JPH1072634A - 耐アルカリ腐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

耐アルカリ腐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材

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JPH1072634A
JPH1072634A JP8249294A JP24929496A JPH1072634A JP H1072634 A JPH1072634 A JP H1072634A JP 8249294 A JP8249294 A JP 8249294A JP 24929496 A JP24929496 A JP 24929496A JP H1072634 A JPH1072634 A JP H1072634A
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clad
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宏和 田中
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性、とくにクーラントなどのアルカリ性
溶液に対する耐食性に優れ、自動車用ラジエータ、ヒー
タコアなどのチューブ材、ヘッダープレート材などとし
て好適に使用できるアルミニウム合金クラッド材を提供
する。 【解決手段】 芯材、犠牲陽極材、ろう材の3層クラッ
ド材において、犠牲陽極材を、Fe:0.5〜3.0 %、N
i:0.1〜3.0 %を含有し、FeおよびNiの合計含有量
を3.0 %以下とし、残部Alおよび不可避的不純物から
なり、必要に応じてMg、Zn、Sn、Gaのうちの1
種以上を含むアルミニウム合金で構成し、芯材をMn:
0.3〜2.0 %、Cu:0.10 〜0.8 %の1種または2種を
含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミ
ニウム合金で構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐アルカリ腐食性
に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッド材、詳し
くは、フッ化物系フラックスを用いる不活性ガス雰囲気
ろう付けあるいは真空ろう付けにより、自動車用のラジ
エータ、ヒータコアなどのアルミニウム製熱交換器を製
造する場合、その構成部材であるチューブ材、プレート
材などとして適用でき、とくに、当該熱交換器において
通常使用されるクーラントによるアルカリ腐食性環境に
対して優れた耐食性をそなえた熱交換器用アルミニウム
合金クラッド材に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用のラジエータやヒータコアのチ
ューブ材、ヘッダープレート材としては、3003合金など
のAl−Mn系合金からなる芯材の片面にAl−Si系
ろう材をクラッドし、他の面に、犠牲陽極材として、A
l−Zn系合金をクラッドした3層のアルミニウム合金
クラッド材が使用されている。
【0003】当該アルミニウム合金クラッド材におい
て、Al−Si系ろう材は、フッ化物系フラックスを用
いる不活性ガス雰囲気ろう付けあるいは真空ろう付けに
より行われるチューブ材とフィン材との接合、チューブ
材とヘッダープレート材との接合のために設けられるも
のであり、犠牲陽極材は、ラジエータやヒータコアなど
のアルミニウム製熱交換器に組立てられた場合、作動流
体に対して犠牲陽極効果を発揮して芯材の孔食、隙間腐
食を防ぐために設けられるものである。
【0004】これらの熱交換器においては、作動流体と
して、一般に、クーラントとして市販されているエチレ
ングリコールを主成分とする不凍液を水で0 〜50vol %
濃度に希釈した中性〜弱アルカリ性の溶液が使用されて
いるが、作動流体によって、チューブなどを構成する前
記アルミニウム合金クラッド材に芯材を貫通する孔食が
生じ、熱交換機能を損なうことがしばしば経験されてい
る。
【0005】芯材の成分組成と犠牲陽極材の成分組成と
の組合わせを検討することにより、耐孔食性を高め、優
れた犠牲陽極効果を有する耐食性アルミニウム合金クラ
ッド材として、例えば、芯材を、Mn:0.3〜2.0 %、M
g:0.10 〜0.80%、Cu:0.05 〜0.50%を含有し、残部
Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で
構成し、芯材の一方側にクラッドされた皮材を、Zn:
0.3〜2.0 %、Mg:0.1〜2.5 %を含有し、残部Alお
よび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成
し、さらに、芯材の他方側にクラッドされた皮材を、S
i:7.0〜15.0%、Mg:0.3〜2.5 %を含有し、残部Al
および不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成
したクラッド材が提案されている。(特公昭62-45301号
公報)
【0006】また、アルミニウム合金芯材の片面にAl
合金ろう材を、他面に犠牲陽極材をクラッドした3層の
アルミニウム合金クラッド材において、犠牲陽極材とし
て、Zn:0.5〜3 %、Ti:0.05 〜3 %、Mg:0.1〜5
%、Si:0.3〜1.5 %、必要に応じて、さらに少量のS
n、In、Ca、Liのうちの1種または2種以上を含
有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるAl合金
