JPH1076660A - インクジェットプリント装置 - Google Patents

インクジェットプリント装置

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JPH1076660A
JPH1076660A JP9183614A JP18361497A JPH1076660A JP H1076660 A JPH1076660 A JP H1076660A JP 9183614 A JP9183614 A JP 9183614A JP 18361497 A JP18361497 A JP 18361497A JP H1076660 A JPH1076660 A JP H1076660A
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JP
Japan
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ink
printing apparatus
liquid
movable member
heating element
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JP9183614A
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English (en)
Inventor
Toshiyuki Yanaka
俊之 谷中
Toshio Kashino
俊雄 樫野
Yoshie Asakawa
佳恵 浅川
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Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
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Publication date
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    • GPHYSICS
    • G06COMPUTING; CALCULATING OR COUNTING
    • G06KGRAPHICAL DATA READING; PRESENTATION OF DATA; RECORD CARRIERS; HANDLING RECORD CARRIERS
    • G06K15/00Arrangements for producing a permanent visual presentation of the output data, e.g. computer output printers
    • G06K15/02Arrangements for producing a permanent visual presentation of the output data, e.g. computer output printers using printers
    • G06K15/10Arrangements for producing a permanent visual presentation of the output data, e.g. computer output printers using printers by matrix printers
    • G06K15/102Arrangements for producing a permanent visual presentation of the output data, e.g. computer output printers using printers by matrix printers using ink jet print heads
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/21Ink jet for multi-colour printing

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  • General Physics & Mathematics (AREA)
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  • Ink Jet (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Printers Characterized By Their Purpose (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェットプリント装置において、画像
における背景等、下地となる部分の色の均一性が良好な
プリントを行う。 【解決手段】 吐出量の少ない高解像度ヘッド1001
Hと吐出量の多い低解像度ヘッド1001Lを用いると
ともに、画像分離部1009によりプリントすべき画像
について、下地となる部分とそれ以外の部分に分離し、
下地については画像処理部1008および、ヘッド制御
部1006による処理を介して低解像度ヘッド1001
Lによりプリントを行う。これにより、下地については
大ドットが形成されるため、ドット間のすき間の部分が
少なくなり、下地の色を均一なものとすることができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインクジェットプリ
ント装置に関し、特に布等の繊維に対しインクを吐出し
てプリントを行う捺染装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】液状のインクにより記録を行うインクジェ
ット記録方式として各種の手段が提案され、実用化され
ている。
【0003】インクジェット記録方法は、現在一般に知
られている各種記録方式の中でも、記録時に騒音の発生
がほとんどないノンインパクト記録方式であって、かつ
高速記録が可能であり、しかも普通紙に特別の定着処理
を必要とせずに記録が行える等々の利点を持っており、
近年著しい発展を遂げている。その中でも近年の著しい
情報処理技術の進歩の中で、コンピュータやファクシミ
リ、ワードプロセッサ等の出力装置としてもインクジェ
ット記録方式を採用したものが広く普及してきている。
【0004】これらの利点を生かし、従来から利用され
ていた普通紙に対する記録に加え、それ以外の各種記録
媒体への記録にも応用が提案されてきている。中でも、
布帛への捺染に対する展開は注目されている。
【0005】インクジェット捺染方式は、従来のスクリ
ーン捺染方式のようにスクリーン版の作製や版の位置合
せ等の煩雑な工程を必要とせず、また、プリントする画
像の作製、修正等の取扱いが容易であるなどの利点を有
している。
【0006】一方、このような利点を有するインクジェ
ット捺染方式とスクリーン捺染方式の利点を有効に利用
できる、両方式を併用する複合捺染方式も十分に考慮で
きる一つの方式である。すなわち、スクリーン捺染方式
によれば、インクジェット捺染方式に比べ、プリントす
べき画像における例えば背景となる部分の色を均一にプ
リントでき、また、濃度変動の少ないいわゆる空間周波
数の小さい画像領域でのざらつき感を呈することも少な
い。さらに、背景色等の高濃度プリントも容易に実現す
ることができる方式である。
【0007】以上のように、インクジェット捺染方式と
スクリーン捺染方式の利点を適切に利用した複合捺染方
式は、有効な捺染方式として考慮されるものであり、特
にスクリーン方式の上述した利点は、プリントされた布
等がその後工程を経て、被服等の付加価値の高い商品と
なる場合には、特に重要な点である。しかし、スクリー
ン捺染方式は、以上のような利点を有するものの他方に
おいて、基本的には前述したように種々煩雑な工程を必
要とするものであり、このような工程を省略できること
は捺染システムにおいてさらに望ましいことである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の複合
捺染方式においてスクリーン捺染方式が適用される部分
についても、インクジェット捺染方式を用い、しかもス
クリーン捺染の利点を損わないようにしたインクジェッ
トプリント装置を提供することを目的とする。
【0009】より具体的には、本発明は、均一性の良
い、背景等の下地色をプリントすること、空間周波数の
小さい部分でのざらつき感を抑制すること、下地色や高
濃度部等の高画質化を実現すること、および線画を強調
できる等、プリント特性を良好に実現できるインクジェ
ットプリント装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】そのために本発明では、
インクを吐出するインクジェットヘッドを用いてプリン
ト媒体にプリントを行うインクジェットプリント装置で
あって、プリントすべき画像の画像データに基づいて、
当該画像における所定の領域を判定し、該所定領域に対
応する画像データと所定領域以外の領域に対応する画像
データとに分離する画像分離手段と、該画像分離手段に
よって分離されたそれぞれの領域に対応する画像データ
に基づきインクジェットヘッドを駆動してプリントを行
う制御手段であって、前記所定領域における画素当りの
インク吐出量を前記所定領域以外のそれよりも多くする
制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【0011】また、インクを吐出するインクジェットヘ
ッドを用いてプリント媒体にプリントを行うインクジェ
ットプリント装置であって、インクジェットヘッドとし
て、第1のインクジェットヘッドと、該第1のインクジ
ェットヘッドとは吐出特性を異ならせた第2のインクジ
ェットヘッドとを用いるインクジェットプリントにおい
て、プリントすべき画像の画像データに基づいて、前記
第1のインクジェットヘッドを用いてプリントする領域
および前記第2のインクジェットヘッドを用いてプリン
トする領域をそれぞれ判定し、該判定の結果に基づいて
各々の領域に対応する画像データを分離する画像分離手
段と、各々の領域に対応する画像データに基づいて前記
第1のインクジェットヘッドおよび前記第2のインクジ
ェットヘッドを用いてプリントする制御手段と、を具え
たことを特徴とする。
【0012】以上の構成によれば、プリントすべき画像
において、例えば背景等の、一定の色または濃度でプリ
ントする所定領域が存在すると判断した場合は、その領
域については吐出量を多くしてプリントするので、プリ
ント媒体上に形成されるインクドットを元々大きく形成
できるとともに、さらにインクの滲みによってもドット
を大きくでき、これにより、ドット間のプリント媒体の
地の部分を可能な限り少なくすることができ、その結
果、背景の色を均一なものとすること、または濃度を増
すことが可能となり、特に、プリント媒体が布帛等の繊
維の場合でも同様に色の均一性等も得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施形態を詳細に説明する。
【0014】図1および図2は、本発明の一実施形態に
係るインクジェット捺染装置の概略構成を示すそれぞれ
側面図および斜視図である。
【0015】これら図において、4はプリント媒体とし
ての布帛であり、不図示のモータによって駆動される巻
出しローラ1310の回転に応じて巻出され、中間ロー
ラ1320,1330を介して搬送手段1200に至
る。搬送手段1200は、プリント部1100に対向す
る部位に設けられ、この搬送手段1200により実質的
に水平方向に搬送された後、送りローラ1214および
中間ローラ1520,1530,1540を介して巻取
りローラ1500によって巻取られる。
【0016】枠体1050の内部には、布帛4の搬送方
向に直交した方向に一対の平行なガイドレール1120
が配されている。このガイドレール1120上にはボー
ルベアリング1111を介してヘッドキャリッジ100
3が取付けられ、これにより、ヘッドキャリッジ100
3が上記一対のガイドレールに沿った主走査方向に往復
移動できるような構成となっている。なおヘッドキャリ
ッジ1003は、枠体1050の一側壁に固定された駆
動モータ(不図示)によって駆動ベルト(不図示)を介
して駆動される。また、ヘッドキャリッジ1003の内
部下面には、布帛1004に対して画像形成を行うため
のヘッドユニット1101が取付けられている。
【0017】ヘッドユニット1101には、布帛100
4の搬送方向と同一の方向に多数のインク吐出口を配列
したインクジェットヘッドが、インク色毎に上記主走査
方向と同方向に複数設けられている。さらに、後述され
たように、各インク色についてはプリント解像度が異な
る2つのヘッドが設けられている。このようなヘッドユ
ニット1101は、布帛1004の搬送方向において2
組設けられている。これら2組のヘッドユニット110
1は、布帛1004の搬送に伴ない同一の走査領域を走
査するように構成されているが、それらの走査の間にお
けるインク吐出によってそれぞれ形成されるドットの配
置は、例えばチェッカ模様のように相補的なものであ
る。
【0018】各ヘッドユニットのインクジェットヘッド
には、必要に応じて複数のインク貯蔵タンクユニット1
300からインク供給経路である各中継チューブ類10
30を介して種々のインクが供給されるように構成され
ている。これらのインク供給経路はヘッドキャリッジ1
003と同様に移動するので、移動のしやすさおよび破
損防止のためにキャタピラ内(不図示)に配置してい
る。
【0019】また、ヘッドユニット1101の主走査方
向の移動におけるホームポジションの下部には、キャッ
ピングユニット1200が設けられている。キャッピン
グユニット1200は、非プリント時に各ヘッドの吐出
口面に当接されるものであり、非プリント時に各ヘッド
がキャッピングユニット1200と対向する一であるホ
ームポジション位置へ移動し、これによりキャッピング
が行われるものである。
【0020】(実施形態1)上述したインクジェット捺
染装置において実施される本発明の第1の実施形態につ
いて以下に説明する。
【0021】図3は、第1の実施形態に係るインクジェ
ット捺染装置における、主に画像信号処理を説明する図
である。図において、1001Hは例えば360dpi
の密度でインク吐出口を配設した高解像度のインクジェ
ットヘッドを示し、1001Lは同様に180dpiの
密度でインク吐出口を配設した低解像度のインクジェッ
トヘッドを示す。これらのインクジェットヘッドは、前
述したように、布帛1004の搬送方向に沿って設けら
れる2組のヘッドユニット1101(図1,図2参照)
のそれぞれに設けられ、また、各インク色毎に設けられ
るものであるが、図3では説明の簡略化のために1組の
ヘッドユニットの1つのインク色についてのみ示す。ヘ
ッド1001Hは、相対的に吐出されるインク滴の体積
が小さく、これによりプリント媒体上には小ドットが形
成される。一方、ヘッド1001Lは相対的に吐出イン
ク滴の体積が大きくプリント媒体上に形成されるドット
は相対的に大きなものとなる。
【0022】本実施形態ではこの低解像度のヘッド10
01Lにより形成されるドットが次の条件を満たすよう
に、その吐出口密度および吐出量(吐出インク滴の体
積)を定める。すなわち、背景(以下、下地ともいう)
をプリントするときのように、ヘッド1001Lを用い
て100%デューティーのプリントを行うとき、形成さ
れるドット間のすき間が各ドットを形成するインク滴の
滲みによって埋められる程度の吐出量とする。より具体
的には、本実施形態の場合、ヘッド1001Lは比較的
低解像度の180dpiの吐出口配列を有しているが、
この解像度(密度)でドットが形成されたときに上記の
条件を満たす吐出量となるようにヘッド1001Lを設
計するものである。なお、従来より知られるインクジェ
ット方式のヘッドの場合、その吐出量を大きなものとす
る場合には、通常、吐出口密度は低く(低解像度に)な
るので、本明細書の説明では、吐出量が大であるヘッド
を低解像度ヘッドといい、一方、上記のような条件を満
たすことができない比較的小吐出量のヘッドを高解像度
のヘッドという。
【0023】本実施形態では、後述されるように、下地
をプリントする際にはヘッド1001Lを用い、これに
よって上述のようにドット間のすき間を埋めることがで
きるドットを形成し、プリント媒体の地が現われないよ
うにする。これにより、スクリーン方式と同様、下地色
の均一なプリントを行うことが可能となる。
【0024】再び図3を参照すると、解像度の異なる2
つのヘッド1001Hおよび1001Lは、それぞれ画
像処理部1007および1008で作製される吐出デー
タに基づきそれぞれのヘッド制御部1005および10
06によって駆動されてそれぞれのインク吐出を行う。
各画像処理部1007および1008でそれぞれ処理す
るデータは、後述されるように画像分離部1009によ
って所定の画像毎に供給される。
【0025】シーケンス制御部1012は、CPU、R
OM、RAM、I/O等からなり、ROMに格納された
プログラムに従い、本実施形態のインクジェット捺染装
置1019における各種信号処理および各部の動作を制
御する。すなわち、ホストコンピュータ1020から供
給される画像データはインターフェース部(I/F部)
1011を介して画像メモリ部1010に格納される。
また、キャリッジ1003の移動を行うためのキャリッ
ジモータ1014は、キャリッジ駆動部1013を介し
てその駆動が制御され、搬送ベルト1230を動作させ
