単位電力(kW)当た
り4mg/hrkW以下の低速で成長させる(図4)。
それ以後は5mg/hrkW以上の高速で成長させる
(図5)。Vi≦4mg/hrkW、Ve≧5mg/h
rkWとするのは次の理由による。
コストは下がる。しかし成長初期の基板上に発生する結
晶粒が極めて小さくなる。結晶粒が小さいと熱伝導率が
低くヒートシンクとして適さない。少なくとも成長の初
期は低速で成長させる必要がある。しかし反対に終始低
速成長させるとコストが嵩むのでやはりヒートシンクに
は使い難い。
低速成長させ基板に粒径の大きい結晶からなる膜を付け
て置く。これは基板と垂直な方向に延びる柱状の結晶の
集合である。一旦粒径の大きい膜ができると成長速度を
上げても結晶粒が小さくはならない。柱状を保持したま
ま結晶粒径は増加し続ける。この切り替えが巧妙なとこ
ろである。結果として高速成長であるにも拘らず粒径の
大きい柱状の結晶粒よりなる稠密な膜を生成することが
できる。高速成長によって膜厚を増やすことができるか
ら製膜のコストを下げることができる。
1mg/hrkW≦Vi≦4mg/hrkWが望まし
い。2段目の成長速度Veはより好ましくは5mg/h
rkW≦Ve≦15mg/hrkWである。
伝導率のダイヤモンドを合成するには、ガスに窒素ガス
ができるだけ含まれない方が良い。窒素は気相合成ダイ
ヤモンドの品質を落とすということに本発明者は気づい
た。メタンガスなどの炭化水素ガスや水素ガスを原料ガ
スとして使うが、その中には幾ばくかの窒素を含む。市
販のガスには窒素が不純物としてかなり含まれる。窒素
は一般に不活性であるから不純物として多少含まれてい
ても差し支えないように感じられている。しかしそうで
ない。窒素はダイヤモンド合成には悪影響を及ぼす。市
販のガスが多くの窒素を含む場合は更に精製して50p
pm以下にする必要がある。
(図6)]気相合成法によって作られたダイヤモンドは
表面が結晶粒の自形(本来の結晶形状)に象られている
ため、夥しい起伏がある。凹凸が甚だしいのでそのまま
では使用できない。そこでダイヤモンド砥粒を分散させ
た回転する研磨板を有する研磨装置によってダイヤモン
ド成長面側Gを研磨する。ダイヤモンドを研磨するので
あるからダイヤモンド砥粒を使うしかない。この研磨に
よって表面粗さがRmax1μm以下に仕上げる。
ば酸によって基板を溶解除去する。酸の種類は基板に依
存する。或いは基板を研磨によって除去する事も可能で
ある。ダイヤモンドだけからなる自立膜を得る。最終的
な厚みが250μm〜1000μmになるのであるか
ら、それに削り代を加えたものがこの時のダイヤモンド
厚みになっている。
程(図8)]以上に述べた方法で作ったダイヤモンドは
基板から直角に延びる柱状の結晶の集合である。基板に
接触する部分Bの結晶粒は比較的小さく基板から離れる
にしたがって粒径が大きくなる。結晶粒密度は減ってい
く。そこで基板に近い部分を除去すると結晶粒の大きい
基板から離れて生成された部分だけが残る。基板側の除
去厚みが大きい程、残った結晶の粒径は大きい。つまり
熱伝導率が高い。熱伝導率を高くするだけなら、基板側
Bの除去量が多い方が良い。しかしそうするとダイヤモ
ンドの損失も増える。除去量はは少なくとも5μmとす
る。より好ましくは25μm〜100μm除去する。
る。しかし硬質のダイヤモンドを機械研削するのは工具
の制約もあり時間も掛かる。レ−ザ光線を線状に集光し
てダイヤモンド基板側をスキャンすることによって光学
的に研削することもできる。YAGレ−ザによって光学
的に研削できる。加工精度の観点から最も良いのはエキ
シマレ−ザである。
Eを異なる方法によって作製した。そしてこれらの試料
の基板側の結晶粒径σb、基板面側Bと成長面側Gでの
ラマン散乱の1332cm-1のピークの半値幅、膜厚方
向熱伝導率κt、面方向熱伝導率κl、κt/κl比、
ダイヤモンド膜厚、除去量等を測定した。
ィラメントCVD法による合成を意味する。試料AとB
は速度を2段階に分けている。成長速度を変える為に基
板温度とメタンの濃度を変動させる。速度を速くする為
には基板温度を上げメタン濃度を上げる。ここではCO
も原料に使うのでCO濃度も速度制御の為に利用され