を使用するもの(特開平5-239580号公報) 、芯材が、M
n:0.3〜2.0 %、Cu:0.25 〜0.8 %、Si:0.2〜1.0
%、Mg:0.5%以下、Ti:0.35 %以下を含有し、残部
Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で
構成され、犠牲陽極材が、Zn:0.5〜2.0 %、Mg:1.2
〜2.5 %、Si:0.2〜0.8 %を含有し、残部Alおよび
不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成される
もの(特開平4-198447号公報) も提案されている。
【0007】これらのアルミニウム合金クラッド材は、
ラジエータ、ヒータコアなどのアルミニウム製熱交換器
のチューブ材などとして使用された場合、作動流体が、
比較的低温で且つ中性〜弱酸性でClイオンを含む溶液
の場合には優れた犠牲陽極効果を発揮するが、作動流体
がpH9 以上のアルカリ性の溶液の場合には、なお耐食
性が十分でなく、孔食が生じ、防食効果を発揮できない
場合も多い。
【0008】発明者らは、pH9 以上のアルカリ溶液中
において、犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金
クラッド材に生じる孔食発生の原因およびその対策を検
討する過程において、アルカリ環境の下では、犠牲陽極
層の表面に、褐色〜黒色を呈する多孔質の厚い皮膜が生
成し、皮膜の欠陥部に腐食が集中して優先腐食すること
により貫通孔が生じることを見出した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の知見
に基づいて、芯材と犠牲陽極材の電位差を利用して犠牲
陽極材を優先腐食させるが、その腐食形態を全面腐食と
するするような芯材と犠牲陽極材との組合わせについて
多角的な実験、検討を行った結果としてなされたもので
あり、その目的は、耐アルカリ腐食性に優れ、アルカリ
性を有する作動流体を使用した場合にも、孔食による貫
通孔の発生を防止できる熱交換器用アルミニウム合金ク
ラッド材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による耐アルカリ腐食性に優れた熱交換器用
アルミニウム合金クラッド材は、アルミニウム合金より
なる芯材の片面にAl−Si系ろう材をクラッドし、他
の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラ
ッド材において、犠牲陽極材が、Fe:0.5〜3.0 %、N
i:0.1〜3.0 %を含有し、FeおよびNiの合計含有量
を3.0 %以下とし、残部Alおよび不可避的不純物から
なるアルミニウム合金で構成され、芯材が、Mn:0.3〜
2.0 %、Cu:0.10 〜0.8 %の1種または2種を含有
し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウ
ム合金で構成されることを構成上の第1の特徴とする。
【0011】第2の特徴は、犠牲陽極材が、Fe:0.5〜
3.0 %、Ni:0.1〜3.0 %を含有し、FeおよびNiの
合計含有量を3.0 %以下とし、さらにMg:0.1〜2.5
%、Zn:0.5〜4.0 %、Sn:0.01 〜0.2 %、Ga:0.0
1 〜0.2 %のうちの1種または2種以上を含み、残部A
lおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で構
成されること、第3の特徴は、犠牲陽極材が、さらにC
r:0.05 〜0.3 %、Zr:0.05 〜0.3 %、Ti:0.05 〜
0.3 %、B:0.01 〜0.1 %、Mn:0.1〜2.0 %、Si:
0.1〜1.0 %のうちの1種または2種以上を含有するこ
と、第4の特徴は、芯材が、さらにCr:0.05 〜0.3
%、Zr:0.05 〜0.3 %、Ti:0.05 〜0.3 %、B:0.0
1 〜0.1 %のうちの1種または2種以上を含有すること
にある。
【0012】また、芯材の片面にAl−Si系ろう材を
クラッドし、他の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミ
ニウム合金クラッド材において、犠牲陽極材が、Fe:
0.5〜3.0 %、Ni:0.1〜3.0 %を含有し、Feおよび
Niの合計含有量を3.0 %以下とし、残部Alおよび不
可避的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、芯
材が、Mn:0.3〜2.0 %、Cu:0.10 〜0.8 %の1種ま
たは2種を含み、さらにMg:0.1〜0.5 %、Si:0.1〜
1 %を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる
アルミニウム合金で構成されることを構成上の第5の特
徴とし、上記の組合わせにおいて、犠牲陽極材が、さら
にMg:0.1〜2.5 %、Zn:0.5〜3.0 %、Sn:0.01 〜
0.2 %、Ga:0.01 〜0.2 %のうちの1種または2種以
上を含有することを第6の特徴とする。
【0013】さらに、第7の特徴は、犠牲陽極材が、M
g、Zn、Sn、Gaのうちの1種または2種以上に加
えて、Cr:0.05 〜0.3 %、Zr:0.05 〜0.3 %、T
i:0.05 〜0.3 %、B:0.01 〜0.1 %、Mn:0.1〜2.0
%、Si:0.1〜1.0 %の1種または2種以上を含有する
こと、第8の特徴は、芯材が、Mn、Cu、Mg、Si
に加えて、さらにCr:0.05 〜0.3 %、Zr:0.05 〜0.