るための搬送モータ1016は、搬送部1015を介し
てその駆動が制御される。1017は液晶パネル等の表
示部やキースイッチ等の操作部を有する表示/操作部で
ある。
【0026】以上の構成に基づくインクジェット捺染装
置1019の動作の詳細を以下に説明する。
【0027】まず、汎用インターフェース1011によ
って接続されたホストコンピュータ1020から、プリ
ントすべき画像データがインクジェット捺染装置101
9に供給される。ここで、供給される画像データは、パ
レットデータとパレットテーブルからなるものであり、
パレットデータは色をコード化して表わすデータであ
り、パレットテーブルはパレットデータと各インク色
(ここではK,C,M,Yとする)の濃度データとの対
応を示した変換テーブルデータである。例えば、黒はパ
レットデータ「01」と表され、これを各インク(K,
C,M,Y)の濃度データに展開すると(255,0,
0,0)になる。シーケンス制御部1012はI/F部
1011を介し画像データのうちパレットデータを画像
メモリ部1010へ、また、パレットテーブルを画像処
理部1007,1008にそれぞれ格納する。また、ホ
ストコンピュータ1020は、所定の下地色のパレット
データを供給し、このパレットデータは画像分離部10
09に格納されて、後述の画像分離に用いられる。さら
に、プリント形式(プリント幅、プリント調、拡大率
等)等をホストコンピュータ1020から指定できる
が、ここでは説明を省略する。
【0028】インクジェット捺染装置1019は、所定
の画像データについて上述のデータ転送/設定が終了す
ると、プリント可能状態になる。オペレータは、表示/
操作部1017からプリント開始キーを押すことで、プ
リント要求をシーケンス制御部1012に送り、シーケ
ンス制御部1012は、この要求に応じ、プリント可能
状態であれば、プリントシーケンスが実行される。プリ
ントシーケンスには、大きく分けて画像メモリ1010
から画像分離部1009、画像処理部1007および1
008、ヘッド制御部1005および1006、および
ヘッド1001H,100Lに至る画像信号の流れで示
されるシーケンスと、キャリッジ駆動部1013を介し
たキャリッジモータ1014の駆動によるキャリッジ1
003の走査シーケンスと、搬送部15を介した搬送モ
ータ1016の駆動による布帛1004の搬送シーケン
スと、各付属アクチュエータ(不図示)の動作シーケン
ス等があり、これらのタイミング制御をシーケンス制御
部1012が行う。
【0029】以下では、本実施形態の画像信号処理のシ
ーケンスについて説明する。
【0030】まず、本実施形態の画像分離に係る処理に
ついて図37を参照して説明する。画像メモリ1010
からパレットデータがプリント形式に応じて順次1画素
づつ出力され(ステップ101)、画像分離部1009
は、順次入力するこのパレットデータと予め設定されて
いる所定の下地色のパレットデータとが一致するか否か
を画素毎に判定する(ステップ102)。ここで、一致
すれば入力したパレットデータをそのまま画像処理部1
008へ出力し(ステップ103)、一方、画像処理部
1007へはパレットデータを予め定められた特殊コー
ドである「00」に変換して出力する(ステップ10
4)。また、ステップ102の判定で比較が不一致の場
合は、上記とは逆に入力したパレットデータをそのまま
画像処理部1007へ出力し(ステップ105)、画像
処理部1008へはパレットデータを上記と同様の「0
0」に変換して出力する(ステップ106)。以上の処
理について、全ての画素について処理が実行されたか否
かを判断し(ステップ107)、全ての画素について処
理が実行されたときは、本画像分離処理を終了する。
【0031】画像処理部1007および1008は、各
々順次送られてくるパレットデータをパレットテーブル
を用いて各インク色(K,C,M,Y)の濃度データに
変換(パレット変換と称する)し、その後の各画像処理
例えばガンマ補正、ヘッドシェーディング、2値化処理
等を行い、ヘッド制御部1005および1006にそれ
ぞれ2値データを送る。ここでのパレット変換は、ルッ
クアップテーブル(以下、LUTともいう)を用いて行
われる。このパレット変換において、上記所定の特殊コ
ード「00」に対しては、各インク色の濃度データは
(0,0,0,0)であり、空白のデータとなる。ヘッ
ド制御部1005および1006は、順次画像処理して
得られる2値データをヘッド駆動用信号(吐出データ)
に変換し、これに基づきそれぞれのヘッド1001Hお
よび1001Lを駆動し、各々の分離した画像を布帛1
004にプリントする。
【0032】画像処理部1008では、最終的には、上
述のように、低解像度用の2値データを生成するが、本
実施形態では画像分離部1009から供給されるデータ
は高解像度用の360dpiのデータであるため、18
0dpiのデータに変換する必要がある。図4(A),
(B)および(C)はこのデータの解像度変換を説明す
る図である。
【0033】図4(A)は画像メモリ部1010から供
給される360dpiの画像データを画素毎に示す模式
図であり、下地色、下地色以外および下地とそれ以外の
画像の境界の別に各データを表わしたものである。
【0034】図4(A)に示す画像データがパレットデ
ータの形態で画像分離部1009に入力すると、各画素
毎に下地色と一致するか否かが判別され、下地色と一致
する画素およびその一致する画素のうち境界の画素が特
定される。そして、上述したように下地色に一致する画
素についてはそのままのデータで画像処理部1008に
送られ、境界の画素を含んだそれ以外の画素については
所定のパレットデータ「00」に変換された後画像処理
部1008に送られる。画像処理部1008では、図4
(B)に示すようにパレットデータの4画素分について
間引きを行うことにより原画素のデータと同内容の1画
素分のパレットデータに変換し、下地色以外の画素につ
いても同様に4画素分を間引きによって1画素分のパレ
ットデータに変換する。これにより、360dpi対応
の原画像から180dpi対応の低解像度用の画像デー
タを得ることができる。そして、このようにして得られ
たパレットデータに対して上述の各画像処理を行い、最
終的に2値の駆動データを生成する。
【0035】一方、図4(A)に示す画像データにおい
て、下地色以外および境界のデータと判断された画素に
ついては、そのまま画像処理部1007に送られ、それ
以外の画素、すなわち下地色の画素のうち境界を除いた
画素についてはその内容が所定データ「00」に変換さ
れた後画像処理部1007に送られる。これにより、図
4(C)に示すように、最終的に得られる駆動データに
よって、境界部分については下地色が360dpiの解
像度でプリントされ、同図に示す例のように文字「A」
の部分については原画像の色で同様に360dpiの解
像度でプリントが行われる。
【0036】以上のように、下地色を低解像度のヘッド
1001Lを用いてプリントすることにより、形成され
るドットについて、それらの間のすき間を可能なかぎり
埋めることができるサイズとすることができ、スクリー
ン方式と同様均一な下地色とすることができる。また、
形成するドットサイズが大きくなることにより、特に低
濃度の下地色のざらつき感を低減でき、さらに、原画像
を良好に反映した高濃度を実現することができる。
【0037】なお、下地色のデータが示す濃度によって
は、そのデータが最終的に2値化されたとき、ドットが
100%デューティーで形成されず、ドット間に大きな
すき間を生じることは勿論生じ得る。しかし、このよう
な場合であっても、低解像度ヘッドによる比較的大きな
吐出インク滴を用いることにより、より大きなドットを
形成できるため、高解像度のヘッドにより下地をプリン
トする場合と比較して下地の色をより均一なものとする
ことができる。
【0038】また、上述したように本実施形態では、下
地とそれ以外の画像との境界の下地色の部分については
低解像度のヘッド1001Lを用いず高解像度のヘッド
100Hを用いる。これは、低解像度ヘッドでのプリン
トはインク量が多くなるため、色の均一化の効果がある
が、境界部での滲みが広がる傾向があり、これによって
画像のエッジ部がぼやけるおそれがあるからである。
【0039】なお、上記実施形態ではパレットデータの
段階で低解像度用の解像度変換を行うものとしたが、解
像度変換を行う段階としてはこれに限られず、パレット
コードをインク色の濃度データに変換した後に行うこと
もできる。同様の2次元空間での単純間引き処理や、2
次元空間での濃度補間等の方法で行うことができる。ま
た、2値化されたデータの解像度変換も可能である。
【0040】また、上記画像分離において、下地色の判
別とともに境界の判別を行ったが、この判別は下地色と
判別された画素の周囲の一定の画像を自動的に境界の画
素であるとすることにより行うものである。しかし、境
界の判別はこれに限られず、ホストコンピュータから境
界指定情報を供給してもよく、また、ホストコンピュー
タで予め境界画像を抽出し、他の画像と分離した形態で
供給するようにしてもよい。
【0041】以上説明した画像分離部1009、画像処
理部1007,1008、ヘッド制御部1005,10
06およびヘッド1001H,1001Lによる画像形
成の工程を、図5に示す。
【0042】画像メモリ1010に格納されたパレット
データ(A)は、下地色のパレットデータ(p)と比較
され、一致した部分はヘッド1001Lでプリントする
画像(B)となり、一致しない部分はヘッド1001H
でプリントする画像(C)となる。ここで、画像
(B),(C)において空白で示された領域はパレット
データが所定データ「00」に変換された部分を示す。
【0043】なお、上記実施形態のように下地色のパレ
ットデータは1つとは限らず、複数設定することも可能
である。このように下地色を2色以上とする場合、図3
7に示す手順のステップ102の処理を設定される下地
色のそれぞれについて実行することで、下地色の2色以
上について画像分離が可能となる。また、背景のように
広範囲に及ばない領域の画像も下地色としてパレットデ
ータで指定することにより、これを低解像度ヘッドでプ
リントすることもできる。
【0044】また、上記実施形態では画像分離部100
9における下地色の判断をパレットデータの比較で行っ
ているが、これに限られず、高解像度と低解像度のパレ
ットテーブルを1つとし、パレットテーブルにより高解
像度と低解像度への分配を行うことも可能である。ま
た、高解像度と低解像度のパレットデータを1画素の画
像データの上位4ビットと下位4ビットに分けて同時に
画像メモリ1011に記憶し、画像分離部1009で上
位4ビットと下位4ビットに分割することも可能であ
る。また、画像メモリ部1010を高解像度用、低解像
度用と2つ設け、高解像度用、低解像度用の画像データ
を転送格納することでも実現できる。
【0045】さらに、パレットデータでなくR,G,B
の多値データ、K,C,M,Yの2値データ等に対して
も同様に処理することができる。
【0046】さらに、低解像度ヘッド1001Lは上記
実施形態のようにY,M,C,Kのインクを吐出するも
のとしたが、モノクロームプリントにおけるKインクの
みであってもよく、また、調合した特定色(ブルー、オ
レンジ等)のインクや淡いインクや濃いインクを使用す
ることも可能である。ここで、「淡い」、「濃い」とは
色材比率濃度により異なるものである。
【0047】さらに、上記実施形態では、画像分離部1
009において、下地色のパレットデータを固定の値と
して判別/分離したが、ある範囲のパレットデータを用
いて判別/分離することもできる。例えば、低解像度ヘ
ッド1001Lに淡いインクを使用し、ある濃度以下の
領域を示すパレットデータの連続的範囲(例えば01〜
06)を設定し、これを判別/分離することもできる。
【0048】さらに、画像データにおいて下地か否かの
判別は、上記実施形態においては各データを所定の下地
色データと比較することにより行うものとしたが、これ
に限られず次のような方式を採用することもできる。す
なわち、予めホストコンピュータにおいて像域分離情報
を作製し、これを画像データとともに捺染装置側へ送る
ようにしてもよい。さらに他の方式としてホストコンピ
ュータにおいて予め像域を分離した画像データを作製し
これを捺染装置に送るようにしてもよい。
【0049】さらに、上記実施形態のように同一のイン
ク色について高解像度(インク吐出量の少ない)ヘッド
と低解像度(インク吐出量の多い)ヘッドとを用いた
が、組合せはこれに限られず、例えば背景(下地)が少
ない画像をプリントする場合は、上記低解像度のヘッド
の代わりに他方の高解像度ヘッドよりさらに解像度の高
いヘッドを用い、文字や上述の境界部分をプリントする
こともでき、これにより、これら文字等のシャープさの
度合を増すことができる。
【0050】(実施形態1の変形例1)本変形例では、
画像分離部1009において、各インク色の濃度データ
の空間周波数に基づいて、下地色や高濃度部等、低解像
度ヘッド1001Lでプリントする領域と、それら以外
の高解像度ヘッド1001Hでプリントする領域に分離
する。
【0051】この場合、図6に示すように低解像度ヘッ
ド1001Lでプリントする空間周波数の範囲0〜f1
を予め設定し、この範囲に属する空間周波数を有する画
素を低解像度ヘッド1001Lでプリントし、それ以外
を高解像度ヘッド1001Hでプリントする。
【0052】画素の空間周波数を求めるには種々なフィ
ルタや演算処理を用いることができるが、ここでは、図
7に示すように注目画素xと周辺画素a〜hの9画素の
濃度データの分散から注目画素Xの空間周波数を求め
る。分散が大きい(空間周波数が高い)ということは、
9画素の濃度データが均一でないすなわち均一性のある
下地色ではないことを示し、一方、分散が小さいという
ことは、9画素の濃度データが均一であり、これを下地
色と判定することができる。
【0053】図38は、本変形例の画像分離処理を示す
フローチャートである。以下、本変形例の画像分離処理
を図38を参照して説明する。
【0054】画像メモリ1010から、順次注目画素と
周辺画素の濃度データを読み出す(ステップ201)。
次に図7を参照して前述したように、注目画素の空間周
波数を求める(ステップ202)。続くステップ203
では、空間周波数に基づいて注目画像が下地色であるか
否かを判断する。前述したように、空間周波数が低い場
合は下地色と判定できるため、所定の閾値(f1)を設
定することで、注目画素が下地色であるか否かを判定で
きる。ステップ203にて下地色と判定された場合は、
その画像の濃度データをそのまま画像処理部1008へ
出力し(ステップ204)、一方、画像処理部1007
へは、濃度データを予め定められた特殊コードである
「00」(空データ)に変換して出力する(ステップ2
05)。また、ステップ203にて下地色ではないと判
定された場合は、濃度データをそのまま画像処理部10
07へ出力し(ステップ206)、画像処理部1008
に対して画素の濃度データを上記と同様の「00」に変
換して出力する(ステップ207)。全画素について、
下地色か否かの判定が実行されると画像分離処理を終了
する(ステップ208)。
【0055】なお、画像処理部1007,1008への
データの供給の仕方は、上記パレットデータによる判定
の場合と同様、該当しない領域は図38で上述したよう
に、プリントしないように所定のデータ「00」とした
後、供給する。
【0056】以上の本変形例によれば、先の実施例にお
いて画像処理部1007,1008において行われるパ
レットデータから濃度データへの変換の処理が省略され
る。
【0057】(実施形態1の変形例2)本変形例では、
画像分離部1009において、各インク色の濃度データ
に基づいて、下地色や高濃度部等、低解像度ヘッド10
01Lでプリントする領域と、高解像度ヘッド1001
Hでプリントする領域に分離する。
【0058】ここでは、低解像度ヘッド1001Lでプ
リントする濃度範囲として図8に示すようなヒストグラ
ムを求め、その中の頻度の高い範囲であるd1〜d2の
範囲を設定し、この範囲に属する濃度データを有する画
素を低解像度ヘッド1001Lでプリントする画素と
し、それ以外を高解像度ヘッド1001Hでプリントす
る画素とする。
【0059】図39は、本変形例の画像分離処理を示す
フローチャートである。以下、本変形例の画像分離処理
を図39を参照して説明する。
【0060】画像メモリ1010から順次1画素毎その
濃度データを読み出す(ステップ301)。続くステッ
プ302では、その濃度データが示す画像濃度に基づい
て、下地色か否かの判定を行う。下地色か否かを判定す
る基準については図8を参照して説明したように、記録
すべき画像データに基づき、予め低解像度ヘッド100
1Lでプリントする濃度範囲を定めておけばよい。処理
に係る画素の濃度データがその濃度範囲にあるか否かを
判定することにより、その画素が下地色であるか判定す
ることができる。ステップ302にて下地色と判定され
た場合は、その画素の濃度データをそのまま画像処理部
1008へ出力し(ステップ303)、画像処理部10
07に対しては濃度データを予め定められた特殊コード
である「00」(空データ)に変換して出力する(ステ
ップ304)。一方、ステップ302にて下地色ではな
いと判定された場合、濃度データをそのまま画像処理部
1007へ出力し(ステップ305)、画像処理部10
08へは画素の濃度データを上記と同様の「00」に変
換して出力する(ステップ306)。全画素に対して下