る。試料C、D、Eは成長速度が一定である。
基板側を削るのであるがその深さが違う。もともとの厚
みが300μmであり研削量が0μm、15μm、45
μmとなるから、最終的な厚みが300μm、285μ
m、255μmになる。個々の例について説明する。
ズマCVD法により条件を2段階に切り替えてダイヤモ
ンド膜を成長させた。1段階は基板温度が900℃、メ
タンガス量が18sccm、CO量が6sccmであ
る。ガス中の窒素濃度は50ppm以下であることを確
かめた。基板温度が比較的低く供給炭素濃度も低い。た
めに成長速度が遅くなる。この条件で50hr成長させ
た。実測によると単位時間単位電力あたり成長速度は
1.5mg/hrkWで低速の成長であった。
ス量が42sccm、CO量が18sccmである。基
板温度が高く炭素の量も多い。この条件で90hr成長
させた。成長速度は9mg/hrkWの高速の成長であ
った。成長面側(表面)を研磨した。この状態で膜厚が
300μmである。Si基板を酸によって溶解除去し
た。こうしてダイヤモンドは自立膜になる。基板側の研
削を行わなかった。つまり基板側というのは最初に核発
生した部分である。
乱、結晶粒径測定、熱伝導率測定を行った。結晶粒径の
測定はSEM(走査型電子顕微鏡)によって基板側面を
観察し、平均粒径を計算した。熱伝導率の測定は、膜厚
方向(κt)にはレ−ザフラッシュ法によって行い、面
平行方向(κl)には定常比較法の原理によって測定し
た。
値幅(FWHM)は基板側Bで4.4μm、成長面側G
で5.1μmであった。FWHMは結晶の質を反映し小
さいほど質が良いという事である。成長面側は最終段階
で成長した部分である。高速成長しているにも拘らずそ
れほど結晶性が低下していない。
すると平均が7μmであった。かなり大きい結晶粒が多
いということである。基板側を研削しなかったにも拘ら
ず結晶粒が大きい。これは1.5mg/hrkWという
低速の成長に起因するものであろう。
19.3W/cmKと極めて大きい。レ−ザヒートシン
クに対する最新の要求である13W/cmKを軽く凌駕
する。面方向のκlは14.2W/cmKでありこれも
十分に高い値である。κt/κlは1.359であって
熱伝導率に強い異方性のある事が分かる。
与えることができる。これは成長の条件を適切な2段階
に分けているからである。1段階でゆっくりと大きい結
晶粒のものを成長させているので熱伝導率が大きいので
ある。2段階は高速成長させてコストを下げている。こ
のようなものであれば基板側を研削する必要がない。
ラズマCVD法によって2段階法によりダイヤモンド膜
を合成した。1段階は基板温度は850℃でメタン量は
16sccm、CO量は4sccmであって炭素量が少
ない。これで30hr成長させた。速度は3.2mg/
hrkWであり低速の成長である。次の2段階は基板温
度を980℃に上げる。メタン量は42sccm、CO
量は18sccmである。これで80hr成長させた。
速度は8.3mg/hrkWであり高速の成長である。
的に研磨して平滑にした。酸によってSi基板を溶解除
去した。ダイヤモンド自立膜を得た。これの厚みは30
0μmであった。裏面(基板側)を研削することの効果
を確かめるために同じ条件で作った300μm厚みのダ
イヤモンド膜をそれぞれ研削深さ0μm、15μm、4
5μmになるように研削した。研削はエキシマレ−ザを
線集光し表面をスキャンすることによって行った。ラマ
ン散乱のピークのFWHMは基板側で約4.2cm-1、
成長面側(表面側)で4.8cm-1であって裏面研削の
影響はあまりない。
が現れる。研削しないとき基板面側の結晶の平均粒径は
2μmである。基板側を15μm削り取ると露呈下部分
の平均粒径は5μmに増える。約2倍以上にもなる。基
板側を45μm削り取ると新たに露出した部分の平均粒
径は12μmにもなる。裏面研削の顕著な効果が如実に
分かる。
す。裏面を削らないときκt=15.7W/cmK、κ
l=14.8W/cmKである。異方性は1.061で
小さい。これ自体要求水準の13W/cmKを越えてい
るから満足できる値である。しかし裏面を研削除去する
とさらに熱伝導率を上げることができる。基板面側を1
5μm研削除去すると、κt=17.4W/cmK、κ