3 %、Ti:0.05 〜0.3%、B:0.01 〜0.1 %のうちの
1種または2種を含有することにある。
【0014】本発明における合金成分の意義およびその
限定理由について説明すると、犠牲陽極材中のFeおよ
びNiは最も重要な成分であり、Feは、マトリックス
中にAl−Fe系化合物を微細に分散させ、材料表面に
存在する化合物の位置において、皮膜成分である水酸化
アルミニウムの沈着を妨げ皮膜の生成を抑制する結果、
その部分が皮膜欠陥となって孔食が生じるが、皮膜欠陥
は微細に分散しているAl−Fe系化合物の周辺に存在
し、従って、その数は多く且つ均一に分布するから、孔
食も分散して腐食深さが浅くなり、貫通孔は生じない。
Feの好ましい含有範囲は0.5 〜3.0 %であり、0.5 %
未満ではその効果が小さく、3.0 %を越えて含有すると
犠牲陽極材の自己腐食性が増大するとともに、圧延加工
性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.7 〜
1.2 %である。
【0015】Niは、マトリックス中にAl−Ni系化
合物を微細に分散させ、材料表面に存在する化合物の位
置において、皮膜成分である水酸化アルミニウムの沈着
を妨げ皮膜の生成を抑制する結果、その部分が皮膜欠陥
となって孔食が生じるが、皮膜欠陥は微細に分散してい
るAl−Ni系化合物の周辺部に存在し、従って、その
数は多く且つ均一に分布するから、孔食も分散して腐食
深さが浅くなり、貫通孔の発生が防止される。Niの好
ましい含有範囲は0.1 〜3.0 %であり、0.1 %未満では
その効果が十分でなく、3.0 %を越えると、犠牲陽極材
の自己腐食性が増大するとともに、圧延加工性が劣化す
る。Niのさらに好ましい含有量は0.5〜1.2 %の範囲
である。
【0016】FeおよびNiの両者を含有させた場合
は、Al−Fe−Ni系化合物が生成し、これらがマト
リックス中に微細に分散することにより、上記Al−F
e系化合物およびAl−Ni系化合物と同様に機能す
る。また、FeおよびNiはアルミニウムに対する固溶
度が低く、ほとんどマトリックス中に晶出する。Feお
よびNiの合計含有量は、3.0 %以下の範囲が好まし
い。犠牲陽極材中のMgは、熱交換器の組立てにおける
加熱ろう付け中に芯材内部に拡散し、芯材中のSi、C
uとともに芯材の強度を高める。好ましい含有範囲は0.