地色か否かの判定を実行すると本処理を終了する(ステ
ップ307)。
【0061】本変形例の構成においても、先の変形例と
同様に、画像処理部1007,1008において行われ
るパレットデータから濃度データへの変換の処理が省略
される。
【0062】なお、設定する濃度範囲は1つである必要
はなく、下地色や高濃度部等に関して2つ以上の濃度範
囲を指定することも可能である。因に、先のパレットデ
ータでの判定は、この濃度範囲d1〜d2がd1=d2
である所定の色のみに着目したことになる。なお、画像
処理部7,8へのデータの送り方は、パレットデータに
よる判定の場合と同様である。
【0063】(実施形態2)上述した実施形態では、ヘ
ッドの構成そのものを大吐出量が可能なものとすること
により、大ドットを形成するものとしたが、本実施形態
では、解像度の異なるヘッドを用いずに、大ドットを形
成すべき画素は選択的多重打ち込みによってインク打ち
込み量を多くするものである。
【0064】例えばフレームメモリの1つのブロックに
通常画像を格納し、もう1つのブロックにプリントすべ
き重ね部の画像を格納し、1スキャン目に通常画像をプ
リントし、布送りせずに2スキャン目に重ね部の画像を
プリントすることによって実現できる。また、多重のス
キャンだけでなく高い周波数で駆動することで1スキャ
ン中でドットを多重に記録することでも実現される。
【0065】(実施形態3)本実施形態では、本願人の
提案による新規な吐出方式のインクジェットヘッドを用
いて、上記各実施形態と同様のプリントを行うものであ
る。この新規な吐出方式に係るインクジェットヘッド
は、高粘度のインクを使用できること、高周波駆動が可
能であること、小液滴吐出(小吐出量)のヘッドを容易
に実現できること等、の特徴を有したものである。
【0066】すなわち、この新規吐出方式のインクジェ
ットヘッドは、吐出口に連通する第1液路と、これと分
離壁を介して隔てられた第2液路とを有し、第2液路に
設けられたヒータによって発生する気泡の発泡圧力が上
記分離壁に設けられた可動弁を介して第1液路側へ伝え
られ第1液路内の液体が吐出される方式である。
【0067】この方式によれば、吐出効率が向上すると
ともに、例えば発泡を生じない第1液路に高粘度のイン
ク等を充填することにより、上記高吐出効率によって高
粘度インクを良好に吐出することができるという、上述
した特徴を有することができる。また、例えば、第2液
路のヒータ面積を小さくすれば、それに応じて吐出量が
少なくなるが、従来方式のヘッドにあってはその程度に
応じて吐出エネルギーのロスが相対的に大きくなって吐
出不良を生じるおそれがある。これに対し、上述の新規
方式のヘッドによれば、その高吐出効率によって上記エ
ネルギーロスは相対的に小さくて済み、これにより、小
液滴を良好に吐出することも可能となる。さらに、吐出
される液体が充填される第1液路では発泡は生じないた
めそのリフィルが効率的に行われ、これにより高周波数
の駆動も可能となる。
【0068】図9はこのような本実施形態例に適用され
る液体吐出ヘッドを液流路方向で切断した断面模式図を
示しており、図10はこの液体吐出ヘッドの部分破断斜
視図を示している。
【0069】本実施形態例に適用される液体吐出ヘッド
は、液体を吐出するための吐出エネルギー発生素子とし
て、液体に熱エネルギーを作用させる発熱体2(本実施
形態例においては40μm×105μmの形状の発熱抵
抗体)が素子基板1に設けられており、この素子基板上
に発熱体2に対応して液流路10が配されている。液流
路10は吐出口18に連通していると共に、複数の液流
路10に液体を供給するための共通液室13に連通して
おり、吐出口から吐出された液体に見合う量の液体をこ
の共通液室13から受け取る。
【0070】この液流路10の素子基板上には、前述の
発熱体2に対向するように面して、金属等の弾性を有す
る材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31
が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液
流路10の壁や素子基板上に感光性樹脂などをパターニ
ングして形成した土台(支持部材)34等に固定されて
いる。これによって、可動部材は保持されると共に支点
(支点部分)33を構成している。
【0071】この可動部材31は、液体の吐出動作によ
って共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側
へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定
端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端
(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位
置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から15μm程
度の距離を隔てて配されている。この発熱体と可動部材
との間が気泡発生領域となる。なお発熱体、可動部材の
種類や形状および配置はこれに限られることなく、後述
するように気泡の成長や圧力の伝搬を制御しうる形状お
よび配置であればよい。なお、上述した液流路10は、
後に取り上げる液体の流れの説明のため、可動部材31
を境にして直接吐出口18に連通している部分を第1の
液流路14とし、気泡発生領域11や液体供給路12を
有する第2の液流路16の2つの領域に分けて説明す
る。
【0072】発熱体2を発熱させることで可動部材31
と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用
し、液体に米国特許第4,723,129号に記載され
ているような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気
泡の発生に基づく圧力と気泡は可動部材に優先的に作用
し、可動部材31は図9(b)、(c)もしくは図10
で示されるように支点33を中心に吐出口側に大きく開
くように変位する。可動部材31の変位若しくは変位し
た状態によって気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自
身の成長が吐出口側に導かれる。
【0073】ここで、上述した液体吐出ヘッドの基本的
な吐出原理の一つを説明する。最も重要な原理の1つ
は、気泡に対面するように配された可動部材が気泡の圧
力あるいは気泡自体に基づいて、定常状態の第1の位置
から変位後の位置である第2の位置へ変位し、この変位
する可動部材31によって気泡の発生に伴う圧力や気泡
自身を吐出口18が配された下流側へ導くことである。
【0074】この原理を可動部材を用いない従来の液流
路構造を模式的に示した図11と本発明の図12とを比
較してさらに詳しく説明する。なおここでは吐出口方向
への圧力の伝搬方向をVA、上流側への圧力の伝搬方向
をVBとして示した。
【0075】図11で示されるような従来のヘッドにお
いては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制
する構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV
1〜V8のように気泡表面の垂線方向となり様々な方向
を向いていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼ
すVA方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V1〜
V4即ち気泡のほぼ半分の位置より吐出口に近い部分の
圧力伝搬の方向成分であり、液吐出効率、液吐出力、吐
出速度等に直接寄与する重要な部分である。さらにV1
は吐出方向VAの方向に最も近いため効率よく働き、逆
にV4はVAに向かう方向成分は比較的少ない。
【0076】これに対して、図12で示される液体吐出
ヘッドの場合には、可動部材31が図11の場合のよう
に様々な方向を向いていた気泡の圧力伝搬方向V1〜V
4を下流側(吐出口側)へ導き、VAの圧力伝搬方向に
変換するものであり、これにより気泡40の圧力が直接
的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡
の成長方向自体も圧力伝搬方向V1〜V4と同様に下流
方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このよ
うに、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御し、
気泡の圧力伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出
力また吐出速度等の根本的な向上を達成することができ
る。
【0077】次に図9に戻って、本実施形態例に適用さ
れる液体吐出ヘッドの吐出動作について詳しく説明す
る。
【0078】図9(a)は、発熱体2に電気エネルギー
等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体が
熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、可
動部材31が、発熱体の発熱によって発生した気泡に対
し、この気泡の少なくとも下流側部分に対面する位置に
設けられていることである。つまり、気泡の下流側が可
動部材に作用するように、液流路構造上では少なくとも
発熱体の面積中心3より下流(発熱体の面積中心3を通
って流路の長さ方向に直交する線より下流)の位置まで
可動部材31が配されている。
【0079】図9(b)は、発熱体2に電気エネルギー
等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって
気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸
騰に伴う気泡を発生させた状態である。
【0080】このとき可動部材31は気泡40の発生に
基づく圧力により、気泡40の圧力の伝搬方向を吐出口
方向に導くように第1位置から第2位置へ変位する。こ
こで重要なことは前述したように、可動部材31の自由
端32を下流側(吐出口側)に配置し、支点33を上流
側(共通液室側)に位置するように配置して、可動部材
の少なくとも一部を発熱体の下流部分すなわち気泡の下
流部分に対面させることである。
【0081】図9(c)は気泡40がさらに成長した状
態であるが、気泡40発生に伴う圧力に応じて可動部材
31はさらに変位している。発生した気泡は上流より下
流に大きく成長すると共に可動部材の第1の位置(点線
位置)を越えて大きく成長している。このように気泡4
0の成長に応じて可動部材31が徐々に変位して行くこ
とで気泡40の圧力伝搬方向や体積移動のしやすい方
向、すなわち自由端側への気泡の成長方向を吐出口に均
一的に向かわせることができることも吐出効率を高める
と考えられる。可動部材は気泡や発泡圧を吐出口方向へ
導く際もこの伝達の妨げになることはほとんどなく、伝
搬する圧力の大きさに応じて効率よく圧力の伝搬方向や
気泡の成長方向を制御することができる。
【0082】図9(d)は気泡40が、前述した膜沸騰
の後気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状態
を示している。
【0083】第2の位置まで変位していた可動部材31
は、気泡の収縮による負圧と可動部材自身のばね性によ
る復元力によって図9(a)の初期位置(第1の位置)
に復帰する。また、消泡時には、気泡発生領域11での
気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体
積分を補うために上流側(B)、すなわち共通液室側か
ら流れのVD1、VD2のように、また、吐出口側から
流れのVcのように液体が流れ込んでくる。
【0084】図9を用いて本発明における液供給メカニ
ズムをさらに詳しく説明する。
【0085】図9(c)の後、気泡40が最大体積の状
態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補
う体積の液体が気泡発生領域に、第1液流路14の吐出
口18側と第2液流路16の共通液室側13から流れ込
む。可動部材31を持たない従来の液流路構造において
は、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共通液
室から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐出口に
近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大きさに起
因する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものであ
る。)。
【0086】このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さ
い場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ
込みメニスカスの後退量が大きくなることになる。特
に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を
小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメ
ニスカスMの後退が大きくなり、リフィル時間が長くな
って高速印字を妨げることとなっていた。
【0087】これに対して本実施形態例に適用される液
体吐出ヘッドは可動部材31を設けたため、気泡の体積
Wを可動部材31の第1位置を境に上側をW1、気泡発
生領域11側をW2とした場合、消泡時に可動部材が元
の位置に戻った時点でメニスカスの後退は止まり、その
後残ったW2の体積分の液体供給は主に第2流路16の
流れVD2からの液供給によって成される。これによ
り、従来、気泡Wの体積の半分程度に対応した量がメニ
スカスの後退量になっていたのに対して、それより少な
いW1の半分程度のメニスカス後退量に抑えることが可
能になった。
【0088】さらに、W2の体積分の液体供給は消泡時
の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿っ
て、主に第2液流路の上流側(VD2)から強制的に行
うことができるためより速いリフィルを実現できた。
【0089】ここで特徴的なことは、従来のヘッドで消
泡時の圧力を用いたリフィルを行った場合、メニスカス
の振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につながっ
ていたが、本実施形態例に適用される液体吐出ヘッドの
高速リフィルにおいては可動部材によって吐出口側の第
1液流路14の領域と、気泡発生領域11との吐出口側
での液体の流通が抑制されるためメニスカスの振動を極
めて少なくすることができることである。
【0090】このように、第2流路16の液供給路12
を介しての発泡領域への強制リフィルと、上述したメニ
スカス後退や振動の抑制によって高速リフィルを達成す
ることで、吐出の安定や高速繰り返し吐出、また記録の
分野に用いた場合、画質の向上や高速記録を実現するこ
とができる。
【0091】本実施形態例に適用される液体吐出ヘッド
の構成においてはさらに次のような有効な機能を兼ね備
えている。それは、気泡の発生による圧力の上流側への
伝搬(バック波)を抑制することである。発熱体2上で
発生した気泡の内、共通液室13側(上流側)の気泡に
よる圧力は、その多くが、上流側に向かって液体を押し
戻す力(バック波)になっていた。このバック波は、上
流側の圧力と、それによる液移動量、そして液移動に伴
う慣性力を引き起こし、これらは液体の液流路内へのリ
フィルを低下させ高速駆動の妨げにもなっていた、まず
可動部材31によって上流側へのこれらの作用を抑える
ことでもリフィル供給性の向上をさらに図っている。
【0092】次に、本実施形態例に適用される液体吐出
ヘッドの更なる特徴的な構造と効果について、以下に説
明する。
【0093】本実施形態例に適用される液体吐出ヘッド
の第2液流路16は、発熱体2の上流に発熱体2と実質
的に平坦につながる(発熱体表面が大きく落ち込んでい
ない)内壁を持つ液体供給路12を有している。このよ
うな場合、気泡発生領域11および発熱体2の表面への
液体の供給は、可動部材31の気泡発生領域11に近い
側の面に沿って、VD2のように行われる。このため、
発熱体2の表面上に液体が淀むことが抑制され、液体中
に溶存していた気体の析出や、消泡できずに残ったいわ
ゆる残留気泡が除去され易く、また、液体への蓄熱が高
くなりすぎることもない。従って、より安定した気泡の
発生を高速に繰り返し行うことができる。なお、実質的
に平坦な内壁を持つ液体供給路12を持つもので説明し
たが、これに限らず、発熱体表面となだらかに繋がり、
なだらかな内壁を有する液供給路であればよく、発熱体
上に液体の淀みや、液体の供給に大きな乱流を生じない
形状であればよい。
【0094】また、気泡発生領域への液体の供給は、可
動部材の側部(スリット35)を介してVD1から行わ
れるものもある。しかし、気泡発生時の圧力をさらに有
効に吐出口に導くために図9で示すように気泡発生領域
の全体を覆う(発熱体面を覆う)ように大きな可動部材
を用い、可動部材31が第1の位置へ復帰することで、