l=15.4W/cmKに増える。異方性も1.130
に増える。裏面を45μm削り取るとκt=20.9W
/cmK、κl=16.7W/cmKとなる。異方性も
1.251に増える。
ラズマCVD法によって、1段階でダイヤモンド膜を作
った。基板温度を低く炭素の濃度も低くし時間を掛けて
成長させた。基板温度は880℃、メタン流量は16s
ccmである。CO流量は6sccmである。ガス流
量、温度、圧力は終始一定である。成長速度は遅い。7
00時間(hr)かけて製膜した。成長面側を研磨して
平坦にした。酸によって基板からダイヤモンド膜だけを
除いた。膜厚は300μmである。成長速度は1.5m
g/hrkWである。基板側を研削しなかった。
晶の性質は優れている。ラマン散乱の半値幅が基板側で
3.2cm-1、成長面側で3.6cm-1であった。基板
側の結晶粒の大きさは6μmでかなり大きい。熱伝導率
は大きくκt=19W/cmK、κl=16.5W/c
mKで優れている。κt/κl=1.152である。時
間を掛けた成長であるので結晶粒が大きい良質のダイヤ
モンド膜を得る事ができるが時間が掛かりすぎてコスト
高になる。
ラズマCVD法によって、1段階でダイヤモンド膜を成
長させた。試料Cとは反対の条件を選んだ。基板温度は
高くし炭素濃度も高め成長速度を速くした。メタン供給
量は48sccm、CO量は22sccm、水素量は5
76sccmである。基板温度は1000℃にして40
時間製膜した。短時間の合成である。表面を研磨し平坦
平滑にした。酸によってSiを溶解除去しダイヤモンド
の自立膜を得た。厚みは300μmであった。
11.8mg/hrkWである。ラマン散乱の1332
cm-1ピークの半値幅は基板側で10.8cm-1、成長
面側で7.4cm-1である。結晶品質が劣る。基板側の
結晶粒の平均直径は0.5μmで極めて小さい。熱伝導
率はκt=12.8W/cmK、κl=10.5W/c
mKである。面方向の熱伝導率が特に悪い。異方性も強
くてκl/κt=1.219である。成長が速すぎて結
晶粒が小さく、粒界が多いので熱伝導が良くないのであ
る。
VD法によって1段階でダイヤモンド膜を製膜した。基
板温度を低くしメタン量も減らす。成長速度はこれによ
って下がる。しかし水素量も減らすので成長速度は試料
Cよりも速い。メタン流量は4sccm、水素量は20
0sccmとガス量が少ない。基板温度は750℃でこ
れらの試料では最低の温度である。圧力は100Tor
rである。製膜時間は250時間である。表面を研磨し
て平滑にした。
は300μmである。基板側の研削をしなかった。平均
成長速度は3.3mg/hrkWである。基板側の結晶
平均粒径は1.3μmであり小さい結晶から成り立って
いる事が分かる。半値幅は基板側も成長面側も5.8c
m-1である。熱伝導率はκt=13.8W/cmK、κ
l=13.9であった。κt/κl=0.993であっ
て、異方性が殆どない。
ように高温で高濃度のメタンを流して高速成長させたも
のはラマン散乱半値幅からしても結晶性が悪い。結晶性
が悪いと熱伝導率も低い。ダイヤモンドヒートシンクに
要求される13W/cmK以上という条件を満足しにく
い。反対に試料Cのように低メタン濃度、低基板温度で
成長させるとラマン散乱半値幅(4cm-1以下)からみ
て優れた結晶ができているという事が分かる。熱伝導率
も大きくてヒートシンクに使える。しかし製造コストが
高くなりすぎて、実際にはヒートシンクなどには使えな
い。試料EはフィラメントCVD法によるがこれも熱伝
導率はあまり高くない。
い(結晶性が良い)ということと、熱伝導率が大きいと
いう事は相関があるが、それだけではなくて、粒径が大
きいということが重要である。結晶性を高めるには時間
を掛けてゆっくり製膜するしかない。しかし熱伝導率κ
tに直接関係するのは面垂直方向に存在する粒界の数で
あってこれを減らすためには必ずしも結晶性そのものを
高める必要がない。試料A、Bのように初め低速成長で
大きい粒径の核を発生させ、次いで高速成長して柱状成
長の幅を広げてゆくと、面と直角の方向には高い熱伝導
率を持つものが得られる。2段階では高速の成長を行う
から全体としての時間は短縮される。