1 〜2.5 %で、0.1 %未満ではその効果が小さく、2.5
%を越えて含有すると、ろう付け中に局部溶解が生じ易
い。
【0017】Znは、犠牲陽極材の電位を卑にして、芯
材に対する犠牲陽極効果を保持し、芯材の孔食や隙間腐
食を防止する。好ましい含有量は0.5 〜4.0 %の範囲で
あり、0.5 %未満ではその効果が十分でなく、4.0 %を
越える自己腐食性が低下する。Znのさらに好ましい含
有範囲は1.0 〜2.0 %である。Sn、Gaは、犠牲陽極
材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を確実に
発揮させ、芯材における孔食の発生、隙間腐食の発生を
防止するために機能する。好ましい含有量は、Sn:0.0
1 〜0.2 %、Ga:0.01 〜0.2 %の範囲であり、それぞ
れ下限未満ではその効果が小さく、それぞれ上限をを越
えて含有すると、自己腐食性が低下するとともに、圧延
加工性が害される。SnおよびGaのさらに好ましい含
有範囲は0.01〜0.05%である。なお、犠牲陽極材中に、
Cr0.05〜0.3 %、Zr:0.05 〜0.3 %、Ti:0.05 〜
0.3 %、B:0.01 〜0.1 %、Mn:0.1〜2.0 %、Si:
0.1〜1.0 %のうちの1種または2種以上を添加しても
本発明の性能に影響を与えることはなく、特性を改善す
ることもできる。
【0018】本発明においては、犠牲陽極材として、上
記組成のアルミニウム合金を使用し、芯材として、特定
量のMnおよび/またはCuを含有するアルミニウム合
金、およびMn、Cuに加え、さらに特定量のMg、S
iを含むアルミニウム合金を組合わせて使用した場合、
優れた効果を得ることができる。
【0019】芯材中のMnは、芯材の強度を向上させる
とともに、芯材の電位を貴にして犠牲陽極材との電位差
を大きくして耐食性を高めるよう機能する。好ましい含
有範囲は0.3 〜2.0 %であり、0.3 %未満ではその効果
が小さく、2.0 %を越えて含有すると、鋳造時に粗大な
化合物が生成し、圧延加工性が害される結果、健全な板
材が得難い。Mnのさらに好ましい含有量は0.5 〜1.5
%の範囲である。
【0020】Cuは、芯材の強度を向上させるととも
に、芯材の電位を貴にし、犠牲陽極材との電位差、ろう
材との電位差を大きくして、防食効果を向上させるよう
機能する。さらに、芯材中のCuは、加熱ろう付け時
に、犠牲陽極材中およびろう材中に拡散して、なだらか
な濃度勾配を形成させる結果、芯材側の電位は貴とな
り、犠牲陽極材の表面側およびろう材の表面側の電位は
卑となって、犠牲陽極材中およびろう材中になだらかな
電位分布が形成され、腐食形態を全面腐食型にする。C
uの好ましい含有量は0.10〜0.8 %の範囲であり、0.10
%未満ではその効果が小さく、0.8 %を越えると、芯材
の耐食性が低下し、また融点が低下して、ろう付け時に
局部的な溶融が生じ易くなる。Cuのさらに好ましい含
有範囲は0.3 〜0.6 %である。
【0021】Mgは、芯材の強度を向上させる効果を有
するが、ろう付け性低下が懸念されることから、含有量
を0.5 %以下に制限する。フッ化物系のフラックスを使
用する不活性ガス雰囲気ろう付けの場合、Mg量が0.5
%を越えると、Mgがフッ化物系フラックスと反応して
ろう付け性が阻害され、Mgのフッ化物が生成してろう
付け部の外観がわるくなる。真空ろう付けの場合には、
心材中のMgが0.5 %を越えると、溶融ろうが芯材を浸
食し易くなる。Mgの好ましい含有範囲は0.1〜0.5 %
である。
【0022】Siは、芯材の強度を向上させる機能を有
する。とくに、ろう付け中に犠牲陽極材から拡散してく
るMgと共存することにより、ろう付け後、時効硬化を
生ぜしめ、強度をさらに高める。好ましい含有範囲は0.
1 〜1.0 %以下であり、0.1%未満では効果が小さく、
1.0 %を越えて含有すると、耐食性を低下させるととも
に、芯材の融点を下げ、ろう付け時に局部溶融が生じ易
くなる。MgおよびSiのさらに好ましい含有量は、そ
れぞれ0.2 〜0.5 %および0.2 〜0.5 %の範囲である。
【0023】本発明の芯材中に、0.05〜0.3 %のCr、
0.05〜0.3 %のZr、0.05〜0.3 %のTi、0.01〜0.1
%のBを添加しても、その性能に影響を与えることはな
く、特性を改善することもできる。すなわち、Cr、Z
r、Bは、ろう付け加熱中に、ろう材が芯材中へ侵入す
るのを抑制する機能を有する。それぞれ下限未満ではそ
の効果が小さく、上限を越えると、鋳造時の巨大晶出物
が生成し、健全な材料の製造が困難となり易い。
【0024】Tiは、材料の板厚方向に濃度の高い領域
と低い領域とを形成し、それが交互に層状に分布する。
Ti濃度の低い領域はTi濃度の高い領域に比べて優先
的に腐食するため、腐食形態は層状となり、板厚方向へ
の腐食の進行を妨げ、材料の耐孔食性を向上させる。0.