気泡発生領域11と第1液流路14の吐出口に近い領域
との液体の流抵抗が大きくなるような形態の場合、前述
のVD1から気泡発生領域11に向かっての液体の流れ
が妨げられる。しかし、本構成においては、気泡発生領
域に液体を供給するための流れVD1があるため、液体
の供給性能が非常に高くなり、可動部材31で気泡発生
領域11を覆うような吐出効率向上を求めた構造を取っ
ても、液体の供給性能を落とすことがない。
【0095】ところで、可動部材31の自由端32と支
点33の位置は、例えば図13で示されるように、自由
端が相対的に支点より下流側にある。このような構成の
ため、前述した発泡の際に気泡の圧力伝搬方向や成長方
向を吐出口側に導く等の機能や効果を効率よく実現でき
るのである。さらに、この位置関係は吐出に対する機能
や効果のみならず、液体の供給の際にも液流路10を流
れる液体に対する流抵抗を小さくしでき高速にリフィル
できるという効果を達成している。これは図5に示すよ
うに、吐出によって後退したメニスカスMが毛管力によ
り吐出口18へ復帰する際や、消泡に対しての液供給が
行われる場合に、液流路10(第1液流路14、第2液
流路16を含む)内を流れる流れS1、S2、S3に対
し、逆らわないように自由端と支点33とを配置してい
るためである。
【0096】補足すれば、図9においては、前述のよう
に可動部材31の自由端32が、発熱体2を上流側領域
と下流側領域とに2分する面積中心3(発熱体の面積中
心(中央)を通り液流路の長さ方向に直交する線)より
下流側の位置に対向するように発熱体2に対して延在し
ている。これによって発熱体の面積中心位置3より下流
側で発生する液体の吐出に大きく寄与する圧力、又は気
泡を可動部材31が受け、この圧力及び気泡を吐出口側
に導くことができ、吐出効率や吐出力を根本的に向上さ
せることができる。
【0097】さらに、加えて上記気泡の上流側をも利用
して多くの効果を得ている。
【0098】また、本構成においては可動部材31の自
由端が瞬間的な機械的変位を行っていることも、液体の
吐出に対して有効に寄与している考えられる。
【0099】図14に本実施形態例に係る液体吐出ヘッ
ドの第2の例を示す。この図14において、Aは可動部
材が変位している状態を示し(気泡は図示せず)、Bは
可動部材が初期位置(第1位置)の状態を示し、このB
の状態をもって、発泡領域11を吐出口18に対して実
質的に密閉しているとする。(ここでは、図示していな
いがA、B間には流路壁があり流路と流路を分離してい
る。)図14における可動部材31は土台34を側部に
2点設け、その間に液供給路12を設けている。これに
より、可動部材の発熱体側の面に沿って、また、発熱体
の面と実質的に平坦もしくは、なだらかにつながる面を
持つ液供給路から液体の供給を成すことができる。
【0100】ここで、可動部材31の初期位置(第1位
置)では、可動部材31は発熱体2の下流側および横方
向に配された発熱体下流壁36と発熱体側壁37に近接
または密着しており、気泡発生領域11の吐出口18側
に実質的に密閉されている。このため、発泡時の気泡の
圧力、特に気泡の下流側の圧力を逃がさず可動部材の自
由端側に集中的に作用させることができる。
【0101】また、消泡時には、可動部材31は第1位
置に戻り、発熱体上への消泡時の液供給は気泡発生領域
31の吐出口側が実質的に密閉状態になるため、メニス
カスの後退抑制等、先の実施形態例で説明した種々の効
果を得ることができる。また、リフィルに関する効果に
おいても先の実施形態例の液体ヘッドと同様の機能、効
果を得ることができる。
【0102】また、本構成の液体吐出ヘッドにおいて
は、図10や図14のように、可動部材31を支持固定
する土台34を発熱体2より離れた上流に設けると共に
液流路10より、小さな幅の土台34とすることで前述
のような液供給路12への液体の供給を行っている。ま
た、土台34の形状のこれに限らず、リフィルをスムー
スに行えるものであればよい。
【0103】なお、本構成の液体吐出ヘッドにおいては
可動部材31と発熱体2の間隔を15μm程度とした
が、気泡の発生に基づく圧力が十分に可動部材に伝わる
範囲であればよい。
【0104】図15は、本実施形態例に適用可能な液体
吐出ヘッドの第3の例を示す。図15は、一つの液流路
中に気泡発生領域、そこで発生する気泡および可動部材
との位置関係を示していると共に、液体吐出方法やリフ
ィル方法をより分かり易くした形態例である。
【0105】前述の形態例の多くは、可動部材の自由端
に対して、発生する気泡の圧力を集中して、急峻な可動
部材の移動と同時に気泡の移動を吐出口側に集中させる
ことを達成している。これに対して、本第3の形態例
は、発生する気泡の自由度を与えながら、滴吐出に直接
作用する気泡の吐出口側である気泡の下流側部分を可動
部材の自由端側で規制するものである。
【0106】構成上で説明すると、図15では、前述の
図10に比較すると、図10の素子基板1上に設けられ
た気泡発生領域の下流端に位置するバリヤーとしての凸
部(図の斜線部分)が本形態例では設けられていない。
つまり、可動部材の自由端領域および両側端領域は、吐
出口領域に対して気泡発生領域を実質的に密閉せずに開
放しており、この構成が本形態例である。
【0107】本形態例では、気泡の液滴吐出に直接作用
する下流側部分のうち、下流側先端部の気泡成長が許容
されているので、その圧力成分を吐出に有効に利用して
いる。加えて少なくともこの下流側部分の上方へ向かう
圧力(図11のVB、VB、VBの分力)を可動部材の
自由端側部分が、この下流側先端部の気泡成長に加えら
れるように作用するため吐出効率を上述した2つの形態
例と同様に向上する。前記形態例に比較して本形態例
は、発熱体の駆動に対する応答性が優れている。
【0108】また、本形態例は、構造上簡単であるため
製造上の利点がある。
【0109】本形態例の可動部材31の支点部は、可動
部材の面部に対して小さい幅の1つの土台34に固定さ
れている。従って、消泡時の気泡発生領域11への液体
供給は、この土台の両側を通って供給される(図の矢印
参照)。この土台は供給性を確保するものであればどの
ような構造でもよい。
【0110】液体の供給時におけるリフィルは、本形態
例の場合には、可動部材の存在によって気泡の消泡にと
もなって上方から気泡発生領域へ流れ込む流れが制御さ
れるので、従来の発熱体のみの気泡発生構造に対して優
れたものとなる。無論、これによって、メニスカスの後
退量を減じることもできる。
【0111】本第3の形態例の変形形態例としては、可
動部材の自由端に対する両側端(一方でも可)のみを気
泡発生領域11に対して実質的に密閉状態とすることは
好ましいものとして挙げられる。この構成によれば、可
動部材の側方へ向かう圧力をも先に説明した気泡の吐出
口側端部の成長に変更して利用することができるので、
一層吐出効率が向上する。
【0112】前述した機械的変位による液体の吐出力を
さらに向上させた例を本形態例で説明する。図16はこ
のようなヘッド構造の横断面図である。図16において
は、可動部材31の自由端の位置が発熱体のさらに下流
側に位置するように、可動部材が延在している形態例を
示している。これによって自由端位置での可動部材の変
位速度を高くすることができ、可動部材の変位による吐
出力の発生をさらに向上させることができる。
【0113】また、自由端が先の2つの形態例に比較し
て吐出口側に近づくことになるので気泡の成長をより安
定した方向成分に集中できるので、より優れた吐出を行
うことができる。
【0114】また、気泡の圧力中心部の気泡成長速度に
応じて、可動部材31は変位速度R1で変位するが、こ
の位置より支点33に対して、遠い位置の自由端32は
さらに速い速度R2で変位する。これにより、自由端3
2を高い速度で機械的に液体に作用せしめ液移動を起こ
させることで吐出効率を高めている。
【0115】また、自由端形状は、図15と同じように
液流れに対して垂直な形状をすることにより、気泡の圧
力や可動部材の機械的な作用をより効率的に吐出に寄与
させることができる。
【0116】図17(a)、(b)、(c)は本実施形
態例に適用可能な液体吐出ヘッドの第5の形態例であ
る。
【0117】本形態例の構造は先の4つの形態例と異な
り、吐出口と直接連通する領域は液室側と連通した流路
形状となっておらず、構造の簡略化が図れるものであ
る。
【0118】液供給は全て、可動部材31の発泡領域側
の面に沿った液供給路12からのみ行われるもので、可
動部材31の自由端32や支点33の吐出口18に対す
る位置関係や発熱体2に面する構成は前述の4つの形態
例と同様である。
【0119】本形態例は、吐出効率や液供給性等、前述
した効果を実現するものであるが、特にメニスカスの後
退を抑制し消泡時の圧力を利用して、ほとんど全ての液
供給を消泡時の圧力を利用して、強制リフィルを行うも
のである。
【0120】図17(a)は発熱体2により液体を発泡
させた状態を示しており、図17(b)は、前記発泡が
収縮しつつある状態で、このとき可動部材31の初期位
置への復帰とS3による液供給が行われる。
【0121】図17(c)では、可動部材が初期部材が
初期位置に復帰する際のわずかなメニスカス後退Mを、
消泡後に吐出口18付近の毛細管力によって、リフィル
している状態である。
【0122】以下、図面を参照して本実施形態に適用可
能な液体吐出ヘッドの他の形態例について説明する。
【0123】本形態例においても主たる液体の吐出原理
については先の形態例と同じであるが、本形態例におい
ては液流路を複流路構成にすることで、さらに熱を加え
ることで発泡させる液体(発泡液)と、主として吐出さ
れる液体(吐出液)とを分けることができるものであ
る。
【0124】図18は、本形態例の液体吐出ヘッドの流
路方向の断面模式図を示しており、図19はこの液体吐
出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0125】本実施形態例の液体吐出ヘッドは、液体に
気泡を発生させるための熱エネルギーを与える発熱体2
が設けられた素子基板1上に、発泡用の第2液流路16
があり、その上に吐出口18に直接連通した吐出液用の
第1液流路14が配されている。
【0126】第1液流路の上流側は、複数の第1液流路
に吐出液を供給するための第1共通液室15に連通して
おり、第2液流路の上流側は、複数の第2液流路に発泡
液を供給するための第2共通液室に連通している。
【0127】但し、発泡液と吐出液を同じ液体とする場
合には、共通液室を一つにして共通化させてもよい。
【0128】第1と第2の液流路の間には、金属等の弾
性を有する材料で構成された分離壁30が配されてお
り、第1液流路と第2の液流路とを区分している。な
お、発泡液と吐出液とができる限り混ざり合わない方が
よい液体の場合には、この分離壁によってできる限り完
全に第1液流路14と第2液流路16の液体の流通を分
離した方がよいが、発泡液と吐出液とがある程度混ざり
合っても、問題がない場合には、分離壁に完全分離の機
能を持たせなくてもよい。
【0129】発熱体の面方向上方への投影空間(以下吐
出圧発生領域という。;図18中のAの領域とBの気泡
発生領域11)に位置する部分の分離壁は、スリット3
5によって吐出口側(液体の流れの下流側)が自由端
で、共通液室(15、17)側に支点33が位置する片
持梁形状の可動部材31となっている。この可動部材3
1は、気泡発生領域11(B)に面して配されているた
め、発泡液の発泡によって第1液流路側の吐出口側に向
けて開口するように動作する(図中矢印方向)。図19
においても、発熱体2としての発熱抵抗部と、この発熱
抵抗部に電気信号を印加するための配線電極5とが配さ
れた素子基板1上に、第2の液流路を構成する空間を介
して分離壁30が配置されている。
【0130】可動部材31の支点33、自由端32の配
置と、発熱体との配置の関係については、先の形態例と
同様にしている。
【0131】また、先の形態例で液供給路12と発熱体
2との構造の関係について説明したが、本形態例におい
ても第2液流路16と発熱体2との構造の関係を同じく
している。
【0132】次に図20を用いて本形態例の液体吐出ヘ
ッドの動作を説明する。
【0133】ヘッドを駆動させるにあたっては、第1液
流路14に供給される吐出液と第2の液流路16に供給
される発泡液として同じ水系のインクを用いて動作させ
た。
【0134】発熱体2が発生した熱が、第2液流路の気
泡発生領域内の発泡液に作用することで、先の形態例で
説明したのと同様に発泡液に米国特許第4,723,1
29号に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡
40を発生させる。
【0135】本形態例においては、気泡発生領域の上流
側を除く、3方からの発泡圧の逃げがないため、この気
泡発生にともなう圧力が吐出圧発生部に配された可動部
材6側に集中して伝搬し、気泡の成長をともなって可動
部材6が図20(a)の状態から図20(b)のように
第1液流路側に変位する。この可動部材の動作によって
第1液流路14と第2液流路16とが大きく連通し、気
泡の発生に基づく圧力が第1液流路の吐出口側の方向
(A方向)に主に伝わる。この圧力の伝搬と、前述のよ
うな可動部材の機械的変位によって液体が吐出口から吐
出される。
【0136】次に、気泡が収縮するに伴って可動部材3
1が図20(a)の位置まで戻ると共に、第1液流路1
4では吐出された吐出液体の量に見合う量の吐出液体が
上流側から供給される。本形態例においても、この吐出
液体の供給は前述の実施形態例と同様に可動部材が閉じ
る方向であるため、吐出液体のリフィルを可動部材で妨
げることがない。
【0137】本形態例は、可動部材の変位に伴う発泡圧
力の伝搬、気泡の成長方向、バック波の防止等に関する
主要部分の作用や効果については先の第1形態例等と同
じであるが、本形態例のような2流路構成をとることに
よって、さらに次のような長所がある。
【0138】すなわち、上述の実施形態例の構成による
と、吐出液と発泡液とを別液体とし、発泡液の発泡で生
じた圧力によって吐出液を吐出することができる。この
ため従来、熱を加えても発泡が十分に行われにくく吐出
力が不十分であったポリエチレングリコール等の高粘度
の液体であっても、この液体を第1の液流路に供給し、
発泡液に発泡が良好に行われる液体(エタノール:水=
4:6の混合液1〜2cp程度等)や低沸点の液体を第
2の液流路に供給することで良好に吐出させることがで
きる。
【0139】また、発泡液として、熱を受けても発熱体
の表面にコゲ等の堆積物を生じない液体を選択すること
で、発泡を安定化し、良好な吐出を行うことができる。
【0140】さらに、本構成のヘッドの構造においては
先の形態例で説明したような効果をも生じるため、さら
に高吐出効率、高吐出力で高粘性液体等の液体を吐出す
ることができる。
【0141】また、加熱に弱い液体の場合においてもこ
の液体を第1の液流路に吐出液として供給し、第2の液
流路で熱的に変質しにくく良好に発泡を生じる液体を供
給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害を与えることな
く、しかも上述のように高吐出効率、高吐出力で吐出す
ることができる。
【0142】<その他の液体吐出ヘッドの形態例>以
上、本実施形態例に適用可能な液体吐出ヘッドや液体吐
出方法の要部の形態例について説明を行ったが、以下に
これらの形態例に好ましく適用できる態様例について図
面を用いて説明する。但し、以下の説明においては前述
の1流路形態の形態例と2流路形態の形態例のいずれか
を取り上げて説明する場合があるが特に記載しない限
り、両形態例に適用しうるものである。
【0143】<液流路の天井形状>図21は本実施形態
に適用可能な液体吐出ヘッドの流路方向断面図である
が、第1液流路13(若しくは図9における液流路1
0)を構成するための溝が設けられた溝付き部材50が
分離壁30上に設けられている。本形態例においては可
動部材の自由端32位置近傍の流路天井の高さが高くな
っており、可動部材の動作角度θをより大きく取れるよ
うにしている。この可動部材の動作範囲は、液流路の構
造、可動部材の耐久性や発泡力等を考慮して決定すれば
よいが、吐出口の軸方向の角度を含む角度まで動作する
ことが望ましいと考えられる。
【0144】また、この図で示されるように吐出口の直
径より可動部材の自由端の変位高さを高くすることで、
より十分な吐出力の伝達が成される。また、この図で示
されるように、可動部材の自由端32位置の液流路天井
の高さより可動部材の支点33位置の液流路天井の高さ
の方が低くなっているため、可動部材の変位よる上流側
への圧力波の逃げがさらに有効に防止できる。
【0145】<第2液流路と可動部材との配置関係>図
22は、上述の可動部材31と第2の液流路16との配
置関係を説明するための図であり、同図(a)は分離壁
30、可動部材31近傍を上方から見た図であり、同図
(b)は、分離壁30を外した第2液流路16を上方か
ら見た図である。そして、同図(c)は、可動部材6と
第2液流路16との配置関係を、これらの各要素を重ね
ることで模式的に示した図である。なお、いずれの図も
図面下方が吐出口が配されている前面側である。
【0146】本形態例の第2の液流路16は発熱体2の
上流側(ここでの上流側とは第2共通液室側から発熱体
位置、可動部材、第1流路を経て吐出口に向う大きな流
れの中の上流側のことである。)に狭窄部19を持って
おり、発泡時の圧力が第2液流路16の上流側に容易に
逃げることを抑制するような室(発泡室)構造となって