伝導率のダイヤモンドを製造する事ができる。2段階の
高速の成長はコストを下げるだけでなく熱伝導率の異方
性κt/κlをも高めることができる。
小さい結晶粒の部分を除き大きい結晶粒の部分を露呈さ
せるから、さらに熱伝導率を上げることができる。試料
Bの基板側面研削は顕著な熱伝導率増加を示す。試料A
でも基板側を除去すればさらに熱伝導率を上げることが
できる。
め低速度で気相合成して粒径の大きい結晶を核発生さ
せ、次いで高速度で気相合成して厚み方向に柱状結晶の
粒径を増大させ、基板を除去した後、基板側を研削する
ので、基板側の結晶粒の小さい部分が除かれる。結果と
して結晶粒の大きい柱状結晶の集合としてのダイヤモン
ドが得られる。
伝導率κtが13W/cmK以上になる。2段階目での
成長速度は大きいので成長速度はかなり大きく合成のコ
ストも下げられる。従来のように熱伝導率を上げるには
成長速度を下げるという方法によらないので、膜厚方向
に高熱伝導率を持つダイヤモンドを低コストで作製する
ことができる。
に利用し厚み方向の熱伝導率を特に高めるようにした。
結晶性そのものを高揚するのではないから低速成長でな
くても良い。結晶性を強く反映するラマン散乱のピーク
の半値幅が4cm-1〜10cm-1であってもκtは十分
な大きさになり得る。
トシンクなどは板厚方向の熱伝導率が高いという事が特
に重要であるが、本発明のダイヤモンドはそのような用
途にぴったりである。レ−ザの冷却能力を増強できるか
ら結果としてレ−ザの高性能化、低価格化に大きく貢献
できる。
ド膜の柱状成長を示す断面図。
って製作したダイヤモンド膜の柱状成長を示す断面図。
の断面図。
を低速に成長させたものの断面図。
速に成長させたものの断面図。
断面図。
Claims (9)
- 【請求項1】 ラマン散乱分光法における波数1332
cm-1のダイヤモンドのピークの半値幅が4cm-1以上
であって、厚み方向の熱伝導率をκtとし、面内方向の
熱伝導率をκlとした時、κt≧κlかつκt≧13W
/cmKであることを特徴とする気相合成ダイヤモン
ド。 - 【請求項2】 κt≧κl×1.2であることを特徴と
する請求項1に記載の気相合成ダイヤモンド。 - 【請求項3】 成長面側の面と基板側の面とに露出する
結晶粒の平均粒径を比較して小さい方の面において、そ
の平均粒径が4μm以上であることを特徴とする請求項
1に記載の気相合成ダイヤモンド。 - 【請求項4】 κt≧17W/cmKかつκl≧14W
/cmKであることを特徴とする請求項1に記載の気相
合成ダイヤモンド。 - 【請求項5】 基板を用意する工程と、気相合成法によ
りダイヤモンドを基板上に成長させる工程と、ダイヤモ
ンド成長面を研磨する工程と、基板を除去する工程と、
ダイヤモンドの基板側の一部を5μm以上研削する工程
を含む事を特徴とする気相合成ダイヤモンドの製造方
法。 - 【請求項6】 気相合成法によりダイヤモンド膜を成長
させる工程において、窒素ガス濃度が全ガス中に原子比
50ppm以下であり、最初の10μm〜50μmの膜
厚までは投入電力あたりの成長速度が4mg/hrkW
以下で成長させ、それ以後を投入電力あたり成長速度5
mg/hrkW以上で成長させることを特徴とする請求
項5に記載の気相合成ダイヤモンドの製造方法。 - 【請求項7】 ダイヤモンドの基板面側を20μm以上
研削することを特徴とする請求項5に記載の気相合成ダ
イヤモンドの製造方法。 - 【請求項8】 レ−ザ光線を用いた平面研削によってダ
イヤモンド基板面側を研削する事を特徴とする請求項5
に記載の気相合成ダイヤモンドの製造方法。 - 【請求項9】 ダイヤモンドを成長させる気相合成法
が、マイクロ波プラズマCVD法であることを特徴とす
る請求項5に記載の気相合成ダイヤモンドの製造方法。
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- 1996-09-03 JP JP25387396A patent/JP3951324B2/ja not_active Expired - Fee Related
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