05%未満ではその効果が小さく、0.3 %を越えると、鋳
造時に巨大晶出物が生成し、健全な材料の製造が難しく
なる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の熱交換器用アルミニウム
合金クラッド材は、芯材、犠牲陽極材およびろう材を構
成するアルミニウム合金を、半連続鋳造により造塊し、
芯材および犠牲陽極材については均質化処理したのち、
それぞれ所定厚さまで熱間圧延する。ついで、各材料を
組合わせ、常法に従って、熱間圧延によりクラッド材と
し、最終的に所定厚さまで冷間圧延する工程を経て製造
される。
【0026】本発明のアルミニウム合金クラッド材から
溶接管を製造して熱交換器用チューブ材とし、またヘッ
ダープレート材として、自動車用のラジエータやヒータ
コアなどのアルミニウム製熱交換器の組立てに使用する
場合には、アルミニウム合金のフィン材を組合わせ、ろ
う付け炉中において、フッ化物系フラックスを用いる不
活性ガス雰囲気ろう付け、あるいは真空ろう付けを行
う。
【0027】そのために、本発明のアルミニウム合金ク
ラッド材において、芯材の片面にはAl−Si系ろう材
がクラッドされる。この場合、不活性ガス雰囲気ろう付
け用としては、基本的にSi:6〜13%を含有するAl−
Si合金が適用され、真空ろう付け用としては、さら
に、例えばMg:0.5〜3.0 %を含むAl−Si−Mg合
金が適用される。これらのAl−Si系ろう材には、B
i:0.1%以下、Be:0.1%以下、Ca:1.0%以下、L
i:1.0%以下のうちの1種または2種以上を含有させる
こともできる。
【0028】
【実施例】
実施例1 連続鋳造により、表1に示す組成を有する芯材用アルミ
ニウム合金、表2に示す組成を有する犠牲陽極材用アル
ミニウム合金、およびろう材用合金(JIS BA4343、S
i:7.5%、残部Alおよび不可避的不純物)を造塊し
た。芯材用アルミニウム合金および犠牲陽極材用アルミ
ニウム合金の鋳塊については均質化処理を行い、犠牲陽
極材用アルミニウム合金およびろう材用合金の鋳塊を所
定の厚さまで熱間圧延し、これらの圧延材と芯材用合金
の鋳塊を組合わせて熱間圧延し、クラッド材とした。さ
らに冷間圧延、中間焼鈍を行い、最終冷間圧延により厚
さ0.25mmのクラッド板材(H14) を作製した。クラッド板
材の厚さ構成は、ろう材の厚さ0.025mm(クラッド率10
%)、犠牲陽極材の厚さは0.025 〜0.075mm(クラッド率
10〜30%)とした。
【0029】
【表1】 《表注》Feは不可避的不純物
【0030】
【表2】 《表注》試験材a 〜l のSiは不可避的不純物
【0031】得られたクラッド板材のろう材側に、M
n:1.2%、Cu:1.5%を含有し、残部Alおよび不可避
的不純物からなるアルミニウム合金板(厚さ0.10mm) を
コルゲート加工してなるフィン材を配置し、フッ化物系
フラックスを使用して、窒素ガス雰囲気中で600 ℃( 材
料温度) の温度に加熱し、ろう付けを行ったのち、ろう
付け後の板材とフィンの接合状況を目視により観察し、
芯材および犠牲陽極材の溶融状況を断面組織観察により
調べた。
【0032】つぎに、クラッド板材にフィン材を配置す
ることなく、クラッド板材を、そのままの状態で、上記
フッ化物系フラックスを使用するろう付けと同じ条件で
加熱して試験材とし、以下に示すような腐食試験を行っ
た。 腐食試験1:ろう材側(外面側)について、CASS試
験(試験期間30日) を行った。
【0033】腐食試験2:犠牲陽極材側(内面側)につ
いて、市販の不凍液を、蒸留水により30vol %濃度に希
釈し、苛性ソーダを加えてpH10に調整した腐食液を使
用して、試験材を、88℃の温度に加熱した腐食液中に8h
浸漬したのち、冷却して25℃の温度に16h 保持するとい
うサイクルを3 カ月間繰り返した。
【0034】腐食試験3:犠牲陽極材側(内面側)につ
いて、Cl- :195ppm 、SO4 2 - :60ppm、Cu2+:1ppm
、Fe3+:30ppmを含む水溶液を腐食液とし、試験材
を、88℃の温度に加熱した腐食液中に8h浸漬したのち、
冷却して25℃の温度に16h 保持するというサイクルを3
カ月間繰り返した。
【0035】芯材と犠牲陽極材の組合わせ、その場合の
ろう付け性および腐食試験の結果を表3に示す。表3に
みられるように、本発明に従う試験材は、いずれも、圧
延加工性は良好で割れなどの欠陥を生じることがなく、
また、ろう付け部の接合状況も良好で、芯材、犠牲陽極
材に局部溶融も観察されず、腐食試験1による最大腐食