いる。
【0147】従来のヘッドのように、発泡する流路と液
体を吐出するための流路とが同じで、発熱体より液室側
に発生した圧力が共通液室側に逃げないように狭窄部を
設けるヘッドの場合には、液体のリフィルを充分考慮し
て、狭窄部における流路断面積があまり小さくならない
構成を採る必要があった。
【0148】しかし、本形態例の場合、吐出される液体
の多くを第1液流路内の吐出液とすることができ、発熱
体が設けられた第2液流路内の発泡液はあまり消費され
ないようにできるため、第2液流路の気泡発生領域11
への発泡液の充填量は少なくて良い。従って、上述の狭
窄部19における間隔を数μm〜十数μmと非常に狭く
できるため、第2液流路で発生した発泡時の圧力をあま
り周囲に逃がすことをさらに抑制でき、集中して可動部
材側に向けることができる。そしてこの圧力を可動部材
31を介して吐出力として利用することができるため、
より高い吐出効率、吐出力を達成することができる。た
だ、第1液流路16の形状は上述の構造に限られるもの
ではなく、気泡発生に伴う圧力が効果的に可動部材側に
伝えられる形状であれば良い。
【0149】なお、図22(c)で示されるように可動
部材31の側方は、第2液流路を構成する壁の一部を覆
っており、このことで、可動部材31の第2液流路への
落ち込みが防止できる。これによって、前述した吐出液
と発泡液との分離性をさらに高めることができる。ま
た、気泡のスリットからの逃げの抑制ができるため、さ
らに吐出圧や吐出効率を高めることができる。さらに、
前述の消泡時の圧力による上流側からのリフィルの効果
を高めることができる。
【0150】なお、図20(b)や図21においては、
可動部材31の第1の液流路14側への変位に伴って第
2の液流路4の気泡発生領域で発生した気泡の一部が第
1の液流路14側に延在しているが、この様に気泡が延
在するような第2流路の高さにすることで、気泡が延在
しない場合に比べ更に吐出力を向上させることができ
る。この様に気泡が第1の液流路14に延在するように
するためには、第2の液流路16の高さを最大気泡の高
さより低くすることが望ましく、この高さを数μm〜3
0μmとすることが望ましい。なお、本実施形態例にお
いてはこの高さを15μmとした。
【0151】<可動部材および分離壁>図23は可動部
材31の他の形状を示すもので、35は、分離壁に設け
られたスリットであり、このスリットによって、可動部
材31が形成されている。同図(a)は長方形の形状で
あり、(b)は支点側が細くなっている形状で可動部材
の動作が容易な形状であり、同図(c)は支点側が広く
なっており、可動部材の耐久性が向上する形状である。
動作の容易性と耐久性が良好な形状として、図22
(a)で示したように、支点側の幅が円弧状に狭くなっ
ている形態が望ましいが、可動部材の形状は第2の液流
路側に入り込むことがなく、容易に動作可能な形状で、
耐久性に優れた形状であればよい。
【0152】先の実施形態例においては、板状可動部材
31をおよびこの可動部材を有する分離壁5は厚さ5μ
mのニッケルで構成したが、これに限られることなく可
動部材、分離壁を構成する材質としては発泡液と吐出液
に対して耐溶剤性があり、可動部材として良好に動作す
るための弾性を有し、微細なスリットが形成できるもの
であればよい。
【0153】可動部材の材料としては、耐久性の高い、
銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白
金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、および
その合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、ス
チレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のア
ミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシ
ル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を
持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、
そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐イ
ンク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケ
ル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および
耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングした
もの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、
ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエー
テルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイ
ミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水
酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する
樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポ
キシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等の
アミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を
持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等のセラ
ミックおよびその化合物が望ましい。
【0154】分離壁の材質としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレー
ト、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケ
トン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリ
イミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の
近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱
性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合
物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、
金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もし
くは表面にチタンや金をコーティングしたものが望まし
い。
【0155】また、分離壁の厚さは、分離壁としての強
度を達成でき、可動部材として良好に動作するという観
点からその材質と形状等を考慮して決定すればよいが、
0.5μm〜10μm程度が望ましい。
【0156】なお、可動部材31を形成するためのスリ
ット35の幅は本実施形態例では2μmとしたが、発泡
液と吐出液とが異なる液体であり、両液体の混液を防止
したい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニスカス
を形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流通を抑
制すればよい。例えば、発泡液として2cp(センチポ
アズ)程度の液体を用い、吐出液として100cp以上
の液体を用いた場合には、5μm程度のスリットでも混
液を防止することができるが、3μm以下にすることが
望ましい。
【0157】各形態例における可動部材としてはμmオ
ーダーの厚さ(tμm)を対象としており、cmオーダ
ーの厚さの可動部材は意図していない。μmオーダーの
厚さの可動部材にとって、μmオーダーのスリット幅
(Wμm)を対象とする場合、製造のバラツキをある程
度考慮することが望ましい。
【0158】スリットを形成する可動部材の自由端ある
いは/且つ側端に対向する部材の厚みが可動部材の厚み
と同等の場合(図20、図21等)、スリット幅と厚み
の関係を製造のバラツキを考慮して以下のような範囲に
することで発泡液と吐出液の混液を安定的に抑制するこ
とができる。このことは限られた条件ではあるが設計上
の観点として、3cp以下の粘度の発泡液に対して高粘
度インク(5cp、10cp等)を用いる場合、W/t
≦1を満足するようにすることで、2液の混合を長期に
わたって抑制することが可能な構成となった。
【0159】本構成の「実質的な密閉状態」を与えるス
リットとしては、このような数μmオーダであればより
確実である。
【0160】上述のように、発泡液と吐出液とに機能分
離させた場合、可動部材がこれらの実質的な仕切部材と
なる。この可動部材が気泡の生成に伴って移動する際に
吐出液に対して発泡液がわずかに混入することが見られ
る。画像を形成する吐出液は、インクジェット記録の場
合、色材濃度を3%乃至5%程度有するものが一般的で
あることを考慮すると、この発泡液が吐出液滴に対して
20%以下の範囲で含まれても大きな濃度変化をもたら
さない。従って、このような混液としては、吐出液滴に
対して20%以下となるような発泡液と吐出液との混合
を本構成に含むものとする。
【0161】尚、上記構成例の実施では、粘性を変化さ
せても上限で15%の発泡液の混合であり、5cps以
下の発泡液では、この混合比率は、駆動周波数にもよる
が、10%程度を上限とするものであった。
【0162】特に、吐出液の粘度を20cps以下にす
ればする程、この混液は低減(例えば5%以下)でき
る。
【0163】次に、このヘッドにおける発熱体と可動部
材の配置関係について、図25を用いて説明する。ただ
し、可動部材と発熱体の形状および寸法,数は、以下に
限定されるものではない。発熱体と可動部材の最適な配
置によって、発熱体による発泡時の圧力を吐出圧として
有効に利用することが可能となる。
【0164】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行うインクジェット記録方法、いわゆ
るバブルジェット記録方法の従来技術においては、図2
4に示すように、発熱体面積とインク吐出量は比例関係
にあるが、インク吐出に寄与しない非発泡有効領域Sが
存在していることがわかる。また、発熱体上のコゲの様
子から、この非発泡有効領域Sが発熱体の周囲に存在し
ていることがわかる。これらの結果から、発熱体周囲の
約4μm幅は、発泡に関与されていないとされている。
【0165】したがって、発泡圧を有効利用するために
は、発熱体の周囲から約4μm以上内側の発泡有効領域
の直上が可動部材の可動領域で覆われるように、可動部
材を配置するのが効果的であると、言える。本実施形態
例においては、発泡有効領域を発熱体周囲から約4μm
以上内側としたが、発熱体の種類や形成方法によって
は、これに限定されるものではない。
【0166】図25に、58×150μmの発熱体2に
可動領域の総面積が異なる可動部材301(図
(a))、可動部材302(図(b))を配置したとき
の上部から見た模式図を示す。
【0167】可動部材301の寸法は、53×145μ
mで、発熱体2の面積よりも小さいが、発熱体2の発泡
有効領域と同じ程度の寸法であり、該発泡有効領域を覆
うように、配置されている。一方、可動部材302の寸
法は、53×220μmで発熱体2の面積よりも大きく
(幅寸法を同じにした場合、支点〜可動先端間の寸法が
発熱体の長さよりも長い)、可動部材301と同じよう
に発泡有効領域を覆うように配置されている。上記2種
の可動部材301、302に対し、それらの耐久性と吐
出効率について測定を行った。測定条件は以下の通りで
ある。
【0168】 発泡液 : エタノール40%水溶液 吐出用インク : 染料インク 電圧 : 20.2V 周波数 : 3kHz この測定条件で実験を行った結果、可動部材の耐久性に
関しては、(a)可動部材301の方は、1×107
ルス印加したところで可動部材301の支点部分に損傷
が見られた。(b)可動部材302の方は、3×108
パルス印加しても、損傷は見られなかった。また、投入
エネルギーに対する吐出量と吐出速度からもとまる運動
エネルギーも約1.5〜2.5倍程度向上することが確
認された。
【0169】以上の結果から、耐久性、吐出効率の両面
からみても、発泡有効領域の真上を覆うように可動部材
を設け、該可動部材の面積が発熱体の面積よりも大きい
方が、優れていることがわかる。
【0170】図26に発熱体のエッジから可動部材の支
点までの距離と、可動部材の変位量の関係を示す。ま
た、図27に、発熱体2と可動部材31との位置関係を
側面方向から見た断面構成図を示す。発熱体2は40×
105μmのものを用いた。発熱体2のエッジから可動
部材31の支点33までの距離lが大きい程、変位量が
大きいことがわかる。したがって、要求されるインクの
吐出量や吐出液の流路構造および発熱体形状などによっ
て、最適変位量を求め、可動部材の支点の位置を決める
ことが望ましい。
【0171】また、可動部材の支点が発熱体の発泡有効
領域直上に位置する場合は、可動部材の変位による応力
に加え、発泡圧力が直接支点に加わるため可動部材の耐
久性が低下してしまう。本発明者の実験によると、発泡
有効領域の真上に支点を設けたものでは、1×106
ルス程度で、可動壁に損傷が生じており、耐久性が低下
してしまうことが分かっている。したがって、可動部材
の支点は、発熱体の発泡有効領域直上外に配置すること
で耐久性がそれ程高くない形状や材質の可動部材であっ
ても実用可能性が高くなる。ただし、前記発泡有効領域
直上に支点がある場合でも形状や材質を選択すれば、良
好に用いることができる。かかる構成において、高吐出
効率および耐久性に優れた液体吐出ヘッドが得られる。
【0172】<素子基板>以下に液体に熱を与えるため
の発熱体が設けられた素子基板の構成について説明す
る。
【0173】図28は各形態例の液体吐出ヘッドの縦断
面図を示したもので、図28(a)は後述する保護膜が
あるヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0174】素子基板1上に第2液流路16、分離壁3
0、第1液流路14、第1液流路を構成する溝を設けた
溝付き部材50が配されている。
【0175】素子基板1には、シリコン等の気体107
に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチ
ッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体を構成
するハフニュウムボライド(HfB2 )、チッ化タンタ
ル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵
抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウ
ム等の配線電極(0.2〜1.0μm厚)を図11のよ
うにパターニングされている。この2つの配線電極10
4から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に電流を流
し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸化シリコ
ンやチッ化シリコン等の保護層を0.1〜2.0μm厚
で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテー
ション層(0.1〜0.6μm厚)が成膜されており、
インク等の各種の液体から抵抗層105を保護してい
る。
【0176】特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧
力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性
を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)
等が耐キャビテーション層として用いられる。
【0177】また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み
合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよく
その例を図28(b)に示す。このような保護層を必要
としない抵抗層の材料としてはイリジュウム−タンタル
−アルミ合金等が挙げられる。
【0178】このように、前述の各実施形態例における
発熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱
部)だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含
むものでもよい。
【0179】本実施形態例においては、発熱体として電
気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有
するものを用いたが、これに限られることなく、吐出液
を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるもの
であればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受
けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受ける
ことで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0180】なお、前述の素子基板1には、前述の発熱
部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供
給するための配線電極104で構成される電気熱変換体
の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するための
トランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等
の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込ま
れていてもよい。
【0181】また、前述のような素子基板1に設けられ
ている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出する
ためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介し
て図29で示されるような矩形パルスを印加し、配線電
極間の抵抗層105を急峻に発熱させる。前述の各実施
形態例のヘッドにおいては、それぞれ電圧24V、パル
ス幅7μsec、電流150mA、電気信号を6kHz
で加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作に
よって、吐出口から液体であるインクを吐出させた。し
かしながら、駆動信号の条件はこれに限られることな
く、発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号で
あればよい。
【0182】<2流路構成のヘッド構造>以下に、第
1、第2の共通液室に異なる液体を良好に分離して導入
でき部品点数の削減を図れ、コストダウンを可能とする
液体吐出ヘッドの構造例について説明する。
【0183】図30は、このような液体吐出ヘッドの構
造を示す模式図であり、先の実施形態例と同じ構成要素
については同じ符号を用いており、詳しい説明はここで
は省略する。
【0184】本実施形態例においては、溝付き部材50
は、吐出口18を有するオリフィスプレート51と、複
数の第1液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流
路14に共通して連通し、各第1の液流路3に液体(吐
出液)を供給するための第1の共通液室15を構成する
凹部とから概略構成されている。
【0185】この溝付部材50の下側部分に分離壁30
を接合することにより複数の第1液流路14を形成する
ことができる。このような溝付部材50は、その上部か
ら第1共通液室15内に到達する第1液体供給路20を
有している。また、溝付部材50は、その上部から分離
壁30を突き抜けて第2共通液室17内に到達する第2
の液体供給路21を有している。
【0186】第1の液体(吐出液)は、図30の矢印C
で示すように、第1液体供給路20を経て、第1の共通
液室15、次いで第1の液流路14に供給され、第2の
液体(発泡液)は、図30の矢印Dで示すように、第2
液体供給路21を経て、第2共通液室17、次いで第2
液流路16に供給されるようになっている。
【0187】本実施形態例では、第2液体供給路21
は、第1液体供給路20と平行して配されているが、こ
れに限ることはなく、第1共通液室15の外側に配され
た分離壁30を貫通して、第2共通液室17に連通する
ように形成されればどのように配されてもよい。
【0188】また、第2液体供給路21の太さ(直径)
に関しては、第2液体の供給量を考慮して決められる。
第2液体供給路21の形状は丸形状である必要はなく、
矩形状等でもよい。
【0189】また、第2共通液室17は、溝付部材50
を分離壁30で仕切ることによって形成することができ
る。形成の方法としては、図31で示す本実施形態例の
分解斜視図のように、素子基板上にドライフィルムで共
通液室枠と第2液路壁を形成し、分離壁を固定した溝付
部材50と分離壁30との結合体と素子基板1とを貼り
合わせることにより第2共通液室17や第2液流路16
を形成してもよい。
【0190】本実施形態例では、アルミニウム等の金属
で形成された支持体70上に、前述のように、発泡液に
対して膜沸騰による気泡を発生させるための熱を発生す
る発熱体としての電気熱変換素子が複数設けられた素子
基板1が配されている。
【0191】この素子基板1上には、第2液路壁により
形成された液流路16を構成する複数の溝と、複数の発
泡液流路に連通し、それぞれの発泡液路に発泡液を供給
するための第2共通液室(共通発泡液室)17を構成す
る凹部と、前述した可動壁31が設けられた分離壁30
とが配されている。
【0192】符号50は、溝付部材である。この溝付部
材は、分離壁30と接合されることで吐出液流路(第1
液流路)14を構成する溝と、吐出液流路に連通し、そ
れぞれの吐出液流路に吐出液を供給するための第1の共
通液室(共通吐出液室)15を構成するための凹部と、
第1共通液室に吐出液を供給するための第1供給路(吐
出液供給路)20と、第2の共通液室17に発泡液を供
給するための第2の供給路(発泡液供給路)21とを有
している。第2の供給路21は、第1の共通液室15の
外側に配された分離壁30を貫通して第2の共通液室1
7に連通する連通路に繋がっており、この連通路によっ
て吐出液と混合することなく発泡液を第2の共通液室1
5に供給することができる。
【0193】なお、素子基板1、分離壁30、溝付天板
50の配置関係は、素子基板1の発熱体に対応して可動
部材31が配置されており、この可動部材31に対応し
て吐出液流路14が配されている。また、本実施形態例
では、第2の供給路を1つ溝付部材に配した例を示した
が、供給量に応じて複数設けてもよい。さらに吐出液供
給路20と発泡液供給路21の流路断面積は供給量に比
例して決めればよい。
【0194】このような流路断面積の最適化により溝付
部材50等を構成する部品をより小型化することも可能
である。
【0195】以上説明したように本実施形態例によれ
ば、第2液流路に第2液体を供給する第2の供給路と、
第1液流路に第1液体を供給する第1の供給路とが同一
の溝付部材としての溝付天板からなることにより部品点
数が削減でき、工程の短縮化とコストダウンが可能とな
る。
【0196】また第2液流路に連通した第2の共通液室
への、第2液体の供給は、第1液体と第2液体を分離す
る分離壁を突き抜ける方向で第2液流路によって行なわ
れる構造であるため、前記分離壁と溝付部材と発熱体形
成基板との貼り合わせ工程が1度で済み、作りやすさが
向上すると共に、貼り合わせ精度が向上し、良好に吐出
することができる。
【0197】また、第2液体は、分離壁を突き抜けて第
2液体共通液室へ供給されるため、第2液流路に第2液
体の供給が確実となり、供給量が十分確保できるため、
安定した吐出が可能となる。
【0198】<吐出液体、発泡液体>先の実施形態例で
説明したように本発明においては、前述のような可動部
材を有する構成によって、従来の液体吐出ヘッドよりも
高い吐出力や吐出効率でしかも高速に液体を吐出するこ
とができる。本実施形態例の内、発泡液と吐出液とに同
じ液体を用いる場合には、発熱体から加えられる熱によ
って劣化せずに、また加熱によって発熱体上に堆積物を
生じにくく、熱によって気化、凝縮の可逆的状態変化を
行うことが可能であり、さらに液流路や可動部材や分離
壁等を劣化させない液体であれば種々の液体を用いるこ
とができる。
【0199】このような液体の内、記録を行う上で用い
る液体(記録液体)としては従来のバブルジェット装置
で用いられていた組成のインクを用いることができる。
【0200】一方、本実施形態の2流路構成のヘッドを
用い、吐出液と発泡液を別液体とした場合には、発泡液
として前述のような性質の液体を用いればよく、具体的
には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イ
ソプロパノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オ
クタン、トルエン、キシレン、二塩化メチレン、トリク
レン、フレオンTF、フレオンBF、エチルエーテル、
ジオキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチ
ル、アセトン、メチルエチルケトン、水等およびこれら
の混合物が挙げられる。
【0201】吐出液としては、発泡性の有無、熱的性質
に関係なく様々な液体を用いることができる。また、従
来吐出が困難であった発泡性が低い液体、熱によって変
質、劣化しやすい液体や高粘度液体等であっても利用で
きる。
【0202】ただし、吐出液の性質として吐出液自身、
又は発泡液との反応によって、吐出や発泡また可動部材
の動作等を妨げるような液体でないことが望まれる。
【0203】記録用の吐出液体としては、高粘度インク
等をも利用することができる。その他の吐出液体として
は、熱に弱い医薬品や香水等の液体を利用することもで
きる。
【0204】このような構成においては、吐出液と発泡
液の両方に用いることができる記録液体として以下のよ
うな組成のインクを用いて記録を行ったが、吐出力の向
上によってインクの吐出速度が高くなったため、液滴の
着弾精度が向上し非常に良好な記録画像を得ることがで
きた。
【0205】 染料インク(粘度2cp)の組成 (C.I.フードブラック2)染料 3重量% ジエチレングリコール 10重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 5重量% 水 77重量% また、発泡液と吐出液に以下で示すような組成の液体を
組み合わせて吐出させて記録を行った。その結果、従来
のヘッドでは吐出が困難であった十数cp粘度の液体は
もちろん150cpという非常に高い粘度の液体でさえ
も良好に吐出でき、高画質な記録物を得ることができ
た。
【0206】 発泡液1の組成 エタノール 40重量% 水 60重量% 発泡液2の組成 水 100重量% 発泡液3の組成 イソプロピルアルコール 10重量% 水 90重量% 吐出液1顔料インク(粘度約15cp)の組成 カーボンブラック 5重量% スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 1重量% (酸価140、重量平均分子量8000) モノエタノールアミン 0.25重量% グリセリン 69重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 3重量% 水 16.75重量% 吐出液2(粘度55cp)の組成 ポリエチレングリコール200 100重量% 吐出液3(粘度150cp)の組成 ポリエチレングリコール600 100重量% ところで、前述したような従来吐出されにくいとされて
いた液体の場合には、吐出速度が低いために、吐出方向
性のバラツキが助長され記録紙上のドットの着弾精度が
悪く、また吐出不安定による吐出量のバラツキが生じこ
れらのことで、高品位画像が得にくかった。しかし、上
述の形態例の構成においては、気泡の発生を発泡液を用
いることで充分に、しかも安定して行うことができる。
このことで、液滴の着弾精度向上とインク吐出量の安定
化を図ることができ記録画像品位を著しく向上すること
ができた。
【0207】<液体吐出ヘッドの製造>次に、各実施例
の液体吐出ヘッドの製造工程について説明する。
【0208】図10で示したような液体吐出ヘッドの場
合には、素子基板1上に可動部材31を設けるための土
台34をドライフィルム等をパターニングすることで形
成し、この土台34に可動部材31を接着、もしくは溶
着固定した。その後、各液流路10を構成する複数の溝
と吐出口18と共通液室13を構成する凹部を有する溝
付部材を、溝と可動部材が対応するような状態で素子基
板1に接合することで形成した。
【0209】次に、図18や図31で示されるような2
流路構成の液体吐出ヘッドの製造工程について説明す
る。
【0210】大まかには、素子基板1上に第2液流路1
6の壁を形成し、その上に分離壁30を取り付け、さら
にその上に第1液流路14を構成する溝等が設けられた
溝付き部材50を取り付ける。もしくは、第2液流路1
6の壁を形成した後、この壁の上に分離壁30を取り付
けた溝付き部材50を接合することでヘッドの製造を行
った。
【0211】さらに第2液流路の作製方法について詳し
く説明する。
【0212】図32(a)〜(e)は、本実施例に適用
可能な液体吐出ヘッドの製造方法の第1の例を説明する
ための概略断面図である。
【0213】本例においては、図32(a)に示すよう
に、素子基板(シリコンウエハ)1上に半導体製造工程
で用いるのと同様の製造装置を用いてハフニュウムボラ
イドやチッ化タンタル等からなる発熱体2を有する電気
熱変換用素子を形成した後、次工程における感光性樹脂
との密着性の向上を目的として素子基板1の表面に洗浄
を施した。さらに、密着性を向上させるには、素子基板
表面に紫外線−オゾン等による表面改質を行った後、例
えばシランカップリング剤(日本ユニカ製:A189)
をエチルアルコールで1重量%に希釈した液を上記改質
表面上にスピンコートすることで達成される。
【0214】次に、表面洗浄を行い、密着性を向上した
基板1上に、図32(b)に示すように、紫外線感光性
樹脂フィルム(東京応化製:ドライフィルム オーディ
ルSY−318)DFをラミネートした。
【0215】次に、図32(c)に示すように、ドライ
フィルムDF上にフォトマスクPMを配し、このフォト
マスクPMを介してドライフィルムDFのうち、第2の
流路壁として残す部分に紫外線を照射した。この露光工
程は、キヤノン(株)製:MPA−600を用いて行
い、約600mJ/cm2 の露光量で行った。
【0216】次に、図32(d)に示すように、ドライ
フィルムDFを、キシレンとブチルセルソルブアセテー
トとの混合液からなる現像液(東京応化製:BMRC−
3)で現像し、未露光部分を溶解させ、露光して硬化し
た部分を第2液流路16の壁部分として形成した。さら
に、素子基板1表面に残った残渣を酸素プラズマアッシ
ング装置(アルカンテック社製:MAS−800)で約
90秒間処理して取り除き、引き続き、150℃で2時
間、さらに紫外線照射100mJ/cm2 を行って露光
部分を完全に硬化させた。
【0217】以上の方法により、上記シリコン基板から
分割、作製される複数のヒータボード(素子基板)に対
し、一様に第2の液流路を精度よく形成することができ
る。シリコン基板を、厚さ0.05mmのダイヤモンド
ブレードを取り付けたダイシングマシン(東京精密製:
AWD−4000)で各々のヒータボード1に切断、分
離した。分離されたヒータボード1を接着剤(東レ製:
SE4400)でアルミベースプレート70上に固定し
た。次いで、予めアルミベースプレート70上に接合し
ておいたプリント配線基板71と、ヒータボード1とを
直径0.05mmのアルミワイヤ(図示略)で接続し
た。
【0218】次に、このようにして得られたヒータボー
ド1に、図32(e)に示すように、上述の方法で溝付
部材50と分離壁30との接合体を位置決め接合した。
すなわち、分離壁30を有する溝付部材とヒータボード
1とを位置決めし、押さえバネ78により係合、固定し
た後、インク・発泡液用供給部材80をアルミベースプ
レート70上に接合固定し、アルミワイヤ間、溝付部材
50とヒータボード1とインク・発泡液用供給部材80
との隙間をシリコーンシーラント(東芝シリコーン製:
TSE399)で封止して完成させた。
【0219】以上の製法で、第2の液流路を形成するこ
とにより、各ヒータボードのヒータに対して位置ズレの
ない精度の良い流路を得ることができる。特に、溝付部
材50と分離壁30とをあらかじめ先の工程で接合して
おくことで、第1液流路14と可動部材31の位置精度
を高めることができる。
【0220】そして、これらの高精度製造技術によっ
て、吐出安定化が図られ印字品位が向上する。また、ウ
エハ上に一括で形成することが可能なため、多量に低コ
ストで製造することが可能である。
【0221】なお、本実施例では、第2の液流路を形成
するために紫外線硬化型のドライフィルムを用いたが、
紫外域、特に248nm付近に吸収帯域をもつ樹脂を用
い、ラミネート後、硬化させ、エキシマレーザで第2の
液流路となる部分の樹脂を直接除去することによっても
得ることが可能である。
【0222】図33(a)〜(d)は、本実施例に適用
可能な液体吐出ヘッドの製造方法の第2の例を説明する
ための概略断面図である。
【0223】本例においては、図33(a)に示すよう
に、SUS基板100上に厚さ15μmのレジスト10
1を第2の液流路の形状でパターニングした。
【0224】次に、図33(b)に示すように、SUS
基板100に対して電気メッキを行ってSUS基板10
0上にニッケル層102を同じく15μm成長させた。
メッキ液としては、スルファミン酸ニッケルに応力減少
剤(ワールドメタル社製:ゼロオール)とほう酸、ピッ
ト防止剤(ワールドメタル社製:NP−APS)、塩化
ニッケルを使用した。電着時の電界のかけ方としては、
アノード側に電極を付け、カソード側に既にパターニン