深さは、いずれも0.10mm以下で、クラッド板材の板厚の
半分程度にしか達しておらず、また腐食試験2、3によ
る最大腐食深さは0.10mm以下で、板厚の1/3にも達し
ない優れた耐食性を示した。なお、犠牲陽極材のクラッ
ド率10〜30%の範囲で、本発明の効果が十分に発揮され
た。
【0036】
【表3】 《表注》圧延加工性 ○: 良好 ろう付け性 ○: 良好
【0037】比較例1 連続鋳造により、表4に示す組成を有する芯材用アルミ
ニウム合金、表5に示す組成の犠牲陽極材用アルミニウ
ム合金、およびろう材用合金(JIS BA4343、Si:7.5
%、残部Alおよび不可避的不純物)を造塊し、実施例
1と同一の条件により、厚さ0.25mmのクラッド板材(ろ
う材厚:0.025mm、犠牲陽極材厚:0.025mm)を作製した。
得られたクラッド板材について、実施例1と同じ方法で
ろう付けを行い、また実施例1と同じ条件で腐食試験の
試験材を作製し、ろう付け接合状況の目視観察、断面組
織観察、および腐食試験を行った。結果を表6に示す。
なお、表4、表5において、本発明の条件を外れたもの
( 但し、表3については請求項3以下の条件を外れたも
の)には下線を付した。
【0038】
【表4】 《表注》Feは不可避的不純物
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】 《表注》圧延加工性 ○:良好 ×:割れ発生 ろう付け性 ○:良好 △:局部溶融有り ×:局部溶融が激しい
【0041】表6にみられるように、試験材No.18 は、
犠牲陽極材中のFe量が少ないため、腐食試験2におい
て孔食による貫通孔が生じた。試験材No.19 は犠牲陽極
材中のFe量が多過ぎ、試験材No.20 は犠牲陽極材中の
Ni量が多過ぎ、試験材No.21 は犠牲陽極材中のFeお
よびNiの合計含有量が多過ぎ、試験材No.23 は犠牲陽
極材中のZn量が多いため、いずれも腐食試験3におい
て腐食深さが大きくなっている。
【0042】試験材No.22 は犠牲陽極材中のMg量が多
過ぎるため、ろう付け時に局部溶融が生じ、腐食試験材
の製造ができなかった。試験材No.24 は犠牲陽極材中の
Sn含有量が多過ぎ、試験材No.25 が犠牲陽極材のGa
の含有量が多過ぎ、また試験材No.28 は芯材中のMn量
が多過ぎて鋳造時に粗大な化合物が生成されたため、い
ずれも圧延加工において割れが発生し、クラッド板材を
製造することができなかった。
【0043】試験材No.26 は芯材中のSi量が多過ぎて
芯材の融点が低下したため、また、試験材No.30 は芯材
中のCu含有量が多過ぎるため、いずれもろう付け時に
局部溶解が生じた。また試験材No.31 は芯材中のMg量
が高過ぎて、ろう付けにおいて局部融解が生じたため、
腐食試験材の製造ができなかった。試験材No.27 は、芯
材中のMn量が低過ぎ、試験材No.29 は芯材中のCu量
が低いため、いずれも腐食試験において腐食深さが大き
い。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、耐食性、とくに耐アル
カリ腐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッ
ド材が提供される。このアルミニウム合金クラッド材
は、とくに自動車用ラジエータ、ヒータコアなどのチュ
ーブ材、ヘッダープレート材として好適に使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F28F 19/06 F28F 19/06 A

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金よりなる芯材の片面に
    Al−Si系のろう材をクラッドし、他の面に犠牲陽極
    材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材におい
    て、犠牲陽極材が、Fe:0.5〜3.0 %(重量%、以下同
    じ)、Ni:0.1〜3.0 %を含有し、FeおよびNiの合
    計含有量を3.0 %以下とし、残部Alおよび不可避的不
    純物からなるアルミニウム合金で構成され、芯材が、M
    n:0.3〜2.0 %、Cu:0.10 〜0.8 %のうちの1種また
    は2種を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からな
    るアルミニウム合金で構成されることを特徴とする耐ア
    ルカリ腐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラ
    ッド材。
  2. 【請求項2】 犠牲陽極材が、Fe:0.5〜3.0 %、N
    i:0.1〜3.0 %を含有し、FeおよびNiの合計含有量
    を3.0 %以下とし、さらにMg:0.1〜2.5 %、Zn:0.5
    〜4.0 %、Sn:0.01 〜0.2 %、Ga:0.01 〜0.2 %の
    うちの1種または2種以上を含み、残部Alおよび不可
    避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されること
    を特徴とする請求項1記載の耐アルカリ腐食性に優れた
    熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  3. 【請求項3】 犠牲陽極材が、さらにCr:0.05 〜0.3
    %、Zr:0.05 〜0.3 %、Ti:0.05 〜0.3 %、B:0.0
    1 〜0.1 %、Mn:0.1〜2.0 %、Si:0.1〜1.0 %のう
    ちの1種または2種以上を含有する請求項1〜2記載の
    耐アルカリ腐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金
    クラッド材。
  4. 【請求項4】 芯材が、さらにCr:0.05 〜0.3 %、Z
    r:0.05 〜0.3 %、Ti:0.05 〜0.3 %、B:0.01 〜0.
    1 %のうちの1種または2種以上を含有することを特徴
    とする請求項1〜3記載の耐アルカリ腐食性に優れた熱
    交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  5. 【請求項5】 芯材の片面にAl−Si系のろう材をク
    ラッドし、他の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニ
    ウム合金クラッド材において、犠牲陽極材が、Fe:0.5
    〜3.0 %、Ni:0.1〜3.0 %を含有し、FeおよびNi
    の合計含有量を3.0 %以下とし、残部Alおよび不可避
    的不純物からなるアルミニウム合金で構成され、芯材
    が、Mn:0.3〜2.0 %、Cu:0.10 〜0.8 %の1種また
    は2種を含み、さらにMg:0.1〜0.5 %、Si:0.1〜1.
    0 %を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる
    アルミニウム合金で構成されることを特徴とする耐アル
    カリ腐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金クラッ
    ド材。
  6. 【請求項6】 犠牲陽極材が、Fe:0.5〜3.0 %、N
    i:0.1〜3.0 %を含有し、FeおよびNiの合計含有量
    を3.0 %以下とし、さらにMg:0.1〜2.5 %、Zn:0.5
    〜4.0 %、Sn:0.01 〜0.2 %、Ga:0.01 〜0.2 %の
    うちの1種または2種以上を含み、残部Alおよび不可
    避的不純物からなるアルミニウム合金で構成されること
    を特徴とする請求項5記載の耐アルカリ腐食性に優れた
    熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
  7. 【請求項7】 犠牲陽極材が、さらにCr:0.05 〜0.3
    %、Zr:0.05 〜0.3 %、Ti:0.05 〜0.3 %、B:0.0
    1 〜0.1 %、Mn:0.1〜2.0 %、Si:0.1〜1.0 %のう
    ちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請
    求項5〜6記載の耐アルカリ腐食性に優れた熱交換器用
    アルミニウム合金クラッド材。
  8. 【請求項8】 芯材が、さらにCr:0.05 〜0.3 %、Z
    r:0.05 〜0.3 %、Ti:0.05 〜0.3 %、B:0.01 〜0.
    1 %のうちの1種または2種以上を含有することを特徴
    とする請求項5〜7記載の耐アルカリ腐食性に優れた熱
    交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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