グしたSUS基板100を取り付け、メッキ液の温度を
50℃とし、電流密度を5A/cm2 とした。
【0225】次に、図33(c)に示すように、上記の
ようなメッキを終了したSUS基板100に超音波振動
を与え、ニッケル層102の部分をSUS基板100か
ら剥離し、所望の第2の液流路を得た。
【0226】一方、電気熱変換用素子を配設したヒータ
ボードを、半導体と同様の製造装置を用いてシリコンウ
エハに形成した。このウエハを先の実施例と同様に、ダ
イシングマシンで各々のヒータボードに分離した。この
ヒータボード1を、予めプリント基板104が接合され
たアルミベースプレート70に接合し、プリント基板7
1とアルミワイヤ(図示略)とを接続することで電気的
配線を形成した。このような状態のヒータボード1上
に、図33(d)に示すように、先の工程で得た第2液
流路と位置決め固定した。この固定に際しては、後工程
で第1の実施例と同様に分離壁を固定した天板と押さえ
バネによって係合・密着されるため、天板接合時に位置
ズレが発生しない程度に固定されていれば十分である。
【0227】本例では、上記位置決め固定に紫外線硬化
型接着剤(グレースジャパン製:アミコンUV−30
0)を塗布し、紫外線照射装置を用い、露光量を100
mJ/cm2 として約3秒間で固定を完了した。
【0228】本例の製法によれば、発熱体に対して位置
ズレのない精度の高い第2の液流路を得ることができる
ことに加え、ニッケルで流路壁を形成しているため、ア
ルカリ性の液体に強く、信頼性の高いヘッドを提供する
ことが可能となる。
【0229】図34(a)〜(d)は、本実施例に適用
可能な液体吐出ヘッドの製造方法の第3の例を説明する
ための概略断面図である。
【0230】本例においては、図34(a)に示すよう
に、アライメント穴あるいはマーク100aを有する厚
さ15μmのSUS基板100の両面にレジスト31を
塗布した。ここで、レジストとしては、東京応化製のP
MERP−AR900を使用した。
【0231】この後、図34(b)に示すように、素子
基板100のアライメント穴100aに合わせて、露光
装置(キヤノン(株)製:MPA−600)を用いて露
光し、第2の液流路を形成すべき部分のレジスト103
を除去した。露光は800mJ/cm2 の露光量で行っ
た。
【0232】次に、図34(c)に示すように、両面の
レジスト103がパターニングされたSUS基板100
を、エッチング液(塩化第2鉄または塩化第2銅の水溶
液)に浸漬し、レジスト103から露出している部分を
エッチングした後、レジストを剥離した。
【0233】次に、図34(d)に示すように、先の製
造方法の実施例と同様に、ヒータボード1上に、エッチ
ングされたSUS基板100を位置決め固定して第2の
液流路4を有する液体吐出ヘッドを組み立てた。
【0234】本例の製法によれば、ヒータに対し位置ズ
レのない精度の高い第2液流路4を得ることができるこ
とに加え、SUSで流路を形成しているため、酸やアル
カリ性の液体に強く信頼性の高い液体吐出ヘッドを提供
することができる。
【0235】以上説明したように、本例の製造方法によ
れば、素子基板状に予め第2液流路の壁を配設すること
によって、電気熱変換体と第2液流路とが高精度に位置
決めすることが可能となる。また、切断、分離前の基板
上の多数の素子基板に対して第2の液流路を同時に形成
することができるので、多量に、かつ、低コストの液体
吐出ヘッドを提供することができる。
【0236】また、本例の製造方法の液体吐出ヘッドの
製造方法を実施することによって得られた液体吐出ヘッ
ドは、発熱体と第2液流路とが高精度に位置決めされて
いるので、電気熱変換体の発熱による発泡の圧力を効率
よく受けることができ、吐出効率に優れたものとなる。
【0237】以上説明した新規ヘッドを用いた本実施形
態のプリント態様について以下に説明する。
【0238】<第1例>上記で説明した低解像度ヘッド
1001Lの代わりに、色材比率が高いインクを吐出液
とした上記新規ヘッドを用い、プリントすべき画像の下
地もしくは低空間周波数領域または高濃度部をプリント
するようにする。これらの画像領域の判別およびそれに
基づく必要な画像データ処理は図3〜図8を参照して説
明したものと同様である。
【0239】本例によれば、染料もしくは顔料等の色材
比率の高いインクは一般には粘性が高くなるが、このよ
うな場合であっても、本実施形態のヘッドであれば良好
に吐出を行うことができ、これにより、特に高濃度を良
好に実現することが可能となる。
【0240】<第2例>本実施形態の新規方式に係るヘ
ッドを、上述したように、ヒータ面積を小さくすること
によって小液滴吐出の構成とすることにより、高解像度
プリント対応とする。そして、上記実施形態2で説明し
たように、画像の下地等の領域を選択的に多重プリント
を行うようにすることができる。この場合は、吐出液と
して色材比率の高いインクを用いる必要はなく通常のイ
ンクを用い、これにより、高周波数の駆動を行うことも
できる。
【0241】<第3例>本実施形態で用いる新規方式の
ヘッドについて、吐出される液滴のサイズを多段階に変
調できる構成とし、これにより上記実施形態1で説明し
た下地等については大サイズの液滴によってプリントす
ることにより、同実施形態と同様の効果を得ることがで
きる。
【0242】図35は、このような液体吐出ヘッドの液
流路の断面図であり、図36(a)は、図35のA−B
線に沿う断面構成をA方向から見た断面図であり、図3
6(b)は図35のC−D線に沿う断面構成をB方向か
ら見た断面図である。
【0243】図35ないし図36に示すように、本発明
の液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱
エネルギーを与える個別に少なくとも1つは独立駆動可
能な電気熱変換素子(以下、発熱体と称する)2−1,
2−2が吐出口配列方向に複数(本実施例では2つ)
と、発熱体に電気信号を印加するための配線電極5−
1,5−2,5−3が形成されている素子基板1上に、
第2の液流路(発泡液流路)16が配置され、その上に
吐出口18に直接連通した第1の液流路(吐出液流路)
14が配置されている。なお、1つの吐出口に対応した
複数の発熱体で発熱部を構成している。第1液流路の上
流側は、複数の第1液流路に吐出液を供給するための第
1共通液室15に連通しており、第2液流路の上流側
は、複数の第2液流路に発泡液を供給するための第2共
通液室17に連通している。そして、第1と第2の流路
の間に、金属等の弾性を有する材料で構成され可動部材
31が形成された分離壁30が配置され、第1の液流路
14内の吐出液と第2の液流路16内の発泡液とを区分
している。なお、発泡液と吐出液とができる限り混ざり
合わない方がよい液体の場合には、この分離壁によって
できる限り完全に第1液流路14と第2液流路16の液
体の流通を分離した方が良いが、発泡液と吐出液とが同
じ液体もしくはある程度混ざり合っても、問題がない場
合には、分離壁に液体の完全分離機能を持たせなくても
よい。図中、50は前記第1の液流路14を構成する壁
とインク吐出口18が一体で成型されている溝つき部材
である。この溝つき部材50と前記素子基板1と分離壁
30とにより、液体吐出ヘッドが構成されている。
【0244】発熱体2−1,2−2の面方向上方への投
影空間(以下吐出圧発生領域という。;図35中のAの
領域とBの気泡発生領域11)に位置する部分の分離壁
は、スリット35によって吐出口側(吐出口へ向かう液
体の流れの下流側)が自由端で、共通液室(15、1
7)側(吐出口へ向かう液体の流れの上流側)に支点3
3が位置する片持梁状の可動部材31となっている。こ
の可動部材31は、気泡発生領域11(B)に面して配
されているため、発泡液の発泡によって第1液流路側に
向けて開口するように動作する(図中矢印方向)。
【0245】また、先にその際、発熱体2−1,2−2
の駆動条件を変化させることでそれにより発生する気泡
の状態と可動部材の変位量を変化させ液体の吐出量を変
えることも可能である。液供給路12と発熱体2との構
造の関係について説明したが、本実施例においても第2
液流路16と発熱体2との構造の関係を同じくしてい
る。なお、本実施例においては発熱体より下流方向の第
2液流路16が行き止まりの構造になっている。
【0246】以上から明らかなように、図35および図
36に示す新規方式のヘッドは、2つのヒータ(発熱
体)のうち駆動するヒータの組合せに応じて吐出量を段
階的に変化させることができるものである。この場合に
おいて、2つのヒータを駆動することによって最大の吐
出量を得ることができ、上述のように下地等はこの最大
吐出量のモードでプリントすることが可能となる。
【0247】なお、以上の実施形態では、高解像度のヘ
ッド1001Hと低解像度のヘッド1001Lを用い、
それぞれのヘッドに適した画像をそれぞれのヘッドでプ
リントする構成について説明した。しかしながら本発明
はこれに限らず、通常のヘッドとは別に下地色のプリン
トに適した吐出特性に設定されたヘッドを設けた構成で
あっても適用されるものである。例えば、下地色のプリ
ントのため濃度ムラが発生しにくいよう調製されたイン
クに適した吐出特性を有するヘッドや、特殊な下地色に
対応するよう吐出力や吐出量などの吐出特性を異ならせ
たヘッドを別途備える構成であってもよい。
【0248】本発明は、プリントすべき画像について、
下地となる部分とそれ以外の部分に分離し、下地となる
部分を吐出量の多い低解像度用ヘッドでプリントし、下
地以外の部分を高解像度用ヘッドでプリントすることに
より、大きな効果が得られるものである。特に、上述し
た新規提案の吐出方式を採用したインクジェットヘッド
によれば従来の吐出方式に比べて吐出量を少なくできる
ため、高解像度用ヘッドとして新規の吐出方式のインク
ジェットヘッドを使用し、低解像度用ヘッドとして従来
の吐出方式のインクジェットヘッドを使用することで、
下地を含む画像を、色の均一性や濃度の面で優れたプリ
ントを行うことができる。また、本発明は上記のように
異なる吐出方式のインクジェットのヘッドの組み合わせ
に限らず、新規提案の吐出方式のインクジェットヘッド
のみにおいても、インクジェットヘッドの駆動条件の変
更や多重打ち込み等の方式の採用によって、下地色の部
分とそれ以外の部分を適切にプリントすることができ
る。
【0249】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、プリントすべき画像において、例えば背景等
の、一定の色または濃度でプリントする所定領域が存在
すると判断した場合は、その領域については吐出量を多
くしてプリントするので、プリント媒体上に形成される
インクドットを元々大きく形成できるとともに、さらに
インクの滲みによってもドットを大きくでき、これによ
り、ドット間のプリント媒体の地の部分を可能な限り少
なくすることができ、その結果、背景の色を均一なもの
とすること、または濃度を増すことが可能となり、特
に、プリント媒体が布帛等の繊維の場合でも同様に色の
均一性等も得ることができる。
【0250】この結果、布帛等に背景等をプリントする
場合でもスクリーン方式と同様の色の均一性や濃度を実
現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット捺染
装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示したインクジェット捺染装置の斜視図
である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット
捺染装置の主に制御構成を示すブロック図である。
【図4】(A),(B)および(C)は、図3に示す構
成における画像分離および解像度変換の処理を説明する
図である。
【図5】図3および図4に示す構成による画像分離に基
づくプリントを説明する図である。
【図6】上記第1の実施形態の変形例の画像分離におけ
る画像データの空間周波数のヒストグラムを示す図であ
る。
【図7】上記変形例の空間周波数を説明する図である。
【図8】上記第1の実施形態の他の変形例に係る画像濃
度のヒストグラムを示す図である。
【図9】第3の実施形態の液体吐出ヘッドの一例を示す
模式断面図である。
【図10】第3の実施形態の液体吐出ヘッドの部分破断
斜視図である。
【図11】従来のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を
示す模式図である。
【図12】第3の実施形態のヘッドにおける気泡からの
圧力伝搬を示す模式図である。
【図13】第3の実施形態の液体の流れを説明するため
の模式図である。
【図14】第3の実施形態の他の例における液体吐出ヘ
ッドの部分破断斜視図である。
【図15】第3の実施形態のさらに他の例における液体
吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【図16】第3の実施形態のさらに他の例における液体
吐出ヘッドの断面図である。
【図17】第3の実施形態のさらに他の例における液体
吐出ヘッドの模式断面図である。
【図18】第3の実施形態のさらに他の例における液体
吐出ヘッド(2流路)の断面図である。
【図19】第3の実施形態のさらに他の例における液体
吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【図20】可動部材の動作を説明するための図である。
【図21】可動部材と第1液流路の構造を説明するため
の図である。
【図22】可動部材と液流路の構造を説明するための図
である。
【図23】可動部材の他の形状を説明するための図であ
る。
【図24】発熱体面積とインク吐出量の関係を示す図で
ある。
【図25】可動部材と発熱体との配置関係を示す図であ
る。
【図26】発熱体のエッジと支点までの距離と可動部材
の変位量の関係を示す図である。
【図27】発熱体と可動部材との配置関係を説明するた
めの図である。
【図28】第3の実施形態の液体吐出ヘッドの縦断面図
である。
【図29】駆動パルスの形状を示す模式図である。
【図30】第3の実施形態の液体吐出ヘッドの供給路を
説明するための断面図である。
【図31】第3の実施形態のヘッドの分解斜視図であ
る。
【図32】第3の実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法
を説明するための工程図である。
【図33】第3の実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法
を説明するための工程図である。
【図34】第3の実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法
を説明するための工程図である。
【図35】第3の実施形態の変形例に係る液体吐出ヘッ
ドの主要構造を示す縦断面図である。
【図36】(a)および(b)は、図35に示したヘッ
ドを情報から見た断面図および上面図である。
【図37】本発明の第1の実施形態に係る画像処理を示
すフローチャートである。
【図38】上記第1の実施形態の変形例に係る画像処理
を示すフローチャートである。
【図39】上記第1の実施形態の他の変形例に係る画像
処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1001H 高解像度(小吐出量)のヘッド 1001L 低解像度(大吐出量)のヘッド 1003 キャリッジ 1004 布帛(プリント媒体) 1005,1006 ヘッド制御部 1007,1008 画像処理部 1009 画像分離部 1010 画像メモリ部 1011 I/F部 1012 シーケンス制御部 1013 キャリッジ駆動部 1014 キャリッジモータ 1015 搬送部 1016 搬送モータ 1017 表示/操作部 1020 ホストコンピュータ

Claims (57)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを吐出するインクジェットヘッド
    を用いてプリント媒体にプリントを行うインクジェット
    プリント装置であって、 プリントすべき画像の画像データに基づいて、当該画像
    における所定の領域を判定し、該所定領域に対応する画
    像データと所定領域以外の領域に対応する画像データと
    に分離する画像分離手段と、 該画像分離手段によって分離されたそれぞれの領域に対
    応する画像データに基づきインクジェットヘッドを駆動
    してプリントを行う制御手段であって、前記所定領域に
    おける画素当りのインク吐出量を前記所定領域以外のそ
    れよりも多くする制御手段と、 を具えたことを特徴とするインクジェットプリント装
    置。
  2. 【請求項2】 前記画像分離手段は、前記所定の色のデ
    ータとプリントすべき画像の画像データとを比較するこ
    とにより、前記所定領域を判定することを特徴とする請
    求項1に記載のインクジェットプリント装置。
  3. 【請求項3】 前記画像分離手段は、前記プリントすべ
    き画像における濃度に関する空間周波数に基づいて、前
    記所定領域を判定することを特徴とする請求項1に記載
    のインクジェットプリント装置。
  4. 【請求項4】 前記画像分離手段は、前記プリントすべ
    き画像における濃度の頻度に基づき、前記所定領域を判
    定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェッ
    トプリント装置。
  5. 【請求項5】 前記所定領域は、前記プリントすべき画
    像の背景領域または高濃度部であることを特徴とする請
    求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェットプリ
    ント装置。
  6. 【請求項6】 インクジェットヘッドとして、インク吐
    出量が互いに異なる第1および第2のインクジェットヘ
    ッドを用い、前記制御手段は、インク吐出量の多い第1
    のインクジェットヘッドを用いて前記所定領域のプリン
    トを行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか
    に記載のインクジェットプリント装置。
  7. 【請求項7】 前記第1および第2のインクジェットヘ
    ッドは、それぞれ複数のインク吐出口を配設し、前記第
    1のインクジェットヘッドにおけるインク吐出口の配列
    密度は、前記第2のインクジェットヘッドの配設密度よ
    り低いことを特徴とする請求項6に記載のインクジェッ
    トプリント装置。
  8. 【請求項8】 前記制御手段は、前記所定領域の画素に
    対し複数回のインク吐出を行うようにすることによっ
    て、当該画素当りのインク吐出量を多くすることを特徴
    とする請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェ
    ットプリント装置。
  9. 【請求項9】 前記制御手段は、前記所定領域に対しイ
    ンクジェットヘッドの吐出周波数を高くすることによっ
    て、前記画素当りのインク吐出量を多くすることを特徴
    とする請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェ
    ットプリント装置。
  10. 【請求項10】 インクジェットヘッドとして、それぞ
    れインクの含有率を異ならせたインクを吐出する第1お
    よび第2のインクジェットヘッドを用い、前記制御手段
    は色材の含有量の多い第1のインクジェットヘッドを用
    いて前記所定領域のプリントを行うことを特徴とする請
    求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェットプリ
    ント装置。
  11. 【請求項11】 前記プリント媒体は、繊維からなる媒
    体であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれ
    かに記載のインクジェットプリント装置。
  12. 【請求項12】 前記所定領域において、当該領域以外
    の領域との境界領域を検出する境界検出手段をさらに具
    え、前記プリント制御手段は、該境界検出手段が検出す
    る境界領域については前記所定領域における前記インク
    吐出量より少ないインク吐出量でプリントを行うことを
    特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のイン
    クジェットプリント装置。
  13. 【請求項13】 インクを吐出するインクジェットヘッ
    ドを用いてプリント媒体にプリントを行うインクジェッ
    トプリント装置であって、 インクジェットヘッドとして、第1のインクジェットヘ
    ッドと、該第1のインクジェットヘッドとは吐出特性を
    異ならせた第2のインクジェットヘッドとを用いるイン
    クジェットプリントにおいて、 プリントすべき画像の画像データに基づいて、前記第1
    のインクジェットヘッドを用いてプリントする領域およ
    び前記第2のインクジェットヘッドを用いてプリントす
    る領域をそれぞれ判定し、該判定の結果に基づいて各々
    の領域に対応する画像データを分離する画像分離手段
    と、 各々の領域に対応する画像データに基づいて前記第1の
    インクジェットヘッドおよび前記第2のインクジェット
    ヘッドを用いてプリントする制御手段と、 を具えたことを特徴とするインクジェットプリント装
    置。
  14. 【請求項14】 前記第1のインクジェットヘッドと前
    記第2のインクジェットヘッドはそれぞれインクの吐出
    量を異ならせることを特徴とする請求項13に記載のイ
    ンクジェットプリント装置。
  15. 【請求項15】 前記第1のインクジェットヘッドと前
    記第2のインクジェットヘッドは、インクを吐出する複
    数の吐出口密度をそれぞれ異ならせたことを特徴とする
    請求項13または14に記載のインクジェットプリント
    装置。
  16. 【請求項16】 前記第1のインクジェットヘッドと前
    記第2のインクジェットヘッドはそれぞれインク吐出の
    周波数を異ならせることを特徴とする請求項13に記載
    のインクジェットプリント装置。
  17. 【請求項17】 前記第1のインクジェットヘッドと前
    記第2のインクジェットヘッドはそれぞれインクの色材
    の含有率を異ならせたことを特徴とする請求項13に記
    載のインクジェットプリント装置。
  18. 【請求項18】 前記第1および第2のインクジェット
    ヘッドの少なくともいずれか一方は、インクを吐出する
    吐出口と、インクに気泡を発生させる気泡発生領域と、
    前記気泡発生領域に面して配され、第1の位置と該第1
    の位置よりも前記気泡発生領域から遠い第2の位置との
    間を変位可能な可動部材とを有し、該可動部材は、前記
    気泡発生領域での気泡の発生に基づく圧力によって、前
    記第1の位置から前記第2の位置へ変位すると共に、前
    記可動部材の変位によって前記気泡を吐出口に向かう方
    向の上流よりも下流に大きく膨張させることでインクを
    吐出するインクジェットヘッドであることを特徴とする
    請求項1ないし17のいずれかに記載のインクジェット
    プリント装置。
  19. 【請求項19】 前記可動部材の変位によって、前記気
    泡の下流部分が前記可動部材より下流に成長することを
    特徴とする請求項18に記載のインクジェットプリント
    装置。
  20. 【請求項20】 前記可動部材は、支点と、該支点より
    下流側に位置する自由端とを有することを特徴とする請
    求項19に記載のインクジェットプリント装置。
  21. 【請求項21】 前記第1および第2のインクジェット
    ヘッドの少なくともいずれか一方は、インクを吐出する
    吐出口と、インクに熱を加えることで該インクに気泡を
    発生させる発熱体と該発熱体に沿った該発熱体より上流
    側から前記発熱体上にインクを供給するための供給路と
    を有する液流路と、前記発熱体に面して設けられ吐出口
    側に自由端を有し前記気泡の発生による圧力に基づいて
    前記自由端を変位させて前記圧力を吐出口側に導く可動
    部材と、を有するインクジェットヘッドであることを特
    徴とする請求項13ないし17のいずれかに記載のイン
    クジェットプリント装置。
  22. 【請求項22】 前記第1および第2のインクジェット
    ヘッドの少なくともいずれか一方は、インクを吐出する
    吐出口と、インクに熱を加えることで該インクに気泡を
    発生させる発熱体と、前記発熱体に面して設けられ吐出
    口側に自由端を有し前記気泡の発生による圧力に基づい
    て前記自由端を変位させて前記圧力を吐出口側に導く可
    動部材と、前記可動部材の前記発熱体に近い面に沿った
    上流側から前記発熱体上にインクを供給する供給路と、
    を有するインクジェットヘッドであることを特徴とする
    請求項1ないし17のいずれかに記載のインクジェット
    プリント装置。
  23. 【請求項23】 前記第1および第2のインクジェット
    ヘッドの少なくともいずれか一方は、吐出口に連通した
    第1の液流路と、 インクに熱を加えることで該インクに気泡を発生させる
    気泡発生領域を有する第2の液流路と、 前記第1の液流路と前記気泡発生領域との間に配され、
    吐出口側に自由端を有し、前記気泡発生領域内での気泡
    の発生による圧力に基づいて該自由端を前記第1の液流
    路側に変位させて前記圧力を前記第1の液流路の吐出口
    側に導く可動部材とを有するインクジェットヘッドであ
    ることを特徴とする請求項13ないし17のいずれかに
    記載のインクジェットプリント装置。
  24. 【請求項24】 前記可動部材に面した位置に発熱体が
    設けられており、該可動部材と該発熱体との間が前記気
    泡発生領域であることを特徴とする請求項22に記載の
    インクジェットプリント装置。
  25. 【請求項25】 前記可動部材の自由端は、前記発熱体
    の面積中心より下流に位置することを特徴とする請求項
    24に記載のインクジェットプリント装置。
  26. 【請求項26】 前記該発熱体に沿った該発熱体より上
    流から前記発熱体上にインクを供給するための供給路を
    有することを特徴とする請求項24に記載のインクジェ
    ットプリント装置。
  27. 【請求項27】 前記供給路は、前記発熱体より上流側
    に実質的に平坦、もしくはなだらかな内壁を有し、該内
    壁に沿ってインクを前記発熱体上に供給する供給路であ
    ることを特徴とする請求項26に記載のインクジェット
    プリント装置。
  28. 【請求項28】 前記気泡は前記発熱体が発生する熱に
    よってインクに膜沸騰を生じることで発生する気泡であ
    ることを特徴とする請求項24に記載のインクジェット
    プリント装置。
  29. 【請求項29】 前記可動部材は板状であることを特徴
    とする請求項20,24に記載のインクジェットプリン
    ト装置。
  30. 【請求項30】 前記発熱体の有効発泡領域の総てが前
    記可動部材に面していることを特徴とする請求項29に
    記載のインクジェットプリント装置。
  31. 【請求項31】 前記発熱体の全面が前記可動部材に面
    していることを特徴とする請求項29に記載のインクジ
    ェットプリント装置。
  32. 【請求項32】 前記可動部材の総面積が前記発熱体の
    総面積より大であることを特徴とする請求項29に記載
    のインクジェットプリント装置。
  33. 【請求項33】 前記可動部材の支点が前記発熱体の直
    上から外れた位置に配されていることを特徴とする請求
    項29に記載のインクジェットプリント装置。
  34. 【請求項34】 前記可動部材の自由端は前記発熱体が
    配された液流路を実質的に直交する形状を有することを
    特徴とする請求項29に記載のインクジェットプリント
    装置。
  35. 【請求項35】 前記可動部材の前記自由端は前記発熱
    体より吐出口側に配されていることを特徴とする請求項
    29に記載のインクジェットプリント装置。
  36. 【請求項36】 前記可動部材は前記第1液流路と第2
    液流路との間に配された分離壁の一部として構成されて
    いることを特徴とする請求項23に記載のインクジェッ
    トプリント装置。
  37. 【請求項37】 前記分離壁は、金属材料で構成されて
    いることを特徴とする請求項36に記載のインクジェッ
    トプリント装置。
  38. 【請求項38】 前記金属材料は、ニッケル若しくは金
    であることを特徴とする請求項37記載のインクジェッ
    トプリント装置。
  39. 【請求項39】 前記分離壁は、樹脂で構成されている
    ことを特徴とする請求項36に記載のインクジェットプ
    リント装置。
  40. 【請求項40】 前記分離壁は、セラミックスで構成さ
    れていることを特徴とする請求項36に記載のインクジ
    ェットプリント装置。
  41. 【請求項41】 前記第1の液流路の複数に第1のイン
    クを供給するための第1の共通液室と、前記第2の液流
    路の複数に第2のインクを供給するための第2の共通液
    室とが配されていることを特徴とする請求項23に記載
    のインクジェットプリント装置。
  42. 【請求項42】 前記第1および第2のインクジェット
    ヘッドの少なくともいずれか一方は、インクを吐出する
    ための複数の吐出口と、それぞれの吐出口に対応して直
    接連通する複数の第1の液流路を構成するための複数の
    溝と、前記複数の第1の液流路にインクを供給するため
    の第1の共通液室を構成する凹部とを一体的に有する溝
    付き部材と、 インクに熱を与えることでインクに気泡を発生させるた
    めの複数の発熱体が配された素子基板と、 前記溝付き部材と該素子基板との間に配され、前記発熱
    体に対応した第2の液流路の壁の一部を構成すると共
    に、前記発熱体に面した位置に前記気泡の発生に基づく
    圧力によって前記第1の液流路側に変位する可動部材と
    を具備した分離壁と、を有するインクジェットヘッドで
    あることを特徴とする請求項13ないし17のいずれか
    に記載のインクジェットプリント装置。
  43. 【請求項43】 前記可動部材の自由端は前記発熱体の
    面積中心より下流側に位置することを特徴とする請求項
    42に記載のインクジェットプリント装置。
  44. 【請求項44】 前記溝付き部材には、前記第1の共通
    液室にインクを導入するための第1導入路と、前記第2
    の共通液室にインクを導入するための第2導入路とを有
    することを特徴とする請求項42に記載のインクジェッ
    トプリント装置。
  45. 【請求項45】 前記溝付き部材には、前記第2導入路
    が複数設けられていることを特徴とする請求項44に記
    載のインクジェットプリント装置。
  46. 【請求項46】 前記第1導入路の断面積と前記第2導
    入路の断面積の比は、各インクの供給量に比例している
    ことを特徴とする請求項44に記載のインクジェットプ
    リント装置。
  47. 【請求項47】 前記第2導入路は、前記分離壁を貫通
    して前記第2の共通液室にインクを供給する導入路であ
    ることを特徴とする請求項44に記載のインクジェット
    プリント装置。
  48. 【請求項48】 前記第1の液流路に供給されるインク
    と前記第2の液流路に供給されるインクとが同じインク
    であることを特徴とする請求項42に記載のインクジェ
    ットプリント装置。
  49. 【請求項49】 前記第1の液流路に供給されるインク
    と前記第2の液流路に供給されるインクとが異なるイン
    クであることを特徴とする請求項42に記載のインクジ
    ェットプリント装置。
  50. 【請求項50】 前記第2の液流路に供給されるインク
    は、前記第1の液流路に供給されるインクに比べ、低粘
    度性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性質で優れ
    ているインクであることを特徴とする請求項49に記載
    のインクジェットプリント装置。
  51. 【請求項51】 前記発熱体は電気信号を受けることで
    熱を発生する発熱抵抗体を有する電気熱変換体であるこ
    とを特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリ
    ント装置。
  52. 【請求項52】 前記電気熱変換体は前記発熱抵抗体上
    に、保護膜を配したものであることを特徴とする請求項
    51に記載のインクジェットプリント装置。
  53. 【請求項53】 前記素子基板上には前記電気熱変換体
    に電気信号を伝えるための配線と、前記電気熱変換体に
    選択的に電気信号を与えるための機能素子が配されてい
    ることを特徴とする請求項51に記載のインクジェット
    プリント装置。
  54. 【請求項54】 前記気泡発生領域もしくは発熱体が配
    された部分の前記第2液流路の形状は室形状であること
    を特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリン
    ト装置。
  55. 【請求項55】 前記第2流路の形状は、気泡発生領域
    もしくは発熱体の上流で狭窄部を有する形状であること
    を特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリン
    ト装置。
  56. 【請求項56】 前記発熱体の表面から前記可動部材ま
    での距離が30μm以下であることを特徴とする請求項
    42に記載のインクジェットプリント装置。
  57. 【請求項57】 前記第1および第2インクジェットヘ
    ッドの少なくとも一方は前記発熱体を複数有し、前記制
    御手段は、該複数の発熱体を選択的に駆動することによ
    り、当該選択に応じた吐出量でインクを吐出させること
    を特徴とする請求項42に記載のインクジェットプリン
    ト装置。
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